表示装置の製造方法
【課題】 表示ムラおよび画質の低下が抑制されて、歩留まりの向上が図られる表示装置の製造方法を提供する。
【解決手段】 透明ガラス基板からなる所定の基板1上に、ゲート電極、ゲート絶縁膜および半導体薄膜からなるボトムゲート型のTFTが形成される。そのTFTを覆うように基板1上に層間絶縁膜および絶縁膜が形成される。次に、スクライブ切断等によって基板1が所定のサイズの複数の分割基板1aに分割される。その後、切断により発生した異物を取除く洗浄が施される。次に、絶縁膜上に画素電極、有機EL層および共通電極が順次形成されることによって有機EL素子が形成されて、表示装置が完成する。
【解決手段】 透明ガラス基板からなる所定の基板1上に、ゲート電極、ゲート絶縁膜および半導体薄膜からなるボトムゲート型のTFTが形成される。そのTFTを覆うように基板1上に層間絶縁膜および絶縁膜が形成される。次に、スクライブ切断等によって基板1が所定のサイズの複数の分割基板1aに分割される。その後、切断により発生した異物を取除く洗浄が施される。次に、絶縁膜上に画素電極、有機EL層および共通電極が順次形成されることによって有機EL素子が形成されて、表示装置が完成する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は表示装置の製造方法に関し、特に、有機EL素子を用いた表示装置の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
表示装置の一つに、表示素子として有機EL(Electro Luminescence)素子を適用した表示装置がある。有機EL素子は、有機材料のエレクトロルミネッセンスを利用した素子であり、陽極と陰極との間に、有機正孔輸送層や有機発光層を積層させた有機層が形成されている。この有機EL素子は、低電圧直流駆動による高輝度発光が可能な発光素子として注目されている。その有機EL素子を用いた表示装置の一形態に、アクティブマトリクス型の表示装置がある。
【0003】
アクティブマトリクス型の表示装置では、各画素に対して有機EL素子を駆動するための薄膜トランジスタ(Thin Film Transistor:以下「TFT」と記す。)と配線が所定の基板上に設けられている。そのTFTと配線を覆うように平坦化絶縁層が形成されている。その平坦化絶縁層上に有機EL素子が形成されている。有機EL素子と配線とは、平坦化絶縁層に形成されたスルーホールを介して電気的に接続されている。平坦化絶縁層としては、たとえば,樹脂材料をスピンコート法によって塗布したものが用いられている。有機EL素子における最下層は平坦化絶縁層上に形成した画素電極である。その画素電極とTFTのソース電極またはドレイン電極とがスルーホールを介して電気的に接続されている。
【0004】
画素電極上には有機EL層として単層または多層の有機薄膜が形成され、その有機薄膜の上に共通電極が形成されている。画素電極と共通電極とによって挟み込まれた有機EL層に対して、画素電極からは正孔が注入され、共通電極からは電子が注入される。注入された正孔と電子は所定の発光ゾーンにまで輸送されて再結合し、発光に至る。なお、表示装置としては、共通電極上に、さらにパッシベーション膜、封止用ガラス板、偏光板等が形成される場合がある。
【0005】
有機EL素子をなす有機薄膜は、たとえばシャドーマスクを用いた蒸着法および印刷法によって形成される。このため、蒸着装置および印刷装置によっては、蒸着および印刷をすることができる基板のサイズが制約を受けることがある。基板の具体的なサイズは、パネルの精細度設計値、すなわち、蒸着および印刷によって形成する画素の大きさに応じて変化し、画素が微細になればなるほど、適用できる基板のサイズは小さくなる。こうした制約は、高精細パネルを比較的大面積の基板上に形成させようとする場合に、アライメント精度やパターン寸法精度の点で歩留まり低下の要因となる。
【0006】
このような問題点を解消する目的で、特許文献1では、次のような手法が提案されている。すなわち、比較的大面積の基板(マザー基板)に有機EL素子の第1電極(画素電極)を形成した後で、そのマザー基板が複数の比較的小面積の基板に分割され、その分割された基板の第1電極上に有機EL層が形成される。そして、その有機EL層の上に第2電極(共通電極)等が形成されて表示装置として完成する。なお、有機EL素子を適用した表示装置とは態様の異なる液晶を利用した液晶パネルの製造方法が、特許文献2に提案されている。
【特許文献1】特開2003−7463号公報
【特許文献2】特開2000−267135号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来の表示装置の製造方法では、次のような問題点があった。画素電極である第1電極は有機EL素子において光学的要素となるために、その膜厚の均一性が極めて重要になる。その第1電極は、生産性を確保する観点から比較的大面積のマザー基板上に形成されていた。第1電極をマザー基板に形成する場合には、第1電極となる層の厚みがマザー基板面内においてばらつきやすくなる。マザー基板面内において第1電極となる層の厚みがばらつくと、表示装置として輝度や色度等が表示エリア内においてばらついてしまい、表示ムラの要因となる。
【0008】
また、マザー基板を分割する際に発生する異物が第1電極上に付着しやすく、これが短絡の原因となったり、あるいは、ダーススポット等の欠陥を招くことになり、表示装置としての画質の低下と歩留まりの低下を引き起こす要因となった。
【0009】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであり、その目的は、表示ムラおよび画質の低下が抑制されて、歩留まりの向上が図られる表示装置の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る表示装置の製造方法は、表示素子とその表示素子を発光させるための駆動素子とを有する表示装置の製造方法であって、以下の工程を備えている。第1のサイズを有する基板上に複数の駆動素子を形成する。その複数の駆動素子を覆うように、基板上に第1絶縁膜を形成する。その第1絶縁膜が形成された基板を、第1のサイズよりも小さい第2のサイズに分割して複数の分割基板を形成する。その分割基板の第1絶縁膜上に、画素電極、有機EL層および共通電極を含み、駆動素子と電気的に接続される表示素子を形成する。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る表示装置の製造方法によれば、第1のサイズを有する基板に表示素子を駆動するための駆動素子が形成された後に、その基板が切断されてサイズのより小さい第2のサイズの基板とされる。そして、その第2のサイズの基板に対して表示素子が形成されることになる。これにより、従来の場合と比較すると、特に、表示素子を形成する際に、第2のサイズの基板面内における表示素子となる層の膜厚の均一性が大幅に向上する。その結果、表示素子における輝度や色度等の光学特性をより均一にすることができる。また、第1のサイズの基板を分割した後に表示素子が形成されることで、第1のサイズの基板を切断する際に発生する異物が飛散して表示素子の上に付着することもなく、表示素子の表面を清浄に保つことができて、ショートモード等を抑制して表示装置の歩留まりを向上することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
実施の形態1
本発明の実施の形態1に係る表示装置の製造方法を説明するに際して、まず、その表示装置の構造について説明する。図1に示すように、たとえばガラスからなる基板1の主表面上にゲート電極2が形成されている。そのゲート電極2を覆うように基板1上にゲート絶縁膜3が形成されている。そのゲート絶縁膜3の所定の領域に、ソース領域、ドレイン領域およびチャネル領域となる所定の半導体薄膜4が形成されている。その半導体薄膜4、ゲート絶縁膜3およびゲート電極2によりTFT21が構成される。TFT21は基板1の主表面においてマトリクス状に複数形成されている。なお、このTFT21は、ゲート電極2上に半導体薄膜4が形成されたいわゆるボトムゲート型のTFTであるが、TFTとしては、半導体薄膜上にゲート電極が形成されたトップゲート型のTFTであってもよい。
【0013】
そのTFT21を覆うように、基板1上に層間絶縁膜5が形成されている。その層間絶縁膜5に、半導体薄膜4の表面を露出するコンタクトホール5a,5bが形成されている。そのコンタクトホール5a,5bを充填するように、層間絶縁膜5上にソース電極6、ドレイン電極7および配線8が形成されている。そのソース電極6、ドレイン電極7および配線8を覆うように、絶縁膜9が形成されている。その絶縁膜9上にさらに平坦化絶縁膜10が形成されている。絶縁膜9としては、たとえばSiNXあるいはSiO2などの無機材料が適用される。また、平坦化絶縁膜10としては、たとえば、ポリイミド樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、有機シリカ樹脂あるいはSOG(Spin On Glass)膜等が適用される。
【0014】
