説明

表示装置用保護基板

【課題】 軽量、かつ、耐擦傷性、耐衝撃性および硬度に優れる表示装置用保護基板を提供すること。
【解決手段】 本発明の表示装置用保護基板は、ガラスと、該ガラスの片側に樹脂層を備える表示装置用保護基板であって、該ガラスの厚みが20μm〜200μmであり、該樹脂層の比重が0.9g/cm〜1.5g/cmであり、該樹脂層の25℃における曲げ弾性率が1000MPa〜8000MPaである。好ましい実施形態においては、本発明の表示装置用保護基板は、接着層をさらに備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示装置用保護基板に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、スマートフォン、電子ブック、タブレットPC等のようにタッチ入力機能を備えた機器が広く使用されている。これら機器の最表面側には、表示装置を保護するための保護基板が配置されている。持ち歩いたり、手に持って操作したりすることの多い上記機器においては、軽量、かつ、耐擦傷性、耐衝撃性および硬度に優れる保護基板が求められている。
【0003】
保護基板としては、ガラス基板やプラスチック基板が使用されている(例えば、特許文献1)。ガラス基板には、通常のガラスよりも強度を増した強化ガラスが使用されている。ガラス基板は耐衝撃性、耐擦傷性、硬度に優れているものの、比重が高く重いという問題がある。また、強化ガラスは、切断、穴あけ等が困難であり、加工上の問題もある。プラスチック基板には、ポリメチルメタクリレートやポリカーボネートのような透明性に優れ、強度の強い材料が使用され得る。プラスチック基板は、ガラス基板よりも軽量であるものの、耐衝撃性、耐擦傷性、硬度についてはガラス基板には及ばない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−164938号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記従来の課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、軽量、かつ、耐擦傷性、耐衝撃性および硬度に優れる表示装置用保護基板を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の表示装置用保護基板は、ガラスと、該ガラスの片側に樹脂層を備える表示装置用保護基板であって、該ガラスの厚みが20μm〜200μmであり、該樹脂層の比重が0.9g/cm〜1.5g/cmであり、該樹脂層の25℃における曲げ弾性率が1000MPa〜8000MPaである。
好ましい実施形態においては、本発明の表示装置用保護基板は、接着層をさらに備える。
好ましい実施形態においては、上記樹脂層の線膨張係数が、3×10−5/℃以上である。
好ましい実施形態においては、上記樹脂層が、熱可塑性樹脂を含む。
好ましい実施形態においては、上記樹脂層が、ポリメチルメタクリレート系樹脂を含む。
好ましい実施形態においては、上記接着層の25℃における引っ張り弾性率が、1×10Pa以上である。
本発明の別の局面によれば、上記表示装置用保護基板の製造方法が提供される。この表示装置用保護基板の製造方法は、上記ガラス上に樹脂シートを貼り合わせることにより、上記樹脂層を形成させる、上記表示装置用保護基板の製造方法であって、該ガラスまたは該樹脂シートに、熱硬化性または光硬化性の接着剤を含む接着剤組成物を塗布した後、該ガラスと該樹脂シートを貼り合わせる、貼着工程と、該接着剤組成物を硬化させて、接着層を形成する硬化工程とを含み、該貼着工程後、該硬化工程が完了するまでの間に、該樹脂シートを加熱により膨張させて、その後、樹脂シートの収縮によりガラスに収縮応力が働いた状態で樹脂層を固定することを含む。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、ガラスと、特定の比重および曲げ弾性率を有する樹脂層とを備えることにより、軽量、かつ、耐擦傷性、耐衝撃性および硬度に優れる表示装置用保護基板を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の好ましい実施形態による表示装置用保護基板の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
