説明

表示装置の製造装置、表示装置の製造方法、および表示装置の基板

【課題】表示部を形成するためのパターンが形成された基板と、被位置合わせ部材とを高精度に位置合わせ可能な表示装置の製造装置を提供すること、煩雑な工程を行うことなく高精度に位置合わせ可能な製造方法を提供すること等。
【解決手段】表示装置の製造装置100は表示部を形成するためのパターン24が形成された基板2に被位置合わせ部材(マスク3)を対面させてパターン24とマスク3との位置合わせを行う。基板2はパターン24との位置関係が予め規定された位置に出力機能を有する受光素子部21を備える。マスク3は位置合わせ用透光部32を有する。製造装置100は受光素子部21又は透光部32との位置関係が固定され、透光部32を介して受光素子部21に光を照射可能な光源4を有する。製造装置100は受光素子部21の出力を基に基板2とマスク3との位置制御を行う位置制御手段(相対位置駆動部5や制御部8)を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示装置の製造装置、表示装置の製造方法、および表示装置の基板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の表示装置、例えば有機ELパネルの製造工程での基板と蒸着用マスクとの位置制御方法を説明する。
一般的な有機ELパネルの製造工程では、支持基板(基板)上に下部電極を形成する工程、支持基板(基板)を洗浄する工程、絶縁膜や隔壁などを形成する工程、蒸着前処理、有機層形成工程(パターン形成工程)、上部電極を形成する工程、封止工程(貼り合わせ工程)等が順次行われる。
上述した有機層形成工程(パターン形成工程)では、蒸着前処理された支持基板(基板)を、蒸着装置(位置制御装置)内へ搬送し、蒸着用マスクを蒸着源と支持基板との間に配置し、蒸着用マスクと基板との位置決めを行った後、蒸着により有機層(パターン)を成膜する。この蒸着用マスクに形成されている開口部が、基板に成膜される有機EL素子形成領域に対応するので、基板とマスクとの間で高精度な位置調整を行う必要がある。
【0003】
例えば特許文献1には、位置決め機能を有する蒸着装置が開示されている。この装置は、例えば図1に示すように、透明基板(基板)101に形成されたアライメントマーク102と、蒸着用マスク(マスク)103に形成されたアライメント用開口部104とをカメラ105により撮影し、その撮影結果に基づいて基板101とマスク103との位置調整を行う。位置調整後、真空チャンバー106内にて蒸着源107から蒸発した蒸着材料109が、マスク103のパターン形成用開口部108を介して基板101上に蒸着される。
【0004】
【特許文献1】特開2004−183044号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし上述した装置では、カメラ撮影により得られた画像に基づいて位置調整を行うが、例えば支持基板側のアライメントマーク102がレジスト等により汚れている場合では、誤検出や誤認識が生じて位置調整の精度が低下する場合がある。この位置調整の精度が低いと成膜時に成膜不良が生じて、最終的な表示パネルに表示不良等が生じる虞がある。またカメラ撮影による位置調整では透明基板に限られるという問題がある。またアライメントマーク102の検出精度を高めるために、反射性の高い金属材料によりアライメントマーク102を形成する方法が知られているが、例えば基板上に絶縁膜や隔壁等をフォトリソ工程により形成した場合には、アライメントマーク102がレジスト等の汚れるために、その汚れを除去する余計な工程を要するという問題がある。また基板101が半透明性や反射性を有する材料からなる場合にも、アライメントマーク102の画像認識の精度が低下して、位置調整の精度が低下する場合がある。また高精度に位置調整を行うためにアライメントマーク102を比較的小さく形成すると、汚れによる影響を受けやすくなる。
【0006】
本発明は、このような問題に対処することを課題の一例とするものである。すなわち、表示装置に用いられる基板と被位置合わせ部材とを高精度に位置合わせすることができる表示装置の製造装置を提供すること、煩雑な工程を行うことなく表示装置に用いられる基板と被位置合わせ部材とを高精度に位置合わせすることができる表示装置の製造方法を提供すること、不透明基板であっても被位置合わせ部材と高精度に位置合わせを行うことができること、等が本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このような目的を達成するために、本発明は、以下の各独立請求項に係る構成を少なくとも具備するものである。
請求項1に記載の発明は、表示部を形成するためのパターンが形成された基板に被位置合わせ部材を対面させて、前記パターンと前記被位置合わせ部材との位置合わせを行う表示装置の製造装置であって、前記基板は、前記パターンとの位置関係が予め規定された位置に、出力機能を有する受光素子部が形成され、前記被位置合わせ部材は、位置合わせ用の透光部を有し、前記受光素子部又は前記透光部との位置関係が固定され、前記透光部を介して前記受光素子部に光を照射可能な光源を設け、前記受光素子部の出力に基づいて、前記基板と前記被位置合わせ部材との位置制御を行う位置制御手段を有することを特徴とする。
【0008】
請求項10に記載の発明は、表示部を形成するためのパターンが形成された基板に被位置合わせ部材を対面させて、前記パターンと前記被位置合わせ部材との位置合わせを行う表示装置の製造方法であって、前記基板は、前記パターンとの位置関係が予め規定された位置に、出力機能を有する受光素子部が形成され、前記受光素子部、又は前記被位置合わせ部材に形成された位置合わせ用の透光部との位置関係が固定された光源から、前記透光部を介して前記受光素子部に光を照射する工程と、前記受光素子部の出力に基づいて、前記基板と前記被位置合わせ部材との位置制御を行う工程とを有することを特徴とする。
【0009】
請求項15に記載の発明は、表示部を形成するためのパターンが形成され、当該パターンと被位置合わせ部材とが位置合わせされる表示装置の基板であって、前記基板は、前記パターンとの位置関係が予め規定された位置に、出力機能を有する受光素子部が形成されていることを特徴とする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の一実施形態に係る表示装置の製造装置は、表示部を形成するためのパターンが形成された基板に被位置合わせ部材を対面させて、パターンと被位置合わせ部材との位置合わせを行う。この基板には、パターンとの位置関係が予め規定された位置に、出力機能を有する受光素子部が形成されている。また被位置合わせ部材は、位置合わせ用の透光部を有する。また光素子部又は透光部との位置関係が固定され、透光部を介して受光素子部に光を照射可能な光源が設けられている。製造装置は、受光素子部の出力に基づいて、基板と被位置合わせ部材との位置制御を行う位置制御手段を有する。
上記構成の表示装置の製造装置では、位置制御手段が受光素子部の出力に基づいて、基板と被位置合わせ部材との位置制御を行うので、表示装置の基板と被位置合わせ部材とを高精度に位置合わせすることができる。
