説明

表示装置および電子機器

【課題】モアレの少ない高画質な映像表示を実現できる表示装置および電子機器を提供する。
【解決手段】 複数の画素を有し、複数の視点映像を前記各画素に割り当てて表示する表示部と、前記各画素からの前記各視点映像の出射角度を選択する複数の選択部とを備える。前記各選択部の光透過率が時間的または空間的に不均一となるようにする。例えば、前記複数の選択部がそれぞれ複数の分割領域を有し、前記各選択部において、前記各分割領域ごとに光透過率を時間的に変化させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、立体映像表示を行う表示装置、およびそのような表示装置を備えた電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
パララックスバリアを用いて裸眼立体表示を行う映像装置が広く知られている。パララックスバリアとは、ある周期を有する開口部を有するものである。これを介して、映像表示部を観察することによって、左右の目に異なる映像信号が入射する。異なる映像を左右の目で観察することで、裸眼による立体表示を実現する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−118140号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
パララックスバリア方式は、簡便な方式により、裸眼立体表示を実現することができるが、以下のような課題を有する。映像表示部が、液晶表示パネルやプラズマ表示装置などのように、2次元に配置された複数の画素を有し、映像を表示するものである場合、パララックスバリア方式では、モアレ(モワレ)現象が生じることがある。これは、映像表示部の画素の周期と、パララックスバリアの開口部の周期との違いにより、ビートを起こし、モアレが発生するものである。モアレは、周期的に輝度の変化が生じ、表示する映像に縞模様が見えることから、非常に不快感の強い画質劣化として知られている。特許文献1には、このモアレを解消するための技術が提案されている。
【0005】
特許文献1では、バリア間隔(s1もしくはs2)と画素ピッチ(p)とに関して、
s1=(n+0.5)p、nは整数
s2=(n+k/3)p、k=1or2
である場合に色モアレが減少することが報告されている。このとき、サブピクセルはRGBの3つよりなるため、サブピクセルピッチ(pp)としたとき、p=3ppとなる。
【0006】
特許文献1の段落[0049]には、以下のように記載されている。
「ここで、マーク41Gに注目すると、縦方向に形成されている同色のマーク41Gの列は一定の間隔2s1で水平方向に繰り返し形成されていることがわかる。すなわち、(1)式を満たすことで、発生する色モアレの周期は取り得る値として最小の、パターン間隔s1の2倍となる。これはモアレ縞の間隔として充分狭いものであり、これにより色モアレは認識しにくいものとなり高画質の立体映像が表示されることとなる。」
【0007】
特許文献1の段落[0049]に記載されているように、特許文献1に記載の発明では色モアレの間隔を2s1とすることで、色モアレの問題を解決している。しかしながら、モアレの間隔は小さくなるものの、モアレの発生が根本的に解消しているわけではない。また、特許文献1では、色モアレの解消を目的としているため、輝度の明暗であるモアレは解消されない。
【0008】
本開示の目的は、モアレの少ない高画質な映像表示を実現できる表示装置および電子機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示による表示装置は、複数の画素を有し、複数の視点映像を各画素に割り当てて表示する表示部と、各画素からの各視点映像の出射角度を選択する複数の選択部とを備え、各選択部の光透過率が時間的または空間的に不均一となるようにしたものである。
【0010】
本開示による電子機器は、上記本開示による表示装置を備えたものである。
【0011】
本開示による表示装置または電子機器では、各選択部の光透過率を時間的または空間的に不均一とし、各画素からの各視点映像の出射角度を選択する。
【発明の効果】
【0012】
