説明

表示装置及び情報処理装置

【課題】ユーザの存在を検出するためのセンサを搭載した表示装置や情報処理装置において、ユーザのオフィス環境に左右されずに正確にユーザの在席や離席を把握できるようにする。
【解決手段】表示装置は、対象物に向けて光を発する発光部及び発光部から発せられ対象物に反射した光の受光量を検出する受光部が表示画面の下部に設けられ、発光部は、光の発する角度を表示装置の設置面に対して上方に傾け、かつ、傾けて発せられた光が対象物に反射した後に受光部の検出可能な範囲内に収まるように設置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示装置及び情報処理装置に関し、特に、ユーザの存在を検出するためのセンサを搭載した表示装置や情報処理装置の省電力機能に好ましく適用される技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年のエコロジーの観点から、PC、携帯電話機、テレビ等の電子機器において省電力機能を搭載するものが多くなってきている。この省電力機能の主要なものとしては、ユーザが電子機器を使用していないときの消費電力を下げるというものがある。例えばPCでいうと、一定時間入力がないとまず画面オフとなり、さらに一定時間入力がないとサスペンド状態となる。
【0003】
上記PCの例で述べた省電力機能は、現在多くのPCで標準的に装備されている一般的なものである。この現状の省電力機能では、OSがユーザの入力操作を監視し、入力操作状態に応じて省電力モード(画面オフ、サスペンド状態)への移行、標準モード(画面オン)への復帰を行う。また、省電力モードへの移行時間を設定し、設定時間の間ユーザの入力操作がなかったとき省電力モードに移行し、ユーザの入力操作を検出した時点で標準モードに復帰する。
【0004】
ところが、ユーザにとっては入力操作を行っていなくても作業中である場合(表示されている内容の読み込み、入力しようとする内容の考案等)があり、入力操作の有無のみをトリガとして省電力モードへの移行を行うことは、ユーザの操作状況の実態にそぐわない。入力操作がない間はなるべく省電力モードにしようとして設定時間を短くした場合、ユーザにとって作業中であるにもかかわらず頻繁に省電力モードに移行してしまい煩わしい。また、省電力モードから通常モードへの復帰するための入力操作が必要でユーザによっては面倒な場合もある。
【0005】
これに対して、最近では、ユーザの存在を検出するためのセンサ(例えば赤外線センサ等)を搭載したモニタ等の電子機器が登場してきている。このような電子機器では、センサの検出結果に応じて、ユーザが機器の近くにいない(離席している)ときは省電力モードに移行し、ユーザが機器の近くにいる(在席している)ときは標準モードに復帰する。また、このモード切り替えによれば、入力中のみならず入力中でない場合も含めたユーザの端末操作(作業中)のみ標準モードとし、それ以外は省電力モードとすることもでき、また標準モードへの復帰に入力操作が不要となる。
【0006】
ところで、例えば特許文献1には、ユーザを検出する赤外線センサの誤動作を防止するための技術が開示されている。特許文献1で開示されたセンサ装置は、発光部及び受光部の光路側に透過性のカバーを設け、少なくとも、このカバーの発光部と受光部との間にあるとされる部位に対して層状の赤外線吸収層を設けることで、カバーの内部を導光する散乱光を赤外線吸収層により吸収して、受光部に取り込まれる散乱光を低減するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2001−194232号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ユーザの存在を検出するためのセンサは、図1に示すようにモニタの表示画面の下部に設けられることが多い(ここでは赤外線センサ)。これは、電源ボタンやヘッドフォン入力端子等が配置されるのが一般にモニタの表示画面下部であり、これらの近辺に設けるのがデザイン上や機能上の観点から合理的なためである。
【0009】
赤外線センサは、赤外線を発するセンサ用LEDと反射した赤外線を検出するセンサとからなり、図2に示すように、センサ用LEDの赤外線放射角度とセンサの反応角度が異なる。これら赤外線放射角度及び反応角度は、図2のように上面から見た場合でも、図4や5のように側面から見た場合でも同様である(図の例では上面から見ても側面から見ても赤外線放射角度は約36°、反応角度は約60°となっている)。
【0010】