【0011】
本発明の一実施形態に係る表示装置の製造方法は、表示部を形成するためのパターンが形成された基板に被位置合わせ部材を対面させて、パターンと被位置合わせ部材との位置合わせを行う表示装置の製造方法である。基板は、パターンとの位置関係が予め規定された位置に、出力機能を有する受光素子部が形成されている。製造方法は、受光素子部又は被位置合わせ部材に形成された位置合わせ用の透光部との位置関係が固定された光源から、透光部を介して受光素子部に光を照射する工程と、受光素子部の出力に基づいて、基板と被位置合わせ部材との位置制御を行う工程とを有する。
上記したように受光素子部の出力に基づいて、基板と被位置合わせ部材との位置制御を行うので、高精度に位置制御を行うことができる。
【0012】
本発明の一実施形態に係る表示装置の基板は、表示部を形成するためのパターンが形成され、当該パターンと被位置合わせ部材とが位置合わせされる表示装置の基板である。この基板は、パターンとの位置関係が予め規定された位置に、出力機能を有する受光素子部が形成されている。
上記構成の基板は、上記製造装置や製造方法により、前記被位置合わせ部材と高精度に位置合わせを行うことができる。
以下、図面を参照しながら、本発明の一実施形態を説明する。
【0013】
[第1実施形態]
図2は、本発明の第1実施形態に係る表示装置を製造する製造装置100を説明するための図である。本実施形態に係る製造装置を採用した蒸着装置は、基板に各種蒸着材料を蒸着するための装置であり、例えば有機ELパネルの表示装置の製造等に用いることができる。また、本発明に係る製造装置は上述した形態に限られるものではない。本発明に係る製造装置を、複数の部材間の位置合わせを行う組立装置に採用することができる。
本実施形態に係る表示装置の製造装置100は、例えば図2に示すように、基板2、マスク3、光源4、相対位置駆動部5、装置側端子部(端子部)6、蒸着源7、および制御部8を有する。
【0014】
基板2は本発明に係る基板の一実施形態に相当する。マスク3は本発明に係る被位置合わせ部材や成膜用のマスクの一実施形態に相当する。光源4は本発明に係る光源の一実施形態に相当する。相対位置駆動部5は本発明に係る相対位置駆動手段の一実施形態に相当する。端子部6は本発明に係る装置側端子部の一実施形態に相当する。蒸着源7は本発明に係る蒸着源の一実施形態に相当する。相対位置駆動部5および制御部8は本発明に係る位置制御手段の一実施形態に相当する。制御部8は本発明に係る制御回路の一実施形態に相当する。相対位置駆動部5は本発明に係る相対位置駆動手段の一実施形態に相当する。
【0015】
本実施形態に係る基板2は、例えば被位置合わせ部材と位置合わせする表示装置に用いられる部材である。本実施形態に係る基板2は、例えば有機EL素子を形成する基板、液晶を形成する基板、PDPを形成する基板などの表示用素子を形成する基板(成膜時にマスクとの位置調整が行われる)などの表示装置(表示パネル)を構成する基板に採用することができる。
また、基板2は、カラーフィルターを形成するために顔料を転写またはパターニングされる基板や、金属配線をフォトリソグラフィなどでパターン形成する際に使用される基板(転写時や露光時にフォトマスクとの位置調整)などに採用してもよい。また基板2は、例えばCOG(Chip on Glass)などのフレキシブル基板を貼りあわせる際に使用される基板などのような位置合わせを必要とする基板や樹脂フィルムなどに採用してもよい。また基板2は、表示用素子が形成された基板と、表示用素子を保護する部材とを貼りあわせる際の基板などの各種基板に採用することができる。
【0016】
基板2は、例えば図2に示すように、受光素子部21、基板側端子部(端子部)22、パターン形成領域23、およびパターン24を有する。
受光素子部21は本発明に係る受光素子部の一実施形態に相当する。基板側端子部(端子部)22は本発明の基板側端子部の一実施形態に相当する。パターン形成領域23は本発明に係る表示部の一実施形態に相当する。パターン24は本発明に係るパターンの一実施形態に相当する。パターン形成領域23には、本発明に係るパターン24が予め形成されている。このパターン24は、表示装置の表示部を形成するためのパターンであり、位置合わせ前に予め基板2上に形成されている。このパターン24と被位置合わせ部材とを位置合わせする。
【0017】
受光素子部21は、基板2上の予め規定された位置に形成されている。詳細には受光素子部21は、パターンとの位置関係が予め規定された位置に、出力機能を有する受光素子部が形成されている。具体的には受光素子部21は、パターン形成領域23以外の領域、例えばパターン形成領域23の近傍に形成されている。本実施形態では図2に示すように、複数の受光素子部21が基板2の端部近傍、好ましくは基板2の角部に規定距離だけ離れて形成されている。この際、受光素子部21間が離れているほど基板2の面内方向の位置合わせ精度が高い。
受光素子部21は、後述するように光源4からマスク3を介して受光し、その受光結果に応じた信号を出力する。また受光素子部21は、後述するようにマスク3に形成されたアライメントマーク(透光部)32に対応した位置に、基板2上に形成されている。つまり受光素子部21は、マスク3の規定位置に形成されたアライメントマーク(透光部)32を検出する機能を有する。
受光素子部21としては、半導体受光素子、例えばフォトダイオード、フォトトランジスタや、電荷結合素子(CCD:Charge Coupled Devices)、CMOS(Complementary Metal-Oxide Semiconductor)センサ等のイメージセンサ等の各種受光素子(光電変換素子)を採用することができる。
この受光素子部21は、基板2上の予め規定された領域内に1個の受光素子部21が形成されていてもよいし、基板2上の予め規定された領域内に複数個の受光素子部21がアレイ形状、マトリクス形状など各種形状に形成されていてもよい。上記構成の複数個の受光素子部21を設けることにより、光源4からマスク3を介して受光した結果に基づいて高精度に位置検出を行うことができ、その結果、高精度に位置合わせを行うことができる。
受光素子部21は、例えばフォトリソ工程やエッチング工程、スパッタ法、真空蒸着法、CVD法などの成膜工程等、各種製造工程により基板2上に形成される。この際、受光素子部21は、パターンの形成工程に対応して、フォトリソ工程やエッチング工程等により、基板2上に形成される。受光素子部21はこの形態に限られるものではない。例えば予め基板2とは別体にて形成されたフォトダイオードやフォトトランジスタ等の受光素子部21を、基板2上の予め規定された位置に接着剤等により接着して形成してもよい。
【0018】
端子部22は、受光素子部21の出力機能として、受光素子部21に電気的に接続された導電部であり、基板2上に形成されている。この端子部22は、一端が受光素子部21に電気的に接続され、他端が外部装置に接続可能に形成された端子である。またこの導電材料からなる端子部22は、例えばフォトリソ工程やエッチング工程、スパッタ法、真空蒸着法、CVD法などの成膜工程等、各種製造工程により形成される。端子部22は、例えば図2に示すように、受光素子部21の近傍に形成され、基板2の端部近傍の辺に沿って形成されている。