本開示の表示装置または電子機器によれば、各選択部の光透過率を時間的または空間的に不均一となるようにしたので、モアレの少ない高画質な映像表示を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本開示の第1の実施の形態に係る表示装置の一構成例を示すブロック図である。
【図2】映像表示部と視差発生部との一構成例を示す外観斜視図である。
【図3】映像表示部と視差発生部との一構成例を示す側面図である。
【図4】映像表示部の一構成例を示す平面図である。
【図5】視差発生部(液晶バリア)の一構成例を示す平面図である。
【図6】視差発生部(液晶バリア)の一構成例を示す側面図である。
【図7】立体表示の原理を示す説明図である。
【図8】開口部の間隔と画素の間隔との関係を示す説明図である。
【図9】液晶バリアの開口部のグループ分けの一例を示す断面図である。
【図10】液晶バリアの開口部のグループ分けの一例を示す平面図である。
【図11】開口部の第1の状態を示す断面図である。
【図12】開口部の第2の状態を示す断面図である。
【図13】開口部A1,A2が透過状態の場合の光線の集光状態と開口部A2,A3が透過状態の場合の光線の集光状態とを示す説明図である。
【図14】モアレの発生についての説明図である。
【図15】最適視距離よりも遠い観察位置P2において観察される視点映像の状態を示す説明図である。
【図16】開口部A1,A2のみを透過状態にした場合の集光状態を示す説明図である。
【図17】開口部A1,A2のみを透過状態にした場合に、最適視距離よりも遠い観察位置P2において観察される視点映像の状態を示す説明図である。
【図18】開口部A2,A3のみを透過状態にした場合の集光状態を示す説明図である。
【図19】開口部A2,A3のみを透過状態にした場合に、最適視距離よりも遠い観察位置P2において観察される視点映像の状態を示す説明図である。
【図20】開口部の光透過率の時間的な変化の一例を示す説明図である。
【図21】(A)は開口部A1,A2のみを透過状態にした場合に、最適視距離よりも遠い観察位置P2において観察される視点映像の状態を示す説明図である。(B)は開口部A2,A3のみを透過状態にした場合に、観察位置P2において観察される視点映像の状態を示す説明図である。(C)は(A)の視点映像の状態と(B)の視点映像の状態とを重ね合わせた状態を示す説明図である。
【図22】(A)は開口部A1,A2のみを透過状態にした場合に、最適視距離よりも遠い観察位置P2において観察される輝度分布を示す説明図である。(B)は開口部A2,A3のみを透過状態にした場合に、観察位置P2において観察される輝度分布を示す説明図である。(C)は(A)の輝度分布と(B)の輝度分布とを重ね合わせた状態を示す説明図である。
【図23】開口部の光透過率を空間的に変化させた場合の第1の例を示す断面図である。
【図24】開口部の光透過率を空間的に変化させた場合の第2の例を示す断面図である。
【図25】バックライトと映像表示部との間に視差発生部(液晶バリア)を配置した実施の形態を示す説明図である。
【図26】インテグラルイメージング方式に適用した実施の形態を示す説明図である。
【図27】(A)は視差発生部をレンチキュラレンズにした場合における第1の状態を示し、(B)は視差発生部をレンチキュラレンズにした場合における第2の状態を示す説明図である。
【図28】電子機器の一例を示す外観図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本開示の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0015】
<第1の実施の形態>
[表示装置の全体構成]
図1は、本開示の第1の実施の形態に係る表示装置の一構成例を示している。この表示装置は、映像表示部1と、視差発生部2と、映像表示部駆動回路3と、視差発生部駆動回路4とを備えている。
【0016】
映像表示部駆動回路3には視差映像信号S1が装置の外部より入力されるようになっている。視差映像信号S1は、再生しようとする立体映像において、立体情報の奥行に従って視差を変えた映像信号である。後述する視点数と同等の視差映像信号S1が入力される。映像表示部駆動回路3は、視差映像信号S1の配列を並び替え、映像信号S2を作成するようになっている。この映像信号S2を映像表示部1に入力する。また映像表示部駆動回路3は、出力した映像信号S2に対応する同期信号S3を視差発生部駆動回路4に送る。視差発生部駆動回路4は、この同期信号S3に従って、映像表示部1が表示する映像信号S2に対応した、視差発生部2の駆動を行うべく視差発生信号S4を視差発生部2に送る。この視差発生信号S4に従い、視差発生部2は動作を行うようになっている。
