表示装置
【課題】サイズや部品点数を増加させることなく、駆動回路部品の熱変形による応力を確実に吸収し、表示ムラの発生を抑制することができる表示装置の提供。
【解決手段】ガラス基板上面の、表示面領域外側の周縁部に、熱圧着によって駆動回路部品が実装されてなる表示装置において、前記ガラス基板内部の、前記駆動回路部品の直下もしくは近傍に、前記駆動回路部品の熱変形により生じる応力を吸収する、L字状、コの字状、枠状、駆動回路部品と略同一形状等の応力吸収部が形成されている。
【解決手段】ガラス基板上面の、表示面領域外側の周縁部に、熱圧着によって駆動回路部品が実装されてなる表示装置において、前記ガラス基板内部の、前記駆動回路部品の直下もしくは近傍に、前記駆動回路部品の熱変形により生じる応力を吸収する、L字状、コの字状、枠状、駆動回路部品と略同一形状等の応力吸収部が形成されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示装置に関し、特に、ガラス基板上に駆動回路部品が熱圧着により実装される表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
表示装置の一つである液晶表示装置は産業用途でも広い分野で使用されており、近年は放送局モニターや医療用画像表示機器として新たな市場が広がってきている。上記放送局モニターのように、使用環境が極めて暗い場所で使用する場合は、表示画面内のわずかな明るさの差が通常の使用環境に比べて顕著に視認されるようになってきている。
【0003】
特に、COG実装による液晶表示装置では、実装部品であるICの収縮応力が大きく、ガラス基板の歪みが大きく発生するため、ガラス基板の変形に起因する表示ムラが他の実装方法に比べて顕著に発生し、使用環境によっては特に暗い画面表示時の画像が表示ムラによって影響を受ける。そこで、このようなガラス基板の変形に起因する表示ムラを改善する方法が求められていた(例えば、下記特許文献1、2参照)。
【0004】
【特許文献1】特開2003−140564号公報
【特許文献2】特開2008−020836号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
表示装置の駆動回路部品の実装技術として、例えば液晶表示装置においては、フレキシブル基板上に駆動用IC(以下、ICと略記)を実装したフィルムパッケージを異方性導電フィルム(以下、ACF(Anisotoropic Conductive Film)と略記)を介して熱圧着接続するTCP(Tape Carrier Package)実装方式、あるいはCOF(Chip On Film)実装方式などがあるが、コストダウン、微細接続要求によってIC自体を基板上に直接実装するCOG(Chip On Glass)実装方式が主流になりつつある。
【0006】
図12〜図15を参照して、従来のCOG実装方式による液晶表示装置用表示パネルのIC実装方法、及び実装構造を説明する。
【0007】
表示パネル1は、一対のガラス基板を一定の間隔を保持して貼り合わせ、その間隙に液晶層を挟持してなり、一方のガラス基板上には図示しないトランジスタ、信号線、走査線や画素電極などが配置されている。前記信号線や前記走査線は、表示面から駆動回路部品であるIC4に接続される図示しない端子電極群まで延在している。また、他方のガラス基板には図示しない共通電極や色層を有している(図12)。
【0008】
COG実装方式においては、ガラス基板上に形成された端子電極のうち、IC4を実装する部分にACF5を転写する。その後、ACF5上にIC4を位置合わせして配置する。次に、IC搭載部分を圧着ステージ7に配置し、所定の時間と温度、圧力でIC4を圧着ツール7にて挟み込むことでACF5を硬化させる(図13)。
【0009】
この加熱、加圧によって、ACF5中の導電粒子9がIC4の突起電極11とTFT基板2の端子電極10とによって挟まれることで電気的接続がなされ、ACF樹脂が硬化することでIC4は前記の電気的接続が維持された状態でガラス基板(TFT基板2)に接着固定される(図14)。
【0010】
しかしながら、上記のIC実装方法においては、IC4を熱圧着する際に、IC4とガラス基板の熱膨張差によってIC4が凹状に反ってしまうという問題がある。
【0011】
その理由は、IC4の熱膨張率が約3ppm、ガラス基板の熱膨張率は約3.8ppmとほぼ同等であるが、実装するIC4の熱容量はガラス基板全体に比べて十分に小さく、圧着ツールによる加熱によって熱膨張するのに対し、ガラス基板の熱容量はIC4に比べて十分大きく、またIC実装領域は貼り合わされたもう一方のガラス基板によって熱膨張変形が拘束されるためほとんど熱膨張することができない。また、ACF5は熱硬化型のエポキシ系樹脂で構成されるのが一般的であり、熱圧着が完了し温度が低下する過程ですでに硬化しており、IC4はガラス基板と接着固定される。したがって熱圧着直後のIC4は熱膨張した状態でACF5によってガラス基板に接着固定され、温度低下に従って収縮応力によりIC4は凹状に変形する(図14)。
【0012】
このIC4の反りはACF5を介してガラス基板に伝達されて表示面にまで至り、この変形歪みによって液晶層のギャップが局部的に変化したり、ガラス基板に複屈折が発生してしまうことでIC実装部周辺部の表示面に表示ムラが発生し、表示品質を悪化させる(図15)。特に、複数のIC4を同一直線上に配置する場合、ガラス基板が波状に変形するが、隣接するIC4との間隔が広いほど変形の振幅が大きくなり、表示ムラの濃淡が強くなる。また、IC4の長手方向の長さが長くなるほど変形の周期が大きくなり、表示ムラの範囲が拡大する。
【0013】
このように、加熱によるIC4のACF接続において、ガラス基板の変形歪みは必然的に発生してしまい、その結果として表示ムラが発生するため、この表示ムラを改善する手段の提供が望まれている。
【0014】
本課題の解決手段として、上記特許文献1では、実装するICの能動面とは反対側の面にスリットを設け、ICの収縮応力を吸収する技術を提案している。特許文献1によれば、ICの収縮応力に伴う凹状変形は前記スリット部によって吸収されるため、表示パネル全体の反り変形が防止でき、画質劣化を防止することができるとしている。
【0015】
しかしながら、ICの圧着工程においてICの能動面とは反対側の面から圧着ツールによって加熱・加圧するが、特許文献1では前記圧着ツールとの接触面にスリットを設けるため、圧着ツールと接触しないスリット部分の反対面(能動面)にある突起電極部に圧力がかからず、接続不良を起こしやすいという課題がある。
