説明

表示装置

【課題】本発明の課題は、発光素子を用いた表示装置を提供するものである。特に階調再現性が改良され、多階調表現が可能な表示装置を提供することである。
【解決手段】複数の画素が独立に制御されてなるアクティブマトリックス駆動型の表示装置であって、前記画素が少なくとも2つのサブピクセルを有し、該サブピクセルは通電により互いに同系統の発光色の光を発光し、単位電流当たりの発光効率が、一方のサブピクセルより他方のサブピクセルがより低いことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光素子を用いた表示装置に関する。特に階調再現性が改良され、多階調再現が可能な表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ブラウン管(CRT)に替わって薄型で軽量なフラットパネルディスプレイの広い分野で用いられ、その用途を延ばしてきている。これは、インターネットを核としたサービス網に対する情報機器およびインフラの発展により、パーソナル・コンピュータならびにネットワークアクセス対応型携帯電話などの個人情報端末が加速的に普及したためである。さらに、従来CRTの独壇場であった家庭用テレビへ、フラットパネルディスプレイの市場が拡大してきている。
【0003】
既に、液晶表示装置(LCD)は、その薄型軽量性および低消費電力の特長により大きな市場シェアを占めているが、いくつかの表示特性、例えば、視野角、コントラスト、応答速度などに関して改善すべき点がある。このため、LCD自身の改良が進められる一方で、全く別のデバイスや原理による表示装置に関しても研究・開発が盛んに行われている。
【0004】
その中で、近年特に注目を浴びているデバイスに、有機エレクトロルミネッセンスディスプレイ(OELD:organic electro luminescence display)がある。OELDは、電気信号に応じて発光し、かつ、発光物質として有機化合物を用いて構成される表示装置である。上記OELDは、生来的に広視野角および高コントラストならびに高速応答などの優れた表示特性を有している。また、薄型軽量かつ高画質な小型から大型までの表示装置を実現する可能性があることから、CRTやLCDに代わる表示装置として注目されている。
【0005】
複数の画素を配したマトリクスパネルの駆動技術に関して、OELDもLCDなどの表示装置と同様に、デューティ駆動(時分割駆動)およびスタティック駆動の両方が開発されている。
【0006】
前者は、単純なパネル構造により、シンプルな低コストプロセスで済むが、走査ライン数が増えると全画面を走査する時間に対する各ラインの発光時間が減少する。結果的に要求されるパネル輝度を得るために、画素のピーク輝度は高くなる。通常これは、常時点灯の駆動条件と比較して、発光効率が悪く、大きな電圧または電流による駆動が必要となる。
また、配線部においての電力損失のため、大画面になるほど消費電力の点で不利になる。
【0007】
一方、後者は、薄膜トランジスタ(TFT)等の非線形素子と組み合わせるため、プロセスが複雑となる。しかしながら、発光期間を1ラインの走査時間以上保持する構成が可能となることから、画素ピーク輝度および電流の低下によって低消費電力化や長寿命化が期待できる。
【0008】
また、TFTには、高密度パターニングと高い電流駆動能力とを有する連続粒界結晶シリコン(CGS:Continuous Grain Silicon)等の多結晶シリコン(p−Si:Poly−Silicon)形TFTが好ましい。p−Si形TFTの素子としての特徴である、高い移動度および集積性により、駆動IC(Integrated Circuit:集積回路)およびコントロール回路などの構成をパネル内蔵化することも可能になる。このような理由から、OELDをアクティブ駆動する技術開発は、現在の主流となっている。
【0009】
アクティブ駆動に際して、1画素当たり所定の輝度を得るのに必要な駆動電流は最大数マイクロアンペアであり、広い階調再現性を得るためには各階調間の最小電流差は数十ナノアンペアの極微少電流値となる。通常製造されるTFTの制御バラツキはこの微少電流値を超える電流値幅で発生するため、バラツキによる輝度の逆転等の階調異常を生じてしまう。従って、このような極微少電流をTFTにより制御するには、例えば、駆動電流を外部駆動回路で生成し、画素内のTFT回路の改良により生成された駆動電流で画素内の書き込みキャパシタに書き込みを行い、その駆動電流で有機EL素子を駆動できるようにして,画素回路内のTFTの特性バラツキを補償し、輝度バラツキを低減することが開示されている(例えば、特許文献1参照。)。しかしながら、さらにTFT制御用のTFTが必要になること、およびTFT駆動装置の低電流低電圧化の重装備が必要になるなどの課題がある。
ディスプレーがさらに高精細化するにつれて、また発光素子の発光効率が改善されるほど、制御すべき最小電流値はますます小さくなる傾向にあり、より信頼性が高くかつ簡便にコンパクトな制御方法が求められている。
【0010】
例えば、特許文献2には、中間調を含む多階調を表示する第一の副画素とより少ない階調数の第二の副画素を備えた表示装置が開示されている。第一の副画素の制御はアナログ信号と基準信号との比較に基づいてオフセット電圧を切り換えるオフセット電圧切替手段により行い、第二の副画素の制御は明暗の2値で制御される。しかしながら、電圧制御による有機電界発光素子では、温度変化により輝度が大きく変化する問題を有し、現実的でない。また、特許文献3には、面積の異なる副画素を備えた液晶表示装置が開示されている。液晶表示装置も電圧階調制御であり、電流階調による表示装置では、面積が異なる副画素を備えるだけでは信頼性の高い階調表現を行うことは不可能である。
【0011】
