説明

表面が黒化処理された銅金属の製造法、導体層パターン付き基材の製造法、導体層パターン付き基材及びそれを用いた透光性電磁波遮蔽部材

【課題】 表面が黒化された銅金属層を量産性よく製造する方法を提供する。
【解決手段】 めっき用導電性基材上にめっきにより銅金属を析出させ、その表面を黒化処理する表面が黒化処理された銅金属の製造方法において、第1電流密度の下に層状に銅金属を析出させる銅金属層形成工程、及び、第1の電流密度よりも大きい第2の電流密度の下に上記銅金属層の表面に、その表面が黒色になるように銅金属を析出させる黒化処理工程を、一つのピロリン酸銅めっき浴中にて行うことを特徴とする表面が黒化処理された銅金属層の製造方法。めっき用導電性基材は、パターン状のめっき部を有する導電性基材であってもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面が黒化処理された銅金属の製造法、導電性を有しかつ光透過性を有するようにパターニングされた導体層パターン付き基材の製造法、導体層パターン付き基材及びそれを用いた透光性電磁波遮蔽部材に関する。
【背景技術】
【0002】
銅箔は、一般に、不溶性のカソード体と、同じく不溶性のアノード体との間に、これら金属のイオンを含む所定の電解液を供給しながら電解反応を行うことにより目的とする金属をカソード体の表面に所望の厚みだけ電析させて金属導体層を箔として形成し、ついで形成されたその金属導体層をカソード体の表面から剥離することによって製造されている。この場合カソード体としては、ドラム形状のものまたは板状のものが用いられている。
このようにして得られた銅箔は、表面の光沢を消し、また、樹脂への接着性を改良する目的で、その表面を黒化処理されることが知られている。
上記のような銅箔の製造方法を応用して特許文献1に示されるように同一の電解液を使用しつつ二つもしくはそれ以上のアノードを一つのドラム状カソードに対して配置し、めっき浴中にドラム状カソードを半分程度浸漬し、それを回転させつつ第1の電流密度により銅箔を製箔した後、引き続き、第2の電流密度を印加してその表面に微粒子上の銅を析出させることにより、つや消し表面のある銅箔を製造する方法が知られている。しかし、本発明者らの知見によれば、特許文献1の方法により、表面を黒化することは困難である。
【0003】
銅箔としては、銅張積層板の材料となる銅箔のようなべた状の銅箔以外に、電磁波のシールドに用いられるメッシュ状の銅箔などのパターン化された銅箔などがある。
【0004】
公共施設、ホール、病院、学校、企業ビル、住宅等の壁面、ガラス窓、樹脂パネル、電磁波を発生するディスプレイの表示面等を電磁波遮蔽する方法は、従来種々提案されている。例えば、被遮蔽面上に電磁波遮蔽塗料を全面塗布する方法、被遮蔽面上に金属箔を貼り合わせる方法、金属めっきされた繊維メッシュを樹脂板に熱ラミネートしてなる電磁波遮蔽シートを、被遮蔽面に貼り合わせる方法、導電性繊維をメッシュ状に編んだものを被遮蔽面に貼り合わせる方法等が一般的に行われている。
【0005】
これらのうち、透明ガラス面、透明樹脂パネル面、陰極線管(CRT)やプラズマディスプレイパネル(PDP)などのディスプレイの表示面等を電磁波遮蔽する場合においては、電磁波遮蔽用部材がなるべく薄いことが要求されるとともに、光透過性(透明性)と、これに相反する電磁波遮蔽性とをバランスよく両立させることができるものとして、金属メッシュを電磁波シールド層として有する電磁波遮蔽用部材が主流になっている。
【0006】
特許文献2にはメッシュ状に金属電着が可能な電着基板上に金属電解液を使用して金属を電着し、接着剤を介して電磁波遮蔽基板に接着転写して電磁波遮蔽板を作製する方法が記載されている。前記の電着基板は、金属板等の導電性基板の上に、電着を阻害する絶縁性膜でメッシュパタ−ンと逆のパターンを形成し、この結果、メッシュ状に金属電着が可能な電着部を露出させるようにして作製される。この電着基板を用いた場合、数回〜数十回程度の繰り返し使用は可能であるが、数百回〜数千回繰り返し使用が出来ず量産レベルにはならないという問題がある。これは、電着基板上のメッシュパターンを形成する絶縁膜が、接着転写により剥離応力を受け、少々の繰り返し使用でめっき用導電性基材から絶縁膜が剥離してしまうためである。
【0007】
前記特許文献2記載の転写法において、金属電着を行う工程と黒化処理する工程は別工程である。金属電着を行う工程で使用する溶液と黒化処理する工程で使用する溶液は通常お互いにめっき槽内で混ざり合うことが許されず、同一工程で行うことができない。そのために十分な水洗、さらには黒化処理の前処理工程が必要となる場合があり、製造に要する時間及びコスト、環境負荷は小さくない。
【0008】
【特許文献1】特表2002−506484号公報
【特許文献2】特開平11−119675号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、表面が黒化された銅金属層又は銅金属を効率よく生産する方法を提供することを目的とする。
本発明は、また、めっき用導電性基材上にパターン上の金属を電着析出させる工程と析出させた金属の表面を効率的に黒化処理する工程を行い、黒化処理された導体層パターン付き基材を生産性良く製造する方法を提供することを目的とする。
本発明は、これらの方法において、さらに、電着基板(めっき用導電性基材)が繰返しの使用に耐え、量産性に優れた方法を提供するものである。
本発明は、上記の導体層パターン付き基材の製造法において、さらに、電着析出した金属の転写がより円滑に行われる導体層パターン付き基材の製造方法を提供するものである。
本発明は、また、このような方法により得られる電磁波シールド性及び光透過性が優れる導体層パターン付き基材及びこれを用いた電磁波遮蔽部材を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は次のものに関する。
1. めっき用導電性基材上にめっきにより銅金属を析出させ、その表面を黒化処理する表面が黒化処理された銅金属の製造方法において、第1電流密度の下に層状に銅金属を析出させる銅金属層形成工程、及び、第1の電流密度よりも大きい第2の電流密度の下に上記銅金属層の表面に、その表面が黒色になるように銅金属を析出させる黒化処理工程を、一つのピロリン酸銅めっき浴中にて行うことを特徴とする表面が黒化処理された銅金属層の製造方法。
2. 銅金属層形成工程を第1の電流密度を含む第1の電着領域において行い、黒化処理工程を第2の電流密度を含む第2の電着領域において行う表面が黒化処理された銅金属層の製造方法。
3. 黒化処理工程において、明度25の黒色を背景にして、開口率が50%の光透過部の明度が25〜50、又はa*及びb*が共に5以下になるように銅金属を析出させる項1又は2記載の表面が黒化処理された銅金属層の製造方法。
4. 黒化処理工程において、明度25の黒色を背景にして、開口率が40%以上の光透過部の色度a*及びb*が共に2.8以下になるように金属を析出させる項1又は2記載の表面が黒化処理された銅金属層の製造方法。
5. 黒化処理工程において、開口率が40%未満であって、明度25の黒色を背景にした光透過部又は光未透過部の色度a*及びb*が共に5以下になるように金属を析出させる項1又は2記載の表面が黒化処理された銅金属層の製造方法。
6. ピロリン酸銅メッキ浴が添加剤としてモリブデン等VI族元素、及びコバルト、ニッケル等VIII族元素のうち一つ又はそれ以上を含む合金めっき浴である項1〜5のいずれかに記載の表面が黒化処理された銅金属層の製造方法。
7. 第1の電流密度が0.5〜40A/dmである項1〜6のいずれか1項に記載の表面が黒化処理された銅金属層の製造方法。
8. めっき用導電性基材が、パターン状のめっき部を有する導電性基材である項1〜7のいずれか1項に記載の表面が黒化処理された銅金属層の製造方法。
9. めっき用導電性基材が、パターン状のめっき部として凸部のパターンを有する導電性基材である項8記載の表面が黒化処理された銅金属層の製造方法。
10. めっき用導電性基材が、凸部のパターンによって描かれる幾何学図形状の凹部を有する導電性基材であって、その凸部の先端部分に銅金属を析出させる項9記載の表面が黒化処理された銅金属層の製造方法。
11. めっき用導電性基材は、その凹部が絶縁層で被覆されているが凸部の先端部分は露出しており、その露出部分の幅が1μm〜40μmであって、凹部に絶縁層を施した後の凸部の高さが、10μm以上である項10に記載の表面が黒化処理された銅金属層の製造方法。
12. めっき用導電性基材の凹部に絶縁層を施した後の凸部の高さが、10μm以上である項11記載の表面が黒化処理された銅金属層の製造方法。
13. めっき用導電性基材の絶縁層の厚さが凸部側面におけるその端付近では10μm以下である項11又は12に記載の表面が黒化処理された銅金属層の製造方法。
14. めっき用導電性基材の凸部の間隔が100μm〜1000μmである項7〜10のいずれか1項に記載の表面が黒化処理された銅金属層の製造方法。
めっき用導電性基材の凸部の上端から0.5〜5μm低い位置よりも低い位置の凹部表面に絶縁層が形成されている項9〜13のいずれか1項に記載の表面が黒化処理された銅金属層の製造方法。
15. めっき用導電性基材が、パターン状のめっき部として凹部のパターンを有する導電性基材である項8記載の表面が黒化処理された銅金属層の製造方法。
16. めっき用導電性基材が回転体、または回転体に取り付けられた平板である項1〜15のいずれか1項に記載の表面が黒化処理された銅金属層の製造方法。
17. 導電性基材として、回転体からなる導電性基材又は回転体に取り付けた導電性基材を使用し、その一部をメッキ液に浸漬させ、回転体を回転させつつ、金属パターン作製工程及び転写工程を行う項1〜15のいずれか1項に記載の表面が黒化処理された銅金属の製造方法。
18. 銅金属層形成工程において、導電性基材のめっき部において銅金属の厚さが0.1〜20μmになるように銅金属を析出させる項1〜17のいずれか1項に記載の表面が黒化処理された銅金属層の製造方法。
19. 前記第1の電流密度の下に銅金属層を形成する銅金属層形成工程を行うための第1の陽極と、前記第2の電流密度の下に前記導電性金属層の表面にその表面が黒色になるように金属を析出させる黒化処理工程を行うための第2の陽極とが、互いに離れて前記メッキ液の中に浸漬されており、前記各陽極の間には、絶縁体で構成された遮断部材が設けられていることを特徴とする項1〜18のいずれかに1項に記載の表面が黒化処理された銅金属層の製造方法。
20. 前記第1の電流密度の下に銅金属層を形成する銅金属層形成工程を行うための第1の陽極と、前記第2の電流密度の下に前記銅金属層の表面にその表面が黒色になるように金属を析出させる黒化処理工程を行うための第2の陽極とが兼用されており、前記第1の電流密度の下で前記導電層形成工程の形成後、前記第2の電流密度の下で前記黒化処理工程を行うことを特徴とする項1〜18のいずれか1項に記載の表面が黒化処理された銅金属層の製造方法。
21. 項1〜20のいずれか1項に記載の表面が黒化処理された銅金属層の製造方法を行った後、表面が黒化処理された銅金属層をめっき用導電性基材から剥離することを特徴とする表面が黒化処理された銅金属の製造方法。
22. パターン状のめっき部を有するめっき用導電性基材のめっき部に電気めっきにより銅金属を析出させる金属パターン作製工程及び導電性基材上に析出した銅金属を接着性支持体に転写する転写工程を含む導体層パターン付き基材の製造方法において、
金属パターン作製工程が第1の電流密度の下に銅金属層を形成する導電層形成工程、及び、前記第1の電流密度よりも大きい第2の電流密度の下に前記銅金属層の表面に、その表面が黒色になるように金属を析出させる黒化処理工程を、一つのピロリン酸銅メッキ浴中にて行うことを特徴とする導体層パターン付き基材の製造方法。
23. 導電層形成工程を第1の電流密度を含む第2の電着領域において行い、黒化処理工程を第2の電流密度を含む第2の電着領域において行う項22記載の導体層パターン付き基材の製造方法。
24. 黒化処理工程において、明度25の黒色を背景にして、開口率が50%の光透過部の明度が25〜50、又は色度a*及びb*が共に5以下になるように金属を析出させる項22又は23記載の導体層パターン付き基材の製造方法。
25. 黒化処理工程において、明度25の黒色を背景にして、開口率が40%以上光透過部の色度a*及びb*が共に2.8以下になるように金属を析出させる項22又は23記載の導体層パターン付き基材の製造方法。
26. 黒化処理工程において、開口率が40%未満であって、明度25の黒色を背景にした光透過部又は光未透過部の色度a*及びb*が共に5以下になるように金属を析出させる項22又は23記載の導体層パターン付き基材の製造方法。
27. ピロリン酸銅メッキ浴が添加剤としてモリブデン等VI族元素、及びコバルト、ニッケル等VIII族元素のうち一つ又はそれ以上を含む合金めっき浴である項22〜26のいずれかに記載の導体層パターン付き基材の製造方法。
28. 第1の電流密度が0.5〜40A/dmである項22〜27のいずれか1項に記載の導体層パターン付き基材の製造方法。
29. めっき用導電性金属が、パターン状のめっき部として凸部のパターンを有するものである項22〜28のいずれかに記載の導体層パターン付き基材の製造方法。
30. めっき用導電性金属が、凸部のパターン及びそれによって描かれる幾何学図形状の凹部を有する導電性基材であって、その凸部の先端部分に銅金属を析出させる項29記載の導体層パターン付き基材の製造方法。
31. めっき用導電性基材の凹部が絶縁層で被覆されているが凸部の先端部分は露出しており、その露出部分の幅が1μm〜40μmであって、凹部に絶縁層を施した後の凸部の高さが、10μm以上である項29又は30のいずれかに記載の導体層パターン付き基材の製造方法。
32. めっき用導電性基材の凹部に絶縁層を施した後の凸部の高さが、10μm以上である項31記載の導体層パターン付き基材の製造方法。
33. めっき用導電性基材の絶縁層の厚さが凸部側面におけるその端付近では10μm以下である項31又は32に記載の導体層パターン付き基材の製造方法。
34. めっき用導電性基材の凸部の間隔が100μm〜1000μmである項29〜33のいずれか1項に記載の導体層パターン付き基材の製造方法。
35. めっき用導電性基材の凸部の上端から0.5〜5μm低い位置よりも低い位置の凹部表面に絶縁層が形成されている項29〜34のいずれか1項に記載の導体層パターン付き基材の製造方法。
36. めっき用導電性基材が、パターン状のめっき部として凹部のパターンを有する導電性基材である項22〜28のいずれか1項に記載の導体層パターン付き基材の製造方法。
37. 凹部の幅が1〜60μm及び凹部の間隔が50〜1000μmである項36記載の導体層パターン付き基材の製造方法。
38. 導電性基材が回転体、または回転体に取り付けられた平板である項22〜37のいずれか1項に記載の導体層パターン付き基材の製造方法。
39. 導電性基材として、回転体からなる導電性基材又は回転体に取り付けた導電性基材を使用し、その一部をメッキ液に浸漬させ、回転体を回転させつつ、金属パターン作製工程及び転写工程を行う項22〜38のいずれか1項に記載の導体層パターン付き基材の製造方法。
40. 導電層形成工程において、導電性基材のめっき部において金属の厚さが0.1〜20μmになるように金属を析出させる項22〜39のいずれか1項に記載の導体層パターン付き基材の製造方法。
41. めっきに用いる金属が、20℃における体積抵抗率で20μΩ/cm以下の金属を少なくとも1種類以上含むものである項22〜40のいずれか1項に記載の導体層パターン付き基材の製造方法。
42. 項22〜項41のいずれか1項に記載の導体層パターン付き基材の製造方法において、
前記第1の電流密度の下に導電性金属層を形成する導電層形成工程を行うための第1の陽極と、前記第2の電流密度の下に前記導電性金属層の表面にその表面が黒色になるように金属を析出させる黒化処理工程を行うための第2の陽極とが、互いに離れて前記メッキ液の中に浸漬されており、前記各陽極の間には、絶縁体で構成された遮断部材が設けられていることを特徴とする導体層パターン付き基材の製造方法。
43. 項22〜項41のいずれか1項に記載の導体層パターン付き基材の製造方法において、
前記第1の電流密度の下に導電性金属層を形成する導電層形成工程を行うための第1の陽極と、前記第2の電流密度の下に前記導電性金属層の表面にその表面が黒色になるように金属を析出させる黒化処理工程を行うための第2の陽極とが兼用されており、前記第1の電流密度の下で前記導電層形成工程の形成後、前記第2の電流密度の下で前記黒化処理工程を行うことを特徴とする導体層パターン付き基材の製造方法。
44. 項22〜43のいずれか1項に記載の方法により製造された導体層パターン付き基材。
45. 項44記載の導体層パターン付き基材の導体層パターンを有する面を透明基板に貼りあわせてなる透光性電磁波遮蔽部材。
46. 項44に記載の導体層パターン付き基材の導体層パターンを樹脂で被覆してなる透光性電磁波遮蔽部材。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、銅金属層の作製とその表面の黒化処理を一つのめっき浴中で行うことができるので、表面が黒化された銅金属層又は銅金属を生産性良く作製することができる。これにより、また、導体層パターン付き基材を生産性よく作製することができる。
【0012】
めっき部がパターン化された凸部であるめっき用導電性基材を使用し、その凸部に対応した凹部に絶縁層を有する場合は、不要な金属めっきがなく、上記の方法において、さらに生産速度を向上させることができ、また、導体層パターン付き基材の製造における転写に際し、析出した金属の剥離も効率よく行われる。これらの製造に使用される導電性基材は、一度作製すれば繰返し使用できるため、製造工程が全体として減少し、生産効率がよくなる。
【0013】
導電性基材として金属製の回転体、または金属製の回転体に導電性基材を電気的に結合することにより、連続して表面が黒化処理された銅金属層の作製、また、その金属層の接着性支持体への転写を行うことができるため、さらに生産効率がよくなる。
【0014】
また、本発明において導電性基材の凸部の先端部分に析出した金属の表面に金属析出工程と一連の工程で細線部、幅広部を問わず均一に粉落ちのない黒化処理を施すことができる。これにより、導体層形成工程と黒化処理工程を含む金属パターン作製工程を短縮することが可能となる。第2の電着領域において黒色金属の析出条件を好適に制御することにより黒色金属を粒状あるいは瘤状に析出させることにより粉落ちのない良好な黒化処理を施すことができる。
【0015】
前記の導電層パターンを利用して得られる電磁波遮蔽体は、光透過性に優れている。このためディスプレイの電磁波遮蔽体として使用した場合、その輝度を高めることなく通常の状態とほぼ同様の条件下で鮮明な画像を快適に、電磁波による体への悪影響なく観賞することができる。また、その電磁波遮蔽体は電磁波遮蔽性に優れるため、ディスプレイそのほかの電磁波を発生する装置、あるいは外部からの電磁波から保護される測定装置、測定機器や製造装置の筐体、特に透明性を要求される覗き窓のような部位に設けて使用すると効果が大きい。さらに、本発明における電磁波遮蔽体は前記の導体層パターン付き基材と同様、生産効率よく製造することができる。
【0016】
前記導体層パターン付き基材の導体層パターンを有する面への透明基板貼合せ、または透明樹脂のコーティングにより、導体層パターンを保護することができる。別の基材の導体層転写面に予め接着剤層を形成していた場合には、この接着剤層への異物の付着の防止効果も有する。また、このとき透明基板の貼り合わせは接着剤層に透明基板を直接又は別の接着剤を介して加圧して貼り合わせることにより行うことができる。この場合適度な圧力により導体層パターンが接着剤層に埋設されるので、透明性や透明基板との密着性を向上させることが可能である。
【0017】
