説明

表示装置

【課題】 表示装置を使用し続けるとホワイトバランスが初期の設定から変化してしまう。
【解決手段】 互いに異なる色で発光する発光素子を含む表示部、
画像信号が入力され、前記画像信号の示す各色の階調レベルに、色によらない係数を乗じて前記表示部に出力する輝度制御部、ならびに、
前記表示部で表示される画像を構成する前記画像信号の集合を統計処理し、前記画像を代表する色を決定して前記輝度制御部に出力する統計処理部、
を有する表示装置であって、
前記輝度制御部は、前記画像を代表する色に応じて、前記係数を、前記発光素子を継続的に発光させたときの輝度の劣化速度の速い順に小さく設定することを特徴とする表示装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示装置に関わるものであり、詳しくは、有機EL素子等の自発光素子を用いた表示装置に関わるものである。
【背景技術】
【0002】
近年、有機エレクトロルミネッセンス素子(以下、「有機EL素子」という。)やプラズマ素子のような自発光素子を用いた自発光型表示装置が多く利用されている。カラー表示させるためには複数の異なる色の光を発光する自発光素子を組み合わせて画素を形成する。赤色発光素子、緑色発光素子、及び青色発光素子を1つの画素とするのが一般的である。
【0003】
ところが、自発光素子は、長時間継続して発光させると、素子内の変化や蛍光体の劣化により輝度が低下することが問題となっている。異なる色の光を発光する自発光素子は、異なる発光材料から形成されており、また、夫々の発光波長に合わせた層構成を持っているため、劣化の速さも異なっている。このため、表示装置を長時間使用し続けると、全体として輝度が低下するだけでなく、各色の劣化特性の差のためにホワイトバランスが初期の設定から変化してしまうという問題がある。
【0004】
図15は、赤色(R)発光素子、緑色(G)発光素子及び青(B)色発光素子の輝度低下の一例である。初期の輝度に対する相対輝度の、発光が始まってからの経過時間に対する変化を示している。この例では、青(B)色発光素子の劣化が最も早く進むので、白色を表示し続けるとホワイトバランスが赤色の方向にずれていく。単位時間あたりの相対輝度の低下を劣化速度と呼ぶ。図15では、輝度が時間の指数関数として減少しており、各色の劣化速度はほぼ一定で、Bの劣化速度が最も速く、Rの劣化速度が最も遅い。Gはその中間である。
【0005】
特許文献1は、各発光素子の発光面積を異ならせて、劣化を抑制した有機EL表示装置を開示する。発光面積を変えることにより、同一輝度を得るために必要な、発光面積当たりの電流量(電流密度)が変わる。発光面積当たりの電流量が大きいほど輝度の低下が速いので、劣化の速い発光素子よりも劣化の遅い発光素子の方が面積当たりの電流量が大きくなるように夫々の発光面積を調整することによって、各発光素子の劣化速度を近い値にすることができ、先述のホワイトバランスの変化が抑制される。
【0006】
特許文献2は、蛍光体の各色に対応した表示輝度を夫々異なった比率で低下させて劣化を抑制するプラズマ表示装置を提案する。蛍光体の劣化の速さは発光する光の強度に依存し、強度を下げることで劣化を抑制することができる。そこで、画面全体、または小領域ごとの平均輝度レベルを検知して、同じ画像が長時間表示されていると判断したときに、各色の輝度を夫々異なった比率で低くする。その際、輝度の低下率を、劣化が速い蛍光体に対応する色ほど大きく設定する。劣化が速い蛍光体の劣化の進行が抑えられ、その結果、各色の劣化量を同程度にすることがでる。色別に輝度レベルを検出することにより、輝度の低下率をさらに精度よく設定することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2001−290441号公報
【特許文献2】特開2001−013914号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1では、各色の発光素子の劣化速度の比率が変わらないとして、それを開口率に置き換えているので、劣化特性が時間によって複雑に変化する場合には、長期期間に渡っての適切な効果が得られなくなる。
【0009】
特許文献2の方法では、表示画像の輝度の低下率を、劣化が速い蛍光体に対応する色ほど大きく設定する。このため、劣化の進行は遅くなるが、異なる低下率で輝度を下げるのでホワイトバランスが崩れ、色合いが変化してしまう。
【0010】
