説明

表示装置の製造方法

【課題】表示性能を向上することができ、しかも、製造歩留まりの良好な表示装置の製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】基板上の表示エリアにおいて、各画素において独立島状の第1電極60を形成する工程と、第1電極60を覆うように絶縁膜を成膜する工程と、絶縁膜上において各画素を分離する隔壁70を形成する工程と、隔壁70から露出した絶縁膜を除去して下地部80する工程と、各画素の第1電極60上に光活性層64を形成する工程と、光活性層64上に全画素に共通の第2電極66を形成する工程と、を備えたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、表示装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、平面表示装置として、有機エレクトロルミネッセンス(EL)表示装置が注目されている。この有機EL表示装置は、自発光性素子であることから、視野角が広く、バックライトを必要とせず薄型化が可能であり、消費電力が抑えられ、且つ応答速度が速いといった特徴を有している。
【0003】
これらの特徴から、有機EL表示装置は、液晶表示装置に代わる、次世代平面表示装置の有力候補として注目を集めている。このような有機EL表示装置は、基板上において陽極と陰極との間に発光機能を有する有機化合物を含む有機活性層を保持した有機EL素子をマトリックス状に配置することにより構成される。
【0004】
有機EL素子を備えた基板を製造する過程においては、例えば、画素毎に陽極を形成した後に、有機活性層及び陰極を形成する。このような製造過程において、陽極が形成されてからその表面に有機活性層が形成されるまでの間に、陽極表面を汚染しやすい工程、例えば各画素を分離する隔壁を形成する工程が必要となる場合がある。
【0005】
この隔壁形成工程では、陽極の表面を含む基板全面に樹脂材料が配置された後に、フォトリソグラフィプロセスにより樹脂材料をパターニングすることによって隔壁を形成するとともに陽極表面から樹脂材料を除去している。しかしながら、このような樹脂材料のパターニング工程の後には、陽極の表面にパーティクルが残ることがある。このように、陽極表面に付着したパーティクルは、陽極−陰極間のショートを招くおそれがあり、表示性能の低下及び製造歩留まりの低下をも招くおそれがある。
【0006】
このようなパーティクル対策として、陽極上に配置する有機活性層をパーティクルサイズより厚い膜厚で形成するなどの手法が挙げられる(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2005−101008号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、陽極上に付着するパーティクルのサイズは一定ではないため、陽極−陰極間のショートを十分に抑制することは困難である。また、有機活性層の膜厚を極端に厚くしてしまうと、陽極−陰極間の抵抗が増大してしまい、輝度の低下など表示性能の低下を招くおそれがある。
【0008】
この発明は、上述した問題点に鑑みなされたものであって、その目的は、表示性能を向上することができ、しかも、製造歩留まりの良好な表示装置の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明の態様による表示装置の製造方法は、
基板上の表示エリアにおいて、各画素において独立島状の第1電極を形成する工程と、
前記第1電極を覆うように無機系材料からなる絶縁膜を成膜する工程と、
前記絶縁膜上において各画素を分離する隔壁を形成する工程と、
前記隔壁から露出した前記絶縁膜を除去する工程と、
各画素の前記第1電極上に光活性層を形成する工程と、
前記光活性層上に全画素に共通の第2電極を形成する工程と、
を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
この発明によれば、表示性能を向上することができ、しかも、製造歩留まりの良好な表示装置の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、この発明の一実施の形態に係る表示装置の製造方法について図面を参照して説明する。なお、この実施の形態では、表示装置として、自己発光型表示装置、例えば有機EL(エレクトロルミネッセンス)表示装置を例にして説明する。
【0012】
図1に示すように、有機EL表示装置1は、画像を表示する表示エリア102を有するアレイ基板100を備えている。表示エリア102は、マトリクス状に配置された複数の画素PX(R、G、B)によって構成されている。
【0013】