導体層パターン付き透明基材を利用すれば高い光透過性(特に、導体層パターンの線幅が小さく高精細)と良導電性(高電磁波シールド性)を兼ね備える電磁波遮蔽体を容易に得ることができる。このためPDP等のディスプレイの電磁波遮蔽体として使用した場合、その輝度を高めることなく通常の状態とほぼ同様の条件下で鮮明な画像を快適に鑑賞することができる。また、その電磁波遮蔽体は電磁波遮蔽性に優れているため、ディスプレイその他の電磁波を発生する装置、あるいは電磁波から保護されるべき測定装置、測定機器、製造装置等の内部を覗く窓や筐体、特に透明性を要求される窓やディスプレイ表面のような部位に設けて使用すると効果が大きい。さらに、本発明における電磁波遮蔽体の製造法は、前記の導体層パターンの製造に於けると同様、生産効率が優れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明において、導電性基材に用いられる導電性材料は、その表面に電気めっきで金属を析出させるために十分な導電性を有するものであり、金属であることが特に好ましい。また、その基材は表面に電気めっきにより形成された金属層を接着性支持体に転写させることができるように、その上に形成された金属層との密着力が低く、容易に剥離できるものであることが好ましい。このような導電性基材の材料としてはステンレス鋼、クロムめっきされた鋳鉄、クロムめっきされた鋼、チタン、チタンをライニングした材料、ニッケルなどが特に好ましい。
【0019】
前記の導電性基材の形状としては、シート状、プレート状、ロール状、フープ状等がある。ロール状の場合は、シート状、プレート状のものを回転体(ロール)に取り付けたものであってもよい。フープ状の場合は、フープの内側の2箇所から数箇所にロールを設置し、そのロールにフープ状の導電性基材を通すような形態等が考えられる。ロール状、フープ状ともに金属箔を連続的に生産することが可能であるため、シート状、プレート状に比較すると、生産効率が高く、好ましい。導電性基材をロールに巻きつけて使用する場合、ロールとして導電性のものを使用し、ロールと導電性基材が容易に導通するようにしたものが好ましい。
【0020】
本発明におけるめっき用導電性基材は、ベタ状の銅箔が作製できるように前記した導電性基材上にめっき部を滑らかな面で有するものであってもよい。
また、本発明におけるめっき用導電性基材は、パターン状のめっき部を有する導電性基材であってもよい。この場合、めっき部以外は、絶縁層で被覆されていることが好ましい。このめっき用導電性基材を用いることにより、表面が黒化処理されたパターン化銅金属を作製することができる。
【0021】
パターン状のめっき部を有する導電性基材としては、パターン状のめっき部として凹部のパターンを有する導電性基材を用いることができる。少なくとも凹部の底面では、電気メッキが可能なように、導電性基材又は導電性基材と導通している導電性材料が露出している。
導電性基材に凹部のパターンからなるパターン状のめっき部を作製する方法としては、導電性基材上にパターン化されたレジスト膜を形成する方法がある。
すなわち、フォトリソグラフ法又は印刷法によって、導電性基材に光硬化性樹脂あるいは熱硬化性樹脂により幾何学図形状のパターン(レジストパターン)を形成する方法である。残存しているレジスト膜が絶縁層として機能し、不要なレジストが除去された箇所は、導電性基材が露出しており、この部分がめっき部となる。
さらに詳しく説明すると
(イ)導電性基材の上に感光性レジスト層を形成する工程、
(ロ)感光性レジスト層を凹部のパターンに対応したマスクを通して露光する工程
及び
(ハ)露光後の感光性レジスト層を現像する工程
により、パターン状のめっき部として凹部のパターンを有する導電性基材を作製することができる。
また、
(イ′)導電性基材の上に感光性レジスト層を形成する工程、
(ロ′)感光性レジスト層に凹部のパターンに対応した部分にレーザー光を照射する工程
及び
(ハ′)レーザー光を照射後の感光性レジスト層を現像する工程
によりパターン状のめっき部として凹部のパターンを有する導電性基材を作製することができる。この方法において、感光性レジストの代わりに熱硬化性樹脂を用い、レーザー光の照射により、不要部を除去する方法を採用することもできる。
上記の感光性レジストとしては、よく知られたネガ型レジスト(光が照射された部分が硬化する)を使用することができる。また、このとき、マスクとしてはネガ型マスク(凹部に対応する部分は光が通過する)が使用される。また、感光性レジストとしてはポジ型レジストを用いることができる。感光性レジストの種類に応じて、光が照射される部分が適宜選択される。
【0022】
絶縁層の厚さは、0.5μm以上であることが好ましい。絶縁層が薄すぎると絶縁層にピンホールが発生しやすくなるため、めっきした際に、絶縁層を施した部分にも金属が析出しやすくなる。絶縁層の厚さは、1μm以上であることが特に好ましい。絶縁層の厚さは、作製するめっきの厚さに関係し、目的に応じて適宜決定される。電磁波遮蔽材用の透過性メッシュを作製する場合には、10μm以下で十分である。絶縁層が厚くなるとそれを形成する時間が長くなる傾向がある。
【0023】
上記の絶縁層の材質としては、光硬化性樹脂や熱硬化性樹脂以外に、ダイヤモンドに類似したカーボン薄膜、いわゆるダイヤモンドライクカーボン(以下、DLCとする)薄膜のうち、絶縁性を有するものにて形成させることもできる。DLC薄膜は、特に耐薬品性にも優れているため、特に好ましい。
さらに、絶縁層をAl、SiOのような無機材料で形成することもできる。
これらの絶縁層の形成方法は後記するのと同様である。
【0024】
凹部の平面形状又は絶縁層の平面形状は、目的応じて適宜決定されるが、正三角形、二等辺三角形、直角三角形などの三角形、正方形、長方形、ひし形、平行四辺形、台形などの四角形、(正)六角形、(正)八角形、(正)十二角形、(正)二十角形などの(正)n角形(nは3以上の整数)、円、だ円、星型などの幾何学図形があり、これらを適宜組み合わせた模様としてもよい、これらの単位は、単独で又は2種類以上組み合わせて繰り返されることが可能である。一つのめっき用導電性基材において、凹部の形状と絶縁層の形状は、互いに対応した形状となる。
光透過性電磁波遮蔽部材の性能の観点からは溝状の凹部に囲まれる絶縁層を三角形とすることが最も有効であり、可視光透過性の点からは同一のライン幅なら(正)n角形のn数が大きいほど導体層パターンの開口率が上がる。
【0025】
本発明において、めっき用導電性基材として、パターン状のめっき部として凸部のパターンを有する導電性基材を用いることができる。
前記導電性基材の凸部は、表面が黒化処理されたパターン化銅金属の銅金属部分に対応するが、同様に導体層パターン付き基材における導体層パターンに対応するものであり、その導体層パターンは、最終的に電磁波遮蔽材を作製したときの電磁波シールド層に対応するものである。この凸部の平面形状又はこれに対する凹部の平面形状は、としては、正三角形、二等辺三角形、直角三角形などの三角形、正方形、長方形、ひし形、平行四辺形、台形などの四角形、(正)六角形、(正)八角形、(正)十二角形、(正)二十角形などの(正)n角形(nは3以上の整数)、円、だ円、星型などの幾何学図形があり、これらを適宜組み合せた模様でもよく、これらの単位は、単独で又は2種類以上組み合せて繰り返されることが可能である。
【0026】
電磁波遮蔽性の観点からは三角形が最も有効であり、可視光透過性の点からは同一のライン幅なら(正)n角形のn数が大きいほど導体層パターンの開口率が上がる。可視光透過性の点から開口率は50%以上が必要とされ、導体層パターンの開口率は60%以上であることがさらに好ましい。導体層パターンの開口率は、電磁波遮蔽材の有効面積(例えば、前記の幾何学図形が描かれている範囲の面積等電磁波遮蔽に有効に機能する範囲の面積)に対するその有効面積から導電層で覆われている面積を引いた面積の比の百分率である。
【0027】
図1は、凸部に対する凹部の幾何学図形が形成されている導電性基材の一例を示す斜視図である。図1で例示しているのは凹部2の幾何学図形としては正方形であり、導電性基材1に凹部2の幾何学図形が正方形になるように凸部3が格子状に形成されている。
【0028】
図2及び図3は、図1のA−A断面を示し、図2では(a)〜(d)の4種、図3では(e)の1種を示す。凹部2及び凸部3の断面形状は適宜決定され、凸部3の側面5が、斜面((a)、(b)の場合)、曲面((c)の場合)、段階的斜面((d)の場合)等任意である。また、凹部2の底面も種々の形状がある。これらは、すべて、凸部の側面が少なくとも先端部分で傾斜角を有する。この傾斜角は、図中のαで、30°〜80°に相当することが好ましく、50°以上であることがより好ましい。
【0029】
凸部3の上面4は必ずしも平面でなくてもよく、上面全体又は上面の一部が平面から変形した形状であっても良いが、この場合、できるだけなめらかに湾曲していることが好ましい。ここで、凸部の先端部分とは、凸部の最先端から0μmの位置又は5μmまでの低い位置での凸部の表面を意味する。
【0030】
角度αの基準面は、凸部の上面又は水平面若しくは垂直面である。元の導電性基材として(ほぼ)均一な厚さのもの使用し、この一面に凸部パターンを施した場合には、他面を基準面とすることもできる。また、断面観察の試料を水平面又は垂直面に載置又は固定し、これを観察することもできる。水平面又は垂直面は、適当な台などを使用して設定できる。
【0031】
また、凸部を有する導電性基材の上にたわまない平板をのせてこの平板の面を基準面とすることもできる。また、導電性基材が円筒である場合は、その円筒より大きな断面が真円の円筒(基準円筒)を用意し、基準円筒を横にして、基準円筒の中に導電性基材を通してこれらの円筒を重ね、基準円筒の各断面円の頂点が水平になるようにし、この円筒の頂点に接する接面を基準面とすることもできる。
【0032】
具体的には、導電性基材の断面の観察は、顕微鏡の倍率を適当にして、凸部の上面が観察できるようにし、導電性基材の他面(表面)が観察できるようにし、あるいは、基準となる物体が観察できるようにして基準面を確認し、適宜写真撮影後倍率を高くして詳細な断面(場合により倍率を低くして断面)を観察し、写真撮影することにより行い、角度αに関する測定を行うことができる。基準面の確認に際しては、定規等の基準になるものを同時に写し込むとよい。
【0033】
以上で説明した基準面は、厚さ、高さ及び幅の測定の基準面にすることもできる。また、別の基材の表面は多くの場合変形することがなく、基準面として採用しやすい。
【0034】
これに対し、図3に(e)として示すように凸部の側面5が垂直面の場合もあり得る。
【0035】
導電性基材に形成した凸部の先端部分の幅及びその間隔は、導体層パターンの開口率を50%以上とするために、凸部の先端部分の幅が1μm〜40μm、凸部の先端部分の中心間隔(ラインピッチ)が100μm〜1000μmであることが好ましい。
【0036】
本発明おいて、凸部の先端部分の中心間隔(ラインピッチ)は、パターンが複雑な図形であったり、複数の図形の組み合わせであったりして簡単に決定できない場合は、パターンの繰り返し単位を基準としてその面積を正方形の面積に換算し、その一辺の長さであると定義する。
【0037】
導電性基材に形成した凸部3の高さを、凹部2の最も窪んだ部分から凸部3の先端までの高さと規定する。凸部3の高さは、11μm以上が好ましい。それは、凹部に絶縁層を形成しても凹部が十分な深さを有するためである。また、凸部3の高さの上限は、110μmが好ましい。凸部の高さを大きくしていくと、アスペクト比が大きくなるため、加工が難しくなり、加工費も高くなる。このことから、凸部の高さは60μm以下であることが特に好ましい。
【0038】
導電性基材上に凸部を形成させる方法としては、次のような方法をあげることができる。
【0039】
(1)導電性基材の凹部を形成すべき部分(導体層パターン付き基材の導体層パターンの開口部に対応する部分)に、直接レーザ光を照射し、凹部を形成し、導電層パターンに対応した凸部を形成する方法、
(2)フォトリソグラフ法又は印刷法によって、導電性基材に光硬化性樹脂あるいは熱硬化性樹脂により幾何学図形状のパターン(レジストパターン)を形成する工程を行なった後、導電性基材をエッチングする方法、
(3)彫刻により導電性基材の凹部を形成すべき部分(導体層パターン付き基材の導体層パターンの開口部に対応する部分)を掘削する方法などがある。
【0040】
導電性基材の材質が硬い場合、直接加工するには前記(1)方法(レーザ加工法)または(2)の方法(エッチング法)などを用いることが好ましいが、銅などの柔らかく加工性に優れた材料を用いる場合は、前記(3)の方法(彫刻法)により容易に加工することもでき、このとき、加工後に、クロム等の硬質のめっきを表面に施して、強度を上げることができる。
【0041】
前記(2)の方法において、印刷法を用いる場合には、レジストパターンの印刷方法としては様々な方法を用いることができる。例えば、スクリーン印刷、凸版印刷、凸版オフセット印刷、凸版反転オフセット印刷、凹版印刷、凹版オフセット印刷、インクジェット印刷、フレキソ印刷などを用いることができる。レジストとしては光硬化性又は熱硬化性の樹脂が使用できる。
【0042】
また、フォトリソグラフ法を用いる場合には、ドライフィルムレジストなどをラミネートし、マスクを装着して露光し、現像した後にレジストフィルムのエッチング工程を経ることも出来るし、液状レジストを塗布した後に溶剤を乾燥あるいは仮硬化させた後、マスクを装着して露光し、現像した後にレジストフィルムのエッチング工程を経ることも出来る。光硬化性の樹脂にマスクを介して活性エネルギー線を照射することでパターニングできればその態様は問わない。枚葉で版のサイズが大きい場合、あるいはロール・トゥ・ロール(Roll−to−Roll)で作製する場合などはドライフィルムレジストをラミネートしてマスクを介して露光する方法が生産性の観点からは好ましく、めっきドラムなどに直接加工する場合にはドライフィルムレジストを貼り合わせるあるいは液状レジストを塗布した後にマスクを介さずにレーザなどでダイレクトに露光する方法が好ましい。
【0043】
また、前記(2)の方法における導電性基材のエッチングは、エッチング液を用いて行うことができる。エッチング液としては導電性金属の材質によって様々な種類があり、それぞれの金属に対してエッチング液が市販されているのでそれらを使用することができる。例えば、導電性金属がステンレスであれば、塩化第二鉄を用いることが一般的であり、チタンであればフッ酸系のエッチング液がよく用いられる。ステンレスのエッチングに関しては、塩化第二鉄の比重が40°Be(ボーメ)〜60°Be(ボーメ)の範囲の液が好んで用いられる。比重が低いとエッチングスピードは速いが、サイドエッチングが大きくなるため、凹部が浅くなる傾向にあり、逆に比重が高いと、エッチングスピードは遅いが、サイドエッチングが少なく、凹部が深くなる傾向にある。したがって、エッチング液の比重は、45°Be(ボーメ)〜50°Beであることがさらに好ましい。また、エッチング温度は、低いとエッチンスピードが低下し生産性が低下するため、40℃以上であることが好ましい。さらに、エッチング温度が60℃を超えると、エッチング液の腐食性が大きくなるため、エッチング槽をチタン製にする等設備投資が大きくなるため、60℃以下であることが好ましい。
【0044】
残存するレジストは、導電性基材のエッチング後に、剥離液等を使用して剥離することができる。
【0045】
凸部のパターン及びそれによって描かれる幾何学図形状の凹部を有する導電性基材の凹部への絶縁層の形成は、導電性基材の全表面に絶縁層を形成した後、バフロールや研磨紙、ベルトサンダ等を使用した一般的な機械研磨等により凸部の先端部分に形成された絶縁層を除去し、凸部先端部分の金属面を露出させる方法により行うことができる。
【0046】
図4は、凸部のパターン及びそれによって描かれる幾何学図形状の凹部を有する導電性基材において、その凹部に絶縁層を形成した状態の導電性基材の断面図を示す。図4では、図2の(c)で示す断面形状を有する導電性基材を使用している。図4(a)では、絶縁層6は、上面4を有する凸部3のパターン及びそれによって描かれる幾何学図形状の凹部2を有する導電性基材1の凹部2に均一に形成されている。但し、絶縁層6は凸部3の上面4の端から上面4と面一になるように形成されている。このように、導電性基材を水平にしたとき絶縁層6が上面4より上に出ていないことが特に好ましい。図4(b)に示すように、絶縁層6が、凹部2の底部の部分が側面5の部分より厚く形成されてもよく、さらに、図4(c)に示すように、凸部3の上面4の端近くにおいて徐々に絶縁層6の厚さが小さくなり、上面4と同一平面の方向で絶縁層6の厚みが0となっていてもよい。
【0047】
また、凸部パターンの寿命を長くするためには、凸部の露出部分に析出した金属を別の基材に転写する際に、その別の基材の接着面と導電性基材の凹部に形成されている絶縁層の接触を低減させることが好ましい。したがって、絶縁層を施した後の凸部の高さが、十分であることが好ましい。絶縁層の厚さは、1μm以上10μm以下の範囲であることが好ましい。絶縁層が厚すぎると、絶縁層を形成する時間が長くなるため作業効率が低下する。また、絶縁層が薄すぎると絶縁層と導電性基材の密着性が低下すると共に、ピンホールが発生しやすくなるため、めっきした際に、絶縁層を施した部分にも金属が析出しやすくなる。
【0048】
本発明におけるパターン状のめっき部として凸部のパターンを有するめっき用導電性基材は、凸部の先端部分を除き、その凹部が絶縁層で被覆されていることが好ましい。
【0049】
めっき用導電性基材にめっきした際、めっきは等方的に生長するため、凸部露出部分の近傍の絶縁層に覆い被さるように析出する。絶縁層に覆い被さっためっきは、剥離転写する度に毎回、絶縁層に応力がかかる原因となる。従って、凹部全面に絶縁層が形成されている場合、転写時に絶縁層にかかる応力は、凸部露出部分の近傍が最も大きいので、凸部の先端部分を露出させることで、剥離の際に絶縁層にかかる応力を低下させることができ、結果的に凹部が絶縁層で被覆されているめっき用導電性基材の寿命を向上させることができる。凸部の先端部分の露出が小さすぎると、寿命向上の効果が小さく、大きすぎると側面に深くめっきが析出し、転写不良が発生することがあるので、露出している凸部の先端部分は、凸部最先端から、0μmの位置又は5μmまでの低い位置までであることが好ましく、凸部最先端から、0.5〜5μm低い位置までであることがさらに好ましく、0.5〜3μm低い位置までであることが特に好ましい。
【0050】
絶縁層を有するめっき用導電性基材の構造を、図面を用いて説明する。図5は、本発明における凸部のパターン及びそれによって描かれる幾何学図形状の凹部を有する導電性基材の一例を示す断面図である。ただし、凹部の形状は、図2(c)で記載されているもので説明する。図5において、(a)、(b)及び(c)の3形態を示すが、いずれにおいても、導電性基材1は、凸部3に対し凹部2を有する。凹部2には絶縁層6が形成されており、凸部の側面5に沿って絶縁層6が形成されているが、凸部3の先端部分には形成されておらず、従って、凸部の先端部分は露出している。
【0051】
図中h′は、前述した凸部の高さである。hは凹部に絶縁層を施した後の凸部の高さ(以下、「絶縁高さ」という)である。tは絶縁層の厚さを示す。凸部の高さh′は、11μm〜110μmが好ましく、60μm以下であることがさらに好ましい。絶縁高さhは、10〜100μmであることが好ましく、tは、h′がhより小さくなるように決定されるが、10μm以下が好ましく、特に、凸部3の側面5において、少なくとも絶縁層の端の部分では厚さが1〜10μmであることが好ましい。さらに、凸部の先端部分は、露出させる。凸部の先端部分の露出の程度は、幅dが1〜40μmであることが好ましく、凸部の最先端からの距離(高さ方向)sは、0.5〜5μmであることが好ましく、0.5〜3μmであることが更に好ましい。この距離sのために、剥離の際に絶縁層にかかる応力を低減することができる。以上のh′、d及びt数値範囲は、sが0μm又は0.5μm未満の場合にも同様に満足することが好ましい。
【0052】
絶縁層は、薄膜絶縁層であることが好ましく、強度の不均一性をなくすために均一な厚さであることが好ましい。
【0053】
図6は、本発明における凸部のパターン及びそれによって描かれる幾何学図形状の凹部を有する導電性基材の一例を示す断面図である。