本発明は、ホワイトバランスを初期の設定から変化させることなく、発光素子の劣化を食い止め、それにより寿命の長い表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、
互いに異なる色で発光する発光素子を含む表示部、
画像信号が入力され、前記画像信号の示す各色の階調レベルに、色によらない係数を乗じて前記表示部に出力する輝度制御部、ならびに、
前記表示部で表示される画像を構成する前記画像信号の集合を統計処理し、前記画像を代表する色を決定して前記輝度制御部に出力する統計処理部、
を有する表示装置であって、
前記輝度制御部は、前記画像を代表する色に応じて、前記係数を、前記発光素子を継続的に発光させたときの輝度の劣化速度の速い順に小さく設定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、表示装置を長時間使用し続けても、色の異なる発光素子間の劣化を同じ程度に揃えることができ、色合いの変化を抑制することができる。また、輝度調整によって表示画像のホワイトバランスが変わることもないため、ユーザーに違和感を与えることがない。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の表示装置の概要図である。
【図2】本発明の表示装置の構成を示すブロック図である。
【図3】輝度制御部によって調整されるゲインの時間変化を示す図である。
【図4】統計処理部の構成を示すブロック図である。
【図5】ヒストグラムの例である。
【図6】輝度制御部の構成を示すブロック図である。
【図7】別の輝度制御部の構成を示すブロック図である。
【図8】画像の代表色を判定する手順を示すフローチャートである。
【図9】別のゲインの時間変化を示す図である。
【図10】ゲインの時間変化の変形例である。
【図11】ゲインの時間変化の別の変形例である。
【図12】デジタルカメラに取り付けられた本発明の表示装置を示す図である。
【図13】輝度の経時変化を示す図である。
【図14】実施例のゲインの時間変化を示す図である。
【図15】輝度の経時変化を例示する図である。
【図16】別の輝度の経時変化を例示する図である。
【図17】さらに輝度の経時変化を例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1(a)は本発明の表示装置11の一形態を示す図である。表示部12には、図1(b)に示す赤(R)、緑(G)、青(B)の発光素子13から構成された画素がマトリクス状に配置され、画像が表示される。一般に、画素は異なる色の発光素子を含んで構成され、R、G、B以外の色を含んでいることもある。自発光型の表示装置11に用いられる発光素子13としては、有機EL素子や蛍光体をプラズマで励起するプラズマ表示素子がある。
【0015】
表示装置11は放送波を受信し表示するテレビジョン受像機のようにそれ単体で動作する表示装置であってもよいし、カメラなど別の装置の内部に組み込まれる表示装置であっても良い。
【0016】
図2は、表示装置11の構成を説明するためのブロック図である。本発明の表示装置11は、上記の表示部12に加えて、統計処理部21と輝度制御部24を含んでいる。
【0017】
統計処理部21と輝度制御部24に入力される画像信号22は、表示部12の1つ1つの発光素子に対応した階調データを時系列で含むディジタルまたはアナログの信号である。ディジタル信号の場合、色を識別する2ビットと階調レベルを表す8ビットからなり、色別に分けた後は8ビットの階調データ信号となる。アナログ信号の場合は、画像信号22はRGB3本の並列電圧信号であり、電圧の振幅が階調データとなる。
【0018】
輝度制御部24は、画像信号22と統計処理部21の判定結果23が入力され、画像信号22に一定の係数(ゲインともいう)をかける調整を施す。この係数すなわちゲインは1以下の正数であって、画像信号の色によらない共通の値である。これを画像信号22の示す階調レベルに乗ずることによって、階調レベルが一定の割合で低輝度側に縮小された信号25が生成され、表示部12に出力される。これを受けた表示部12では、表示される画像の輝度が、全体として、上のゲインに等しい低下率で低下する。
【0019】