パターン形成領域23は、上述したように表示装置の表示部を形成するためのパターン24が形成された領域である。例えばパターン形成領域23には、表示部の下部電極などの各種パターンが予め形成されている。また例えばパターン形成領域23には、パターン領域内にスパッタ法、真空蒸着法、CVD法、イオンプレーティング法などの成膜法により有機EL層や導電層、絶縁層、半導体層など各種材料からなる層が成膜される。
【0019】
上記構成の基板2の製造方法を簡単に説明する。まず図2に示すように、基板2上の予め規定された位置、詳細にはパターン形成領域23内に、パターン24を形成する。パターン24は、例えばフォトリソ工程エッチング工程、スパッタ法、真空蒸着法、CVD法などの成膜工程等、各種製造工程により形成される。
次に、このパターン24の形成工程に対応して受光素子部21および端子部22を形成する。この受光素子部21および端子部22は、例えばフォトリソ工程またはエッチング工程、スパッタ法、真空蒸着法、CVD法などの成膜工程等、各種製造工程により形成される。例えば受光素子部21としてフォトダイオードを採用した場合には、基板2上に、下部電極、n型半導体、p型半導体、上部電極、保護膜等を各種製造方法により積層して受光素子部21を形成する。この受光素子部21と端子部22は同時に形成してもよいし、別々の工程にて形成してもよい。また受光素子部21や端子部22は、パターン形成と同時に形成してもよいし、別々の工程にて形成してもよい。上記製造方法により基板2を簡単に得ることができる。
【0020】
本実施形態に係るマスク3は、基板2に対する被位置合わせ部材である。本実施形態に係るマスク3は、成膜用のマスクであり、例えばいわゆる蒸着用の遮蔽マスク(シャドーマスク)である。このマスク3は、光源4と基板2との間に配置されている。またマスク3は、遮蔽部31、透光部(アライメントマーク)32、およびパターン形成用開口部33を有する。
マスク3は、例えば金属材料や樹脂材料など各種材料からなる。本実施形態に係るマスク3を、例えば蒸着用マスクに採用した場合には、遮蔽部31は蒸着源からの蒸着材料をマスク3に対して遮蔽する。また遮蔽部31は、光源4から放射された光を基板2に対して遮蔽する機能を有する。透光部32は、製造工程における他の部材との位置合わせを行うための指標となる。詳細には透光部32は、マスク3の予め規定された位置、例えば基板2の受光素子部21と対応する位置に形成され、少なくとも光源4から放射された光を透過する。具体的には透光部32は、光源4から放射された光を透過する材料により形成されていてもよいし、貫通孔部(透光孔部)であってもよい。パターン形成用開口部33は、例えばマスク3を蒸着用マスクとして採用した場合に、基板2上に形成される蒸着パターンの形状に対応して形成された貫通孔部である。
【0021】
光源4は、第1の部材(基板2)と第2の部材(マスク3)と間の位置合わせを行うための光(アライメント光)を放射する光源である。詳細には光源4は受光素子部21又は透光部32との位置関係が固定され、透光部32を介して受光素子部21に光を照射可能である。光源4は、例えば特定の波長(特定の周波数)のレーザ光や、白熱光、太陽光を集光した光等の各種光を出力する光出力装置を採用することができる。光源4は、例えば受光素子部21としてn型半導体およびp型半導体などにより構成されるフォトダイオードを採用した場合には、その受光素子部21の半導体バンドギャップよりも、光源4から出力されるアライメント光のエネルギーが大きくなくように設定されている。また光源4は、例えば予め規定された波長(または周波数)の光や、規定パルス長のパルス光など、外光と区別できるような光を放射することが好ましい。こうすることで受光素子部21では、光源4からの光と外光とを区別することができ、位置合わせ精度を向上させることができる。
【0022】
相対位置駆動部5は、例えば制御部8からの制御により、基板2とマスク3との相対位置の位置調整を行う。詳細には相対位置駆動部5は、基板2やマスク3を支持し、制御部8からの制御信号に基づいて、基板2およびマスク3との相対位置の位置調整を行う。相対位置駆動部5は、例えば基板2とマスク3とを面内方向に沿って、詳細にはx軸方向、y軸方向に沿って相対的移動することができる。また相対位置駆動部5は更に、例えば基板2とマスク3とを相対回転させることができる。また相対位置駆動部5は、例えば基板2とマスク3とをz軸方向に沿って相対的移動できるように構成されていてもよい。
【0023】
端子部6は、一端が基板2上に形成された端子部22に対して電気的に接続可能に形成され、他端部が制御部8に接続されている。
蒸着源7は、蒸着材料を収容する収容容器や蒸着材料を加熱する加熱部を有する。この加熱部は例えば制御部8により加熱制御される。
【0024】
制御部8は、装置全体を統括的に制御して本発明に係る機能を実現する。制御部8は、例えば受光素子部21による受光結果に基づいて、基板2とマスク3とが予め規定された相対位置となるように、相対位置駆動部5を駆動して基板2とマスク3との相対位置を調整する。
制御部8は、基板2とマスク3との相対位置を決定した場合には、基板2とマスク3とをその相対位置関係を保持した状態で固定する。
【0025】
制御部8による相対位置の制御としては、各種条件などに応じて適宜、最適な制御を行うことが好ましい。
図3は図2に示した製造装置100の制御部8の動作を説明するための図である。横軸は基板2とマスク3との相対位置rを示し、縦軸は受光素子部21による受光結果の受光強度を示す。図3(a),(b)は基板2とマスク3との相対位置に対する受光強度分布Ip1を示す図である。
例えば制御部8は、図3(a)に示すように、受光素子部21により受光した結果、相対位置raにて受光強度Ip2を得た場合に、予め規定された受光強度Ip3になるように相対位置駆動部5を制御する。この受光強度分布Ip3は、図3(b)に示すように相対位置rbにて受光強度が最大ピークとなる。
【0026】
また制御部8は、図3(b)に示すように、受光素子部21により受光した結果に基づいて、例えば受光強度Iが最大ピーク値Idとなるように相対位置駆動部5を駆動する。例えば制御部8は、相対位置rcにて受光強度Icが得られた場合に、相対位置駆動部5を制御して受光強度Iが大きくなるように基板2とマスク3との相対位置rを調整し、相対位置rdにて最大受光強度Idが得られた場合に、その相対位置rdにて基板2とマスク3との相対的位置関係を固定する。
【0027】
また制御部8は、受光素子部21により受光した結果に基づいて、最大受信強度の半値幅の中間に対応する相対位置となるように、基板2とマスク3との位置制御を行ってもよい。詳細には制御部8は、例えば図3(b)に示すように、最大受光強度Idの半値Idhに対応する相対位置re,rfを特定し、その特定した位置re,rfの中間位置rgにて基板2とマスク3とを相対的に固定してもよい。
【0028】
また、制御部8は、受光素子部21がマスク3の透光部32を介して検出した光の受光強度分布に基づいて最大強度ピークが得られるように、基板2を微小移動させて位置合わせを行ってもよい。
