説明

表示装置および電子機器

【課題】モアレの少ない高画質な映像表示を実現できる表示装置および電子機器を提供する。
【解決手段】複数の画素を有し、n個(nは整数)の視点映像を前記各画素に割り当てて表示する表示部と、前記各視点映像と前記各画素との対応関係を周期的にm個(mは整数)の状態に変化させる表示部駆動回路と、前記各画素からの前記各視点映像の出射角度を選択する複数の選択部と、前記表示部駆動回路に同期して、前記複数の選択部の位置を周期的にm個の状態に変化させる選択部駆動回路とを備える。0<m<n、かつ、nはmの非整数倍とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、立体映像表示を行う表示装置、およびそのような表示装置を備えた電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
パララックスバリアを用いて裸眼立体表示を行う映像装置が広く知られている。パララックスバリアとは、ある周期を有する開口部を有するものである。これを介して、映像表示部を観察することによって、左右の目に異なる映像信号が入射する。異なる映像を左右の目で観察することで、裸眼による立体表示を実現する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−118140号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
パララックスバリア方式は、簡便な方式により、裸眼立体表示を実現することができるが、以下のような課題を有する。映像表示部が、液晶表示パネルやプラズマ表示装置などのように、2次元に配置された複数の画素を有し、映像を表示するものである場合、パララックスバリア方式では、モアレ(モワレ)現象が生じることがある。これは、映像表示部の画素の周期と、パララックスバリアの開口部の周期との違いにより、ビートを起こし、モアレが発生するものである。モアレは、周期的に輝度の変化が生じ、表示する映像に縞模様が見えることから、非常に不快感の強い画質劣化として知られている。特許文献1には、このモアレを解消するための技術が提案されている。
【0005】
特許文献1では、バリア間隔(s1もしくはs2)と画素ピッチ(p)とに関して、
s1=(n+0.5)p、nは整数
s2=(n+k/3)p、k=1or2
である場合に色モアレが減少することが報告されている。このとき、サブピクセルはRGBの3つよりなるため、サブピクセルピッチ(pp)としたとき、p=3ppとなる。
【0006】
特許文献1の段落[0049]には、以下のように記載されている。
「ここで、マーク41Gに注目すると、縦方向に形成されている同色のマーク41Gの列は一定の間隔2s1で水平方向に繰り返し形成されていることがわかる。すなわち、(1)式を満たすことで、発生する色モアレの周期は取り得る値として最小の、パターン間隔s1の2倍となる。これはモアレ縞の間隔として充分狭いものであり、これにより色モアレは認識しにくいものとなり高画質の立体映像が表示されることとなる。」
【0007】
特許文献1の段落[0049]に記載されているように、特許文献1に記載の発明では色モアレの間隔を2s1とすることで、色モアレの問題を解決している。しかしながら、モアレの間隔は小さくなるものの、モアレの発生が根本的に解消しているわけではない。また、特許文献1では、色モアレの解消を目的としているため、輝度の明暗であるモアレは解消されない。
【0008】
本開示の目的は、モアレの少ない高画質な映像表示を実現できる表示装置および電子機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示による表示装置は、複数の画素を有し、n個(nは整数)の視点映像を各画素に割り当てて表示する表示部と、各視点映像と各画素との対応関係を周期的にm個(mは整数)の状態に変化させる表示部駆動回路と、各画素からの各視点映像の出射角度を選択する複数の選択部と、表示部駆動回路に同期して、複数の選択部の位置を周期的にm個の状態に変化させる選択部駆動回路とを備え、
0<m<n、かつ、nはmの非整数倍の条件を満たすようにしたものである。
【0010】
本開示による電子機器は、上記本開示による表示装置を備えたものである。
【0011】
本開示による表示装置または電子機器では、各視点映像と各画素との対応関係が周期的にm個の状態に変化する。また、それに同期して、複数の選択部の位置が周期的にm個の状態に変化する。
【発明の効果】
【0012】
