説明

表示装置およびその駆動制御方法

【課題】駆動用トランジスタの閾値電圧のシフトを発生させることなく、発光素子のエージング動作を行う。
【解決手段】発光素子11a、N型の駆動用トランジスタ11b、容量素子11c、選択用トランジスタ11d、およびソース用トランジスタ11eを有する画素回路が多数配列されたアクティブマトリクス基板を備えた表示装置において、リセット電圧線18および駆動用トランジスタ11bのソース端子Sを介して発光素子11aに電流を流すことによって発光素子11aのエージング動作を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アクティブマトリクス方式で駆動される発光素子を備えた表示装置およびその表示装置の駆動制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、有機EL発光素子などの発光素子を用いた表示装置が提案されており、テレビや携帯電話のディスプレイなど種々の分野での利用が提案されている。
【0003】
一般に、有機EL発光素子は電流駆動型発光素子であるため、液晶ディスプレイとは異なり、その駆動回路として画素回路を選択する選択用トランジスタと表示画像に応じた電荷を保持する容量素子と有機EL発光素子を駆動する駆動用トランジスタが最低限必要である(たとえば、特許文献1および特許文献2参照)。
【0004】
そして、従来、アクティブマトリクス方式の有機EL表示装置の画素回路には、低温ポリシリコンまたはアモルファスシリコンからなる薄膜トランジスタが用いられていた。
【0005】
しかしながら、低温ポリシリコンの薄膜トランジスタは高移動度と閾値電圧安定性を得ることができるが、移動度の均一性に問題がある。また、アモルファスシリコンの薄膜トランジスタは移動度均一性を得ることができるが、移動度の低さと閾値電圧の経時変動の問題がある。また、近年、研究が盛んな無機酸化膜薄膜トランジスタにおいても閾値電圧の経時変動の問題がある。
【0006】
上記のような移動度の不均一性および閾値電圧の不安定性は表示画像のムラとなって現れる。そこで、たとえば特許文献3に記載の有機EL表示装置においては、有機EL発光素子の寄生容量を駆動用トランジスタで自己充電し、駆動用トランジスタの閾値電圧Vthの変動を補正する方法が提案されている。特許文献3に記載の方法においては、駆動用トランジスタのゲート端子に固定電圧を印加し、駆動用トランジスタの駆動電流Idで有機EL発光素子の寄生容量を充電することで駆動用トランジスタのソース電位をVg(ゲート電圧)−Vth(閾値電圧)に固定した後、ゲート端子への印加電圧を駆動電圧Vodだけステップアップすることで閾値電圧を補正した電圧プログラムが行われる。
【0007】
また、有機EL表示装置においては有機材料を用いた有機EL発光素子が用いられるが、この有機EL発光素子は経年劣化による発光量の低下が問題となる。この有機EL発光素子の経年劣化による発光輝度の低下特性は、有機EL発光素子への総電荷注入量に対して単純な比例関係とはならず、初期段階での発光輝度の低下が大きいことが特徴である。
【0008】
そこで、経年劣化による発光量の低下の影響を抑制するため、製品の出荷前に、初期劣化を効果的に実行することによって出荷後の発光特性を安定させるエージング動作を行うことが提案されている。たとえば、特許文献3においては、R、G、Bの有機EL発光素子のそれぞれの輝度劣化特性に合わせて駆動用トランジスタによって有機EL発光素子に駆動電流を流すことによってエージング動作を行う方法が提案されている。また、特許文献4においては、図12に示すように、点灯・消灯制御回路からパルス信号を出力し、スイッチングトランジスタSWTをパルス駆動することによって駆動用トランジスタTをパルス駆動し、発光素子Dにパルス駆動電流を流す方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平8−234683号公報
【特許文献2】特開2003−173154号公報
【特許文献3】特開2003−271095号公報
【特許文献4】特開2003−323979号公報
【特許文献5】特開2006−195030号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ここで、図13に、特許文献3に記載の画素回路の構成を示す。特許文献3に記載の画素回路は、発光部1とその寄生容量2とからなる発光素子と、発光素子に駆動電流を流す駆動用トランジスタ3と、駆動用トランジスタ3のゲート端子Gとソース端子Sとの間に接続される容量素子4と、駆動用トランジスタ3のゲート端子Gに接続される選択用トランジスタ5と、駆動用トランジスタ3のソース端子Sに接続されるソース接続スイッチ6とを備えている。