また、アレイ基板100は、画素PXの行方向(すなわち図1のY方向)に沿って配置された複数の走査線Ym(m=1、2、…)と、走査線Ymと略直交する列方向(すなわち図1のX方向)に沿って配置された複数の信号線Xn(n=1、2、…)と、有機EL素子40の第1電極60側に電源を供給するための電源供給線Pと、を備えている。
【0014】
さらに、アレイ基板100は、表示エリア102の外周に沿った周辺エリア104に、走査線Ymのそれぞれに走査信号を供給する走査線駆動回路107の少なくとも一部と、信号線Xnのそれぞれに映像信号を供給する信号線駆動回路108の少なくとも一部と、を備えている。すべての走査線Ymは、走査線駆動回路107に接続されている。また、すべての信号線Xnは、信号線駆動回路108に接続されている。
【0015】
各画素PX(R、G、B)は、画素回路及び画素回路によって駆動制御される表示素子を備えている。画素回路は、オン画素とオフ画素とを電気的に分離しかつオン画素への映像信号を保持する機能を有する画素スイッチ10と、画素スイッチ10を介して供給される映像信号に基づき表示素子へ所望の駆動電流を供給する駆動トランジスタ20と、駆動トランジスタ20のゲート−ソース間電位を所定期間保持する蓄積容量素子30とを有している。これら画素スイッチ10及び駆動トランジスタ20は、例えば薄膜トランジスタにより構成され、ここでは、半導体層にポリシリコンを用いている。
【0016】
表示素子は、自発光素子である有機EL素子40(R、G、B)によって構成されている。すなわち、赤色画素PXRは、主に赤色波長に対応した光を出射する有機EL素子40Rを備えている。緑色画素PXGは、主に緑色波長に対応した光を出射する有機EL素子40Gを備えている。青色画素PXBは、主に青色波長に対応した光を出射する有機EL素子40Bを備えている。
【0017】
各種有機EL素子40(R、G、B)の構成は、基本的に同一である。すなわち、図2に示すように、アレイ基板100は、配線基板120の主面側に配置された複数の有機EL素子40を備えている。なお、配線基板120は、ガラス基板やプラスチックシートなどの絶縁性支持基板上に、画素スイッチ10、駆動トランジスタ20、蓄積容量素子30、走査線駆動回路107、信号線駆動回路108、各種配線(走査線、信号線、電源供給線等)などを備えて構成されたものとする。
【0018】
有機EL素子40は、マトリクス状に配置され画素PX毎に独立島状に配置された第1電極60と、第1電極60に対向して配置され全画素PXに共通に配置された第2電極66と、これら第1電極60と第2電極66との間に保持された光活性層として機能する有機活性層64と、によって構成されている。
【0019】
有機EL素子40を構成する第1電極60は、配線基板120表面の絶縁膜上に配置され、陽極として機能する。配線基板120側から光を取り出す下面発光方式を採用した構成では、この第1電極60は、例えば、ITO(錫ドープ酸化インジウム)、IZO(亜鉛ドープ酸化インジウム)、ZnO(酸化亜鉛)、SnO(酸化錫)、In(酸化インジウム)などの光透過性を有する導電材料によって形成され、特にITO、IZOを用いて形成することが好ましい。
【0020】
有機活性層64は、少なくとも発光層を含んでいる。この有機活性層64は、発光層以外の機能層を含むことができ、例えば、ホール注入層、ホール輸送層、ブロッキング層、電子輸送層、電子注入層、バッファ層などの機能層を含むことができる。この有機活性層64は、複数の機能層を複合した単層で構成されても良いし、各機能層を積層した多層構造であっても良い。有機活性層64においては、発光層が有機系材料であればよく、発光層以外の層は無機系材料でも有機系材料でも構わない。発光層は、赤、緑、または青に発光する発光機能を有した有機化合物によって形成される。
【0021】
第2電極66は、各画素の有機活性層64上に共通に配置される。この第2電極66は、電子注入機能を有する金属材料によって形成され、陰極として機能する。下面発光方式を採用した構成では、この第2電極66は、光反射性を有する導電材料を用いて形成され、例えば、カリウム(K)、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、マグネシウム(Mg)、ランタン(La)、セリウム(Ce)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、バリウム(Ba)、アルミニウム(Al)、銀(Ag)、インジウム(In)、錫(Sn)、亜鉛(Zn)、ジルコニウム(Zr)等の金属元素単体、または安定性を向上させるためにそれらを含む2成分あるいは3成分の合金系を用いて形成することが好ましい。合金系材料としては、例えばAg・Mg(Ag:1〜20at%)、Al・Li(Li:0.3〜14at%)、In・Mg(Mg:50〜80at%)、Al・Ca(Ca:5〜20at%)等が好ましい。
