説明

表示装置

【課題】発光素子間からの光の漏れだしを防止し、これにより高精細および色再現性に優れた表示が可能な表示装置を提供する。
【解決手段】光取り出し電極29とパターニングされた対向電極25との間に発光層を備えた機能層27狭持してなる複数の発光素子ELが配列形成された素子層23を備えた表示装置1において、光取り出し電極29が半透過反射性を有し、対向電極25が光透過性を有すると共に、対向電極25の外側に対向電極25と略同一形状の反射パターン13aを配置してなる光反射層13が設けられている。そして、発光素子ELで発生した発光光hが、光取り出し電極29と反射パターン13aとの間で共振して光取り出し電極29側から取り出される。そして特に、光り反射層13の外側に、反射防止層9を設けたことを特徴としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示装置に関し、特には複数の発光素子を配列形成してなる表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ブラウン管(CRT)に代わる表示装置として、薄型表示装置の研究、開発が盛んに行われている。このうち、無機EL素子や有機EL素子などの自発光型の表示素子(いわゆる発光素子)を用いた表示装置は、低消費電力での駆動が可能であり、動画表示特性が優れた表示装置として注目されている。
【0003】
発光素子を用いた表示装置をフルカラー化する構成の一つとして、各発光色の発光光のみを共振させて取り出す共振器構造の発光素子を配列する構成が提案されている。共振器構造を導入することにより、各発光素子から取り出される発光光の色純度を向上させたり、発光光の取り出し効率を高めることが可能となるのである。
【0004】
このような共振器構造を導入した発光素子は、例えば有機EL素子であれば、反射層を兼ねる第1電極と、発光層を備えた有機層と、半透過性反射層を兼ねる第2電極とが、この順に積層された構成となっている。そして、第1電極と第2電極との間隔を、各発光色波長の光が共振する光学的距離に設定することにより、発光層において発生した発光光のうちの特徴波長のみを第2電極側から取り出す構成となっている。また、この光学的距離を適切に設計することにより、発光層で発光する光と、第1電極および第2電極で反射して発光位置に戻ってきた光の位相が同一になり、光の取り出し効率が高められる。以上のような共振器構造が導入された発光素子を有する表示装置は、赤、青、緑の各色波長の光を共振させる設計の各発光素子を、基板上に配列した構成となっている(以上、下記特許文献1参照)。
【0005】
【特許文献1】特開2004−127795号公報、第13〜28段落、および図1、図2参照)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述したような共振器構造の発光素子を配列形成してなる表示装置においては、次のような課題があった。すなわち、各発光素子における発光層で生じた光の一部は、光取り出し電極で反射して対向電極間から漏れ出す場合がある。この場合、漏れ出した光は、光対向電極よりも外側に配置された配線層や基板との界面で反射し、共振されることなく取り出し電極側から放出される。このため、この漏れ出した光が、光取り出し電極−対向電極間で共振して取り出し電極から放出された特定波長の光と混ざり合い、各発光素子から取り出される発光光の色純度を低下させる要因となる。
【0007】
また、発光素子として白色発光素子を用いこれに共振器構造を導入した場合には、漏れ出した白色光が特定波長の光と混ざり合うことになる。このため、以上のような色純度の低下が特に顕著になる。
【0008】
そして、以上のような発光素子における色純度の低下は、これらの発光素子を用いた表示装置における色再現性や高精細な表示特性を低下させる要因となる。
【0009】
そこで本発明は、発光素子間からの光の漏れだしを防止し、これにより高精細および色再現性に優れた表示が可能な表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
このような目的を達成するための本発明の表示装置は、光取り出し電極とパターニングされた対向電極との間に発光層を狭持してなる複数の発光素子が配列形成された素子層を備えている。そして特に、発光素子が配列形成された素子層における対向電極側に、発光素子の発光層で発生した発光光を吸収するための反射防止層を設けたことを特徴としている。
【0011】
このような構成の表示装置では、各発光素子の発光層において発光した光が、パターニングされた対向電極間から漏れ出した場合、この漏れ出した光は、発光素子が配列された素子層の対向電極側に配置された反射防止層に入射する。このため、この漏れ出した光が、素子層における対向電極側の外側において光取り出し電極側に反射されることが防止される。したがって、光取り出し電極側から取り出される光に、対向電極間から漏れ出して反射した光が混ざり合うことが防止される。