【0011】
そして、特許文献3に記載の画素回路における閾値電圧検出動作においては、具体的には、選択用トランジスタ5がオンされソース接続スイッチ6がオフされた状態で、駆動用トランジスタ3のゲート端子Gに固定電圧が印加され、この固定電圧の印加によって駆動用トランジスタ3に駆動電流が流れ、この駆動電流によって発光素子の寄生容量2が充電される。
【0012】
そして、寄生容量2の充電にともなって駆動用トランジスタ3のソース端子Sのソース電圧Vsが上昇する。駆動用トランジスタ3のゲート端子Gに供給されるVBは固定電圧であるため、ソース電圧Vsの上昇により駆動用トランジスタ3のゲート−ソース間電圧Vgsは低下し、Vgs=閾値電圧Vthになった時点で駆動用トランジスタ3の駆動電流Id=0となり、ソース電圧Vsの上昇は停止する。その結果、容量素子4に駆動用トランジスタ3の閾値電圧Vthが保持される。
【0013】
ここで、上記のような閾値電圧検出動作中は発光素子を発光させないようにする必要があり、駆動用トランジスタ3のソース端子Sのソース電圧Vsは発光素子の発光閾値電圧以下に維持する必要がある。
【0014】
上述したように閾値電圧検出動作中は駆動用トランジスタ3のソース電圧VsはVgs=Vthとなるまで上昇する。すなわち、駆動用トランジスタ3のソース電圧Vsは駆動用トランジスタ3のVthの大きさに応じて変化することになる。
【0015】
すなわち、閾値電圧検出動作を効果的に実行し、輝度均一性の優れた表示を実現するためには、経時変動を含めたVthの大きさに対応した駆動用トランジスタ3のソース電圧Vsを発光素子の発光閾値電圧以下に維持する必要がある。
【0016】
しかしながら、特許文献3および特許文献4に記載のエージング動作は、初期劣化に十分な大きさの駆動用トランジスタの駆動電流を発光素子に流すことによって行われるので、駆動用トランジスタのVthがシフトしてしまう。
【0017】
これは、エージング動作によって発光素子自体の経時劣化ばらつきを抑制したことによって、駆動用トランジスタのVthのシフトの許容範囲を狭めることになり、結果的には、表示輝度均一性能の持続期間を短縮することになる。
【0018】
本発明は、上記の事情に鑑み、駆動用トランジスタの閾値電圧のシフトを発生させることなく、発光素子のエージング動作を行うことができる表示装置およびその表示装置の駆動制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明の表示装置の駆動制御方法は、発光素子、発光素子のアノード端子にソース端子が接続され、発光素子に駆動電流を流すN型の駆動用トランジスタ、駆動用トランジスタのゲート端子とソース端子との間に接続された容量素子、駆動用トランジスタのゲート端子と駆動用トランジスタのゲート端子に駆動電圧を供給する信号線との間に接続された選択用トランジスタ、および駆動用トランジスタのソース端子と駆動用トランジスタのソース端子にリセット電圧を供給するリセット電圧線との間に接続されたソース用トランジスタを有する画素回路が多数配列されたアクティブマトリクス基板を備えた表示装置の駆動制御方法において、リセット電圧線および駆動用トランジスタのソース端子を介して発光素子に電流を流すことによって発光素子のエージング動作を行うことを特徴とする。
【0020】
また、本発明の表示装置の駆動制御方法においては、発光素子の寄生容量を駆動用トランジスタの駆動電流によって充電することによって駆動用トランジスタの閾値電圧検出動作を行うことができる。
【0021】
また、発光素子のエージング動作の間、選択用トランジスタとソース用トランジスタとをオンして信号線とリセット電圧線に同じ大きさのエージング動作用電圧を供給することができる。
【0022】
本発明の表示装置は、発光素子、発光素子のアノード端子にソース端子が接続され、発光素子に駆動電流を流すN型の駆動用トランジスタ、駆動用トランジスタのゲート端子とソース端子との間に接続された容量素子、駆動用トランジスタのゲート端子と駆動用トランジスタのゲート端子に駆動電圧を供給する信号線との間に接続された選択用トランジスタ、および駆動用トランジスタのソース端子と駆動用トランジスタのソース端子にリセット電圧を供給するリセット電圧線との間に接続されたソース用トランジスタを有する画素回路が多数配列されたアクティブマトリクス基板を備えた表示装置において、リセット電圧線および駆動用トランジスタのソース端子を介して発光素子に電流を流すことによって発光素子のエージング動作を行うよう制御する制御部を備えたことを特徴とする。