有機EL素子における電流制御と電圧制御については、非特許文献1に詳細に説明されている。有機EL素子の駆動は、陽極と陰極間に直流電界を印可して発光層にホールと電子を注入する直流電圧駆動が基本であって、有機ELにおける発光輝度が電動電流の値に比例していることに起因している。上記非特許文献1の284頁、図3に示されているように電流と輝度は極めて良い直線関係を示しているので、電流値により輝度を安定に制御し得ることがわかる。しかしながら、同頁の図4に示されているように、電圧と輝度はON/OFF特性に近い関係にあって、パルス変調制御には適しているが、有機ELの輝度制御に使用すると、電圧の僅かな変動によって輝度が大きく変化するので不適である。特に多階調の画像を再現良く表示することは極めて困難である。
電流制御方式であっても画像の多階調表現性はまだ十分とはいえず、さらに電流制御方式で多階調の画像表現を可能とする手段が望まれた。
【特許文献1】特開2001−147659号公報
【特許文献2】特開2003−280593号公報
【特許文献3】特開平5−34702号公報
【非特許文献1】城戸淳二 監修、”有機EL材料とディスプレイ”、283〜284頁、シーエムシー(2001年)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の課題は、発光素子を用いた表示装置を提供するものである。特に、階調制御性が改良され、安定に多階調表現が可能な表示装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の上記課題は、下記の手段によって解決された。
【0014】
<1> 複数の画素が独立に制御されてなるアクティブマトリックス駆動型の表示装置であって、前記画素が少なくとも2つのサブピクセルを有し、該サブピクセルは通電により互いに同系統の発光色の発光をし、単位電流当たりの発光効率が、一方のサブピクセルより他方のサブピクセルがより低いことを特徴とする表示装置。
<2> 前記発光効率の低いサブピクセルの発光効率が前記発光効率の高いサブピクセルの発光効率の5%〜60%であることを特徴とする<1>に記載の表示装置。
<3> 前記発光効率の低いサブピクセルの面積が前記発光効率の高いサブピクセルの発光面積より小さいことを特徴とする請求項1または<2>に記載の表示装置。
<4> 前記発光効率の低いサブピクセルの階調数が発光効率の高いサブピクセルの階調数よりも少ないことを特徴とする<1>〜<3>のいずれか1項に記載の表示装置。
<5> 前記画素が電荷注入型発光素子から成り、電流値制御により階調表現を行うことを特徴とする<1>〜<4>のいずれか1項に記載の表示装置。
<6> 前記発光素子が有機電界発光素子であることを特徴とする<5>に記載の表示装置。
<7> 前記有機電界発光素子に用いられる発光材料の少なくとも1種が燐光発光材料であることを特徴とする<1>〜<6>のいずれか1項に記載の表示装置。
<8> 前記発光効率の高いサブピクセルに用いられる発光材料の少なくとも1種が燐光発光材料であることを特徴とする<7>に記載の表示装置。
<9> 前記有機界発光素子がトップエミッション型有機電界発光素子であることを特徴とする<6>〜<8>のいずれか1項に記載の表示装置。
<10> 前記表示装置がフルカラー表示装置であることを特徴とする<1>〜<9>のいずれか1項に記載の表示装置。
【発明の効果】
【0015】
本発明により階調再現性が改良され、多階調表現が可能な表示装置が提供される。
本発明によれば、各画素毎に発光効率の低いサブピクセルを備えることによって、安定に制御可能な電流領域で多階調を表現することが可能となる。従って、階調制御の信頼性が改良されるので、大画面表示装置においても高画質を実現することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
1.表示装置
本発明の表示装置は、自発光素子からなる画素、該画素を独立に駆動制御するためのアクティブ素子とを備える画素部を複数有し、前記画素が少なくとも2つのサブピクセルを有する。該サブピクセルは、通電により互いに同系統の発光色の光を発光し、単位電流当たりの発光効率が互いに異なり、一方のサブピクセルより他方のサブピクセルの発光効率が低いことを特徴とする。好ましくは、前記発光効率の低いサブピクセルの発光効率が前記発光効率の高いサブピクセルの発光効率の5%〜60%である。より好ましくは、前記発光効率の低いサブピクセルの発光効率が前記発光効率の高いサブピクセルの発光効率の5%〜60%であり、10%〜50%がさらに好ましく、20%〜40%が最も好ましい。
【0017】
前記発光効率の低いサブピクセルの発光効率が前記発光効率の高いサブピクセルの発光効率の60%を超えると制御電流値の許容幅が少なくなってしまうので好ましくない。
前記発光効率の低いサブピクセルの発光効率が前記発光効率の高いサブピクセルの発光効率の5%未満だとパネルの消費電力が大きくなってしまうので好ましくない。
【0018】
好ましくは、前記発光効率の低いサブピクセルの面積が前記発光効率の高いサブピクセルの発光面積より小さい。
【0019】
光フィルターを有しないサブピクセルの面積に対する、光フィルターを有するサブピクセルの面積の割合は、0.01%〜100%が好ましく、1%〜50%がより好ましく、3%〜30%がさらに好ましい。100%を超えるとパネルの消費電力が大きくなってしまうので好ましくない。0.01%未満だと光フィルターを有するサブピクセルの製造加工が困難になるので好ましくない
【0020】
異なる面積のサブピクセルの発光効率比を求める方法としては、表示装置のサブピクセルの内、効率の低いサブピクセルのみを一定電流密度で常時点灯させて表示装置の輝度を測定する。また、効率の高いサブピクセルのみを前述の電流密度と同じ値になる電流値で駆動させてパネルの輝度を測定する。輝度測定は分光放射輝度計などを用い、測定範囲内に測定対象のサブピクセルが多数入るように表示装置を配置する。各々の測定結果を、各々のサブピクセルの開口比(サブピクセル発光面積/画素面積)で除した値の比が発光効率比となる。本発明においては(低効率サブピクセル/高効率サブピクセル)の値が0.5以下が好ましく0.33以下が特に好ましい。