表示画面からユーザまでの距離を約80cm、ユーザの高さを机上から約50cmとした場合、理想的には図4に示すように、センサの最適な実装位置はディスプレイ面の中央(長手方向の中央で、かつ、短手方向の中央(机上約25cmの位置))である。この場合、センサ用LEDの発した赤外線はユーザにのみ反射し、ユーザの存在を正確に検出できる。しかし、上記位置への実装は、表示画面があって現実点には不可能である。
【0011】
つまり、現実的には、図1に示すような表示画面下部の位置にセンサを配置するしかない。この場合、図5に示すように、センサを机上から約8cmの高さに実装することになり、センサ用LEDの発した赤外線は、ユーザのみならず、ユーザより手前(ディスプレイ側)の机上にあるキーボードにも反射し、ユーザの存在を正確に検出することができない(実際にはユーザが離席している場合にも、センサはキーボードに反射した赤外線に反応してしまう)。
【0012】
引用文献1の発明は、発光部で発せられて対象物に反射した赤外線を受光する際の、センサ装置内部において発生する散乱光を低減するものであり、発光部からの赤外線が反射する対象物がユーザであろうと、ユーザ以外(キーボード、マウス等)であろうと影響を受けない。つまり、図5に示すような場合であっても、センサ装置内部に発生する散乱光を低減しつつ、結果的にはキーボードに反射した赤外線に反応して受光量の検出を行うため、ユーザの存在を正確に検出することができないという問題の解決にはなり得ない。
【0013】
そこで、本発明は、ユーザの存在を検出するためのセンサを搭載した表示装置や情報処理装置において、ユーザのオフィス環境に左右されずに正確にユーザの在席や離席を把握できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の一側面である表示装置は、対象物に向けて光を発する発光部及び発光部から発せられ対象物に反射した光の受光量を検出する受光部が表示画面の下部に設けられ、発光部は、光の発する角度を表示装置の設置面に対して上方に傾け、かつ、傾けて発せられた光が対象物に反射した後に受光部の検出可能な範囲内に収まるように設置されている。
【0015】
本発明の表示装置は、上記の表示装置において、発光部が、光を発する発光手段と、発光手段により発せられた光を通過させるレンズと、を有し、レンズが、発光手段からの光が出射していく面が斜めに欠切されているものであってもよい。
【0016】
本発明の表示装置は、上記の表示装置において、レンズが、表示装置の設置面に対して上方の側縁が逆方向の側縁より長くなるように、発光手段からの光が出射していく面が斜めに欠切されているものであってもよい。
【0017】
本発明の表示装置は、上記の表示装置において、発光部が、光を発する発光手段と、発光手段により発せられた光を通過させるレンズと、を有し、発光手段及びレンズが、発光手段により発せられレンズを通過した光が対象物に反射した後に受光部の検出可能な範囲内に収まるように、表示装置の設置面に対して上方に傾けて設置されているものであってもよい。
【0018】
本発明の表示装置は、上記の表示装置において、発光部が、受光部の検出可能な範囲を表す検出角度の半分の角度から、発光部により発せられる光の範囲を表す放射角度の半分の角度を差し引いた分の角度だけ、表示装置の設置面に対して上方に傾けて設置されているものであってもよい。
【0019】
本発明の一側面である情報処理装置は、上記の表示装置を備えるものである。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、ユーザの存在を検出するためのセンサを搭載した表示装置や情報処理装置において、ユーザのオフィス環境に左右されずに正確にユーザの在席や離席を把握することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施形態に係るPCの外観図(正面図)である。
【図2】本発明の実施形態に係るPCに搭載される赤外線センサの構成図(上面図)である。
【図3】本発明の実施形態における赤外線の放射角度及びセンサの反応角度の説明図(上面図)である。
【図4】理想的なセンサ実装位置における赤外線の放射角度及びセンサの反応角度の説明図(側面図)である。
【図5】従来のセンサ実装位置における赤外線の放射角度及びセンサの反応角度の説明図(側面図)である。
【図6】本発明の実施形態における赤外線の放射角度及びセンサの反応角度の説明図(側面図)である。
【図7】本発明の実施形態(第1)に係るPCに搭載される赤外線センサ(発光部)の構成図である。
【図8】本発明の実施形態(第2)に係るPCに搭載される赤外線センサ(発光部)の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0023】
[第1実施形態]