【0054】
図6に示すように、凸部の側面が垂直面の場合も前記の態様で凹部に絶縁層が施され、しかも、凸部の先端部分が露出しているのであれば、好ましい態様として使用できる。
【0055】
絶縁高さhが低すぎると、転写の際に転写用基材が導電性基材に接触して転写用基材を傷つけたり、転写用基材の接着面が導電性基材に設けた絶縁層に接触しやすくなって絶縁層に剥離応力がかかるため、繰り返し使用した際に絶縁層が剥離することがある。
【0056】
図7は、本発明における導電性基材の凸部の先端部分の近辺の一例を示す断面図である。図7中、凸部3の先端部分は露出しており、それよりしたの側面5は絶縁層6で覆われている。凸部3の少なくとも露出部分は先端方向に進むにつれて幅が広がっておらず、全体として凸部の下部よりも上部で幅が小さくなっているのが好ましい。凸部の露出部分は、絶縁層の端付近、例えば、凸部の側面の絶縁層の端(第1の位置)とそれより凸部の露出幅の10%に相当する分だけ幅方向に内側における凸部表面の位置(第2の位置)との高さ方向の距離にh10対する第1の位置と第2の位置との幅方向の距離d10との関係(図7で示すところの高さh10に対する幅d10の関係)d10/h10が、角度で30°〜80°に相当することが好ましく、50°以上であることがより好ましい。
【0057】
また、d10は、
【数1】

【0058】
であることが好ましく、d10は0.839×h10以上であることがより好ましい。
【0059】
図7(a)では、導電性基材の凸部3として、断面が台形上のものとして模式的に図示したが、(b)に示すように凸部3の表面が凸凹であってもよい。また、絶縁層の表面は、(a)では平面の組み合わせとして模式的に図示されているが、これも(b)に示すように凹凸のある面の組み合わせであってもよい。なお、図7では、上下方向を強調して引き延ばし気味に図示してある。
【0060】
また、図7中、前記第2の位置は、先端部分の側面に位置するように図示されているが、場合により、第2の位置が凸部の上面に位置していてもよい。
【0061】
前記のように凸部の側面が傾斜を有していると、そうでないときよりも、めっき用導電性基材の凸部の露出部分に電気めっきにより析出しためっき(金属)をより容易に、剥離でき、転写が円滑に行われる。
【0062】
また、導電性基材にめっきを施すと、めっきが等方的に生長するため、導電性基材の凸部側面も露出しているとそこにもめっきが析出するが、転写の際に、転写用基材の接着面をめっきに接触させた後転写用基材を剥離すると、めっき層には、斜め方向の応力がかかった場合には、凸部の角度が80°を超えると、剥離(転写)の際に抵抗が大きくなりすぎて、転写不良が発生することがありうる。このことから、凸部の角度は30°〜80°の範囲であることが好ましく、50°〜80°であることがさらに好ましい。
【0063】
本発明で用いられる絶縁層のための絶縁材料は、金属との密着性が高く、耐薬品性が強い材料が好んで用いられる。電気めっきもしくは無電解めっきの工程では、めっき液に浸漬されるため、耐酸性と耐アルカリ性双方に強い材料がさらに好ましい。このような樹脂の中では、たとえば、熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、尿素樹脂、アニリン樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、ホルマリン樹脂、金属酸化物、金属塩化物、オキシム、アルキルフェノール樹脂等が用いられ、これらは自己硬化性のものである(硬化触媒を使用してもよい)。
【0064】
熱硬化性樹脂として、硬化剤を利用するものが使用できる。このようなものとしては、カルボキシル基、水酸基、エポキシ基、アミノ基、不飽和炭化水素基等の官能基を有する樹脂とエポキシ基、水酸基、アミノ基、アミド基、カルボキシル基、チオール基等の官能基を有する硬化剤あるいは金属塩化物、イソシアネート、酸無水物、金属酸化物、過酸化物等の硬化剤との組み合わせで用いられるものがある。なお、硬化反応速度を増加する目的で、汎用の触媒等の添加剤を使用することもできる。具体的には、硬化性アクリル樹脂組成物、不飽和ポリエステル樹脂組成物、ジアリルフタレート樹脂、エポキシ樹脂組成物、ポリウレタン樹脂組成物等が例示される。薄膜絶縁層の形成方法としては、例えば、前記樹脂又は組成物を刷毛塗り、スプレー塗装、ディッピング等により塗布した後にスキージやブレード等で樹脂を掻き取った後に乾燥させるなどの方法が挙げられる。
【0065】
また、絶縁層として、金属導体との密着性に優れ、かつ絶縁性、酸・アルカリに対する耐食性に優れたダイヤモンド・ライク・カーボン(DLC)やグラファイト・ライク・カーボン(GLC)、窒化チタンや窒化チタンアルミニウム、窒化クロム、窒化チタンクロム、炭窒化チタン、炭化チタン等を下地処理として塗布した後にガラスコーティングして形成した層を用いてもよい。
【0066】
さらに、絶縁材料としては、皮膜の均一性や、形成の簡便さ、さらに環境に対する負荷が少ないことから、電着塗料を用いてもよい。
【0067】
電着塗料は、それ自体既知のカチオン型及びアニオン型のいずれでも使用でき、ここでは、使用できる電着塗料の一例を示す。
【0068】
カチオン型電着塗料には、塩基性アミノ基をもつ樹脂のペーストを作製し、これを酸で中和、水溶化(水分散化)してなる陰極析出型の熱硬化性電着塗料が包含される。カチオン型電着塗料は前記導電性基材(被塗物)を陰極にして塗装される。
【0069】
塩基性アミノ基をもつ樹脂は、例えば、ビスフエノール型エポキシ樹脂、エポキシ基(またはグリシジル基)含有アクリル樹脂、アルキレングリコールのグリシジルエーテル、エポキシ化ポリブタジエンならびにノボラツクフエノール樹脂のエポキシ化物などのエポキシ基含有樹脂のエポキシ基(オキシラン環)にアミン化合物を付加したもの、塩基性アミノ基をもつ不飽和化合物(例えば、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、N−ビニルピラゾール、N−ジエチルアミノエチルアクリレートなど)を重合させたもの、第3級アミノ基含有グリコール(例えば、N−メチルジエタノールアミン)をグリコールの一成分とするグリコール成分とポリイソシアネート化合物との反応物、さらに、酸無水物とジアミン化合物との反応でイミノアミンが生成することによって、樹脂へアミノ基を導入したものなどがある。ここで、前述したアミン化合物としては、塩基性アミン化合物であって、脂肪族、脂環式もしくは芳香脂肪族系の第1級もしくは第2級アミン、アルカノールアミン、第3級アミン、第4級アンモニウム塩等のアミン化合物が挙げられる。
【0070】
また、カチオン電着塗料には、架橋剤を配合することができる。架橋剤としては、ブロツク化したポリイソシアネート化合物がよく知られているが、塗膜を加熱(約140℃以上)するとブロツク剤が解離して、イソシアネート基が再生し、前記の如きカチオン性樹脂中の水酸基などのイソシアネート基と反応性の基に対し架橋反応し硬化する。
【0071】
さらに、カチオン型電着塗料には、顔料(着色顔料、体質顔料、防錆顔料など。顔料の配合量は樹脂固形分100重量部あたり40重量部以下が好ましい)、親水性溶剤、水、添加剤などを必要に応じて配合することができる。
【0072】
カチオン型電着塗料は、その固形分濃度を約5〜40重量%となるように脱イオン水などで希釈し、pHを5.5〜8.0の範囲内に調整することが好ましい。このようにして調製されたカチオン型電着塗料を用いてのカチオン電着塗料は、通常、浴温15〜35℃、負荷電圧100〜400Vの条件で被塗物を陰極として行うことができる。塗膜の焼付硬化温度は一般に100〜200℃の範囲が適している。
【0073】
アニオン型電着塗料は、カルボキシル基を持つ樹脂をベースとし、これを塩基性化合物で中和、水溶化(水分散化)してなる陽極析出型の電着塗料が好ましく、前記導電性基材(被塗物)を陽極として塗装される。
【0074】
カルボキシル基を持つ樹脂としては、乾性油(あまに油、脱水ひまし油、桐油など)に無水マレイン酸を付加したマレイン化油樹脂、ポリブタジエン(1,2−型、1,4−型など)に無水マレイン酸を付加したマレイン化ポリブタジエン、エポキシ樹脂の不飽和脂肪酸エステルに無水マレイン酸を付加した樹脂、高分子量多価アルコール(分子量約1000以上で、エポキシ樹脂の部分エステルおよびスチレン−アリルアルコール共重合体なども含まれる)に多塩基酸(無水トリメリツト酸、マレイン化脂肪酸、マレイン化油など)を付加して得られる樹脂、カルボキシル基含有ポリエステル樹脂(脂肪酸変性したものも含む)、カルボキシル基含有アクリル樹脂、グリシジル基もしくは水酸基を含有する重合性不飽和モノマーと不飽和脂肪酸との反応生成物を用いて形成された重合体もしくは共重合体に無水マレイン酸などを付加せしめた樹脂などがあげられ、カルボキシル基の含有量が、一般に、酸価で約30〜200の範囲のものが適している。
【0075】
また、アニオン型電着塗料には、架橋剤を配合することができる。架橋剤としては、ヘキサキスメトキシメチルメラミン、ブトキシ化メチルメラミン、エトキシ化メチルメラミンなどの低分子量メラミン樹脂を必要に応じて使用することができる。さらに、アニオン型電着塗料には顔料(着色顔料、体質顔料、防錆顔料など。顔料の配合量は樹脂固形分100重量部あたり40重量部以下とすることが好ましい)、親水性溶剤、水、添加剤などを必要に応じて配合することができる。
【0076】
アニオン型電着塗料には、固形分濃度を約5〜40重量%に脱イオン水などで調整し、pH7〜9の範囲に保ってアニオン電着塗装に供することが好ましい。アニオン電着塗装は常法に従って行うことができ、例えば、浴温15〜35℃、負荷電圧100〜350Vの条件で、被塗物を陽極として実施することができる。アニオン電着塗膜は原則として100〜200℃、好ましくは140〜200℃の範囲に加熱して硬化せしめられるが、空気乾燥性の不飽和脂肪酸で変性した樹脂を用いた場合には室温で乾燥させることもできる。
【0077】
さらに、本発明で用いられる絶縁層として、絶縁層が炭素を主成分とする材料、たとえば、ダイヤモンドに類似したカーボン薄膜、いわゆるダイヤモンドライクカーボン(以下、DLC薄膜とする)のうち、絶縁性を有するものにて形成させることもできる。DLC薄膜は、酸素プラズマでエッチングすることが可能であり、さらに、耐薬品性にも優れているため、特に好ましい。
【0078】
DLC薄膜を形成する方法としては、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等の物理気相成長法、プラズマCVD法等の化学気相成長法等のドライコーティング法を採用し得るが、成膜温度が室温から制御できる高周波によるプラズマCVD法が特に好ましい。
【0079】
前記DLC薄膜をプラズマCVD法で形成するために、原料となる炭素源として炭化水素系のガスが好んで用いられる。例えば、メタン、エタン、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン等のアルカン系ガス類、エチレン、プロピレン、ブテン、ペンテン等のアルケン系ガス類、ペンタジエン、ブタジエン等のアルカジエン系ガス類、アセチレン、メチルアセチレン等のアルキン系ガス類、ベンゼン、トルエン、キシレン、インデン、ナフタレン、フェナントレン等の芳香属炭化水素系ガス類、シクロプロパン、シクロヘキサン等のシクロアルカン系ガス類、シクロペンテン、シクロヘキセン等のシクロアルケン系ガス類、メタノール、エタノール等のアルコール系ガス類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系ガス類、メタナール、エタナール等のアルデヒド系ガス類等が挙げられる。前記ガスは単独で使用しても良いし、二種以上を併用しても良い。また、元素として炭素と水素を含有する原料ガスとして前述した炭素源と水素ガスとの混合物、前述した炭素源と一酸化炭素ガス、二酸化ガス等の炭素と酸素のみからなる化合物のガスとの混合物、一酸化炭素ガス、二酸化炭素ガス等の炭素と酸素のみから構成される化合物のガスと水素ガスとの混合物、一酸化炭素ガス、二酸化炭素ガス等の炭素と酸素のみからなる化合物のガスと酸素ガスまたは水蒸気との混合物等が挙げられる。更に、これらの原料ガスには希ガスが含まれていてもよい。希ガスは、周期律表第0属の元素からなるガスであり、例えば、ヘリウム、アルゴン、ネオン、キセノン等が挙げられる。これらの希ガスは単独で使用しても良いし、二種以上を併用しても良い。
【0080】
絶縁層は、その全体を、上述した絶縁性のDLC薄膜によって形成してもよいが、当該DLC薄膜の、金属板等の導電性基材に対する密着性を向上させて、絶縁層の耐久性をさらに向上させるためには、この両者の間に、Ti、Cr、W、Siもしくはそれらの窒化物又は炭化物から選ばれる一種以上の成分又はその他よりなる中間層を介挿することが好ましい。
【0081】
前記SiまたはSiCの薄膜は、例えば、ステンレス鋼などの金属との密着性に優れる上、その上に積層する絶縁性のDLC薄膜との界面においてSiCを形成して、当該DLC薄膜の密着性を向上させる効果を有している。
【0082】
中間層は、前述したようなドライコーティング法により形成させることができる。
【0083】
中間層の厚みは、1μm以下であることが好ましく、生産性を考慮すると0.5μm以下であることが更に好ましい。1μm以上コーティングするには、コーティング時間が長くなると共に、コーティング膜の内部応力が大きくなるため適さない。
【0084】
パターン状のめっき部として凸部のパターンを有するめっき用導電性基材の製造法を図面を用いて説明する。
【0085】
図8〜図10は、パターン状のめっき部として凸部のパターンを有するめっき用導電性基材の作製方法を示す工程の一例を断面図で示したものである。これらにおいて、図2(c)で示す断面形状を有する導電性基材を用いて例示する。
【0086】
まず、導電性基材1の両面に光硬化性樹脂層7を形成する(図8(a))。フォトリソグラフ法を用いて導電性基材1の一方の表面の光硬化性樹脂層7をパターン化する(図8(b))。パターン化された光硬化性樹脂層7をエッチングレジストとして導電性基材をエッチングすることにより、図に示すエッチングされた導電性基材が得られる(図8(c))。このとき、凸部3の側面5の傾斜角を調整することができる(少なくとも凸部の先端部分において)。傾斜角の調整は、エッチング液である塩化第二鉄溶液の比重とエッチング温度を最適化することなどにより行うことができる。次いで、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム等のアルカリ性の水溶液に浸漬して、エッチングレジストを剥離する(図8(d))。
【0087】
次いで、この導電性基材1の一方の面を剥離可能な粘着フィルム9を貼り合わせて保護し、エッチングした面の全面に絶縁層8を被覆する(図9(e))。しかる後に、プラズマエッチングに対するマスク層10を絶縁層の上に形成する(図9(f))。
【0088】
マスク層が形成されている箇所では、絶縁層がエッチングされないため、導電性基材1の凸部3の先端部分に形成された絶縁層8の上のマスク層10を除去する(図9(g))。
【0089】
マスク層10のこの部分的な除去は凸部3の露出させる先端部分の幅を勘案して除去される。凸部に平面的な又はほぼ平面的な上面がある場合、露出する絶縁層の幅が、上面の幅よりも広くなるようにすることが好ましい(図9(g))。これにより、次の絶縁層8の部分的な除去において、凸部3の上面付近の側面部の絶縁層の除去が行いやすくなる。
特に、研磨によるマスク層10の除去を行うと図9(g)に示すようになる。
【0090】
次いで、絶縁層にドライエッチングを施すことにより、凸部3の先端部分に形成された絶縁層8を除去することができ、これにより凸部3の先端部分を露出させることができる(図10(h))。
【0091】
特に、酸素ガスでプラズマエッチングを行った場合などには、導電性基材がストッパー層となる。凸部に平面的な又はほぼ平面的な上面がある場合、凸部3の上面の幅を超えた部分の絶縁層を露出させておけば(図9(g))、絶縁層のドライエッチングによる除去が、凸部の側面部にまで及び、その結果、凸部の側面まで露出させることができる((図10(h))。側面部の絶縁層の除去の制御は、ドライエッチングの時間、出力によって行うことができる。
【0092】
次いで、凹部2の絶縁層8上に形成されているマスク層10は、薬液浸漬等により除去される。このようにして本発明に係るめっき用導電性基材の一例を作製することができる(図10(i))。
【0093】
さらに、DLCからなる絶縁層と導電性基材の間に中間層を設けた場合、中間層が例えば有機材料である場合には、前記の酸素プラズマで、DLCからなる絶縁層の除去に引き続いて中間層の除去が行え、図10(h)に示すのと同様の構造のめっき用導電性基材とすることができる。中間層が炭素を主成分とする材料でない場合には、酸素プラズマによる中間層のエッチングが困難となるが、この場合には、絶縁層及び中間層の材料に合わせて、ガスを変更するかもしくは、中間層の厚みが0.5μm以下程度であれば、弱い力で機械研磨することにより凸部の先端部分の露出幅を太らせることなく、凸部の先端部分に形成された中間層を除去することが可能である。
【0094】
DLC薄膜をドライエッチングした際に、中間層が酸素プラズマでエッチングされない場合には、ガスを変更して中間層をドライエッチングするか、もしくは、機械研磨で除去することができる。中間層は薄い皮膜であるため、ラインを太らせること無く、軽い研磨で除去することができる。なお、中間層が導電性である場合には、通電して析出させためっきが中間層から容易に剥離させることができるなら、必ずしも中間層を除去する必要はなく、凸部の露出部分において、それ自体を導電性基材の一部とすることができる。
【0095】
本発明におけるマスク層は、無機系のマスク層と有機系のマスク層に大別できる。
【0096】
無機系のマスク層としては、アルミニウム(Al)、クロム(Cr)、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)、金(Au)、チタン(Ti)等の金属が、特に酸素プラズマに対する耐性が強く好ましく用いられる。これらの膜は、スパッタ法、真空蒸着法、イオンビーム蒸着法、CVD法、イオンプレーティング法、電着法、無電解めっき法などの薄膜形成方法により形成される。これらの材料の中では、酸素プラズマに対する耐性が高く、廉価であり、蒸着が容易で、酸性物質に対しても塩基性物質に対しても可溶であることから、アルミニウム(Al)が好んで用いられる。アルミニウムは導電性であるため、ドライエッチング後に残しておくと導電性基材の全面にめっきが析出するので、除去する必要がある。アルミニウムのエッチング剤としては、塩基性物質としては水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、リン酸三ナトリウム、リン酸二ナトリウム、リン酸三カリウム、リン酸二カリウム等、また酸性物質としては硫酸、過硫酸、リン酸、塩酸及びその塩等であるが、絶縁層の耐性を考慮して、適宜選択する。
さらに、酸素プラズマに対する耐性を持つ無機材料としては、ウェットコーティング法を用いる場合にはアルカリ金属、オルガノポリ金属、オルガノアルコキシ金属、アルコキシ金属、変性アセチルアセトネート金属等からなる金属酸化物系ポリマーや、無機フィラーを含有した塗料、さらに、セラミックコーティングと呼ばれるケイ素化合物フリット類による塗料を、アルコールや水などの溶剤を加えた状態でスプレー、ディスペンサー、ディッピング、ロール、スピンコート等により塗布できる。また、金属のフッ化物錯体を用いて液層析出法(LPD法)などにより絶縁層の上にマスク層として形成させることもできる。また、ドライコーティング法で各種金属の酸化物を形成させることも可能である。
コーティングする方法としては、蒸着、スパッタリング、イオンプレーティングといったPVD法や、プラズマCVD,熱CVDといったCVD法の他、溶射などの方法を用いて作製することができる。具体的には、Al、Cr、Fe、MgO、SiO、SiO、SnO、TaO、TiO、WO、Y、ZnO、ZnO、ZrO等の皮膜が好ましく用いられる。