【0016】
また、別の解決手段として、本願発明者は上記特許文献2にて、回路部品と表示面領域との間隙に変形抑制部材12を配置した表示装置を提案している(図16〜図17)。本公知例では、回路部品と表示面領域との間隙に変形抑制部材12を配置することでガラス基板の剛性を局部的に強化し、IC実装部の反りを抑制するとともに、ガラス基板の変形が表示面領域まで伝達されることを抑制している。
【0017】
上記特許文献2は、変形抑制部材を配置することでガラス基板の歪み変形を強制的に抑え込むことによって課題解決を鑑みたものであるが、以下の点で改善の余地を有していた。
【0018】
第1に、変形抑制部材を設置するスペースが必要となるため部品実装領域を大きく取らざるを得ず、結果的に表示装置の小型化に対して不利となってしまう。
【0019】
第2に、課題解決のために変形抑制部材とこれを接着する材料等が必要となるため部品点数が増加し、軽量化が要求される表示装置においては重量増の課題も発生してしまう。
【0020】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであって、その主たる目的は、サイズや部品点数を増加させることなく、駆動回路部品の熱変形による応力を確実に吸収し、表示ムラの発生を抑制することができる表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0021】
上記目的を達成するために、本発明は、ガラス基板上面の、表示面領域外側の周縁部に、熱圧着によって駆動回路部品が実装されてなる表示装置において、前記ガラス基板内部の、前記駆動回路部品の直下もしくは近傍に、前記駆動回路部品の熱変形により生じる応力を吸収する応力吸収部が形成されているものである。
【0022】
本発明においては、前記応力吸収部は、前記表示面領域と前記駆動回路部品の実装領域との間隙部分に、前記駆動回路部品の前記表示面領域側の辺に沿って、形成されている構成、前記駆動回路部品の前記表示面領域側の各々の角部に沿って、L字状に形成されている構成、前記駆動回路部品の前記表示面領域側の辺及び当該辺の両側の辺に沿って、コの字状に形成されている構成、前記駆動回路部品の全周に沿って、枠状に形成されている構成、前記ガラス基板の法線方向から見て、前記駆動回路部品と略重なるように形成されている構成とすることができる。
【0023】
また、本発明においては、前記応力吸収部は、微小クラックの集合体と中空部とからなることが好ましい。
【0024】
このように、ガラス基板内部に応力吸収部を設けるため、新たな部品追加の必要がなく、変形抑制部材配置のスペースも不要となり、また、前記応力吸収部形成に伴う発塵の発生もない。さらに、応力吸収部は前記中空部を有するため、局部的に可撓性が向上し、ICの収縮応力によってIC周辺のガラス基板変形が発生しても応力吸収部が変形することによって応力(変形歪み)が吸収され、結果としてガラス基板の表示面領域における変形歪みが緩和され、表示ムラのない高品質な表示装置を提供することができる。さらに、応力吸収部はガラス基板内部に設けるため、圧着ツールによる加圧時の圧力不均衡が発生せず、接続不良の発生を防止できる。
【発明の効果】
【0025】
本発明の表示装置によれば、応力吸収部をIC実装部近傍に設けることによって、IC実装されたガラス基板上の応力(変形歪み)が表示面領域に伝達されるのを抑制することができ、液晶層の局部的なギャップ変化やガラス基板の複屈折を低減でき、表示装置の表示ムラの発生を抑制することができる。
【0026】
また、応力吸収部はガラス基板内部を中空加工するため、ガラス基板表面の平坦性を変えることなく可撓性を局所的に向上させることができ、応力吸収部はガラス基板内部への加工のため発塵がなく、特別な洗浄工程等を設ける必要がなく、通常の製造工程によって表示装置を製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
背景技術で示したように、ガラス基板上にIC等の駆動回路部品が搭載される表示装置では、駆動回路部品の熱変形によってガラス基板に反りが生じ、表示面に表示ムラが発生し、表示品質を悪化させるという問題がある。
【0028】
この問題に対して、特許文献1のようにICにスリットを設ける方法があるが、この方法では、スリットに対向する部分の接続信頼性が低下するという問題がある。また、特許文献2のように回路部品と表示面領域との間隙に変形抑制部材を配置する方法もあるが、この方法では、表示装置の小型化や軽量化に対して不利となってしまう。
【0029】
そこで、本発明では、駆動回路部品が実装されるガラス基板の内部の、駆動回路部品直下もしくは駆動回路部品と表示面との間の領域に、所定の形状の応力吸収部を形成する。これにより、サイズや部品点数を増加させることなく、駆動回路部品の熱変形による応力を確実に吸収し、表示ムラの発生を抑制することができる。
【0030】
なお、以下の実施例では、表示装置として液晶表示装置について説明するが、本発明はこれに限定されるものではなく、プラズマディスプレイや有機EL(electroluminescence)ディスプレイ等であっても構わない。更にはCOG実装に限定されることなく、TCP実装やCOF実装であってもよい。加えて、接着材もフィルム状のACFに限定されることなく、ペースト状のACP(Anisotoropic Conductive Paste)や、導電性粒子を含まないNCF(Non Conductive Film)、NCP(Non Conductive Paste)など、熱硬化型あるいは熱可塑型の接着材樹脂を用いた実装方式に幅広く適用可能であり、熱圧着によってガラス基板と駆動用回路部品との熱膨張差がガラス基板の変形やギャップ変化を発生させ、表示に影響を及ぼす実装構造を有する任意の表示装置に対して適用することができる。
【実施例1】
【0031】
まず、本発明の第1の実施例に係る表示装置について、図1乃至図5を参照して説明する。図1は、本発明の第1の実施例に係る表示パネルの構成を示す平面図であり、図2は、そのA−A’断面図である。また、図3は、本実施例の応力吸収部の作成手順を模式的に示す断面図であり、図4は、本実施例の表示パネルの実装後の状態を示す斜視図である。また、図5は、本実施例に係る表示パネルの他の構成を示す平面図である。
【0032】