図1は、本発明の第1実施形態に係るPCの外観を示した正面図である。本実施形態のPC1は、ディスプレイ部と本体部とが一体になったデスクトップパソコンで、表示画面の下部における電源ボタン等の配置領域に、ユーザの存在を検出するための赤外線センサが設けられている。当該赤外線センサは、赤外線を発光する発光部20と対象物に反射した赤外線を受光する受光部10からなる。
【0024】
図2は、本実施形態に係るPCに搭載される赤外線センサの構成を示した上面図である。発光部20は、赤外線を発射するセンサ用LED21と、センサ用LED21が発射した赤外線を通過させ集光するLED用レンズ22と、を有して構成される。受光部10は、LED用レンズ22を透過して対象物(例えばユーザ)に反射した赤外線を通過させ集光するセンサ用レンズ12と、センサ用レンズ12で集光された赤外線の受光量を検出するセンサ11と、を有して構成される。なお、本実施形態では、受光部10、発光部20とも、センサ11やセンサ用LED21とレンズとをハウジングに取り付けて一体化して構成されているが、センサ、LED、レンズが一体でなくともよい。
【0025】
本実施形態において、図3に示すように、発光部20のセンサ用LED21が発する赤外線の放射角度(以下、LED放射角度という)は約36°であり、受光部10のセンサ11が受光量を検出することが可能な角度(以下、センサ反応角度という)は約60°である。LED放射角度は、図3のように上面から見た角度のみならず、図5に示すように側面から見た角度も約36°であり、センサ用LED21の対向面に垂直な中心線から約18°の傾きで、センサ用LED21の設置点を中心に1周(360°)回転させたときの範囲といえる。センサ反応角度についても同様のことがいえる。
【0026】
図1に示した赤外線センサの実装位置では図5に示したような問題があり、これを解決するために、本発明では、図6に示すように、発光部20のセンサ用LED21によるLED放射角度を、キーボードにかからず(赤外線がキーボードに反射させず)、かつ、センサ反応角度内に収まる(反射した赤外線を受光部10のセンサ11が検出できる)ように、PC1の設置面から上方に傾けている。
【0027】
LED放射角度を具体的にどの程度上方に傾けるかは、LED放射角度やセンサ反応角度によるが、センサ反応角度の半分の角度からLED放射角度の半分の角度を差し引いた分の角度だけ、PC設置面から上方に傾けることが可能である。
【0028】
図5を用いて説明する。ここでは前提として、センサ用LED21及びセンサ11は、PC設置面に対して垂直な面(表示画面の下部)に配置されており、センサ用LED21及びセンサ11の対向面に垂直な中心線はPC設置面と略平行で各中心線は略一致しているものとする。本実施形態の場合、LED放射角度が約36°であることから赤外線の放射される角度の上限(図中の赤外線放射範囲の上方限界)は中心線から約18°であり、センサ反応角度が約60°であることからセンサが検出可能な反射赤外線の角度の上限(図中のセンサ反応範囲の上方限界)は中心線から約30°である。
【0029】
そして、約30°(センサ反応角度の半分の角度)から約18°(LED放射角度の半分の角度)を差し引いた約12°が、LED放射角度をPC設置面の上方に傾けることのできる角度であり、図6に示すように、約12°だけLED放射角度を傾けたとしても、LED放射角度はセンサ反応角度の範囲内にあるため、センサ11はユーザに反射した赤外線を検出することが可能である。また、LED放射角度を約12°上方に傾けたため、ユーザ手前のキーボードに赤外線が反射せずに済む。
【0030】
図7は、本実施形態に係るPCに搭載される赤外線センサ(発光部)の構成図である。本実施形態では、上述したように、センサ用LED21とLEDレンズ22とをハウジングに取り付けて一体化して発光部20を構成しており、図5に示すように、センサ用LED21の照射方向がPC設置面と略平行となるように発光部20が設けられている。
【0031】
そして、図6に示すようにLED放射角度をPC設置面の上方に傾けるために、本実施形態では、発光部20(センサ用LED21、LEDレンズ22及びこれらを取り付けたハウジング)を、LED放射角度を傾斜させたい分だけ上方に傾けて、PC1(表示画面の下部)に設置するようにしている。
【0032】
本実施形態によれば、センサ用LED21及びLEDレンズ22を取り付けたハウジング全体を傾斜させてPC1に設置しているため、センサ用LED21やLEDレンズ22について角度をつけるための細かい微調整を個々に行う必要がない。
【0033】
[第2実施形態]
本発明の第2実施形態は、第1実施形態とは異なる構成の発光部20を備えている。LED放射角度をPC設置面の上方に傾けるため、第1実施形態では発光部全体を傾斜させていたが、第2実施形態ではLEDレンズ22の形状に変更を加え、同レンズを出射する赤外線がPCの上方に傾くようにしている。