【0097】
また、有機系のマスク層としては、ドライエッチングに対する耐性があるもので、公知のものが使用できるが、特に酸素プラズマを用いる場合には、一般的にシリコンを含有するレジスト膜が酸素プラズマに対する耐性があるため、好んで用いられる。シリコンを含有するレジスト膜には、感光性があっても、なくてもよい。凸部の上面にあるマスク層を除去する方法として、凸部の上面にあるマスク層を現像して除去してから、現像した箇所をドライエッチングする場合には、レジスト膜が感光性を有していることが好ましいが、凸部の上面にあるマスク層を機械研磨で除去する場合には、必ずしも感光性は必要でない。用いるレジスト膜は、ネガ型でもポジ型でもよく、液状でもフィルム状でもよい。液状の場合は、スプレー、ディスペンサー、ディッピング、ロール、スピンコート等により塗布でき、フィルムの場合は、加熱ラミネートして、凹部にレジストを追随させながら埋め込むことができる。
【0098】
前述したシリコンを含有するレジスト膜について説明する。シリコンを含有するレジスト膜に使用されるシリコン含有感光性組成物としては、公知のものが使用できるが、好適なシリコン含有感光性組成物の代表例としては、主鎖にシリコン原子を有し、アセタール構造、3級エステル構造、t−ブチルオキシカルボニル構造等の酸分解性基を含有するシロキサンポリマーを用いた化学増幅型のシリコン含有感光性組成物、ノボラック樹脂とナフトキノンジアジドからなるレジスト組成物に、主鎖にシリコン原子を有し、分子内にシラノール構造を有するアルカリ可溶性ラダー型ポリシロキサンをブレンドした紫外線露光用のシリコン含有感光性組成物等が挙げられる。側鎖にシリコン原子を有し、かつ側鎖にアセタール構造、3級エステル構造、t−ブチルオキシカルボニル構造、又は、β−シリルエチルエステル構造等の酸分解性基を含有するビニルポリマーと光酸発生剤からなる化学増幅型の遠紫外線露光用のシリコン含有感光性組成物、さらに、メチルメタクリレートのシリコン誘導体を含有する単量体の重合によって形成される構造、アクリル酸エステルポリマーのエステル部にシリコンを含有する構造、トリメチルシリル基を2つ有するアクリル系モノマーから得られるポリマー、シリコン含有モノマー、無水マレイン酸、t−ブチルアクリレートからなるポリマーを有するレジスト組成物等が挙げられる。
【0099】
マスク層を部分的に除去する方法は、(イ)感光性を有するマスク層を用いて、フォトリソグラフプロセスで凸部の上面に形成されたマスク層を現像、除去する方法、(ロ)マスク層の除去部を機械研磨する方法などがある。前記(イ)の方法では、感光性を有するマスク層は、ポジ型であってもネガ型であってもよく、現像液は、後述するマスク層の剥離液と同様の液を用いることができる。また、前記(ロ)のマスク層を研磨して除去する方法としては、例えば、バフロールを回転させながら研磨する方法がある。バフは市販されている不織布、セラミックバフ、ダイヤモンドバフ等を用いることができる。
【0100】
本発明で用いられるドライエッチングとは、真空容器内にガスを導入し、ガスを高周波、マイクロ波などにより励起し、プラズマを発生させラジカル、イオンを生成させた後、プラズマにより生成されたラジカル、イオンと被エッチング物(絶縁層、中間層)と反応させ、反応生成物を揮発性ガスにし真空排気系により外部に排気することにより行われるエッチングのことである。ドライエッチングは被エッチング物を載置した電極に高周波電力を印加し、発生した負の自己バイアス電圧により、プラズマから生成されたイオンを加速して被エッチング物に衝撃させる反応性イオンエッチングとエッチング物にバイアスを印加せずにプラズマより生成したラジカルにより被エッチング物をエッチングするプラズマエッチングに大別される。反応性イオンエッチングには平行平板型、マグネトロン型、2周波型、ECR型、ヘリコン型、ICP型などがあり、使用する圧力は低圧であることが多く得られるエッチング形状は等方性である。また、プラズマエッチング装置にはバレル型、平行平板型、ダウンフロー型などがあり、使用する圧力は高圧であることが多く、得られるエッチング形状は等方性である。本発明では、前記のどちらの方式を用いてもよい。
【0101】
また、ドライエッチングにおけるガス組成としては、形成された絶縁層をエッチングできるとともに導電性基材をエッチングしずらいガスを適宜選択するが、代表的なガス組成としては、F原子含有プラズマを発生させる、F、CF−O、C−O、C−O、SF−O、SiF−O、NF、ClF、さらに、不飽和種含有プラズマを発生させる、CF、C、CHF、CF−H、CH、さらに、Cl・Br原子を含有するプラズマを発生させる、Cl、CCl、CFCl、Cl−CCl、Br、さらに酸素プラズマを発生させる、O、O−Ar等が用いられる。地球温暖化作用を有さず、腐食性もないことから、酸素プラズマを発生させるガス組成が好ましく、絶縁層も酸素プラズマでエッチングできる、炭素を主成分とする材料を選定することが好ましい。
【0102】
絶縁層のドライエッチングに対するマスク層は、ドライエッチングにおけるエッチングレートが絶縁層のエッチングレートと同程度かもしくは、それ以下であるものが好ましい。ドライエッチングにおける絶縁層のエッチングレートよりもマスク層のエッチングレートが大きい場合には、絶縁層が厚くなると、マスク層も厚くしなければならないので非効率的であり、さらに、厚みのばらつきがあった場合にマスク層の下の絶縁層を、エッチングしてしまう可能性がある。したがって、マスク層のエッチングレートは、絶縁層のエッチングレートの1/2以下であることが特に好ましい。
【0103】
前記有機系のマスク層の剥離液として、従来公知のアルカリ性水溶液が使用できる。例えば、ケイ酸ナトリウム、同カリウム、第3リン酸ナトリウム、同カリウム、同アンモニウム、第2リン酸ナトリウム、同カリウム、同アンモニウム、炭酸ナトリウム、同カリウム、同アンモニウム、炭酸水素ナトリウム、同カリウム、同アンモニウム、ほう酸ナトリウム、同カリウム、同アンモニウム、水酸化ナトリウム、同アンモニウム、同カリウム及び同リチウム等の無機アルカリ塩が挙げられる。
【0104】
また、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、2−(2−アミノエトキシ)エタノール、N,N−ジメチルエタノールアミン、N,N−ジエチルエタノールアミン、N,N−ジブチルエタノールアミン、N−メチルエタノールアミン、N−エチルエタノールアミン、N−ブチルエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミン等のアルカノールアミン類;ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、プロピレンジアミン、N,N−ジエチルエチレンジアミン、1,4−ブタンジアミン、N−エチル−エチレンジアミン、1,2−プロパンジアミン、1,3−プロパンジアミン、1,6−ヘキサンジアミン等のポリアルキレンポリアミン類;2−エチル−ヘキシルアミン、ジオクチルアミン、トリブチルアミン、トリプロピルアミン、トリアリルアミン、ヘプチルアミン、シクロヘキシルアミン等の脂肪族アミン;ベンジルアミン、ジフェニルアミン等の芳香族アミン類;ピペラジン、N−メチル−ピペラジン、メチル−ピペ−メチル−ピペラジン、メチル−ピペラジン、ヒドロキシエチルピペラジン等の環状アミン類等の水溶性アミンも好ましく用いられる。
【0105】
マスク層の剥離液として、第4級アンモニウム水酸化物も好ましく用いられる。具体的には、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド〔=TMAH〕、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、メチルトリプロピルアンモニウムヒドロキシド、メチルトリブチルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルエチルアンモニウムヒドロキシド、(2−ヒドロキシエチル)トリメチルアンモニウムヒドロキシド〔=コリン〕、(2−ヒドロキシエチル)トリエチルアンモニウムヒドロキシド、(2−ヒドロキシエチル)トリプロピルアンモニウムヒドロキシド、(1−ヒドロキシプロピル)トリメチルアンモニウムヒドロキシド等が例示される。中でもテトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド、メチルトリブチルアンモニウムヒドロキシド、メチルトリプロピルアンモニウムヒドロキシド、コリン等が好ましい。
第4級アンモニウム水酸化物は1種または2種以上を用いることができる。
【0106】
マスク層の剥離液として、有機アルカリ剤や、第4級アンモニウム水酸化物を用いる場合には、通常、レジスト膜の剥離性を向上させるために、水溶性有機溶媒と混合して用いることが多い。水溶性有機溶媒としては、ジメチルスルホキシド等のスルホキシド類;ジメチルスルホン、ジエチルスルホン、ビス(2−ヒドロキシエチル)スルホン、テトラメチレンスルホン〔=スルホラン〕等のスルホン類;N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミド等のアミド類;N−メチル−2−ピロリドン、N−エチル−2−ピロリドン、N−プロピル−2−ピロリドン、N−ヒドロキシメチル−2−ピロリドン、N−ヒドロキシエチル−2−ピロリドン等のラクタム類;1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、1,3−ジエチル−2−イミダゾリジノン、1,3−ジイソプロピル−2−イミダゾリジノン等のイミダゾリジノン類;エチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル等の多価アルコール類およびその誘導体などが挙げられる。中でも、ジメチルスルホキシド、ジメチルイミダゾリジノン、N−メチル−2−ピロリドン、およびジエチレングリコールモノブチルエーテル、スルホラン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド等が好ましく用いられる。水溶性有機溶媒は1種または2種以上を用いることができる。
【0107】
前記図8の(c)において、導電性基材1のエッチングは、凸部3の上面4の幅がレジストパターンの幅と同様にした場合を例示したが、図11の(a)に示すように、凸部3の上面4の幅がレジストパターンの幅よりも小さくなるようにオーバーエッチングしてもよい。この場合、オーバーエッチングを十分行って、引き続いて絶縁層を形成し、図11の(b)に示すようにし、続いてレジストパターンを剥離して図11の(c)のように絶縁層を有する導電性基材を作製してもよい。以上において、レジストパターンの形成法、エッチング法、絶縁層の形成法、残存レジストの剥離法等は前述したのと同様である。
【0108】
この後、凸部上面に絶縁層がないことを除けば、図9の(f)以降と同様にして目的の図10の(i)に示すようなめっき用導電性基材を作製することができる。
【0109】
前述しためっき用導電性基材は、必ずしも絶縁層を有していなくてもよい。凸部の先端部分に析出した金属を選択的に転写することができればよい。このようなものとして、凸部の先端部分の表面粗さを小さくし、その他の部分(前述した絶縁層が形成されている部分に相当する)の表面粗さを大きくすることで、めっき用導電性基材の先端部分に析出した金属を選択的に転写することができる。凸部の先端部分の表面粗さが低く、その他の部分の表面粗さが粗いことは、先端部分以外の部分(凹部内)に出現する金属が粒状となり、非連続的に析出する傾向があるため、別の基材により凸部の先端部分に形成された金属層のみを選択的に転写することが可能である。具体的には、凸部の先端部分の表面粗さは、十点平均粗さRz(JIS B 0601−1994に準拠して測定する)で2.0μm以下であることが好ましく、Rzが1.0μm以下であることがさらに好ましい。また、凹部内の表面粗さは、Rzが2.0μmを超えることが好ましく、Rzが3.0μm以上であることがさらに好ましい。
【0110】
本発明で用いられる導電性基材として回転体を用いることができるが、この基材としては導通可能である金属でできたロール状の回転体が望ましい。さらに回転体としてはドラム式電解析出法に用いるドラム電極などを用いることが好ましい。もちろん前記に示した凸部に対して幾何学図形上の凹部が形成されている導電性基材が平板であっても、それを電気的に導通するようにドラムに固定して用いることができる。導電性基材が平板の場合、一枚の導体層のパターンの製品を枚葉方式で作製することもできるが、回転体を用いると連続的に作製し、巻物として製品を得ることができるため、生産性に優れる。
【0111】
本発明における電気めっきに使用するめっき浴としてはピロリン酸銅浴が用いられる。ピロリン酸銅浴は、ピロリン酸銅及びピロリン酸塩を含む電解液である。その具体例としては次の配合からなるものがある。
【0112】
ピロリン酸銅 63〜105 g/L(銅分として23〜38 g/L)
ピロリン酸カリウム 200〜470 g/L
を含み、必要に応じて、
アンモニア水(比重0.88)1〜6 mL/L
硝酸カリウム 8〜16 g/L
光沢剤(メルカプトチアゾール、メルカプトチアゾール系添加物など) 適量
を溶解・配合した水溶液が用いられる。その他、ピロリン酸ナトリウムや、市販のピロリン酸銅めっき用添加剤を用いることもできる。さらに、モリブデン等VI族元素、及びコバルト、ニッケル等VIII族元素のうち一つ又はそれ以上の成分をめっき浴に添加すると、より安定して黒化処理を施すことができる。
【0113】
本発明において、めっき工程(金属パターンを作製する場合は、金属パターン層形成工程という)は、導電層形成工程及び黒化処理工程を含み、同一めっき浴中でこれらの工程が行われる。導電層形成工程において、導電性基材(陰極)と陽極の間に印加される第1の電流密度の下に、導電性基材に対し電気めっきが行われ(すなわち、導電性基材の凸部正面に銅を析出させて)、導電性の銅層が形成される。
導電性金属層導体層の体積抵抗率は、10μΩ/cm以下であることが好ましく、5μΩ/cm以下であることがさらに好ましい。この第1の電流密度の範囲としては正常な皮膜を生成する電流密度の上限を示す最大電流密度以下で、なおかつ正常な皮膜を生成するには下限となる臨界電流密度以上の範囲である。第1の電流密度は、具体的には、電解液の組成、添加物の種類、濃度、さらには循環方法や温度、攪拌方法などにより影響を受け、また、めっき用導電性基材の形状(凸部又は凹部のパターン)により影響を受けるので、一概に、規定できないが、好ましくは、0.5A/dm以上40A/dm以下の範囲で適宜決定される。その理由は臨界電流密度を外れると正常な皮膜が得られない。0.5A/dmを下回ると目標厚みまで析出するのに長時間必要とし、結果生産効率が低下し生産コストが下がらない、また40A/dmを超過すると析出銅が正常な皮膜にならずその後の転写などの工程に支障を及ぼす。この観点からは、第1電流密度は35A/dm以下であることが好ましい。
パターン状めっき部として凹部のパターンを有する導電性基材やパターン状めっき部がなく、大面積又は全面にめっきされる導電性基材を用いるときは、導電層形成工程において、導電層を品質良く形成するためには、電流密度は小さい方が好ましいが、めっき速度をあげるためには電流密度は大きい方が好ましく、このときには、めっき液の流れや温度を調節して良質の導電層が形成されるよう調整することが好ましい。これらの場合、第1の電流密度は、例えば0.5A/dm以上10A/dm以下が好ましい。パターン状めっき部として凹部のパターンを有する導電性基材を用いた場合も、第1の電流密度が大きくなると、析出銅が正常な皮膜になりにくくなる。
【0114】
導電層形成工程の後、黒化処理工程が行われる。黒化処理工程において、導電性基材(陰極)と陽極の間に印加される第2の電流密度の下に、導電層形成工程で形成された銅層の表面に、黒化処理が施される。この第2の電流密度の範囲は正常な皮膜を生成する電流密度の上限を示す最大電流密度以上であり、拡散によるイオンの補給が限界に達し、電圧を上げても電流密度が増加しなくなる電流密度の最大値を示す限界電流密度以下であることが好ましい。第2の電流密度は、メッシュ形状や、他のめっき条件によって適正値は変化するので一概にいえないが、黒色度を勘案して適宜決定される。場合により第2の電流密度が10A/dmであっても黒化処理することができ、場合により、もっと高くないと黒化処理できないことがある。一般に、パターンが微細になるとより大きな電流密度が必要になる傾向がある。他の条件が同じなら、第2の電流密度は、一般に、選択した第1電流密度よりは大きい範囲から適宜選択される。第2の電流密度が大きすぎると析出銅は針状析出となり転写不良や粉落ちなどの不具合を生じる傾向がある。このため、第2の電流密度の上限は、100A/dmとすることが好ましい。
【0115】
第2の電流密度は、一つに限らず、二つもしくはそれ以上を段階的を変化させて黒化皮膜として析出する粒子の大きさを制御するようにしてもよい。
【0116】
黒化処理工程においては、導電層形成工程で形成された銅層の表面に微粒子状の銅金属が電気めっきにより析出し、これにより黒色を帯びるようになる。この黒色は、微粒子状の銅金属がその下の導電層形成工程で形成された導電層上に析出した結果そのように見えるようになったものであり、そのような微粒子が導電層上に並んで、場合により重なって黒色金属層を形成しているといってよい。
【0117】
色の定量的な評価を行うために数値化することが求められ、その方法として国際照明委員会(CIE)ではいくつか規格化されているが、その中の代表的な方法としてL*a*b*表色系がある。これは、L*が明度を表し、a*は赤緑、b*は黄青の色相と彩度を示すものである。L*は完全な黒色(光の全吸収)は0で、反対に完全な白(光の全反射)は100で表される。
【0118】
ディスプレイの表示面などを電磁波遮蔽する導体層パターン付き基材は良好な光透過性が求められ、そのため電磁波遮蔽用の導体層パターンによる被覆率をなるべく減少させることが好ましく、さらに外光を反射せず、透過光の輝度を引き立たせ画質を向上させるためには、導体層パターン自体は黒であることが望ましい。しかしながら導体層パターン付き基材は前記の理由からそれ自体が光透過性が高いために微細な形状の導体層パターン自体の色度(明度)を直接測定することは困難である。
そこで、開口率が約50%では、明度25の黒色を背景に、導体層パターン部分の明度を測定する。具体的には、導体層パターンの黒色面を上して、導体層パターン付き基材の下に明度25の黒色紙を敷き、明度を測定する。導体層パターンが良好な黒色ならば、明度L*は25乃至50の値となり、また色度a*とb*はともに5以下の値を示す。黒化処理において、このように黒色度を調整することが好ましい。一方、黒色の程度が不十分で銅本来の色が残存する場合は、明度L*は60以上の高い値を示し、色度a*、b*ともに赤みまたは黄色を示す5より大きい値となる。
また、開口率が大きくなると、上記の方法による明度では、黒色度を測ることは困難になるため、色度a*とb*により決定する。この方法は、開口率50%でも成り立つ。すなわち、開口率が40%以上では、上記と同様に明度25の黒色を背景に、導体層パターン部分の色度を測定し、色度a*とb*がともに2.8以下、好ましくは2.6以下の値を示すときは、導体層パターンが良好な黒色を示す。この場合に、開口率50%以上のメッシュ状導体層パターンであれば、その導体層パターンが良好な黒色を示すと共に、電磁波遮蔽材用途に適したものとなる。電磁波遮蔽材用途ではその光透過部の開口率が80%以上であることがより好ましい。
開口率が40%未満(開口率0%、すなわち、べた銅箔も含む)では、上記と同様に明度25の黒色を背景に導体層パターン部分、又は、ベタ銅箔の色度を測定し、色度a*とb*がともに5以下であるとき良好な黒色を示し、特に2.8以下であるときさらに良好な黒色を示す。
【0119】
なお、色度は分光測色計CM−508d(コニカミノルタホールディングス)を使用し、反射モードに設定して測定できる。本計測機器の明度及び色度を測定する測色対象部は直径10mmの円形であり、その開口部の平均表色を求めることができる。