本開示の表示装置または電子機器によれば、n個の各視点映像と各画素との対応関係をm個の状態に周期的に変化させると共に、それに同期して、複数の選択部の位置をm個の状態に周期的に変化させ、n,mに関して所定の条件を満たすようにしたので、モアレの少ない高画質な映像表示を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本開示の第1の実施の形態に係る表示装置の一構成例を示すブロック図である。
【図2】映像表示部と視差発生部との一構成例を示す外観斜視図である。
【図3】映像表示部と視差発生部との一構成例を示す側面図である。
【図4】映像表示部の一構成例を示す平面図である。
【図5】視差発生部(液晶バリア)の一構成例を示す平面図である。
【図6】視差発生部(液晶バリア)の一構成例を示す側面図である。
【図7】液晶バリアの開口部のグループ分けについての説明図である。
【図8】(A)は開口部Aのみを透過状態にした場合を示す説明図であり、(B)は開口部Bのみを透過状態にした場合を示す説明図である。
【図9】立体表示の原理を示す説明図である
【図10】開口部の間隔と画素の間隔との関係を示す説明図である。
【図11】開口部Aのみを透過状態にした場合の開口部Aと視点映像との関係を示す説明図である。
【図12】開口部Bのみを透過状態にした場合の開口部Bと視点映像との関係を示す説明図である。
【図13】開口部Aが透過状態の場合の光線の集光状態と開口部Bが透過状態の場合の光線の集光状態とを示す説明図である。
【図14】モアレの発生についての説明図である。
【図15】最適視距離よりも遠い観察位置P2において観察される視点映像の状態を示す説明図である。
【図16】開口部Aのみを透過状態にした場合の集光状態を示す説明図である。
【図17】開口部Aのみを透過状態にした場合に、最適視距離よりも遠い観察位置P2において観察される視点映像の状態を示す説明図である。
【図18】開口部Bのみを透過状態にした場合の集光状態を示す説明図である。
【図19】開口部Bのみを透過状態にした場合に、最適視距離よりも遠い観察位置P2において観察される視点映像の状態を示す説明図である。
【図20】(A)は開口部Aのみを透過状態にした場合に、最適視距離よりも遠い観察位置P2において観察される視点映像の状態を示す説明図である。(B)は開口部Bのみを透過状態にした場合に、観察位置P2において観察される視点映像の状態を示す説明図である。(C)は(A)の視点映像の状態と(B)の視点映像の状態とを重ね合わせた状態を示す説明図である。
【図21】(A)は開口部Aのみを透過状態にした場合に、最適視距離よりも遠い観察位置P2において観察される輝度分布を示す説明図である。(B)は開口部Bのみを透過状態にした場合に、観察位置P2において観察される輝度分布を示す説明図である。(C)は(A)の輝度分布と(B)の輝度分布とを重ね合わせた状態を示す説明図である。
【図22】開口部をA〜Dの4グループに分けた変形例において、開口部Aのみを透過状態にした場合の開口部Aと視点映像との関係を示す説明図である。
【図23】開口部をA〜Dの4グループに分けた変形例において、開口部Bのみを透過状態にした場合の開口部Bと視点映像との関係を示す説明図である。
【図24】開口部をA〜Dの4グループに分けた変形例において、開口部Cのみを透過状態にした場合の開口部Cと視点映像との関係を示す説明図である。
【図25】開口部をA〜Dの4グループに分けた変形例において、開口部Dのみを透過状態にした場合の開口部Dと視点映像との関係を示す説明図である。
【図26】(A)は開口部Aのみを透過状態にした場合に、最適視距離よりも遠い観察位置P2において観察される視点映像の状態を示す説明図である。(B)は開口部Bのみを透過状態にした場合に、観察位置P2において観察される視点映像の状態を示す説明図である。(C)は開口部Cのみを透過状態にした場合に、観察位置P2において観察される視点映像の状態を示す説明図である。(D)は開口部Dのみを透過状態にした場合に、観察位置P2において観察される視点映像の状態を示す説明図である。(E)は(A)〜(D)の各視点映像の状態を重ね合わせた状態を示す説明図である。
【図27】(A)は開口部Aのみを透過状態にした場合に、最適視距離よりも遠い観察位置P2において観察される輝度分布を示す説明図である。(B)は開口部Bのみを透過状態にした場合に、観察位置P2において観察される輝度分布を示す説明図である。(C)は開口部Cのみを透過状態にした場合に、観察位置P2において観察される輝度分布を示す説明図である。(D)は開口部Dのみを透過状態にした場合に、観察位置P2において観察される輝度分布を示す説明図である。(E)は(A)〜(D)の各輝度分布を重ね合わせた状態を示す説明図である。
【図28】視差発生部をレンチキュラレンズにした場合における第1の状態を示す説明図である。
【図29】視差発生部をレンチキュラレンズにした場合における第2の状態を示す説明図である。