その平坦化絶縁膜10に配線8の表面を露出する開口部10a,10bが形成されている。平坦化絶縁膜10上に開口部10a,10bを介して配線8と電気的に接続される画素電極11が形成されている。その画素電極11の周縁部に素子分離膜12が形成されている。画素電極11および素子分離膜12の上に、有機EL層13が形成されている。有機EL層13として、たとえば、ホール注入層、ホール輸送層、発光層、ホールブロッキング層、電子輸送層、電子注入層等が形成される。その有機EL層13上に共通電極14が形成されている。画素電極11、有機EL層13および共通電極14によって有機EL素子23が構成されることになる。表示装置の主要部分は以上のように構成される。
【0015】
なお、共通電極14上に、外部の水分の浸入によって有機EL素子が劣化するのを防止のためのパッシベーション膜,封止ガラスおよび封止缶(いずれも図示せず)の少なくともいずれかを設けてもよい。また、発光色の制御を行なうためのカラーフィルターやコントラスト向上のための円偏光板(いずれも図示せず)等の光学要素を加えてもよい。さらに、有機EL素子をTFT21の直上ではなくTFT21の横に形成する場合、すなわち、上方から見て有機EL素子をTFT21と平面的に重ならない位置に形成する場合には、平坦化膜10を形成しなくてもよい。
【0016】
次に、上述した表示装置の製造方法の一例について説明する。まず、基板としては、後述するように、比較的サイズの大きい透明なガラスの基板(マザーガラス基板)が使用される。そのようなガラスの基板1上に、図2に示すように、ゲート電極2が形成される。そのゲート電極2を覆うようにゲート絶縁膜3が形成される。そのゲート絶縁膜3上にソース領域、ドレイン領域およびチャネル領域となる半導体薄膜4が形成される。このようにして、ゲート電極2、ゲート絶縁膜3および半導体薄膜4からなるボトムゲート型のTFT21が形成される。なお、このTFTを形成する際には、電荷を蓄積するための所定のキャパシタ(図示せず)も形成されることになる。
【0017】
次に、そのTFT21を覆うように基板1上に層間絶縁膜5が形成される。その層間絶縁膜5に所定の写真製版および加工を施すことにより、半導体薄膜4の表面を露出するコンタクトホール5a,5bが形成される。そのコンタクトホール5a,5bを充填するように層間絶縁膜5上に、たとえば膜厚約0.5μmのアルミニウム薄膜(図示せず)が形成される。そのアルミニウム薄膜に所定の写真製版および加工を施すことにより、高さ約0.5μmの所定の配線8、ソース電極6およびドレイン電極7が形成される。この配線8はTFT21と有機EL素子とを電気的に接続する。
【0018】
次に、配線8等を覆うように層間絶縁膜5上に、たとえば、プラズマCVD(Chemical Vapor Deposition)法によって窒化シリコンSiNX膜等の絶縁膜9が形成される。このとき、たとえば、反応ガスとしてモノシラン(SiH4)およびアンモニア(NH3)を用い、成膜温度280℃、成膜雰囲気内のガス圧力約130Pa、印加パワー1kWの条件のもとで成膜が行なわれる。膜厚は特に制限はないが、ここではたとえば約100nmとされる。また、配線8上に形成する層間絶縁膜5の製造方法としては、プラズマCVD法に限定されず、たとえば各種スパッタ法等も用いることができ、十分なガスバリア性を有する緻密な膜が得られる成膜方法を適用することが望ましい。
【0019】
次に、SiNX膜などの絶縁膜9上に所定の写真製版処理を施すことにより、レジストパターン(図示せず)が形成される。そのレジストパターンをマスクとして絶縁膜9にエッチングを施すことにより、配線8の表面を露出するスルーホール9a,9bが形成される。SiNX膜などの絶縁膜9のエッチングとして、たとえば四フッ化メタン(CF4)などのフッ素系ガスを用い、CF4流量約100sccm、O2流量約500sccm、Ar流量約10sccm、真空度約20Pa、RF出力約300Wのもとでドライエッチング等が施される。絶縁膜9のエッチングの後、たとえばO2系ガスを用いたアッシングにより、レジストパターンが除去される。
【0020】
ここまでの工程、すなわち、基板1上にTFT21を形成し、そのTFT21を覆う絶縁膜9にスルーホール9a,9bを形成する工程までは、基板として、たとえばサイズ370×470mmの以上の比較的大型のガラスの基板(マザーガラス基板)の状態でそれぞれの工程が順次実行される。次の工程では、図3に示すように、そのような大型の基板1を表示エリア22を含む所定のサイズの複数の分割基板1aに分割する切断処理が施される。基板1の切断方法としては、たとえばスクライブ切断、レーザ割断、レーザ溶融切断、超音波切断等を用いることができる。また、基板1にはあらかじめ切断エリアが設けられる。
【0021】
切断エリアの寸法としては特に制限はないが、切断寸法精度によって下限値が決まり、一方、基板1において分割される基板の領域の割り付けに応じて、使用可能な上限値が決まることになる。たとえば、切断エリアとして10μm〜1mmのライン幅が望ましい。ここでは、370×470mmサイズの基板1に対して、ライン幅約500μmの切断エリア16が設けられ、ダイアモンドヘッドを用いてその切断エリア16にスクライブ切断処理を施すことによって、サイズ92.5×117.5mmの複数の分割基板1aに分割される。
【0022】
このとき、TFTが形成された表面の側から切断を実施してもよいし、一方、TFTが形成された側とは反対の裏面から切断を実施してもよい。ここでは、TFTが形成された基板1の表面が直接ステージに密着するのを避けるために、基板1の表面を上方に向けて基板1の裏面の側をステージ上に吸着固定させ、表面の側から所定の切断エリアに対してスクライブ切断を実施することで、複数の分割基板1aに分割される。
【0023】
基板1を切断した後、切断により発生した異物を取除く洗浄が施される。洗浄処理として、たとえば、ディッピング、スプレイ、あるいは高圧ジェット等によるウェット洗浄、機械的に行なうブラシ洗浄、紫外線(UV)あるいはプラズマ等を用いたドライ洗浄、化学的・機械的に除去するCMP(Chemical Mechanical Polishing)等の研磨洗浄、あるいは超音波洗浄等を実施することができる。ここでは、たとえば、O2プラズマによるドライ洗浄が行なわれた後に、スプレイおよび高圧ジェットによるウェット洗浄が行なわれる。
【0024】
また、分割基板1aの端部の欠け等による異物粒子の発生を抑制するために、分割基板1aの端部に研磨処理を施してもよい。洗浄の後、たとえばエアナイフ乾燥、スピン乾燥、オーブン乾燥、ホットプレート乾燥、あるいはIPA(Iso-Propyl Alcohol)等を用いた蒸気乾燥等の乾燥処理が施される。ここでは、たとえばエアナイフ乾燥が行なわれる。
【0025】
次に、大型のガラスの基板(マザーガラス基板)1から切断された複数の分割基板1aのそれぞれに対して以下の処理が施される。図4に示すように、TFT21および配線8等による表面の凹凸を平坦化するために、絶縁膜9上に平坦化絶縁膜10が形成される。平坦化絶縁膜10として、たとえばポジ型の感光性アクリル樹脂が適用される。この場合、まず、回転数1000rpmにてスピンコート法によって分割基板上に感光性アクリル樹脂が塗布される。塗布後、直ちにクリーンオーブンにて温度約90℃、時間約10分のプリベークが行なわれる。プリベーク後における平坦化絶縁膜10の塗布膜厚は1.9μm程度とされ、この平坦化絶縁膜10によって配線8等が埋め込まれることとする。
【0026】
次に、露光装置を用いて平坦化絶縁膜10に対し所定のパターン露光が行なわれて、露光部分が現像液に対して可溶にされる。このパターン露光においては、一般的な投影露光装置を用い、たとえば露光量300mJのもとで露光処理が施される。次に、露光処理が施された平坦化絶縁膜10に対し、ディップ式現像装置を用いて現像処理を施すことにより、露光された部分が現像液に溶解されて除去される。このとき、現像液として濃度約0.3wt%のTMAH(TetraMethyl Ammonium Hydroxide)水溶液が用いられ、現像時間は約90秒程度とされる。この露光処理および現像処理によって、平坦化絶縁膜10が所定形状にパターニングされるとともに、配線8の表面を露出する開口部10a,10bが形成される。
【0027】
次に、感光性アクリル樹脂からなる平坦化絶縁膜10に対し、クリーンオーブンにて温度約220℃のもとで時間約60分のポストベークが施される。このポストベークによって、平坦化絶縁膜10の膜厚は約1.6μm程度となり、この平坦化絶縁膜10によって配線8が埋め込まれるとともに、平坦化絶縁膜10における凸部と凹部の最大高低差は0.2μm程度になる。
【0028】
なお、平坦化絶縁膜としては、スピンコート法やその他の塗布法によって形成される塗布膜であれば、上述した感光性アクリル樹脂からなるものに限定されることはなく、感光性をもたない樹脂材料膜や、SOG膜を適用してもよい。ただし、感光性をもたない材料で平坦化絶縁膜を形成する場合には、平坦化絶縁膜を形成した後に平坦化絶縁膜上に所定のレジストパターンを形成し、そのレジストパターンをマスクとして平坦化絶縁膜にエッチングを施すことで開口部10a,10bを形成することとする。また、ここでは、平坦化絶縁膜を形成する場合を例に挙げて説明しているが、有機EL素子をTFT21および配線8が形成される領域と平面的に重ならない領域に形成する場合には、平坦化絶縁膜10を形成する必要は必ずしもなく、平坦化絶縁膜を省いてもよい。
【0029】
