説明

表示装置

【課題】発光層を発光させてパターン表示する表示装置において、発光層の発光がなくなった後も表示を確保すると共に、誘目性を向上する。
【解決手段】表示装置1は、透明電極22と、この透明電極22に配置されて複数の領域24W、24Gに分割された発光層24と、透明電極22と反対側に配置されて発光層24に給電する対向電極26と、を有する面状発光素子2を備え、発光層24を各々の領域24W、24G毎に発光させてパターン表示する。表示装置1は、いずれかの領域の少なくとも一部と重畳するように配置され、発光層24の発光によって蓄光する蓄光部27をさらに備えた。これにより、発光層の発光がなくなった後、蓄光部27の残光によって表示が確保され、誘目性が向上する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、誘導灯などとして用いられる表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、火災発生時等の非常時に人を避難経路に誘導するための誘導灯がある。図12及び図13に示されるように、誘導灯100は、筺体状の誘導灯パネル101と、その誘導灯パネル101の内側に設けられたバックライトとしての蛍光ランプ102とを有する。誘導灯パネル101は、例えば、緑と白の2色を用いた、人が避難するマークを表示する。
【0003】
蛍光ランプ102は、点灯回路110を介して交流電源に接続される。点灯回路110は、例えば交流直流変換部111とインバータ部113とを有する。非常時には、交流電源の供給が絶たれる場合も想定されることから、誘導灯100は、蓄電池を有する非常用電源112を備える。非常用電源112は、インバータ部113の入力側の直流回路に接続される。非常用電源112は、通常時には常時通電されて蓄電池が充電された状態になっており、非常時に交流電源の供給が絶たれた場合には、インバータ部113に給電する。このような誘導灯100は、蛍光ランプ102の寿命が短く、また、非常時に、非常用電源112のエネルギー消耗が早いため、蛍光ランプ102を長時間点灯できず、蛍光ランプ102の消灯後は表示が確保されない。
【0004】
また、図14及び図15に示されるように、面状発光素子としての有機EL素子202を誘導灯パネル101のバックライトに用いた有機EL素子誘導灯200が知られている。有機EL素子202は、プラス電極とマイナス電極との間に有機化合物を含む有機薄膜を発光層として挟持する。発光層は、正孔(ホール)及び電子が各電極から注入され、正孔と電子の結合によって有機化合物の励起子を発生する。この励起子が基底状態に戻るときに放射される光が外部に取り出される。
【0005】
有機EL素子202は、交流直流変換部111及び電流制御部213を介して交流電源に接続される。電流制御部213は、有機EL素子202のプラス電極とマイナス電極との間に直流電流を出力する。非常用電源112が、電流制御部213の入力側に接続される。非常用電源112は、通常時には常時通電されて充電された状態になっており、非常時に交流電源の供給が絶たれた場合には、電流制御部213に給電する。このような有機EL素子誘導灯200は、非常時に、非常用電源112のエネルギー消耗が依然として早いため、有機EL素子202を長時間発光させることができず、有機EL素子202の発光がなくなった後は表示が確保されない。
【0006】
また、EL発光体の中に蓄光蛍光体を含有させたEL発光表示板が知られている(例えば、特許文献1参照)。このEL発光表示板は、EL発光体への電圧印加を止めた後も蓄光蛍光体の残光によって表示が確保される。しかしながら、このようなEL発光表示板は、EL発光体全体に蓄光蛍光体が含有されているので、蓄光蛍光体の残光があっても表示が目立たず、所望の誘目性が得られにくい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平10−73684号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記問題を解決するものであり、発光層を発光させてパターン表示する表示装置において、発光層の発光がなくなった後も表示を確保すると共に、誘目性を向上することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために請求項1の発明は、透明電極と、この透明電極に配置されて複数の領域に分割された発光層と、前記透明電極と反対側に配置されて前記発光層に給電する対向電極と、を有する面状発光素子を備え、前記発光層を前記各々の領域毎に発光させてパターン表示する表示装置であって、前記いずれかの領域の少なくとも一部と重畳するように配置され、前記発光層の発光によって蓄光する蓄光部をさらに備えたものである。
【0010】