A.表示装置用保護基板の全体構成
図1は、本発明の好ましい実施形態による表示装置用保護基板の概略断面図である。この表示装置用保護基板100は、厚みが20μm〜200μmのガラス10と、ガラス10の片側に配置された樹脂層30とを備える。表示装置用保護基板100は、好ましくは、ガラス10と樹脂層30との間に、接着層20を備える。本発明の表示装置用保護基板100は、表示装置において、ガラス10が最表面となるようにして使用される。本発明の表示装置用保護基板は、樹脂層を備えることにより軽量化されるとともに、最表面側にガラスを備えることにより耐擦傷性および硬度にも優れる。さらに、本発明によれば、ガラスと樹脂層との相乗効果により、ガラス基板(ガラス単体)またはプラスチック基板(樹脂層単体)よりも耐衝撃性に優れる表示装置用保護基板が得られ得る。
【0010】
本発明の表示装置用保護基板の厚みは、好ましくは100μm〜2000μmであり、さらに好ましくは150μm〜1500μmであり、より好ましくは500μm〜1200μmであり、特に好ましくは700μm〜900μmである。
【0011】
B.ガラス
上記ガラスは、板状のものであれば、任意の適切なものが採用され得る。上記ガラスは、組成による分類によれば、例えば、ソーダ石灰ガラス、ホウ酸ガラス、アルミノ珪酸ガラス、石英ガラス等が挙げられる。また、アルカリ成分による分類によれば、無アルカリガラス、低アルカリガラスが挙げられる。上記ガラスのアルカリ金属成分(例えば、NaO、KO、LiO)の含有量は、好ましくは15重量%以下であり、さらに好ましくは10重量%以下である。
【0012】
上記ガラスの厚みは、20μm〜200μmであり、好ましくは30μm〜150μmであり、さらに好ましくは50μm〜100μmである。上記範囲のガラスであれば、軽量の表示装置用保護基板が得られる。
【0013】
上記ガラスの波長550nmにおける光透過率は、好ましくは85%以上である。上記ガラスの波長550nmにおける屈折率は、好ましくは1.4〜1.65である。
【0014】
上記ガラスの密度は、好ましくは2.3g/cm〜3.0g/cmであり、さらに好ましくは2.3g/cm〜2.7g/cmである。上記範囲のガラスであれば、軽量の表示装置用保護基板が得られる。
【0015】
上記ガラスの成形方法は、任意の適切な方法が採用され得る。代表的には、上記ガラスは、シリカやアルミナ等の主原料と、芒硝や酸化アンチモン等の消泡剤と、カーボン等の還元剤とを含む混合物を、1400℃〜1600℃の温度で溶融し、薄板状に成形した後、冷却して作製される。上記ガラスの薄板成形方法としては、例えば、スロットダウンドロー法、フュージョン法、フロート法等が挙げられる。これらの方法によって板状に成形されたガラスは、薄板化したり、平滑性を高めたりするために、必要に応じて、フッ酸等の溶剤により化学研磨されてもよい。
【0016】
上記ガラスは、市販のものをそのまま用いてもよく、あるいは、市販のガラスを所望の厚みになるように研磨して用いてもよい。市販のガラスとしては、例えば、コーニング社製「7059」、「1737」または「EAGLE2000」、旭硝子社製「AN100」、NHテクノグラス社製「NA−35」、日本電気硝子社製「OA−10」、ショット社製「D263」または「AF45」等が挙げられる。
【0017】
C.樹脂層
上記樹脂層を構成する材料は、本発明の効果が得られる限りにおいて、任意の適切な樹脂が採用され得る。上記樹脂としては、例えば、熱可塑性樹脂、熱または活性エネルギー線により硬化する硬化性樹脂等が挙げられる。好ましくは、熱可塑性樹脂である。熱可塑性樹脂は線膨張係数が大きく、後述のように高強度の表示装置用保護基板を得ることができるからである。熱可塑性樹脂の具体例としては、ポリ(メタ)アクリレート系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエチレンテレフタレート系樹脂、ポリアリレート系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリサルフォン系樹脂、シクロオレフィン系樹脂等が挙げられる。なかでも好ましくはポリ(メタ)クリレート系樹脂であり、より好ましくはポリメタクリレート系樹脂であり、特に好ましくはポリメチルメタクリレート系樹脂である。樹脂層がポリメチルメタクリレート系樹脂を含んでいれば、より耐衝撃性に優れる表示装置用保護基板を得ることができ、例えば、先端の尖った落下物に対してもキズ、穴等の発生を防止することができる。