【図30】バックライトと映像表示部との間に視差発生部(液晶バリア)を配置した実施の形態を示す説明図である。
【図31】インテグラルイメージング方式に適用した実施の形態を示す説明図である。
【図32】電子機器の一例を示す外観図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本開示の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0015】
<第1の実施の形態>
[表示装置の全体構成]
図1は、本開示の第1の実施の形態に係る表示装置の一構成例を示している。この表示装置は、映像表示部1と、視差発生部2と、映像表示部駆動回路3と、視差発生部駆動回路4とを備えている。
【0016】
映像表示部駆動回路3には視差映像信号S1が装置の外部より入力されるようになっている。視差映像信号S1は、再生しようとする立体映像において、立体情報の奥行に従って視差を変えた映像信号である。後述する視点数と同等の視差映像信号S1が入力される。映像表示部駆動回路3は、視差映像信号S1の配列を並び替え、映像信号S2を作成するようになっている。この映像信号S2を映像表示部1に入力する。また映像表示部駆動回路3は、出力した映像信号S2に対応する同期信号S3を視差発生部駆動回路4に送る。視差発生部駆動回路4は、この同期信号S3に従って、映像表示部1が表示する映像信号S2に対応した、視差発生部2の駆動を行うべく視差発生信号S4を視差発生部2に送る。この視差発生信号S4に従い、視差発生部2は動作を行うようになっている。
【0017】
[映像表示部1および視差発生部2の構成例]
図2、図3は映像表示部1および視差発生部2の構成例を示している。映像表示部1は、2次元平面上に映像を表示するものである。図2、図3の構成例では、映像表示部1を液晶パネル11とバックライト12との組み合わせで構成した例を示しているが、この他にもエレクトロルミネッセンスパネルなどで構成しても良い。視差発生部2は、映像表示部1と観察者との間に配置され、映像表示部1から出射された光が入射するようになっている。視差発生部21は、液晶材料によって光の透過率を制御可能な視差バリア(液晶バリア20)で構成されている。
【0018】
映像表示部1は、図4に示したように2次元平面上に配列された複数の画素10を有している。各画素10はそれぞれ独立に輝度を変えることができ、任意に映像を表示することができるようになっている。各画素10には、映像表示部駆動回路3(図1)からの映像信号S2に従って映像が表示される。水平方向の画素の間隔(画素水平間隔)をppとする。
【0019】
図5、図6に視差発生部2としての液晶バリア20の具体的な構成例を示す。液晶バリア20は、図5に示したように、垂直方向に延在する複数のスリット状の開口部21を有している。複数の開口部21の間は光を透過しない遮蔽部22となっている。開口部21は、映像表示部1の各画素10からの各視点映像の光を選択して出射する出射角度選択部としての機能を有している。開口部21は、画素10と開口部21との位置関係に従い、観察者に向かう各視点映像の出射角度を選択する。詳細は後述する。
【0020】
液晶バリア20は、図6に示したように、液晶材料23と、第1の透明電極24と、第1の透明平行板25と、第1の偏光板26と、第2の透明電極27と、第2の透明平行板28と、第2の偏光板29とを有している。
【0021】
液晶材料23は、第1の透明平行板25と第2の透明平行板28との間に封入されている。第1の透明平行板25の液晶材料23側の表面には、ITO(Indium Tin Oxide)などで構成される第1の透明電極24が設置されている。同様に、第2の透明平行板28の液晶材料23側の表面には、第2の透明電極27が設置されている。液晶バリア20では、第1の透明電極24と第2の透明電極27とに印加される電圧に応じて、液晶材料23の配向が変化する。映像表示部1からの光が第1の偏光板26を通過することで、直線偏光となる。液晶材料23を透過する際に液晶材料23の配向により、偏光の向きを制御できる。そして、第2の偏光板29を通ることで、強度変調ができる。例えば、電圧を印加する場合に光透過となり、電圧を印加しない場合に光遮断となる、いわゆるノーマリーブラックで動作する。また、電圧を印加する場合に光遮断となり、電圧を印加しない場合に光透過となる、いわゆるノーマリーホワイトにすることも可能である。なお、第2の偏光板29が吸収型偏光板の場合は、遮断光は第2の偏光板29で吸収される。第2の偏光板29が反射型偏光板の場合は、映像表示部1に戻る。
【0022】
[表示装置の動作]