【発明の効果】
【0012】
以上説明したように本発明の表示装置によれば、光取り出し電極側から取り出される光に、パターニングされた対向電極間から漏れ出して反射した光が、光取り出し電極と対向電極との間混ざり合うことが防止されるため、例えば対向電極を半透過性反射層として共振器構造を導入した発光素子を配列した素子層を有する表示装置にいては、共振させた光のみを対向電極側から取り出すことが可能になる。この結果、各発光素子における発光光の色純度を維持することができ、これらの発光素子を用いた表示装置の色再現性の向上および高精細化を図ることが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
次に、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0014】
<第1実施形態>
図1は、本発明の第1実施形態の表示装置を模式的に示す断面図である。この図に示す表示装置1は、白色発光の有機電界発光素子(以下、単に発光素子と記す)ELと共振器構造とを組み合わせてフルカラー表示を行う構成の表示装置である。またこの表示装置1は、発光素子ELが配列形成された基板3と反対側から発光光を取り出す、いわゆる上面発光型として構成されている。以下、このような構成の表示装置1に本発明を適用した構成を説明する。
【0015】
すなわち、基板3は、ガラス基板、プラスチック基板などの表面層に、ここでの図示を省略した薄膜トランジスタ(thin film transistor:TFT)を配列形成してなる、いわゆるTFT基板であることとする。尚、基板3は、単結晶シリコン基板の表面側にトランジスタを配列形成してなる基板であっても良い。
【0016】
そして、この基板3上には、配線層5が設けられている。この配線層5は、例えばTFT(トランジスタ)に接続された配線5aが、絶縁膜5bを介して積層された構成となっている。また配線5aは、少なくとも一部が金属材料からなり、絶縁膜5bは酸化シリコンなどの透明誘電体膜からなる。
【0017】
そして、この配線層5を覆う層間絶縁膜7上に、反射防止層9が設けられている。この反射防止層9が、本第1実施形態に特徴的な構成となる。この反射防止層9は、後に詳細に説明する発光素子ELの発光層で生じる光に対する反射率が低い材料からなり、特に本第1実施形態においては配線層5に対する層間絶縁膜の一部を構成している。
【0018】
このような材料として、例えば窒化酸化シリコン(SiON)膜を用いる。窒化酸化シリコン膜は、CVD(chemical vapor deposition)法による成膜条件および膜厚によって、反射率が異なる膜が形成される。このため、窒化酸化シリコンからなる反射防止層9は、成膜条件および膜厚を調整することにより、発光素子ELの発光層で生じる光の反射率が、配線5aにおける反射率よりも低くなるように、好ましくは20%以下となるように形成されていることとする。尚、この反射防止層9は、光吸収性が高く、光透過性が低い方が好ましく、これにより配線層5側からの光が発光素子EL側に透過することを防止する。
【0019】
また以上のような反射防止層9上には、さらに酸化シリコンなどからなる層間絶縁膜11が設けられていることとする。尚、この層間絶縁膜11は、必要に応じて設ければ良い。
【0020】
そして、この層間絶縁膜11上には、反射パターン13aを配列形成してなる光反射層13が設けられている。反射パターン13aは、発光素子ELが配置される各画素1G,1B,1Rに対応して設けられ、各画素1G,1B,1Rと略同一形状にパターニングされている。これらの反射パターン13aは、反射性に優れた材料で構成されればよく、例えばアルミニウム(Al)が用いられる。
【0021】
このうち、緑色の発光光を得るための緑色画素1Gには、層間絶縁膜11上に直接、反射パターン13aが配置されている。また、青色の発光光を得るための青色画素1Bには、緑色画素1Gに配置された反射パターン13aを覆う透明誘電膜15を介して、反射パターン13aが配置されている。さらに、赤色の発光光を得るための赤色画素1Rには、青色画素1Bに配置された反射パターン13aを覆う透明誘電膜17を介して、反射パターン13aが配置されている。そして、赤色画素1Rに配置された反射パターン13aが、透明誘電膜19で覆われている。
【0022】
以上の光反射層13において、各画素1G,1B,1Rに設けられた反射パターン13aを覆う透明誘電膜15,17,19は、各発光素子ELに組み合わせて設定された共振器構造における光学的距離LG,LB,LRを調整するための膜であることとする。これらの透明誘電膜15,17,19は、光透過性に優れた材料で構成されればよく、例えばSiO2が用いられる。