【0120】
本発明のように、銅金属層(銅箔)の生成から黒化処理を連続して行うと、導体層形成工程と黒化処理工程の間に水洗処理、及び導体層の表面処理が不要になるために製造時間の短縮・コストの低減ができ、環境負荷も低減できる。
【0121】
前記の導電層形成工程及び黒化処理工程において、析出する金属層の厚さに対して相対的に凹部がより深くなることにより、析出する金属層をより形状的に規正することができるという観点から、めっきにより形成される金属箔の厚さを絶縁層の高さの2倍以下とすることが好ましく、特に1.5倍以下、さらに1.2倍以下とすることが好ましいが、これに制限されるものではない。
めっきの程度を、析出する金属層が凹部内に存在する程度とすることができる。このような場合であっても、凹部形状が開口方向に幅広であるため、さらには、絶縁層により形成される凹部側面の表面を平滑にできるため、金属箔パターンの剥離時のアンカー効果は極めて小さくできる。また、析出する金属層の幅に対する高さの割合を高くすることが可能となり、透過率をより向上させることができる。
【0122】
また、上記のめっき用導電性基材を用いて、めっきした後、その基材上に形成された銅箔又はパターン化銅箔(パターン化銅金属)を通常の方法により、剥離することにより、銅箔又はパターン化銅箔を取得することができる。この場合、剥離用基材として、別の基材に粘着剤層が積層されているものを使用し、パターン化銅箔が形成されているめっき用導電性基材の銅箔面に粘着剤を向けて、剥離用基材を圧着後、剥離し、パターン化銅箔を剥離用基材に転写してめっき用導電性基材からパターン化銅箔を剥離することもできる。パターン化銅箔は適宜、この剥離用基材から剥離して取得される。
【0123】
本発明におけるパターン化銅箔は、前記しためっき用導電性基材の形状に対応したものとなり、平面形状として、正三角形、二等辺三角形、直角三角形などの三角形、正方形、長方形、ひし形、平行四辺形、台形などの四角形、(正)六角形、(正)八角形、(正)十二角形、(正)二十角形などの(正)n角形(nは3以上の整数)、円、だ円、星型などの貫通孔がある金属箔、このような形状の凹部がある金属箔、このような形状の個々に分離された金属箔等であり、めっき後にめっき用導電性基材から剥がしやすくするためには、貫通孔がある場合でも連続した箔であることが好ましい。なお、形状は、目的に応じて選択される。このような形状は、組合せて使用できる。また、貫通孔又は凹部の大きさ、分布密度は、目的応じて適宜決定される。
以上説明した方法により、電磁波シールド性を有する銅金属メッシュ、キャパシタ用の穴あき銅箔などを作製することができる。
【0124】
前述した凹部に絶縁層を有する導電性基材の凸部の先端部分にめっきにより析出させる金属の厚さ(めっき厚さ)は、十分な導電性を示す(このとき電磁波シールド性が十分に発現する)ためには、0.5μm以上であることが好ましく、導体層にピンホールが形成される(このとき、電磁波シールド性が低下する)可能性を小さくするためには、3μm以上の厚さであることがさらに好ましい。また、めっき厚さが大きすぎると、析出した金属は幅方向にも広がるため、転写したラインの幅が広くなり、導体層付きパターン基材の開口率が低下し、透明性、非視認性が低下する。したがって、透明性、非視認性を確保するためには、析出した金属の厚みを20μm以下とすることが好ましく、さらに、めっきの析出時間を短縮し、生産効率をあげるためには、めっきの厚みは10μm以下であることがさらに好ましい。黒化処理については、前述した明度を目安として処理される。
黒化処理が進みすぎると細線部に粉落ちが発生しやすくなるので、注意を要する。
【0125】
本発明において、パターン状のめっき部を有するめっき用導電性基材を用いる導体層パターン付き基材の製造法は、
(イ)めっき用導電性基材のめっき部にめっきにより表面が黒化された銅金属を析出させて導体層パターンを生成させる工程、
(ロ)上記めっき用導電性基材のめっき部に析出させた銅金属を別の基材に転写する工程を含む。
(イ)の工程は、前記に説明したとおりである。以下、(ロ)の工程について説明する。
【0126】
導体層パターンが転写される基材としては、ガラス、プラスチック等からなる板、プラスチックフィルム、プラスチックシートなどがある。ガラスとしては、ソーダガラス、無アルカリガラス、強化ガラス等のガラスを使用することができる。プラスチックとしては、ポリスチレン樹脂、アクリル樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂などの熱可塑性ポリエステル樹脂、酢酸セルロース樹脂、フッ素樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリメチルペンテン樹脂、ポリウレタン樹脂、フタル酸ジアリル樹脂などの熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂が挙げられる。プラスチックの中では、透明性に優れるポリスチレン樹脂、アクリル樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂が好適に用いられる。導体層パターンが転写される基材の厚みは、0.5mm〜5mmがディスプレイの保護や強度、取扱い性から好ましい。
【0127】
本発明における導体層パターンが転写される基材は、プラスチックフィルムが好ましい。このプラスチックフィルムとしては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステル類、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、EVAなどのポリオレフィン類、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデンなどのビニル系樹脂、ポリサルホン、ポリエーテルサルホン、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリイミド、アクリル樹脂などのプラスチックからなるフィルムで全可視光透過率が70%以上のものが好ましい。これらは単層で使うこともできるが、2層以上を組み合せた多層フィルムとして使用してもよい。前記プラスチックフィルムのうち透明性、耐熱性、取り扱いやすさ、価格の点からポリエチレンテレフタレートフィルムまたはポリカーボネートフィルムが特に好ましい。
【0128】
前記プラスチックフィルムの厚さは特に制限はないが、1mm以下のものが好ましく、厚すぎると可視光透過率が低下しやすくなる傾向がある。また、薄く成りすぎると取扱い性が悪くなることを勘案すると、前記プラスチックフィルムの厚さは5〜500μmがより好ましく、50〜200μmとすることがさらに好ましい。
【0129】
これらのプラスチックフィルム等の基材は、ディスプレイの前面からの電磁波の漏洩を防ぐための電磁波シールドフィルムとして使用するためには、透明であるもの(すなわち、透明基材)が好ましい。
【0130】
前記の導体層パターンが転写される基材の導体層パターンが転写される面は、転写する際に粘着性を有していることが必要である。そのためには、基材自体が必要な粘着性を有していてもよいが、転写面に粘着層を積層しておくことが好ましい。
【0131】
前記の粘着層は、転写時に粘着性を有しているもの又は加熱若しくは加圧下に粘着性を示すものが好ましい。粘着性を有している物としては、ガラス転移温度が20℃以下の樹脂が好ましく、ガラス転移温度が0℃以下である樹脂を用いることが最も好ましい。粘着層に用いる材料としては、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、活性エネルギー線の照射で硬化する樹脂等を使用することができる。加熱時に粘着性を示す場合、そのときの温度が高すぎると、透明基材にうねりやたるみ、カール等の変形が起こることがあるので、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、活性エネルギー線の照射で硬化する樹脂のガラス転移点は80℃以下であることが好ましい。前記熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、活性エネルギー線の照射で硬化する樹脂の重量平均分子量は、500以上のものを使用することが好ましい。分子量が500未満では樹脂の凝集力が低すぎるために金属との密着性が低下するおそれがある。
【0132】
前記の熱可塑性樹脂として代表的なものとして以下のものがあげられる。たとえば天然ゴム、ポリイソプレン、ポリ−1,2−ブタジエン、ポリイソブテン、ポリブテン、ポリ−2−ヘプチル−1,3−ブタジエン、ポリ−2−t−ブチル−1,3−ブタジエン、ポリ−1,3−ブタジエン)などの(ジ)エン類、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン、ポリビニルエチルエーテル、ポリビニルヘキシルエーテル、ポリビニルブチルエーテルなどのポリエーテル類、ポリビニルアセテート、ポリビニルプロピオネートなどのポリエステル類、ポリウレタン、エチルセルロース、ポリ塩化ビニル、ポリアクリロニトリル、ポリメタクリロニトリル、ポリスルホン、ポリスルフィド、フェノキシ樹脂、ポリエチルアクリレート、ポリブチルアクリレート、ポリ−2−エチルヘキシルアクリレート、ポリ−t−ブチルアクリレート、ポリ−3−エトキシプロピルアクリレート)、ポリオキシカルボニルテトラメタクリレート、ポリメチルアクリレート、ポリイソプロピルメタクリレート、ポリドデシルメタクリレート、ポリテトラデシルメタクリレート、ポリ−n−プロピルメタクリレート、ポリ−3,3,5−トリメチルシクロヘキシルメタクリレート、ポリエチルメタクリレート、ポリ−2−ニトロ−2−メチルプロピルメタクリレート、ポリ−1,1−ジエチルプロピルメタクリレート、ポリメチルメタクリレートなどのポリ(メタ)アクリル酸エステルが使用可能である。これらのポリマーを構成するモノマーは、必要に応じて、2種以上共重合させて得られるコポリマーとして用いてもよいし、以上のポリマー又はコポリマーを2種類以上ブレンドして使用することも可能である。
【0133】
活性エネルギー線で硬化する樹脂としては、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂等をベースポリマとし、各々にラジカル重合性あるいはカチオン重合性官能基を付与させた材料が例示できる。ラジカル重合性官能基として、アクリル基(アクリロイル基),メタクリル基(メタクリロイル基),ビニル基,アリル基などの炭素−炭素二重結合があり、反応性の良好なアクリル基(アクリロイル基)が好適に用いられる。カチオン重合性官能基としては、エポキシ基(グリシジルエーテル基、グリシジルアミン基)が代表的であり、高反応性の脂環エポキシ基が好適に用いられる。具体的な材料としては、アクリルウレタン、エポキシ(メタ)アクリレート、エポキシ変性ポリブタジエン、エポキシ変性ポリエステル、ポリブタジエン(メタ)アクリレート、アクリル変性ポリエステル等が挙げられる。活性エネルギー線としては、紫外線、電子線等が利用される。
【0134】
活性エネルギー線が紫外線の場合、紫外線硬化時に添加される光増感剤あるいは光開始剤としては、ベンゾフェノン系、アントラキノン系、ベンゾイン系、スルホニウム塩、ジアゾニウム塩、オニウム塩、ハロニウム塩等の公知の材料を使用することができる。また、前記の材料の他に汎用の熱可塑性樹脂をブレンドしても良い。
【0135】
熱硬化性樹脂としては、天然ゴム、イソプレンゴム、クロロプレンゴム、ポリイソブチレン、ブチルゴム、ハロゲン化ブチル、アクリロニトリル−ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、ポリイソブテン、カルボキシゴム、ネオプレン、ポリブタジエン等の樹脂と架橋剤としての硫黄、アニリンホルムアルデヒド樹脂、尿素ホルムアルデヒド樹脂、フェノールホルムアルデヒド樹脂、リグリン樹脂、キシレンホルムアルデヒド樹脂、キシレンホルムアルデヒド樹脂、メラミンホルムアルデヒド樹脂、エポキシ樹脂、尿素樹脂、アニリン樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、ホルマリン樹脂、金属酸化物、金属塩化物、オキシム、アルキルフェノール樹脂等の組み合わせで用いられるものがある。なおこれらには、架橋反応速度を増加する目的で、汎用の加硫促進剤等の添加剤を使用することもできる。
【0136】
熱硬化性樹脂として、硬化剤を利用するものとしては、カルボキシル基、水酸基、エポキシ基、アミノ基、不飽和炭化水素基等の官能基を有する樹脂とエポキシ基、水酸基、アミノ基、アミド基、カルボキシル基、チオール基等の官能基を有する硬化剤あるいは金属塩化物、イソシアネート、酸無水物、金属酸化物、過酸化物等の硬化剤との組み合わせで用いられるものがある。なお、硬化反応速度を増加する目的で、汎用の触媒等の添加剤を使用することもできる。具体的には、硬化性アクリル樹脂組成物、不飽和ポリエステル樹脂組成物、ジアリルフタレート樹脂、エポキシ樹脂組成物、ポリウレタン樹脂組成物等が例示される。
【0137】
さらに、熱硬化性樹脂又は活性エネルギー線で硬化する樹脂としては、アクリル酸又はメタクリル酸の付加物が好ましいものとして例示できる。
【0138】
アクリル酸又はメタクリル酸の付加物としては、エポキシアクリレート(n=1.48〜1.60)、ウレタンアクリレート(n=1.5〜1.6)、ポリエーテルアクリレート(n=1.48〜1.49)、ポリエステルアクリレート(n=1.48〜1.54)なども使うこともできる。特に接着性の点から、ウレタンアクリレート、エポキシアクリレート、ポリエーテルアクリレートが優れており、エポキシアクリレートとしては、1、6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、アリルアルコールジグリシジルエーテル、レゾルシノールジグリシジルエーテル、アジピン酸ジグリシジルエステル、フタル酸ジグリシジルエステル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールテトラグリシジルエーテル、ソルビトールテトラグリシジルエーテル等の(メタ)アクリル酸付加物が挙げられる。エポキシアクリレートなどのように分子内に水酸基を有するポリマーは接着性向上に有効である。これらの共重合樹脂は必要に応じて、2種以上併用することができる。
【0139】
本発明で粘着剤として使用する樹脂には必要に応じて、架橋剤、硬化剤、希釈剤、可塑剤、酸化防止剤、充填剤、着色剤、紫外線吸収剤や粘着付与剤などの添加剤を配合してもよい。
【0140】
粘着層の厚さは、薄すぎると十分な強度を得られないため、めっきで析出した金属を転写する際に、金属が粘着層に密着せず、転写不良が発生することがある。したがって、粘着層の厚みは、1μm以上であることが好ましく、量産時の転写信頼性を確保するためには3μm以上であることが更に好ましい。また、粘着層の厚さが厚いと、粘着層の製造コストが高くなるとともに、ラミネートした際に粘着層の変形量が多くなり、薄膜絶縁層に接触する機会が増えるため、粘着層の厚みは30μm以下が好ましく、薄膜絶縁層と粘着層が接触する機会を低減させることから10μm以下がさらに好ましい。
【0141】
別の基材に粘着剤を塗布して形成した粘着層を有するフィルムを、金属が析出している面に貼り合わせる際には、粘着剤の特性に応じて、必要であれば加熱される。
【0142】
電磁波遮蔽材に応用する場合、最終的に得られる導体層パターン付き基材の導体層パターンのライン幅は、40μm以下、ライン間隔は100μm以上の範囲とすることが好ましい。また、導体層パターン(幾何学図形)の非視認性の観点からライン幅は25μm以下、可視光透過率の点からライン間隔は120μm以上がさらに好ましい。ライン幅は、あまりに小さく細くなると表面抵抗が大きくなりすぎて遮蔽効果に劣るので1μm以上が好ましい。ライン間隔は、大きいほど開口率は向上し、可視光透過率は向上する。本発明によって得られる導体層パターンをディスプレイ前面に使用する場合、開口率は50%以上が必要であるが、60%以上がさらに好ましい。ライン間隔が大きくなり過ぎると、電磁波遮蔽性が低下するため、ライン間隔は1000μm(1mm)以下とするのが好ましい。なお、ライン間隔は、幾何学図形等の組み合せで複雑となる場合、繰り返し単位を基準として、その面積を正方形の面積に換算してその一辺の長さをライン間隔とする。
【0143】
また、電磁波遮蔽材に応用する場合、導体層パターンのラインの厚みは100μm以下が好ましく、ディスプレイ前面の電磁波遮蔽シートとして適用した場合、厚みが薄いほどディスプレイの視野角が広がり電磁波遮蔽材料として好ましく、また、金属を電気めっきにより析出させるのにかかる時間を短縮することにもなるので40μm以下とすることがより好ましく、18μm以下であることがさらに好ましい。あまりに厚みが薄いと表面抵抗が大きくなりすぎて電磁波遮蔽効果に劣るようになり、また、導体層パターンの強度が劣り、転写時の導電性基材からの剥離が困難になるため0.5μm以上が好ましく、さらに1μm以上がさらに好ましい。
【0144】
本発明における導体層パターン付き基材において、導体層パターンの開口率を高くすることができ、これにより透光性を優良にできる。本発明における導体層パターン付き基材は、透光性電磁波遮蔽部材として使用することができる。
【0145】
また、本発明における導体層パターン付き基材を電磁波遮蔽部材として、ディスプレイ等の前面に用いる場合には、反射防止等を含む視認性確保を図るために導電層パターンは、表面が黒化処理されたものであることが好ましい。電磁波遮蔽部材はその前面が黒色であることがハイコントラストの実現及びディスプレイの電源切断時に画面が黒いこと等の要求を満たすことから好ましいとされている。本発明においては黒化処理する工程は、導電性基材の凸部上面に金属を析出させた後で、別の基材に転写する前に導体層形成と同一めっき浴を用いることによって行うことができる。また、別の基材に転写した後に行うこともできる。
【0146】
別の基材に転写した後に黒化処理工程を行う場合は、例えば黒色ニッケルめっきなどの黒色めっきを行うことが望ましい。
【0147】
黒色ニッケルめっきは硫化ニッケルを主成分とする黒色合金を被めっき体表面に電着で形成するめっき法であるが、VIII族元素の鉄、コバルトもいずれも硫化物としたとき黒色を呈すので用いることができる。同じVIII族元素の中でも硫化ニッケルは目的にかなった黒色を呈し、さらに下地金属とも良好な密着性を有する。VIII族元素以外の硫化物では銀、水銀、銅、鉛などを、用いることが可能である。またスズとニッケル、スズとコバルトなどの合金めっきや黒色クロムめっきを用いても粉落ちが無く、金属層のみに良好な密着性を有する黒化処理層(黒色層)を形成することができる。これら黒化処理層を形成する工程は、導電性基材の凸部上面に金属を析出させる前後で、また別の基材に転写する前に行うこともできるし、別の基材に転写した後に行うこともできる。
【0148】
黒色ニッケルめっき層を形成するに際しては、硫酸ニッケル60〜100g/L、硫酸ニッケルアンモニウム30〜50g/L、硫酸亜鉛20〜40g/L、チオシアン酸ナトリウム10〜20g/Lを含有するめっき液を用いることができる。このめっき浴を用い、pH:4〜7、温度:45〜55°C、電流密度0.5〜3.0A/dmの条件で、ステンレスアノード又はニッケルアノード、攪拌には循環ポンプ並びにエアー攪拌を使用することにより、プラズマディスプレイパネル用として好適な黒色ニッケルめっき層を形成することができる。黒色ニッケルめっきの前処理としては下地となる金属層との密着性を高めるために適切なアルカリ脱脂、酸洗浄を行うことがより好ましい。各成分の濃度範囲を超えたところでめっきを行うとめっき液が分解しやすく、良好な黒色を得ることが困難になる。また、温度に関しても55℃を超える温度でめっきを行うとめっき液が分解しやすくなる。逆に45℃未満では1.0A/dm以上のめっきを行うと、製品にざらつきが生じて粉落ちしやすくなり、やはりめっき液寿命が短くなる。45℃未満で1.0A/dm以下の電流密度でめっきを行うことは可能であるが、望む黒色を得るのに長時間のめっきが必要となり、生産性を低下させてしまう。それゆえ、上の濃度組成のめっき液を使用して短時間で黒色ニッケルめっきを行う際の温度範囲は45〜55℃が最適である。また、電流密度に関しては温度範囲内で0.5A/dm以下でも可能であるが、望む黒色を得るのに長時間のめっきが必要となる。3.0A/dm以上でめっきを行うとめっき液が分解しやすく、粉落ちしやすい黒色皮膜が形成される。黒色ニッケルめっきではステンレスアノードを使用した場合、めっき液寿命が短くなるので、通常ニッケルアノードを使用するのが望ましい。
