説明

表示装置

【課題】電圧印加に応じて光透過状態または光散乱状態を呈する液晶光学素子を用いる表示装置において、配線部分が視認されないようにする。
【解決手段】電圧無印加時に光透過状態になり電圧印加時に光散乱状態になる液晶光学層がガラス基板320,330によって挟持され、ガラス基板320に、セグメント電極に接続される複数のセグメント配線321〜324が設けられ、ガラス基板330に、各々のセグメント配線321〜324と同形状の対向配線421〜424が各々のセグメント配線321〜324に対応して設けられ、シール部において、トランスファ材350によって、各々のセグメント配線321〜324と対応する対向配線421〜424とが電気的に接続されている。また、シール部において、トランスファ材350によって、コモン配線331,335と対応する対向配線431,435とが電気的に接続されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電圧印加に応じて光透過状態または光散乱状態を呈する液晶光学素子を用いた表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電圧非印加時には光を散乱させ、電圧印加時には光を透過させるように作用する液晶調光素子がある。そのような液晶調光素子を用いた表示パネルでは、情報を視認可能に表示しないときに表示パネルに所定の電圧値の電圧が印加され、情報を視認可能に表示するときに表示パネルにおける情報表示領域に対する電圧印加が解除される。
【0003】
従って、情報を視認可能に表示しないとき(以下、待機時という。)には表示パネルに電圧を印加しておく必要があるので、消費電力が大きくなってしまう。また、表示パネルに電圧を印加する電源部に異常が生じ電圧印加を行うことができなくなった場合には、待機時において液晶調光素子が光散乱状態になる。すると、待機時において背面(表示パネルにおける観察者が存在する側の反対側)を透視させる用途に表示パネルを使用している場合には、観察者は、待機時において背面を透視することができなくなる。
【0004】
そこで、電圧非印加時には光を透過させ、電圧印加時に光を散乱させるように作用する液晶光学素子を用いた表示パネルが提案されている(例えば、特許文献1,2参照)。特許文献1,2に記載された表示パネルにおける液晶光学素子は、電圧非印加時には光を透過させ電圧印加時には光を散乱させるので、待機時において背面を透視させる用途に表示パネルを使用している場合に、待機時において表示パネルに電圧を印加する必要はなく、消費電力を低下させることができる。また、待機時において背面を透視することができなくなるという問題は生じない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】再表03−057799号公報(WO2003/057799)
【特許文献2】特開2004−184981号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記の液晶光学素子が2枚のガラス基板によって挟持され、一方のガラス基板にコモン電極が設けられ、他方のガラス基板に表示領域に対応するセグメント電極が設けられた表示パネルを形成したときに、以下のような課題が生ずることが確認された。
【0007】
すなわち、一方のガラス基板の端部からコモン電極に至るコモン配線が設けられ、他方のガラス基板の端部からセグメント電極に至るセグメント配線が設けられるが、セグメント配線におけるエッジ部が散乱状態を呈し、エッジ部が観察者に視認されてしまう現象が確認された。
【0008】
図8は、上記の液晶光学素子を用いた表示パネルの一例を示す平面図である。図8には、表示パネル301が、カメラのファインダ装置における表示部として使用される例が示されている。図8の平面図に例示するように、中央部に実線で示されている表示領域において所定の標識の表示がなされる。図8には、フォーカスエリアを示す標識が表示された例が示されている。標識は、セグメント電極341,342,343,344とコモン電極(図示せず)との間に所定の電圧が印加されたときに、セグメント電極341〜344に対応する領域における液晶光学素子が散乱状態になる。表示パネル301において、標識の表示領域以外の領域では、電圧が印加されない状態が継続し、表示パネル301は透過状態である。従って、観察者は、表示パネル301を介して視認可能な被写体と標識とを認識することができる。以下、所定の電圧は40Vであるとする。
【0009】
図9は、セグメント配線321,322,323,324およびコモン配線331,335を模式的に示す平面図(図9(A))および断面図(図9(B))である。
【0010】