表示部12に表示される1フレームの画像は、1フレーム期間に時系列で送られてくる画像信号全体で構成される。統計処理部21は、1つの画像について、その画像の代表的な色が何色であるかを判定する。本実施形態においては、互いに異なる色の発光素子のうちで、画像全体として見たときに最も高輝度で発光している発光素子の色が、その画像を代表する色(以下代表色と言う)として決定される。表示部12に表示されている画像を見たときに、その画像を特徴づける最も支配的な色が、その画像の代表色となる。
【0020】
統計処理部21は、表示部12の画像を構成する画像信号全体の集合を母集団として、画像信号に含まれる階調データを統計処理し、階調レベルの平均値や中間値などの統計量を算出する。異なる色についての統計量を比較して最も高輝度の色を決定し、その画像の代表色と判定する。また必要に応じて2以上の統計量の比較によって代表色を決定してもよい。代表色は統計的に決定されるので、個々の発光素子の輝度の高低によらず、画像全体を特徴づける色が代表色として決定される。
【0021】
画像を代表する色が輝度劣化の速い色である場合には、そのまま同じ画像が表示されつづけると劣化が速く進んでしまう。そこで、画像が表示された表示部の輝度を速やかに低くして、劣化の進行を遅くする。画像の代表色が、輝度劣化の速い色以外の色である場合には、劣化はあまり進行しないので、そのまま表示された画像の輝度を維持するか、輝度をわずか低くするだけにする。
【0022】
このように、画像の代表色を判定し、その色に応じて表示される画像の輝度を低下させることによって、劣化の速い色の進行を遅くし、すべての色の劣化の進行を同程度に揃えることができる。これにより、劣化速度の大きい色だけ劣化が速く進んでホワイトバランスがずれるということが抑制される。また、色によらず各色一様に輝度を低くするので、それによって白色が赤みがかったり自然画像の色あいが変化することがない。
【0023】
輝度調節は、階調データに乗ずる係数を、表示画像に応じて適宜選択することにより行われる。係数は、輝度制御部24に色の数だけ用意されており、各色の劣化速度に対応した大きさになっている。すなわち、劣化速度が速い色ほど係数は小さく設定される。輝度制御部は、画像の代表色の決定を受けて、用意された中からその色の係数を選択し、これを階調データに乗ずる係数とする。
【0024】
図3は、表示された画像の輝度調節の様子を示す図である。階調データに乗ずる係数すなわちゲインは表示時間とともに徐々に低くなっていく。
【0025】
時間あたりの低下率は画像の代表色によって異なり、劣化速度が大きい色ほど低下率が大きい。代表色が劣化の最も速い色に一致したとき、輝度はゲイン51に示すように最も大きく低下する。表示された画像の代表色が2番目に劣化の速い色であるときには、ゲイン52に示すようにそれよりは緩やかに低下させる。表示された画像の代表色が一番劣化の遅い色であるときには、ゲイン53に示すように最も緩やかに低下させる。ゲイン低下率は劣化速度によってその大きさが決められる。
【0026】
図3に示すように、ゲインは、画像の表示が開始された時に1にして、同じ画像の表示が続く限り時間に応じて下げていくようにする。このため、輝度制御部24は、画像の表示開始からの時間をカウントするカウンタを備え、さらに、このカウンタの出力と統計処理部の出力とからゲインを求めるゲインテーブルを記憶していることが好ましい。画像が切り替わった時点で、ゲインは1にリセットされる。
【0027】
図3では、ゲインを時間とともに直線的に減少させているが、図10のようにステップ的に時間変化させてもよい。あるいは、図11のように輝度調整の開始タイミングに差をつけてもよい。決められた表示時間が来たときにゲインを設定し、その後は次に設定されるまでそのゲインを維持する場合には、図10のようにステップ的になる。輝度が低ければ劣化はほとんど進行しないので、ゲイン設定を1回だけ行い、その後はずっとそのゲインを維持するようにすることもできる。ただし、輝度の低下が使用者に認識されて違和感をもたれることのないように、1ステップでの低下の幅を小さくすることが好ましい。
【0028】
(統計処理部)
図4は統計処理部21の内部を示す図である。
統計処理部21は、ヒストグラム作成部31及びヒストグラム比較部33を備える。ヒストグラム作成部31は、入力される画像信号を色成分に分解して、色別に、1フレームの画像信号に含まれる階調データのヒストグラム(図中にR、G、Bで示す)を作成する。また、RGBのヒストグラムを足し合わせた合成ヒストグラム(図中にRGBで示す)を作成する。
【0029】