図1に示すように、本実施例の表示パネル1は、厚さ各0.7mm程度の2枚のガラス基板からなり、図示しない画素電極を構成する薄膜トランジスタ基板(以下、TFT(Thin Film Transistor)基板2と略記)と、対向基板とを貼り合わせ、図示しない偏光板に挟持されている。例えば対向基板は各画素に割り当てられた図示しない色層と透明共通電極とを構成するカラーフィルタ基板(以下、CF基板3と略記)であるが、色層を有しないモノクロフィルタ基板であってもよく、さらには透明共通電極を有しないフィルタ基板であっても構わず、前記TFT基板2とCF基板3の間には図示しない液晶層がトランジスタ、信号線、走査線、画素電極などとともに挟持されている。
【0033】
TFT基板2はCF基板3よりも外形寸法が大きく形成されており、CF基板3と対向しないTFT基板2の周縁部には前記信号線、走査線等から延在された端子電極が形成され、駆動回路部品であるIC4の突起電極と接続される構成となっている。
【0034】
この駆動回路部品であるIC4は、厚さ0.2mm〜0.6mm程度の略直方体であり、前記端子電極にACF5を介して熱圧着接続されており、図示しない回路基板からの電気信号が入力されることで表示パネル1に出力信号を発し、表示パネル1の制御を行う。
【0035】
本実施例の特徴部分である応力吸収部6の形成には、潜面マーキング、あるいはインナーガラスマーキング(IGM)と呼ばれる、ガラス内部へのレーザマーキング技術を応用することができる。応力吸収部6は、高出力レーザビームをガラス基板内部に集光させ、非線形吸収によって“Optical Damage”、あるいは“Optical Breakdown”と呼ばれる光学的損傷を発生させることでTFT基板2内部に熱歪みを誘起させて無数の微小クラックを生成させた部位となっている。この応力吸収部6は、平面的に見ればIC実装部と表示面領域との間隙部分であって、IC4の長辺方向に沿って幅0.1mm〜0.2mm程度で最外IC端間の長さより長く、直線状に形成されている。
【0036】
図2は図1に示すA−A‘断面図である。応力吸収部6は、TFT基板2の厚み方向に高さ0.1mm〜0.2mm程度で略中心部に形成されている。
【0037】
なお、本実施例による液晶表示装置の製造方法では、応力吸収部6は、TFT基板2の形成前の素ガラス状態において先に形成される。
【0038】
以下、応力吸収部6の形成原理を交えて、本実施例の液晶表示装置の製造方法について説明する。
【0039】
まず、図3に示すように、ガラスに吸収されない波長のレーザビームとして、例えばNd−YAGレーザやNd−YLFレーザ等のナノ秒レーザを用い、ガラス基板内部でエネルギー密度が非線形吸収を生じるしきい値以上になるように集光する(図3(a)参照)。ガラス基板内部で非線形吸収を起こさせると、吸収されたエネルギーが熱に変わり、ガラス基板は局所的に高温にさらされる。高温となったガラス、あるいは一部ガス化されたガラスは体積膨張し、屈折率や吸光度などの光学的特性変化が誘起され、さらにガラス基板内部に応力歪みを生じさせる。この応力を緩和する過程で無数の微小クラックが発生する(図3(b)参照)。この微小クラックは、レーザビームの照射エネルギーや入射角度によって大きさ、方向を制御でき、クラックの中心部分は中空状態になる。このような微小クラックを生じる集光点を移動させることで任意の位置に微小クラックを発生させ(図3(c)参照)、ガラス基板内部に微小クラックの集合体と中空部を有する応力吸収部6を形成する(図3(d)参照)。
【0040】
この原理に基づくレーザ照射によって、IC4が実装される領域近傍にあらかじめ応力吸収部6を形成したガラス基板に対して、公知のTFT製造技術、パネル製造技術に基づき、表示パネル1を完成させる。
【0041】
このようにして形成した表示パネル1の端子電極部にACF5を転写し、IC4をアライメントした後、所定の温度と圧力、時間をかけて熱圧着し、ACF5を硬化させてIC4と表示パネル1を接着固定させる。これにより、IC4の突起電極と表示パネル1の端子電極はACF5中の導電粒子を介して電気的接続が得られる。
【0042】
そして、このように製造された表示パネル1にフレキシブル基板や回路基板を接続し、バックライトや筐体を組み付けて液晶表示装置が完成する。
【0043】
なお、ここでは表示パネル製造前のガラス基板に対して応力吸収部6を形成する方法について述べたが、これは、応力吸収部6を形成する際に、レーザ照射領域にTFT配線等の薄膜パターンが存在すると、レーザ出力エネルギーの大きさによっては薄膜パターンがダメージを受けるためである。通常、IC実装部周辺には表示面内のTFT素子へ接続される配線パターンが存在するが、配線パターンレイアウトや応力吸収部6の形成パターンを工夫して、配線パターン部を避けてレーザ照射が可能な場合は、配線パターニング後やIC実装後に応力吸収部6を形成しても何ら問題はない。
【0044】
上記方法によって製造した表示パネル1は、ガラス基板内部に中空部を有する応力吸収部6を形成したことによって、この部分ではガラス基板の厚さが薄くなり局部的に可撓性が向上する。そのため、図4に示すように、ACF5を用いた熱圧着によってIC4に収縮応力が発生しガラス基板変形が生じても、ガラス基板変形は応力吸収部6によって応力(変形歪み)が吸収され、表示面領域へのガラス基板変形の伝達が抑制される。
【0045】
従って、表示面領域でのガラス基板の変形歪みは小さくなり、液晶層の局部的なギャップ変化やガラス基板の複屈折を抑制でき、表示ムラの発生を低減することができるため、高品質の液晶表示装置を提供することができる。
【0046】
さらに、応力吸収部6はガラス基板内部に形成しているため、表示装置の小型化を妨げることがない。加えて、余分な材料を使用しないため、部品点数を増加させることなく高品質な液晶表示装置を提供することができる。
【0047】
なお、本実施例では、ガラス基板内部を局部破壊して応力吸収部6を形成しているが、ガラス基板の厚み方向の略中心部分にあって表裏面までの距離が十分にあり、応力吸収部6の微小クラックがガラス基板表面や裏面に進行しない程度(例えば、ガラス基板の厚みに対して最大30%程度)の大きさ(高さ)に形成すれば、強度的にも実際の使用上は全く問題ない。
【0048】
また、本実施例では、ガラス基板上にIC4を直接実装するCOG実装を前提にして説明したが、図5に示すように、フレキシブル基板上にIC4を実装するTCP実装やCOF実装においても、同様に応力吸収部6を形成することによって、ガラス基板の変形を抑制することができる。