次に、開口部10a,10bの側壁を含む平坦化絶縁膜10の表面に、画素電極となる所定の導電膜として、たとえば膜厚約100nmの透明なITO(Indium Tin Oxide)膜(図示せず)が形成される。次に、通常のリソグラフィー技術を用いて所定のレジストパターン(図示せず)が形成され、そのレジストパターンをマスクとして導電膜にエッチングを施すことにより、図5に示すように、画素電極11が形成される。ITO膜のエッチングとして、たとえば、シュウ酸からなるエッチング液を用いたウェットエッチングが施される。画素電極11は有機EL素子の陽極として作用する。
【0030】
なお、ここでは、基板1aの側から発光させる下面発光型の有機EL素子を形成する場合を例に挙げて説明するが、本発明はこれに限定されるものではなく、基板1aと反対側から光を発光させる上面発光型の有機EL素子を形成するようにしてもよい。画素電極11となる所定の導電膜としてのITO(Indium Tin Oxide)膜は、たとえばDCマグネトロンスパッタ法によって形成される。このとき、スパッタガスとしてアルゴン(Ar)と酸素(O2)との混合ガス(体積比Ar:O2=1000:5)を用い、スパッタ雰囲気内の圧力約0.3Pa、DC出力約400Wのもとで、透明のITO膜が形成される。
【0031】
ここで、画素電極11となるITO膜等の導電膜を基板上に形成する場合について考えると、特に、大型の基板(マザーガラス基板)1に導電膜を形成する場合には、膜厚が基板周縁部においてばらつきやすく、有機EL素子の光学的な特性に影響を及ぼすことになる。一方、マザーガラス基板を分割した分割基板1aに導電膜を形成する場合には、膜厚のばらつきがマザーガラス基板におけるばらつきよりも抑制されて、光学的により均一な有機EL素子が得られることになる。たとえば370×470mmのサイズの基板1に対して、導電膜の膜厚分布(膜厚均一性)が約±3%であったところ、92.5×117.5mmのサイズの分割基板1aでは、膜厚分布は約±1%に抑えられることがわかった。
【0032】
次に、図6に示すように、画素電11極を露出するように周縁部を覆う素子分離膜12が形成される。素子分離膜12として、材料に特に限定はなく、たとえば酸化シリコン(SiO2)、窒化シリコン(SiNX)、酸化アルミニウム(Al2O3)または窒化アルミニウム(AlNX)のような無機材料、あるいは、ポリイミド系樹脂、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、有機シリカ膜樹脂またはSOG(Spin On Glass)のような有機材料を適用することができる。また、無機材料からなる膜と有機材料からなる膜との積層膜を適用することも可能である。
【0033】
ここでは、たとえば感光性ポリイミド系樹脂が用いられる。この場合には、まず、回転数1000rpmのもとでスピンコート法によって感光性ポリイミド樹脂が分割基板の上に塗布される。塗布後、直ちにクリーンオーブンにて温度約120℃のもとで、時間約10分のプリベークが行なわれる。プリベーク後におけるポリイミド樹脂膜の膜厚は1.0μm程度とされる。次に、露光装置を用いてポリイミド樹脂膜に対し、一般的な投影露光装置を用いて、たとえば露光量150mJのもとで露光処理を施すことによって、露光された部分が現像液に対して可溶にされる。
【0034】
次に、露光処理が施されたポリイミド樹脂膜に対して、シャワー回転式現像装置を用いて現像処理を施すことにより、露光された部分が現像液に溶解されて除去される。このとき、現像液として濃度2.38wt%のTMAH水溶液が用いられ、現像時間は約30秒程度とされる。この露光処理および現像処理によって、画素電極11を露出して画素電極11の周縁部を覆うポリイミド樹脂からなる素子分離膜12が形成されることになる。
【0035】
次に、その素子分離膜12に対し、クリーンオーブンにて窒素雰囲気中温度約230℃のもとで時間約60分の焼成が行なわれる。この焼成によって、素子分離膜12の膜厚は約0.8μm程度となる。この素子分離膜12によって、画素電極11と後の工程において形成される共通電極との間の電気的な短絡を防止することができる。この素子分離膜12によって取囲まれて露出した画素電極11の領域が有機EL素子における発光領域となる。また、この素子分離膜12によって、発光色を塗り分ける際に隣接する画素への有機層の拡散を防止することが可能となる。
【0036】
次に、素子分離膜12が形成された分割基板1aが、たとえば真空蒸着装置(図示せず)内に搬入されて、図7に示すように、少なくとも画素電極11が完全に覆われるように所定の有機EL層13が形成される。この有機EL層13としては、たとえば正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子輸送層、電子注入層(いずれも図示せず)等の各層を下の層から順次積層することによって形成される。そして、分割基板の直上にシャドーマスクが配設されて、このような層のうち、いずれかの層については所定の領域以外の領域には蒸着させず選択した画素群にだけ真空蒸着させることを繰り返す塗り分け技術が適用される。たとえば有機EL層においてRGBを発色させる発光層が、それぞれ対応するシャドーマスクを用いて塗り分けられることで形成される。
【0037】
ここで、有機EL層13の具体的な製造工程の一例について説明する。まず、正孔注入層として、膜厚約30nmの銅フタロシアニン(CuPc)が全画素に対して共通に形成される。その上に正孔輸送層として膜厚約30nmの〔ビス(N-ナフチル)-N-フェニルベンジジン〕(α−NPD)が全画素に対して共通に形成される。次に、赤画素の発光層として[[2-メチル-6-[2-(2,3,6,7-テトラハイドロ-1H,5H-ベンゾ[ij] キノリジン-9-イル)エチニル]-4H-ピラン-4-イリデン]プロパンジニトリル](DCM2)を約8%ドープした8-キノリノールアルミニウム錯体(Alq3)層が形成される。また、緑画素の発光層として、[3-(2-ベンゾチアゾリル)-7-(ジエチルアミノ)-2H-1-ベンゾピラン-2-ワン](クマリン6)を約1%ドープした(Alq3)層が形成される。そして、青画素の発光層として、[4,4’-ビス(N-カルバゾリル)ビフェニル](CBP)層が形成される。そして、その発光層の上に電子輸送層兼正孔プロッキング層として膜厚約50nmの[2,9-ジメチル-4,7-ジフェニル-1,10-フェナントロリン](BCP)層が全画素に対して共通に形成される。
【0038】
ここで、有機EL層13の真空蒸着においては、それぞれ約0.2gの材料が抵抗加熱用の各ボートに充填されて、真空蒸着装置の所定の蒸発源電極に取り付けられる。そして、蒸着雰囲気内がたとえば約1.0×10-4Paにまで減圧された後に、各ボートを通電加熱することによって、各ボート内の材料が順次蒸発して分割基板1a上に蒸着される。また、シャドーマスクとしては、金属マスクが用いられる。なお、有機EL層として、低分子化合物を真空蒸着される場合を例に挙げたが、有機EL層としては高分子化合物をスピンコート法やインクジェット法等によって形成するようにしてもよい。
【0039】
次に、図8に示すように、真空蒸着、スパッタ法、あるいはCVD法等によって、有機EL層13および素子分離膜12を覆うように共通電極14が形成される。この共通電極14は、有機EL素子の陰極として作用し、たとえばフッ化リチウム(LiF)とアルミニウム(Al)の積層膜によって構成される。まず、膜厚約1nmのLiFが形成され、そのLiF膜上に、膜厚約200nmのAl膜が形成される。なお、この共通電極14は、真空蒸着により有機EL層13を形成した後、同じ真空蒸着装置内にて連続して形成される。
【0040】
蒸着により共通電極14を形成する際には、まず、重量約0.1gのLiFと重量約0.4gのAlがそれぞれ所定のボートに充填され、その各ボートが真空蒸着装置の所定の電極に取り付けられる。そして、蒸着雰囲気内の圧力が1.0×10-4Paにまで減圧された後に、各ボートを通電加熱することによって、各ボート内の材料が順次蒸発して分割基板1aに蒸着されることになる。
【0041】
以上のようにして、画素電極(陽極)11、有機EL層13、共通電極(陰極)14が順次積層されて、有機EL素子23が分割基板1a上に複数形成される。そして、表示素子として設けられた各有機EL素子23に対して、これらの有機EL素子23を駆動するためのTFT21が電気的に接続されたアクティブマトリックス型の表示装置が形成されることになる。
【0042】
上述した表示装置の製造方法では、大型の基板(マザーガラス基板)1に有機EL素子23を駆動するためのTFT21が形成された後に、そのマザーガラス基板が切断されてサイズのより小さい分割基板1aとされる。そして、その分割基板1aに対してシャドーマスクを用いて蒸着法や印刷法によって有機EL素子23が形成されることになる。これにより、従来の場合と比較すると、特に、有機EL素子23の画素電極11となる導電層を形成する際に、分割基板1a面内における膜厚の均一性が大幅に向上する。その結果、有機EL素子23における輝度や色度等の光学特性をより均一にすることができる。また、基板のサイズが小さくなることで、有機EL層13も安定して高精度に形成することができる。
【0043】