図9(B)に示すように、セグメント配線321〜324はガラス基板320に形成され、コモン配線331,335はガラス基板330に形成されている。図9(A)において、「ON」は、セグメント配線に接続されるセグメント電極とコモン配線に接続されるコモン電極との間の液晶光学素子に所定の電圧(例えば、40V)が印加されていることを示す。また、「OFF」は、セグメント配線に接続されるセグメント電極とコモン配線に接続されるコモン電極との間の液晶光学素子に電圧が印加されていないことを示す。すなわち、セグメント電極とコモン電極との間の電位差は0Vである。
【0011】
「ON」,「OFF」の状態が図9(A)に例示されているように設定されたときに、セグメント配線321〜324のエッジ部およびコモン配線331のエッジ部が光散乱状態になり、観察者にエッジ部が視認される状態になった。図9(A)において、斜線が施された部分が、視認される状態になったエッジ部を示す。
【0012】
図10は、表示パネル301における配線の視認状況を説明するための説明図である。なお、図10には、セグメント配線321〜324の一部に対応する部分のみが示されている。図10に示すように、斜線で示されているセグメント配線321〜324のエッジ部が視認される状態になる。なお、図10における破線は、セグメント配線324の一端を示す。
【0013】
図8に示す例では、表示パネル301において標識の部分のみが視認可能な状態になることが好ましく、図8において破線で示されている配線部分は視認可能にならないことが好ましい。配線部分が視認されることは、観察者が表示パネル301を介して被写体を認識することを阻害するからである。
【0014】
なお、ここでは、表示パネル301がカメラのファインダ装置における表示部として使用される場合を例にしたが、表示パネル301が他の用途で使用される場合にも、配線部分が視認されることは好ましくない。
【0015】
そこで、本発明は、電圧印加に応じて光透過状態または光散乱状態を呈する液晶光学素子を用いる場合に、表示パネルにおける配線部分が視認されないようにすることができる表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明による表示装置は、電圧無印加時に光透過状態になり電圧印加時に光散乱状態になる液晶層が透明な一対の基板によって挟持された表示装置であって、一対の基板における一方の基板に、セグメント電極に接続される複数のセグメント配線が設けられ、一対の基板における他方の基板に、各々のセグメント配線に相当する形状をもつ対向配線Aが各々のセグメント配線に対応して設けられ、一対の基板間に液晶層を封止するシール部において、導電材によって、各々のセグメント配線と対応する対向配線Aとが電気的に接続されていることを特徴とする。
【0017】
表示装置において、一対の基板における他方の基板に、コモン電極に接続されるコモン配線が設けられ、一対の基板における一方の基板に、コモン配線に相当する形状をもつ対向配線Bがコモン配線に対応して設けられ、一対の基板間に液晶層を封止するシール部で、導電材によって、コモン配線と対応する対向配線Bとが電気的に接続されているように構成されていてもよい。
【0018】
本発明による他の態様の表示装置は、電圧無印加時に光透過状態になり電圧印加時に光散乱状態になる液晶層が透明な一対の基板によって挟持された表示装置であって、一対の基板における一方の基板に、セグメント電極に接続される複数のセグメント配線が設けられ、各々のセグメント配線は、隣接するセグメント配線との間の間隔が所定値以上になるように配置されていることを特徴とする。
【0019】
一対の基板における他方の基板に、コモン電極に接続されるコモン配線が設けられ、コモン配線は、表示面に対して垂直な方向から表示を見たときに、コモン配線と隣接するセグメント配線との間の間隔が所定値以上になるように配置されているように構成されていてもよい。上記の所定値は、例えば20μmであることが好ましい。
【0020】
セグメント電極とコモン電極とに駆動電圧を印加する駆動回路は、液晶層を光散乱状態にするときに、例えば、セグメント電極とコモン電極との間に15V以上の電圧を印加する。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、電圧印加に応じて光透過状態または光散乱状態を呈する液晶光学素子を用いる場合に、表示パネルにおける配線部分が視認されないようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明による表示装置を周辺回路とともに示すブロック図。
【図2】液晶光学素子の印加電圧−透過率特性の一例を示す説明図。
【図3】液晶光学素子の一構成例を示す模式的断面図。