【実施例2】
【0049】
次に、本発明の第2の実施例に係る表示装置について、図6乃至図11を参照して説明する。図6乃至図9は、本発明の第2の実施例の表示パネルの構成を示す平面図及び部分拡大図である。また、図10は、図9のC−C’断面図であり、図11は、本実施例の表示パネルの他の構成を示す平面図である。なお、本実施例は、前記した第1の実施例の応力吸収部の形状を工夫したものである。
【0050】
前記した第1の実施例では、応力吸収部6を直線状に形成したが、応力吸収部6はガラス基板の応力を吸収可能な形状であれば良く、例えば、図6に示すように、少なくとも各IC4のコーナー部の表示面側の2箇所に、IC4の外形辺に沿ってL字型に形成しても良い。この構成では、IC4のコーナー部付近に発生する特に大きい応力によって引き起こされるガラス基板の変形は応力吸収部6で吸収され、表示面方向へのガラス基板変形の伝達を抑制することができるため、表示ムラの発生を低減することができる。
【0051】
また、図7に示すように、少なくとも各IC4の表示面側長辺と両側の短辺に沿ってコの字型の応力吸収部6を形成したり、図8に示すように、各IC4の4辺を囲むように枠状の応力吸収部6を形成しても良い。これらの構成では、ガラス基板変形を引き起こす発生源となるIC4を取り囲むように応力吸収部6を形成するため、表示面方向へのガラス基板変形の伝達をより効果的に抑制することができ、表示ムラの発生を低減させることができる。
【0052】
また、図9に示すように、実装されるIC4と略同形状の応力吸収部6をIC実装部直下に形成してもよい。この構成では、図10に示すように、IC実装部直下に応力吸収部6を設けたことによってIC直下のガラス基板が薄くなり、IC4の収縮応力によるガラス基板変形を応力吸収部6が変形することによって吸収することができるため、IC4の周囲にガラス基板の変形をほとんど伝えることがない。
【0053】
さらには、図11(a)〜(d)に示すように、前記した第1の実施例で示した直線状の応力吸収部6と図6乃至図9の形状の応力吸収部6とを組み合わせることで、表示面領域へのガラス基板変形の伝達をさらに低減させることができ、より高品質な表示ムラを低減した液晶表示装置を提供することができる。
【0054】
なお、応力吸収部6は、各IC4、あるいは表示面領域の各辺方向に独立していなくても構わず、さらに直線状に連続して形成される必要はなく、点線状、あるいは曲線状であっても構わない。少なくとも表示面領域とIC実装領域の間隙部分か、IC実装部直下に形成されていればどのような形状であっても良い。
【0055】
また、上記各実施例では、本発明の実装構造を液晶表示装置用の表示パネルに適用したが、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、ガラス基板上に応力発生源となる部品が実装される任意の表示装置に対して適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明は、液晶表示装置を始めとする表示装置全般に利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明の第1の実施例に係る表示パネルの構成を示す平面図である。
【図2】図1のA−A‘断面図である。
【図3】本発明の第1の実施例の応力吸収部を形成するレーザ加工技術のイメージ図である。
【図4】本発明の第1の実施例に係る表示パネルの斜視イメージ図である。
【図5】本発明の第1の実施例に係る表示パネルの他の構成を示す平面図である。
【図6】本発明の第2の実施例に係る表示パネルの構成を示す平面図及び部分拡大図である。
【図7】本発明の第2の実施例に係る表示パネルの他の構成を示す平面図及び部分拡大図である。
【図8】本発明の第2の実施例に係る表示パネルの他の構成を示す平面図及び部分拡大図である。
【図9】本発明の第2の実施例に係る表示パネルの他の構成を示す平面図及びB-B‘断面図である。
【図10】図9のC−C‘断面図である。
【図11】本発明の第2の実施例に係る表示パネルの他の構成を示す平面図である。
【図12】従来の表示パネルの構成を示す平面図である。
【図13】IC圧着工程を示す斜視イメージ図である。
【図14】図12のD-D‘断面図である。
【図15】従来の表示パネルの斜視イメージ図である。
【図16】従来(特開2008−020836号公報)の表示パネルの構成を示す平面図である。
【図17】図16のE-E’断面図である。
【符号の説明】
【0058】
1 表示パネル
2 TFT基板
3 CF基板
4 IC
5 ACF
6 応力吸収部
7 圧着ステージ
8 圧着ツール
9 導電粒子
10 端子電極
11 突起電極
12 変形抑制部材
13 接着剤
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示装置に関し、特に、ガラス基板上に駆動回路部品が熱圧着により実装される表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
表示装置の一つである液晶表示装置は産業用途でも広い分野で使用されており、近年は放送局モニターや医療用画像表示機器として新たな市場が広がってきている。上記放送局モニターのように、使用環境が極めて暗い場所で使用する場合は、表示画面内のわずかな明るさの差が通常の使用環境に比べて顕著に視認されるようになってきている。
【0003】
特に、COG実装による液晶表示装置では、実装部品であるICの収縮応力が大きく、ガラス基板の歪みが大きく発生するため、ガラス基板の変形に起因する表示ムラが他の実装方法に比べて顕著に発生し、使用環境によっては特に暗い画面表示時の画像が表示ムラによって影響を受ける。そこで、このようなガラス基板の変形に起因する表示ムラを改善する方法が求められていた(例えば、下記特許文献1、2参照)。
【0004】
【特許文献1】特開2003−140564号公報
【特許文献2】特開2008−020836号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
表示装置の駆動回路部品の実装技術として、例えば液晶表示装置においては、フレキシブル基板上に駆動用IC(以下、ICと略記)を実装したフィルムパッケージを異方性導電フィルム(以下、ACF(Anisotoropic Conductive Film)と略記)を介して熱圧着接続するTCP(Tape Carrier Package)実装方式、あるいはCOF(Chip On Film)実装方式などがあるが、コストダウン、微細接続要求によってIC自体を基板上に直接実装するCOG(Chip On Glass)実装方式が主流になりつつある。