【0017】
[映像表示部1および視差発生部2の構成例]
図2、図3は映像表示部1および視差発生部2の構成例を示している。映像表示部1は、2次元平面上に映像を表示するものである。図2、図3の構成例では、映像表示部1を液晶パネル11とバックライト12との組み合わせで構成した例を示しているが、この他にもエレクトロルミネッセンスパネルなどで構成しても良い。視差発生部2は、映像表示部1と観察者との間に配置され、映像表示部1から出射された光が入射するようになっている。視差発生部21は、液晶材料によって光の透過率を制御可能な視差バリア(液晶バリア20)で構成されている。
【0018】
映像表示部1は、図4に示したように2次元平面上に配列された複数の画素10を有している。各画素10はそれぞれ独立に輝度を変えることができ、任意に映像を表示することができるようになっている。各画素10には、映像表示部駆動回路3(図1)からの映像信号S2に従って映像が表示される。水平方向の画素の間隔(画素水平間隔)をppとする。
【0019】
図5、図6に視差発生部2としての液晶バリア20の具体的な構成例を示す。液晶バリア20は、図5に示したように、垂直方向に延在する複数のスリット状の開口部21を有している。複数の開口部21の間は光を透過しない遮蔽部22となっている。開口部21は、映像表示部1の各画素10からの各視点映像の光を選択して出射する出射角度選択部としての機能を有している。開口部21は、画素10と開口部21との位置関係に従い、観察者に向かう各視点映像の出射角度を選択する。詳細は後述する。
【0020】
液晶バリア20は、図6に示したように、液晶材料23と、第1の透明電極24と、第1の透明平行板25と、第1の偏光板26と、第2の透明電極27と、第2の透明平行板28と、第2の偏光板29とを有している。
【0021】
液晶材料23は、第1の透明平行板25と第2の透明平行板28との間に封入されている。第1の透明平行板25の液晶材料23側の表面には、ITO(Indium Tin Oxide)などで構成される第1の透明電極24が設置されている。同様に、第2の透明平行板28の液晶材料23側の表面には、第2の透明電極27が設置されている。液晶バリア20では、第1の透明電極24と第2の透明電極27とに印加される電圧に応じて、液晶材料23の配向が変化する。映像表示部1からの光が第1の偏光板26を通過することで、直線偏光となる。液晶材料23を透過する際に液晶材料23の配向により、偏光の向きを制御できる。そして、第2の偏光板29を通ることで、強度変調ができる。例えば、電圧を印加する場合に光透過となり、電圧を印加しない場合に光遮断となる、いわゆるノーマリーブラックで動作する。また、電圧を印加する場合に光遮断となり、電圧を印加しない場合に光透過となる、いわゆるノーマリーホワイトにすることも可能である。なお、第2の偏光板29が吸収型偏光板の場合は、遮断光は第2の偏光板29で吸収される。第2の偏光板29が反射型偏光板の場合は、映像表示部1に戻る。
【0022】
[表示装置の動作]
この表示装置では、映像表示部1において、n個(nは整数)の視点映像を各画素10に割り当てて表示する。複数の出射角度選択部(開口部21)では、各画素10からの各視点映像の出射角度を選択する。視差発生部駆動回路4は、映像表示部駆動回路3に同期して、例えば所定の周期で複数の出射角度選択部の状態を時間的にm個の状態に変化させる。
【0023】
視差発生部駆動回路4は、同一視点の視点映像の出射角度が、m個の状態のそれぞれにおいて異なる角度となるように複数の開口部21の状態を時間的に変化させる。
【0024】
液晶バリア20の複数の開口部21の状態を変化させる動作例について具体的に説明する。図5に示したように、各開口部21は全体としてスリット状であり、全体の間隔はbpとする。また、各開口部21は複数の分割領域を有し、視差発生部駆動回路4は、各分割領域ごとに光透過率を時間的に変化させる。ここでは、図9および図10に示したように、各開口部21が、水平方向に第1ないし第3の分割領域(開口部A1,A2,A3)を有しているものとする。液晶バリア20では、開口部A1のグループ(開口部グループA1)と、開口部A2のグループ(開口部グループA2)と、開口部A3のグループ(開口部グループA3)とのそれぞれのグループ単位で光透過率を変化させることが可能となっている。