【図4】液晶/高分子複合体に用いることができる硬化性化合物を例示する説明図。
【図5】セグメント電圧およびコモン電圧の例を示すタイミング図。
【図6】本発明の第1の実施の形態の表示パネルにおける端部を示す平面図、シール部の断面を示す断面図、および引き回し部の断面を示す断面図。
【図7】本発明の第2の実施の形態の表示パネルにおける端部を示す平面図および断面図。
【図8】液晶光学素子を用いた表示パネルの一例を示す平面図。
【図9】セグメント配線およびコモン配線を模式的に示す平面図および断面図。
【図10】表示パネルにおける配線の視認状況を説明するための説明図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。図1は、本発明による表示装置を周辺回路とともに示すブロック図である。
【0024】
図1に示す構成では、制御信号等を出力する制御回路10と、表示装置(表示パネル)300のコモン電極およびセグメント電極を駆動する駆動回路20と、電源部50とが設けられている。
【0025】
制御回路10は、駆動回路20に対して、クロック信号、クロック信号に同期して出力されるデータ信号、データ信号の有効/無効等を示す制御信号を出力する。電源部50は、駆動回路20に対して、駆動電圧を供給する。
【0026】
図1に示す例では、表示パネル300に、2つの表示領域(以下、セグメントという。)401,402が設けられている。各々のセグメント401,402に対応して、コモン電極(図示せず)およびセグメント電極(図示せず)が設けられている。表示パネル300において、コモン電極に接続されるコモン配線331が設けられ、セグメント電極に接続されるセグメント配線321,322が設けられている。コモン配線331とセグメント配線321,322とは、駆動回路20に接続されている。なお、図1に示す例では、コモン配線は、2つのセグメントについて共通の配線である。
【0027】
図2は、本実施の形態で使用可能な液晶光学素子の印加電圧−透過率特性の一例を示す説明図である。図2に例示する特性を有する液晶光学素子を使用する場合には、駆動回路20は、セグメントを視認可能にするときに、液晶光学素子に15V以上の電圧を印加する。透過率を、530nmを中心波長とする半値幅約20nmの測定光源を用いたシュリーレン光学系(光学系のF値11.5、集光角5°)にて測定した。また、透過率が最大値(飽和状態の値)に対して90%以上になっている状態を光透過状態とし、透過率が最大値に対して90%未満になっている状態を光散乱状態とする。
【0028】
図2に示す例では、透過率の最大値は読み取り値で82%であり、透過率が73.8%以上になっている状態が光透過状態である。従って、ここでは、透過率(の絶対値)が73.8%未満になっている状態が光散乱状態である。光散乱状態のうち、例えば透過率が最大値に対して10%以下になるようにするには高電圧を印加するが、電圧の変動に対して透過率が安定する特性を有する。また、同じ光散乱状態として透過率が最大値に対して10〜90%の間で制御してもよく、その場合、所望の透過率を得るために電圧の変動が小さくなるように制御するとよい。
【0029】
図3は、表示パネル300の一構成例を示す模式的断面図である。図3に例示された構成では、一対のガラス基板320,330の相対する面には、セグメント電極341〜344とコモン電極311とが設けられている。さらに内側には配向膜103,106が設けられる。そして、配向膜103,106の間に、液晶を含み、スペーサ(図示せず)によって厚みが制御された液晶層104が挟持される。そして、シール層105によって液晶層104が封止される。
【0030】
透明性が確保できれば、ガラス基板320,330に代えて、プラスチック基板を使用することができる。また、表示パネル300の形状は、平面状である必要はなく湾曲していてもよい。
【0031】
また、ガラス基板320,330上に設けられるセグメント電極341〜344およびコモン電極311として、ITO(酸化インジウム−酸化錫)のような金属酸化物などの透明な電極材料を使用することができる。以下、セグメント電極341〜344またはコモン電極311が設けられたガラス基板320,330を電極付き基板という。図3には示されていないが、セグメント電極、コモン電極それぞれに接続されているセグメント配線、コモン配線の材料も同様に透明な電極材料を使用することができ、電極材料と同じものを使用してもよい。ガラス基板と電極材料とでは屈折率差があるため(ガラス基板で1.5程度、ITOで2.0程度とすると屈折率差は0.5程度)、液晶層の点灯状態には関係なく、電極が外光反射によって見えやすくなる場合がある。このため、電極の膜厚を、表示領域が非点灯時に電極のない部分と同程度の透明性を維持できることや、表示領域点灯時に配線部が見えない(すなわち透明性を維持できる)ことなどを考慮して適宜選択する。このような電極つき基板上に、さらにガラス基板と電極の屈折率差を解消するような屈折率をもつ透明誘電体膜等の光学薄膜層を形成してもよい。光学薄膜層の膜厚は屈折率差の解消が可能な程度であればよく、干渉効果による色づきがでない程度を上限とする。