【0018】
上記樹脂層の厚みは、好ましくは80μm〜1900μmであり、さらに好ましくは100μm〜1500μmであり、より好ましくは400μm〜1000μmであり、特に好ましくは600μm〜800μmである。樹脂層の厚みは、上記ガラスの厚みより厚いことが好ましい。軽量の表示装置用保護基板を得ることができるからである。
【0019】
上記樹脂層の比重は、0.9g/cm〜1.5g/cmであり、好ましくは1g/cm〜1.3g/cmである。樹脂層の比重がこのような範囲であれば、軽量の表示装置用保護基板が得られる。
【0020】
上記樹脂層の25℃における曲げ弾性率は、1000MPa〜8000MPaであり、好ましくは2000MPa〜7000MPaであり、より好ましくは2700MPa〜6000MPaである。このような範囲であれば、耐衝撃性に優れる表示装置用保護基板を得ることができる。上記範囲内であれば、樹脂層の曲げ弾性率が高いほど、耐衝撃性に優れる表示装置用保護基板を得ることができ、例えば、先端の尖った落下物に対してもキズ、穴等の発生を防止することができる。樹脂層の曲げ弾性率が8000MPaを越える場合、樹脂層が脆くなり、十分な耐衝撃性を得ることができないおそれがある。曲げ弾性率は、JIS−K−7203に基づいて測定し得る。
【0021】
上記樹脂層の線膨張係数は、好ましくは3×10−5/℃以上であり、より好ましくは4×10−5/℃〜20×10−5/℃である。このような範囲であれば、強度および耐衝撃性に優れる表示装置用保護基板を得ることができる。より詳細には、樹脂層の線膨張係数が上記範囲であれば、上記ガラス上に樹脂層を形成する際に、常温より高い温度(例えば、40℃〜150℃)を与えて樹脂層を膨張させた状態でガラスに貼り合わせ、その後、常温に戻して樹脂層を収縮させることにより、ガラスに収縮応力が働いた状態で樹脂層を固定することができる。その結果、強度および耐衝撃性に優れる表示装置用保護基板を得ることができる。なお、当該収縮応力は、樹脂層の厚みが厚い方が大きく、樹脂層の厚みを上記範囲とすることは、表示装置用保護基板の強度向上の点からも好ましい。
【0022】
上記樹脂層に含まれる樹脂のガラス転移温度は、好ましくは50℃〜400℃であり、さらに好ましくは50℃〜300℃である。このような範囲であれば、耐衝撃性に優れる表示装置用保護基板を得ることができる。
【0023】
上記樹脂層は、目的に応じて任意の適切な添加剤をさらに含有し得る。樹脂層中の添加剤としては、例えば、希釈剤、老化防止剤、変成剤、界面活性剤、染料、顔料、変色防止剤、紫外線吸収剤、柔軟剤、安定剤、可塑剤、消泡剤、補強剤等が挙げられる。上記樹脂層に含有される添加剤の種類、数および量は、目的に応じて適切に設定され得る。
【0024】
D.接着層
好ましくは、上記ガラスと樹脂層とは、接着層を介して貼り合わせられている。上記接着層を構成する材料としては、任意の適切な樹脂を採用し得る。上記接着層を構成する材料としては、例えば、エポキシ系樹脂、アクリル系樹脂等が挙げられる。
【0025】
上記接着層の厚みは、好ましくは3μm〜50μmであり、より好ましくは5μm〜30μmであり、特に好ましくは7μm〜15μmである。接着層の厚みより大きい異物は、欠点として認識されるため、接着層の厚みは3μm以上であることが好ましい。
【0026】
上記接着層の25℃における引っ張り弾性率は、好ましくは1×10Pa以上であり、より好ましくは5×10Pa〜1×1010Paである。このような範囲であれば、耐衝撃性に優れる表示装置用保護基板を得ることができる。また、接着層の25℃における引っ張り弾性率が1×10Pa未満の場合、上記のように樹脂層を膨張、収縮させても、樹脂層の収縮応力が開放されてしまい、十分に強度が向上しないおそれがある。
【0027】
E.表示装置用保護基板の製造方法
本発明の表示装置用保護基板の製造方法としては、例えば、上記ガラス上に樹脂シートを貼り合わせることにより、ガラス上に樹脂層を形成する方法が挙げられる。このような方法においては、(1)ガラスまたは樹脂シートに、熱硬化性または光硬化性の接着剤を含む接着剤組成物を塗布した後、該ガラスと該樹脂シートを貼り合わせる、貼着工程と、(2)接着剤組成物を硬化させて、接着層を形成する硬化工程とを含む。