この表示装置では、映像表示部1において、n個(nは整数)の視点映像を各画素10に割り当てて表示する。映像表示部駆動回路3は、各視点映像と各画素10との対応関係を周期的にm個(mは整数)の状態に変化させる。複数の出射角度選択部(開口部21)では、各画素10からの各視点映像の出射角度を選択する。視差発生部駆動回路4は、映像表示部駆動回路3に同期して、複数の出射角度選択部の位置を周期的にm個の状態に変化させる。また、後述する具体例のように、パラメータn,mに関して、0<m<n、かつ、nがmの非整数倍となるように設定する。
【0023】
視差発生部駆動回路4は、同一視点の視点映像の出射角度が、m個の状態のそれぞれにおいて異なる角度となるように複数の開口部21の位置を変化させる。視差発生部駆動回路4はまた、同一視点の視点映像に対応する各画素10と各開口部21との位置関係が、m個の状態のそれぞれにおいて異なる状態となるように複数の開口部21の位置を変化させる。
【0024】
図7、図8を参照して、液晶バリア20の複数の開口部21の動作例について説明する。各開口部21の間隔は同一であり、ここではbpとする。また、スリット状の開口部21は、1本ごとにA,Bの2つのグループに分けることができる。このグループを開口部Aのグループ(開口部グループA)と開口部Bのグループ(開口部グループB)とする。
【0025】
図7では、左から奇数本目の開口部21が開口部グループAに属し、左から偶数本目の開口部21が開口部グループBに属している。開口部グループAまたは開口部グループBは、それぞれのグループに属する開口部21を全て同一の光スイッチング動作させることができる。すなわち、開口部グループAだけを開口状態(透過状態)にさせると共に、開口部グループBを光遮断状態(非透過状態)にしたり、逆に、開口部グループBだけを開口状態(透過状態)にさせると共に、開口部グループAを光遮断状態(非透過状態)にすることができる。
【0026】
図8(A)は開口部グループAだけを透過状態にした場合、図8(B)は開口部グループBだけを透過状態にした場合を示している。開口部21を2つのグループにしているため、同一のグループに属する隣り合う開口部21の間隔は、2×bpとなる。図7、図8では、開口部21のグループを2としている(m=2)が、後述する変形例(図22〜図25)のように、m=3や4などのさらに多いグループに設定することも可能である。
【0027】
次に、図9を参照して立体表示を実現する原理を説明する。図9は図2の一断面に相当する。開口部グループAが透過状態となっており、開口部グループBが光遮断状態となっている。映像表示部1の各画素10から出射された光は液晶バリア20の開口部グループAにより、出射角度が選択される。図9では、7個の画素おきに対応して、開口部グループAが配置されている。各画素10に振られた1ないし7の番号は、立体視における視点番号を示している。同一の視点番号の画素10に、対応する視点映像を表示する。液晶バリア20における透過状態の開口部21により視点映像の出射角度が選択され、観察者の左右の目に異なる視点映像が入射する。これにより立体表示が可能となる。
【0028】
図10では、液晶バリア20の開口部グループの個数mと、開口部グループ同士の間隔bpと、視点数n,映像表示部1の画素10の間隔ppとの関係を示している。液晶バリア20よりL2の距離(最適視距離)では、映像表示部1の全面より同一の視点映像が集光位置P1に集まる。図10の例では、視点番号4の視点映像の集光状態を示している。観察者が液晶バリア20よりL2の距離にいる場合、観察者の各々の目には、全面に亘って1つの視点映像が観察できる。両目には異なる視点映像が入射するようになっているので立体表示が可能である。
【0029】
同一の開口部グループでは同一の視点映像が、最適視距離L2において1点に集まるようにする。このため、視点数nに映像表示部1の画素間隔ppを乗じたn・ppの値は、同一の開口部グループの間隔m・bpとは異なり、n・ppがm・bpよりも大きい値となる。最適視距離L2に液晶バリア20と映像表示部1の距離を足したものをL1とすると、
L2/L1=(m・bp)/(n・pp)となる。
【0030】
この表示装置では、視点数nが、開口部グループ数のmの非整数倍と成ることを特徴としている。これまでの説明ではn=7,m=2としているので、この関係を満たす。図11に、開口部グループAが透過状態、開口部グループBが遮断状態となっている場合の開口部Aと視点映像との関係を示す。図12には、開口部グループBが透過状態、開口部グループAが遮断状態となっている場合の開口部Bと視点映像との関係を示す。nがmの整数倍でないということは、開口部グループAが透過状態の場合と、開口部グループBが透過状態の場合とで、画素10と透過状態の開口部21との位置関係がずれことになる。図11では、透過状態である開口部グループAは、視点番号4の画素のほぼ垂直直上に位置している。しかし、図12では、透過状態である開口部グループBは、視点番号4の画素の垂直直上に設置していない。このため、開口部グループAが透過状態の場合と開口部グループBが透過状態の場合とで、同一視点の視点映像は出射角度がずれることになる。