【0023】
またここで、アルミニウム(Al)等の導電性材料からなる各反射パターン13aは、各反射パターン13aと配線層5との間に設けられた透明誘電膜17,15を含む層間絶縁膜7,11に設けたプラグ21によって、配線5aに接続され、この配線5aを介してTFTに接続されていることとする。
【0024】
そして、この光反射層13の上部には、各画素1G,1B,1Rに対応して発光素子ELが配列形成された素子層23が設けられている。この素子層23は、光反射層13側から順に、対向電極25,発光層を備えた機能層27,および光取り出し電極29で構成されている。
【0025】
このうち、対向電極23は、各画素1G,1B,1Rに対応して設けられ、各画素1G,1B,1Rと略同一形状に、すなわち反射パターン13aと略同一形状にパターニングされている。また、これらの対向電極25は、透明電極材料で構成され、発光素子ELにおける実質的な陽極または陰極として用いられている。そして、これらの透明な対向電極25が陽極として用いられる場合には、仕事関数が大きい透明導電性材料が選択され、一方、陰極として用いられる場合には仕事関数の小さい透明導電性材料が選択される。尚、ここでは、対向電極25が陽極として用いられることとし、例えば、酸化インジウム錫(Indium Tin Oxide:ITO)を用いて構成されていることとする。
【0026】
さらに、上述したような透明導電性材料からなる各対向電極25は、陽極としての導電性が確保される範囲で、上記共振器構造における光学的距離LG,LB,LRを調整するために、それぞれの膜厚を有していて良い。また、このような光学的距離LG,LB,LRの条件を満たすことができれば、各画素1G,1B,1Rに配置される対向電極25は、同一材料で構成されている必要はない。
【0027】
またここで、対向電極25は、各対向電極25と反射パターン13aとの間に設けられた透明誘電膜19,17,15に設けたプラグ31によって、反射パターン13aに接続され、この反射パターン13aおよび配線5aを介してTFTに接続されていることとする。これにより、表示装置1は、対向電極25のそれぞれがTFTによって駆動されるアクティブマトリックス型として構成されている。尚、表示装置1が単純マトリックス型として構成される場合、対向電極25は、例えば複数の画素間で連続するストライプ状に形成されていることとする。
【0028】
そして、この対向電極25上に設けられた機能層27は、有機材料で構成された複数層からなり、例えば、陽極側(図1においては対向電極25側)から順に、正孔輸送層、発光層、電子輸送層を積層してなる。この機能層27は、各画素1G,1B,1Rにおいて同一層であって良く、各画素1G,1B,1R毎にパターン形成されていても良いし、ベタ膜状に形成されていても良い。
【0029】
ここで、本第1実施形態の表示装置1においてフルカラー表示を得るためには、機能層27における発光層で生じる発光光が、青、緑、および赤の波長領域で発光強度を有する白色発光である必要である。特に、青、緑、赤の取り出したい波長領域の全てに発光強度の極大を持ち、不要な波長領域の発光強度が小さい構成の機能層27であることが好ましい。このような機能層27を用いることにより、必要な発光領域の光の取り出し効率が高く、色純度が高い表示装置が得られる。このような機能層27の構造は公知の構造等から任意に選択することができる。
【0030】
そして、このような機能層27上に設けられた光取り出し電極29は、半透過反射性のハーフミラーとして構成さている。そして、上述した対向電極25が陽極である場合には陰極として用いられ、対向電極25が陰極である場合には陽極として用いられる。
【0031】
光取り出し電極29が陽極として用いられる場合、上部電極7を構成する材料としては、ニッケル、銀、金、白金、パラジウム、セレン、ロジウム、ルテニウム、イリジウム、レニウム、タングステン、モリブデン、クロム、タンタル、ニオブやこれらの合金、あるいは酸化錫(SnO2)、酸化インジウム錫(ITO)、酸化亜鉛、酸化チタン等の仕事関数が大きい導電性材料が選択して用いられる。一方、この光取り出し電極29が陰極として用いられる場合(図1の場合)、光取り出し電極29を構成する材料としては、例えば、Li、Mg、Ca等の活性な金属とAg、Al、In等の金属との合金等の仕事関数が小さい導電性材料が選択して用いられ、これらを積層した構造としても良い。また、機能層27との間に例えば、Li、Mg、Ca等の活性な金属とフッ素、臭素等のハロゲンや酸素等との化合物層を薄く挿入した構造としても良い。
【0032】