【0149】
表面が黒化処理された導体層パターンの防錆処理としては公知の手段としてクロメート処理、ベンゾトリアゾールなどを使用することができる。また、市販されている防錆剤を使用することもできる。また、表面が黒化処理された導電層を別の基材に転写した後に再度黒化処理を施す場合に、防錆処理を行うことが望ましい。防錆処理としては公知の手段としてクロメート処理、ベンゾトリアゾールなどを使用することができる。また、市販されている防錆剤を使用することもできる。また、黒化処理層つき導体層パターンを別の基材に転写した後に再度同じ方法で黒化処理層を形成する場合も同様に防錆処理を行うことが望ましい。
【0150】
導電層パターン付き基材の作製方法の一例を、導電性基材に、断面形状が台形である凸部3(図2(b)参照)を形成した場合を例に、図12を用いて説明する。
【0151】
まず、図12(a)は、上面4を有する凸部3のパターン及びそれによって描かれる幾何学図形状の凹部を有する導電性基材1の凸部を有する面の全面に絶縁層6を形成した状態を示す断面図である。絶縁層6は、前述したようにウェット塗布(電着塗装を含む)や、DLC、GLC、スパッタや蒸着などドライコートにより形成できる。前記の絶縁層6のうち、凸部3の上面のものを凸部3の上面4が露出するまで研磨する。図12(b)は、この状態の断面図を示す。
【0152】
次に、このように凹部に絶縁層を有し、凸部3の上面4が露出している導電性基材1にめっきを施して、凸部3の上面4に金属11を析出させる。図12(c)は、この状態の断面図を示す。次に、金属11の表面を黒化処理し、金属11を黒化処理された金属11′とする。図12(d)は、この状態の断面図を示す。
【0153】
次いで、別の基材12に粘着層13を塗布したフィルムを、導電性基材1の黒化処理された金属11′が存在している面に貼り合わせる。図12(e)はこの状態の断面図を示す。透明基材12に粘着剤を塗布して形成した粘着層13を有するフィルムを、黒化処理された金属11′が存在している面に貼り合わせる際には、粘着剤の特性に応じて、必要なら加熱される。
【0154】
そして、前記の別の基材12に粘着層13を塗布したフィルムを剥離することにより、黒化処理された金属11′が粘着層13に貼り付いて導電性基材1から剥離し、すなわち、別の基材に転写され、導体層パターン付き基材14を得ることとなる。この状態の断面図を図12(f)に示す。
【0155】
前記で得られた導体層パターン付き基材の導体層パターンを黒化処理して、黒化処理された導体層パターンを有する導体層パターン付き基材とすることができる。図13は、これの断面図を示す。図13において、別の基材12に粘着層13を介して、表面が黒化処理されて黒色層15となった導体層パターン11(すなわち、表面が黒化処理された導体層パターン)が貼り合わされている。
【0156】
また、図14において、別の基材12に粘着層13を介して、黒色層16を有する導体層パターン11が貼り合わされているが、これは、図13に示す導体層パターン付き基材の黒化処理導体層パターンの未黒化処理面を黒化処理したものである。
【0157】
以上の黒化処理された導体層パターンを有する導体層パターン付き基材を電磁波遮蔽部材としてディスプレイの前面において利用するときは、黒色層を設けた方の面がディスプレイの視聴者側に向くようにして用いられる。
【0158】
本発明における導体層パターン付き基材を電磁波遮蔽体として用いる場合は、そのまま、ディスプレイ画面に適宜別の接着剤を介して又は介さないで貼着して使用することができるが、他の基材に貼着してからディスプレイに適用してもよい。他の基材は、ディスプレイの前面からの電磁波を遮断するために使用するには透明であることが必要である。
【0159】
図15に導体層パターン付き基材が他の基材に貼着されて得られた電磁波遮蔽体の断面図を示す。図15において、基材12に積層されている粘着剤13に黒化処理された導体層パターン11′が埋設し、粘着層及び導体層パターンが他の基材17により覆われている。これは、基材12に粘着剤13を介して黒化処理された導体層パターン11′を転写して得られた導体層パターン付き基材の黒化処理された導体層パターン11′が存在する面を、適度な圧力で他の基材17に圧着する方法により作製することができる。この場合、粘着層13が十分な流動性を有するものであるか十分な流動性を有するうちに、適度な圧力を加えることにより黒化処理された導体層パターン11′を粘着剤13に埋設する。
この電磁波遮蔽体では、粘着層13と他の基材17が直接接触し、良好な密着性が得られる。また、基材17や基材12は、透明性を有し、しかもその表面の平滑性が優れるものを使用することにより、透明性も高い電磁波遮蔽体を得ることができる。
【0160】
図16においては、基材12に粘着層13を介して黒化処理された導体層パターン11′が接着された導体層パターン付き基材の上が透明樹脂18により被覆されている。
【0161】
図17は、別の態様の電磁波遮蔽体の断面図を示す。この電磁波遮蔽体は、図16の電磁波遮蔽部材が、基材12の導体層パターンがある面とは反対の面で、接着剤19を介して他の基材20が貼り合わされたものである。
【0162】
図18は、さらに、別の態様の電磁波遮蔽体の断面図を示す。図18において、基材(別の基材)12に粘着層13を介して黒化処理された金属11′からなる導体層パターンが接着されており、その上を透明樹脂からなる接着剤又は粘着剤21により被覆され、さらにその上に保護フィルム22が積層されている。基材12のもう一方の面には接着層19を介してガラス板等の他の基材20が貼着されている。この電磁波遮蔽部材では、基材(別の基材)12に粘着剤13を介して接着されている導体層パターンを有する導体層パターン付き基材の導体層パターンが存在する面を、透明樹脂21によりコーティングし、さらに保護フィルム22を積層し、ついで、得られた積層物の基材12のもう一方の面(何も積層されていない面)に接着剤を塗布して接着層19を形成し、これを他の基材20に押しつけて接着することにより作製することができる。前記の透明樹脂21としては、前記熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂のほかに活性エネルギー線で硬化する樹脂を用いることもできる。活性エネルギー線で硬化する樹脂を用いることは、それが瞬時に又は短時間に硬化することから、生産性が高くなるので好ましい。
【0163】
回転体を用いることにより電気めっきにより形成されたパターンを連続的に剥離しながら、構造体を巻物として得ることができる。すなわち、図19において電解浴槽101内の電解液(メッキ液)102が陽極103とドラム電極などの回転体104の間のスペースに配管105とポンプ106により供給されるようにする。陽極103と回転体104の間に電圧をかけ、回転体104を一定速度で回転させると回転体104の表面に導体層が電解析出し、さらに、陽極103とは別の陽極107と回転体104の間に陽極103と回転体104の間よりも大きな電圧をかけることにより、析出した導体層パターンの上に黒色の皮膜を析出させることができる。陽極107は一つに限らず、二つもしくはそれ以上取り付け、段階的に電圧を変化させて黒化皮膜として析出する粒子の大きさを制御してもよい。
【0164】
なお、図19に示す状態では、第1の電流密度の下に導電性金属層を形成する導電層形成工程を行うための陽極103と、第2の電流密度の下に導電性金属層の表面にその表面が黒色になるように金属を析出させる黒化処理工程を行うための陽極107とが、互いに離れてメッキ液の中に浸漬されているが、さらに、各陽極(電極)103、107の間に、絶縁体で構成された遮断部材151が設けてもよい。遮断部材151を設けることにより、第1の電流密度と第2の電流密度とを維持しやすくなる。
【0165】
導電性基材が回転体からなる電性基材又は回転体に取り付けた導電性基材である場合、遮断部材151は板状に形成されて各電極103、107の間に設けられており、遮断部材151の基端部側は、電解浴槽101の内壁に一体的に固定されており、遮断部材151の先端部側は、導電性基材(回転体104)の近傍に位置している。したがって、導電性基材104と遮断部材151の先端部との間では、メッキ液が通じている。
【0166】
また、陽極103、107の材質はチタニウム金属を基体とした表面に白金族金属又はその酸化物の薄膜を構成した不溶性陽極などであることが好ましい。さらにその形状としては特に限定されるわけではないが、平板状、棒状、多孔質状、メッシュ状等が挙げられる。
【0167】
すなわち、たとえば、図21に示すように、長手方向に垂直な断面が長方形状である複数の陽極103a(陽極103に対応する陽極)と、長手方向に垂直な断面が長方形状である単数もしくは複数の陽極107b(陽極107に対応する陽極)とを、回転体104の回転中心軸CL1の円周上に配置した構成であってもよい。
【0168】
黒化処理された導体層パターンは、電解液102の外で、形成された導体層パターン108に接着性支持体109を圧接ロール110によって圧接させながら、連続的に回転体104から剥離しつつ接着性支持体109に転写させ、導体層パターン付き接着支持体111をロールに巻き取ることができ、このようにして導体層パターンを製造することができる。なお、回転中の回転体から導体層パターンが剥離された後に、電解液に再び浸漬される前に回転体又は回転体に固定された導電性基材の表面をブラシロールで清掃するようにしてもよい。図示していないが、陽極の上端には高速で循環している電解液が上方へ噴出するのを防ぐために水きりロールを設置してもよい。水切りロールによってせき止められた電解液は陽極の外部から下の電解液の浴槽へと戻り、ポンプにより循環される。また、図示しないがこの循環の間には消費された金属イオン源や添加剤等を必要に応じて追加する工程、また各成分の分析を行う工程を追加することが望ましい。
【0169】
さらには、前記第1の電流密度の下に導電性金属層を形成する導電層形成工程を行うための第1の陽極と、前記第2の電流密度の下に前記導電性金属層の表面にその表面が黒色になるように金属を析出させる黒化処理工程を行うための第2の陽極とを兼用し、前記第1の電流密度の下で前記導電層形成工程の形成後、前記第2の電流密度の下で前記黒化処理工程を行うようにしてもよい。
【0170】
以上で詳細に説明した凸部のパターン及びそれによって描かれる幾何学図形状の凹部を有し、凹部に絶縁層を有するめっき用導電性基材は、凸部のパターン及びそれによって描かれる幾何学図形状の絶縁層を有する凹部は、適当な広さで作製される。
【0171】
その領域を領域Aとすると、本発明に係るめっき用導電性基材には、そのまわりに、電磁波遮蔽部材のアース部に対応する領域(領域Bという)を備えることができる。このとき、領域Aと領域Bは同一のパターンでもよい。また、領域Aにおける凹部の面積比率を、領域Bにおける凹部の面積比率と同じ又はそれよりも大きくすることが好ましく、10%以上大きくすることはさらに好ましい。凹部の面積比率は、平面図で見たときに、ただし、各領域の全面積に対する各領域の凸部における露出部分を除いた部分の面積の比率をいう。また、領域Bの凹部比率を0としてもよいが、この場合には、めっき用導電性基材上にめっきによりベタの金属膜が周辺に形成される。ベタの金属膜は転写に際し、割れやすいので、望ましくは、領域Bの凹部の面積率は40%以上とすることが好ましく、また、97%未満であることが好ましい。
【0172】
領域Bにおいて、凸部のパターンによって描かれる幾何学図形状は、前記説明したものが使用できるが、改めて例示すると、
(1)メッシュ状幾何学的模様
(2)所定間隔で規則的に配列された方形状幾何学的模様
(3)所定間隔で規則的に配列された平行四辺形模様
(4)円模様又は楕円模様
(5)三角形模様
(6)五角形以上の多角形模様
(7)星形模様
等がある。
【0173】
また、領域Bにおける凸部の形成、絶縁層の形成等は、前述した領域Aと同様に行うことができる。さらに、凸部の露出部分の高さ、露出部分が先端方向に進むにつれて幅が広がっておらず、全体として下部よりも上部で幅が小さくなるようにされること、d10/h10の関係等も領域Aと同様にされることが好ましい。
【0174】
本発明において、透光性の電磁波シールド部の外側をアース部として、使用することが好ましい。このアース部は、透光性の電磁波シールド部と同様のパターンを有していてもよく、異なったパターンを有していてもよい。また、アース部は、前述したようなパターン又は全くベタ状の膜であってもよい。アース部は、その内側の透光性の電磁波シールド部と導通していることが好ましい。
【0175】
めっき用導電性基材の少なくとも透光性の電磁波シールド部の導体層パターンに対応した部分が矩形体又は回転体である場合、その外側で、透光性の電磁波シールド部の導体層パターンに対応した部分を囲むように、または、対向する2片にそって、連続した帯状に前記凸部の上面と同じ高さの部分(絶縁層がない)を設けることができる。これにより、導電性基材へのめっき後、導体層パターンの部分に連続した帯状のめっき箔を有する導体層パターン金属層を形成することができる。例えば、そのパターンの平面図を図20に示す。図20(a)中、黒い部分がめっきにより形成された導体層パターンとそれに連続した箔部分である。この箔部分があることにより、箔自体が支持体代わりとなり導体層パターンを導電性基材から剥離しやすくなる。得られた導体層パターンをその後の工程中に両端部分で十分支えることができるため、取扱に優れる。場合により、接着性支持体を用いず剥離することもできる。箔部分は後で不要分を切り落とすことができ、また、箔部分をある程度の幅で残してアース部として利用することもできる。前記のパターンの別の例を図20(b)に示す。これは、導電性基材として回転体を使用した場合、回転体に導電性支持体を取り付けた場合などに作製できる導体層パターン金属層の一部の平面図である。
これにより、透光性の電磁波シールド部の四辺にアース部を形成することができる。本発明で得られる導体層パターンにおいては、電磁波遮蔽部材を作製したときに、遮蔽した電磁波を電流としてアースするために網目状の導体層パターンの周囲に帯状の導体層(額縁部分)が導通状態で連続しているパターンがより好ましい。
【0176】
本発明において、めっき用導電性基材上に作製された導体層パターンは、前述したのと同様の転写法により、中間の接着性支持体を使用して導電性支持体から導体層パターンを転写剥離し、さらに、この中間の接着性支持体から最終の接着性支持体に前記転写法と同様にして導体層パターンを転写してもよい。また、転写された導体層パターンを有する中間の接着性支持体と最終の接着性支持体を導体層パターンを挟んで重ねて圧着して電磁波遮蔽体を作製することもできる。この場合の圧着方法としては、常温下又は加熱下にプレス機により加圧する方法、常温下又は加熱下に加圧ロール間を通過させる方法等がある。
【0177】
本発明における導体層パターン付き基材を遮蔽体として用いる場合には、反射防止層、近赤外線遮蔽層等をさらに積層してもよい。めっき用導電性基材上に析出した金属を転写する基材そのものが反射防止層、近赤外線遮蔽層等の機能層を兼ねていてもよい。さらに、導体層パターン層に樹脂をコーティングする際に用いられるカバーフィルムに、反射防止層、近赤外線遮蔽層等の機能層を兼ねていてもよい。本発明における導体層パターン付き基材は、透明導電膜としての利用が可能で、ITO導電膜などと同様の用途にも利用可能である。
【実施例1】
【0178】
(凸部のパターン及びそれによって描かれる幾何学図形状の凹部を有する導電性基材の作製)
レジストフィルム(フォテックH−Y920、日立化成工業(株) 製)を750×1100mmのステンレス(SUS304、仕上げ3/4H、厚さ100μm、日新製鋼(株)製)板に貼り合わせた。貼り合わせの条件は、ロール温度105℃、圧力0.5MPa、ラインスピード1m/minで行った。次いで、光透過部のライン幅が30μm、ラインピッチが300μm、バイアス角度が45°で、格子状に形成したネガフィルムを、レジストフィルムを貼り合わせたステンレス板の上に静置した。紫外線照射装置を用いて、600mmHg以下の真空下において、ネガフィルムの上から、紫外線を120mJ/cm照射した。さらに。1%炭酸ナトリウム水溶液で現像することで、SUS板の上にライン幅30μm、ラインピッチ300μm、バイアス角度45°のレジストマスクを形成した。さらに、40℃に加温した塩化第二鉄水溶液(45°B、鶴見曹達(株)製)を用いて、SUS板をエッチングした。エッチングは、SUS板のライン幅が20μmになるまで行った。次いで、5%水酸化ナトリウム溶液を用いて、SUS板の上に形成されたレジストフィルムを剥離して、格子模様状のパターン(ライン幅、すなわち、凸部上面の幅20μm、ピッチ300μm、凸部の高さ15μm、凸部の断面形状は曲面(図2−cと同様))を形成し、上面を有する凸部のパターン及びそれによって描かれる幾何学図形状の凹部を有するめっき用導電性基材を作製した。
【0179】
なお、めっき用導電性基材の外周部40mmに凸部上面の幅80μm、ピッチ300μm、凸部の高さ15μmで凸部の網目状パターンのアース対応部(領域B)を形成した。
【0180】
(絶縁膜を有する導電性基材の作製)
次いで、前記の導電性基材を陰極にして、陽極をチタン板として、カチオン型電着塗料(Insuleed3020、日本ペイント(株)製)中で、15V10秒、の条件で、格子模様状にエッチングされたステンレス板に電着塗装した。水洗後100℃10分間乾燥した後、190℃25分の条件で焼付けした。電着塗料の塗布厚は、2.5μmであった。
【0181】
さらに、電着塗装したステンレス板を、研磨粉(アルミナ液B0.05μm、リファインテック(株)製)と研磨布(CONSUMABLES、BUEHLER社製)を用いて凸部の上面部分を研磨し、SUS面を露出させ、絶縁膜を有する導電性基材を作製した。この導電性基材の凸部上面端部における電着塗膜の厚さは2.5μm、凹部における電着塗膜の厚さは2.5μmであった。この導電性基材は、凸部上面以外は絶縁膜で覆われたものであった。
【0182】
(銅めっき)
次いで、絶縁膜を有する導電性基材を陰極となる回転ドラム電極にテフロン(登録商標)テープを使用して固定し、電解銅めっきを行った。電解銅めっき浴の浴組成及び電解条件は次の通りである。
【0183】
ピロリン酸銅の濃度:100g/L
ピロリン酸カリウムの濃度:250g/L
アンモニア水(30%)使用量:2mL/L
pH:8〜9
浴温:30℃
陽極:銅板
めっき浴の攪拌は穏やかな液循環のみとした。導電性基材の凸部の上面に、析出した金属の厚さが5μmになるまで電流密度20A/dmでめっきした。この段階での析出した金属は、赤色であり、導電度は、0.1Ω/□であった。この後、電流密度を50A/dmに変更して引き続き5秒間めっきを行い、表面を黒化した。表面が黒化処理された導体パターンがついた導電性基材をめっき浴から取り出し、水洗し、乾燥した。
【0184】
(粘着フィルムの作製)
厚さ100μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(A−4100、東洋紡績(株)製)の表面にプライマー(HP―1、日立化成工業(株) 製)を厚さ1μm)に、粘着層としてアクリルポリマー(HTR−280、ナガセケムテックス(株)製)を厚さ10μmに順次塗布して粘着フィルムを作製した。
【0185】
(転写)