【0031】
図13は、開口部グループAが透過状態である場合と開口部グループBが透過状態である場合とのそれぞれについて、視点番号4の視点映像の光線が最適視距離L2の位置に集光される状態を示している。液晶バリア20から距離L2の位置において、同一視点の映像の光線が集光する位置が、各開口部グループ間でずれる。開口部グループAが透過状態である場合には位置Paに集光し、開口部グループBが透過状態である場合には位置Pbに集光する。なお、最適視距離L2において、位置Pa,Pbのずれ量は立体表示の観察には問題がない程度のずれ量となっている。
【0032】
[モアレが解消される原理]
図11〜図13に示したような表示動作を行うことで、モアレを解消することができる。以下、この原理を説明する。従来では、最適視距離L2以外の距離で観察した場合に、モアレは観察されやすい。例えば図14に示したように観察位置P2が最適視距離L2よりも遠い位置にある場合、観察者の片目には、例えば図15に示したように複数の視点映像が部分的に観察されることになる。視点映像の境目では、複数の視点映像が混ざることになる。例えば視点映像2と3の境目付近では視点映像2も視点映像3の重なった映像となり、輝度が一定とならない。このため、従来技術ではモアレが発生し、輝度むらのために、画質低下を招いている。
【0033】
本実施の形態では、複数の開口部グループを高速で切り替えることでこのモアレを解消する。図16は開口部グループAのみを透過状態にした場合の集光状態を示し、図17は開口部グループAのみを透過状態にした場合に、最適視距離L2よりも遠い観察位置P2において観察される視点映像の状態を示している。図18は開口部グループBのみを透過状態にした場合の集光状態を示し、図19は開口部グループBのみを透過状態にした場合に、最適視距離L2よりも遠い観察位置P2において観察される視点映像の状態を示している。
【0034】
上述の図11〜図13にも示したように透過状態となる開口部グループによって、同じ視点映像の光線の出射角度がずれる。このために、観察者の片目が観察する画面の映像は、時間的に、視点映像の位置が変化することになる。開口部グループAが透過状態となる場合は、図17に示すように右から視点映像6,7,1,2,・・・と並ぶが、開口部グループBが透過状態となる場合は、図19に示すように視点映像7,1,2,3,・・・と並ぶ。これを例えば1/120秒間隔で切り替えることにより、観察者は積分した映像を観察することになる。図20(C)に、観察者の片目が観察する積分された映像を示す。なお、図20(A)は図17と同様、開口部グループAのみを透過状態にした場合に、最適視距離L2よりも遠い観察位置P2において観察される視点映像の状態を示す。図20(B)は開口部グループBのみを透過状態にした場合に、観察位置P2において観察される視点映像の状態を示す。図20(C)は図20(A)の視点映像の状態と図20(B)の視点映像の状態とを重ね合わせた状態を示す。
【0035】
図20(C)に示したように映像を積分して観察することにより、開口部Aのみを透過状態にした場合の輝度むらと、開口部Bのみを透過状態にした場合の輝度むらとについても積分されることになる。この輝度むらが積分される様子を図21(A)〜(C)に示す。なお、図21(A)は開口部グループAのみを透過状態にした場合に、最適視距離L2よりも遠い観察位置P2において観察される輝度分布を示す。図21(B)は開口部グループBのみを透過状態にした場合に観察位置P2において観察される輝度分布を示す。図21(C)は図21(A)の輝度分布と図21(B)の輝度分布とを重ね合わせた状態を示す。透過状態となる開口部21の位置が変化することで、視点映像の境目がずれることにより、輝度むらの位置が変わるが、この2つが高速に積分されることで、輝度のむらが低減される。
【0036】
以上のようにして、輝度むらであるモアレを改善し、画質改善を行うことができる。上記説明では透過状態となる開口部グループを高速に切り替えるものとしていたが、この速度は、人間が感じる目の応答速度よりも速く、例えば1/25秒以上の速さで切り替えれば、フリッカとして感じることは少ない。
【0037】
[効果]
以上説明したように、本実施の形態に係る表示装置によれば、n個の各視点映像と各画素10との対応関係をm個の状態に周期的に変化させると共に、それに同期して、複数の選択部(開口部21)の位置をm個の状態に周期的に変化させ、n,mに関して所定の条件を満たすようにしたので、モアレの少ない高画質な映像表示を実現できる。特に、色モアレだけでなく、輝度の明暗であるモアレも解消することができる。