【0006】
図12〜図15を参照して、従来のCOG実装方式による液晶表示装置用表示パネルのIC実装方法、及び実装構造を説明する。
【0007】
表示パネル1は、一対のガラス基板を一定の間隔を保持して貼り合わせ、その間隙に液晶層を挟持してなり、一方のガラス基板上には図示しないトランジスタ、信号線、走査線や画素電極などが配置されている。前記信号線や前記走査線は、表示面から駆動回路部品であるIC4に接続される図示しない端子電極群まで延在している。また、他方のガラス基板には図示しない共通電極や色層を有している(図12)。
【0008】
COG実装方式においては、ガラス基板上に形成された端子電極のうち、IC4を実装する部分にACF5を転写する。その後、ACF5上にIC4を位置合わせして配置する。次に、IC搭載部分を圧着ステージ7に配置し、所定の時間と温度、圧力でIC4を圧着ツール7にて挟み込むことでACF5を硬化させる(図13)。
【0009】
この加熱、加圧によって、ACF5中の導電粒子9がIC4の突起電極11とTFT基板2の端子電極10とによって挟まれることで電気的接続がなされ、ACF樹脂が硬化することでIC4は前記の電気的接続が維持された状態でガラス基板(TFT基板2)に接着固定される(図14)。
【0010】
しかしながら、上記のIC実装方法においては、IC4を熱圧着する際に、IC4とガラス基板の熱膨張差によってIC4が凹状に反ってしまうという問題がある。
【0011】
その理由は、IC4の熱膨張率が約3ppm、ガラス基板の熱膨張率は約3.8ppmとほぼ同等であるが、実装するIC4の熱容量はガラス基板全体に比べて十分に小さく、圧着ツールによる加熱によって熱膨張するのに対し、ガラス基板の熱容量はIC4に比べて十分大きく、またIC実装領域は貼り合わされたもう一方のガラス基板によって熱膨張変形が拘束されるためほとんど熱膨張することができない。また、ACF5は熱硬化型のエポキシ系樹脂で構成されるのが一般的であり、熱圧着が完了し温度が低下する過程ですでに硬化しており、IC4はガラス基板と接着固定される。したがって熱圧着直後のIC4は熱膨張した状態でACF5によってガラス基板に接着固定され、温度低下に従って収縮応力によりIC4は凹状に変形する(図14)。
【0012】
このIC4の反りはACF5を介してガラス基板に伝達されて表示面にまで至り、この変形歪みによって液晶層のギャップが局部的に変化したり、ガラス基板に複屈折が発生してしまうことでIC実装部周辺部の表示面に表示ムラが発生し、表示品質を悪化させる(図15)。特に、複数のIC4を同一直線上に配置する場合、ガラス基板が波状に変形するが、隣接するIC4との間隔が広いほど変形の振幅が大きくなり、表示ムラの濃淡が強くなる。また、IC4の長手方向の長さが長くなるほど変形の周期が大きくなり、表示ムラの範囲が拡大する。
【0013】
このように、加熱によるIC4のACF接続において、ガラス基板の変形歪みは必然的に発生してしまい、その結果として表示ムラが発生するため、この表示ムラを改善する手段の提供が望まれている。
【0014】
本課題の解決手段として、上記特許文献1では、実装するICの能動面とは反対側の面にスリットを設け、ICの収縮応力を吸収する技術を提案している。特許文献1によれば、ICの収縮応力に伴う凹状変形は前記スリット部によって吸収されるため、表示パネル全体の反り変形が防止でき、画質劣化を防止することができるとしている。
【0015】
しかしながら、ICの圧着工程においてICの能動面とは反対側の面から圧着ツールによって加熱・加圧するが、特許文献1では前記圧着ツールとの接触面にスリットを設けるため、圧着ツールと接触しないスリット部分の反対面(能動面)にある突起電極部に圧力がかからず、接続不良を起こしやすいという課題がある。
【0016】
また、別の解決手段として、本願発明者は上記特許文献2にて、回路部品と表示面領域との間隙に変形抑制部材12を配置した表示装置を提案している(図16〜図17)。本公知例では、回路部品と表示面領域との間隙に変形抑制部材12を配置することでガラス基板の剛性を局部的に強化し、IC実装部の反りを抑制するとともに、ガラス基板の変形が表示面領域まで伝達されることを抑制している。
【0017】
上記特許文献2は、変形抑制部材を配置することでガラス基板の歪み変形を強制的に抑え込むことによって課題解決を鑑みたものであるが、以下の点で改善の余地を有していた。
【0018】
第1に、変形抑制部材を設置するスペースが必要となるため部品実装領域を大きく取らざるを得ず、結果的に表示装置の小型化に対して不利となってしまう。
【0019】
第2に、課題解決のために変形抑制部材とこれを接着する材料等が必要となるため部品点数が増加し、軽量化が要求される表示装置においては重量増の課題も発生してしまう。
【0020】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであって、その主たる目的は、サイズや部品点数を増加させることなく、駆動回路部品の熱変形による応力を確実に吸収し、表示ムラの発生を抑制することができる表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0021】
上記目的を達成するために、本発明は、ガラス基板上面の、表示面領域外側の周縁部に、熱圧着によって駆動回路部品が実装されてなる表示装置において、前記ガラス基板内部の、前記駆動回路部品の直下もしくは近傍に、前記駆動回路部品の熱変形により生じる応力を吸収する応力吸収部が形成されているものである。
【0022】
本発明においては、前記応力吸収部は、前記表示面領域と前記駆動回路部品の実装領域との間隙部分に、前記駆動回路部品の前記表示面領域側の辺に沿って、形成されている構成、前記駆動回路部品の前記表示面領域側の各々の角部に沿って、L字状に形成されている構成、前記駆動回路部品の前記表示面領域側の辺及び当該辺の両側の辺に沿って、コの字状に形成されている構成、前記駆動回路部品の全周に沿って、枠状に形成されている構成、前記ガラス基板の法線方向から見て、前記駆動回路部品と略重なるように形成されている構成とすることができる。
【0023】
また、本発明においては、前記応力吸収部は、微小クラックの集合体と中空部とからなることが好ましい。