ヒストグラムは、1つの画像を構成する表示部12の全画素の階調データを母集団として、各階調レベルの出現回数をカウントした分布図である。図5は、画像信号が256階調の階調データである場合に、ある画像の1つの色に対して作成されたヒストグラムである。横軸は0から255までの階調レベル、縦軸は各階調レベルの出現回数を表す。
【0030】
ヒストグラム比較部33は、作成されたヒストグラムの情報32を受け取り、そのヒストグラムから統計量を抽出し、異なる色の統計量を比較することによって画像を代表する色を判定する。ここでは統計量として平均値または中間値を考える。平均値は、出現回数で重み付けして平均を取った階調レベルの値であり、中間値は、画像信号を階調レベルの高い方から順に並べたときに真中にくる画像信号の階調レベルである。図4に示したヒストグラムの平均値は102、中間値は97であった。
【0031】
(輝度制御部)
図6は輝度制御部24の内部構成を示すブロック図である。輝度制御部24は少なくともゲイン乗算部41とゲイン記憶部42と表示時間カウンタ部43とを備える。
【0032】
ゲイン記憶部42には、代表色がRである場合、Gである場合、Bである場合それぞれの、表示時間ごとのゲインを記録したゲインテーブル(以下テーブルという)を保持している。テーブルに保持された表示時間とゲインの関係は、図3に示されるゲインの時間変化に一致する。すなわち、テーブルに記されたR,G,Bのゲイン値は、1つの表示時間で見ると劣化速度の順であって、劣化速度が速い色ほどゲイン値は小さい。劣化速度が同じ色のゲイン値は等しい。
【0033】
このテーブルは製品出荷前にROMに記録される。テーブルの変わりに、色と表示時間が入力されたときにゲインを計算して出力するゲイン演算回路を持っていてもよい。図3のようにゲインの低下率が一定のときは、演算によるほうが簡単である。
【0034】
ゲイン乗算部41は入力された画像の代表色を判定した結果23をゲイン記憶部42に送る。表示時間カウンタ部43は画像の表示が開始された時点からカウントを始め、同じ表示が続いた時間をカウントしゲイン記憶部42に送る。ゲイン記憶部42は、その表示時間における、送られた判定結果23で示される代表色に対応するゲイン値をテーブルから読み取り、ゲイン乗算部41に送り返す。ゲイン乗算部41は送り返された値を画像信号22に乗算し、結果である信号25を表示部12に送信する。
【0035】
表示時間カウンタ部43は、外部からのリセット信号(図示せず)が入力されてからの時間をカウントしても良い。表示装置11をデジタルカメラに組み込む場合には、シャッターボタンを押した信号を表示時間カウンタ部43に入力し、その時刻からの時間をカウントしてもよい。表示装置がテレビジョン受像機の場合は、画像信号22から、シーンの切り替わりを検出し、その時点からの時間をカウントしても良い。
【0036】
劣化特性は、あらかじめ図15のように測定されており、各色の劣化の速さは既知である。
【0037】
図15では劣化速度は一定であるが、発光素子によってはある時間以後は劣化の進行が遅くなるなど、劣化速度が変化することもある。図16は、当初の劣化速度はR>B>Gの順だが、200時間経過後、Rの劣化速度が小さくなる有機EL素子の劣化特性を示す。このように、表示装置の使用時間が経過するにつれて劣化速度が変化する場合は、積算使用時間を計測し、表示装置内に記憶されている劣化速度と積算使用時間の関係を用いて、その時々の劣化速度の変化に対応するようにしておくことが好ましい。
【0038】
図7は、図6とは別の輝度制御部24の構成を示すブロック図である。図6と同じ部分には同じ符号を付した。
【0039】
図7の輝度制御部24は、表示装置が出荷されてからの使用時間の積算値、すなわち積算使用時間を計測する積算使用時間カウンタ44を備える点が図6と異なる。積算使用時間カウンタ44から積算使用時間のデータがゲイン記憶部42に送られると、それに合わせたテーブルがゲイン乗算部に送られる。図17のように各発光素子の劣化特性が、積算の表示時間により初期段階から大きく変化する場合であっても、積算の表示時間がある時間tに達したのを境に別のテーブルに更新することで継続的に効果が得られる。
【0040】
なお、輝度制御部24と統計処理部21は、図2のように表示装置11の内部にあってもよいが、デジタルカメラ等に表示装置11が組み込まれる場合は、輝度制御部24または統計処理部21を表示装置11の外に、デジタルカメラの信号処理回路の一部として設置してもよい。あるいは、ヒストグラム作成部31だけが表示装置11外に設置され、ヒストグラム比較部33とは表示装置11内にあってもよい。