【0038】
[第1の実施の形態の変形例]
上記実施の形態では、n=7,m=2の場合を例に説明したが、0<m<n、かつ、nがmの非整数倍である条件を満たすものであれば、他の値であっても良い。
【0039】
本変形例では、n=7,m=4の場合について示す。m=4なので、液晶バリア20の複数の開口部21をA,B,C,Dの4つのグループに分けて動作させる。図22〜図24に、各グループごとの開口部21と視点映像との関係を示す。図22は開口部グループAのみを透過状態にした場合、図23は開口部グループBのみを透過状態にした場合、図24は開口部グループCのみを透過状態にした場合、図25は開口部グループDのみを透過状態にした場合を示す。この場合においても、各開口部グループ間で、画素10と透過状態の開口部21との位置関係がずれことになる。また、各開口部グループ間で、同一視点の視点映像は出射角度がずれることになる。これにより、モアレが改善される。
【0040】
図26(A)は、開口部グループAのみを透過状態にした場合(図22)に、最適視距離L2(図14)よりも遠い観察位置P2において観察される視点映像の状態を示している。図26(B)は開口部グループBのみを透過状態にした場合(図23)に観察位置P2において観察される視点映像の状態を示し、図26(C)は開口部グループCのみを透過状態にした場合(図24)に観察位置P2において観察される視点映像の状態を示し、図26(D)は開口部グループDのみを透過状態にした場合(図25)に観察位置P2において観察される視点映像の状態を示す。図26(E)は図26(A)〜(D)の各視点映像の状態を重ね合わせた状態を示す。
【0041】
図26(A)〜(D)に示したように、各開口部グループ間で、観察者の片目が観察する画面の映像は異なり、それらを図26(E)に示したように積分して観察することにより、各開口部グループ間での輝度むらが積分され、結果的に輝度むらが改善される。この輝度むらが積分される様子を図27(A)〜(E)に示す。なお、図27(A)は開口部グループAのみを透過状態にした場合に、最適視距離L2よりも遠い観察位置P2において観察される輝度分布を示す。図27(B)は開口部グループBのみを透過状態にした場合の同様の輝度分布を示し、図27(C)は開口部グループCのみを透過状態にした場合の同様の輝度分布を示し、図27(D)は開口部グループDのみを透過状態にした場合の同様の輝度分布を示す。図27(E)は図27(A)〜(D)の各輝度分布を重ね合わせた状態を示す。図27(E)から分かるように、各開口部グループ間での輝度むらが積分され、結果的に輝度むらが改善される。
【0042】
なお、開口部21の変化の順番は、A(図22)→B(図23)→C(図24)→D(図24)→A(図22)…のように、隣接するグループを順次、透過状態にする場合に限らず、例えばA→C→B→D→A…のように、あるグループを透過状態にした後、次に隣接しない他のグループを透過状態にするような順番で変化させても良い。
【0043】
本変形例によれば、mを増やすことで、輝度のむらをより細かくずらして足し合わせることになるため、輝度むらをさらに改善できる。各開口部グループ間で観察される映像のずれ量も少ないので画面のフリッカ感も抑えられる。
【0044】
<第2の実施の形態>
次に、本開示の第2の実施の形態に係る表示装置について説明する。なお、上記第1の実施の形態に係る表示装置と実質的に同一の構成部分には同一の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0045】
上記第1の実施の形態では、視差発生部2として視差バリア(液晶バリア20)を用いた例を示したが、図28、図29に示したように、視差発生部2としてレンチキュラレンズ30を用いるようにしても良い。レンチキュラレンズ30は、円筒状の複数の分割レンズ31を有する。分割レンズ31が、映像表示部1の各画素10からの各視点映像の光を選択して出射する出射角度選択部としての機能を有している。
【0046】
図28、図29では、n=7,m=2とした例を示している。m=2としているので、分割レンズ31の位置は、図28、図29に示したように時間的に2つの位置を持つ。分割レンズ31の位置は、例えばピエゾ素子などで物理的に高速に動かすことができる。また、液晶材料を用いて液晶の屈折率異方性を利用してレンズを形成する液晶レンズであれば、透明電極の配置と印加電界との関係によって、時間的に分割レンズ31の位置を変化することもできる。また、液体レンズを用いても良い。
【0047】
図28、図29の例では、図10に対応するL1,L2を用いると、
L2/L1=(m・bp)/(n・pp)となる。m・bpは、図28、図29のそれぞれの状態における分割レンズ31の間隔に相当する。
【0048】