【0023】
また、上記本発明の表示装置においては、制御部を、発光素子の寄生容量を駆動用トランジスタの駆動電流によって充電することによって駆動用トランジスタの閾値電圧検出動作を行うよう制御するものとすることができる。
【0024】
また、制御部を、発光素子のエージング動作の間、選択用トランジスタとソース用トランジスタとをオンして信号線とリセット電圧線に同じ大きさのエージング動作用電圧を供給するよう制御するものとすることができる。
【0025】
また、駆動用トランジスタとして、閾値電圧が負電圧の薄膜トランジスタを用い、制御部を、発光素子のエージング動作の間、駆動用トランジスタのドレイン端子に接続された電源電圧線に対してもエージング動作用電圧を供給するよう制御するものとすることができる。
【0026】
また、アクティブマトリクス基板を、多数の信号線および多数のリセット電圧線を備えたものとし、制御部を、多数のリセット電圧線のうちの一部のリセット電圧線を順次切り替えて該一部のリセット電圧線にエージング動作用電圧を順次供給するとともに、エージング用動作電圧が供給されていない画素回路に接続されたリセット電圧線および/または信号線に対し、画素回路の発光素子の発光閾値電圧よりも低い電圧を供給するよう制御するものとすることができる。
【0027】
ここで、上記「エージング動作」とは、予め発光素子に電流を流すことによって発光素子を初期劣化させる動作のことをいう。
【発明の効果】
【0028】
本発明の表示装置およびその駆動制御方法によれば、リセット電圧線および駆動用トランジスタのソース端子を介して発光素子に電流を流すことによって発光素子のエージング動作を行うようにしたので、駆動用トランジスタの閾値電圧のシフトを発生させることなくエージング動作を行うことができ、表示輝度均一性が長期間維持可能な表示装置を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の表示装置の第1の実施形態を適用した有機EL表示装置の概略構成図
【図2】本発明の表示装置の第1の実施形態を適用した有機EL表示装置の画素回路の構成を示す図
【図3】本発明の第1の実施形態を適用した有機EL表示装置のエージング動作の作用を説明するための図
【図4】本発明の表示装置の第1の実施形態を適用した有機EL表示装置の表示動作の作用を説明するためのタイミングチャート
【図5】本発明の表示装置の第1の実施形態を適用した有機EL表示装置のリセット動作の作用を説明するための図
【図6】本発明の表示装置の第1の実施形態を適用した有機EL表示装置の閾値電圧検出動作の作用を説明するための図
【図7】本発明の表示装置の第1の実施形態を適用した有機EL表示装置のプログラム動作の作用を説明するための図
【図8】本発明の表示装置の第1の実施形態を適用した有機EL表示装置の発光動作の作用を説明するための図
【図9】本発明の表示装置の第2の実施形態を適用した有機EL表示装置の概略構成図
【図10】オフ動作する閾値電圧が負電圧である無機酸化膜薄膜トランジスタのVGS−ID特性の一例を示す図
【図11】オフ動作する閾値電圧が負電圧である無機酸化膜薄膜トランジスタを駆動用トランジスタとして用いた場合のエージング動作の作用を説明するための図
【図12】従来の有機EL表示装置におけるエージング動作を説明するための図
【図13】従来の有機EL表示装置の画素回路の一例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、図面を参照して本発明の表示装置の第1の実施形態を適用した有機EL表示装置について説明する。図1は、本発明の第1の実施形態を適用した有機EL表示装置の概略構成図である。
【0031】
本発明の第1の実施形態の有機EL表示装置は、図1に示すように、有機EL発光素子を有する画素回路11が2次元状に多数配列されたアクティブマトリクス基板10と、各画素回路11にゲートスキャン信号およびソーススキャン信号を出力する走査駆動回路12と、画像データに応じた表示データに基づいて各画素回路11の駆動用トランジスタにプログラム電圧を出力するゲート駆動回路13と、エージング動作の間に後述するリセット電圧線にエージング動作用電圧およびリセット電圧を供給するリセット電圧駆動回路14と、画像データに応じた表示データと同期信号に基づくタイミング信号をゲート駆動回路13に出力するとともに、走査駆動回路12およびリセット電圧駆動回路14に同期信号に基づくタイミング信号を出力する制御部19とを備えている。
【0032】