【0024】
このように、ガラス基板内部に応力吸収部を設けるため、新たな部品追加の必要がなく、変形抑制部材配置のスペースも不要となり、また、前記応力吸収部形成に伴う発塵の発生もない。さらに、応力吸収部は前記中空部を有するため、局部的に可撓性が向上し、ICの収縮応力によってIC周辺のガラス基板変形が発生しても応力吸収部が変形することによって応力(変形歪み)が吸収され、結果としてガラス基板の表示面領域における変形歪みが緩和され、表示ムラのない高品質な表示装置を提供することができる。さらに、応力吸収部はガラス基板内部に設けるため、圧着ツールによる加圧時の圧力不均衡が発生せず、接続不良の発生を防止できる。
【発明の効果】
【0025】
本発明の表示装置によれば、応力吸収部をIC実装部近傍に設けることによって、IC実装されたガラス基板上の応力(変形歪み)が表示面領域に伝達されるのを抑制することができ、液晶層の局部的なギャップ変化やガラス基板の複屈折を低減でき、表示装置の表示ムラの発生を抑制することができる。
【0026】
また、応力吸収部はガラス基板内部を中空加工するため、ガラス基板表面の平坦性を変えることなく可撓性を局所的に向上させることができ、応力吸収部はガラス基板内部への加工のため発塵がなく、特別な洗浄工程等を設ける必要がなく、通常の製造工程によって表示装置を製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
背景技術で示したように、ガラス基板上にIC等の駆動回路部品が搭載される表示装置では、駆動回路部品の熱変形によってガラス基板に反りが生じ、表示面に表示ムラが発生し、表示品質を悪化させるという問題がある。
【0028】
この問題に対して、特許文献1のようにICにスリットを設ける方法があるが、この方法では、スリットに対向する部分の接続信頼性が低下するという問題がある。また、特許文献2のように回路部品と表示面領域との間隙に変形抑制部材を配置する方法もあるが、この方法では、表示装置の小型化や軽量化に対して不利となってしまう。
【0029】
そこで、本発明では、駆動回路部品が実装されるガラス基板の内部の、駆動回路部品直下もしくは駆動回路部品と表示面との間の領域に、所定の形状の応力吸収部を形成する。これにより、サイズや部品点数を増加させることなく、駆動回路部品の熱変形による応力を確実に吸収し、表示ムラの発生を抑制することができる。
【0030】
なお、以下の実施例では、表示装置として液晶表示装置について説明するが、本発明はこれに限定されるものではなく、プラズマディスプレイや有機EL(electroluminescence)ディスプレイ等であっても構わない。更にはCOG実装に限定されることなく、TCP実装やCOF実装であってもよい。加えて、接着材もフィルム状のACFに限定されることなく、ペースト状のACP(Anisotoropic Conductive Paste)や、導電性粒子を含まないNCF(Non Conductive Film)、NCP(Non Conductive Paste)など、熱硬化型あるいは熱可塑型の接着材樹脂を用いた実装方式に幅広く適用可能であり、熱圧着によってガラス基板と駆動用回路部品との熱膨張差がガラス基板の変形やギャップ変化を発生させ、表示に影響を及ぼす実装構造を有する任意の表示装置に対して適用することができる。
【実施例1】
【0031】
まず、本発明の第1の実施例に係る表示装置について、図1乃至図5を参照して説明する。図1は、本発明の第1の実施例に係る表示パネルの構成を示す平面図であり、図2は、そのA−A’断面図である。また、図3は、本実施例の応力吸収部の作成手順を模式的に示す断面図であり、図4は、本実施例の表示パネルの実装後の状態を示す斜視図である。また、図5は、本実施例に係る表示パネルの他の構成を示す平面図である。
【0032】
図1に示すように、本実施例の表示パネル1は、厚さ各0.7mm程度の2枚のガラス基板からなり、図示しない画素電極を構成する薄膜トランジスタ基板(以下、TFT(Thin Film Transistor)基板2と略記)と、対向基板とを貼り合わせ、図示しない偏光板に挟持されている。例えば対向基板は各画素に割り当てられた図示しない色層と透明共通電極とを構成するカラーフィルタ基板(以下、CF基板3と略記)であるが、色層を有しないモノクロフィルタ基板であってもよく、さらには透明共通電極を有しないフィルタ基板であっても構わず、前記TFT基板2とCF基板3の間には図示しない液晶層がトランジスタ、信号線、走査線、画素電極などとともに挟持されている。
【0033】
TFT基板2はCF基板3よりも外形寸法が大きく形成されており、CF基板3と対向しないTFT基板2の周縁部には前記信号線、走査線等から延在された端子電極が形成され、駆動回路部品であるIC4の突起電極と接続される構成となっている。
【0034】
この駆動回路部品であるIC4は、厚さ0.2mm〜0.6mm程度の略直方体であり、前記端子電極にACF5を介して熱圧着接続されており、図示しない回路基板からの電気信号が入力されることで表示パネル1に出力信号を発し、表示パネル1の制御を行う。
【0035】
本実施例の特徴部分である応力吸収部6の形成には、潜面マーキング、あるいはインナーガラスマーキング(IGM)と呼ばれる、ガラス内部へのレーザマーキング技術を応用することができる。応力吸収部6は、高出力レーザビームをガラス基板内部に集光させ、非線形吸収によって“Optical Damage”、あるいは“Optical Breakdown”と呼ばれる光学的損傷を発生させることでTFT基板2内部に熱歪みを誘起させて無数の微小クラックを生成させた部位となっている。この応力吸収部6は、平面的に見ればIC実装部と表示面領域との間隙部分であって、IC4の長辺方向に沿って幅0.1mm〜0.2mm程度で最外IC端間の長さより長く、直線状に形成されている。
【0036】
図2は図1に示すA−A‘断面図である。応力吸収部6は、TFT基板2の厚み方向に高さ0.1mm〜0.2mm程度で略中心部に形成されている。
【0037】
なお、本実施例による液晶表示装置の製造方法では、応力吸収部6は、TFT基板2の形成前の素ガラス状態において先に形成される。
【0038】
以下、応力吸収部6の形成原理を交えて、本実施例の液晶表示装置の製造方法について説明する。
【0039】