本実施の形態によれば、視差発生部2としてレンチキュラレンズ30を用いるようにしたので、視差バリアを用いた場合よりも映像表示を明るくすることができる利点がある。
【0049】
<第3の実施の形態>
次に、本開示の第3の実施の形態に係る表示装置について説明する。なお、上記第1または第2の実施の形態に係る表示装置と実質的に同一の構成部分には同一の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0050】
上記第1の実施の形態では、視差発生部2(液晶バリア20)を、映像表示部1(液晶パネル11)と観察者との間に配置するようにしたが、図30に示したように、液晶パネル11を、液晶バリア20と観察者との間に配置するようにしても良い。この場合、液晶バリア20は、液晶パネル11とバックライト12との間に配置する。
【0051】
この場合は、L2/L1=(n・pp)/(m・bp)の関係となる。この場合でもnはmの非整数倍となる。n・ppはm・bpよりも小さい値となる。
【0052】
<第4の実施の形態>
次に、本開示の第4の実施の形態に係る表示装置について説明する。なお、上記第1ないし第3の実施の形態に係る表示装置と実質的に同一の構成部分には同一の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0053】
本開示による技術は、図31に示したように、インテグラルイメージング方式にも適用することが可能である。この場合は、
(m・bp)=(n・pp)
となる。この場合においても、パラメータn,mに関して、0<m<n、かつ、nがmの非整数倍となるように設定する。
【0054】
<その他の実施の形態>
本開示による技術は、上記各実施の形態の説明に限定されず種々の変形実施が可能である。
例えば、上記第1、第3、第4の実施の形態において、液晶バリア20の開口部21を、垂直方向でなく斜め方向に並べた、いわゆる斜めバリア方式で構成しても良い。また、液晶バリア20の開口部21を、ステップバリア方式で構成しても良い。また、上記第2の実施の形態において、レンチキュラレンズ30の各分割レンズ31を斜め方向に傾斜配置した斜めレンチキュラ方式で構成しても良い。
【0055】
また、図1の回路において、視差映像信号S1として左右(LR)の映像信号を映像表示部駆動回路3に入力し、その視差情報から映像表示部駆動回路3においてn個の多視点映像を生成するようにしても良い。
【0056】
また、上記各実施の形態に係る表示装置はいずれも、表示機能を有する種々の電子機器に適用可能である。図32は、そのような電子機器の一例としてテレビジョン装置の外観構成を表している。このテレビジョン装置は、フロントパネル210およびフィルターガラス220を含む映像表示画面部200を備えている。テレビジョン装置の他にも、種々のデジタルカメラ、カムコーダ、携帯電話、またはノート型パーソナルコンピュータ等に適用可能である。
【0057】
また例えば、本技術は以下のような構成を取ることができる。
(1)
複数の画素を有し、n個(nは整数)の視点映像を前記各画素に割り当てて表示する表示部と、
前記各視点映像と前記各画素との対応関係を周期的にm個(mは整数)の状態に変化させる表示部駆動回路と、
前記各画素からの前記各視点映像の出射角度を選択する複数の選択部と、
前記表示部駆動回路に同期して、前記複数の選択部の位置を周期的にm個の状態に変化させる選択部駆動回路と
を備え、
0<m<n、かつ、nはmの非整数倍である
表示装置。
(2)
前記選択部駆動回路は、
同一視点の前記視点映像の出射角度が、前記m個の状態のそれぞれにおいて異なる角度となるように前記複数の選択部の位置を変化させる
上記(1)に記載の表示装置。
(3)
前記選択部駆動回路は、
同一視点の前記視点映像に対応する前記各画素と前記各選択部との位置関係が、前記m個の状態のそれぞれにおいて異なる状態となるように前記複数の選択部の位置を変化させる
上記(1)または(2)に記載の表示装置。
(4)
前記m個の状態のそれぞれにおける隣り合う前記複数の選択部同士の間隔をm・bp、
前記複数の画素同士の間隔をppとしたとき、
n・ppの値とm・bpの値とが異なる
上記(1)ないし(3)のいずれか1つに記載の表示装置。
(5)
前記m個の状態のそれぞれにおける隣り合う前記複数の選択部同士の間隔をm・bp、
前記複数の画素同士の間隔をppとしたとき、
n・pp=m・bpの関係を満たす
上記(1)ないし(3)のいずれか1つに記載の表示装置。
(6)
複数の開口部を有する視差バリアをさらに備え、
前記複数の選択部は、前記複数の開口部である
上記(1)ないし(5)のいずれか1つに記載の表示装置。
(7)
複数の分割レンズを有するレンチキュラレンズをさらに備え、
前記複数の選択部は、前記複数の分割レンズである