【0032】
液晶層104は、透明な一対の電極付き基板間に、液晶とその液晶に溶解可能な硬化性化合物とを含有する組成物(以下、未硬化組成物ともいう。)を挟持させ、熱や紫外線、電子線などの手段を用いて硬化性化合物を硬化させて液晶/高分子複合体として形成される液晶層が好ましい。このような液晶と高分子の複合体からなる液晶を、以下、液晶/高分子複合体ともいう。
【0033】
液晶/高分子複合体に用いる液晶としては、誘電異方性が正でも負でもよいが、光透過状態と光散乱状態の切り替えに要する応答時間を短くするためには、液晶の粘度が低く、さらに誘電異方性が負の液晶を用いることが好ましい。
【0034】
誘電率異方性が負の液晶を使用する場合には、電極付き基板において、液晶層104と接触する側に液晶分子のプレチルト角が基板表面に対して60度以上であるようにする処理が施されていると、配向欠陥を少なくすることができ、透明性が向上するため好ましい。この場合、ラビング処理を施さなくてもよい。プレチルト角は70度以上であることがより好ましい。なお、プレチルト角を、基板表面に垂直の方向を90度として規定する。
【0035】
液晶/高分子複合体を構成する液晶として、公知の液晶から適宜選択できる。配向膜103,106により未硬化組成物のプレチルト角を制御することができる電極付き基板を用いることによって、誘電率異方性が正の液晶も誘電率異方性が負の液晶も使用可能であるが、より高い透明性や応答速度の面では誘電率異方性が負の液晶が好ましい。配向膜にラビング処理を施すこともできる。また、駆動電圧を低下させるためには誘電率異方性の絶対値が大きい方が好ましい。
【0036】
また、液晶/高分子複合体を構成する硬化性化合物も透明性を有することが好ましい。さらに、硬化後に、電圧を印加したときに液晶のみが応答するように液晶と硬化性化合物とが分離していると、駆動電圧を下げることができるので好ましい。
【0037】
本発明では、液晶に溶解可能な硬化性化合物のうち、未硬化時の液晶と硬化性化合物との混合物の配向状態を制御可能であって、硬化する際に高い透明性を保持することができる硬化性化合物が使用される。
【0038】
硬化性化合物として、式(1)の化合物や式(2)の化合物を例示できる。
−O−(R―O―Z―O―(RO―A ・・・式(1)
−(OR―O―Z’―O―(RO)―A ・・・式(2)
【0039】
ここで、A,A,A,Aのそれぞれは、独立的に、硬化部位となるアクリロイル基、メタクリロイル基、グリシジル基またはアリル基であり、R,R,R,Rのそれぞれは、独立的に、炭素数2〜6のアルキレン基であり、Z,Z’のそれぞれは、独立的に、2価のメソゲン構造部であり、m,n,o,pのそれぞれは、独立的に、1〜10の整数である。ここで、「独立的に」とは、組み合わせが任意であって、どのような組み合わせも可能であることを意味する。
【0040】
式(1)および式(2)におけるメソゲン構造Z,Z’と硬化部位A,A,A,Aとの間に、R,R,R,Rを含む分子運動性の高いオキシアルキレン構造を導入することによって、硬化時に、硬化過程において硬化部位の分子運動性を向上でき、短時間で十分に硬化させることが可能になる。
【0041】
式(1)および式(2)における硬化部位A,A,A,Aは、光硬化や熱硬化が可能な上記の官能基であればいずれでもよいが、なかでも、硬化時の温度を制御できることから光硬化に適するアクリロイル基、メタクリロイル基であることが好ましい。
【0042】
式(1)および式(2)におけるR,R,RおよびRの炭素数については、その分子運動性の観点から1〜6が好ましく、炭素数2のエチレン基および炭素数3のプロピレン基がさらに好ましい。
【0043】
式(1)および式(2)におけるメソゲン構造部Z,Z’として、1,4−フェニレン基の連結したポリフェニレン基を例示できる。1,4−フェニレン基の一部または全部を1,4−シクロへキシレン基で置換したものであってもよい。また、1,4−フェニレン基や置換した1,4−シクロへキシレン基の水素原子の一部または全部が、炭素数1〜2のアルキル基、ハロゲン原子、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基などの置換基で置換されていてもよい。
【0044】