【0029】
上記構成の製造装置100の動作を、図面を参照しながら説明する。
先ず、基板2およびマスク3を製造装置100内に搬送する。基板2と光源4の間にマスク3を配置する。次に基板2の受光素子部21に電気的に接続された端子部22に、端子部6が接続される。次に制御部8は、光源4を制御して光源4からレーザ光が出力される。基板2の受光素子部21では、受光した結果に応じた信号が出力される。制御部8は、受光素子部21から端子部22および端子部6を介して出力された信号に基づいて相対位置駆動部5を制御する。この際、制御部8は受光結果に基づいて受光強度が大きくなるように相対位置駆動部5に制御信号を出力する。相対位置駆動部5は制御部8からの制御信号に基づいて、基板2とマスク3との相対位置を調整する。
【0030】
この際、上述したように制御部8は、受光素子部21からの信号に基づいて所定の受光強度分布となるように相対位置駆動部5を制御してもよい。また例えば制御部8は、受光素子部21で受信される受光強度が最大レベルとなるように相対位置駆動部5を制御してもよい。また制御部8は受光強度レベルの半値幅を特定し、その特定した半値幅の中間位置となるように相対位置駆動部5を制御してもよい。
【0031】
制御部8は、上記制御の結果、基板2とマスク3とが所定の位置に位置決めされた場合には、基板2とマスク3の位置関係を固定するように、相対位置駆動部5を制御する。そして制御部8は、蒸着源7を制御して、蒸着源7から蒸着材料を蒸発させる。蒸着源7からの蒸着材料が、マスク3を介して基板2上のパターン形成領域23に蒸着される。
【0032】
以上説明したように、本実施形態に係る製造装置100は、表示装置の表示部を形成するためのパターン24が形成された基板2に、被位置合わせ部材(マスク3)を対面させて、パターン24と被位置合わせ部材とを位置合わせを行った後、蒸着源7からの蒸着材料をマスク3を介して被蒸着対象の基板2に蒸着する。この際、基板2には、光源4からの光を受光し出力機能(端子部22)を有する受光素子部21が、基板2上の規定位置、詳細にはパターン24との位置関係が予め規定された位置に形成されている。マスク3は光源4と基板2の間に配置され、マスク3には受光素子部21に対応する位置に形成された、光源4からの光を透過するアライメントマークとしての透光部32を備える。製造装置100は受光素子部21又は透光部32との位置関係が固定され、透光部32を介して受光素子部21に光を照射可能な光源4を有する。そして製造装置100は受光素子部21の出力に基づいて基板2とマスク3との位置制御を行う位置制御手段(相対位置駆動部5や制御部8)を有するので、煩雑な工程を行うことなく、高精度に基板2と被位置合わせ部材(マスク3)とを位置制御可能である。
【0033】
また、高精度に基板2とマスク3とが位置合わせされた状態で成膜を行うことで、基板2のパターン形成領域23に高精度に成膜パターンを形成することができる。また例えば基板2に予め形成された下部電極等のパターン24に、有機EL層などの成膜材料を高精度に成膜することができるので、高性能な表示装置を得ることができる。
【0034】
また基板2上に成膜パターンを形成する場合に、例えば有機EL素子を構成する成膜層を形成する場合に、受光素子部21を基板2上に形成し、受光素子部21が検出する光強度分布に基づいて、基板2とマスク3との位置合わせを行うので、基板2上に汚れが付着している場合でも高精度に位置合わせを行うことができる。また基板2が非透明性基板であっても、光源4(マスク3)に対向する面側に、受光素子部21を形成することで、マスク3の透光部32を介した光を受光することができ、その受光強度に基づいて簡単に位置合わせを行うことができる。
【0035】
また本発明に係る位置制御手段は、例えば強度分布を検出してその強度ピーク位置を特定し、その強度ピークの位置となるように基板2とマスク3との相対位置を制御するので、例えば単純にカメラでアライメントマークを撮影した結果に基づいて位置合わせを行う従来の装置と比べて、高精度に位置合わせを行うことができる。
また基板2に出力機能を有する受光素子部21を設けたので、不透明な基板であっても被位置合わせ部材(マスク3)と高精度に位置合わせを行うことができる。
【0036】
[第2実施形態]
図4は本発明の第2実施形態に係る製造装置100aを説明するための図である。図5は図4に示した基板2aを説明するための図である。図6は図4に示した基板2aおよび基板支持部を説明するための図である。図7は図4に示したマスク3aを説明するための図である。図8は図4に示した基板2aおよび基板支持部とを説明するための図である。図8(a)は基板支持部を説明するための斜視図であり、図8(b)は基板および基板支持部を説明するための斜視図である。第1実施形態と同じ機能の構成要素については説明を省略する。
【0037】
図4に示すように、本実施形態に係る製造装置100aは、基板2a、マスク3a、光源4、相対位置駆動部5a、端子部6a、蒸着源7、制御部8a、真空槽10、および回転駆動部11を有する。本実施形態では真空槽10内に、基板2a、マスク3a、光源4、相対位置駆動部5a、端子部6a、蒸着源7、および回転駆動部11が配置され、真空槽10の外に制御部8aが配置されている。
真空槽10は、例えば図示しない真空ポンプ等を含む真空排気系を有し、内部を所定圧力に維持できるようにしている。真空槽10内の上部に基板2aやマスク3aが配設され、その下方にマスク3aと対向するように蒸着源7が設置されている。
【0038】
本実施形態に係る基板2aは、例えば図5に示すように、受光素子部21a、端子部22a、パターン形成領域23a、およびパターン24aを有する。
本実施形態に係る受光素子部21aは、図5に示すように、基板2aの端部近傍、好ましくは角部近傍に形成されている。例えば4個の受光素子部21が角部近傍に形成されている。また本実施形態では受光素子部21aとしてフォトダイオードを採用する。端子部22aは、図4に示すように、基板2a上に導電材料からなり略L字状に形成されており、一端部が例えばフォトダイオードのアノードに電気的に接続し、他端部が基板2の端部に配置するように形成された第1の端子部221と、基板2上に導電材料からなり略L字状に形成され、一端部がフォトダイオードのカソードに電気的に接続し、他端部が基板2の端部に配置するように形成された第2の端子部222とを有する。パターン形成領域23aは、基板2aの略中央部に左右に並んで2つパターン形成領域231,232が形成されている。また受光素子部21は、例えば図5に示すように、各構成要素、詳細には受光素子部21a、端子部22aが、xy平面内で180度回転させたときに一致するように形成されている。パターン24aは、パターン形成領域23a内に形成されている。このパターン24aは表示装置の表示部を形成するためのパターンである。本実施形態ではパターン形成領域231,232にパターン241,242が形成されている。受光素子部21aは、このパターン24aとの位置関係が予め規定された位置に形成される。この構成によりパターン24aと被位置合わせ部材(マスク3a)とを高精度に位置合わせすることができる。