【0041】
(代表色判定手順)
以下、画像の代表色を判定する手順を、例をあげて説明する。
【0042】
[例1]
図8(a)は、中間値を用いて画像の特徴を判定する手順、(b)は平均値を用いて画像の特徴を判定する手順を示すフローチャートである。図8(a)では、赤、緑、青の各ヒストグラムの中間値をR,G,Bとし、(b)では、平均値をr,g,bとしてある。以下中間値を用いて判定する手順について説明するが、平均値を用いる場合も同様である。
【0043】
まずR>Gかどうかの判定を行なう。Y(Yes)であれば次にR−G>Xであるかどうかの判定を行い、N(No)であれば次にG−R>Xであるかどうかの判定を行なう。Xは2つの値の離散の程度を表す数であり、本実施形態ではX=30と定められている。この判定でN(No)であれば、「RはGと同等である:R〜G」との結果を出力し、Y(Yes)であれば、「RはGより多い:R>G」あるいは「RはGより少ない:R<G」との結果を出力する。
同様の手順でRとB、GとBの比較を行う。
【0044】
この結果、輝度の大小関係は
(1)R>G>B、
(2)R>B>G、
(3)R>G〜B
(4)G>R>B
(5)G>B>R
(6)G>R〜B
(7)B>R>G
(8)B>G>R
(9)B>R〜G
(10)R〜G>B
(11)G〜B>R
(12)R〜B>G
(13)R〜G〜B
の13通りのいずれかになる。なお、記号〜は輝度が同程度であることを示す。
【0045】
(1)−(3)の場合はRが代表色と判定され、(4)−(6)のときはGが代表色と判定され、(7)−(9)のときはBが代表色と判定される。
【0046】
(10)−(13)の場合は代表色の候補が複数あり、判定ができないが、その場合は両方の色が代表色であるとしてそのまま輝度制御部24に送る。(10)−(13)のように、代表色が複数となる判定結果が出たときは、それを受けた輝度制御部24が、あらかじめ記憶された3色の劣化速度のデータから、劣化速度の速いほうの色(3色以上あるときは一番速い色)を選択し、その色が代表色であるとしてそれに対応するゲインが選択される。
【0047】
以上説明したように、画像を特徴づける色を判定して、それに基づいて3色の輝度を一様に下げるので、ホワイトバランスを崩すことなく劣化の進行を効果的に抑えることができる。
【0048】
[例2]
図15の劣化特性をみると、Rの劣化速度が飛び離れて遅く、GとBの劣化速度はRよりかなり速い。またGとBの劣化速度は近い値である。
【0049】
このような場合は、画像の代表色がRであるか否かの判定だけを図8(a)の手順で行う。Y(Yes)のとき、代表色はRである(判定結果Aとする)。このとき画像の劣化は小さいと予想されるので、ゲイン52を緩やかに低下させる。
【0050】
N(No)のときは、代表色はGまたはBであるか、あるいは複数の色である(判定結果Bとする)。複数の色である場合でも、その中には少なくともGとBのいずれか一方が含まれるから、画像の劣化は速いと予想される。したがってゲイン51を速やかに低下させる。RとGの劣化速度がほぼ等しいので、どちらが画像の代表色であっても同じゲインを用いた輝度調整でよい。したがってYesの場合も含め2通りのゲイン調整ですむ。GとBのいずれが代表色であるかの判定も省略することができる。
【0051】
[例3]
図9は、図15や図16とは別の、図17に示す劣化特性をもつ有機EL表示装置の輝度調節の様子を示す図である。この劣化特性は、Bの劣化速度が飛び離れて速く、RとGの劣化速度はBよりかなり遅い。またRとGの劣化速度は同程度である。
【0052】
このような場合は、画像の代表色がBであるか否かの判定だけを図8(a)と同様の手順で行い、Y(Yes)であるとき、ゲイン低下を急にしてゲイン51を速やかに下げる。N(No)のときは、ゲイン低下を緩やかにしてゲイン52をあまり下げない。後者のばあい、RとGの劣化速度がほぼ等しいので、どちらが画像の代表色であっても同じゲインを用いた輝度調整でよい。したがって2通りのゲイン調整ですむ。RとGのいずれが代表色であるかの判定も省略することができる。
【0053】
[例4]
どの色のヒストグラムも1つの中心の周りにほぼ対称に分布した形状であるときは、平均値と中間値は同程度の値になる。そのときは、中間値と平均値のどちらを用いて判定しても変わりはない。
【0054】