【0025】
次に、図7を参照して立体表示を実現する原理を説明する。図7は図2の一断面に相当する。ここでは例えば各開口部21の中央の開口部グループA2のみが透過状態であり他の開口部グループA1,A3は光遮断状態となっているものとする。映像表示部1の各画素10から出射された光は液晶バリア20の開口部グループA2により、出射角度が選択される。図7では、7個の画素おきに対応して、開口部グループA2が配置されている。各画素10に振られた1ないし7の番号は、立体視における視点番号を示している。同一の視点番号の画素10に、対応する視点映像を表示する。液晶バリア20における透過状態の開口部21により視点映像の出射角度が選択され、観察者の左右の目に異なる視点映像が入射する。これにより立体表示が可能となる。
【0026】
図8では、開口部グループ同士の間隔bpと、視点数n、映像表示部1の画素10の間隔ppとの関係を示している。液晶バリア20よりL2の距離(最適視距離)では、映像表示部1の全面より同一の視点映像が集光位置P1に集まる。図8の例では、視点番号4の視点映像の集光状態を示している。観察者が液晶バリア20よりL2の距離にいる場合、観察者の各々の目には、全面に亘って1つの視点映像が観察できる。両目には異なる視点映像が入射するようになっているので立体表示が可能である。
【0027】
同一の開口部グループでは同一の視点映像が、最適視距離L2において1点に集まるようにする。このため、視点数nに映像表示部1の画素間隔ppを乗じたn・ppの値は、同一の開口部グループの間隔bpとは異なり、n・ppがbpよりも大きい値となる。最適視距離L2に液晶バリア20と映像表示部1の距離を足したものをL1とすると、
L2/L1=(bp)/(n・pp)となる。
【0028】
この表示装置では、開口部21の状態を時間的にm個の状態に変化させる。例えば図11に示した第1の状態と、図12に示した第2の状態との2つの状態に変化させる。この場合、図11では、開口部グループA1,A2を透過状態にすると共に、開口部グループA3を非透過状態(遮断状態)にしている場合の各開口部と視点映像との関係を示している。図12では、開口部グループA2,A3を透過状態にすると共に、開口部グループA1を非透過状態(遮断状態)にしている場合の各開口部と視点映像との関係を示している。図11の第1の状態と、図12の第2の状態とで、画素10と透過状態の開口部21との位置関係がずれることになる。図11の第1の状態では、透過状態である開口部グループA1,A2は、視点番号4の画素の左上側に位置している。しかし、図12の第2の状態では、透過状態である開口部グループA2,A3は、視点番号4の画素の右上側に位置している。このため、図11の第1の状態と図12の第2の状態とで、同一視点の視点映像は出射角度がずれることになる。
【0029】
図13は、図11の第1の状態と図12の第2の状態とのそれぞれについて、視点番号4の視点映像の光線が最適視距離L2の位置に集光される状態を示している。液晶バリア20から距離L2の位置において、同一視点の映像の光線が集光する位置が、第1の状態と第2の状態とでずれる。第1の状態(開口部グループA1,A2のみが透過状態)である場合には位置Paに集光し、第2の状態(開口部グループA2,A3のみが透過状態)である場合には位置Pbに集光する。なお、最適視距離L2において、位置Pa,Pbのずれ量は立体表示の観察には問題がない程度のずれ量となっている。
【0030】
[モアレが解消される原理]
図11〜図13に示したような表示動作を行うことで、モアレを解消することができる。以下、この原理を説明する。従来では、最適視距離L2以外の距離で観察した場合に、モアレは観察されやすい。例えば図14に示したように観察位置P2が最適視距離L2よりも遠い位置にある場合、観察者の片目には、例えば図15に示したように複数の視点映像が部分的に観察されることになる。視点映像の境目では、複数の視点映像が混ざることになる。例えば視点映像2と3の境目付近では視点映像2も視点映像3の重なった映像となり、輝度が一定とならない。このため、従来技術ではモアレが発生し、輝度むらのために、画質低下を招いている。