【0022】
また、アレイ基板100は、表示エリア102において、少なくとも隣接する色毎に画素PX(R、G、B)間を分離する隔壁70を備えている。この隔壁70は、各第1電極60の縁部に沿って重なる格子状またはストライプ状の下地部80の上に配置されている。下地部80は、酸化シリコン、窒化シリコンなどの無機系材料によって形成されている。隔壁70は、有機系材料によって形成されている。
【0023】
このような構成のアレイ基板100は、有機EL素子40を備えた主面側が封止体200によって気密に封止されている。
【0024】
次に、上述したような構成の表示装置の製造方法について説明する。
【0025】
まず、図3Aに示すように、配線基板120上の表示エリア102において、画素毎に独立島状の第1電極60を形成する。すなわち、配線基板120の一主面側において陽極として機能する金属膜をパターン化し、第1電極60を形成する。この第1電極60については、一般的はフォトリソグラフィプロセスで形成しても良いし、マスクスパッタ法で形成しても良い。
【0026】
続いて、図3Bに示すように、第1電極60を覆うように無機系材料からなる絶縁膜81を成膜する。ここでは、CVD法により500オングストロームの膜厚で酸化シリコン(SiO)を配線基板120の全面に成膜する。
【0027】
続いて、図3Cに示すように、絶縁膜81上において、各画素を分離する隔壁70を形成する。すなわち、感光性樹脂材料例えばアクリルタイプのポジティブトーンのレジストを絶縁膜81上に成膜した後にフォトリソグラフィプロセスなどでパターニングした後に、220℃で60分の焼成処理を行う。これにより、各画素を囲むような格子状の隔壁70を形成する。
【0028】
続いて、図3Dに示すように、隔壁70から露出した絶縁膜81を除去する。すなわち、隔壁70をマスクパターンとして利用し、第1電極60を覆う絶縁膜81をフッ化水素(HF)系のエッチング液を用いてエッチングする。このエッチング処理により、第1電極60が露出するとともに、隔壁70の下層の絶縁膜81が残り、第1電極60の縁部に重なった下地部80が形成される。
【0029】
続いて、図3Eに示すように、各画素内における第1電極60上に有機活性層64を形成する。すなわち、発光層のほかにホールバッファ層などを含む有機活性層64として、高分子系材料を選択する場合には、インクジェット方式などの方法により塗布することが可能である。また、このような有機活性層64として、低分子系材料を選択する場合には、画素パターンを有するマスクを介した蒸着などの方法により成膜することが可能である。
【0030】
続いて、図3Fに示すように、有機活性層64上に全画素に共通の第2電極66を形成する。すなわち、有機活性層64を配置した配線基板120の一主面側に陰極として機能する金属膜をスパッタ法などにより成膜して第2電極66を形成する。
【0031】
このような工程により、有機EL素子40が形成される。
【0032】
上述したような製造方法で製造した有機EL素子40によれば、第1電極60の表面の汚染に起因した表示不良の発生を抑制することができた。
【0033】
すなわち、第1電極60を形成した後に、第1電極60を覆う絶縁膜81を形成したことにより、第1電極60へのダメージが抑制され、第1電極60の表面の汚染も抑制される。この絶縁膜81は、有機形材料により隔壁70を形成した後に、その隔壁70をマスクパターンとしてエッチングすることにより、絶縁膜81を成膜した際のパーティクルや、その後の工程で残留したパーティクルに関しても、絶縁膜81のエッチング工程で同時に除去することが可能である。
【0034】
したがって、有機活性層64の膜厚を極端に厚くすることなく、パーティクルに起因した陽極−陰極間のショートを防止することができ、表示性能及び製造歩留まりを改善することができる。
【0035】
なお、絶縁膜81の成膜工程と、絶縁膜81のエッチング工程とが追加されたが、従来、隔壁70を形成後(あるいは有機活性層64を形成する直前)に必要としていた洗浄工程を不要または簡素化することが可能となり、大幅な製造工程数の増加を招くことはない。
【0036】
また、上述した実施の形態では、絶縁膜81として酸化シリコンを成膜したが、この例に限らず、絶縁膜81として窒化シリコン(SiN)を成膜しても良い。窒化シリコンからなる絶縁膜81は、ドライエッチングにより選択的に除去可能であり、このような絶縁膜81の成膜工程及びエッチング工程を追加することは、水分を嫌う有機EL素子40の製造過程として好適である。
【0037】