【0028】
上記樹脂シートは、上記C項で説明した樹脂層を形成する材料により、形成される。
【0029】
上記のとおり、上記粘着剤組成物は、好ましくは、熱硬化性または光硬化性の接着剤を含む。熱硬化性接着剤と光硬化性接着剤とを併用してもよい。なお、熱硬化性接着剤を用いる場合、熱硬化性接着剤を硬化させる際の加熱により樹脂シートを膨張させることができ、その後の樹脂シートの収縮によりガラスに収縮応力が働いた状態で樹脂層を固定することができる。
【0030】
上記接着剤としては、例えば、エポキシ系接着剤、アクリル系接着剤等が挙げられる。
【0031】
上記接着剤の25℃における粘度は、好ましくは100cp〜5000cpであり、より好ましくは200cp〜3000cpである。接着剤の25℃における粘度が100cp未満の場合、貼り合わせ時に接着剤がはみ出したり、接着層の厚みが薄くなりすぎるおそれがある。接着剤の25℃における粘度が5000cpを越える場合、接着剤を塗布しがたくなるおそれ、および接着層に気泡が生じるおそれがある。
【0032】
上記接着剤組成物は、目的に応じて任意の適切な添加剤をさらに含有し得る。接着剤組成物中の添加剤としては、例えば、重合開始剤、架橋剤、UV吸収剤、導電性材料、Siカップリング剤等が挙げられる。重合開始剤としては、熱重合開始剤、光重合開始剤等が用いられ得る。熱重合開始剤としては、例えば、アゾ化合物、過酸化物等が挙げられる。光重合開始剤としては、例えば、アルキルフェノン系光重合開始剤;アシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤;チタノセン系光重合開始剤;ベンゾイン系光重合開始剤、ベンゾフェノン系光重合開始剤、アントラキノン系光重合開始剤、キサトン系光重合開始剤、チオキサントン系光重合開始剤、ケタール系光重合開始剤等の紫外線を用いる光重合開始剤等が挙げられる。また、芳香族ジアゾニウム塩、芳香族ヨードニウム塩、芳香族スルホニウム塩等のオニウム塩;鉄−アレン錯体等の光カチオン重合開始剤を用いてもよい。
【0033】
上記ガラスと樹脂シートとの貼り合わせは、任意の適切な手段により行われる。代表的には、ラミネーティングが行われる。本発明の表示装置用保護基板は、ガラスと樹脂シートとの貼り合わせをいわゆるロール・トゥ・ロールで連続的に行ってもよい。なお、ロール・トゥ・ロールとは、長尺のフィルム同士(本発明ではガラスと樹脂シート)をロール搬送しながら、その長手方向を揃えて連続的に貼り合わせる方法をいう。
【0034】
上記接着剤組成物の硬化方法は、上記接着剤の種類に応じて適切に選択され得る。接着剤が光硬化性接着剤である場合には、接着剤組成物は紫外線照射により硬化される。照射条件は、接着剤の種類、接着剤組成物の組成等に応じて適切に選択され得る。1つの実施形態においては、塗布した接着剤組成物を硬化させるための照射条件は、照射強度が40mW/cm〜60mW/cmで、照射時間が20秒〜30分である。接着剤が熱硬化型接着剤である場合には、接着剤組成物は加熱により硬化される。加熱条件は、接着剤の種類、接着剤組成物の組成等に応じて適切に選択され得る。1つの実施形態においては、塗布した接着剤組成物を硬化させるための加熱条件は、温度が100℃〜200℃で、加熱時間が5分〜30分である。
【0035】
好ましくは、上記貼着工程後、接着剤組成物が完全硬化する前(すなわち、硬化工程が完了するまでの間)に、貼着工程で得られた積層体(ガラス/樹脂シート)を加熱して、樹脂シートを膨張させる。このようにして、樹脂シートを膨張させた状態でガラスに貼り合わせれば(仮着すれば)、その後の樹脂シートの収縮によりガラスに収縮応力が働いた状態で樹脂層を固定することができる。1つの実施形態においては、樹脂シートの膨張は、上記貼着工程後に、光硬化性接着剤を含む接着剤組成物を半硬化させ、その状態で、貼着工程で得られた積層体(ガラス/樹脂シート)を加熱保持することにより行われる。半硬化の際の紫外線照射条件は、接着剤の種類、接着剤組成物の組成等に応じて適切に選択され得る。半硬化の際の照射条件は、好ましくは、照射強度が40mW/cm〜60mW/cmで、照射時間が20秒〜60秒である。加熱保持の温度条件は、好ましくは40℃〜200℃であり、より好ましくは40℃〜150℃であり、特に好ましくは60℃〜100℃である。加熱保持の時間は、好ましくは20分〜100分であり、より好ましくは40分〜60分である。紫外線照射により接着剤組成物を半硬化させた場合、上記加熱保持終了時に接着剤組成物が完全硬化していてもよく、さらなる紫外線照射により接着剤組成物を完全硬化させてもよい。1つの実施形態においては、半硬化層を完全硬化させるための紫外線照射条件は、照射強度が40mW/cm〜60mW/cmで、照射時間が5分〜30分である。別の実施形態においては、熱硬化性樹脂を用い、熱硬化性接着剤を硬化させる際の加熱により樹脂シートを膨張させることができる。