【0021】
本発明の表示装置は、特には限定されず、多階調を必要とする公知の種々の表示装置に用いることが出来る。
表示装置では、各発光色(例えばR・G・B)の表現可能な階調数を掛け合わせた数の色が表現可能となる。例えば各色2値表示であれば8色表示の表示装置となる。この表現可能な色数が多いほど鮮明でコントラストの高い画像を表示することが可能となるため、各色の階調数を可能な限り増加させることが好ましい。ところが前述のように電流値制御の発光素子においては、制御が必要な電流値が非常に小さいため、多階調を信頼性良く制御するのが困難となる(TFT等の電流制御機構の性能による)。本発明の構成により、TFTの性能による制限を越えた階調数を実現することが可能である。
【0022】
本発明の構成を用いた表示装置は、モノカラー、フルカラーの表示装置に好適に用いることが可能である。モノカラー表示装置の例としてはレントゲン写真表示用の多階調ディスプレイ等が挙げられ、フルカラー表示装置の例としては家庭用のテレビ等を挙げることができる。
【0023】
好ましくは、前記画素が電流励起型発光素子であり、より好ましくは、有機電界発光素子である(本発明においては、以後、「有機EL素子と「記載する場合はある。)。特に好ましくは、トップエミッション型有機電界発光素子である。
好ましくは、前記表示装置がフルカラー表示装置である。
【0024】
次に、本発明の表示装置を図面を用いて具体的に説明する。
図1は、表示装置の構成図である。この表示装置は、たとえば、有機EL素子を利用した有機EL表示装置である。表示パネル1には、水平方向に設けられた複数の第一の走査線Wscan1〜Nと、複数の第二の走査線Escan1〜Nと、垂直方向に設けられた複数のデータ線Data1〜Mと、それらの交差位置に配置された副画素、PXとが設けられている。そして、フレーム期間内において、第一の走査線駆動回路2が第一の走査線Wscan1〜Nを、第二の走査線駆動回路3が第二の走査線Escan1〜Nをそれぞれ順次走査し、各走査期間においてデータ線駆動回路10がデータ線Data1〜Mに輝度情報に対応した書き込み電流Iwを供給する。本発明の表示装置では、PXは、垂直方向は例えばLR(発光効率の高い赤色発光サブピクセル)、sR(効率の低い赤色発光サブピクセル)、LR,sR,LR・・・の繰り返しで構成され、水平方向は例えばLR,LG,LB,LR,LG,LB・・・のような繰り返しで構成される。
【0025】
図2は、本実施の形態における表示装置の画素回路を示す図である。この副画素PXには、駆動電流に応じた輝度で発光する有機EL素子などの発光素子OLEDと、その発光素子OLEDに駆動電流を供給する駆動トランジスタTFT4と、駆動トランジスタTFT4のドレインを電源Vddに接続する第三のトランジスタTFT3と、第一の走査線Wscanにゲートが接続された第一のトランジスタTFT1と、第二の走査線Escanにゲートが接続された第二のトランジスタTFT2と、駆動トランジスタTFT4のゲートと所定の定電圧源Vcsとの間に設けられたコンデンサCとを有する。第三のトランジスタTFT3のみがP型トランジスタであり、他のトランジスタはN型トランジスタである。
【0026】
図3に公知の画素の構成を簡単に示す。フルカラー表示に必要な赤、緑、青の副画素が並んでおり、それぞれ所望の輝度で発光することで所望の色を表現する。各色副画素の階調数によって表現可能な色数が決定され、例えば各色256階調を表現できる場合には約1677万色の色表現が可能となる。この時、最も大きい階調を表現する場合の1副画素あたりの電流値(最大電流値)が例えば4μAだとした場合、単純計算で階調間の電流値差は15.6nAとなる。通常のTFTで再現良くこの微小電流を制御することは配線容量等の影響があり、非常に困難である。
【0027】
図4は本発明による画素の構成を示すものである。本発明においては、発光効率が低い副画素が配される。図4に示すように、各色に発光効率を低下させたsR、sGおよびsB副画素がLR、LG、およびLB画素にそれぞれ追加される。LR、LG、およびLB画素は発光効率が高い画素で面積が大きく設定される。LR、LG、LB副画素でそれぞれ64階調を表現し、sR、sGおよびsBで4階調を表現する。これにより各色256階調が表現可能となる。sR、sGおよびsB副画素は、発光効率が例えばLR、LG、およびLB画素よりもそれぞれ約1/4程度の発光効率となっており、図5に示すように、階調間の電流値差も4倍の62nA程度となる。
【0028】
上記の電流値から明らかなように、通常構成の4倍程度の電流値バラツキ許容幅ができたことになる。細かい階調表現をsR、sG、およびsB画素に担当させることで、各色256階調の約1677万色表現の表示装置が実現可能である。つまり、階調間の最小制御電流値が信頼性高く制御可能な電流値となるようにsR、sG、およびsBの階調数や発光効率を落とせば良い。ただし、発光効率を変化させずに副画素面積だけを変えた場合には制御電流値が変わらないため、電流制御の場合には利得が無い。
【0029】
発光効率を低下させる手段はどのような方法でも良い。有機EL素子の発光材料およびその他の有機素材をして効率の低い材料を用いたり、層構成を変えたりする方法も可能である。
【0030】
発光効率を低下させる手段としては、発光材料を変える方法も可能である。例えば発光効率の高いサブピクセルには燐光発光材料を用い、発光効率の低いサブピクセルに蛍光発光材料を用いても良い。また、発光材料は同じ材料を使用した場合でも、例えば発光層のドープ濃度を変えることによっても発光効率を変化させることが出来る。このとき発光色が大きく変わらない範囲で濃度を変化させて効率を変化させるのが好ましい。
【0031】
また、有機層の膜厚を変化させることによっても発光効率を変えることが可能である。発光素子の各層の膜厚変化はキャリヤバランス変化を生じる場合が多いため発光効率を調節することが可能である。加えて、膜厚変化は光干渉効果による光取り出し効率を変えることになるため、観測者から見た発光効率が変わることにもなる。発光色と発光効率の点から好適な条件を選択可能である。