まず、図3に示すように、ガラスに吸収されない波長のレーザビームとして、例えばNd−YAGレーザやNd−YLFレーザ等のナノ秒レーザを用い、ガラス基板内部でエネルギー密度が非線形吸収を生じるしきい値以上になるように集光する(図3(a)参照)。ガラス基板内部で非線形吸収を起こさせると、吸収されたエネルギーが熱に変わり、ガラス基板は局所的に高温にさらされる。高温となったガラス、あるいは一部ガス化されたガラスは体積膨張し、屈折率や吸光度などの光学的特性変化が誘起され、さらにガラス基板内部に応力歪みを生じさせる。この応力を緩和する過程で無数の微小クラックが発生する(図3(b)参照)。この微小クラックは、レーザビームの照射エネルギーや入射角度によって大きさ、方向を制御でき、クラックの中心部分は中空状態になる。このような微小クラックを生じる集光点を移動させることで任意の位置に微小クラックを発生させ(図3(c)参照)、ガラス基板内部に微小クラックの集合体と中空部を有する応力吸収部6を形成する(図3(d)参照)。
【0040】
この原理に基づくレーザ照射によって、IC4が実装される領域近傍にあらかじめ応力吸収部6を形成したガラス基板に対して、公知のTFT製造技術、パネル製造技術に基づき、表示パネル1を完成させる。
【0041】
このようにして形成した表示パネル1の端子電極部にACF5を転写し、IC4をアライメントした後、所定の温度と圧力、時間をかけて熱圧着し、ACF5を硬化させてIC4と表示パネル1を接着固定させる。これにより、IC4の突起電極と表示パネル1の端子電極はACF5中の導電粒子を介して電気的接続が得られる。
【0042】
そして、このように製造された表示パネル1にフレキシブル基板や回路基板を接続し、バックライトや筐体を組み付けて液晶表示装置が完成する。
【0043】
なお、ここでは表示パネル製造前のガラス基板に対して応力吸収部6を形成する方法について述べたが、これは、応力吸収部6を形成する際に、レーザ照射領域にTFT配線等の薄膜パターンが存在すると、レーザ出力エネルギーの大きさによっては薄膜パターンがダメージを受けるためである。通常、IC実装部周辺には表示面内のTFT素子へ接続される配線パターンが存在するが、配線パターンレイアウトや応力吸収部6の形成パターンを工夫して、配線パターン部を避けてレーザ照射が可能な場合は、配線パターニング後やIC実装後に応力吸収部6を形成しても何ら問題はない。
【0044】
上記方法によって製造した表示パネル1は、ガラス基板内部に中空部を有する応力吸収部6を形成したことによって、この部分ではガラス基板の厚さが薄くなり局部的に可撓性が向上する。そのため、図4に示すように、ACF5を用いた熱圧着によってIC4に収縮応力が発生しガラス基板変形が生じても、ガラス基板変形は応力吸収部6によって応力(変形歪み)が吸収され、表示面領域へのガラス基板変形の伝達が抑制される。
【0045】
従って、表示面領域でのガラス基板の変形歪みは小さくなり、液晶層の局部的なギャップ変化やガラス基板の複屈折を抑制でき、表示ムラの発生を低減することができるため、高品質の液晶表示装置を提供することができる。
【0046】
さらに、応力吸収部6はガラス基板内部に形成しているため、表示装置の小型化を妨げることがない。加えて、余分な材料を使用しないため、部品点数を増加させることなく高品質な液晶表示装置を提供することができる。
【0047】
なお、本実施例では、ガラス基板内部を局部破壊して応力吸収部6を形成しているが、ガラス基板の厚み方向の略中心部分にあって表裏面までの距離が十分にあり、応力吸収部6の微小クラックがガラス基板表面や裏面に進行しない程度(例えば、ガラス基板の厚みに対して最大30%程度)の大きさ(高さ)に形成すれば、強度的にも実際の使用上は全く問題ない。
【0048】
また、本実施例では、ガラス基板上にIC4を直接実装するCOG実装を前提にして説明したが、図5に示すように、フレキシブル基板上にIC4を実装するTCP実装やCOF実装においても、同様に応力吸収部6を形成することによって、ガラス基板の変形を抑制することができる。
【実施例2】
【0049】
次に、本発明の第2の実施例に係る表示装置について、図6乃至図11を参照して説明する。図6乃至図9は、本発明の第2の実施例の表示パネルの構成を示す平面図及び部分拡大図である。また、図10は、図9のC−C’断面図であり、図11は、本実施例の表示パネルの他の構成を示す平面図である。なお、本実施例は、前記した第1の実施例の応力吸収部の形状を工夫したものである。
【0050】
前記した第1の実施例では、応力吸収部6を直線状に形成したが、応力吸収部6はガラス基板の応力を吸収可能な形状であれば良く、例えば、図6に示すように、少なくとも各IC4のコーナー部の表示面側の2箇所に、IC4の外形辺に沿ってL字型に形成しても良い。この構成では、IC4のコーナー部付近に発生する特に大きい応力によって引き起こされるガラス基板の変形は応力吸収部6で吸収され、表示面方向へのガラス基板変形の伝達を抑制することができるため、表示ムラの発生を低減することができる。
【0051】
また、図7に示すように、少なくとも各IC4の表示面側長辺と両側の短辺に沿ってコの字型の応力吸収部6を形成したり、図8に示すように、各IC4の4辺を囲むように枠状の応力吸収部6を形成しても良い。これらの構成では、ガラス基板変形を引き起こす発生源となるIC4を取り囲むように応力吸収部6を形成するため、表示面方向へのガラス基板変形の伝達をより効果的に抑制することができ、表示ムラの発生を低減させることができる。
【0052】
また、図9に示すように、実装されるIC4と略同形状の応力吸収部6をIC実装部直下に形成してもよい。この構成では、図10に示すように、IC実装部直下に応力吸収部6を設けたことによってIC直下のガラス基板が薄くなり、IC4の収縮応力によるガラス基板変形を応力吸収部6が変形することによって吸収することができるため、IC4の周囲にガラス基板の変形をほとんど伝えることがない。
【0053】
さらには、図11(a)〜(d)に示すように、前記した第1の実施例で示した直線状の応力吸収部6と図6乃至図9の形状の応力吸収部6とを組み合わせることで、表示面領域へのガラス基板変形の伝達をさらに低減させることができ、より高品質な表示ムラを低減した液晶表示装置を提供することができる。
【0054】
なお、応力吸収部6は、各IC4、あるいは表示面領域の各辺方向に独立していなくても構わず、さらに直線状に連続して形成される必要はなく、点線状、あるいは曲線状であっても構わない。少なくとも表示面領域とIC実装領域の間隙部分か、IC実装部直下に形成されていればどのような形状であっても良い。