好ましいメソゲン構造部Z,Z’として、1,4−フェニレン基が2個連結したビフェニレン基(以下、1,4−フェニレン基が2個連結したビフェニレン基を4,4−ビフェニレン基ともいう。)、3個連結したターフェニレン基、およびこれらの水素原子の1〜4個が、炭素数1〜2のアルキル基、フッ素原子、塩素原子またはカルボキシル基に置換されたものを挙げることができる。最も好ましいものは、置換基を有しない4,4−ビフェニレン基である。メソゲン構造部を構成する1,4−フェニレン基または1,4−シクロへキシレン基同士の結合は全て単結合でもよいし、以下に示すいずれかの結合でもよい。
【0045】
【化1】

【0046】
式(1)および式(2)におけるm,n,o,pは、それぞれ独立的に、1〜10であることが好ましく、1〜4がさらに好ましい。あまり大きいと液晶との相溶性が低下し、硬化後の液晶光学素子の透明性を低下させるからである。
【0047】
図4に、本発明において使用できる硬化性化合物の例を示す。液晶と硬化性化合物とを含有する組成物は、式(1),(2)で表される硬化性化合物を含め、複数の硬化性化合物を含有していてもよい。例えば、組成物に、式(1)および式(2)においてm,n,o,pの異なる複数の硬化性化合物を含有させると、液晶との相溶性を向上させることができる場合がある。
【0048】
液晶と硬化性化合物とを含有する組成物は硬化触媒を含有していてもよい。光硬化の場合、ベンゾインエーテル系、アセトフェノン系、フォスフィンオキサイド系などの一般に光硬化性樹脂に用いられる光重合開始剤を使用できる。熱硬化の場合は、硬化部位の種類に応じて、パーオキサイド系、チオール系、アミン系、酸無水物系などの硬化触媒を使用でき、また、必要に応じてアミン類などの硬化助剤を使用することもできる。
【0049】
硬化触媒の含有量は、含有する硬化性化合物の20重量%以下が好ましく、硬化後に硬化樹脂の高い分子量や高い比抵抗が要求される場合は0.1〜5重量%とすることがさらに好ましい。未硬化組成物において、硬化性化合物の総量は、液晶組成物に対して0.1〜20質量%であることが好ましい。0.1質量%未満では、液晶相を硬化物により効果的な形状のドメイン構造に分割することができず、所望の透過−散乱特性を得ることができない。一方、20質量%を越えると、従来の液晶/硬化物複合体素子と同様に透過状態でのヘイズ値が増大しやすくなる。また、さらに好ましくは、液晶組成物中の硬化物の含有率が0.5〜15質量%であり、光散乱状態での散乱強度を高く、透過−散乱が切り替わる電圧値を低くすることができる。
【0050】
液晶分子を、基板表面に対してプレチルト角が60度以上になるように配向させる処理方法として、垂直配向剤を使用する方法がある。垂直配向剤を使用する方法として、例えば、界面活性剤を用いる方法や、アルキル基やフルオロアルキル基を含むシランカップリング剤などで基板界面を処理する方法、または日産化学工業社製のSE1211やJSR社製のJALS−682−R3等の市販の垂直配向剤を用いる方法がある。垂直配向状態から任意の方向に液晶分子が倒れた状態を作るためには、公知のどのような方法を採用してもよい。垂直配向剤をラビングしてもよい。また、電圧がガラス基板320,330に対して斜めに印加されるように、セグメント電極341〜344およびコモン電極311にスリットを設けたり、セグメント電極341〜344およびコモン電極311上に三角柱を配置する方法を採用してもよい。また、特定方向に液晶分子を倒すような手段を用いなくてもよい。
【0051】
二つのガラス基板320,330間にある液晶層104の厚さを、スペーサ等で規定することができる。その厚さは1〜50μmが好ましく、3〜30μmがさらに好ましい。液晶層104の厚さが薄すぎるとコントラストが低下し、厚すぎると駆動電圧が上昇する傾向が増大するため好ましくない場合が多い。スペーサとして、ガラスビーズやガラスファイバー、プラスチックファイバー、アルミナ粉などからなる公知の材料を選択できる。スペーサの大きさを、所望の液晶層厚さを達成可能なように適宜調整してよい。
【0052】
シール層105として、透明性の高い樹脂であれば公知のどのようなものを使用することも可能である。透明性の高い樹脂を使用すれば、表示素子は全面に亘って透明感が高まり、文字や図形が空中に浮かんだように見える状態が強調される。例えば、基板としてガラス基板320,330を使用する場合には、ガラスの屈折率に近似した屈折率を有するエポキシ樹脂やアクリル樹脂を使用すれば、空中に透明なガラスが浮いているような状態を実現できる。また、シール部が通常、観察者に視認されない使用方法の場合は、特にシール層が透明である必要はない。さらに、液晶層104の厚さの制御性の観点から、シール層105を構成する樹脂中に、表示領域と同様にスペーサを適量混入させてもよい。
【0053】