そして、アクティブマトリクス基板10は、ゲート駆動回路13から出力されたプログラム電圧を各画素回路列に供給する多数のデータ線15と、走査駆動回路12から出力されたゲートスキャン信号を各画素回路行に供給する多数のゲート走査線16と、走査駆動回路12から出力されたソーススキャン信号を各画素回路行に供給する多数のソース走査線17と、リセット電圧駆動回路14から出力されたエージング動作用電圧を各画素回路列に供給する多数のリセット電圧線18とを備えている。
【0033】
そして、データ線15およびリセット電圧線18と、ゲート走査線16およびソース走査線17とは直交して格子状に設けられている。そして、これらの交差点近傍に画素回路11が設けられている。
【0034】
各画素回路11は、図2に示すように、有機EL発光素子11aと、有機EL発光素子11aのアノード端子にソース端子Sが接続され、有機EL発光素子11aに駆動電流を流す駆動用トランジスタ11bと、駆動用トランジスタ11bのゲート端子Gとソース端子Sとの間に接続された容量素子11cと、容量素子11cの一端および駆動用トランジスタ11bのゲート端子Gとデータ線15との間に接続されたゲート選択用トランジスタ11dと、容量素子11cの他端および駆動用トランジスタ11bのソース端子Sとリセット電圧線18との間に接続されたソース用トランジスタ11eとを備えている。
【0035】
有機EL発光素子11aは、駆動用トランジスタ11bにより流された駆動電流により発光する発光部50と、発光部50の寄生容量51とを有している。そして、有機EL発光素子11aのカソード端子は共通電位(図2では接地電位)に接続されている。
【0036】
駆動用トランジスタ11b、ゲート選択用トランジスタ11dおよびソース用トランジスタ11eは、N型の薄膜トランジスタから構成されている。そして、駆動用トランジスタ11bの薄膜トランジスタの種類としては、アモルファスシリコンの薄膜トランジスタや無機酸化膜の薄膜トランジスタを用いることができる。無機酸化膜薄膜トランジスタとしては、たとえば、IGZO(InGaZnO)を材料とする無機酸化膜からなる薄膜トランジスタを利用することができるが、IGZOに限らず、その他IZO(InZnO)なども用いることができる。
【0037】
走査駆動回路12は、制御部19から出力されたタイミング信号に基づいて、画素回路11のゲート選択用トランジスタ11dをON/OFFするためのゲートスキャン信号ScanGを各ゲート走査線16に順次出力するとともに、ソース用トランジスタ11eをON/OFFするためのソーススキャン信号ScanSを各ソース走査線17に順次出力するものである。
【0038】
ゲート駆動回路13は、入力された表示データに基づいて、各画素回路11に入力されるプログラム電圧を生成し、そのプログラム電圧を各データ線15に出力するものである。
【0039】
リセット電圧駆動回路14は、後述するエージング動作用電圧VEとリセット電圧VAとを切り替えて出力するものであり、具体的には、後述する有機EL発光素子11aのエージング動作時に各リセット電圧線18にエージング動作用電圧VEを供給するとともに、後述するリセット動作時に各リセット電圧線18にリセット電圧VAを供給するものである。
【0040】
次に、第1の実施形態の有機EL表示装置の動作について詳細に説明する。
【0041】
本実施形態の有機EL表示装置においては、表示データに基づく表示動作の前に、各画素回路11の有機EL発光素子11aのエージング動作を行う。本実施形態においては、全ての画素回路11の有機EL発光素子11aを同時にエージング動作させる場合について説明するが、これに限らず、一部の画素回路11のエージング動作を順次切り替えて行うようにしてもよい。その場合については後述する本発明の第2の実施形態において詳細に説明する。
【0042】
エージング動作を行う際には、まず、走査駆動回路12から全てのゲート走査線16にゲート選択用トランジスタ11dをONするためのゲートスキャン信号が出力されるとともに、全てのソース走査線17にソース用トランジスタ11eをONするためのソーススキャン信号が出力される。
【0043】
そして、図3に示すように、走査駆動回路12から出力されたゲートスキャン信号に応じて全ての画素回路11のゲート選択用トランジスタ11dがONするとともに、ソーススキャン信号に応じて全ての画素回路11のソース用トランジスタ11eがONし、全ての画素回路11の駆動用トランジスタ11bのゲート端子Gとデータ線15とが接続されるとともに、駆動用トランジスタ11bのソース端子Sとリセット電圧線18とが接続される。
【0044】
一方、リセット電圧駆動回路14から全てのリセット電圧線18にエージング動作用電圧VEが出力され、また、このときゲート駆動回路13からも上記エージング動作用電圧VEと同じ大きさのプログラム電圧Vdataが全てのデータ線15に出力される。