このことは、また、有機EL素子を適用した表示装置とは態様が異なる液晶を適用した表示装置と比較すると、次のようなことがいえる。液晶を適用した表示装置では、画像の表示は液晶の旋光性と複屈折によって行なわれるため、電極の厚さの分布(ばらつき)は表示特性に大きく影響しない。これに対して、有機EL素子を適用した表示装置では、素子内部において多重反射と干渉をしながら光が外部に出射されることから、画素電極の熱さが輝度や色度に影響を与えることになる。そのため、表示エリア22において画素電極の膜厚にばらつきが生じると表示ムラの原因となる。
【0044】
このため、液晶を適用した表示装置では、電極の形成を、基板を分割する前に行なうのか基板を分割した後に行なうのかという点についてはあまり重要ではないのに対し、有機EL素子を適用した表示装置では、画素電極の形成を基板を分割した後に行なうことで、基板を分割する前に行なう場合と比べて膜厚のばらつきが低減されて表示特性の向上に寄与することができる。
【0045】
また、上述した製造方法では、マザーガラス基板を分割した後に画素電極11が形成されることで、マザーガラス基板を切断する際に発生する異物が飛散して画素電極11上に付着することもなく、画素電極11の表面を清浄に保つことができて、ショートモード等を抑制して表示装置の歩留まりを向上することができる。そして、マザーガラス基板を分割した後画素電極11となる導電層を形成する前に、切断に伴う分割基板1aの洗浄が行なわれるため、画素電極11の表面を異物除去のために比較的強い機械強度にて洗浄する必要がなく、画素電極11にキズ、端部の剥離あるいはクラックが発生することがなくなって、画素電極11の表面を平滑な状態に保持することができる。
【0046】
また、マザーガラス基板を分割基板1aに切断した後、その分割基板1aの異物を除去する際には、分割基板1aは無機材料のみで構成されるTFT21が形成された状態にあるため、機械的あるいは化学的に広範な洗浄方法の中から有効な洗浄方法を選択してこれを組み合わせることができる。これにより、分割基板1aの異物除去を効果的に実施することができる。そして、その異物除去を行なった後に、分割基板1aの表面に平坦化絶縁膜10が形成されることで、たとえ、サブμm以下の異物粒子が分割基板1aの表面に残留した場合であっても、その異物は平坦化絶縁膜10によって被覆されることになる。これにより、表示装置においてそのような異物が欠陥の要因となるのを低減することができる。
【0047】
実施の形態2
ここでは、基板(マザーガラス基板)1を切断する際に発生する異物が分割基板1aに付着するのをより効果的に抑制する表示装置の製造方法について説明する。まず、実施の形態に1において説明した図2に示す工程の後、図9に示すように、マザーガラス基板の状態で基板1上にレジスト膜15が塗布形成される。なお、基板1には、あらかじめ分割基板に切断するための幅約500μmの切断エリアが形成されている。
【0048】
次に、所定の写真製版処理を施すことにより、図10に示すように、切断エリア16の中心線を挟んで中心線から一方の側の約1mmまでの領域と、中心線から他方の側の約1mmまでの領域とにそれぞれ位置するレジスト膜15の部分が除去されて、切断エリア16とその近傍の領域の表面が露出する。
【0049】
このレジスト膜15は、基板1を分割基板1aに切断する際およびその分割基板1aに研磨処理を施す際に、分割基板1aの表面に異物粒子が付着するのを防護するためのカバーとなる。このカバーとしては、特に、レジスト膜に限定されず、たとえば樹脂コート膜、フィルムシート等も適用することができる。
【0050】
次に、レジスト膜15が被覆されたサイズ370×470mmの基板1に対して、ダイアモンドヘッドを用いてその切断エリア16にスクライブ切断処理を施すことによって、図10に示すように、サイズ92.5×117.5mmの複数の分割基板1aに分割される。ここでは、TFTが形成された基板1の表面が直接ステージに密着するのを避けるために、基板1の表面を上方に向けて基板1の裏面の側をステージ上に吸着固定させ、表面の側から切断エリア16に対してスクライブ切断を実施することによって、複数の分割基板1aに分割される。
【0051】
分割基板1aに切断された後、ウェット法にて分割基板1aの端面に研磨処理が施される。この分割基板1aの端面を研磨することにより、切断によって発生した切り屑が除去されるとともに、分割基板1aの端部に機械的衝撃が加わった場合の欠け等によって異物粒子が発生するのを抑制することができる。その研磨処理の後、レジスト膜15の表面を含む分割基板1aの表面を、たとえばスプレイ、あるいは高圧ジェットによるウェット洗浄を施すことで、基板1の切断および研磨処理によって付着した異物粒子が除去される。その後、分割基板1aにエアナイフ乾燥処理が施される。
【0052】
次に、所定のウエット処理を施すことにより、図11に示すように、分割基板1aの表面を被覆するレジスト膜15が除去される。レジスト膜15が除去された後、ブラシ、または、スプレイによるウェット洗浄処理が施され、さらに、O2プラズマによるドライ洗浄処理が施される。その後、実施の形態1において説明した図4〜図8に示す工程と同様の工程を経て、表示装置が完成する。
【0053】
上述した表示装置の製造方法では、前述した表示装置と同様の効果を得られるが、特に、マザーガラス基板をレジスト膜15で被覆した後に分割基板1aに切断され、そして、その分割基板1aに研磨処理が施されることで、分割基板1aの表面に直接付着する異物粒子の数を大幅に低減して、表示装置における表示欠陥をさらに抑制することができる。
【0054】
なお、今回開示された実施の形態は例示であってこれに制限されるものではない。本発明は上記で説明した範囲ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲でのすべての変更が含まれることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明の実施の形態1に係る表示装置の断面図である。
【図2】同実施の形態において、図1に示す表示装置の製造方法の一工程を示す断面図である。
【図3】同実施の形態において、図2に示す工程の後に行なわれる工程を示す平面図である。
【図4】同実施の形態において、図3に示す工程の後に行なわれる工程を示す断面図である。
【図5】同実施の形態において、図4に示す工程の後に行なわれる工程を示す断面図である。
【図6】同実施の形態において、図5に示す工程の後に行なわれる工程を示す断面図である。
【図7】同実施の形態において、図6に示す工程の後に行なわれる工程を示す断面図である。
【図8】同実施の形態において、図7に示す工程の後に行なわれる工程を示す断面図である。
【図9】本発明の実施の形態2に係る表示装置の製造方法の一工程を示す断面図である。
【図10】同実施の形態において、図9に示す工程の後に行なわれる工程を示す平面図である。
【図11】同実施の形態において、図10に示す工程の後に行なわれる工程を示す平面図である。
【符号の説明】
【0056】
1 基板、1a 分割基板、2 ゲート電極、3 ゲート絶縁膜、4 半導体薄膜、5 層間絶縁膜、5a,5b コンタクトホール、6 ソース電極、7 ドレイン電極、8 配線、9 絶縁膜、9a,9b スルーホール、10 平坦化絶縁膜、11 画素電極、12 素子分離膜、13 有機EL層、14 共通電極、15 レジスト膜、16 切断エリア、21 TFT、22 表示エリア、23 有機EL素子。
【技術分野】
【0001】
本発明は表示装置の製造方法に関し、特に、有機EL素子を用いた表示装置の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
表示装置の一つに、表示素子として有機EL(Electro Luminescence)素子を適用した表示装置がある。有機EL素子は、有機材料のエレクトロルミネッセンスを利用した素子であり、陽極と陰極との間に、有機正孔輸送層や有機発光層を積層させた有機層が形成されている。この有機EL素子は、低電圧直流駆動による高輝度発光が可能な発光素子として注目されている。その有機EL素子を用いた表示装置の一形態に、アクティブマトリクス型の表示装置がある。
【0003】
アクティブマトリクス型の表示装置では、各画素に対して有機EL素子を駆動するための薄膜トランジスタ(Thin Film Transistor:以下「TFT」と記す。)と配線が所定の基板上に設けられている。そのTFTと配線を覆うように平坦化絶縁層が形成されている。その平坦化絶縁層上に有機EL素子が形成されている。有機EL素子と配線とは、平坦化絶縁層に形成されたスルーホールを介して電気的に接続されている。平坦化絶縁層としては、たとえば,樹脂材料をスピンコート法によって塗布したものが用いられている。有機EL素子における最下層は平坦化絶縁層上に形成した画素電極である。その画素電極とTFTのソース電極またはドレイン電極とがスルーホールを介して電気的に接続されている。
【0004】
画素電極上には有機EL層として単層または多層の有機薄膜が形成され、その有機薄膜の上に共通電極が形成されている。画素電極と共通電極とによって挟み込まれた有機EL層に対して、画素電極からは正孔が注入され、共通電極からは電子が注入される。注入された正孔と電子は所定の発光ゾーンにまで輸送されて再結合し、発光に至る。なお、表示装置としては、共通電極上に、さらにパッシベーション膜、封止用ガラス板、偏光板等が形成される場合がある。