請求項2の発明は、請求項1に記載の表示装置において、非常用電源を備え、前記非常用電源から電力が供給されている期間のうち少なくとも一部の期間において、前記蓄光部と重畳する領域の発光層を間欠発光させるものである。
【0011】
請求項3の発明は、請求項2に記載の表示装置において、前記間欠発光する期間における発光期間に対する消光期間の割合は、前記非常用電源による動作直後から経時的に小さくなるものである。
【発明の効果】
【0012】
請求項1の発明によれば、発光層の発光によって蓄光部が蓄光するので、発光層の発光がなくなった後も、蓄光部の残光によって表示を確保することができる。また、蓄光部の残光によってパターン表示されるので、蓄光部を発光層全体に重畳して配置するよりも表示が目立ち、誘目性を向上することができる。
【0013】
請求項2の発明によれば、発光層を間欠発光させることによって、連続発光させるよりも非常用電源のエネルギー消耗が抑制されるので、表示を長時間確保することができる。また、発光層の発光に蓄光部の残光が追加されるので、より視認性の良い表示を確保することができる。
【0014】
請求項3の発明によれば、発光期間の割合が経時的に増加するので、蓄光部の蓄光が弱くなることが防がれ、表示に必要な照度を長時間確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る表示装置の平面図。
【図2】同表示装置における面状発光素子の断面図。
【図3】同表示装置における蓄光材料の励起スペクトル及び発光スペクトルを示す図。
【図4】同表示装置における発光材料の発光スペクトルを示す図。
【図5】上記表示装置の回路構成図。
【図6】本発明の第1の実施形態の変形例に係る表示装置の平面図。
【図7】同実施形態の別の変形例に係る表示装置の平面図。
【図8】同実施形態のさらに別の変形例に係る表示装置の平面図。
【図9】本発明の第2の実施形態に係る表示装置の回路構成図。
【図10】(a)は同表示装置における発光層に印加される電圧の時間変化を示す図、(b)は同表示装置におけ照度の時間変化を示す図。
【図11】(a)は本発明の第3の実施形態に係る表示装置における非常用電源動作開始から一定時間後に発光層に印加される電圧の時間変化を示す図、(b)は同表示装置におけ照度の時間変化を示す図。
【図12】従来の誘導灯における誘導灯パネルの斜視図。
【図13】同誘導灯の回路構成図。
【図14】従来の別の誘導灯における誘導灯パネルの斜視図。
【図15】同誘導灯の回路構成図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(第1の実施形態)
本発明の第1の実施形態に係る表示装置を図1乃至図5を参照して説明する。本実施形態の表示装置1は、図1及び図2に示されるように、例えば緑地白矢印のパターン表示をするものであり、面状発光素子2を有する。なお、図2において面状発光素子2は、厚さ方向に拡大して示している。面状発光素子2は、例えば有機EL素子であり、素子基板21と、透明電極22と、正孔輸送層23と、発光層24と、電子輸送層25と、対向電極26とをこの順に有する。発光層24は、複数の領域、例えば白色領域24Wと緑色領域24Gに分割されている。電子輸送層25及び対向電極26は、発光層24の領域の分割に対応して分割されている。表示装置1は、白色領域24Wと重畳するように蓄光部27を有する。蓄光部27は、白色領域24Wの発光によって蓄光する。これらの透明電極22、正孔輸送層23、発光層24、電子輸送層25、対向電極26、及び蓄光部27は、素子基板21及び封止基板(図示せず)によって封止される。透明電極22と対向電極26は、それらの一部が封止基板外に延出されて給電される。表示装置1は、発光層24を白色領域24W及び緑色領域24G毎に発光させてパターン表示する。
【0017】
素子基板21は、例えば板状の透明ガラスである。透明電極22は、ITO(酸化インジウムスズ)等から成るプラス電極である。正孔輸送層23は、正孔輸送材料を有し、透明電極22から注入された正孔を発光層24に輸送する。発光層24は、発光材料を有する。電子輸送層25は、電子輸送材料を有し、対向電極26から注入された電子を発光層24に輸送する。対向電極26は、アルミ等から成るマイナス電極である。発光層24の発光は、素子基板21を通して大気中に取り出される。
【0018】
面状発光素子2は、表示のバックライトではなく、自発光表示するものである。発光層24は、緑地白矢印のパターン表示に対応して、矢印部が白色発光する白色領域24W、矢印部の周りが緑色発光する緑色領域24Gとされる。白色領域24Wは、発光材料として青色発光材料であるTPB(テトラフェニルブタジエン)と、緑色発光材料であるIr(ppy)と、赤色発光材料であるPIQとを含有する。白色領域24Wは、白色に発光するように各発光材料の調合比率が調整される。緑色領域24Gは、発光材料として緑色発光材料であるIr(ppy)を有する。なお、面状発光素子2は、本実施形態では有機EL素子としたが、無機EL素子であっても構わない。