尚、光取り出し電極29は、機能層27で生じた発光光を取り出す側となるハーフミラーとして用いられるため、その光透過率が膜厚等で調整されていることとする。しかしながら、光取り出し電極29のハーフミラーとしての反射率を高めるために、膜厚を厚くする場合、Mgのような比較的吸収率の高い材料を使うと、透過率が低下して、光取り出し効率が低下し、消費電力が増大してしまう。そこで本第1実施形態においては、光吸収の小さいAgまたはAgを主成分とする合金を厚膜として光取り出し電極29を構成することとする。これにより、光取り出し電極29での光吸収による光取り出し効率の低下を最小限に抑える。ただし、AgまたはAgを主成分とする膜が、機能層27を構成する有機膜と接している場合には、両者の密着性が悪くダークスポットの原因となる。このため、MgまたはMgを主成分とする膜を、AgまたはAgを主成分とする膜と機能層27との間に設けた構成とすることで、密着性がよくダークスポットの発生を抑えることとする。
【0033】
ここで、この表示装置1がアクティブマトリックス型である場合には、この光取り出し電極29は、基板3上の一面を覆う状態で成膜されたベタ膜状で良く、各画素1G,1B,1Rに共通の電極として用いられることとする。一方、この表示装置1が単純マトリックス型である場合には、光取り出し電極29は、各画素1G,1B,1Rにおいて対向電極25のストライプと交差するストライプ状に形成されることとする。
【0034】
以上のように、対向電極25,発光層を備えた機能層27,および光取り出し電極29をこの順に積層してなる素子層23においては、対向電極25と光取り出し電極29とで機能層27を狭持してなる各部分が、発光素子ELとなる。
【0035】
尚、各画素1G,1B,1Rに配置された発光素子ELには、反射パターン13aとハーフミラーとして設けられた光取り出し電極29とで構成される共振部が組み合わせて設けられている。次に、反射パターン13a−光取り出し電極29間に設定された共振部における光学的距離LG,LB,LRについて説明する。
【0036】
すなわち、各画素1G,1B,1Rにおける各共振部の光学的距離LG,LB,LRは、各画素1G,1B,1Rから取り出したい所望の波長領域の光のみが、各共振部で共振する値にそれぞれ設定されている。
【0037】
このため、例えば、発光素子ELで発生した発光光hが共振部の両端において反射する際に生じる位相シフトをΦラジアン、各共振部の光学的距離LG,LB,LRをL、発光素子ELで発生した発光光hのうちの取り出したい光のスペクトルのピーク波長をλとした場合、下記式(1)を満たす範囲で各共振部の光学的距離Lが構成されていることとする。
【0038】
【数1】

ここで、mは整数であることとする。
【0039】
この際、画素1Gにおける光学的距離LGについては、取り出したい光のスペクトルのピーク波長λとして緑色の領域内に例えばピーク波長λ=530nmを設定し、共振部の光学的距離L(LG)を算出する。また、画素1Bにおける光学的距離LBについては、取り出したい光のスペクトルのピーク波長λとして青色の領域内に例えばピーク波長λ=460nmを設定して、共振部の光学的距離L(LB)を算出する。さらに、画素1Rにおける光学的距離LRについては、取り出したい光のスペクトルのピーク波長λとして赤色の領域内に例えばピーク波長λ=630nmを設定して、共振部の光学的距離L(LR)を算出する。
【0040】
尚、各共振部の光学的距離LG,LB,LRは、上記式(1)を満たす値であれば良いが、その中でも特に、赤色の光を取り出すための画素1Rにおける光学的距離LRを、上記式(1)のmをm=0として設定し、緑色および青色の光を取り出すための画素1G,1Bにおける各光学的距離LG,LBを、上記式(1)のmをm=1として設定することが好ましい。
【0041】
さらにここでは、各画素1G,1B,1Rにおける発光素子ELの機能層27は、同一構成であるため、共振部の光学的距離LG,LB,LRは、各発光素子ELの対向電極25の膜厚(光学的距離)、および光反射層13を構成する透明誘電膜15,17,19の膜厚(光学的距離)によって調整されていることとする。これにより、同一構成の機能層27を用いながらも、各画素1G,1B,1Rから緑、青、または赤の各波長の光のみを多重干渉によって強めて取り出すことが可能になるため、フルカラー表示が行われる表示装置1が構成されている。
【0042】
しかも、上述したように、各画素1G,1B,1Rの発光素子ELは、発光層を含む機能層27が同一層で構成されているため、金属マスクを用いた蒸着法やインクジェット法によって画素1G,1B,1R毎に機能層を作り分ける必要がなく、画素ピッチを狭めることが可能な構成となっている。尚、透明導電性材料からなる対向電極25によって各画素1G,1B,1Rにおける光学的距離LG,LB,LRが調整されている場合、対向電極25を作り分ける必要が生じる。しかしながら、対向電極25は、リソグラフィー処理によって形成したレジストパターンをマスクに用いたエッチングによってパターン形成されるため、金属マスクを用いたパターン形成やインクジェットによるパターン形成が必要となる機能層27と比較して、パターニング精度が良好である。