【0031】
本実施の形態では、複数の開口部21の状態を時間的に高速で切り替えることでこのモアレを解消する。図16は開口部グループA1,A2のみを透過状態にした場合の集光状態を示し、図17は開口部グループA1,A2のみを透過状態にした場合に、最適視距離L2よりも遠い観察位置P2において観察される視点映像の状態を示している。図18は開口部グループA2,A3のみを透過状態にした場合の集光状態を示し、図19は開口部グループA2,A3のみを透過状態にした場合に、最適視距離L2よりも遠い観察位置P2において観察される視点映像の状態を示している。
【0032】
上述の図11〜図13にも示したように透過状態となる開口部グループによって、同じ視点映像の光線の出射角度がずれる。このために、観察者の片目が観察する画面の映像は、時間的に、視点映像の位置が変化することになる。開口部グループA1,A2のみが透過状態となる場合は、図17に示すように右から視点映像6,7,1,2,・・・と並ぶが、開口部グループA2,A3のみが透過状態となる場合は、図19に示すように視点映像7,1,2,3,・・・と並ぶ。この2つの状態を例えば1/120秒間隔で高速に切り替えることにより、観察者は積分した映像を観察することになる。図20に各開口部グループの光透過率の変化の一例を示す。図20に示したように、各開口部21において、例えば中央の開口部グループA2を常時透過状態、左右の開口部グループA1,A3を1フレーム期間内で交互に透過状態にすることで、開口部21の状態を上記2つの状態に切り替える。
【0033】
図21(C)に、観察者の片目が観察する積分された映像を示す。なお、図21(A)は図17と同様、開口部グループA1,A2のみを透過状態にした場合に、最適視距離L2よりも遠い観察位置P2において観察される視点映像の状態を示す。図21(B)は開口部グループA2,A3のみを透過状態にした場合に、観察位置P2において観察される視点映像の状態を示す。図21(C)は図21(A)の視点映像の状態と図21(B)の視点映像の状態とを重ね合わせた状態を示す。
【0034】
図21(C)に示したように映像を積分して観察することにより、開口部A1,A2のみを透過状態にした場合の輝度むらと、開口部A2,A3のみを透過状態にした場合の輝度むらとについても積分されることになる。この輝度むらが積分される様子を図22(A)〜(C)に示す。なお、図22(A)は開口部グループA1,A2のみを透過状態にした場合に、最適視距離L2よりも遠い観察位置P2において観察される輝度分布を示す。図22(B)は開口部グループA2,A3のみを透過状態にした場合に観察位置P2において観察される輝度分布を示す。図22(C)は図22(A)の輝度分布と図22(B)の輝度分布とを重ね合わせた状態を示す。透過状態となる開口部21の位置が変化することで、視点映像の境目がずれることにより、輝度むらの位置が変わるが、この2つが高速に積分されることで、輝度のむらが低減される。
【0035】
以上のようにして、輝度むらであるモアレを改善し、画質改善を行うことができる。上記説明では透過状態となる開口部グループを高速に切り替えるものとしていたが、この速度は、人間が感じる目の応答速度よりも速く、例えば1/25秒以上の速さで切り替えれば、フリッカとして感じることは少ない。
【0036】
[効果]
以上説明したように、本実施の形態に係る表示装置によれば、各出射角度選択部(開口部21)の光透過率を時間的に不均一となるように、具体的には、各出射角度選択部が複数の分割領域(開口部グループ)を有し、各出射角度選択部において、各分割領域ごとに光透過率を時間的に変化させるようにしたので、モアレの少ない高画質な映像表示を実現できる。特に、色モアレだけでなく、輝度の明暗であるモアレも解消することができる。
【0037】
[第1の実施の形態の変形例]
上記実施の形態では、視点数をn=7とし、開口部21の状態をm=2の状態に変化させる場合を例に説明したが、これらのパラメータは、他の値であっても良い。例えば各開口部21が3つ以上の分割領域(開口部グループ)を有し、開口部21の状態を3つ以上の状態に変化させるものであっても良い。開口部21の変化の状態を増やすことで、輝度のむらをより細かくずらして足し合わせることができるため、輝度むらをさらに改善できる。また、各開口部グループ間で観察される映像のずれ量も少ないので画面のフリッカ感も抑えられる。