【0019】
蓄光部27は、蓄光材料を有し、例えば素子基板21と透明電極22との間に形成される。蓄光材料は、蓄光する化合物であり、光によって励起されてエネルギーを蓄え、そのエネルギーによって発光する。蓄光材料は、励起する光がなくなっても残光を発する。蓄光材料には、SrAl:Eu,Dyの長残光蛍光体が用いられる。蓄光部27は、白色領域24Wに重畳するように配置され、緑色領域24Gには配置されない。
【0020】
蓄光部27の蓄光材料であるSrAl:Eu,Dyの励起スペクトル及び発光スペクトルを図3に示す(「新蓄光性材料の開発とその応用」、「はかる」42巻、村山義彦著、1997年、p.3参照)。発光層24の白色領域24Wの発光材料であるTPB、Ir(ppy)、及びPIQの発光スペクトルを図4に示す。これらの図から分かるように、蓄光材料SrAl:Eu,Dyの励起スペクトルは、TPBの発光スペクトルと波長域が一部重なっている。このため、蓄光部27の蓄光材料は、白色領域24Wに含まれるTPBの発光によって励起されて発光する。すなわち、蓄光部27は、白色領域24Wの発光によって蓄光する。
【0021】
表示装置1の回路構成を図5に示す。表示装置1は、交流直流変換部11と、非常用電源12と、電流制御部13とを有する。交流直流変換部11は、整流回路及びフィルタ等を有し、交流電源(商用電源)の交流を降圧して直流に変換する。電流制御部13は、交流直流変換部11から直流が入力され、面状発光素子2の通電電流を制御する。非常用電源12は、蓄電池を有し、交流直流変換部11と電流制御部13との間の直流回路に並列接続される。
【0022】
上記のように構成された表示装置1の動作について説明する。交流電源が正常なとき、電流制御部13は、交流直流変換部11を介して交流電源から電力が供給され、定電流源として、面状発光素子2の白色領域24W及び緑色領域24Gの通電電流を所望の値に制御する。すなわち、面状発光素子2は、交流電源からの供給電力によって発光する。非常用電源12の蓄電池は、交流電源からの供給電力によって常時充電される。
【0023】
非常時すなわち交流電源からの供給電力が絶たれた場合、非常用電源12が自動的に動作する。電流制御部13は、非常用電源12から電力が供給される。面状発光素子2は、非常用電源12からの供給電力によって発光する。蓄光部27は、白色領域24Wの発光によって蓄光する。
【0024】
非常用電源12の蓄電池の放電が終止し、面状発光素子2への供給電力が絶たれた場合、蓄光部27の残光によって必要な表示が確保される。
【0025】
このように、蓄光部27は、白色領域24Wに重畳するように配置されることによって、白色領域24Wの発光によって蓄光するので、発光層24の発光がなくなっても、強い残光が得られ、その残光によって表示を確保することができる。また、蓄光部27の残光によってパターン表示されるので、蓄光部を発光層24全体に重畳して配置するよりも表示が目立ち、誘目性を向上することができる。
【0026】
(変形例)
図6に示されるように、白地緑矢印のパターン表示をする場合、表示装置1は、矢印部が緑色領域24G、矢印部の周りが白色領域24Wとされる。蓄光部27は、白色領域24Wに重畳するように配置される。この構成によっても、蓄光部27が白色領域24Wの発光によって蓄光し、蓄光部27の残光によって矢印部の周りがパターン表示され、同様の効果が得られる。
【0027】
また、図7に示されるように、緑色領域24Gの白色領域24Wに接する部分(斜線を付した部分)に重畳するように蓄光部27を配置してもよい。この構成によっても、蓄光部27が白色領域24Wの発光を受けて蓄光するので、同様の効果が得られる。
【0028】
また、図8に示されるように、白色領域24Wの緑色領域24Gに接する部分(斜線を付した部分)に重畳するように蓄光部27を配置してもよい。
【0029】
(第2の実施形態)
本発明の第2の実施形態に係る表示装置を図9及び図10(a)(b)を参照して説明する。本実施形態の表示装置1は、第1の実施形態と同様の構成に加え、非常用電源12に間欠発振回路121をさらに備える。間欠発振回路121の出力側は、面状発光素子2の白色領域24Wに接続される。なお、図9において矢印は、電力が供給される向きを示す。
【0030】
上記のように構成された表示装置1の動作について、第1の実施形態との相違点を説明する。非常時すなわち交流電源からの供給電力が絶たれた場合、非常用電源12から電力が供給されている期間のうち少なくとも一部の期間において、間欠発振回路121によって間欠発振された電圧が、蓄光部27と重畳する領域の発光層24(白色領域24W)に供給される。これにより、その領域が間欠発光される。