以上のように作製された表示パネル300は、少なくとも常温付近において表示画素の光透過状態と光散乱状態との間の応答時間が5msよりも短く非常に速い応答速度を実現することができる。また、従来の分散型液晶素子による散乱透過モードと比べると視野角依存性が良好であり、斜めから見たときにも非常に良好な透過状態を得ることができるようにすることができる。例えば、上記の組成の硬化性化合物と液晶とを含有する複合体を使用した場合、垂直から40度傾けて見た場合もほとんどヘイズがないようにすることができる。
【0054】
表示パネル300のサイズとして、対角線の長さが1cm程度のものから3m程度の大きいものを含め、どのようなサイズのものも使用することができる。
【0055】
また、表示パネル300を複数枚用いてもよい。また、表示パネル300に対する耐衝撃性を増すために、上下のガラス基板320,330を固定させてもよい。
【0056】
表示パネル300の表裏の表面には、反射防止膜または紫外線遮断膜を設けることが好ましい。例えば、表示パネル300の表裏に、SiOやTiOなどの誘電体多層膜よりなるARコート(低反射コート)処理を施すことにより、基板表面での外光の反射を減らすことができ、コントラストをより向上させることができる。
【0057】
図5は、駆動回路20からセグメント401,402に対応するセグメント電極およびコモン電極に、セグメント配線およびコモン配線を介して印加されるセグメント電圧およびコモン電圧の例を示すタイミング図である。図5(A)は、液晶層104を光散乱状態にするときのセグメント電圧およびコモン電圧を示す。図5(B)は、液晶層104を光透過状態にするときのセグメント電圧およびコモン電圧を示す。
【0058】
駆動回路20は、液晶層104におけるセグメント401,402に対応する部分が視認されるようにするときに、図5(A)に例示されたようなセグメント電圧およびコモン電圧を、セグメント401,402に対応するセグメント電極およびコモン電極に印加する。また、図1に示す例では、コモン配線は共通配線であるから、液晶層104におけるセグメント401,402に対応する部分が視認されないようにするとき(光透過状態にするとき)にも、図5(B)の中段に示すようなコモン電圧がコモン電極に印加される。図5(B)の中段に示すコモン電圧は、図5(A)の中段に示すコモン電圧と同じである。そして、駆動回路20は、図5(B)の上段に例示されたようなセグメント電圧を、セグメント401,402に対応するセグメント電極に印加する。
【0059】
図5(A)に示す例では、液晶層104を光散乱状態にするときに、駆動回路20は、所定周期(例えば、[1/360]〜[1/60]秒程度)で40Vの電圧をセグメント電極に印加し、コモン電極に対して、セグメント電極に印加される電圧と逆相の電圧(位相が180度ずれた波形の電圧)を印加する。よって、図5(A)の下段に示すように、液晶層104には、所定周期で位相が逆になるが、常に、40Vrmsの電圧が印加される。
【0060】
図5(B)に示す例では、液晶層104を光透過状態にするときに、駆動回路20は、所定周期で40Vの電圧をセグメント電極に印加し、コモン電極に対して、セグメント電極に印加される電圧と同相の電圧を印加する。よって、図5(B)の下段に示すように、液晶層104に印加される電圧は0Vrmsである。
【0061】
図9に例示されたようにセグメント配線321,322,323,324およびコモン配線331,335が設けられていて、隣接するセグメント配線との間の間隔、および表示面から垂直な方向から表示を見たときに、コモン配線と隣接するセグメント配線との間隔はそれぞれ10μmである。駆動回路20が表示内容に応じて図5(A),(B)に例示したような電圧をセグメント電極およびコモン電極に印加すると、セグメント配線321,322,323,324およびコモン配線331のエッジ部が光散乱状態を呈することがあった。
【0062】
(実施の形態1)
図6(A)は、本発明の第1の実施の形態の表示パネルにおける端部を示す平面図である。図6(A)に示すように、表示パネルにおける端辺からやや内側にシール部(図3におけるシール層105に相当)が設けられている。セグメント配線において、シール部よりガラス基板320の端面側(外側ともいう。)端子部に相当し、シール部の内側は、セグメント電極に至る引き回し部に相当する。
【0063】
図6(B),(C)の断面図に示すように、セグメント配線321,322,323,324が形成されているガラス基板320に対向するガラス基板330において、対向配線421,422,423,424(対向配線A)が形成されている。各々の対向配線421〜424は、セグメント配線321〜324に相当する形状をもち、かつ、セグメント配線321〜324に対応する位置に形成されている。「相当する」とは、配線パターンとして同等であることを意味し、製造上の誤差は許容される。「対応する位置」とは、表示パネル300の視認側から見ると重複している位置(背面側から見た場合も重複している。)を意味する。