この粘着フィルムの粘着剤面と、前記導電性基材の表面が黒化処理された銅めっきを有する面を、ロールラミネータを用いて貼り合わせた。ラミネート条件は、ロール温度25℃、圧力0.1MPaとした。次いで、導電性基材に貼り合わせた粘着フィルムを剥離したところ、前記導電性基材の凸部の上面に析出した銅が粘着フィルムに転写されていた。
これにより、ライン幅28μm、ラインピッチ300μm、導体厚さ5μmの金属パターンからなる導体層パターン付き基材が得られた。転写後の導電性基材を観察した結果、絶縁膜が剥離している箇所はなかった。
【0186】
(保護膜の形成)
前記で得られた表面が黒化処理された導体層パターン付き基材の導体層パターンが存在する面に、UV硬化型樹脂ヒタロイド7983AA3(日立化成工業(株)製)をコーティングし、ポリカーボネートフィルム(マクロホールDE、バイエル株式会社製、75μm)でラミネートして導体層パターンをUV硬化型樹脂中に埋没させた後、紫外線ランプを用いて1J/cmの紫外線を照射してUV硬化型樹脂を硬化させて、保護膜を有する導体層パターン付き基材を得た。
【0187】
(明度及び色度の測定)
得られた導体層パターン付き基材の明度及び色度を分光測色計CM−508d(コニカミノルタホールディングス(株)製)を用いて測定した。測定は基材の下部に明度L*=25の黒色紙を敷いて反射モードで行った。
【0188】
測定対象は、表面が黒化処理された導体層パターンの外側に形成したアース部とし、アース部の開口面積が約50%である。測定したところ、明度L*は34であり好適な値の範囲内であった。また、色度はa*は0.4、b*は0.9であり、いずれも色相の低い値が得られた。
【実施例2】
【0189】
(凸部のパターン及びそれによって描かれる幾何学図形状の凹部を有する導電性基材の作製)
SUS板に形成される凸部の上面の幅が7μmになるまでエッチングしたこと以外は、実施例1と同様にして、SUS板上に格子模様状のパターン(上面の幅7μm、ピッチ300μm、凸部の高さ30μm、凸部の断面形状は曲面(図2−(c)と同様))を形成して、凸部のパターン及びそれによって描かれる幾何学図形状の凹部を有する導電性基材を得た。
【0190】
(絶縁膜を有する導電性基材の作製)
次いで、前記の導電性基材を陽極にして、陰極をチタン板として、アニオン型電着塗料(AMG−5E/5W、(株)シミズ製)中で、10V60秒の条件で、前記導電性基材に電着塗装した。水洗後100℃10分間乾燥した後、180℃30分の条件で焼付けした。電着塗料の塗布厚は、2.6μmであった。さらに電着塗装した導電性基材を、研磨粉(Type0.1R、Baikalox社製)と研磨布(CONSUMABLES、BUEHLER社製)を用いて凸部の上面部分を研磨し、SUS面を露出させ、絶縁膜を有する導電性基材を作製した。この導電性基材の凸部上面端部における電着塗膜の厚さは0.2μm、凹部にける電着塗膜の厚さは2.6μmであった。この導電性基材は、凸部上面以外は絶縁膜で覆われたものであった。この導電性基材は、凸部上面以外は絶縁膜で覆われたものであった。
【0191】
(銅めっき)
次いで、絶縁膜を有する導電性基材を陰極となる回転ドラム電極にテフロン(登録商標)テープを使用して固定し、電解銅めっきを行った。電解銅めっき浴の浴組成及び電解条件は次の通りである。
【0192】
ピロリン酸銅の濃度:100g/L
ピロリン酸カリウムの濃度:250g/L
アンモニア水(30%)の使用量:2mL/L
pH:8〜9
浴温:30℃
陽極:銅板
めっき浴の攪拌は穏やかな液循環のみとした。導電性基材の凸部の上面に、析出した金属の厚さが3μmになるまで電流密度20A/dmでめっきした。この段階での析出した金属は、赤色であり、導電度は、0.1Ω/□であった。この後、電流密度を50A/dmに変更して、引き続き5秒間めっきを行い、表面を黒化した。表面が黒化処理された導体パターンがついた導電性基材を取り出し、水洗し、乾燥した。
【0193】
(接着フィルムの作製)
次いで、厚さ125μmのPETフィルム(A−4100、東洋紡株式会社製)に下記樹脂組成物1を乾燥塗布厚が5μmとなるように塗布して、接着フィルムを作製した。
【0194】
樹脂組成物1の組成
バイロンUR−1350 (東洋紡績(株)製、ポリエステル樹脂)
100重量部 コロネートL (日本ポリウレタン(株)製、イソシアネート化合物)
3重量部。
【0195】
(転写)
次いで、前記で得た接着フィルムの接着剤面と、前記導電性基材の表面が黒化処理された銅めっきを有する面を、ロールラミネータを用いて貼り合わせた。ラミネート条件は、ロール温度100℃、圧力0.1MPa、ラインスピード0.3m/minとした。接着剤のガラス転移点(Tg)を超える温度でラミネートされたため、接着剤表面にタック性が発現した。次いで、導電性基材から接着フィルムを剥離すると、前記導電性基材の凸部の上面に析出した銅が接着剤表面に転写された。このようにして、ライン幅11μm、ラインピッチ300μm、導体厚3μmで、さらに表面が黒化処理された金属パターンが接着フィルム上に転写され、本発明の導体層パターン付き基材を得た。
【0196】
(保護膜の形成)
前記で得られた導体層パターン付き基材の導体層パターンが存在する面に、実施例1と同様にしてUV硬化型樹脂ヒタロイド7983AA3(日立化成工業(株)製)をコーティングした後、PETフィルム(A−4100、東洋紡(株)製、75μm)の易接着処理を施していない面を、UV硬化型樹脂とでラミネートして導体層パターンをUV硬化型樹脂中に埋没させた。さらに、紫外線ランプを用いて1J/cmの紫外線を照射してUV硬化型樹脂を硬化させた後、PETフィルム(A−4100、東洋紡(株)製、75μm)を剥離して、保護膜を有する導体層パターン付き基材を得た。
【0197】
(明度及び色度の測定)
得られた導体層パターン付き基材の明度及び色度を、測定対象を含み実施例1に記載の方法にて測定した。明度L*は38であり好適な値の範囲内であった。また、色度はa*は0.5、b*は0.8であり、いずれも色相の低い値が得られた。
【実施例3】
【0198】
(上面を有する凸部のパターン及びそれによって描かれる幾何学図形状の凹部を有する導電性基材の作製)
ステンレス(SUS316L 仕上げ2B 日新製鋼(株)製、厚さ300μm)を用いて、凸部のライン幅が15μmとなるまでエッチングした以外は、実施例1と同様の条件で行い、格子模様状のパターン(ライン幅15μm、ピッチ300μm、凸部の高さ20μm)、凸部の断面形状は曲面(図2−cと同様))を形成して、上面を有する凸部のパターン及びそれによって描かれる幾何学図形状の凹部を有する導電性基材を得た。
【0199】
(絶縁膜を有する導電性基材の作製)
次いで、実施例2と同様に前記の導電性基材を陽極にして、陰極をチタン板として、アニオン型電着塗料(AMG−5E/5W、(株)シミズ製)中で、10V60秒の条件で、前記導電性基材に電着塗装した。水洗後100℃10分間乾燥した後、180℃30分の条件で焼付けした。電着塗料の塗布厚は、2.8μmであった。さらに電着塗装した導電性基材を、研磨粉(Type0.1R、Baikalox社製)と研磨布(CONSUMABLES、BUEHLER社製)を用いて凸部の上面部分を研磨し、SUS面を露出させ、絶縁膜を有する導電性基材を作製した。この導電性基材の凸部上面端部における電着塗膜の厚さは0.2μm、凹部にける電着塗膜の厚さは2.8μmであった。この導電性基材は、凸部上面以外は絶縁膜で覆われたものであった。
【0200】
(銅めっき)
次いで、絶縁膜を有する導電性基材を陰極となる回転ドラム電極にテフロン(登録商標)テープを使用して固定し、電解銅めっきを行った。電解銅めっき浴の浴組成及び電解条件は次の通りである。
【0201】
ピロリン酸銅の濃度:100g/L
ピロリン酸カリウムの濃度:250g/L
アンモニア水(30%)の使用量:2mL/L
pH:8〜9
浴温:30℃
陽極:銅板
めっき浴の攪拌は穏やかな液循環のみとした。導電性基材の凸部の上面に、析出した金属の厚さが7μmになるまで電流密度20A/dmでめっきした。この段階での析出した金属は、赤色であり、導電度は、0.1Ω/□であった。この後、電流密度を50A/dmに変更して引き続き5秒間めっきを行い、表面を黒化した。表面が黒化処理された導体パターンがついた導電性基材は引続き水洗し、乾燥した。
【0202】
(粘着フィルムの作製)
次いで、厚さ100μmのPETフィルム(A−4100、東洋紡績株式会社製)の易接着面に下記の樹脂組成物2を乾燥塗布厚が15μmとなるように塗布して粘着フィルムを作製した。
【0203】
樹脂組成物2の組成
AS−406(一方社油脂工業(株)製、アクリルポリマー)
100重量部
テトラドX (三菱瓦斯化学(株)製、硬化剤) 2重量部。
【0204】
(転写)
前記で得られた粘着フィルムの粘着剤面と、前記導電性基材の表面が黒化処理された銅めっきを有する面とを、ロールラミネータを用いて貼り合わせた。ラミネート条件は、ロール温度25℃、圧力0.1MPa、ラインスピード1m/minとした。次いで、導電性基材から粘着フィルムを剥離したところ、前記導電性基材の凸部の先端(露出部分)に析出した銅(黒化処理されたもの)が粘着フィルムの接着剤表面に転写されていた。このようにしてライン幅17μm、ラインピッチ300μm、導体厚7μmでさらに黒化処理された金属パターンが接着フィルム上に選択的に転写され、本発明の導体層付き基材を製造した。
【0205】
(電磁波遮蔽体の製造)
前記で得られた導体層パターン付き基材の粘着剤面(導体層パターンを有する面)を厚さ2mmのガラスに当ててラミネートして貼り合わせた。ラミネート条件は、温度25℃、圧力0.5MPa、ラインスピード0.5m/minとした。ロールラミネートによって、厚さ1μmの導体層パターンは粘着剤に埋設され、透明性の高い電磁波遮蔽体が得られた。
【0206】
(明度及び色度の測定)
得られた導体層パターン付き基材の明度及び色度を、測定対象を含み実施例1に記載の方法にて測定した。明度L*は38であり好適な値の範囲内であった。また、色度はa*は0.5、b*は0.8であり、いずれも色相の低い値が得られた。
【実施例4】
【0207】
(凸部のパターン及びそれによって描かれる幾何学図形状の凹部を有する導電性基材の作製)
ステンレスとして、SUS316L〔仕上げ2B 日新製鋼(株)製、厚さ300μm、サイズは250mm×350mm(ドラムに巻きつけるため、ドラム外周と同じサイズ)〕及びネガフィルムとして、中央部に光透過部のライン幅が30μm、ラインピッチが300μm、バイアス角度が45°で格子状のパターンを配し、その外周部(幅20mm)に光透過部のライン幅が100μm、ラインピッチが300μm、バイアス角度が45°で格子状のパターンを配したネガフィルムを使用し、他は実施例1と同様の条件で行い、上面を有する凸部のパターン及びそれによって描かれる幾何学図形状の凹部を有する導電性基材を作製した。この導電性基材の中央部は、凸部上面の幅15μm、凸部のピッチ300μm及び凸部の高さ20μm格子模様状のパターン(凸部の断面形状は図2−cと同様)であり、その外周部(幅20mm)は、凸部上面の幅80μm、ピッチ300μm、凸部の高さ15μmで上面を有する凸部の網目状パターン(凸部の断面形状は図2−cと同様)であった。この外周部は電磁波遮蔽部材のアース部に対応するものである。
【0208】
(絶縁膜を有するめっき用導電性基材の作製)
次いで、実施例2と同様に上記の導電性基材を陽極にして、陰極をチタン板として、アニオン型電着塗料(AMG−5E/5W、(株)シミズ製)中で、10V60秒の条件で、上記導電性基材に電着塗装した。水洗後100℃10分間乾燥した後、180℃30分の条件で焼付けした。電着塗料の塗布厚は、2.8μmであった。さらに電着塗装した導電性基材を、研磨粉(Type0.1R、Baikowski Chimie SA社製)と研磨布(CONSUMABLES、Buehler GMBH社製)を用いて凸部の上面部分を研磨し、SUS面を露出させ、絶縁膜を有するめっき用導電性基材を作製した。このめっき用導電性基材の凸部上面端部における電着塗膜の厚さは0.2μm、凹部における電着塗膜の厚さは2.8μmであった。このめっき用導電性基材は、凸部上面以外は絶縁膜で覆われたものであった。
【0209】
(銅めっき)
次いで、絶縁膜を有するめっき用導電性基材を陰極となる回転ドラム電極にテフロン(登録商標)テープを使用して固定し、電解銅めっきを行った。
【0210】
回転ドラム電極の主な仕様は次の通りである。
【0211】
ドラム直径 :110mm
ドラム幅 :250mm
めっき槽 :直径250mm、高さ:300mm、液容量:8L
陽極 :銅板
ドラム回転数:10rpm
電解銅めっき浴の浴組成及び電解条件は次の通りである。
【0212】
<浴組成>
ピロリン酸銅の濃度 :100g/L
ピロリン酸カリウムの濃度 :250g/L
アンモニア水(30%)の使用量:2mL/L
<電解条件>
pH:8〜9
浴温:30℃
ドラムに巻き付けられためっき用導電性基材の凸部の上面に、析出した金属の厚さが3μmになるまで電流密度10A/dmでめっきした。この段階での析出した金属は、赤色であり、導電度は、0.1Ω/□であった。この後、電流密度を30A/dmに変更して引き続き5秒間めっきを行い、表面を黒化した。表面が黒化処理された導体層パターンがついためっき用導電性基材は引続き水洗し、乾燥した。
【0213】
(粘着フィルムの作製)
次いで、厚さ100μmのPETフィルム(A−4100、東洋紡績株式会社製)の易接着面に下記の樹脂組成物2を乾燥塗布厚が15μmとなるように塗布して粘着フィルムを作製した。
【0214】
<樹脂組成物2の組成>
AS−406(一方社油脂工業(株)製、アクリルポリマー)
100重量部
テトラドX (三菱瓦斯化学(株)製、硬化剤) 2重量部。
【0215】
(転写)
上記で得られた粘着フィルムを、その粘着剤面と上記のドラムに巻き付けられためっき用導電性基材上の黒化処理された銅めっきとが接するように、ロールラミネータを用いて黒化処理された銅めっきに貼り合わせた。
【0216】
ラミネート条件は、ロールラミネータのロール温度25℃、圧力0.1MPa、ラインスピード0.5m/minとした。次いで、めっき用導電性基材から粘着フィルムを剥離したところ、上記導電性基材の凸部の上面に析出した銅(黒色金属層を有するもの)が粘着フィルムの接着剤表面に転写されていた。このようにしてライン幅20μm、ラインピッチ300μm、導体厚3μmでさらに黒化処理された導体層パターンが接着フィルム上に選択的に転写され、本発明の導体層パターン付き基材を製造した。
【0217】
(電磁波遮蔽体の製造)
上記で得られた導体層パターン付き基材の粘着剤面(導体層パターンを有する面)を厚さ2mmのガラスに当ててラミネートして貼り合わせた。ラミネート条件は、温度25℃、圧力0.5MPa、ラインスピード0.5m/minとした。ロールラミネートによって、厚さ3μmの導体層パターンは粘着剤に埋設され、透明性の高い電磁波遮蔽体が得られた。
【0218】
(明度及び色度の測定)
得られた導体層パターン付き基材の明度及び色度を、測定対象を含み実施例1に記載の方法にて測定した。明度L*は38であり好適な値の範囲内であった。また、色度はa*は0.5、b*は0.8であり、いずれも色相の低い値が得られた。
【実施例5】
【0219】
(凸部のパターン及びそれによって描かれる幾何学図形状の凹部を有する導電性基材の作製)
ステンレスとして、SUS316L〔仕上げ2B 日新製鋼(株)製、厚さ300μm、サイズは750mm×1100mm〕及びネガフィルムとして、中央部に光透過部のライン幅が30μm、ラインピッチが300μm、バイアス角度が45°で格子状のパターンを配し、その外周部(幅20mm)に光透過部のライン幅が100μm、ラインピッチが300μm、バイアス角度が45°で格子状のパターンを配したネガフィルムを使用し、他は実施例1と同様の条件で行い、上面を有する凸部のパターン及びそれによって描かれる幾何学図形状の凹部を有する導電性基材を作製した。この導電性基材の中央部は、凸部上面の幅15μm、凸部のピッチ300μm及び凸部の高さ20μm格子模様状のパターン(凸部の断面形状は図2−cと同様)であり、その外周部(幅20mm)は、凸部上面の幅80μm、ピッチ300μm、凸部の高さ15μmで上面を有する凸部の網目状パターン(凸部の断面形状は図2−cと同様)であった。この外周部は電磁波遮蔽部材のアース部に対応するものである。
【0220】
(絶縁膜を有するめっき用導電性基材の作製)
次いで、実施例2と同様に上記の導電性基材を陽極にして、陰極をチタン板として、アニオン型電着塗料(AMG−5E/5W、(株)シミズ製)中で、10V60秒の条件で、上記導電性基材に電着塗装した。水洗後100℃10分間乾燥した後、180℃30分の条件で焼付けした。電着塗料の塗布厚は、2.8μmであった。さらに電着塗装した導電性基材を、研磨粉(Type0.1R、Baikowski Chimie SA社製)と研磨布(CONSUMABLES、Buehler GMBH社製)を用いて凸部の上面部分を研磨し、SUS面を露出させ、絶縁膜を有するめっき用導電性基材を作製した。このめっき用導電性基材の凸部上面端部における電着塗膜の厚さは0.2μm、凹部における電着塗膜の厚さは2.8μmであった。このめっき用導電性基材は、凸部上面以外は絶縁膜で覆われたものであった。
【0221】
(銅めっき)
次いで、絶縁膜を有するめっき用導電性基材を陰極となる回転ドラム電極にテフロン(登録商標)テープを使用して固定し、電解銅めっきを行った。
【0222】
回転ドラム電極の主な仕様は次の通りである。
【0223】
ドラム直径 :425mm
ドラム幅 :900mm
めっき槽 :直径600mm、液容量:80L
陽極 :不溶性電極板
ドラム回転数:0.4rpm
電解銅めっき浴の浴組成及び電解条件は次の通りである。
【0224】
<浴組成>
ピロリン酸銅の濃度 :100g/L
ピロリン酸カリウムの濃度 :250g/L
アンモニア水(30%)の使用量:2mL/L
<電解条件>
pH:8〜9
浴温:30℃
ドラムに巻き付けられためっき用導電性基材の凸部の上面に、析出した金属の厚さが5μmになるまで電流密度10A/dmでめっきした。この段階での析出した金属は、赤色であり、導電度は、0.08Ω/□であった。この後、電流密度を30A/dmに変更して引き続き5秒間めっきを行い、表面を黒化した。表面が黒化処理された導体層パターンがついためっき用導電性基材は引続き水洗し、乾燥した。
【0225】
(粘着フィルムの作製)
次いで、厚さ125μmのPETフィルム(A−4100、東洋紡績株式会社製)の易接着面に下記の樹脂組成物2を乾燥塗布厚が15μmとなるように塗布して粘着フィルムを作製した。
【0226】
<樹脂組成物2の組成>
AS−406(一方社油脂工業(株)製、アクリルポリマー)
100重量部
テトラドX (三菱瓦斯化学(株)製、硬化剤) 2重量部。
【0227】
(転写)
上記で得られた粘着フィルムを、その粘着剤面と上記のドラムに巻き付けられためっき用導電性基材上の黒化処理された銅めっきとが接するように、ロールラミネータを用いて黒化処理された銅めっきに貼り合わせた。
【0228】
ラミネート条件は、ロールラミネータのロール温度25℃、圧力0.1MPa、ラインスピード0.5m/minとした。次いで、めっき用導電性基材から粘着フィルムを剥離したところ、上記導電性基材の凸部の上面に析出した銅(黒色金属層を有するもの)が粘着フィルムの接着剤表面に転写されていた。このようにしてライン幅25μm、ラインピッチ300μm、導体厚5μmでさらに黒化処理された導体層パターンが接着フィルム上に選択的に転写され、本発明の導体層パターン付き基材を製造した。
【0229】
(電磁波遮蔽体の製造)
上記で得られた導体層パターン付き基材の粘着剤面(導体層パターンを有する面)を厚さ2mmのガラスに当ててラミネートして貼り合わせた。ラミネート条件は、温度25℃、圧力0.5MPa、ラインスピード0.5m/minとした。ロールラミネートによって、厚さ5μmの導体層パターンは粘着剤に埋設され、透明性の高い電磁波遮蔽体が得られた。
【0230】
(明度及び色度の測定)
得られた導体層パターン付き基材の明度及び色度について、測定対象は、開口面積が約80%である表面が黒化処理された導体層パターンとし、それ以外は実施例1と同様にして測定した。明度L*は40.9であり好適な値の範囲内であった。また、色度はa*は2.2、b*は1.75であり、いずれも色相の低い値が得られた。