【0005】
有機EL素子をなす有機薄膜は、たとえばシャドーマスクを用いた蒸着法および印刷法によって形成される。このため、蒸着装置および印刷装置によっては、蒸着および印刷をすることができる基板のサイズが制約を受けることがある。基板の具体的なサイズは、パネルの精細度設計値、すなわち、蒸着および印刷によって形成する画素の大きさに応じて変化し、画素が微細になればなるほど、適用できる基板のサイズは小さくなる。こうした制約は、高精細パネルを比較的大面積の基板上に形成させようとする場合に、アライメント精度やパターン寸法精度の点で歩留まり低下の要因となる。
【0006】
このような問題点を解消する目的で、特許文献1では、次のような手法が提案されている。すなわち、比較的大面積の基板(マザー基板)に有機EL素子の第1電極(画素電極)を形成した後で、そのマザー基板が複数の比較的小面積の基板に分割され、その分割された基板の第1電極上に有機EL層が形成される。そして、その有機EL層の上に第2電極(共通電極)等が形成されて表示装置として完成する。なお、有機EL素子を適用した表示装置とは態様の異なる液晶を利用した液晶パネルの製造方法が、特許文献2に提案されている。
【特許文献1】特開2003−7463号公報
【特許文献2】特開2000−267135号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来の表示装置の製造方法では、次のような問題点があった。画素電極である第1電極は有機EL素子において光学的要素となるために、その膜厚の均一性が極めて重要になる。その第1電極は、生産性を確保する観点から比較的大面積のマザー基板上に形成されていた。第1電極をマザー基板に形成する場合には、第1電極となる層の厚みがマザー基板面内においてばらつきやすくなる。マザー基板面内において第1電極となる層の厚みがばらつくと、表示装置として輝度や色度等が表示エリア内においてばらついてしまい、表示ムラの要因となる。
【0008】
また、マザー基板を分割する際に発生する異物が第1電極上に付着しやすく、これが短絡の原因となったり、あるいは、ダーススポット等の欠陥を招くことになり、表示装置としての画質の低下と歩留まりの低下を引き起こす要因となった。
【0009】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであり、その目的は、表示ムラおよび画質の低下が抑制されて、歩留まりの向上が図られる表示装置の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る表示装置の製造方法は、表示素子とその表示素子を発光させるための駆動素子とを有する表示装置の製造方法であって、以下の工程を備えている。第1のサイズを有する基板上に複数の駆動素子を形成する。その複数の駆動素子を覆うように、基板上に第1絶縁膜を形成する。その第1絶縁膜が形成された基板を、第1のサイズよりも小さい第2のサイズに分割して複数の分割基板を形成する。その分割基板の第1絶縁膜上に、画素電極、有機EL層および共通電極を含み、駆動素子と電気的に接続される表示素子を形成する。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る表示装置の製造方法によれば、第1のサイズを有する基板に表示素子を駆動するための駆動素子が形成された後に、その基板が切断されてサイズのより小さい第2のサイズの基板とされる。そして、その第2のサイズの基板に対して表示素子が形成されることになる。これにより、従来の場合と比較すると、特に、表示素子を形成する際に、第2のサイズの基板面内における表示素子となる層の膜厚の均一性が大幅に向上する。その結果、表示素子における輝度や色度等の光学特性をより均一にすることができる。また、第1のサイズの基板を分割した後に表示素子が形成されることで、第1のサイズの基板を切断する際に発生する異物が飛散して表示素子の上に付着することもなく、表示素子の表面を清浄に保つことができて、ショートモード等を抑制して表示装置の歩留まりを向上することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
実施の形態1
本発明の実施の形態1に係る表示装置の製造方法を説明するに際して、まず、その表示装置の構造について説明する。図1に示すように、たとえばガラスからなる基板1の主表面上にゲート電極2が形成されている。そのゲート電極2を覆うように基板1上にゲート絶縁膜3が形成されている。そのゲート絶縁膜3の所定の領域に、ソース領域、ドレイン領域およびチャネル領域となる所定の半導体薄膜4が形成されている。その半導体薄膜4、ゲート絶縁膜3およびゲート電極2によりTFT21が構成される。TFT21は基板1の主表面においてマトリクス状に複数形成されている。なお、このTFT21は、ゲート電極2上に半導体薄膜4が形成されたいわゆるボトムゲート型のTFTであるが、TFTとしては、半導体薄膜上にゲート電極が形成されたトップゲート型のTFTであってもよい。
【0013】
そのTFT21を覆うように、基板1上に層間絶縁膜5が形成されている。その層間絶縁膜5に、半導体薄膜4の表面を露出するコンタクトホール5a,5bが形成されている。そのコンタクトホール5a,5bを充填するように、層間絶縁膜5上にソース電極6、ドレイン電極7および配線8が形成されている。そのソース電極6、ドレイン電極7および配線8を覆うように、絶縁膜9が形成されている。その絶縁膜9上にさらに平坦化絶縁膜10が形成されている。絶縁膜9としては、たとえばSiNXあるいはSiO2などの無機材料が適用される。また、平坦化絶縁膜10としては、たとえば、ポリイミド樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、有機シリカ樹脂あるいはSOG(Spin On Glass)膜等が適用される。
【0014】
その平坦化絶縁膜10に配線8の表面を露出する開口部10a,10bが形成されている。平坦化絶縁膜10上に開口部10a,10bを介して配線8と電気的に接続される画素電極11が形成されている。その画素電極11の周縁部に素子分離膜12が形成されている。画素電極11および素子分離膜12の上に、有機EL層13が形成されている。有機EL層13として、たとえば、ホール注入層、ホール輸送層、発光層、ホールブロッキング層、電子輸送層、電子注入層等が形成される。その有機EL層13上に共通電極14が形成されている。画素電極11、有機EL層13および共通電極14によって有機EL素子23が構成されることになる。表示装置の主要部分は以上のように構成される。
【0015】
なお、共通電極14上に、外部の水分の浸入によって有機EL素子が劣化するのを防止のためのパッシベーション膜,封止ガラスおよび封止缶(いずれも図示せず)の少なくともいずれかを設けてもよい。また、発光色の制御を行なうためのカラーフィルターやコントラスト向上のための円偏光板(いずれも図示せず)等の光学要素を加えてもよい。さらに、有機EL素子をTFT21の直上ではなくTFT21の横に形成する場合、すなわち、上方から見て有機EL素子をTFT21と平面的に重ならない位置に形成する場合には、平坦化膜10を形成しなくてもよい。
【0016】
次に、上述した表示装置の製造方法の一例について説明する。まず、基板としては、後述するように、比較的サイズの大きい透明なガラスの基板(マザーガラス基板)が使用される。そのようなガラスの基板1上に、図2に示すように、ゲート電極2が形成される。そのゲート電極2を覆うようにゲート絶縁膜3が形成される。そのゲート絶縁膜3上にソース領域、ドレイン領域およびチャネル領域となる半導体薄膜4が形成される。このようにして、ゲート電極2、ゲート絶縁膜3および半導体薄膜4からなるボトムゲート型のTFT21が形成される。なお、このTFTを形成する際には、電荷を蓄積するための所定のキャパシタ(図示せず)も形成されることになる。
【0017】
次に、そのTFT21を覆うように基板1上に層間絶縁膜5が形成される。その層間絶縁膜5に所定の写真製版および加工を施すことにより、半導体薄膜4の表面を露出するコンタクトホール5a,5bが形成される。そのコンタクトホール5a,5bを充填するように層間絶縁膜5上に、たとえば膜厚約0.5μmのアルミニウム薄膜(図示せず)が形成される。そのアルミニウム薄膜に所定の写真製版および加工を施すことにより、高さ約0.5μmの所定の配線8、ソース電極6およびドレイン電極7が形成される。この配線8はTFT21と有機EL素子とを電気的に接続する。
【0018】
次に、配線8等を覆うように層間絶縁膜5上に、たとえば、プラズマCVD(Chemical Vapor Deposition)法によって窒化シリコンSiNX膜等の絶縁膜9が形成される。このとき、たとえば、反応ガスとしてモノシラン(SiH4)およびアンモニア(NH3)を用い、成膜温度280℃、成膜雰囲気内のガス圧力約130Pa、印加パワー1kWの条件のもとで成膜が行なわれる。膜厚は特に制限はないが、ここではたとえば約100nmとされる。また、配線8上に形成する層間絶縁膜5の製造方法としては、プラズマCVD法に限定されず、たとえば各種スパッタ法等も用いることができ、十分なガスバリア性を有する緻密な膜が得られる成膜方法を適用することが望ましい。