【0045】
そして、リセット電圧線18に供給されたエージング動作用電圧はソース用トランジスタ11eを介して有機EL発光素子11aに供給され、有機EL発光素子11aに駆動電流が流れてエージングのための発光動作が行われる。なお、このとき、上述したようにゲート駆動回路13からもエージング動作用電圧VEと同じ大きさのプログラム電圧Vdataが全てのデータ線15に出力されて、全ての駆動用トランジスタ11bのゲート端子Gにはエージング動作用電圧VEと同じ大きさのプログラム電圧Vdataが供給されている状態であるので、駆動用トランジスタ11bのゲート−ソース間電圧Vgsは0Vに固定される。したがって、駆動用トランジスタ11bに駆動電流が流れないので駆動用トランジスタ11bの閾値電圧Vthのシフトを防止することができる。
【0046】
そして、上記のようにして有機EL発光素子11aのエージング動作が行われた後、表示データに基づく表示動作が行われる。
【0047】
次に、表示データに基づく表示動作について、図4に示すタイミングチャートおよび図5から図8を参照しながら説明する。なお、図4には、走査駆動回路12から出力されるゲートスキャン信号ScanGの電圧波形と、走査駆動回路12から出力されるソーススキャン信号ScanSの電圧波形と、駆動用トランジスタ11bのゲート電圧Vg、ソース電圧Vsおよびゲート−ソース間電圧Vgsの電圧波形とが示されている。
【0048】
本実施形態の有機EL表示装置においては、アクティブマトリクス基板10の各ゲート走査線16に接続された画素回路行が順次選択され、1行単位でその選択期間内に所定の動作が行なわれる。ここでは、その選択された所定の画素回路行において選択期間内に行なわれる動作について説明する。
【0049】
まず、画素回路行についてリセット動作が行われる(図4の時刻t1〜時刻t2、図5参照)。
【0050】
具体的には、図4に示すように、走査駆動回路12からゲート走査線16にゲート選択用トランジスタ11dをオンするためのゲートスキャン信号ScanGが出力されるとともに、走査駆動回路12からソース走査線17にソース用トランジスタ11eをオンするためのソーススキャン信号ScanSが出力される。そして、図5に示すように、ゲートスキャン信号ScanGに応じてゲート選択用トランジスタ11dがオンされ、駆動用トランジスタ11bのゲート端子Gがデータ線15に接続される。また、ソーススキャン信号ScanSに応じてソース用トランジスタ11eがオンされ、駆動用トランジスタ11bのソース端子Sおよび容量素子11cの一端(駆動用トランジスタ11bのゲート端子とは反対側)と、リセット電圧線18とが接続される。
【0051】
そして、このときゲート駆動回路13から各データ線15に所定電圧VBが出力され、各画素回路11の駆動用トランジスタ11bのゲート端子Gに供給され、また、リセット電圧駆動回路14から各リセット電圧線18にリセット電圧VAが出力され、各画素回路11の駆動用トランジスタ11bのソース端子Sに供給される。なお、本実施形態においてはリセット電圧は0Vに設定している。
【0052】
上記のような動作によって、駆動用トランジスタ11bのゲート電圧Vg=VB、ソース電圧Vs=VA=0となり、駆動用トランジスタ11bのゲート−ソース間電圧Vgs=VB−VAに設定され、容量素子11cおよび寄生容量51がリセットされる。
【0053】
ここで、所定電圧VBは、駆動用トランジスタ11bの閾値電圧の最大値をVthmaxとすると、VB>VA+Vthmaxが条件であり、駆動用トランジスタ11bからリセット電圧線18には何らかの駆動電流Idが流れる状態である。
【0054】
また、リセット電圧VAは、有機EL発光素子11aの発光閾値電圧をVf0、駆動用トランジスタ11bの閾値電圧偏差+変動の最大値をΔVthとすると、VA<Vf0−ΔVthが条件となり、たとえば、本実施形態のようにVA=0Vに設定されるが、ΔVthが小さい場合には、より高い電圧を設定した方が有機EL発光素子11aの発光遷移時間を短縮でき、逆にΔVthが大きい場合には、より低い電圧(負電圧を含む)を設定する必要がある。
【0055】
そして、次に、閾値電圧検出動作が行われる(図4の時刻t2〜時刻t3、図6参照)。
【0056】
具体的には、図4に示すように、走査駆動回路12からソース走査線17にソース用トランジスタ11eをオフするためのソーススキャン信号ScanSが出力される。そして、図6に示すように、ソーススキャン信号ScanSに応じてソース用トランジスタ11eがオフされる。