さらに、隔壁70を形成した工程の後に、アッシング処理する工程を追加しても良い。このようなアッシング処理によれば、隔壁70の表面に残留した有機系材料からなるパーティクルを効果的に除去することができ、しかも、絶縁膜81が第1電極60の保護膜として機能するため、第1電極60への物理的ダメージ及び化学的ダメージを抑制することができる。
【0038】
以上説明したように、この実施の形態によれば、第1電極が形成されてからその表面に有機活性層が形成されるまでの間に、第1電極表面を汚染しやすい工程が必要となる場合があっても、有機活性層を形成する直前まで、第1電極の表面は絶縁膜によって覆われており、その後、絶縁膜を選択的に除去して第1電極を露出している。このため、第1電極表面が清浄な状態で有機活性層及び第2電極を順次形成することが可能となり、有機EL素子の表示性能を向上することができるとともに、製造歩留まりを改善することができる。
【0039】
なお、この発明は、上記実施形態そのままに限定されるものではなく、その実施の段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合せにより種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。更に、異なる実施形態に亘る構成要素を適宜組み合せてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】図1は、この発明の一実施の形態に係る有機EL表示装置の構成を概略的に示す図である。
【図2】図2は、図1に示した有機EL表示装置の1画素分の構造を概略的に示す断面図である。
【図3A】図3Aは、有機EL表示装置を形成するための製造工程を説明するための図であり、第1電極を形成する工程を示す図である。
【図3B】図3Bは、有機EL表示装置を形成するための製造工程を説明するための図であり、絶縁膜を成膜する工程を示す図である。
【図3C】図3Cは、有機EL表示装置を形成するための製造工程を説明するための図であり、隔壁を形成する工程を示す図である。
【図3D】図3Dは、有機EL表示装置を形成するための製造工程を説明するための図であり、絶縁膜を除去する工程を示す図である。
【図3E】図3Eは、有機EL表示装置を形成するための製造工程を説明するための図であり、有機活性層を形成する工程を示す図である。
【図3F】図3Fは、有機EL表示装置を形成するための製造工程を説明するための図であり、第2電極を形成する工程を示す図である。
【符号の説明】
【0041】
1…有機EL表示装置、10…画素スイッチ、20…駆動トランジスタ、30…蓄積容量素子、40…有機EL素子、60…第1電極、64…有機活性層(光活性層)、66…第2電極、70…隔壁、80…下地部、100…アレイ基板、120…配線基板、PX…画素、200…封止体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上の表示エリアにおいて、各画素において独立島状の第1電極を形成する工程と、
前記第1電極を覆うように絶縁膜を成膜する工程と、
前記絶縁膜上において各画素を分離する隔壁を形成する工程と、
前記隔壁から露出した前記絶縁膜を除去する工程と、
各画素の前記第1電極上に光活性層を形成する工程と、
前記光活性層上に全画素に共通の第2電極を形成する工程と、
を備えたことを特徴とする表示装置の製造方法。
【請求項2】
さらに、前記隔壁を形成する工程の後に、アッシング処理する工程を追加したことを特徴とする請求項1に記載の表示装置の製造方法。
【請求項3】
前記絶縁膜は、酸化シリコンまたは窒化シリコンであることを特徴とする請求項1に記載の表示装置の製造方法。
【請求項4】
前記絶縁膜は、無機系材料でなることを特徴とする請求項1に記載の表示装置の製造方法。
【請求項5】
前記隔壁は、有機系材料でなることを特徴とする請求項4に記載の表示装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図3D】
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【図3E】
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【図3F】
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【公開番号】特開2007−26866(P2007−26866A)
【公開日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−206953(P2005−206953)
【出願日】平成17年7月15日(2005.7.15)
【出願人】(302020207)東芝松下ディスプレイテクノロジー株式会社 (2,170)
【Fターム(参考)】