【0019】
次に、SiNX膜などの絶縁膜9上に所定の写真製版処理を施すことにより、レジストパターン(図示せず)が形成される。そのレジストパターンをマスクとして絶縁膜9にエッチングを施すことにより、配線8の表面を露出するスルーホール9a,9bが形成される。SiNX膜などの絶縁膜9のエッチングとして、たとえば四フッ化メタン(CF4)などのフッ素系ガスを用い、CF4流量約100sccm、O2流量約500sccm、Ar流量約10sccm、真空度約20Pa、RF出力約300Wのもとでドライエッチング等が施される。絶縁膜9のエッチングの後、たとえばO2系ガスを用いたアッシングにより、レジストパターンが除去される。
【0020】
ここまでの工程、すなわち、基板1上にTFT21を形成し、そのTFT21を覆う絶縁膜9にスルーホール9a,9bを形成する工程までは、基板として、たとえばサイズ370×470mmの以上の比較的大型のガラスの基板(マザーガラス基板)の状態でそれぞれの工程が順次実行される。次の工程では、図3に示すように、そのような大型の基板1を表示エリア22を含む所定のサイズの複数の分割基板1aに分割する切断処理が施される。基板1の切断方法としては、たとえばスクライブ切断、レーザ割断、レーザ溶融切断、超音波切断等を用いることができる。また、基板1にはあらかじめ切断エリアが設けられる。
【0021】
切断エリアの寸法としては特に制限はないが、切断寸法精度によって下限値が決まり、一方、基板1において分割される基板の領域の割り付けに応じて、使用可能な上限値が決まることになる。たとえば、切断エリアとして10μm〜1mmのライン幅が望ましい。ここでは、370×470mmサイズの基板1に対して、ライン幅約500μmの切断エリア16が設けられ、ダイアモンドヘッドを用いてその切断エリア16にスクライブ切断処理を施すことによって、サイズ92.5×117.5mmの複数の分割基板1aに分割される。
【0022】
このとき、TFTが形成された表面の側から切断を実施してもよいし、一方、TFTが形成された側とは反対の裏面から切断を実施してもよい。ここでは、TFTが形成された基板1の表面が直接ステージに密着するのを避けるために、基板1の表面を上方に向けて基板1の裏面の側をステージ上に吸着固定させ、表面の側から所定の切断エリアに対してスクライブ切断を実施することで、複数の分割基板1aに分割される。
【0023】
基板1を切断した後、切断により発生した異物を取除く洗浄が施される。洗浄処理として、たとえば、ディッピング、スプレイ、あるいは高圧ジェット等によるウェット洗浄、機械的に行なうブラシ洗浄、紫外線(UV)あるいはプラズマ等を用いたドライ洗浄、化学的・機械的に除去するCMP(Chemical Mechanical Polishing)等の研磨洗浄、あるいは超音波洗浄等を実施することができる。ここでは、たとえば、O2プラズマによるドライ洗浄が行なわれた後に、スプレイおよび高圧ジェットによるウェット洗浄が行なわれる。
【0024】
また、分割基板1aの端部の欠け等による異物粒子の発生を抑制するために、分割基板1aの端部に研磨処理を施してもよい。洗浄の後、たとえばエアナイフ乾燥、スピン乾燥、オーブン乾燥、ホットプレート乾燥、あるいはIPA(Iso-Propyl Alcohol)等を用いた蒸気乾燥等の乾燥処理が施される。ここでは、たとえばエアナイフ乾燥が行なわれる。
【0025】
次に、大型のガラスの基板(マザーガラス基板)1から切断された複数の分割基板1aのそれぞれに対して以下の処理が施される。図4に示すように、TFT21および配線8等による表面の凹凸を平坦化するために、絶縁膜9上に平坦化絶縁膜10が形成される。平坦化絶縁膜10として、たとえばポジ型の感光性アクリル樹脂が適用される。この場合、まず、回転数1000rpmにてスピンコート法によって分割基板上に感光性アクリル樹脂が塗布される。塗布後、直ちにクリーンオーブンにて温度約90℃、時間約10分のプリベークが行なわれる。プリベーク後における平坦化絶縁膜10の塗布膜厚は1.9μm程度とされ、この平坦化絶縁膜10によって配線8等が埋め込まれることとする。
【0026】
次に、露光装置を用いて平坦化絶縁膜10に対し所定のパターン露光が行なわれて、露光部分が現像液に対して可溶にされる。このパターン露光においては、一般的な投影露光装置を用い、たとえば露光量300mJのもとで露光処理が施される。次に、露光処理が施された平坦化絶縁膜10に対し、ディップ式現像装置を用いて現像処理を施すことにより、露光された部分が現像液に溶解されて除去される。このとき、現像液として濃度約0.3wt%のTMAH(TetraMethyl Ammonium Hydroxide)水溶液が用いられ、現像時間は約90秒程度とされる。この露光処理および現像処理によって、平坦化絶縁膜10が所定形状にパターニングされるとともに、配線8の表面を露出する開口部10a,10bが形成される。
【0027】
次に、感光性アクリル樹脂からなる平坦化絶縁膜10に対し、クリーンオーブンにて温度約220℃のもとで時間約60分のポストベークが施される。このポストベークによって、平坦化絶縁膜10の膜厚は約1.6μm程度となり、この平坦化絶縁膜10によって配線8が埋め込まれるとともに、平坦化絶縁膜10における凸部と凹部の最大高低差は0.2μm程度になる。
【0028】
なお、平坦化絶縁膜としては、スピンコート法やその他の塗布法によって形成される塗布膜であれば、上述した感光性アクリル樹脂からなるものに限定されることはなく、感光性をもたない樹脂材料膜や、SOG膜を適用してもよい。ただし、感光性をもたない材料で平坦化絶縁膜を形成する場合には、平坦化絶縁膜を形成した後に平坦化絶縁膜上に所定のレジストパターンを形成し、そのレジストパターンをマスクとして平坦化絶縁膜にエッチングを施すことで開口部10a,10bを形成することとする。また、ここでは、平坦化絶縁膜を形成する場合を例に挙げて説明しているが、有機EL素子をTFT21および配線8が形成される領域と平面的に重ならない領域に形成する場合には、平坦化絶縁膜10を形成する必要は必ずしもなく、平坦化絶縁膜を省いてもよい。
【0029】
次に、開口部10a,10bの側壁を含む平坦化絶縁膜10の表面に、画素電極となる所定の導電膜として、たとえば膜厚約100nmの透明なITO(Indium Tin Oxide)膜(図示せず)が形成される。次に、通常のリソグラフィー技術を用いて所定のレジストパターン(図示せず)が形成され、そのレジストパターンをマスクとして導電膜にエッチングを施すことにより、図5に示すように、画素電極11が形成される。ITO膜のエッチングとして、たとえば、シュウ酸からなるエッチング液を用いたウェットエッチングが施される。画素電極11は有機EL素子の陽極として作用する。
【0030】
なお、ここでは、基板1aの側から発光させる下面発光型の有機EL素子を形成する場合を例に挙げて説明するが、本発明はこれに限定されるものではなく、基板1aと反対側から光を発光させる上面発光型の有機EL素子を形成するようにしてもよい。画素電極11となる所定の導電膜としてのITO(Indium Tin Oxide)膜は、たとえばDCマグネトロンスパッタ法によって形成される。このとき、スパッタガスとしてアルゴン(Ar)と酸素(O2)との混合ガス(体積比Ar:O2=1000:5)を用い、スパッタ雰囲気内の圧力約0.3Pa、DC出力約400Wのもとで、透明のITO膜が形成される。
【0031】
ここで、画素電極11となるITO膜等の導電膜を基板上に形成する場合について考えると、特に、大型の基板(マザーガラス基板)1に導電膜を形成する場合には、膜厚が基板周縁部においてばらつきやすく、有機EL素子の光学的な特性に影響を及ぼすことになる。一方、マザーガラス基板を分割した分割基板1aに導電膜を形成する場合には、膜厚のばらつきがマザーガラス基板におけるばらつきよりも抑制されて、光学的により均一な有機EL素子が得られることになる。たとえば370×470mmのサイズの基板1に対して、導電膜の膜厚分布(膜厚均一性)が約±3%であったところ、92.5×117.5mmのサイズの分割基板1aでは、膜厚分布は約±1%に抑えられることがわかった。
【0032】
次に、図6に示すように、画素電11極を露出するように周縁部を覆う素子分離膜12が形成される。素子分離膜12として、材料に特に限定はなく、たとえば酸化シリコン(SiO2)、窒化シリコン(SiNX)、酸化アルミニウム(Al2O3)または窒化アルミニウム(AlNX)のような無機材料、あるいは、ポリイミド系樹脂、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、有機シリカ膜樹脂またはSOG(Spin On Glass)のような有機材料を適用することができる。また、無機材料からなる膜と有機材料からなる膜との積層膜を適用することも可能である。
【0033】
ここでは、たとえば感光性ポリイミド系樹脂が用いられる。この場合には、まず、回転数1000rpmのもとでスピンコート法によって感光性ポリイミド樹脂が分割基板の上に塗布される。塗布後、直ちにクリーンオーブンにて温度約120℃のもとで、時間約10分のプリベークが行なわれる。プリベーク後におけるポリイミド樹脂膜の膜厚は1.0μm程度とされる。次に、露光装置を用いてポリイミド樹脂膜に対し、一般的な投影露光装置を用いて、たとえば露光量150mJのもとで露光処理を施すことによって、露光された部分が現像液に対して可溶にされる。