【0032】
また、電極材料の選択や膜厚変化によっても発光効率を調節することが可能である。通常の有機EL素子では1対の電極の内、片方を透明電極としているが、発光効率を低くしたいサブピクセルの電極を透明電極ではなく、半透過電極とすることでも効率の調節が可能である。
【0033】
2.有機電界発光素子
本発明における有機電界発光素子は、発光層の他に、正孔輸送層、電子輸送層、ブロック層、電子注入層、および正孔注入層などの従来知られている有機化合物層を有しても良い。
【0034】
以下、詳細に説明する。
1)層構成
<電極>
本発明における有機電界発光素子の一対の電極は、少なくとも一方は透明電極であり、もう一方は背面電極となる。背面電極は透明であっても、非透明であっても良い。
<有機化合物層の構成>
前記有機化合物層の層構成としては、特に制限はなく、有機電界発光素子の用途、目的に応じて適宜選択することができるが、前記透明電極上に又は前記背面電極上に形成されるのが好ましい。この場合、有機化合物層は、前記透明電極又は前記背面電極上の前面又は一面に形成される。
有機化合物層の形状、大きさ、および厚み等については、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0035】
具体的な層構成として、下記が挙げられるが本発明はこれらの構成に限定されるものではない。
・陽極/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/陰極、
・陽極/正孔輸送層/発光層/ブロック層/電子輸送層/陰極、
・陽極/正孔輸送層/発光層/ブロック層/電子輸送層/電子注入層/陰極、
・陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/ブロック層/電子輸送層/陰極、
・陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/ブロック層/電子輸送層/電子注入層/陰極。
【0036】
以下に各層について詳細に説明する。
2)正孔輸送層
本発明に用いられる正孔輸送層は正孔輸送材を含む。前記正孔輸送材としては正孔を輸送する機能、もしくは陰極から注入された電子を障壁する機能のいずれかを有しているもので有れば特に制限されることはなく用いることが出来る。本発明に用いられる正孔輸送材としては、低分子正孔輸送材、および高分子正孔輸送材のいずれも用いることができる。
本発明に用いられる正孔輸送材の具体例として、例えば以下の材料を挙げることができる。
【0037】
カルバゾ−ル誘導体、イミダゾ−ル誘導体、ポリアリ−ルアルカン誘導体、ピラゾリン誘導体、ピラゾロン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、アリ−ルアミン誘導体、アミノ置換カルコン誘導体、スチリルアントラセン誘導体、フルオレノン誘導体、ヒドラゾン誘導体、スチルベン誘導体、シラザン誘導体、芳香族第三アミン化合物、スチリルアミン化合物、芳香族ジメチリデン系化合物、ポルフィリン系化合物、ポリシラン系化合物、ポリ(N−ビニルカルバゾ−ル)誘導体、アニリン系共重合体、チオフェンオリゴマ−、ポリチオフェン等の導電性高分子オリゴマ−、ポリチオフェン誘導体、ポリフェニレン誘導体、ポリフェニレンビニレン誘導体、及びポリフルオレン誘導体等の高分子化合物等が挙げられる。
これらは、単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0038】
正孔輸送層の厚みとしては、10nm〜400nmが好ましく、50nm〜200nmがより好ましい。
【0039】
3)正孔注入層
本発明おいては、正孔輸送層と陽極の間に正孔注入層を設けることができる。
正孔注入層とは、陽極から正孔輸送層に正孔を注入しやすくする層であり、具体的には前記正孔輸送材の中でイオン化ポテンシャルの小さな材料が好適用いられる。例えばフタロシアニン化合物、ポルフィリン化合物、及びスターバースト型トリアリールアミン化合物等を挙げることができ、好適に用いることができる。
正孔注入層の膜厚は、1nm〜300nmが好ましい。
【0040】
4)発光層
本発明に用いられる発光層は、少なくとも一種の発光材料を含み、必要に応じて正孔輸送材、電子輸送材、又はホスト材を含んでもよい。
本発明に用いられる発光材料としては特に限定されることはなく、蛍光発光材料または燐光発光材料のいずれも用いることができる。発光効率の点から燐光発光材料が好ましい。
【0041】
蛍光発光材料としては、例えばベンゾオキサゾール誘導体、ベンゾイミダゾール誘導体、ベンゾチアゾール誘導体、スチリルベンゼン誘導体、ポリフェニル誘導体、ジフェニルブタジエン誘導体、テトラフェニルブタジエン誘導体、ナフタルイミド誘導体、クマリン誘導体、ペリレン誘導体、ペリノン誘導体、オキサジアゾール誘導体、アルダジン誘導体、ピラリジン誘導体、シクロペンタジエン誘導体、ビススチリルアントラセン誘導体、キナクリドン誘導体、ピロロピリジン誘導体、チアジアゾロピリジン誘導体、スチリルアミン誘導体、芳香族ジメチリデン化合物、8−キノリノール誘導体の金属錯体や希土類錯体に代表される各種金属錯体、ポリチオフェン誘導体、ポリフェニレン誘導体、ポリフェニレンビニレン誘導体、ポリフルオレン誘導体等の高分子化合物等が挙げられる。これらは1種または2種以上を混合して用いることができる。
【0042】
燐光発光材料としては特に限定されることはないが、オルトメタル化金属錯体、又はポルフィリン金属錯体が好ましい。
【0043】
上記オルトメタル化金属錯体とは、例えば山本明夫著「有機金属化学−基礎と応用−」150頁〜232頁、裳華房社(1982年発行)やH.Yersin著「Photochemistry and Photophisics of Coodination Compounds」、71頁〜77頁、135頁〜146頁、Springer−Verlag社(1987年発行)等に記載されている化合物群の総称である。該オルトメタル化金属錯体を発光材料として発光層に用いることは、高輝度で発光効率に優れる点で有利である。