【0036】
本発明の表示装置用保護基板は、溶液塗工により上記ガラス上に樹脂層を形成することによっても製造することができる。このような方法においては、好ましくは、樹脂の溶液を上記ガラスの片側に塗工し塗工層を形成する塗工工程と、該塗工層を乾燥させる乾燥工程と、乾燥後の塗工層を熱処理して上記樹脂層を形成する熱処理工程とを含む。用いられる樹脂は、上記C項で説明したとおりである。
【0037】
上記塗工工程の際に使用される塗工溶媒は、ハロゲン系溶媒、芳香族系溶媒、セロソルブ系溶媒、エーテル系溶媒、ケトン系溶媒等が挙げられる。
【0038】
上記樹脂の溶液の塗工方法としては、コーティング法、凸版印刷法、ダイレクトグラビア印刷法、凹版印刷法、平版印刷法、孔版印刷法等が挙げられる。
【0039】
上記乾燥工程としては、任意の適切な乾燥方法(例えば、自然乾燥、送風乾燥、加熱乾燥)が採用され得る。例えば、加熱乾燥の場合には、乾燥温度は代表的には100℃〜200℃であり、乾燥時間は代表的には1分〜10分である。
【0040】
上記熱処理工程としては、任意の適切な熱処理方法が採用され得る。代表的には、熱処理温度は100℃〜300℃であり、熱処理時間は5分〜45分である。
【0041】
H.用途
本発明の表示装置用保護基板は、タッチパネル(特に、モバイル用途のタッチパネル)の最表面に配置される保護板として好適に用いられる。タッチパネルとしては特に制限はなく、例えば、抵抗膜方式、静電容量方式、光学式など種々のものに本発明の表示装置用保護基板を用いることができる。タッチパネルの詳細は、例えば、特表2011−511357号公報、特開2010−164938号公報、特開2008−310550号公報、特表2003−511799号公報、特表2010−541109号公報に記載されており、その記載は本明細書に参考として援用される。
【実施例】
【0042】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例になんら限定されるものではない。実施例における評価方法は、以下の通りである。
【0043】
(1)耐擦傷性
実施例で得られた表示装置用保護基板についてはガラス側表面に対して、比較例についてはサンプル表面に対して、直径11mmの円柱の断面に取り付けたスチールウール#0000を、荷重400g、100mm/secで10往復させた。その後、表面の状態を目視観察した。
【0044】
(2)鉛筆硬度
実施例で得られた表示装置用保護基板についてはガラス側表面に対して、比較例についてはサンプル表面に対して、JIS K 5400に準じて(荷重500g)、鉛筆硬度を評価した。
【0045】
(3)耐衝撃性(剛球落下)
直径50mm、重さ230gの剛球を、実施例で得られた表示装置用保護基板のガラス表面側上方および比較例のサンプルの上方から落下させた際に、表示装置用保護基板またはサンプルに割れまたはへこみが生じる高さを測定した。当該高さが高いほど剛球落下に対する耐衝撃性に優れる。
【0046】
(4)耐衝撃性(ペン落下)
ペン先直径0.5mm、重さ10.4gのボールペンを、実施例で得られた表示装置用保護基板ガラス表面側上方および比較例のサンプルの上方から落下させた際に、表示装置用保護基板またはサンプルに割れ、キズまたは穴が生じる高さを測定した。当該高さが高いほどペン落下に対する耐衝撃性に優れる。
【0047】
[実施例1]
シクロオレフィン系樹脂シート(日本ゼオン社製、商品名「ゼオノアフィルムZF16」、厚み100μm)上に、接着剤組成物(ダイセル社製セロキサイド(商品名)80部、東亜合成社製アロンオキセタン(商品名)20部、および開始剤(ADEKA社製、商品名「SP−170」)3部の混合物)をスポイトを用いて線状に塗布した。次いで、上記シクロオレフィン系樹脂シートとガラス(厚み:50μm)とを、上記接着剤組成物を介して、貼り合わせた。この貼り合わせは、ラミネータを用いてロール間で行った。