【0057】
これにより、図6に示すように、駆動用トランジスタ11bのソース端子Sとリセット電圧線18とが遮断される。そして、このとき駆動用トランジスタ11bのゲート−ソース間電圧Vgsは、
Vgs=Vg−Vs=VB−VA>Vth
となっているため、駆動用トランジスタ11bからリセット電圧線18へ流れていた駆動電流Idは、有機EL発光素子11aの寄生容量51に流れ、寄生容量51が充電され、駆動用トランジスタ11bのソース端子Sのソース電圧Vsが上昇する。
【0058】
駆動用トランジスタ11bのゲート端子Gに供給されるVBは固定電圧であるため、ソース電圧Vsの上昇によりVgsは低下し、Vgs=Vthになった時点で駆動電流Id=0となり、ソース電圧Vsの上昇は停止する。なお、このときの容量素子11cの両端電圧Vcs=Vgs=Vthとなっている。
【0059】
ここで、このとき駆動用トランジスタ11bのゲート電圧Vg=VB、ソース電圧Vs=VB−Vthであり、ソース電圧Vsは有機EL発光素子11aの発光閾値電圧以下とする必要があるため、
VB<Vf0+Vthmin
が条件となる。なお、Vf0は有機EL発光素子11aの発光閾値電圧、Vthminは駆動用トランジスタ11bの最小閾値電圧である。
【0060】
そして、次にプログラム動作が行われる(図4における時刻t3〜時刻t4、図7参照)。上記閾値電圧検出動作によって駆動用トランジスタ11bのソース電圧が十分に安定した時点でゲート駆動回路13は各データ線15に出力する電圧を所定電圧VBからプログラム電圧Vprg=VB+Vodにステップアップさせる。
【0061】
ここで、Vodは有機EL発光素子11aに所望の輝度に応じた駆動電流を流すための駆動用トランジスタ11bの駆動電圧であり、Vod=Vgs−Vthである。そして、駆動用トランジスタ11bのソース電圧Vsは容量素子11cの容量値Csと寄生容量51の容量値Cdの分圧となるので、
Vs=VB−Vth+Vod×Cs/(Cd+Cs)
となるが、Cd≫Csである場合には、
Vs≒VB−Vth
Vgs≒VB+Vod−(VB−Vth)=Vth+Vod
となり、ほぼ容量素子11cで検出したVthにVodを加算した値となる。
【0062】
そして、次に発光動作が行われる(図4における時刻t4以降、図8参照)。
【0063】
具体的には、図4に示すように、走査駆動回路12からゲート走査線16にゲート選択用トランジスタ11dをオフするためのゲートスキャン信号ScanGが出力され、図8に示すように、ゲートスキャン信号に応じてゲート選択用トランジスタ11dがオフされる。これにより、駆動用トランジスタ11bのゲート端子Gとデータ線15との接続が遮断される。
【0064】
そして、図8に示すように、駆動用トランジスタ11bには、上述したプログラム動作における容量素子11cの両端電圧が保持されたままその駆動電圧に応じた駆動電流Idが流れ、この駆動電流Idによって有機EL発光素子11aの発光部50が発光する。なお、Vodの印加完了後、駆動用トランジスタ11bのソース電圧Vsが上昇する前にゲート選択用トランジスタ11dをオフする必要がある。
【0065】
次に、本発明の表示装置の第2の実施形態を適用した有機EL表示装置について説明する。
【0066】
上記第1の実施形態の有機EL表示装置においては、有機EL発光素子11aのエージング動作を全ての画素回路11について同時に行うようにしたが、第2の実施形態の有機EL表示装置は、一部の画素回路11を順次切り替えてエージング動作を行うことによって、最終的に全画素回路11のエージング動作を行うようにしたものである。このように一部の画素回路11のみエージング動作を行うようにすることによってエージング動作中の発熱を抑制することができる。
【0067】
具体的には、第2の実施形態の有機EL表示装置は、第1の実施形態の有機EL表示装置とはリセット電圧駆動回路20の構成とこれを駆動制御する制御部19の駆動制御方法が異なるものであり、その他の構成については第1の実施形態の有機EL表示装置と同様である。
【0068】
第2の実施形態の有機EL表示装置のリセット電圧駆動回路20は、各リセット電圧線18を順次切り替えてエージング動作用電圧を出力するものである。
【0069】