【0034】
次に、露光処理が施されたポリイミド樹脂膜に対して、シャワー回転式現像装置を用いて現像処理を施すことにより、露光された部分が現像液に溶解されて除去される。このとき、現像液として濃度2.38wt%のTMAH水溶液が用いられ、現像時間は約30秒程度とされる。この露光処理および現像処理によって、画素電極11を露出して画素電極11の周縁部を覆うポリイミド樹脂からなる素子分離膜12が形成されることになる。
【0035】
次に、その素子分離膜12に対し、クリーンオーブンにて窒素雰囲気中温度約230℃のもとで時間約60分の焼成が行なわれる。この焼成によって、素子分離膜12の膜厚は約0.8μm程度となる。この素子分離膜12によって、画素電極11と後の工程において形成される共通電極との間の電気的な短絡を防止することができる。この素子分離膜12によって取囲まれて露出した画素電極11の領域が有機EL素子における発光領域となる。また、この素子分離膜12によって、発光色を塗り分ける際に隣接する画素への有機層の拡散を防止することが可能となる。
【0036】
次に、素子分離膜12が形成された分割基板1aが、たとえば真空蒸着装置(図示せず)内に搬入されて、図7に示すように、少なくとも画素電極11が完全に覆われるように所定の有機EL層13が形成される。この有機EL層13としては、たとえば正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子輸送層、電子注入層(いずれも図示せず)等の各層を下の層から順次積層することによって形成される。そして、分割基板の直上にシャドーマスクが配設されて、このような層のうち、いずれかの層については所定の領域以外の領域には蒸着させず選択した画素群にだけ真空蒸着させることを繰り返す塗り分け技術が適用される。たとえば有機EL層においてRGBを発色させる発光層が、それぞれ対応するシャドーマスクを用いて塗り分けられることで形成される。
【0037】
ここで、有機EL層13の具体的な製造工程の一例について説明する。まず、正孔注入層として、膜厚約30nmの銅フタロシアニン(CuPc)が全画素に対して共通に形成される。その上に正孔輸送層として膜厚約30nmの〔ビス(N-ナフチル)-N-フェニルベンジジン〕(α−NPD)が全画素に対して共通に形成される。次に、赤画素の発光層として[[2-メチル-6-[2-(2,3,6,7-テトラハイドロ-1H,5H-ベンゾ[ij] キノリジン-9-イル)エチニル]-4H-ピラン-4-イリデン]プロパンジニトリル](DCM2)を約8%ドープした8-キノリノールアルミニウム錯体(Alq3)層が形成される。また、緑画素の発光層として、[3-(2-ベンゾチアゾリル)-7-(ジエチルアミノ)-2H-1-ベンゾピラン-2-ワン](クマリン6)を約1%ドープした(Alq3)層が形成される。そして、青画素の発光層として、[4,4’-ビス(N-カルバゾリル)ビフェニル](CBP)層が形成される。そして、その発光層の上に電子輸送層兼正孔プロッキング層として膜厚約50nmの[2,9-ジメチル-4,7-ジフェニル-1,10-フェナントロリン](BCP)層が全画素に対して共通に形成される。
【0038】
ここで、有機EL層13の真空蒸着においては、それぞれ約0.2gの材料が抵抗加熱用の各ボートに充填されて、真空蒸着装置の所定の蒸発源電極に取り付けられる。そして、蒸着雰囲気内がたとえば約1.0×10-4Paにまで減圧された後に、各ボートを通電加熱することによって、各ボート内の材料が順次蒸発して分割基板1a上に蒸着される。また、シャドーマスクとしては、金属マスクが用いられる。なお、有機EL層として、低分子化合物を真空蒸着される場合を例に挙げたが、有機EL層としては高分子化合物をスピンコート法やインクジェット法等によって形成するようにしてもよい。
【0039】
次に、図8に示すように、真空蒸着、スパッタ法、あるいはCVD法等によって、有機EL層13および素子分離膜12を覆うように共通電極14が形成される。この共通電極14は、有機EL素子の陰極として作用し、たとえばフッ化リチウム(LiF)とアルミニウム(Al)の積層膜によって構成される。まず、膜厚約1nmのLiFが形成され、そのLiF膜上に、膜厚約200nmのAl膜が形成される。なお、この共通電極14は、真空蒸着により有機EL層13を形成した後、同じ真空蒸着装置内にて連続して形成される。
【0040】
蒸着により共通電極14を形成する際には、まず、重量約0.1gのLiFと重量約0.4gのAlがそれぞれ所定のボートに充填され、その各ボートが真空蒸着装置の所定の電極に取り付けられる。そして、蒸着雰囲気内の圧力が1.0×10-4Paにまで減圧された後に、各ボートを通電加熱することによって、各ボート内の材料が順次蒸発して分割基板1aに蒸着されることになる。
【0041】
以上のようにして、画素電極(陽極)11、有機EL層13、共通電極(陰極)14が順次積層されて、有機EL素子23が分割基板1a上に複数形成される。そして、表示素子として設けられた各有機EL素子23に対して、これらの有機EL素子23を駆動するためのTFT21が電気的に接続されたアクティブマトリックス型の表示装置が形成されることになる。
【0042】
上述した表示装置の製造方法では、大型の基板(マザーガラス基板)1に有機EL素子23を駆動するためのTFT21が形成された後に、そのマザーガラス基板が切断されてサイズのより小さい分割基板1aとされる。そして、その分割基板1aに対してシャドーマスクを用いて蒸着法や印刷法によって有機EL素子23が形成されることになる。これにより、従来の場合と比較すると、特に、有機EL素子23の画素電極11となる導電層を形成する際に、分割基板1a面内における膜厚の均一性が大幅に向上する。その結果、有機EL素子23における輝度や色度等の光学特性をより均一にすることができる。また、基板のサイズが小さくなることで、有機EL層13も安定して高精度に形成することができる。
【0043】
このことは、また、有機EL素子を適用した表示装置とは態様が異なる液晶を適用した表示装置と比較すると、次のようなことがいえる。液晶を適用した表示装置では、画像の表示は液晶の旋光性と複屈折によって行なわれるため、電極の厚さの分布(ばらつき)は表示特性に大きく影響しない。これに対して、有機EL素子を適用した表示装置では、素子内部において多重反射と干渉をしながら光が外部に出射されることから、画素電極の熱さが輝度や色度に影響を与えることになる。そのため、表示エリア22において画素電極の膜厚にばらつきが生じると表示ムラの原因となる。
【0044】
このため、液晶を適用した表示装置では、電極の形成を、基板を分割する前に行なうのか基板を分割した後に行なうのかという点についてはあまり重要ではないのに対し、有機EL素子を適用した表示装置では、画素電極の形成を基板を分割した後に行なうことで、基板を分割する前に行なう場合と比べて膜厚のばらつきが低減されて表示特性の向上に寄与することができる。
【0045】
また、上述した製造方法では、マザーガラス基板を分割した後に画素電極11が形成されることで、マザーガラス基板を切断する際に発生する異物が飛散して画素電極11上に付着することもなく、画素電極11の表面を清浄に保つことができて、ショートモード等を抑制して表示装置の歩留まりを向上することができる。そして、マザーガラス基板を分割した後画素電極11となる導電層を形成する前に、切断に伴う分割基板1aの洗浄が行なわれるため、画素電極11の表面を異物除去のために比較的強い機械強度にて洗浄する必要がなく、画素電極11にキズ、端部の剥離あるいはクラックが発生することがなくなって、画素電極11の表面を平滑な状態に保持することができる。
【0046】
また、マザーガラス基板を分割基板1aに切断した後、その分割基板1aの異物を除去する際には、分割基板1aは無機材料のみで構成されるTFT21が形成された状態にあるため、機械的あるいは化学的に広範な洗浄方法の中から有効な洗浄方法を選択してこれを組み合わせることができる。これにより、分割基板1aの異物除去を効果的に実施することができる。そして、その異物除去を行なった後に、分割基板1aの表面に平坦化絶縁膜10が形成されることで、たとえ、サブμm以下の異物粒子が分割基板1aの表面に残留した場合であっても、その異物は平坦化絶縁膜10によって被覆されることになる。これにより、表示装置においてそのような異物が欠陥の要因となるのを低減することができる。
【0047】
実施の形態2
ここでは、基板(マザーガラス基板)1を切断する際に発生する異物が分割基板1aに付着するのをより効果的に抑制する表示装置の製造方法について説明する。まず、実施の形態に1において説明した図2に示す工程の後、図9に示すように、マザーガラス基板の状態で基板1上にレジスト膜15が塗布形成される。なお、基板1には、あらかじめ分割基板に切断するための幅約500μmの切断エリアが形成されている。
【0048】
次に、所定の写真製版処理を施すことにより、図10に示すように、切断エリア16の中心線を挟んで中心線から一方の側の約1mmまでの領域と、中心線から他方の側の約1mmまでの領域とにそれぞれ位置するレジスト膜15の部分が除去されて、切断エリア16とその近傍の領域の表面が露出する。
【0049】