【0043】
また、機能層27が同一層からなるため、特に膜厚の厚い有機材料からなる機能層が設定されることもない。したがって、一部の発光素子ELのみの駆動電圧が高くなるといった現象が生じることもなく、消費電力が抑えられ、また各色の有機EL素子の駆動条件が異なることを考慮した駆動回路設計を行う必要もない。
【0044】
そして特に、以上説明した第1実施形態の表示装置によれば、光取り出し電極29と共に共振部を構成する反射パターン13aの外側に、反射防止層9を設けた構成としたことにより、発光素子ELにおいて発生した白色の発光光hが、反射パターン13a間から漏れ出した場合、この漏れ出した光h’は、反射防止層9に入射する。このため、この漏れ出した光h’が、反射パターン13aの外側において、配線5aその下層の基板3の表面で反射して取り出し電極29側から取り出されることが防止される。したがって、取り出し電極29−反射パターン13a間で共振して光取り出し電極29側から取り出される特定波長の光hg,hr,hbに、この漏れ出した光h’が混ざり合うことが防止される。
【0045】
この結果、各画素1G,1B,1Rにおいて取り出し電極29側から取り出される光hg,hr,hbの色純度を維持することができ、この表示装置における色再現性の向上を図ることが可能である。
【0046】
また特に、上述したように、機能層27を同一構成とした場合、発光素子EL間ピッチの微細化が実現されるが、このように微細化が進んだ表示装置1において、上述した色再現性の向上を図ることが可能であることにより、高精細なフルカラー表示が可能となる。
【0047】
<第2実施形態>
図2は、本発明の第2実施形態の表示装置を模式的に示す断面図である。この図に示す表示装置1’と、図1を用いて説明した第1実施形態の表示装置とのことなるところは、本発明の特徴である反射防止層9’が、導電性材料で構成されているところにあり、その他の構成は同様であることとする。
【0048】
すなわち、反射防止層9’は、第1実施形態における反射防止膜と同様に発光素子ELの発光層で生じる光に対する反射率が低い材料からなるが、導電性を有する材料を用いて構成されている。このような材料として、例えば窒化チタン(TiN)膜や、アモルファスカーボン(α−C)を用いる。尚、この反射防止層9’は、光吸収性が高く、光透過性が低い方が好ましいことは第1実施形態と同様であり、これにより配線層5側からの光が発光素子EL側に透過することを防止する。
【0049】
そして、このような導電性材料からなる反射防止層9’は、配線層5と光反射層13との間に、層間絶縁膜7,11を介して設けられている。また、この反射防止層9’は、光層23における対向電極25と、反射層13における反射パターン13aとを接続するプラグ21に対して絶縁性を保った状態で、少なくとも素子層23における対向電極25間を覆う形状にパターニングされていることとする。このような反射防止層9’には、プラグ21の周囲に、プラグ21の径よりも大きな開口9aが設けられていることとする。この反射防止層9’によって対向電極25間(すなわち画素1G,1B,1R間)がより広く覆われることが好ましい。このため、この開口9aは、反射防止層9’とプラグ21との絶縁性が確保される範囲でできるだけ小さい大きさであることが好ましい。
【0050】
このような構成の表示装置1’であっても、光取り出し電極29と共に共振部を構成する反射パターン13aの外側に、反射防止層9’を設けた構成となっているため、発光素子ELにおいて発生した白色の発光光hが、反射パターン13a間から漏れ出した場合、この漏れ出した光h’は、反射防止層9’に入射する。このため、第1実施形態と同様に、取り出し電極29−反射パターン13a間で共振して光取り出し電極29側から取り出される特定波長の光hg,hr,hbに、この漏れ出した光h’が混ざり合うことが防止され、各画素1G,1B,1Rにおいて取り出し電極29側から取り出される光hg,hr,hbの色純度を維持することができ、この表示装置1’における色再現性の向上を図ることが可能である。
【0051】
尚、以上説明した第1実施形態および第2実施形態においては、発光素子ELが設けられた素子層23と反射防止層9,9’との間の各画素1G,1B,1Rに、反射パターン13aを配置してなる光反射層13を設け、光取り出し電極29と反射パターン13aとで共振部を構成してなる表示装置に対して本発明を適用した構成を説明した。しかしながら、本発明はこのような構成の表示装置への適用に限定されることはない。