【0044】
上記オルトメタル化金属錯体を形成する配位子としては、種々のものがあり、上記文献にも記載されているが、その中でも好ましい配位子としては、2−フェニルピリジン誘導体、7,8−ベンゾキノリン誘導体、2−(2−チエニル)ピリジン誘導体、2−(1−ナフチル)ピリジン誘導体、2−フェニルキノリン誘導体等が挙げられる。これらの誘導体は必要に応じて置換基を有してもよい。また、上記オルトメタル化金属錯体は、上記配位子のほかに、他の配位子を有していてもよい。
【0045】
本発明で用いるオルトメタル化金属錯体は、Inorg Chem.,1991年,30号,1685頁、同1988年,27号,3464頁、同1994年,33号,545頁、Inorg.Chim.Acta,1991年,181号,245頁、J.Organomet.Chem.,1987年,335号,293頁、J.Am.Chem.Soc.1985年,107号,1431頁等、種々の公知の手法で合成することができる。
上記オルトメタル化錯体の中でも、三重項励起子から発光する化合物が本発明においては発光効率向上の観点から好適に使用することができる。
【0046】
また、ポルフィリン金属錯体の中ではポルフィリン白金錯体が好ましい。
燐光発光材料は1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。また、蛍光発光材料と燐光発光材料を同時に用いてもよい。
【0047】
ホスト材とは、その励起状態から、蛍光発光材料または燐光発光材料へエネルギー移動を起こし、その結果、蛍光発光材料または燐光発光材料を発光させる機能を有する材料のことである。
【0048】
ホスト材としては、励起子エネルギーを発光材料にエネルギー移動させることのできる化合物ならば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、具体的にはカルバゾール誘導体、トリアゾール誘導体、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、ポリアリールアルカン誘導体、ピラゾリン誘導体、ピラゾロン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、アリールアミン誘導体、アミノ置換カルコン誘導体、スチリルアントラセン誘導体、フルオレノン誘導体、ヒドラゾン誘導体、スチルベン誘導体、シラザン誘導体、芳香族第三アミン化合物、スチリルアミン化合物、芳香族ジメチリデン系化合物、ポルフィリン系化合物、アントラキノジメタン誘導体、アントロン誘導体、ジフェニルキノン誘導体、チオピランジオキシド誘導体、カルボジイミド誘導体、フルオレニリデンメタン誘導体、ジスチリルピラジン誘導体、ナフタレンペリレン等の複素環テトラカルボン酸無水物、フタロシアニン誘導体、8−キノリノール誘導体の金属錯体やメタルフタロシアニン、ベンゾオキサゾールやベンゾチアゾールを配位子とする金属錯体に代表される各種金属錯体ポリシラン系化合物、ポリ(N−ビニルカルバゾ−ル)誘導体、アニリン系共重合体、チオフェンオリゴマー、ポリチオフェン等の導電性高分子オリゴマー、ポリチオフェン誘導体、ポリフェニレン誘導体、ポリフェニレンビニレン誘導体、ポリフルオレン誘導体等の高分子化合物等が挙げられる。これらの化合物は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
ホスト材の発光層における含有量としては0質量%〜99.9質量%が好ましく、さらに好ましくは0質量%〜99.0質量%である。
【0049】
5)ブロック層
本発明においては、発光層と電子輸送層との間にブロック層を設けることができる。ブロック層とは発光層で生成した励起子の拡散抑制する層であり、また正孔が陰極側に突き抜けることを抑制する層である。
【0050】
ブロック層に用いられる材料は、電子輸送層より電子を受け取り、発光層にわたす事のできる材料で有れば特に限定されることはなく、一般的な電子輸送材を用いることができる。例えば以下の材料を挙げることができる。トリアゾ−ル誘導体、オキサゾ−ル誘導体、オキサジアゾ−ル誘導体、フルオレノン誘導体、アントラキノジメタン誘導体、アントロン誘導体、ジフェニルキノン誘導体、チオピランジオキシド誘導体、カルボジイミド誘導体、フルオレニリデンメタン誘導体、ジスチリルピラジン誘導体、ナフタレンペリレン等の複素環テトラカルボン酸無水物、フタロシアニン誘導体、8−キノリノ−ル誘導体の金属錯体やメタルフタロシアニン、ベンゾオキサゾ−ルやベンゾチアゾ−ルを配位子とする金属錯体に代表される各種金属錯体、アニリン系共重合体、チオフェンオリゴマ−、ポリチオフェン等の導電性高分子オリゴマ−、ポリチオフェン誘導体、ポリフェニレン誘導体、ポリフェニレンビニレン誘導体、ポリフルオレン誘導体等の高分子化合物を挙げることができる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0051】
6)電子輸送層
本発明においては電子輸送材を含む電子輸送層を設けることができる。
電子輸送材としては電子を輸送する機能、もしくは陽極から注入された正孔を障壁する機能のいずれかを有しているもので有れば制限されることはなく、前記ブロック層の説明時に挙げた電子輸送材を好適に用いることができる。
前記電子輸送層の厚みとしては、10nm〜200nmが好ましく、20nm〜80nmがより好ましい。
【0052】
前記厚みが、1000nmを越えると駆動電圧が上昇することがあり、10nm未満であると該発光素子の発光効率が非常に低下する可能性があり好ましくない。
【0053】
7)電子注入層
本発明おいては、電子輸送層と陰極の間に電子注入層を設けることができる。