【0038】
<第2の実施の形態>
次に、本開示の第2の実施の形態に係る表示装置について説明する。なお、上記第1の実施の形態に係る表示装置と実質的に同一の構成部分には同一の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0039】
上記第1の実施の形態では、各出射角度選択部(開口部21)が複数の分割領域(開口部グループ)を有し、各開口部21において、各開口部グループごとに光透過率を時間的に変化させるようにしたが、時間的に変化させることとなく、各開口部21の光透過率を空間的に不均一にするようにしても良い。
【0040】
図23は、各開口部21の光透過率を空間的に変化させた場合の第1の例を示している。図23に示したように、各開口部21において、例えば中央の開口部グループA2を常時100%の光透過率、左右の開口部グループA1,A3を常時50%の光透過率とする。これにより、各開口部21において、隣接する開口部グループの光透過率が空間的に互いに異なっている。各開口部21を図23のような光透過率分布ととすることで、上記第1の実施の形態における図11の第1の状態と図12の第2の状態との2つの状態を足し合わせたものと同等の観察状態を得ることができる。
【0041】
図24は、各開口部21の光透過率を空間的に変化させた場合の第2の例を示している。図23の第1の例では、各開口部21を3つの分割領域(開口部グループ)に分けて各開口部21内での光透過率分布を段階的に不均一となるようにした。これに対して、図24の第2の例では、分割領域を設けることなく、各開口部21内での光透過率分布を所定の方向(水平方向に)に無段階(連続的)に変化させている。これによっても、上記第1の実施の形態における図11の第1の状態と図12の第2の状態との2つの状態を足し合わせたものと近似した観察状態を得ることができる。
【0042】
以上説明したように、本実施の形態に係る表示装置によれば、各出射角度選択部(開口部21)の光透過率を空間的に不均一となるようにしたので、モアレの少ない高画質な映像表示を実現できる。特に、色モアレだけでなく、輝度の明暗であるモアレも解消することができる。また、上記第1の実施の形態のように光透過率を時間的に不均一にする場合に比べて、映像表示を明るくすることができる。
【0043】
<第3の実施の形態>
次に、本開示の第3の実施の形態に係る表示装置について説明する。なお、上記第1または第2の実施の形態に係る表示装置と実質的に同一の構成部分には同一の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0044】
上記第1の実施の形態では、視差発生部2(液晶バリア20)を、映像表示部1(液晶パネル11)と観察者との間に配置するようにしたが、図25に示したように、液晶パネル11を、液晶バリア20と観察者との間に配置するようにしても良い。この場合、液晶バリア20は、液晶パネル11とバックライト12との間に配置する。
【0045】
この場合は、L2/L1=(n・pp)/(bp)の関係となる。この場合でもnはmの非整数倍となる。n・ppはbpよりも小さい値となる。
【0046】
<第4の実施の形態>
次に、本開示の第4の実施の形態に係る表示装置について説明する。なお、上記第1ないし第3の実施の形態に係る表示装置と実質的に同一の構成部分には同一の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0047】
本開示による技術は、図26に示したように、インテグラルイメージング方式にも適用することが可能である。この場合は、
(bp)=(n・pp)
となる。
【0048】
<第5の実施の形態>
次に、本開示の第5の実施の形態に係る表示装置について説明する。なお、上記第1ないし第4の実施の形態に係る表示装置と実質的に同一の構成部分には同一の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0049】