【0055】
また、上記各実施例では、本発明の実装構造を液晶表示装置用の表示パネルに適用したが、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、ガラス基板上に応力発生源となる部品が実装される任意の表示装置に対して適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明は、液晶表示装置を始めとする表示装置全般に利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明の第1の実施例に係る表示パネルの構成を示す平面図である。
【図2】図1のA−A‘断面図である。
【図3】本発明の第1の実施例の応力吸収部を形成するレーザ加工技術のイメージ図である。
【図4】本発明の第1の実施例に係る表示パネルの斜視イメージ図である。
【図5】本発明の第1の実施例に係る表示パネルの他の構成を示す平面図である。
【図6】本発明の第2の実施例に係る表示パネルの構成を示す平面図及び部分拡大図である。
【図7】本発明の第2の実施例に係る表示パネルの他の構成を示す平面図及び部分拡大図である。
【図8】本発明の第2の実施例に係る表示パネルの他の構成を示す平面図及び部分拡大図である。
【図9】本発明の第2の実施例に係る表示パネルの他の構成を示す平面図及びB-B‘断面図である。
【図10】図9のC−C‘断面図である。
【図11】本発明の第2の実施例に係る表示パネルの他の構成を示す平面図である。
【図12】従来の表示パネルの構成を示す平面図である。
【図13】IC圧着工程を示す斜視イメージ図である。
【図14】図12のD-D‘断面図である。
【図15】従来の表示パネルの斜視イメージ図である。
【図16】従来(特開2008−020836号公報)の表示パネルの構成を示す平面図である。
【図17】図16のE-E’断面図である。
【符号の説明】
【0058】
1 表示パネル
2 TFT基板
3 CF基板
4 IC
5 ACF
6 応力吸収部
7 圧着ステージ
8 圧着ツール
9 導電粒子
10 端子電極
11 突起電極
12 変形抑制部材
13 接着剤
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス基板上面の、表示面領域外側の周縁部に、熱圧着によって駆動回路部品が実装されてなる表示装置において、
前記ガラス基板内部の、前記駆動回路部品の直下もしくは近傍に、前記駆動回路部品の熱変形により生じる応力を吸収する応力吸収部が形成されていることを特徴とする表示装置。
【請求項2】
前記応力吸収部は、前記表示面領域と前記駆動回路部品の実装領域との間隙部分に、前記駆動回路部品の前記表示面領域側の辺に沿って、形成されていることを特徴とする請求項1に記載の表示装置。
【請求項3】
前記応力吸収部は、前記駆動回路部品の前記表示面領域側の各々の角部に沿って、L字状に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の表示装置。
【請求項4】
前記応力吸収部は、前記駆動回路部品の前記表示面領域側の辺及び当該辺の両側の辺に沿って、コの字状に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の表示装置。
【請求項5】
前記応力吸収部は、前記駆動回路部品の全周に沿って、枠状に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の表示装置。
【請求項6】
前記応力吸収部は、前記ガラス基板の法線方向から見て、前記駆動回路部品と略重なるように形成されていることを特徴とする請求項1に記載の表示装置。
【請求項7】
前記応力吸収部は、微小クラックの集合体と中空部とからなることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一に記載の表示装置。
【請求項1】
ガラス基板上面の、表示面領域外側の周縁部に、熱圧着によって駆動回路部品が実装されてなる表示装置において、
前記ガラス基板内部の、前記駆動回路部品の直下もしくは近傍に、前記駆動回路部品の熱変形により生じる応力を吸収する応力吸収部が形成されていることを特徴とする表示装置。
【請求項2】
前記応力吸収部は、前記表示面領域と前記駆動回路部品の実装領域との間隙部分に、前記駆動回路部品の前記表示面領域側の辺に沿って、形成されていることを特徴とする請求項1に記載の表示装置。
【請求項3】
前記応力吸収部は、前記駆動回路部品の前記表示面領域側の各々の角部に沿って、L字状に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の表示装置。
【請求項4】
前記応力吸収部は、前記駆動回路部品の前記表示面領域側の辺及び当該辺の両側の辺に沿って、コの字状に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の表示装置。
【請求項5】
前記応力吸収部は、前記駆動回路部品の全周に沿って、枠状に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の表示装置。
【請求項6】
前記応力吸収部は、前記ガラス基板の法線方向から見て、前記駆動回路部品と略重なるように形成されていることを特徴とする請求項1に記載の表示装置。
【請求項7】
前記応力吸収部は、微小クラックの集合体と中空部とからなることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一に記載の表示装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2010−14996(P2010−14996A)
【公開日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−175273(P2008−175273)
【出願日】平成20年7月4日(2008.7.4)
【出願人】(303018827)NEC液晶テクノロジー株式会社 (547)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年7月4日(2008.7.4)
【出願人】(303018827)NEC液晶テクノロジー株式会社 (547)
【Fターム(参考)】
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