【0064】
また、コモン配線331,335が形成されているガラス基板330に対向するガラス基板320において、対向配線431,435(対向配線B)が形成されている。各々の対向配線431,435は、コモン配線331,335に相当する形状をもち、かつ、コモン配線331,335に対応する位置に形成されている。
【0065】
また、図6(A),(B)に示すように、シール部には、例えば粒子状である導電材(以下、トランスファ材という。)350が含有されている。含有させる方法として公知の製造方法を適用できる。例えば、シール層105を構成する樹脂中に、ガラス基板320,330間で電気的に接続される程度の量だけトランスファ材とを混入させてシール部に相当する部分に塗布した後、硬化させる。なお、図6(A),(B)では、トランスファ材の分布についてはその一例が模式的に表わされている。トランスファ材として、スペーサ表面に導電性被膜を設けた導電性スペーサなど、公知の材料から、特性や歩留まりを考慮して適宜選択すればよい。また、トランスファ材は、スペーサと同様に液晶層104の厚さ制御に影響を与えるため、トランスファ材のサイズや形状についても適宜選択できる。また、図6(A),(B)において、1つのトランスファ材のみに符号が付されているが、図6(A),(B)における楕円は全てトランスファ材350である。図6(B)に示すように、シール部において、セグメント配線321〜324と対向配線421〜424とは、電気的に接続される。また、コモン配線331,335と対向配線431,435とは、電気的に接続される。
【0066】
よって、セグメント配線321〜324と、セグメント配線321〜324に対向して設けられている対向配線421〜424とは、同電位である。また、コモン配線331,335と、コモン配線331,335に対向して設けられている対向配線431,435とは、同電位である。
【0067】
図6に示すように形成された表示パネル300に対して、駆動回路20が、図9に例示されたような「ON」、「OFF」の状態になるように、すなわち、セグメント配線321,323に接続されているセグメント電極に相当する表示領域が視認状態(光散乱状態)になりセグメント配線322,324に接続されているセグメント電極に相当する表示領域が視認不能状態(光透過状態)になるように、電圧を印加したときに、セグメント配線321〜324のエッジ部およびコモン配線331のエッジ部が一見して視認しうる従来の状況と比較して、視認の程度が大幅に緩和された。
【0068】
以上に説明したように、本実施の形態では、電圧印加に応じて光透過状態または光散乱状態を呈する液晶光学素子を用い駆動電圧が比較的高い(例えば、15V以上)表示パネル300において、セグメント配線321〜324に相当する形状をもつ対向配線421〜424を設け、トランスファ材350によって、各々のセグメント配線321〜324と、各々のセグメント配線321〜324に対応する対向配線421〜424の電位をそれぞれ同じ、すなわちガラス基板320,330間の電位差をゼロにすることによって、擬似的に隣接セグメント配線に印加されている電圧の影響を互いに受けない状態にすることができ、配線のエッジ部が視認される状態になることが防止された。図9を用いて説明した従来例のように、隣接するセグメント配線との間の間隔が10μmであってもこの効果が得られた。また、コモン配線に対する対向配線設置とトランスファ接続も、セグメント配線に対する場合と同様に効果がある。この実施の形態は、隣接するセグメント配線との間の間隔によらないため、表示の解像度が高く、配線間隔が最大でも20μm未満とせまい場合に特に有効である。
【0069】
(実施の形態2)
図7(A)は、本発明の第2の実施の形態(実施の形態2)の表示パネルにおける端部を示す平面図(図7(A))および断面図(図7(B))である。
【0070】
第2の実施の形態では、図6に示された第1の実施の形態とは異なり、対向配線は設けられていない。すなわち、配線の設置状況は、図9に示された場合と同じである。
【0071】
ただし、配線間隔は少なくとも15μm以上であることが好ましい。より好ましくは20μm以上であり、最も好ましくは25μm以上である。図7において、全てのセグメント配線321〜324について、表示パネル300におけるいずれの箇所でも、隣接するセグメント配線との間の間隔が20μm以上になるように、セグメント配線321〜324が配置されている。
【0072】