【0034】
図8は、本実施形態に係るPCに搭載される赤外線センサ(発光部)の構成図である。本実施形態において、第1実施形態と同様に、発光部20はセンサ用LED21とLEDレンズ22とをハウジングに取り付けて一体化されているが、本実施形態特有の構成は、LEDレンズ22の形状である。
【0035】
本実施形態では、LEDレンズ22の下方の側縁(側面の辺)が上方の側縁より短くなるように所定の角度をつけて、LEDレンズ22における赤外線出射側のレンズ面をカットする。本実施形態においては、センサ用LED21の照射角度をPCの上方に約12°傾けるために、約20°の角度をつけて赤外線出射側のレンズ面をカットしている。すなわち、カット前の赤外線出射側レンズ面とカット後の赤外線出射側レンズ面のなす角度が約20°となる。なお、用いるLEDレンズ22の形状が上記のように第1実施形態と違うだけで、ハウジングへの取り付けは同様である(第1実施形態では、取り付けた後に発光部全体を傾けている)。
【0036】
本実施形態によれば、発光部全体を傾けることなくセンサ用LED21の照射角度を傾斜させることができることから、第1実施形態と比較して、表示装置の厚さをより薄くすることができ、装置の小型化が実現可能となる。また、LEDレンズ22の一方の面について所定の角度だけ削切すればよく、設計変更のインパクトも小さくて済む。
【0037】
なお、上述する実施形態は、本発明の好適な実施形態であり、上記実施形態のみに本発明の範囲を限定するものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更を施した形態での実施が可能である。例えば、上述した一体型デスクトップパソコンのほか、ディスプレイ部と本体部が分離したタワー型パソコンにおける表示装置にも本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0038】
1 PC
10 受光部
11 センサ
12 センサ用レンズ
20 発光部
21 センサ用LED
22 LED用レンズ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物に向けて光を発する発光部及び前記発光部から発せられ対象物に反射した光の受光量を検出する受光部が表示画面の下部に設けられ、
前記発光部は、光の発する角度を表示装置の設置面に対して上方に傾け、かつ、前記傾けて発せられた光が対象物に反射した後に前記受光部の検出可能な範囲内に収まるように設置されていることを特徴とする表示装置。
【請求項2】
前記発光部は、光を発する発光手段と、前記発光手段により発せられた光を通過させるレンズと、を有し、
前記レンズは、前記発光手段からの光が出射していく面が斜めに欠切されていることを特徴とする請求項1に記載の表示装置。
【請求項3】
前記レンズは、表示装置の設置面に対して上方の側縁が逆方向の側縁より長くなるように、前記発光手段からの光が出射していく面が斜めに欠切されていることを特徴とする請求項2に記載の表示装置。
【請求項4】
前記発光部は、光を発する発光手段と、前記発光手段により発せられた光を通過させるレンズと、を有し、
前記発光手段及び前記レンズは、前記発光手段により発せられ前記レンズを通過した光が対象物に反射した後に前記受光部の検出可能な範囲内に収まるように、表示装置の設置面に対して上方に傾けて設置されていることを特徴とする請求項1に記載の表示装置。
【請求項5】
前記発光部は、前記受光部の検出可能な範囲を表す検出角度の半分の角度から、前記発光部により発せられる光の範囲を表す放射角度の半分の角度を差し引いた分の角度だけ、表示装置の設置面に対して上方に傾けて設置されていることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の表示装置。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項に記載の表示装置を備えることを特徴とする情報処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−78444(P2012−78444A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−221701(P2010−221701)
【出願日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【出願人】(311012169)NECパーソナルコンピュータ株式会社 (116)
【Fターム(参考)】