【0039】
マスク3aは、図7に示すように、遮蔽部31a、透光部(アライメントマーク)32a、およびパターン形成用開口部33aを有する。本実施形態に係る遮蔽部31a、パターン形成用開口部33aは、基板2aのパターン形成領域23に対応した形状に形成されている。透光部(アライメントマーク)32aは、基板2aの受光素子部21aに対応して形成されている。本実施形態に係る透光部32aは、図7に示すように、2つの透光孔部がマスク3aの角部に形成されている。
【0040】
本実施形態に係る相対位置駆動部5aは、図4,8に示すように、基板支持部51、マスク支持部52、マスク位置駆動部53、基板位置駆動部54を有する。
基板支持部51は、基板2aを保持する。基板支持部51は、例えば図4,図8(a)に示すように、略L字形状に屈曲した腕部が形成され、その端部にて基板2aを支持する。また基板支持部51は、基板2a上に形成された端子部22aと接触する面側に、端子部22aと電気的に接続可能な装置側端子部(端子部)6aが形成されている。詳細には端子部6aは、基板支持部51が基板2aを支持した状態で、基板2aに形成された端子部22aと対応する位置に、基板支持部51の端部に形成されている。この端子部6aは制御部8aに電気的に接続されている。そして図6,図8(b)に示すように、基板2aを基板支持部51にて支持することで、端子部22aと端子部6aとが電気的に接続する。つまり受光素子部21aと制御部8とが電気的に接続される。
上記構成の基板支持部51に端子部6aを設けたことにより、簡単に受光素子部21aと制御部8とを電気的に接続することができる。また基板2aのパターン形成領域23aの成膜有効エリアを広げることができる。
【0041】
マスク支持部52は、マスク3aを保持する。マスク支持部52は、例えば枠形状に形成され、図4に示すようにマスク3aの端部付近を支持する。
マスク位置駆動部53は、例えば制御部8aによる制御に応じて、基板2aに対してマスク3aの相対位置を調整する。詳細にはマスク位置駆動部53は、基板2aに対してx軸方向、y軸方向に沿って相対移動することができる。マスク位置駆動部53は、例えば基板2aとマスク3aとを相対回転させることができる。またマスク位置駆動部53は、例えば基板2aとマスク3aとをz軸方向に沿って相対的移動できるように構成されていてもよい。
基板位置駆動部54は、例えば制御部8aの制御により、基板2aの位置をx軸方向、y軸方向に沿って相対移動することができる。
回転駆動部11は、相対位置駆動部5aを保持し、つまり基板2aおよびマスク3aを保持し、制御部8aの制御により、成膜中に相対位置駆動部5aを回転させる。
【0042】
本実施形態に係る制御部8aは、例えば図4に示すように、インタフェース81、操作入力部82、表示部83、メモリ84、記憶装置85、およびCPU(制御回路)86を有する。各構成要素はバス(導電線)87により電気的に接続されている。インタフェース81は、製造装置の規定された構成要素、例えば光源4、相対位置駆動部5a、蒸着源7、端子部6aを介して受光素子部21a等に電気的に接続されており、制御回路86の制御により、その構成要素に制御信号を出力したり、その構成要素からの信号を制御回路86に出力する。操作入力部82は、例えばオペレータにより操作される操作入力装置、例えばキーボードや、操作ボタン、マウスなどにより構成され、その操作に応じた信号を制御回路86に出力する。制御回路86は、その信号に応じた処理を行う。表示部83は、例えば制御回路86の制御により、本発明に係る画面表示を行う。メモリ84は、例えばRAMやROMなどの半導体メモリなどにより構成され、例えば本発明に係る機能を有するプログラムなど記憶する。制御回路86は例えばこのプログラムを実行することにより本発明に係る機能を実現する。記憶装置85は、例えばハードディスクドライブ(HDD)や光磁気ディスクドライブなどの記憶装置により構成される。CPU(制御回路)86は、装置全体を統括的に制御する。制御回路86の詳細な動作については後述する。
【0043】
図9は、図4に示した製造装置100aの動作を説明するためのフローチャートである。図9を参照しながら、製造装置100aの動作を制御部8a、詳細には制御回路86の動作を中心に説明する。
ステップS1において、基板2a、マスク3a、光源4、蒸着源7などを予め規定された初期位置に設定する。詳細には先ず、真空槽10内に基板2aを基板支持部51にて支持して初期位置に配置し、光源4と基板2aの間にマスク3aを規定位置に配置する。この際上述したように、基板2aの受光素子部21aに電気的に接続された端子部22aが、端子部6aに接続される。
ステップS2において、制御部8aは、光源4を制御して光源4からレーザ光が出力される。
ステップS3において、基板2aの受光素子部21aでは、受光した結果に応じた信号が出力される。
ステップS4において、制御部8aは、受光素子部21から端子部22a、端子部6aを介して入力された信号に基づいて相対位置駆動部5aを制御する。この際、制御部8aは受光結果に基づいて受光強度が大きくなるように相対位置駆動部5aに制御信号を出力する。相対位置駆動部5aは制御部8aからの制御信号に基づいて、基板2aとマスク3aとの相対位置を調整する。制御部8aは、詳細には例えばマスク位置駆動部53に制御信号を出力して、基板2aとマスク3aとの相対位置、詳細にはx軸方向、y軸方向、z軸方向に沿った相対位置を調整する。また、上述したように制御部8aは、受光素子部21からの信号に基づいて所定の受光強度分布となるように相対位置駆動部5aを制御してもよい。
ステップS5において、制御部8aは、上記制御の結果、基板2aとマスク3aとが所定の位置に位置決めされた場合には、基板2aとマスク3aの位置関係を固定するように、相対位置駆動部5aを制御する。
ステップS6において、制御部8aは、蒸着源7を制御して、蒸着源7から蒸着材料を蒸発させる。蒸着源7からの蒸着材料が、マスク3aを介して基板2a上のパターン形成領域23に蒸着される。この成膜時に、制御部8aは、回転駆動部11を回転駆動させて、基板2aおよびマスク3aを回転させている。
【0044】
以上説明したように、本実施形態に係る製造装置100aは、基板2a上に形成された端子部22aと接触する面側に、端子部22aと電気的に接続可能な装置側端子部(端子部)6aが形成された基板支持部51を有するので、基板2aを基板支持部51にて支持することで、端子部22aと端子部6aとが簡単に電気的に接続する。つまり受光素子部21aと制御部8aとを簡単に電気的に接続することができる。
【0045】
また、製造装置100aは、蒸着源7上に基板2aおよび蒸着用マスク3aを保持し、成膜中に基板2aと蒸着用マスク3aを回転させる回転駆動部11に、相対位置駆動部5aの各構成要素を設けたので、制御部8aは、簡単に基板2aとマスク3aとを位置調整した後、その状態で基板2aとマスク3aとを回転させて蒸着することができる。こうすることにより高精度に成膜されたパターンを有する基板2aを得ることができる。上記実施形態に係る製造装置100aを有機EL素子を形成する装置に適用した場合には、高精度に成膜されたパターンを有する基板2aを用いて、高品質の表示性能を有する表示装置を得ることができる。