【0031】
間欠発振回路121の出力電圧を図10(a)に示す。面状発光素子2は、電圧供給時T1に白色領域24Wが発光し、この発光によって蓄光部27が蓄光する。また、面状発光素子2は、電圧が供給されない時T2に白色領域24Wが消光し、蓄光部27が残光を発する。図10(b)に示されるように、表示装置1の照度L1は、間欠発光する期間における消光期間T2に減衰し、発光期間T1に回復する。照度L1が減衰して必要照度L2を下回る前に白色領域24Wを発光させることにより、表示に必要な照度が確保される。
【0032】
このように、非常用電源12から電力が供給されている期間、発光層24を間欠発光させることによって、連続発光させるよりも非常用電源12のエネルギー消耗が抑制される。また、白色領域24Wのみを間欠発光させることによって、発光層24全体を間欠発光させるよりも非常用電源12のエネルギー消耗が抑制される。このため、表示を長時間確保することができる。また、白色領域24Wの発光に蓄光部27の残光が追加されるので、より視認性の良い表示を確保することができる。また、発光層24がパターン表示毎に分割されていることから、パターン表示に必要な領域、又は、長時間目立たせたい領域等を間欠発光させることにより、発光層24全体を間欠発光させるよりも表示が目立ち、誘目性が向上する。本実施形態では表示装置1は、白色領域24Wのみが間欠発光し、その領域に重畳して配置された蓄光部27が蓄光する。なお、蓄光部27は、図7乃至図9に示されるように配置してもよい。
【0033】
(第3の実施形態)
本発明の第3の実施形態に係る表示装置について説明する。本実施形態の表示装置は、第2の実施形態と同様の構成を有し(図9参照)、間欠発振回路121における発振動作が異なる。
【0034】
本実施形態の表示装置1の動作について図11(a)(b)を参照して説明する。交流電源が正常なとき、蓄光部27は、白色領域24Wの連続発光によって十分に蓄光している。交流電源からの供給電力が絶たれると非常用電源12による動作が開始される。蓄光部27は、白色領域24Wの間欠発光によって蓄光するので、間欠発光の発光期間T1と消光期間T2が一定割合であれば、蓄光が次第に弱くなる。本実施形態では、白色領域24Wが間欠発光する期間における発光期間T1に対する消光期間T2の割合が、非常用電源12による動作直後から経時的に小さくなるようにした。図11(a)(b)に示されるにように、消灯期間T2を短くすることにより、発光期間T1に対する消光期間T2の割合が小さくなる。これにより、発光期間T1の割合が増加し、蓄光部27の蓄光が弱くなることが防がれ、表示に必要な照度を長時間確保することができる。
【0035】
なお、本発明は、上記の実施形態の構成に限られず、発明の要旨を変更しない範囲で種々の変形が可能である。例えば、第2の実施形態において、非常用電源12に間欠発振回路121を設けることに替えて、電流制御部13がパルス状の電圧を白色領域24Wに供給して白色領域24Wを間欠発光させるように構成してもよい。
【符号の説明】
【0036】
1 表示装置
12 非常用電源
2 面状発光素子
22 透明電極
24 発光層
24W、24G 領域
26 対向電極
27 蓄光部
T1 発光期間
T2 消光期間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明電極と、この透明電極に配置されて複数の領域に分割された発光層と、前記透明電極と反対側に配置されて前記発光層に給電する対向電極と、を有する面状発光素子を備え、前記発光層を前記各々の領域毎に発光させてパターン表示する表示装置であって、
前記いずれかの領域の少なくとも一部と重畳するように配置され、前記発光層の発光によって蓄光する蓄光部をさらに備えたことを特徴とする表示装置。
【請求項2】
非常用電源を備え、
前記非常用電源から電力が供給されている期間のうち少なくとも一部の期間において、前記蓄光部と重畳する領域の発光層を間欠発光させることを特徴とする請求項1に記載の表示装置。
【請求項3】
前記間欠発光する期間における発光期間に対する消光期間の割合は、前記非常用電源による動作直後から経時的に小さくなることを特徴とする請求項2に記載の表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2011−170286(P2011−170286A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−36538(P2010−36538)
【出願日】平成22年2月22日(2010.2.22)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】