上記第1の実施の形態では、視差発生部2として視差バリア(液晶バリア20)を用いた例を示したが、図27(A),(B)に示したように、視差発生部2としてレンチキュラレンズ30を用いるようにしても良い。レンチキュラレンズ30は、円筒状の複数の分割レンズ31を有する。分割レンズ31が、映像表示部1の各画素10からの各視点映像の光を選択して出射する出射角度選択部としての機能を有している。
【0050】
図27(A),(B)では、視点数をn=7とし、分割レンズ31の状態をm=2の状態に変化させる場合を例にしている。この場合、分割レンズ31の位置は、図27(A),(B)に示したように時間的に2つの位置を持つ。分割レンズ31の位置は、例えばピエゾ素子などで物理的に高速に動かすことができる。また、液晶材料を用いて液晶の屈折率異方性を利用してレンズを形成する液晶レンズであれば、透明電極の配置と印加電界との関係によって、時間的に分割レンズ31の位置を変化することもできる。また、液体レンズを用いても良い。
【0051】
図27(A),(B)の例では、図8に対応するL1,L2を用いると、
L2/L1=(bp)/(n・pp)となる。bpは、図27(A),(B)のそれぞれの状態における分割レンズ31の間隔に相当する。
【0052】
本実施の形態によれば、視差発生部2としてレンチキュラレンズ30を用いるようにしたので、視差バリアを用いた場合よりも映像表示を明るくすることができる利点がある。
【0053】
<その他の実施の形態>
本開示による技術は、上記各実施の形態の説明に限定されず種々の変形実施が可能である。
例えば、上記第1、第2の実施の形態等において、液晶バリア20の開口部21を、垂直方向でなく斜め方向に並べた、いわゆる斜めバリア方式で構成しても良い。また、液晶バリア20の開口部21を、ステップバリア方式で構成しても良い。また、上記第5の実施の形態において、レンチキュラレンズ30の各分割レンズ31を斜め方向に傾斜配置した斜めレンチキュラ方式で構成しても良い。
【0054】
また、図1の回路において、視差映像信号S1として左右(LR)の映像信号を映像表示部駆動回路3に入力し、その視差情報から映像表示部駆動回路3においてn個の多視点映像を生成するようにしても良い。
【0055】
また、上記各実施の形態に係る表示装置はいずれも、表示機能を有する種々の電子機器に適用可能である。図28は、そのような電子機器の一例としてテレビジョン装置の外観構成を表している。このテレビジョン装置は、フロントパネル210およびフィルターガラス220を含む映像表示画面部200を備えている。テレビジョン装置の他にも、種々のデジタルカメラ、カムコーダ、携帯電話、またはノート型パーソナルコンピュータ等に適用可能である。
【0056】
また例えば、本技術は以下のような構成を取ることができる。
(1)
複数の画素を有し、複数の視点映像を前記各画素に割り当てて表示する表示部と、
前記各画素からの前記各視点映像の出射角度を選択する複数の選択部と
を備え、
前記各選択部の光透過率が時間的または空間的に不均一となっている
表示装置。
(2)
前記複数の選択部がそれぞれ複数の分割領域を有し、
前記各選択部において、前記各分割領域ごとに光透過率が時間的に変化するようになっている
上記(1)に記載の表示装置。
(3)
前記複数の選択部がそれぞれ第1ないし第3の分割領域を有し、
前記各選択部を、
前記第1および第2の分割領域を透過状態にすると共に前記第3の分割領域を非透過状態にする第1の状態と、前記第2および第3の分割領域を透過状態にすると共に前記第1の分割領域を非透過状態にする第2の状態との2つの状態に交互に変化させる
上記(1)または(2)に記載の表示装置。
(4)
前記各選択部において、同一視点の前記視点映像の出射角度が時間的に変化するように、前記各選択部の光透過率が時間的に変化する
上記(1)ないし(3)のいずれか1つに記載の表示装置。
(5)
前記複数の選択部がそれぞれ複数の分割領域を有し、
前記各選択部において、隣接する前記分割領域の光透過率が空間的に互いに異なっている
上記(1)のいずれか1つに記載の表示装置。
(6)
前記各選択部において、光透過率が所定の方向に空間的に連続的に変化している
上記(1)のいずれか1つに記載の表示装置。
(7)
複数の開口部を有する視差バリアをさらに備え、
前記複数の選択部は、前記複数の開口部である
上記(1)ないし(6)のいずれか1つに記載の表示装置。
(8)