その後、得られた積層体に紫外光を照射して(照射強度50mw/cm、照射時間30秒)、接着剤組成物を半硬化させた。紫外光照射は高圧水銀ランプを使用した。次いで、100℃の温度下で40分間、オーブン内で積層体を加熱し、接着剤組成物を完全硬化させて、表示装置用保護基板(ガラス/接着層/樹脂層)を得た。接着層の厚みは10μmであった。得られた表示装置用保護基板の厚みは160μm、20cm×15cmサイズ当たりの重さは8gであった。得られた表示装置用保護基板を上記(1)および(2)の評価に供した。結果を表1に示す。
【0048】
[実施例2]
シクロオレフィン系樹脂シートの厚みを188μmとした以外は、実施例1と同様にして、表示装置用保護基板を得た。得られた表示装置用保護基板の厚みは248μm、20cm×15cmサイズ当たりの重さは10gであった。得られた表示装置用保護基板を上記(1)および(2)の評価に供した。結果を表1に示す。
【0049】
[実施例3]
シクロオレフィン系樹脂シートの厚みを188μmとし、接着剤組成物の組成をダイセル社製セロキサイド(商品名)55部/ダイセル社製EHPA(商品名)25部/東亜合成社製アロンオキセタン(商品名)20部/開始剤(ADEKA社製、商品名「SP−170」)3部とした以外は、実施例1と同様にして、表示装置用保護基板を得た。得られた表示装置用保護基板の厚みは248μm、20cm×15cmサイズ当たりの重さは10gであった。得られた表示装置用保護基板を上記(1)および(2)の評価に供した。結果を表1に示す。
【0050】
[実施例4]
ポリカーボネート(PC)板(旭硝子社製、商品名「レキサン」、厚み:700μm)上に、接着剤組成物(ダイセル社製セロキサイド(商品名)80部、東亜合成社製アロンオキセタン(商品名)20部、および開始剤(ADEKA社製、商品名「SP−170」)3部の混合物)をスポイトを用いて線状に塗布した。次いで、上記PC板とガラス(厚み:50μm)とを、上記接着剤組成物を介して、貼り合わせた。この貼り合わせは、ラミネータを用いてロール間で行った。
その後、得られた積層体に紫外光を照射して(照射強度50mw/cm、照射時間30秒)、接着剤組成物を半硬化させた。紫外光照射は高圧水銀ランプを使用した。次いで、100℃の温度下で40分間、オーブン内で積層体を加熱し、接着剤組成物を完全硬化させて、表示装置用保護基板(ガラス/接着層/樹脂層)を得た。接着層の厚みは10μmであった。得られた表示装置用保護基板の厚みは760μm、20cm×15cmサイズ当たりの重さは28gであった。得られた表示装置用保護基板を上記(1)および(2)の評価に供した。結果を表1に示す。さらに、得られた表示装置用保護基板を上記(3)および(4)の評価に供した。結果を表2に示す。
【0051】
[実施例5]
ガラスの厚みを100μmとした以外は、実施例4と同様にして表示装置用保護基板を得た。得られた表示装置用保護基板の厚みは810μm、20cm×15cmサイズ当たりの重さは32gであった。得られた表示装置用保護基板を上記(1)および(2)の評価に供した。結果を表1に示す。さらに、得られた表示装置用保護基板を上記(3)および(4)の評価に供した。結果を表2に示す。
【0052】
[実施例6]
ポリメチルメタクリレート(PMMA)板(日東樹脂工業社製、商品名「KLAREX」、厚み:700μm)上に、接着剤組成物(ダイセル社製セロキサイド(商品名)80部、東亜合成社製アロンオキセタン(商品名)20部、および開始剤(ADEKA社製、商品名「SP−170」)3部の混合物)をスポイトを用いて線状に塗布した。次いで、上記PMMA板とガラス(厚み:50μm)とを、上記接着剤組成物を介して、貼り合わせた。この貼り合わせは、ラミネータを用いてロール間で行った。
その後、得られた積層体に紫外光を照射して(照射強度50mw/cm、照射時間30秒)、接着剤組成物を半硬化させた。紫外光照射は高圧水銀ランプを使用した。次いで、80℃の温度下で60分間、オーブン内で積層体を加熱し、接着剤組成物を完全硬化させて、表示装置用保護基板(ガラス/接着層/樹脂層)を得た。接着層の厚みは10μmであった。得られた表示装置用保護基板の厚みは760μm、20cm×15cmサイズ当たりの重さは28gであった。得られた表示装置用保護基板を上記(1)および(2)の評価に供した。結果を表1に示す。さらに、得られた表示装置用保護基板を上記(3)および(4)の評価に供した。結果を表2に示す。