これに対し、ヒストグラムが2つのピークをもつ場合には、平均値は2つのピークの間にあるが、中間値はいずれかのピークの中にあるというように、平均値と中間値がかけ離れた値になることがある。このような画像が多い場合には、中間値と平均値の両方をもちいて判定することが好ましい。すなわち、図8(a)と(b)の比較を並行して行い、両者が同じ結果を出したときにそれを採用する。
【0055】
中間値比較ではR>Gであるが、平均値比較ではr<gであるというように矛盾する判定になるときは、両方の色を特徴的な色と判定し、輝度制御部24にその結果を送る。輝度制御部では、劣化速度の大きいほうを代表色と判断し、それに応じたゲインを選択する。
【0056】
以上例にあげた判定の手順は、表示装置の持つ劣化特性と照らし合わせて、その都度、最も効果が大きく見込める代表値と判定条件を選択すればよい。表示される画像が予め想定されるような表示装置においては、それを考慮して判定手順を決めることもできる。
【0057】
R,G,Bの入力画像信号が総じて高く全面白色点灯に近い画像を表示したときには、ゲインを低下させるとユーザーに認知されやすい。これを防ぐため、例1から例4のすべてについて、白色表示に近いことを判定する閾値Zを設定し、ヒストグラム比較部33で、R>ZかつG>ZかつB>Zであるか否かの判定を優先して行うようにしてもよい。この判定でY(Yes)と判定された表示画像は、N(No)と判定された表示画像より、ゲインの大きさを大きく(1に近く)する。その際のゲインは輝度の減少率を1ステップあたり3%以下とすることでユーザーに変化が認知されにくくなり、さらには、1ステップあたり1.5%以下とすることで殆ど認知されなくなる。
【0058】
表示画像として、テレビ放送時のテロップや放送局マークや、デジタルカメラのモニタに表示される各種情報のように常に同じ場所に同じパターンが表示されるとき、特定の発光素子の劣化が進行することがある。この点を考慮して、輝度制御部24は場所ごとの入力信号に対するゲインを異ならせるようにしてもよい。以下これについて説明する。
【0059】
図12は、デジタルカメラに取り付けられた表示装置11である。表示部12であるモニタ画面に半固定的に表示される撮影日時や撮影条件などの情報103は、表示部12の周辺領域102に配置されることが多いため、周辺領域102の発光素子の劣化が特に進行しやすい。このような場合は、周辺領域102の発光素子に対応する画像信号22の階調データのゲインゲインの大きさを、中心領域101よりも小さくする。これにより、表示時間の経過と共に中心領域101より周辺領域102の輝度が大きく低下し、表示領域の面内の劣化の速さの違いを抑制することができる。
【0060】
固定的な表示情報の位置によっては、逆に、中心領域101に比べて周辺領域102では乗算するゲインの大きさを大きくしてもよいし、場所の分け方は必ずしも中心領域と周辺領域という分類に限定されず、上半分と下半分、左右三分割などのような分類であってもよい。
以下、本発明の有機EL表示装置の具体的な実施例について説明する。
【実施例】
【0061】
本実施例は、図1の構成を有する有機EL表示装置である。統計処理部21は図4に示す構成を有し、例1の判定手順を用いて代表色を判定する。輝度制御部24は図7の構成で、1500時間までの劣化速度データとゲインテーブルが記憶されている。
【0062】
表示装置11は、赤、緑、青各色の有機EL素子からなり、色はCIExy座標において
赤:(x,y)=(0.67、0.33)、
緑:(x,y)=(0.25、0.69)、
青:(x,y)=(0.14、0.08)
であり、電流に対する発光効率は
赤:18cd/A、
緑:21cd/A、
青:2.9cd/A
である。
【0063】
白色をCIExy座標において白:(x,y)=(0.313、0.329)、輝度500cd/mとすると、各色の最大輝度は、赤は132cd/m、緑は315cd/m、青は53cd/mとなり、各色に流す電流の比は、赤:緑:青≒1:2:2.5となる。
【0064】
また表示画像の一例として、赤系の画像、緑系の画像、青系の画像、白系の画像に大きく分類される画像を、この順に、1回当たり30秒表示し、計1500時間繰り返す場合を想定した。平均的には全面白色点灯、色度(x,y)=(0.313、0.329)、輝度500cd/mで表示した場合と同等の劣化特性となるようにした。
【0065】
ゲイン調整を行わず、各画像をそのままの輝度で30秒間点灯し続けた場合の、輝度劣化特性を図13に示す。