図7に示すように形成された表示パネル300に対して、駆動回路20が、図9に例示されたような「ON」、「OFF」の状態になるように、すなわち、セグメント配線321,323に接続されているセグメント電極に相当する表示領域が視認状態(光散乱状態)になりセグメント配線322,324に接続されているセグメント電極に相当する表示領域が視認不能状態(光透過状態)になるように、電圧を印加したときに、セグメント配線321〜324のエッジ部およびコモン配線331のエッジ部が視認される状態になる程度が大幅に緩和された。
【0073】
本実施の形態のように、電圧印加に応じて光透過状態または光散乱状態を呈する液晶光学素子を用い駆動電圧が比較的高い(例えば、15V以上)表示パネル300において、隣接配線にそれぞれ互いに逆位相となる電位がかかる場合であっても、隣接するセグメント配線との間の間隔、隣接するセグメント配線とコモン配線との間隔を所定値以上(図7に示された例では20μm以上)にすることによって、隣接するセグメント配線間や、隣接するセグメント配線とコモン配線との間において、各配線周辺の電界の影響を相互に受けにくくなり、配線のエッジ部が視認される状態になることが防止されることが確認された。
【0074】
このように、表示内容の解像度がそれほど高くなく、配線間隔を20μm程度とることが可能な場合には、実施の形態1のように対向配線を設けてトランスファ接続をとるということをしなくても、配線のエッジが視認されてしまう問題について回避可能である。
【0075】
なお、本実施の形態における20μmとして、表示パネル300の製造時等に生ずる誤差を含むことは許容される。
【符号の説明】
【0076】
10 制御回路
20 駆動回路
50 電源部
300,301 表示パネル
311 コモン電極
320,330 ガラス基板
321〜324 セグメント配線
331,335 コモン配線
350 トランスファ材
341〜344 セグメント電極
401,402 表示領域(セグメント)
421〜424 対向配線(対向配線A)
431,435 対向配線(対向配線B)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電圧無印加時に光透過状態になり電圧印加時に光散乱状態になる液晶層が透明な一対の基板によって挟持された表示装置であって、
前記一対の基板における一方の基板に、セグメント電極に接続される複数のセグメント配線が設けられ、
前記一対の基板における他方の基板に、各々のセグメント配線に相当する形状をもつ対向配線Aが各々のセグメント配線に対応して設けられ、
前記一対の基板間に液晶層を封止するシール部において、導電材によって、各々のセグメント配線と対応する対向配線Aとが電気的に接続されている
ことを特徴とする表示装置。
【請求項2】
一対の基板における他方の基板に、コモン電極に接続されるコモン配線が設けられ、
前記一対の基板における一方の基板に、コモン配線に相当する形状をもつ対向配線Bがコモン配線に対応して設けられ、
前記一対の基板間に液晶層を封止するシール部で、導電材によって、コモン配線と対応する対向配線Bとが電気的に接続されている
請求項1に記載の表示装置。
【請求項3】
電圧無印加時に光透過状態になり電圧印加時に光散乱状態になる液晶層が透明な一対の基板によって挟持された表示装置であって、
前記一対の基板における一方の基板に、セグメント電極に接続される複数のセグメント配線が設けられ、
各々のセグメント配線は、隣接するセグメント配線との間の間隔が所定値以上になるように配置されている
ことを特徴とする表示装置。
【請求項4】
一対の基板における他方の基板に、コモン電極に接続されるコモン配線が設けられ、
コモン配線は、表示面に対して垂直な方向から表示を見たときに、コモン配線と隣接するセグメント配線との間の間隔が所定値以上になるように配置されている
請求項3に記載の表示装置。
【請求項5】
所定値は20μmである請求項3または4に記載の表示装置。
【請求項6】
セグメント電極とコモン電極とに駆動電圧を印加する駆動回路を備え、
前記駆動回路は、液晶層を光散乱状態にするときに、セグメント電極とコモン電極との間に15V以上の電圧を印加する
請求項1〜5のうちのいずれか1項に記載の表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−266772(P2010−266772A)
【公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−119426(P2009−119426)
【出願日】平成21年5月18日(2009.5.18)
【出願人】(000000044)旭硝子株式会社 (2,665)
【Fターム(参考)】