【0231】
(比較例1)
前記実施例1の(銅めっき)において、導体層パターン付き基材を、以下の組成、条件の硫酸銅めっき液中で電解銅めっきを行った。
【0232】
(電解銅めっき液の組成)
硫酸銅・五水和物の濃度:220g/L、
硫酸の濃度:50g/L
塩酸の濃度:50ppm
pH:1〜3
浴温:30℃
陽極:銅板
めっき浴の攪拌は実施例1と同様に穏やかな循環のみとした。導電性基材の凸部の上面に、析出した金属の厚さが5μmになるまで電流密度20A/dmでめっきした。この後、電流密度を50A/dmに変更して引き続き5秒間めっきを行つたが、析出した導体層を黒化することはできなかった。
【実施例6】
【0233】
(パターンなしの銅箔の製造)
750×1100mmのステンレス(SUS304、仕上げ3/4H、厚さ100μm、日新製鋼(株)製)板に、実施例1と同様に以下の組成、条件の銅めっき液中で電解銅めっきを行った。
【0234】
(電解銅めっき液の組成)
ピロリン酸銅の濃度:100g/L
ピロリン酸カリウムの濃度:200g/L
アンモニア水(30%)の使用量:5mL/L
pH:8〜9
浴温:30℃
陽極:銅板
【0235】
導電性基材の凹部に、析出した金属の厚さが5μmになるまで電流密度2A/dmで銅めっきを行った。この段階での析出した金属は、赤色の連続膜であった。次いで、電流密度を4A/dmに変更し、引き続いて5秒間めっきを行った。その結果、表面が黒色である厚さ5μmの金属銅箔を得た。得られた銅箔の明度及び色度を実施例1記載の分光測色計で反射モードに設定して測定したところ、明度L*は33、色度a*は0.5、b*は−0.1であった。
【実施例7】
【0236】
(めっき用導電性基材の作製)
150mm角のSUS304(表面#600研磨)板の一方の表面にネガ型フォトレジスト(SU−8、日本化薬(株)製)をスピンコーターにより膜厚5μmとなるように塗布し、65℃で3分間、さらに95℃で7分間ホットプレートで加熱し、乾燥させて、フォトレジスト膜を有する基板(導電性基材)を得た。
次いで、この基板のフォトレジスト膜表面にライン幅30μm、ピッチ300μmの格子状マスクを密着させ、300mJ/cmの条件で露光し、さらに、95℃で15分間オーブンで加熱した。露光後のフォトレジスト膜を有する基板を、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート中で90秒間揺動させてフォトレジスト膜を現像し、その後、2−プロパノールで洗浄した。このようにして、導電性基材が底面として露出している格子状の凹部を有するレジストパターン付き導電性基材を得た。次いで、レジストパターン付き導電性基材を150℃30分間、次いで200℃15分間、加熱して焼き付け、めっき用導電性基材を得た。
得られためっき用導電性基材のライン幅(凹部の幅)は23.5μm、ピッチ(凹部のピッチ)は300μmであった。
(銅めっき)
上記のめっき用導電性基材を用いて、以下の組成、条件のピロリン酸銅めっき液中で電解銅めっきを行った。
(電解銅めっき液の組成)
ピロリン酸銅の濃度:100g/L
ピロリン酸カリウムの濃度:250g/L
アンモニア水(30%)の使用量:2mL/L
pH:8〜9
浴温:30℃
陽極:銅板
めっき浴の攪拌は穏やかな循環のみとした。導電性基材の凹部に、析出した金属の厚さが8μmになるまで電流密度5A/dmでめっきした。この段階での析出した金属は、赤色の連続膜であり、導電度は、0.03Ω/□であった。この後、電流密度を50A/dmに変更して引き続き5秒間めっきを行い、表面を黒化した。表面が黒化処理された導体層パターンがついためっき用導電性基材は引続き水洗し、乾燥した。めっき用導電性基材から表面が黒化処理された導体層パターンを剥離して、表面が黒化されている格子状の銅メッシュを得た。なお、導電性基材上に形成されていたレジストマスクもこのとき剥離した。
得られた導体層パターンの明度及び色度を、測定対象は、剥離した導体層パターンとし、それ以外は実施例1に記載の方法にて測定した。明度L*は47.3、色度a*は0.75、b*は2.54でありいずれの色相も低い値が得られた。
【0237】
なお、ライン幅、ピッチ、開口率は顕微鏡写真を元に実測した。ライン厚み及び銅箔部厚みは得られた金属箔付き導体層パターンを一部切り取って樹脂で注型し、断面を顕微鏡観察することにより実測した。可視光透過率はダブルビーム分光光度計(200−10型、株式会社日立製作所製)を用いて、400〜700nmの透過率を測定し、その平均値を用いた。パターン異常の有無は拡大鏡を用いて肉眼にて確認した。電磁波遮蔽性はアドバンテスト法を用い、周波数300MHzで測定した。導電性基材の耐久性はめっき及び剥離を繰り返した後の導電性基材を直接拡大鏡で観察して確認した。色むらは導体層パターン付き基材の黒色処理面の色むらを目視で確認した。
【図面の簡単な説明】
【0238】
【図1】凸部に対する凹部の幾何学図形が形成されている導電性基材の一例を示す斜視図。
【図2】図1のA−A断面図の一部。
【図3】図1のA−A断面図の一部であって図2とは別の例。
【図4】凸部のパターン及びそれによって描かれる幾何学図形状の凹部を有する導電性基材において、その表面に絶縁層を形成した状態の導電性基材の断面図。
【図5】凸部のパターン及びそれによって描かれる幾何学図形状の凹部を有する導電性基材において、その表面に絶縁層を形成した状態の導電性基材の他の例を示す断面図。
【図6】凸部のパターン及びそれによって描かれる幾何学図形状の凹部を有する導電性基材において、その表面に絶縁層を形成した状態の導電性基材の他の例を示す断面図。
【図7】本発明における導電性基材の凸部のパターン及び凸部側面の絶縁層の構造の一例を示す断面図。
【図8】めっき用導電性基材の作製方法を示す工程の一例を断面図。
【図9】めっき用導電性基材の作製方法を示す工程の一例を断面図。
【図10】めっき用導電性基材の作製方法を示す工程の一例を断面図。
【図11】めっき用導電性基材の作製方法を示す工程の一例を断面図。
【図12】作製しためっき転写用版を用いた導体層パターン付き基材の作製方法の一例を示す断面図。
【図13】導体層パターンが黒化処理された金属パターンからなる導体層パターン付基材の断面図。
【図14】導体層パターンが黒化処理された金属パターンからなる導体層パターン付基材の断面図。
【図15】導体層パターン付基材が他の基材に貼着された電磁波遮蔽部材の一例を示す断面図。
【図16】導体層パターン付基材が他の基材に貼着された電磁波遮蔽部材の一例を示す断面図。
【図17】導体層パターン付基材が他の基材に貼着された電磁波遮蔽部材の一例を示す断面図。
【図18】導体層パターン付基材が他の基材に貼着された電磁波遮蔽部材の一例を示す断面図。
【図19】回転体を用いて導体層パターン付き基材を連続的に作製するための装置の概念断面図。
【図20】導体層パターンの平面図。
【図21】回転体を用いて導体層パターン付き基材を連続的に作製するための装置の変形例の概念断面図。
【符号の説明】
【0239】
1:めっき用導電性基材
2:凹部
3:凸部
4:凸部の上面
5:凸部の側面
6:絶縁層
7:光硬化性樹脂層
8:絶縁層
9:粘着フィルム
10:マスク層
11:金属、導体層パターン
11´:黒色化処理された導体層パターン
12、14、17、20:基材
13:粘着層
15、16:黒色層
18:透明樹脂
19:接着層
21:粘着剤
22:保護フィルム
101:電解浴槽
102:電解液
103:陽極
104:回転体
105:配管
106:ポンプ
107:陽極
108:導体層パターン
109:接着性支持体
110:圧接ロール
111:導体層パターン付き接着支持体
151:遮断部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
めっき用導電性基材上にめっきにより銅金属を析出させ、その表面を黒化処理する表面が黒化処理された銅金属の製造方法において、第1電流密度の下に層状に銅金属を析出させる銅金属層形成工程、及び、第1の電流密度よりも大きい第2の電流密度の下に上記銅金属層の表面に、その表面が黒色になるように銅金属を析出させる黒化処理工程を、一つのピロリン酸銅めっき浴中にて行うことを特徴とする表面が黒化処理された銅金属層の製造方法。
【請求項2】
銅金属層形成工程を第1の電流密度を含む第1の電着領域において行い、黒化処理工程を第2の電流密度を含む第2の電着領域において行う表面が黒化処理された銅金属層の製造方法。
【請求項3】
黒化処理工程において、明度25の黒色を背景にして、開口率が50%の光透過部の明度が25〜50、又はa*及びb*が共に5以下になるように銅金属を析出させる請求項1又は2記載の表面が黒化処理された銅金属層の製造方法。
【請求項4】
黒化処理工程において、明度25の黒色を背景にして、開口率が40%以上の光透過部の色度a*及びb*が共に2.8以下になるように金属を析出させる請求項1又は2記載の表面が黒化処理された銅金属層の製造方法。
【請求項5】
黒化処理工程において、開口率が40%未満であって、明度25の黒色を背景にした光透過部又は光未透過部の色度a*及びb*が共に5以下になるように金属を析出させる請求項1又は2記載の表面が黒化処理された銅金属層の製造方法。
【請求項6】
ピロリン酸銅メッキ浴が添加剤としてモリブデン等VI族元素、及びコバルト、ニッケル等VIII族元素のうち一つ又はそれ以上を含む合金めっき浴である請求項1〜5のいずれかに記載の表面が黒化処理された銅金属層の製造方法。
【請求項7】
第1の電流密度が0.5〜40A/dmである請求項1〜6のいずれか1項に記載の表面が黒化処理された銅金属層の製造方法。
【請求項8】
めっき用導電性基材が、パターン状のめっき部を有する導電性基材である請求項1〜7のいずれか1項に記載の表面が黒化処理された銅金属層の製造方法。
【請求項9】
めっき用導電性基材が、パターン状のめっき部として凸部のパターンを有する導電性基材である請求項8記載の表面が黒化処理された銅金属層の製造方法。
【請求項10】
めっき用導電性基材が、凸部のパターンによって描かれる幾何学図形状の凹部を有する導電性基材であって、その凸部の先端部分に銅金属を析出させる請求項9記載の表面が黒化処理された銅金属層の製造方法。
【請求項11】
めっき用導電性基材は、その凹部が絶縁層で被覆されているが凸部の先端部分は露出しており、その露出部分の幅が1μm〜40μmであって、凹部に絶縁層を施した後の凸部の高さが、10μm以上である請求項10に記載の表面が黒化処理された銅金属層の製造方法。
【請求項12】
めっき用導電性基材の凹部に絶縁層を施した後の凸部の高さが、10μm以上である請求項11記載の表面が黒化処理された銅金属層の製造方法。
【請求項13】
めっき用導電性基材の絶縁層の厚さが凸部側面におけるその端付近では10μm以下である請求項11又は12に記載の表面が黒化処理された銅金属層の製造方法。
【請求項14】
めっき用導電性基材の凸部の間隔が100μm〜1000μmである請求項7〜10のいずれか1項に記載の表面が黒化処理された銅金属層の製造方法。
めっき用導電性基材の凸部の上端から0.5〜5μm低い位置よりも低い位置の凹部表面に絶縁層が形成されている請求項9〜13のいずれか1項に記載の表面が黒化処理された銅金属層の製造方法。
【請求項15】
めっき用導電性基材が、パターン状のめっき部として凹部のパターンを有する導電性基材である請求項8記載の表面が黒化処理された銅金属層の製造方法。
【請求項16】
めっき用導電性基材が回転体、または回転体に取り付けられた平板である請求項1〜15のいずれか1項に記載の表面が黒化処理された銅金属層の製造方法。
【請求項17】
導電性基材として、回転体からなる導電性基材又は回転体に取り付けた導電性基材を使用し、その一部をメッキ液に浸漬させ、回転体を回転させつつ、金属パターン作製工程及び転写工程を行う請求項1〜15のいずれか1項に記載の表面が黒化処理された銅金属の製造方法。
【請求項18】
銅金属層形成工程において、導電性基材のめっき部において銅金属の厚さが0.1〜20μmになるように銅金属を析出させる請求項1〜17のいずれか1項に記載の表面が黒化処理された銅金属層の製造方法。
【請求項19】
前記第1の電流密度の下に銅金属層を形成する銅金属層形成工程を行うための第1の陽極と、前記第2の電流密度の下に前記導電性金属層の表面にその表面が黒色になるように金属を析出させる黒化処理工程を行うための第2の陽極とが、互いに離れて前記メッキ液の中に浸漬されており、前記各陽極の間には、絶縁体で構成された遮断部材が設けられていることを特徴とする請求項1〜18のいずれかに1項に記載の表面が黒化処理された銅金属層の製造方法。
【請求項20】
前記第1の電流密度の下に銅金属層を形成する銅金属層形成工程を行うための第1の陽極と、前記第2の電流密度の下に前記銅金属層の表面にその表面が黒色になるように金属を析出させる黒化処理工程を行うための第2の陽極とが兼用されており、前記第1の電流密度の下で前記導電層形成工程の形成後、前記第2の電流密度の下で前記黒化処理工程を行うことを特徴とする請求項1〜18のいずれか1項に記載の表面が黒化処理された銅金属層の製造方法。
【請求項21】
請求項1〜20のいずれか1項に記載の表面が黒化処理された銅金属層の製造方法を行った後、表面が黒化処理された銅金属層をめっき用導電性基材から剥離することを特徴とする表面が黒化処理された銅金属の製造方法。
【請求項22】
パターン状のめっき部を有するめっき用導電性基材のめっき部に電気めっきにより銅金属を析出させる金属パターン作製工程及び導電性基材上に析出した銅金属を接着性支持体に転写する転写工程を含む導体層パターン付き基材の製造方法において、
金属パターン作製工程が第1の電流密度の下に銅金属層を形成する導電層形成工程、及び、前記第1の電流密度よりも大きい第2の電流密度の下に前記銅金属層の表面に、その表面が黒色になるように金属を析出させる黒化処理工程を、一つのピロリン酸銅メッキ浴中にて行うことを特徴とする導体層パターン付き基材の製造方法。
【請求項23】
導電層形成工程を第1の電流密度を含む第2の電着領域において行い、黒化処理工程を第2の電流密度を含む第2の電着領域において行う請求項22記載の導体層パターン付き基材の製造方法。
【請求項24】
黒化処理工程において、明度25の黒色を背景にして、開口率が50%の光透過部の明度が25〜50、又は色度a*及びb*が共に5以下になるように金属を析出させる請求項22又は23記載の導体層パターン付き基材の製造方法。
【請求項25】
黒化処理工程において、明度25の黒色を背景にして、開口率が40%以上光透過部の色度a*及びb*が共に2.8以下になるように金属を析出させる請求項22又は23記載の導体層パターン付き基材の製造方法。
【請求項26】
黒化処理工程において、開口率が40%未満であって、明度25の黒色を背景にした光透過部又は光未透過部の色度a*及びb*が共に5以下になるように金属を析出させる請求項22又は23記載の導体層パターン付き基材の製造方法。
【請求項27】
ピロリン酸銅メッキ浴が添加剤としてモリブデン等VI族元素、及びコバルト、ニッケル等VIII族元素のうち一つ又はそれ以上を含む合金めっき浴である請求項22〜26のいずれかに記載の導体層パターン付き基材の製造方法。
【請求項28】
第1の電流密度が0.5〜40A/dmである請求項22〜27のいずれか1項に記載の導体層パターン付き基材の製造方法。
【請求項29】
めっき用導電性金属が、パターン状のめっき部として凸部のパターンを有するものである請求項22〜28のいずれかに記載の導体層パターン付き基材の製造方法。
【請求項30】
めっき用導電性金属が、凸部のパターン及びそれによって描かれる幾何学図形状の凹部を有する導電性基材であって、その凸部の先端部分に銅金属を析出させる請求項29記載の導体層パターン付き基材の製造方法。
【請求項31】
めっき用導電性基材の凹部が絶縁層で被覆されているが凸部の先端部分は露出しており、その露出部分の幅が1μm〜40μmであって、凹部に絶縁層を施した後の凸部の高さが、10μm以上である請求項29又は30のいずれかに記載の導体層パターン付き基材の製造方法。
【請求項32】
めっき用導電性基材の凹部に絶縁層を施した後の凸部の高さが、10μm以上である請求項31記載の導体層パターン付き基材の製造方法。
【請求項33】
めっき用導電性基材の絶縁層の厚さが凸部側面におけるその端付近では10μm以下である請求項31又は32に記載の導体層パターン付き基材の製造方法。
【請求項34】
めっき用導電性基材の凸部の間隔が100μm〜1000μmである請求項29〜33のいずれか1項に記載の導体層パターン付き基材の製造方法。
【請求項35】
めっき用導電性基材の凸部の上端から0.5〜5μm低い位置よりも低い位置の凹部表面に絶縁層が形成されている請求項29〜34のいずれか1項に記載の導体層パターン付き基材の製造方法。
【請求項36】
めっき用導電性基材が、パターン状のめっき部として凹部のパターンを有する導電性基材である請求項22〜28のいずれか1項に記載の導体層パターン付き基材の製造方法。
【請求項37】
凹部の幅が1〜60μm及び凹部の間隔が50〜1000μmである請求項36記載の導体層パターン付き基材の製造方法。
【請求項38】
導電性基材が回転体、または回転体に取り付けられた平板である請求項22〜37のいずれか1項に記載の導体層パターン付き基材の製造方法。
【請求項39】
導電性基材として、回転体からなる導電性基材又は回転体に取り付けた導電性基材を使用し、その一部をメッキ液に浸漬させ、回転体を回転させつつ、金属パターン作製工程及び転写工程を行う請求項22〜38のいずれか1項に記載の導体層パターン付き基材の製造方法。
【請求項40】
導電層形成工程において、導電性基材のめっき部において金属の厚さが0.1〜20μmになるように金属を析出させる請求項22〜39のいずれか1項に記載の導体層パターン付き基材の製造方法。
【請求項41】
めっきに用いる金属が、20℃における体積抵抗率で20μΩ/cm以下の金属を少なくとも1種類以上含むものである請求項22〜40のいずれか1項に記載の導体層パターン付き基材の製造方法。
【請求項42】
請求項22〜請求項41のいずれか1項に記載の導体層パターン付き基材の製造方法において、
前記第1の電流密度の下に導電性金属層を形成する導電層形成工程を行うための第1の陽極と、前記第2の電流密度の下に前記導電性金属層の表面にその表面が黒色になるように金属を析出させる黒化処理工程を行うための第2の陽極とが、互いに離れて前記メッキ液の中に浸漬されており、前記各陽極の間には、絶縁体で構成された遮断部材が設けられていることを特徴とする導体層パターン付き基材の製造方法。
【請求項43】
請求項22〜請求項41のいずれか1項に記載の導体層パターン付き基材の製造方法において、
前記第1の電流密度の下に導電性金属層を形成する導電層形成工程を行うための第1の陽極と、前記第2の電流密度の下に前記導電性金属層の表面にその表面が黒色になるように金属を析出させる黒化処理工程を行うための第2の陽極とが兼用されており、前記第1の電流密度の下で前記導電層形成工程の形成後、前記第2の電流密度の下で前記黒化処理工程を行うことを特徴とする導体層パターン付き基材の製造方法。
【請求項44】
請求項22〜43のいずれか1項に記載の方法により製造された導体層パターン付き基材。
【請求項45】
請求項44記載の導体層パターン付き基材の導体層パターンを有する面を透明基板に貼りあわせてなる透光性電磁波遮蔽部材。
【請求項46】
請求項44に記載の導体層パターン付き基材の導体層パターンを樹脂で被覆してなる透光性電磁波遮蔽部材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2008−25025(P2008−25025A)
【公開日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−162511(P2007−162511)
【出願日】平成19年6月20日(2007.6.20)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】