そして、エージング動作用電圧が供給されているリセット電圧線18に接続された画素回路11の動作については、上記第1の実施形態の有機EL表示装置で説明したエージング動作と同様である。そして、このときエージング動作用電圧が供給されていないリセット電圧線18に対しては、たとえば、リセット電圧駆動回路20からリセット電圧VAを出力するようにすればよい。また、このときエージング動作が行われていない画素回路11に接続されたデータ線15に対しては、駆動用トランジスタ11bのゲート−ソース間電圧Vgsを0Vにするため、リセット電圧VAと同じ大きさのプログラム電圧Vprgをデータ線15に供給することが望ましい。なお、エージング動作が行われていない画素回路11に接続されたリセット電圧線18および/またはデータ線15に供給される電圧は、有機EL発光素子11aの発光閾値電圧Vf0よりも低い電圧に設定する必要がある。
【0070】
また、上記説明では、各リセット電圧線18に接続された画素回路列毎にエージング動作を行うようにしたが、画素回路列単位ではなく、複数の画素回路列からなる画素回路列群毎にエージング動作を行うようにしてもよく、たとえば、全ての画素回路列を2等分し、半分の画素回路列からなる画素回路列群毎にエージング動作を行うようにしてもよい。また、R、G、Bの画素回路列をそれぞれ切り替えてエージング動作を行い、それぞれの画素回路の有機EL発光素子の特性に応じたエージング動作用電圧をリセット電圧線18に供給するようにしてもよい。
【0071】
また、上記第1および第2の実施形態の有機EL表示装置は、駆動用トランジスタ11bとして、そのゲート−ソース間電圧Vgsが0Vのときに駆動電流が流れないもの、すなわち閾値電圧Vthが0Vよりも大きいものを使用することが前提となっているが、これに限らず、駆動用トランジスタ11bとして、オフ動作する閾値電圧が負電圧である無機酸化膜薄膜トランジスタを用いるようにしてもよい。ここで、オフ動作する閾値電圧とはドレイン電流IDが急激に増加し始めるゲート−ソース間電圧のこといい、オフ動作する閾値電圧が負電圧であるとは、たとえば、図10に示すようなVGS−ID特性を有することをいう。なお、図10のVGS−ID特性における閾値電圧はVTHである。無機酸化膜薄膜トランジスタとしては、たとえば、IGZO(InGaZnO)を材料とする無機酸化膜からなる薄膜トランジスタを利用することができるが、IGZOに限らず、その他ZnOなどがある。IGZOの薄膜トランジスタは、In、Ga、Znの組成比によって閾値電圧を設定可能である。
【0072】
そして、駆動用トランジスタ11bとして、オフ動作する閾値電圧が負電圧である無機酸化膜薄膜トランジスタを用いた場合には、駆動用トランジスタ11bのゲート−ソース間電圧Vgs=0でも駆動電流が流れてしまうため、有機EL発光素子11aのエージング動作に誤差が生じたり、駆動用トランジスタ11bの閾値電圧のシフトを生じてしまう。そこで、この場合には、図11に示すように、駆動用トランジスタ11bのドレイン端子Dに接続される電源電圧Vddをエージング動作用電圧VEと同じ大きさにすることによって、駆動用トランジスタ11bのドレイン端子D、ゲート端子Gおよびソース端子Sの全ての端子の電位を同一に設定することによってエージング動作の誤差などを防止することができる。
【0073】
なお、本発明のエージング動作の駆動制御方法では、駆動用トランジスタ11bの閾値電圧のシフトは防止することができるが、ソース用トランジスタ11eには閾値電圧のシフトが発生してしまうおそれがある。しかしながら、ソース用トランジスタ11eは、リセット動作時に有機EL発光素子11aの寄生容量51と容量素子11cを放電させるために設けられたものであり、電流値を制御する駆動用トランジスタ11bと異なり、たとえ閾値電圧がシフトしたとしても、ソーススキャン信号の振幅をそのシフト分を加味した大きさとしておくようにすれば閾値電圧のシフトの影響を排除することができ、表示画質への影響はない。
【0074】
また、上記第1および第2の実施形態の有機EL表示装置においては、エージング動作時にエージング動作用電圧としてDC電圧を用いるようにしたが、これに限らず、パルス電圧を用いるようにしてもよい。
【0075】
また、上記本発明の実施形態は、本発明の表示装置を有機EL表示装置に適用したものであるが、発光素子としては、有機EL発光素子に限らず、たとえば、無機EL素子などを用いるようにしてもよい。
【0076】
また、本発明の表示装置は、様々な用途がある。たとえば、携帯情報端末(電子手帳、モバイルコンピュータ、携帯電話など)、ビデオカメラ、デジタルカメラ、パーソナルコンピュータ、テレビなどが挙げられる。
【符号の説明】
【0077】
10 アクティブマトリクス基板
11 画素回路
11a 有機EL発光素子
11b 駆動用トランジスタ
11c 容量素子
11d ゲート選択用トランジスタ
11e ソース用トランジスタ
12 走査駆動回路
13 ゲート駆動回路
14,20 リセット電圧駆動回路
15 データ線
16 ゲート走査線
17 ソース走査線