上記(1)ないし(5)のいずれか1つに記載の表示装置。
(8)
前記複数の選択部は、前記表示部と観察者との間に配置される
上記(1)ないし(7)のいずれか1つに記載の表示装置。
(9)
前記表示部は、前記複数の選択部と観察者との間に配置される
上記(1)ないし(7)のいずれか1つに記載の表示装置。
(10)
表示装置を備え、
前記表示装置は、
複数の画素を有し、n個(nは整数)の視点映像を前記各画素に割り当てて表示する表示部と、
前記各視点映像と前記各画素との対応関係を周期的にm個(mは整数)の状態に変化させる表示部駆動回路と、
前記各画素からの前記各視点映像の出射角度を選択する複数の選択部と、
前記表示部駆動回路に同期して、前記複数の選択部の位置を周期的にm個の状態に変化させる選択部駆動回路と
を有し、
0<m<n、かつ、nはmの非整数倍
の条件を満たす
電子機器。
【符号の説明】
【0058】
1…映像表示部、2…視差発生部、3…映像表示部駆動回路、4…視差発生部駆動回路、10…画素、11…液晶パネル、12…バックライト、20…液晶バリア、21…開口部(出射角度選択部)、22…遮蔽部、23…液晶材料、24…第1の透明電極、25…第1の透明平行板、26…第1の偏光板、27…第2の透明電極、28…第2の透明平行板、29…第2の偏光板、30…レンチキュラレンズ、31…分割レンズ、200…映像表示画面部、210…フロントパネル、220…フィルターガラス、P1…集光位置、Pa…集光位置、Pb…集光位置、P2…観察位置、S1…視差映像信号、S2…映像信号、S3…同期信号、S4…視差発生信号。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の画素を有し、n個(nは整数)の視点映像を前記各画素に割り当てて表示する表示部と、
前記各視点映像と前記各画素との対応関係を周期的にm個(mは整数)の状態に変化させる表示部駆動回路と、
前記各画素からの前記各視点映像の出射角度を選択する複数の選択部と、
前記表示部駆動回路に同期して、前記複数の選択部の位置を周期的にm個の状態に変化させる選択部駆動回路と
を備え、
0<m<n、かつ、nはmの非整数倍
の条件を満たす
表示装置。
【請求項2】
前記選択部駆動回路は、
同一視点の前記視点映像の出射角度が、前記m個の状態のそれぞれにおいて異なる角度となるように前記複数の選択部の位置を変化させる
請求項1に記載の表示装置。
【請求項3】
前記選択部駆動回路は、
同一視点の前記視点映像に対応する前記各画素と前記各選択部との位置関係が、前記m個の状態のそれぞれにおいて異なる状態となるように前記複数の選択部の位置を変化させる
請求項1に記載の表示装置。
【請求項4】
前記m個の状態のそれぞれにおける隣り合う前記複数の選択部同士の間隔をm・bp、
前記複数の画素同士の間隔をppとしたとき、
n・ppの値とm・bpの値とが異なる
請求項1に記載の表示装置。
【請求項5】
前記m個の状態のそれぞれにおける隣り合う前記複数の選択部同士の間隔をm・bp、
前記複数の画素同士の間隔をppとしたとき、
n・pp=m・bpの関係を満たす
請求項1に記載の表示装置。
【請求項6】
複数の開口部を有する視差バリアをさらに備え、
前記複数の選択部は、前記複数の開口部である
請求項1に記載の表示装置。
【請求項7】
複数の分割レンズを有するレンチキュラレンズをさらに備え、
前記複数の選択部は、前記複数の分割レンズである
請求項1に記載の表示装置。
【請求項8】
前記複数の選択部は、前記表示部と観察者との間に配置される
請求項1に記載の表示装置。
【請求項9】
前記表示部は、前記複数の選択部と観察者との間に配置される
請求項1に記載の表示装置。
【請求項10】
表示装置を備え、
前記表示装置は、
複数の画素を有し、n個(nは整数)の視点映像を前記各画素に割り当てて表示する表示部と、
前記各視点映像と前記各画素との対応関係を周期的にm個(mは整数)の状態に変化させる表示部駆動回路と、
前記各画素からの前記各視点映像の出射角度を選択する複数の選択部と、
前記表示部駆動回路に同期して、前記複数の選択部の位置を周期的にm個の状態に変化させる選択部駆動回路と
を有し、
0<m<n、かつ、nはmの非整数倍
の条件を満たす
電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【公開番号】特開2013−50538(P2013−50538A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−187457(P2011−187457)
【出願日】平成23年8月30日(2011.8.30)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】