また基板2aに出力機能を有する受光素子部21aを設けたので、不透明な基板であっても被位置合わせ部材(マスク3a)と高精度に位置合わせを行うことができる。
【0046】
[第3実施形態]
図10は、本発明の第3実施形態に係る製造装置100bを説明するための図である。本実施形態に係る製造装置100bは、基板2bと蒸着用マスク3aとのギャップ調整を高精度に行う。詳細には本実施形態に係る製造装置100bでは、図10に示すように、基板2b,マスク3aの面に対して略直交する方向(垂直な方向)に沿って光(レーザ光)を放射する光源4aと、基板2b,マスク3aの面に対して斜め方向に光(レーザ光)を照射する光源4bを有する。この光源4bから放射された光は、マスク3aの透光部32aを斜め方向に入射し、基板2aに対しても斜め方向に入射する。また、本実施形態に係る光源4a,光源4bは真空槽10の外部に配置され、透光窓部10aを介して、光(レーザ光)を真空槽10内部に入射している。
基板2bは、受光素子部21aと、それに隣接して受光素子部21bが形成されている。この受光素子部21aは、光源4aからの光(レーザ光)を受光する。受光素子部21bは、例えば基板2bとマスク3aとが予め規定された相対距離(ギャップ)となった場合に、光源4bからの光(レーザ光)を受光するように配置されている。
【0047】
上記構成の製造装置100bでは、制御部8aは、先ず受光素子部21aにより受光結果に基づいて相対位置駆動部5aを駆動制御して、基板2bとマスク3とのx軸方向,y軸方向に沿った相対位置調整を行う。次に制御部8aは、受光素子部21bによる受光結果に基づいて相対位置駆動部5aを駆動制御して、基板2bとマスク3aとの相対距離(ギャップ)を調整する。詳細には、基板2bとマスク3aとが予め規定された相対距離(ギャップ)となった場合に、光源4bからの光(レーザ光)の受光強度が最大となるように受光素子部21bを形成しておき、制御部8aは、受光素子部21bにて光源4bから受光した結果、受光強度が最大強度となった場合に、その位置を規定されたギャップとして特定し、その位置関係にて基板2bとマスク3aとを固定する。
【0048】
上述したように製造装置100bでは、上記光源4aと光源4bを設け、受光素子部21aと受光素子部21bとを基板2b上に形成したので、制御部8aは受光素子部21aと受光素子部21bによる受光結果に基づいて、容易に、基板2bとマスク3aとのギャップ調整を行うことができる。
ギャップ調整は、上述した形態に限られるものではない。例えば光源4とマスク3aとの間に、レンズやミラー(鏡)、屈折部材等の光学系を配置して、上記構成と同等な制御を行ってもよい。また光源4bや受光素子部21bを設けずに、光源4とマスク3aとの間に、レンズや鏡、屈折部材等の光学系を設け、高性能な受光素子部21により、例えばピンホール現象などを利用して、ギャップ調整を行ってもよい。
【0049】
本発明は、上述した実施形態に限られるものではない。
例えば上述した製造方法によって製造される有機EL素子は、蒸着源7からの蒸着流によって有機機能層を少なくとも一層備える。例えば有機EL素子の有機機能層の構造は、下部電極を陽極、上部電極を陰極とした場合には、正孔輸送層/発光層/電子輸送層の構成が一般的であるが、発光層,正孔輸送層,電子輸送層はそれぞれ1層だけでなく複数層積層して設けてもよく、正孔輸送層,電子輸送層についてはどちらかの層を省略しても、両方の層を省略して発光層のみにしても構わない。また、有機機能層としては、正孔注入層,電子注入層,正孔障壁層,電子障壁層等の有機層を用途に応じて挿入することができる。また、有機発光機能層を電子輸送層/発光層/正孔輸送層として、下部電極を陰極、上部電極を陽極にすることもできる。
【0050】
また、本発明の実施形態として採用できる有機機能層材料の例を以下に示すが、特にこれらに限定されるものではない。
例えば、正孔輸送層としては、正孔移動度が高い機能を有していればよく、その材料としては従来公知の化合物の中から任意のものを選択して用いることができる。具体例としては、銅フタロシアニン等のポルフィリン化合物、4,4’−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ]−ビフェニル(NPB)等の芳香族第三アミン、4−(ジ−p−トリルアミノ)−4’−[4−(ジ−p−トリルアミノ)スチリル]スチルベンゼン等のスチルベン化合物や、トリアゾール誘導体、スチリルアミン化合物等の有機材料が用いられる。また、ポリカーボネート等の高分子中に低分子の正孔輸送用の有機材料を分散させた、高分子分散系の材料も使用できる。
【0051】
例えば発光層は、公知の発光材料が使用可能であり、具体例としては、4,4’−ビス(2,2’−ジフェニルビニル)−ビフェニル(DPVBi)等の芳香族ジメチリディン化合物、1,4−ビス(2−メチルスチリル)ベンゼン等のスチリルベンゼン化合物、3−(4−ビフェニル)−4−フェニル−5−t−ブチルフェニル−1,2,4−トリアゾール(TAZ)等のトリアゾール誘導体、アントラキノン誘導体、フルオレノン誘導体等の蛍光性有機材料、(8−ヒドロキシキノリナト)アルミニウム錯体(Alq3)等の蛍光性有機金属化合物、ポリパラフェニレンビニレン(PPV)系、ポリフルオレン系、ポリビニルカルバゾール(PVK)系等の高分子材料、白金錯体やイリジウム錯体等の三重項励起子からのりん光を発光に利用できる有機材料(特表2001−520450)を使用できる。上述したような発光材料のみから構成したものでもよいし、正孔輸送材料、電子輸送材料、添加剤(ドナー、アクセプター等)または発光性ドーパント等が含有されてもよい。また、これらが高分子材料又は無機材料中に分散されてもよい。
【0052】
例えば、電子輸送層は、陰極より注入された電子を発光層に伝達する機能を有していればよく、その材料としては従来公知の化合物の中から任意のものを選択して用いることができる。具体例としては、ニトロ置換フルオレノン誘導体、アントラキノジメタン誘導体等の有機材料、8−キノリノール誘導体の金属錯体、メタルフタロシアニン等が使用できる。
【0053】
また、上述した実施形態では、光源4の上方にマスク3が配置され、マスク3の上方に基板2が配置されたが、この形態に限られるものではない。例えば基板2とマスク3の位置関係は、上下逆でもよいし、横に配置してもよい。ただし、光源4と基板2の間にマスク3が配置されるように設定される。
また、光源4から出力されるアライメント光は、レンズやミラーなどの光学系を介して、マスク3,基板2に照射されてもよい。アライメント光に、レンズを用いることで位置合わせ精度を向上させることができる。またミラーを用いてマスク3側から基板2へ向けて照射してもよい。また光源4は真空槽10内に設置してもよいし、光源4を真空槽10の外に設置してもよい。
【0054】
また、上述した実施形態では、基板2を備える表示装置を製造する工程のうち、マスクを用いた成膜工程の際に、基板2とマスク3との位置合わせ工程を行う製造装置を説明したが、この形態に限られるものではない。例えば表示装置を製造する工程のうち、ドライエッチング工程において、本発明に係る製造方法を適用して、基板2とマスク3との位置合わせ工程を行ってもよい。