18 リセット電圧線
19 制御部
20 リセット電圧駆動回路
50 発光部
51 寄生容量

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光素子、該発光素子のアノード端子にソース端子が接続され、前記発光素子に駆動電流を流すN型の駆動用トランジスタ、該駆動用トランジスタのゲート端子とソース端子との間に接続された容量素子、前記駆動用トランジスタのゲート端子と該駆動用トランジスタのゲート端子に駆動電圧を供給する信号線との間に接続された選択用トランジスタ、および前記駆動用トランジスタのソース端子と該駆動用トランジスタのソース端子にリセット電圧を供給するリセット電圧線との間に接続されたソース用トランジスタを有する画素回路が多数配列されたアクティブマトリクス基板を備えた表示装置の駆動制御方法において、
前記リセット電圧線および前記駆動用トランジスタのソース端子を介して前記発光素子に電流を流すことによって前記発光素子のエージング動作を行うことを特徴とする表示装置の駆動制御方法。
【請求項2】
前記発光素子の寄生容量を前記駆動用トランジスタの駆動電流によって充電することによって前記駆動用トランジスタの閾値電圧検出動作を行うことを特徴とする請求項1記載の表示装置の駆動制御方法。
【請求項3】
前記発光素子のエージング動作の間、前記選択用トランジスタと前記ソース用トランジスタとをオンして前記信号線と前記リセット電圧線に同じ大きさのエージング動作用電圧を供給することを特徴とする請求項1または2記載の表示装置の駆動制御方法。
【請求項4】
発光素子、該発光素子のアノード端子にソース端子が接続され、前記発光素子に駆動電流を流すN型の駆動用トランジスタ、該駆動用トランジスタのゲート端子とソース端子との間に接続された容量素子、前記駆動用トランジスタのゲート端子と該駆動用トランジスタのゲート端子に駆動電圧を供給する信号線との間に接続された選択用トランジスタ、および前記駆動用トランジスタのソース端子と該駆動用トランジスタのソース端子にリセット電圧を供給するリセット電圧線との間に接続されたソース用トランジスタを有する画素回路が多数配列されたアクティブマトリクス基板を備えた表示装置において、
前記リセット電圧線および前記駆動用トランジスタのソース端子を介して前記発光素子に電流を流すことによって前記発光素子のエージング動作を行うよう制御する制御部を備えたことを特徴とする表示装置。
【請求項5】
前記制御部が、前記発光素子の寄生容量を前記駆動用トランジスタの駆動電流によって充電することによって前記駆動用トランジスタの閾値電圧検出動作を行うよう制御するものであることを特徴とする請求項4記載の表示装置。
【請求項6】
前記制御部が、前記発光素子のエージング動作の間、前記選択用トランジスタと前記ソース用トランジスタとをオンして前記信号線と前記リセット電圧線に同じ大きさのエージング動作用電圧を供給するよう制御するものであることを特徴とする請求項4または5記載の表示装置。
【請求項7】
前記駆動用トランジスタが、閾値電圧が負電圧の薄膜トランジスタであり、
前記制御部が、前記発光素子のエージング動作の間、前記駆動用トランジスタのドレイン端子に接続された電源電圧線に対しても前記エージング動作用電圧を供給するよう制御するものであることを特徴とする請求項4から6いずれか1項記載の表示装置。
【請求項8】
前記アクティブマトリクス基板が、多数の前記信号線および多数の前記リセット電圧線を備えたものであり、
前記制御部が、前記多数のリセット電圧線のうちの一部のリセット電圧線を順次切り替えて該一部のリセット電圧線に前記エージング動作用電圧を順次供給するとともに、前記エージング用動作電圧が供給されていない前記画素回路に接続された前記リセット電圧線および/または前記信号線に対し、前記画素回路の発光素子の発光閾値電圧よりも低い電圧を供給するよう制御するものであることを特徴とする請求項4から7いずれか1項記載の表示装置。

【図1】
image rotate

【図4】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図11】
image rotate


【公開番号】特開2011−22364(P2011−22364A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−167378(P2009−167378)
【出願日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【復代理人】
【識別番号】100128451
【弁理士】
【氏名又は名称】安田 隆一
【Fターム(参考)】