電子注入層とは、陰極から電子輸送層に電子を注入しやすくする層であり、具体的にはフッ化リチウム、塩化リチウム、臭化リチウム等のリチウム塩、フッ化ナトリウム、塩化ナトリウム、フッ化セシウム等のアルカリ金属塩、酸化リチウム、酸化アルミニウム、酸化インジウム、又は酸化マグネシウム等の絶縁性金属酸化物等を好適に用いることができる。
電子注入層の膜厚は0.1nm〜5nmが好ましい。
【0054】
8)基板
本発明に用いられる基板の材料としては、水分を透過させない材料又は水分透過率の極めて低い材料が好ましく、また、前記有機化合物層から発せられる光を散乱乃至減衰等のさせることのない材料が好ましい。具体的例として、例えばYSZ(ジルコニア安定化イットリウム)、ガラス等の無機材料、ポリエチレンテレフタレ−ト、ポリブチレンテレフタレ−ト、ポリエチレンナフタレ−ト等のポリエステル、ポリスチレン、ポリカ−ボネ−ト、ポリエ−テルスルホン、ポリアリレ−ト、アリルジグリコ−ルカ−ボネ−ト、ポリイミド、ポリシクロオレフィン、ノルボルネン樹脂、およびポリ(クロロトリフルオロエチレン)等の合成樹脂等の有機材料、などが挙げられる。
前記有機材料の場合、耐熱性、寸法安定性、耐溶剤性、電気絶縁性、加工性、低通気性、又は低吸湿性等に優れていることが好ましい。これらの材料は、単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0055】
基板の形状、構造、大きさ等については、特に制限はなく、発光素子の用途、目的等に応じて適宜選択することができる。一般的には、前記形状としては、板状である。前記構造としては、単層構造であってもよいし、積層構造であってもよく、また、単一部材で形成されていてもよいし、2以上の部材で形成されていてもよい。
【0056】
基板は、無色透明であってもよいし、有色透明であってもよいが、前記発光層から発せられる光を散乱あるいは減衰等させることがない点で、無色透明であるのが好ましい。
【0057】
基板には、その表面又は裏面(前記透明電極側)に透湿防止層(ガスバリア層)を設けるのが好ましい。前記透湿防止層(ガスバリア層)の材料としては、窒化珪素、酸化珪素などの無機物が好適に用いられる。該透湿防止層(ガスバリア層)は、例えば、高周波スパッタリング法などにより形成することができる。
基板には、さらに必要に応じて、ハ−ドコ−ト層、およびアンダ−コ−ト層などを設けてもよい。
【0058】
9)電極
本発明における電極は、第1電極よび第2電極のいずれが陽極であっても陰極であっても構わないが、好ましくは第1電極が陽極であり、第2電極が陰極である。
【0059】
<陽極>
本発明に用いられる陽極としては、通常、前記有機化合物層に正孔を供給する陽極としての機能を有していればよく、その形状、構造、大きさ等については特に制限はなく、発光素子の用途、目的に応じて、公知の電極の中から適宜選択することができる。
【0060】
陽極の材料としては、例えば、金属、合金、金属酸化物、有機導電性化合物、またはこれらの混合物を好適に挙げられ、仕事関数が4.0eV以上の材料が好ましい。具体例としては、アンチモンやフッ素等をド−プした酸化錫(ATO、FTO)、酸化錫、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化インジウム錫(ITO)、酸化亜鉛インジウム(IZO)等の半導性金属酸化物、金、銀、クロム、ニッケル等の金属、さらにこれらの金属と導電性金属酸化物との混合物または積層物、ヨウ化銅、硫化銅などの無機導電性物質、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリピロ−ルなどの有機導電性材料、およびこれらとITOとの積層物などが挙げられる。
【0061】
陽極は例えば、印刷方式、コ−ティング方式等の湿式方式、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレ−ティング法等の物理的方式、CVD、プラズマCVD法等の化学的方式、などの中から前記材料との適性を考慮して適宜選択した方法に従って前記基板上に形成することができる。例えば、陽極の材料として、ITOを選択する場合には、該陽極の形成は、直流あるいは高周波スパッタ法、真空蒸着法、イオンプレ−ティング法等に従って行うことができる。また陽極の材料として有機導電性化合物を選択する場合には湿式製膜法に従って行うことができる。
【0062】
陽極の前記発光素子における形成位置としては、特に制限はなく、該発光素子の用途、目的に応じて適宜選択することができるが、前記基板上に形成されるのが好ましい。この場合、該陽極は、前記基板における一方の表面の全部に形成されていてもよく、その一部に形成されていてもよい。
【0063】
なお、前記陽極のパタ−ニングは、フォトリソグラフィ−などによる化学的エッチングにより行ってもよいし、レ−ザ−などによる物理的エッチングにより行ってもよく、また、マスクを重ねて真空蒸着やスパッタ等をして行ってもよいし、リフトオフ法や印刷法により行ってもよい。
【0064】
陽極の厚みとしては、前記材料により適宜選択することができ、一概に規定することはできないが、通常10nm〜50μmであり、50nm〜20μmが好ましい。
陽極の抵抗値としては、10Ω/□以下が好ましく、10Ω/□以下がより好ましい。
陽極は、無色透明であっても、有色透明であってもよく、該陽極側から発光を取り出すためには、その透過率としては、60%以上が好ましく、70%以上がより好ましい。この透過率は、分光光度計を用いた公知の方法に従って測定することができる。
【0065】
陽極については、沢田豊監修「透明電極膜の新展開」シ−エムシ−刊(1999)に詳述があり、これらを本発明に適用することができる。耐熱性の低いプラスティック基材を用いる場合は、ITOまたはIZOを使用し、150℃以下の低温で製膜した陽極が好ましい。
【0066】
<陰極>