【0053】
[実施例7]
ガラスの厚みを100μmとした以外は、実施例6と同様にして表示装置用保護基板を得た。得られた表示装置用保護基板の厚みは810μm、20cm×15cmサイズ当たりの重さは32gであった。得られた表示装置用保護基板を上記(1)および(2)の評価に供した。結果を表1に示す。さらに、得られた表示装置用保護基板を上記(3)および(4)の評価に供した。結果を表2に示す。
【0054】
[比較例1]
ポリメチルメタクリレート(PMMA)板(日東樹脂工業社製、商品名「KLAREX」、厚み:700μm)をサンプルとして、上記(1)から(4)の評価に供した。結果を表1および表2に示す。
【0055】
[比較例2]
ポリカーボネート(PC)板(旭硝子社製、商品名「レキサン」、厚み:700μm)をサンプルとして、上記(1)から(4)の評価に供した。結果を表1および表2に示す。
【0056】
[比較例3]
強化ガラス板(コーニング社製、商品名「Gorilla(登録商標) ガラス」、厚み:700μm)をサンプルとして、上記(1)から(4)の評価に供した。結果を表1および表2に示す。
【0057】
【表1】

【0058】
【表2】

【0059】
実施例1〜7の結果から明らかなように、本願発明の表示装置用保護基板は、軽量、かつ、耐擦傷性および硬度に優れる。さらに、特定の樹脂(具体的には25℃における曲げ弾性率が2000MPa以上の樹脂)により形成された樹脂層を備える表示装置用保護基板(実施例4〜7)は、比較例3の強化ガラス(Gorilla(登録商標)ガラス)よりも、軽量であるにも関わらず、耐衝撃性に優れる。特に、樹脂層をポリメチルメタクリレート(PMMA)板とした場合には、ペン落下に対しても優れた耐衝撃性を有する表示装置用保護基板を得ることができる。
【符号の説明】
【0060】
10 ガラス
20 接着層
30 樹脂層
100 表示装置用保護基板


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラスと、該ガラスの片側に樹脂層を備える表示装置用保護基板であって、
該ガラスの厚みが20μm〜200μmであり、
該樹脂層の比重が0.9g/cm〜1.5g/cmであり、
該樹脂層の25℃における曲げ弾性率が1000MPa〜8000MPaである、
表示装置用保護基板。
【請求項2】
前記ガラスと前記樹脂層との間に、接着層をさらに備える、請求項1に記載の表示装置用保護基板。
【請求項3】
前記樹脂層の線膨張係数が、3×10−5/℃以上である、請求項1または2に記載の表示装置用保護基板。
【請求項4】
前記樹脂層が、熱可塑性樹脂を含む、請求項1から3のいずれかに記載の表示装置用保護基板。
【請求項5】
前記樹脂層が、ポリメチルメタクリレート系樹脂を含む、請求項1から4のいずれかに記載の表示装置用保護基板。
【請求項6】
前記接着層の25℃における引っ張り弾性率が、1×10Pa以上である、請求項2から5のいずれかに記載の表示装置用保護基板。
【請求項7】
前記ガラス上に樹脂シートを貼り合わせることにより、前記樹脂層を形成させる、請求項1から6のいずれかに記載の表示装置用保護基板の製造方法であって、
該ガラスまたは該樹脂シートに、熱硬化性または光硬化性の接着剤を含む接着剤組成物を塗布した後、該ガラスと該樹脂シートを貼り合わせる、貼着工程と、
該接着剤組成物を硬化させて、接着層を形成する硬化工程とを含み、
該貼着工程後、該硬化工程が完了するまでの間に、該樹脂シートを加熱により膨張させて、その後、樹脂シートの収縮によりガラスに収縮応力が働いた状態で樹脂層を固定することを含む、
表示装置用保護基板の製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2013−37207(P2013−37207A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−173565(P2011−173565)
【出願日】平成23年8月9日(2011.8.9)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】