【0055】
また、上述した実施形態では、蒸着工程(成膜工程)時の基板2とマスク3との位置合わせ工程に、本発明に係る製造装置、製造方法を適用したが、この形態に限られるものではない。本発明に係る製造装置を、例えば第1の部材と第2の部材との位置合わせを行う装置に適用してもよい。
また受光素子部21,21a、21bは、上記位置合わせ終了後、基板2から基板切断等により除去してもよい。
【0056】
以上説明したように、本発明の一実施形態に係る表示装置の製造装置100は、表示部を形成するためのパターン24が形成された基板2に被位置合わせ部材(蒸着用のマスク3)を対面させて、パターン24と被位置合わせ部材(マスク3)との位置合わせを行う表示装置の製造装置である。基板2は、パターン24との位置関係が予め規定された位置に、出力機能を有する受光素子部21が形成されている。また被位置合わせ部材(マスク3)は、位置合わせ用の透光部32を有する。そして受光素子部21又は透光部32との位置関係が固定され、透光部32を介して受光素子部21に光を照射可能な光源4を有する。また、製造装置100は、受光素子部21の出力に基づいて、基板2と被位置合わせ部材(マスク3)との位置制御を行う相対位置駆動部5および制御部8を有するので、基板2と被位置合わせ部材(マスク3)とを高精度に位置合わせ可能である。
【0057】
また、本発明の一実施形態に係る表示装置の製造装置100は、蒸着源7上に基板2および蒸着用マスク3を保持して、成膜中に基板2と蒸着用マスク3を回転させる手段(回転駆動部)11と、基板2上の受光素子部21が検知した光の強度分布を出力して光強度分布としてモニターできる検知用装置(制御部)8と、基板2上の受光素子部21へ照射するレーザ光を出力する光源4と、検知用装置(制御部)8にて確認した光強度分布が最大ピークとなるように、基板を微小移動させる機構(相対位置駆動部)5とを有する。上記構成の製造装置100では、検知用装置(制御部)8にて確認した光強度分布が最大ピークとなるように、基板2を微小移動させる機構を備えているので、高精度に蒸着用マスク3と基板2とを位置合わせすることができ、高精度に蒸着用マスク3を介して基板2上に所定のパターンを蒸着することができる。
【0058】
また、本発明の一実施形態に係る表示装置の製造装置100は、表示部を形成するためのパターン24が形成された基板2に被位置合わせ部材(マスク3)を対面させて、パターン24と被位置合わせ部材(マスク3)との位置合わせを行う表示装置の製造方法である。上述したように基板2は、パターン24との位置関係が予め規定された位置に、出力機能を有する受光素子部21が形成されている。また受光素子部21又は被位置合わせ部材(マスク3)に形成された位置合わせ用の透光部32との位置関係が固定された光源4から、透光部32を介して受光素子部21に光を照射する工程と、受光素子部21の出力に基づいて、基板2と被位置合わせ部材(マスク3)との位置制御を行う工程とを有するので、煩雑な工程を行うことなく高精度に基板2と被位置合わせ部材(マスク3)とを位置合わせすることができる。
【0059】
また高精度に位置合わせした後、マスク3を介して基板2上に有機EL素子を形成することで、高品質な表示を行うことができる有機EL表示装置を製造することができる。
【0060】
本発明に係る基板2は、表示部を形成するためのパターン24が形成され、当該パターン24と被位置合わせ部材(マスク3)とが位置合わせされる表示装置の基板2である。この基板2には、パターン24との位置関係が予め規定された位置に、出力機能を有する受光素子部21が形成されているので、受光素子部21が被位置合わせ部材(マスク3)上に形成されたアライメントマーク(透光部)32を検出するように位置合わせを行うことで、煩雑な工程を行うことなく簡単に、高精度に位置調整可能である。
【0061】
また従来、カメラによるマーク認識を行うアライメント方法では、例えば蒸着源と、マスクと、基板とを順次、規定位置となるように配置して蒸着する場合に、マスクと基板との間の位置合わせを行うために、マスクにアライメントマークを形成し、そのアライメントマークを透明性基板を介してカメラにより撮像し、その撮像結果に基づいて、マスクと基板との位置合わせを行っているが、基板マークとマスクマークが重なってしまった場合や、基板またはマスクのどちらかに異物が存在した場合、マスクのマークが小さい場合などには、誤認識や認識不良を生じる場合がある。
一方、本発明に係る製造装置100では、マスク3の透光部32から透過した光の強度分布に基づいて位置調整を行うので、マーク形状に頼った認識不良が生じにくく、高精度に位置調整を行うことができる。
【0062】
また従来のように、マスクから離れたところに設置されたカメラによりアライメントマークを認識するのと比べ、本発明に係る製造装置100では、基板2に接近したアライメントマークを基板2に形成された受光素子部21にて検知するので、アライメントマーク(透光部)32の大きさを極力小さくすることができ、位置合わせ精度が向上する。
【0063】
また従来は、光源とカメラの間にマスクおよび基板を配置し、光源から放射された光が、マスクのアライメントマークおよび基板を介してカメラに到達する必要があるので、透明性基板を用いたり又は基板に透光孔部を設ける必要がある。
一方、本発明に係る製造装置100では、例えばシリコン(Si)基板など不透明な基板に適用することで、透明性を有しない基板においても高精度に位置合わせを行うことができる。
【0064】
また、本発明に係る製造装置100では、製造段階で位置合わせ用のアライメントマークを検出するための受光素子部21が形成され、受光素子部21に接続する端子部22が形成され、基板支持部51に上記端子部6aが形成されているので、簡単に受光素子部21と制御部8とを電気的に接続することができ、製造工程を簡単化することができる。また、製造時間を短縮化することができる。
【0065】
また、従来のように基板にアライメントマークを形成しないので、アライメントマークに付着した汚れを除去するという煩雑な工程を行う必要がないので、製造時間が短縮される。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】従来の製造装置を説明するための図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係る製造装置100を説明するための図である。
【図3】図2に示した製造装置100の制御部8の動作を説明するための図であり、(a),(b)は基板2とマスク3との相対位置に対する受光強度分布を示す図である。
【図4】本発明の第2実施形態に係る製造装置100aを説明するための図である。
【図5】図4に示した基板2aを説明するための図である。
【図6】図4に示した基板2aおよび基板支持部を説明するための図である。
【図7】図4に示したマスク3aを説明するための図である。
【図8】図4に示した基板2aおよび基板支持部とを説明するための図であり、(a)は基板支持部を説明するための斜視図であり、(b)は基板および基板支持部を説明するための斜視図である。