【0066】
200時間経過した時点では、赤の輝度が0.5%、緑の輝度が2.5%、青の輝度が3%それぞれ低下した。ホワイトバランスの変化は、Δxy=0.0021である。また、1500時間経過した時点では、赤が1%、緑が12%、青が7%の輝度低下であった。ホワイトバランスの変化は、Δxy=0.0089である。
【0067】
ヒストグラム比較部で表示画像を判定した結果、各画像の代表色は、赤系の画像では赤(判定結果A)、緑系の画像では緑(判定結果B)、青系の画像では青(判定結果B)、白系の画像は白色を判定する判定を入れたため白(判定結果C)となった。
【0068】
これをもとに、図14のようにゲインを調整した。すなわち、判定結果Aのときは、代表色が赤でその劣化速度は小さいから、ゲインの低下を緩やかにする。判定結果Bのときは、代表色は緑または青で、それらはともに劣化速度が速いので、ゲインを速やかに低下させる。判定結果Cのときは輝度低下を最も緩やかにする。
【0069】
このような調整を施した場合には、200時間経過後、赤の輝度が0.9%、緑の輝度が1.9%、青の輝度が2.2%それぞれ低下した。ホワイトバランスの変化はΔxy=0.0009である。
【0070】
1500時間経過後は、赤が2.5%、緑が9.2%、青が5.9%それぞれ輝度が低下した。ホワイトバランスの変化はΔxy=0.0053である。
【0071】
以上より、200時間と1500時間のいずれの時点においても、ホワイトバランスの変化量は輝度調整を行わないときに比べて小さい。すなわち、輝度調整を行うことによってホワイトバランスのずれが抑制されている。
【符号の説明】
【0072】
11 表示装置
12 表示部
13 発光素子
21 統計処理部
22 画像信号
23 判定結果
24 輝度制御部
41 ゲイン乗算部
42 ゲイン記憶部
43 表示時間カウンタ
44 積算使用時間カウンタ
101 表示部の中心領域
102 表示部の周辺領域
103 日付表示

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに異なる色で発光する発光素子を含む表示部、
画像信号が入力され、前記画像信号の示す各色の階調レベルに、色によらない係数を乗じて前記表示部に出力する輝度制御部、ならびに、
前記表示部で表示される画像を構成する前記画像信号の集合を統計処理し、前記画像を代表する色を決定して前記輝度制御部に出力する統計処理部、
を有する表示装置であって、
前記輝度制御部は、前記画像を代表する色に応じて、前記係数を、前記発光素子を継続的に発光させたときの輝度の劣化速度の速い順に小さく設定することを特徴とする表示装置。
【請求項2】
前記統計処理部が、色別に前記画像信号の階調レベルの中間値または平均値を算出し、異なる色の前記中間値または平均値を比較して、前記中間値または平均値が最も高い色を前記画像を代表する色とすることを特徴とする請求項1に記載の表示装置。
【請求項3】
前記輝度制御部が、前記画像の表示時間を計測する表示時間カウンタを有し、前記係数を、前記表示時間カウンタの出力する表示時間が長くなるにつれて減少するように設定することを特徴とする請求項1または2に記載の表示装置。
【請求項4】
前記輝度制御部が、前記統計処理部および前記表示時間カウンタの出力を、前記係数と対応づけるテーブルを有していることを特徴とする請求項3に記載の表示装置。
【請求項5】
前記輝度制御部は、前記表示部を使用した時間の積算値を計測する積算使用時間カウンタを有し、前記積算使用時間カウンタの出力があらかじめ決められたに達したときに前記テーブルを更新することを特徴とする請求項4に記載の表示装置。
【請求項6】
前記輝度制御部は、前記表示部の周辺領域に対応する画像信号の階調レベルに乗ずる前記係数を、前記表示部の中心領域に対応する画像信号の階調レベルに乗ずる前記係数より小さく設定することを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項に記載の表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2012−58516(P2012−58516A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−201994(P2010−201994)
【出願日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】