本発明に用いることの出来る陰極としては、通常、前記有機化合物層に電子を注入する陰極としての機能を有していればよく、その形状、構造、大きさ等については特に制限はなく、発光素子の用途、目的に応じて、公知の電極の中から適宜選択することができる。
【0067】
陰極の材料としては、例えば、金属、合金、金属酸化物、電気伝導性化合物、これらの混合物などが挙げられ、仕事関数が4.5eV以下のものが好ましい。具体例としてはアルカリ金属(たとえば、Li、Na、K、又はCs等)、アルカリ土類金属(たとえばMg、Ca等)、金、銀、鉛、アルミニウム、ナトリウム−カリウム合金、リチウム−アルミニウム合金、マグネシウム−銀合金、インジウム、及びイッテルビウム等の希土類金属、などが挙げられる。これらは、単独で使用してもよいが、安定性と電子注入性とを両立させる観点からは、2種以上を好適に併用することができる。
【0068】
これらの中でも、電子注入性の点で、アルカリ金属やアルカリ度類金属が好ましく、保存安定性に優れる点で、アルミニウムを主体とする材料が好ましい。アルミニウムを主体とする材料とは、アルミニウム単独、又はアルミニウムと0.01質量%〜10質量%のアルカリ金属若しくはアルカリ土類金属との合金若しくは混合物(例えば、リチウム−アルミニウム合金、マグネシウム−アルミニウム合金など)をいう。
【0069】
陰極の材料については、特開平2−15595号公報、特開平5−121172号公報に詳述されていて、これらを本発明に適用することができる。
【0070】
陰極の形成法は、特に制限はなく、公知の方法に従って行うことができる。例えば、印刷方式、コ−ティング方式等の湿式方式、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレ−ティング法等の物理的方式、CVD、プラズマCVD法等の化学的方式、などの中から前記材料との適性を考慮して適宜選択した方法に従って前記基板上に形成することができる。例えば、前記陰極の材料として、金属等を選択する場合には、その1種又は2種以上を同時又は順次にスパッタ法等に従って行うことができる。
【0071】
陰極のパタ−ニングは、フォトリソグラフィ−などによる化学的エッチングにより行ってもよいし、レ−ザ−などによる物理的エッチングにより行ってもよく、また、マスクを重ねて真空蒸着やスパッタ等をして行ってもよいし、リフトオフ法や印刷法により行ってもよい。
【0072】
陰極の有機電界発光素子における形成位置としては、特に制限はなく、該発光素子の用途、目的に応じて適宜選択することができるが、有機化合物層上に形成されるのが好ましい。この場合、該陰極は、前記有機化合物層上の全部に形成されていてもよく、その一部に形成されていてもよい。
また、陰極と有機化合物層との間に前記アルカリ金属又は前記アルカリ土類金属のフッ化物等による誘電体層を0.1nm〜5nmの厚みで挿入してもよい。
【0073】
陰極の厚みとしては、前記材料により適宜選択することができ、一概に規定することはできないが、通常10nm〜5μmであり、50nm〜1μmが好ましい。
陰極は、透明であってもよいし、不透明であってもよい。なお、透明な陰極は、前記陰極の材料を1nm〜10nmの厚みに薄く製膜し、更に前記ITOやIZO等の透明な導電性材料を積層することにより形成することができる。
【0074】
10)保護層
本発明において、有機EL素子全体は、保護層によって保護されていてもよい。
保護層に含まれる材料としては、水分や酸素等の素子劣化を促進するものが素子内に入ることを抑止する機能を有しているものであればよい。
その具体例としては、In、Sn、Pb、Au、Cu、Ag、Al、TI、NI等の金属、MgO、SIO、SIO、Al、GeO、NIO、CaO、BaO、Fe、Y、TIO等の金属酸化物、SIN、SIN等の金属窒化物、MgF、LIF、AlF、CaF等の金属フッ化物、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルメタクリレート、ポリイミド、ポリウレア、ポリテトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリジクロロジフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレンとジクロロジフルオロエチレンとの共重合体、テトラフルオロエチレンと少なくとも1種のコモノマーとを含むモノマー混合物を共重合させて得られる共重合体、共重合主鎖に環状構造を有する含フッ素共重合体、吸水率1%以上の吸水性物質、吸水率0.1%以下の防湿性物質等が挙げられる。
【0075】
保護層の形成方法については、特に限定はなく、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、反応性スパッタリング法、MBE(分子線エピタキシ)法、クラスターイオンビーム法、イオンプレーティング法、プラズマ重合法(高周波励起イオンプレーティング法)、プラズマCVD法、レーザーCVD法、熱CVD法、ガスソースCVD法、コーティング法、印刷法、又は転写法を適用できる。
【0076】
11)封止
さらに、本発明における有機電界発光素子は、封止容器を用いて素子全体を封止してもよい。
また、封止容器と発光素子の間の空間に水分吸収剤又は不活性液体を封入してもよい。
水分吸収剤としては、特に限定されることはないが、例えば、酸化バリウム、酸化ナトリウム、酸化カリウム、酸化カルシウム、硫酸ナトリウム、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、五酸化燐、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化銅、フッ化セシウム、フッ化ニオブ、臭化カルシウム、臭化バナジウム、モレキュラーシーブ、ゼオライト、および酸化マグネシウム等を挙げることができる。不活性液体としては、特に限定されることはないが、例えば、パラフィン類、流動パラフィン類、パーフルオロアルカンやパーフルオロアミン、パーフルオロエーテル等のフッ素系溶剤、塩素系溶剤、及びシリコーンオイル類が挙げられる。