このレジスト膜15は、基板1を分割基板1aに切断する際およびその分割基板1aに研磨処理を施す際に、分割基板1aの表面に異物粒子が付着するのを防護するためのカバーとなる。このカバーとしては、特に、レジスト膜に限定されず、たとえば樹脂コート膜、フィルムシート等も適用することができる。
【0050】
次に、レジスト膜15が被覆されたサイズ370×470mmの基板1に対して、ダイアモンドヘッドを用いてその切断エリア16にスクライブ切断処理を施すことによって、図10に示すように、サイズ92.5×117.5mmの複数の分割基板1aに分割される。ここでは、TFTが形成された基板1の表面が直接ステージに密着するのを避けるために、基板1の表面を上方に向けて基板1の裏面の側をステージ上に吸着固定させ、表面の側から切断エリア16に対してスクライブ切断を実施することによって、複数の分割基板1aに分割される。
【0051】
分割基板1aに切断された後、ウェット法にて分割基板1aの端面に研磨処理が施される。この分割基板1aの端面を研磨することにより、切断によって発生した切り屑が除去されるとともに、分割基板1aの端部に機械的衝撃が加わった場合の欠け等によって異物粒子が発生するのを抑制することができる。その研磨処理の後、レジスト膜15の表面を含む分割基板1aの表面を、たとえばスプレイ、あるいは高圧ジェットによるウェット洗浄を施すことで、基板1の切断および研磨処理によって付着した異物粒子が除去される。その後、分割基板1aにエアナイフ乾燥処理が施される。
【0052】
次に、所定のウエット処理を施すことにより、図11に示すように、分割基板1aの表面を被覆するレジスト膜15が除去される。レジスト膜15が除去された後、ブラシ、または、スプレイによるウェット洗浄処理が施され、さらに、O2プラズマによるドライ洗浄処理が施される。その後、実施の形態1において説明した図4〜図8に示す工程と同様の工程を経て、表示装置が完成する。
【0053】
上述した表示装置の製造方法では、前述した表示装置と同様の効果を得られるが、特に、マザーガラス基板をレジスト膜15で被覆した後に分割基板1aに切断され、そして、その分割基板1aに研磨処理が施されることで、分割基板1aの表面に直接付着する異物粒子の数を大幅に低減して、表示装置における表示欠陥をさらに抑制することができる。
【0054】
なお、今回開示された実施の形態は例示であってこれに制限されるものではない。本発明は上記で説明した範囲ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲でのすべての変更が含まれることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明の実施の形態1に係る表示装置の断面図である。
【図2】同実施の形態において、図1に示す表示装置の製造方法の一工程を示す断面図である。
【図3】同実施の形態において、図2に示す工程の後に行なわれる工程を示す平面図である。
【図4】同実施の形態において、図3に示す工程の後に行なわれる工程を示す断面図である。
【図5】同実施の形態において、図4に示す工程の後に行なわれる工程を示す断面図である。
【図6】同実施の形態において、図5に示す工程の後に行なわれる工程を示す断面図である。
【図7】同実施の形態において、図6に示す工程の後に行なわれる工程を示す断面図である。
【図8】同実施の形態において、図7に示す工程の後に行なわれる工程を示す断面図である。
【図9】本発明の実施の形態2に係る表示装置の製造方法の一工程を示す断面図である。
【図10】同実施の形態において、図9に示す工程の後に行なわれる工程を示す平面図である。
【図11】同実施の形態において、図10に示す工程の後に行なわれる工程を示す平面図である。
【符号の説明】
【0056】
1 基板、1a 分割基板、2 ゲート電極、3 ゲート絶縁膜、4 半導体薄膜、5 層間絶縁膜、5a,5b コンタクトホール、6 ソース電極、7 ドレイン電極、8 配線、9 絶縁膜、9a,9b スルーホール、10 平坦化絶縁膜、11 画素電極、12 素子分離膜、13 有機EL層、14 共通電極、15 レジスト膜、16 切断エリア、21 TFT、22 表示エリア、23 有機EL素子。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示素子と、その表示素子を発光させるための駆動素子とを有する表示装置の製造方法であって、
第1のサイズを有する基板上に複数の駆動素子を形成する工程と、
前記複数の駆動素子を覆うように、前記基板上に第1絶縁膜を形成する工程と、
前記第1絶縁膜が形成された前記基板を、前記第1のサイズよりも小さい第2のサイズに分割して複数の分割基板を形成する工程と、
前記分割基板の前記第1絶縁膜上に、画素電極、有機EL層および共通電極を含み、前記駆動素子と電気的に接続される表示素子を形成する工程と
を備えた、表示装置の製造方法。
【請求項2】
前記分割基板を形成する工程と前記表示素子を形成する工程との間に、前記第1絶縁膜上に第2絶縁膜を形成する工程を備え、
前記表示素子を形成する工程では、前記第2絶縁膜上に前記画素電極が形成される、請求項1記載の表示装置の製造方法。
【請求項3】
前記表示素子を形成する工程では、前記第1絶縁膜上に前記画素電極が形成され、前記画素電極上に前記有機EL層が形成され、前記有機EL層上に前記共通電極が形成され、
前記画素電極を形成した後前記有機EL層を形成する前に、前記画素電極の周縁部に素子分離膜を形成する工程を備えた、請求項1または2に記載の表示装置の製造方法。
【請求項4】
前記第1絶縁膜を形成した後前記分割基板を形成する前に、前記第1絶縁膜に前記駆動素子と前記表示素子との電気的な接続を行なうための開口部を形成する工程を備えた、請求項1〜3のいずれかに記載の表示装置の製造方法。
【請求項5】
前記基板として、前記分割基板に分割するための所定幅を有する分割領域を備えた基板が使用される、請求項1〜4のいずれかに記載の表示装置の製造方法。
【請求項6】
前記第1絶縁膜を形成した後前記分割基板を形成する前に、前記第1絶縁膜の上に所定の保護膜を形成する工程を備え、
前記分割基板を形成する工程では、前記所定の保護膜が覆われた状態で前記基板が分割される、請求項1〜5のいずれかに記載の表示装置の製造方法。
【請求項7】
前記分割基板を形成した後、前記分割基板の端面を研磨する工程を備えた、請求項1〜6のいずれかに記載の表示装置の製造方法。
【請求項1】
表示素子と、その表示素子を発光させるための駆動素子とを有する表示装置の製造方法であって、
第1のサイズを有する基板上に複数の駆動素子を形成する工程と、
前記複数の駆動素子を覆うように、前記基板上に第1絶縁膜を形成する工程と、
前記第1絶縁膜が形成された前記基板を、前記第1のサイズよりも小さい第2のサイズに分割して複数の分割基板を形成する工程と、
前記分割基板の前記第1絶縁膜上に、画素電極、有機EL層および共通電極を含み、前記駆動素子と電気的に接続される表示素子を形成する工程と
を備えた、表示装置の製造方法。
【請求項2】
前記分割基板を形成する工程と前記表示素子を形成する工程との間に、前記第1絶縁膜上に第2絶縁膜を形成する工程を備え、
前記表示素子を形成する工程では、前記第2絶縁膜上に前記画素電極が形成される、請求項1記載の表示装置の製造方法。
【請求項3】
前記表示素子を形成する工程では、前記第1絶縁膜上に前記画素電極が形成され、前記画素電極上に前記有機EL層が形成され、前記有機EL層上に前記共通電極が形成され、
前記画素電極を形成した後前記有機EL層を形成する前に、前記画素電極の周縁部に素子分離膜を形成する工程を備えた、請求項1または2に記載の表示装置の製造方法。
【請求項4】
前記第1絶縁膜を形成した後前記分割基板を形成する前に、前記第1絶縁膜に前記駆動素子と前記表示素子との電気的な接続を行なうための開口部を形成する工程を備えた、請求項1〜3のいずれかに記載の表示装置の製造方法。
【請求項5】
前記基板として、前記分割基板に分割するための所定幅を有する分割領域を備えた基板が使用される、請求項1〜4のいずれかに記載の表示装置の製造方法。
【請求項6】
前記第1絶縁膜を形成した後前記分割基板を形成する前に、前記第1絶縁膜の上に所定の保護膜を形成する工程を備え、
前記分割基板を形成する工程では、前記所定の保護膜が覆われた状態で前記基板が分割される、請求項1〜5のいずれかに記載の表示装置の製造方法。
【請求項7】
前記分割基板を形成した後、前記分割基板の端面を研磨する工程を備えた、請求項1〜6のいずれかに記載の表示装置の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2006−277989(P2006−277989A)
【公開日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−91250(P2005−91250)
【出願日】平成17年3月28日(2005.3.28)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年3月28日(2005.3.28)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】
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