【0052】
本発明が適用される他の構成としては、例えば、発光素子ELにおける取り出し電極と対向電極とで共振部を構成した表示装置であっても良い。この場合、各画素に配置される発光素子ELにおける取り出し電極と対向電極との間の光学的距離を、緑、青、赤の各色発光光が共振する値に設定することにより、フルカラー表示が行われる構成となる。そして、このような発光素子ELが設けられた発光層における対向電極の外側に、上述した反射防止層9,9’を設けることにより、第1実施形態および第2実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0053】
また、本発明は、共振器構造を適用していない表示装置に対しても適用可能であり、このような発光素子ELが設けられた発光層における対向電極の外側に、上述した反射防止層9,9’を設けることにより、画素1G,1B,1R間からの光り漏れが、表示面側である対向電極側から漏れ出して表示特性に影響を与えることを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】第1実施形態の表示装置を模式的に示す断面図である。
【図2】第2実施形態の表示装置を模式的に示す断面図である。
【符号の説明】
【0055】
1,1’…表示装置、5…配線層、5a…配線、7,11…層間絶縁膜、9,9’…反射防止層、13a…反射パターン、13…光反射層、21…プラグ、23…素子層、25…対向電極、27…機能層(発光層)、29…光取り出し電極、EL…発光素子、LG,LB,LR…光学的距離

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光取り出し電極とパターニングされた対向電極との間に発光層を狭持してなる複数の発光素子が配列形成された素子層を備えた表示装置において、
前記素子層における対向電極の外側に、反射防止層を設けた
ことを特徴とする表示装置。
【請求項2】
請求項1記載の表示装置において、
前記光取り出し電極が半透過反射性を有し、前記対向電極が光透過性を有すると共に、
前記素子層と前記反射防止層との間の前記対向電極に対応する位置に、前記対向電極と略同一形状の反射パターンを配置してなる光反射層が設けられ、
前記発光層で発生した発光光が、前記光取り出し電極と前記反射パターンとの間で共振して当該光取り出し電極側から取り出される
ことを特徴とする表示装置。
【請求項3】
請求項2記載の表示装置において、
前記光取り出し電極と前記反射パターンとの間の光学的距離が、前記発光素子毎にそれぞれ固有の波長を共振させる値に設計されている
ことを特徴とする表示装置。
【請求項4】
請求項1記載の表示装置において、
前記光取り出し電極が半透過反射性を有し、前記対向電極が光反射性を有すると共に、
前記発光層で発生した発光光が、前記光取り出し電極と前記対向電極との間で共振して当該光取り出し電極側から取り出される
ことを特徴とする表示装置。
【請求項5】
請求項4記載の表示装置において、
前記光取り出し電極と前記対向電極との間の光学的距離が、前記発光素子毎にそれぞれ固有の波長を共振させる値に設計されている
ことを特徴とする表示装置。
【請求項6】
請求項1記載の表示装置において、
前記反射防止層は、前記素子層と、当該素子層に設けられた前記発光素子に接続された配線が設けられた配線層との間に配置されている
ことを特徴とする表示装置。
【請求項7】
請求項6記載の表示装置において、
前記反射防止層は、前記配線層と前記素子層との間に設けられた層間絶縁膜の一部を構成している
ことを特徴とする表示装置。
【請求項8】
請求項6記載の表示装置において、
前記素子層と前記配線層との間に設けられた層間絶縁膜と、
前記素子層における対向電極と前記配線層に設けられた配線とを接続する状態で前記層間絶縁膜に埋め込まれたプラグとを備えると共に、
前記反射防止層は、前記プラグに対して絶縁性を保った状態で少なくとも前記対向電極間を覆う形状にパターニングされている
ことを特徴とする表示装置。
【請求項9】
請求項1記載の表示装置において、
前記配線層は、前記発光素子を駆動する薄膜トランジスタを備えている
ことを特徴とする表示装置。



【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−59116(P2007−59116A)
【公開日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−240836(P2005−240836)
【出願日】平成17年8月23日(2005.8.23)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】