複数の分割レンズを有するレンチキュラレンズをさらに備え、
前記複数の選択部は、前記複数の分割レンズである
上記(1)のいずれか1つに記載の表示装置。
(9)
前記複数の選択部は、前記表示部と観察者との間に配置される
上記(1)ないし(8)のいずれか1つに記載の表示装置。
(10)
前記表示部は、前記複数の選択部と観察者との間に配置される
上記(1)ないし(8)のいずれか1つに記載の表示装置。
(11)
表示装置を備え、
前記表示装置は、
複数の画素を有し、複数の視点映像を前記各画素に割り当てて表示する表示部と、
前記各画素からの前記各視点映像の出射角度を選択する複数の選択部と
を含み、
前記各選択部の光透過率が時間的または空間的に不均一となっている
電子機器。
【符号の説明】
【0057】
1…映像表示部、2…視差発生部、3…映像表示部駆動回路、4…視差発生部駆動回路、10…画素、11…液晶パネル、12…バックライト、20…液晶バリア、21…開口部(出射角度選択部)、22…遮蔽部、23…液晶材料、24…第1の透明電極、25…第1の透明平行板、26…第1の偏光板、27…第2の透明電極、28…第2の透明平行板、29…第2の偏光板、30…レンチキュラレンズ、31…分割レンズ、200…映像表示画面部、210…フロントパネル、220…フィルターガラス、P1…集光位置、Pa…集光位置、Pb…集光位置、P2…観察位置、S1…視差映像信号、S2…映像信号、S3…同期信号、S4…視差発生信号。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の画素を有し、複数の視点映像を前記各画素に割り当てて表示する表示部と、
前記各画素からの前記各視点映像の出射角度を選択する複数の選択部と
を備え、
前記各選択部の光透過率が時間的または空間的に不均一となっている
表示装置。
【請求項2】
前記複数の選択部がそれぞれ複数の分割領域を有し、
前記各選択部において、前記各分割領域ごとに光透過率が時間的に変化するようになっている
請求項1に記載の表示装置。
【請求項3】
前記複数の選択部がそれぞれ第1ないし第3の分割領域を有し、
前記各選択部を、
前記第1および第2の分割領域を透過状態にすると共に前記第3の分割領域を非透過状態にする第1の状態と、前記第2および第3の分割領域を透過状態にすると共に前記第1の分割領域を非透過状態にする第2の状態との2つの状態に交互に変化させる
請求項2に記載の表示装置。
【請求項4】
前記各選択部において、同一視点の前記視点映像の出射角度が時間的に変化するように、前記各選択部の光透過率が時間的に変化する
請求項1に記載の表示装置。
【請求項5】
前記複数の選択部がそれぞれ複数の分割領域を有し、
前記各選択部において、隣接する前記分割領域の光透過率が空間的に互いに異なっている
請求項1に記載の表示装置。
【請求項6】
前記各選択部において、光透過率が所定の方向に空間的に連続的に変化している
請求項1に記載の表示装置。
【請求項7】
複数の開口部を有する視差バリアをさらに備え、
前記複数の選択部は、前記複数の開口部である
請求項1に記載の表示装置。
【請求項8】
複数の分割レンズを有するレンチキュラレンズをさらに備え、
前記複数の選択部は、前記複数の分割レンズである
請求項1に記載の表示装置。
【請求項9】
前記複数の選択部は、前記表示部と観察者との間に配置される
請求項1に記載の表示装置。
【請求項10】
前記表示部は、前記複数の選択部と観察者との間に配置される
請求項1に記載の表示装置。
【請求項11】
表示装置を備え、
前記表示装置は、
複数の画素を有し、複数の視点映像を前記各画素に割り当てて表示する表示部と、
前記各画素からの前記各視点映像の出射角度を選択する複数の選択部と
を含み、
前記各選択部の光透過率が時間的または空間的に不均一となっている
電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【公開番号】特開2013−50537(P2013−50537A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−187456(P2011−187456)
【出願日】平成23年8月30日(2011.8.30)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】