【図9】図4に示した製造装置100aの動作を説明するためのフローチャートである。
【図10】本発明の第3実施形態に係る製造装置100bを説明するための図である。
【符号の説明】
【0067】
2 基板
3 蒸着用マスク(マスク)
4 光源
5 相対位置駆動部
6 装置側端子部(端子部)
7 蒸着源
8 制御部
21 受光素子部
22 基板側端子部(端子部)
23 パターン形成領域
24 パターン
31 遮蔽部
32 透光部
33 パターン形成用開口部
51 基板支持部
52 マスク支持部
53 マスク位置駆動部
54 基板位置駆動部
100,100a,100b 製造装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示部を形成するためのパターンが形成された基板に被位置合わせ部材を対面させて、前記パターンと前記被位置合わせ部材との位置合わせを行う表示装置の製造装置であって、
前記基板は、前記パターンとの位置関係が予め規定された位置に、出力機能を有する受光素子部が形成され、
前記被位置合わせ部材は、位置合わせ用の透光部を有し、
前記受光素子部又は前記透光部との位置関係が固定され、前記透光部を介して前記受光素子部に光を照射可能な光源を設け、
前記受光素子部の出力に基づいて、前記基板と前記被位置合わせ部材との位置制御を行う位置制御手段を有することを特徴とする表示装置の製造装置。
【請求項2】
前記被位置合わせ部材は、成膜源と、前記成膜源からの成膜材料が成膜される前記基板との間に配置される成膜用のマスクであり、
前記位置制御手段は、前記受光素子部の出力に基づいて、前記基板と前記マスクとの位置制御を行うことを特徴とする請求項1に記載の表示装置の製造装置。
【請求項3】
前記基板は、前記受光素子部の前記出力機能として、当該受光素子部に電気的に接続された基板側端子部を備え、
当該製造装置は、前記基板側端子部に電気的に接続可能な装置側端子部を有し、
前記位置制御手段は、前記基板側端子部および前記装置側端子部を介した前記受光素子部の出力に基づいて前記位置制御を行うことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の表示装置の製造装置。
【請求項4】
前記基板を支持する基板支持部を有し、
前記基板支持部は、前記基板上に形成された前記基板側端子部と接触する面側に、当該基板側端子部と電気的に接続可能な前記装置側端子部が形成されていることを特徴とする請求項3に記載の表示装置の製造装置。
【請求項5】
前記位置制御手段は、前記被位置合わせ部材と前記基板との相対位置調整を行う相対位置駆動手段と、
前記受光素子部の出力に基づいて、予め規定された受光強度になるように前記相対位置駆動手段を制御する制御回路とを備えることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一に記載の表示装置の製造装置。
【請求項6】
前記制御回路は、前記受光素子部の出力に基づいて、規定された受光強度分布となるように、前記相対位置駆動手段を制御することを特徴とする請求項5に記載の表示装置の製造装置。
【請求項7】
前記制御回路は、前記受光素子部の出力に基づいて、前記相対位置駆動手段により、前記被位置合わせ部材と前記基板との相対位置を微小に相対移動制御することを特徴とする請求項5に記載の表示装置の製造装置。
【請求項8】
前記受光素子部は、半導体受光素子からなることを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか一に記載の表示装置の製造装置。
【請求項9】
前記光源は、アライメント光としてパルス光、または可視外領域の波長の光を出力することを特徴とする請求項1から請求項8のいずれか一に記載の表示装置の製造装置。
【請求項10】
表示部を形成するためのパターンが形成された基板に被位置合わせ部材を対面させて、前記パターンと前記被位置合わせ部材との位置合わせを行う表示装置の製造方法であって、
前記基板は、前記パターンとの位置関係が予め規定された位置に、出力機能を有する受光素子部が形成され、
前記受光素子部、又は前記被位置合わせ部材に形成された位置合わせ用の透光部との位置関係が固定された光源から、前記透光部を介して前記受光素子部に光を照射する工程と、
前記受光素子部の出力に基づいて、前記基板と前記被位置合わせ部材との位置制御を行う工程と
を有することを特徴とする表示装置の製造方法。
【請求項11】
前記被位置合わせ部材は、成膜材料を前記基板上に所定のパターンに形成させるための開口部を備えた成膜用のマスクであり、
前記受光素子部の出力に基づいて、前記基板と前記成膜用のマスクとの位置制御を行った後、成膜を行うことを特徴とする請求項10に記載の表示装置の製造方法。
【請求項12】
前記基板に、前記受光素子部の前記出力機能として、当該受光素子部に電気的に接続された基板側端子部を形成し、
前記基板側端子部を介した前記受光素子部の出力に基づいて前記位置制御を行うことを特徴とする請求項10または請求項11に記載の表示装置の製造方法。
【請求項13】
前記受光素子部の出力に基づいて、規定された受光強度分布となるように、前前記位置合わせを行うことを特徴とする請求項10から請求項12のいずれか一に記載の表示装置の製造方法。
【請求項14】
前記受光素子部が前記透光部を介して検出した光の受光強度分布に基づいて、前記被位置合わせ部材と前記基板との相対位置を微小に相対移動制御させて前記位置合わせを行うことを特徴とする請求項10から請求項13のいずれか一に記載の表示装置の製造方法。
【請求項15】
表示部を形成するためのパターンが形成され、当該パターンと被位置合わせ部材とが位置合わせされる表示装置の基板であって、
前記基板は、前記パターンとの位置関係が予め規定された位置に、出力機能を有する受光素子部が形成されていることを特徴とする表示装置の基板。
【請求項16】
一端部が前記受光素子部に電気的に接続され、他端部が外部装置に接続可能な端子部が形成されていることを特徴とする請求項15に記載の表示装置の基板。
【請求項17】
前記端子部は、前記他端部が当該基板の端部近傍に形成されていることを特徴とする請求項15または請求項16に記載の表示装置の基板。
【請求項18】
前記受光素子部は、半導体受光素子からなることを特徴とする請求項15から請求項17のいずれか一に記載の表示装置の基板。
【請求項19】
前記基板上の予め規定された領域内に、複数の前記受光素子部が形成されていることを特徴とする請求項15から請求項18のいずれか一に記載の表示装置の基板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2007−157623(P2007−157623A)
【公開日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−354576(P2005−354576)
【出願日】平成17年12月8日(2005.12.8)
【出願人】(000221926)東北パイオニア株式会社 (474)
【Fターム(参考)】