【0077】
12)素子の製造方法
本発明における素子を構成する各層は、蒸着法やスパッタ法等の乾式製膜法、ディッピング、スピンコ−ト法、ディップコ−ト法、キャスト法、ダイコ−ト法、ロ−ルコ−ト法、バ−コ−ト法、グラビアコ−ト法等の湿式製膜法いずれによっても好適に製膜することができる。
中でも発光効率、耐久性の点から乾式法が好ましい。湿式製膜法の場合、残存する塗布溶媒が発光層を損傷させるので好ましくない。
特に好ましくは、抵抗加熱式真空蒸着法である。抵抗加熱式真空蒸着法は、真空下で加熱により蒸散させる物質のみを効率的に加熱できるので、素子が高温に曝されないのでダメージが少なく有利である。
【0078】
真空蒸着とは真空にした容器の中で、蒸着材料を加熱させ気化もしくは昇華して、少し離れた位置に置かれた被蒸着物の表面に付着させ、薄膜を形成するというものである。蒸着材料、被蒸着物の種類により、抵抗加熱、電子ビーム、高周波誘導、レーザーなどの方法で加熱される。この中で最も低温で成膜を行うのが抵抗加熱式の真空蒸着法であり、昇華点の高い材料は成膜できないが、低い昇華点の材料であれば、被蒸着材料への熱ダメージがほとんど無い状態で成膜を行うことができる。
【0079】
本発明における封止膜材料は、抵抗加熱式の真空蒸着で成膜し得ることを特徴とする。
従来用いられてきた酸化シリコン等の封止剤は昇華点が高く、抵抗加熱で蒸着することは不可能であった。また、公知例に一般的に記載されているイオンプレーティング式などの真空蒸着法は、蒸着元部が数千℃と超高温となるため、被蒸着材料に熱的な影響を与えて変質させるため、特に熱や紫外線の影響を受けやすい有機EL素子の封止膜の製造方法としては適していない。
【0080】
13)駆動方法
本発明における有機電界発光素子は、陽極と陰極との間に直流(必要に応じて交流成分を含んでもよい)電圧(通常2ボルト〜15ボルト)、又は直流電流を印加することにより、発光を得ることができる。
【0081】
本発明における有機電界発光素子の駆動方法については、特開平2−148687号、同6−301355号、同5−29080号、同7−134558号、同8−234685号、同8−241047号の各公報、特許第2784615号、米国特許5828429号、同6023308号の各明細書、等に記載の駆動方法を適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】従来のアクティブマトリックス駆動型表示装置を示す回路図である。
【図2】本発明によるアクティブマトリックス駆動型表示装置の一例を示す回路図である。
【図3】従来の画素配列の概念図である。
【図4】本発明によるサブピクセルを有する画素配列の概念図である。
【図5】電流値と発光輝度の関係を示す概念図である。横軸は素子の駆動電流値であり、縦軸は各電流値に対応した発光輝度を任意単位で相対的に示す。△印が輝度差のない従来のピクセル配列における輝度を示す。□印は、本発明におけるピクセル配列における発光効率の高いサブピクセルの輝度を示す。○印は、本発明におけるピクセル配列における発光効率の低いサブピクセルの輝度を示す。
【符号の説明】
【0083】
1:表示パネル
2:第一の走査線駆動回路
3:第二の走査線駆動回路
10:データ線駆動回路
PX:画素

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の画素が独立に制御されてなるアクティブマトリックス駆動型の表示装置であって、前記画素が少なくとも2つのサブピクセルを有し、該サブピクセルは通電により互いに同系統の発光色の発光をし、単位電流当たりの発光効率が、一方のサブピクセルより他方のサブピクセルがより低いことを特徴とする表示装置。
【請求項2】
前記発光効率の低いサブピクセルの発光効率が前記発光効率の高いサブピクセルの発光効率の5%〜60%であることを特徴とする請求項1に記載の表示装置。
【請求項3】
前記発光効率の低いサブピクセルの面積が前記発光効率の高いサブピクセルの発光面積より小さいことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の表示装置。
【請求項4】
前記発光効率の低いサブピクセルの階調数が発光効率の高いサブピクセルの階調数よりも少ないことを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の表示装置。
【請求項5】
前記画素が電荷注入型発光素子から成り、電流値制御により階調表現を行うことを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の表示装置。
【請求項6】
前記発光素子が有機電界発光素子であることを特徴とする請求項5に記載の表示装置。
【請求項7】
前記有機電界発光素子に用いられる発光材料の少なくとも1種が燐光発光材料であることを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の表示装置。
【請求項8】
前記発光効率の高いサブピクセルに用いられる発光材料の少なくとも1種が燐光発光材料であることを特徴とする請求項7に記載の表示装置。
【請求項9】
前記有機界発光素子がトップエミッション型有機電界発光素子であることを特徴とする請求項6〜請求項8のいずれか1項に記載の表示装置。
【請求項10】
前記表示装置がフルカラー表示装置であることを特徴とする請求項1〜請求項9のいずれか1項に記載の表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−225101(P2008−225101A)
【公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−63945(P2007−63945)
【出願日】平成19年3月13日(2007.3.13)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】