説明

表面にシボを有するインソールの製造方法

【課題】クッション性を備えると共に足の裏面との間で十分な通気性を確保することができるインソールを、容易かつ安価に得られる製造方法の提供を目的とする。
【解決手段】ポリオレフィン系樹脂発泡体からなる基材13と、接着剤15と、表面にシボ18が形成された連続気泡ポリウレタン発泡体からなる表面材17とで構成された積層体11を、加熱軟化させ、前記シボ18が形成された表面と対向する型面26を硬さ9〜500Nの発泡体で構成した賦形型21でプレスすることにより、前記積層体11の表面のシボ18を潰すことなくインソール形状に賦形し、通気性及びクッション性を有するインソールを得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面にシボを有するインソールの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インソール(靴の中敷き)は、適度のクッション性があって、しかも靴の中で足が蒸れにくいものが好ましい。さらに、インソールの材質は、インソール形状に賦形し易いものが好ましい。そこで、連続気泡ポリウレタン発泡体を加熱軟化させ、プレスによりインソール形状に賦形してインソールとすることが考えられる。
【0003】
しかし、連続気泡のポリウレタン発泡体でインソールを構成しても、そのインソールは足の裏との接触面が平滑面であるため、滑り易く、しかも、足の裏との密着面においては水平方向に通気路が形成されないことから通気性が不十分であった。
【0004】
また、クッション材の表面にダブルラッセルメッシュ層を積層して通気性を高めたインソールも提案されているが、使用時にダブルラッセルメッシュ層が足の裏で押圧されて潰され、足の裏との密着面において水平方向の通気路を十分に確保できなくなるため、通気性が十分とは言い難い。
【0005】
【特許文献1】特開平10−295409号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は前記の点に鑑みなされたものであって、クッション性を備えるとと共に足の裏面との間で十分な通気性を確保することができるインソールを、容易かつ安価に得られる製造方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1の発明は、ポリオレフィン系樹脂発泡体からなる基材と、接着剤と、表面にシボが形成された連続気泡ポリウレタン発泡体からなる表面材とで構成した積層体を、加熱軟化させ、前記シボが形成された表面と対向する型面を硬さ9〜500Nの発泡体で構成した賦形型で、プレスし賦形することを特徴とする表面にシボを有するインソールの製造方法に係る。
【0008】
請求項2の発明は、請求項1において、前記発泡体がポリウレタン発泡体からなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、加熱軟化させた積層体をプレスして賦形する際に、積層体表面のシボを硬さ9〜500Nの発泡体で押圧するため、シボが潰されにくく、表面にシボを有するインソールを容易かつ安価に得ることができる。また、得られたインソールは、足の裏と接触する表面にシボを有するため、足の裏との接触面において水平方向の通気路が確保され、しかも表面材が通気性のポリウレタン発泡体からなるため、垂直方向にも通気路が確保され、足の蒸れを効果的に防ぐことができる。さらに、本発明の製造方法で製造されたインソールは、ポリオレフィン系樹脂発泡体からなる基材と、表面にシボが形成された連続気泡ポリウレタン発泡体からなる表面材とによって足に対し好適なクッション性を発揮する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下本発明の実施形態を詳細に説明する。図1は本発明の製造方法により製造されたインソールの一実施形態の斜視図、図2は図1の2−2拡大断面図、図3は、本発明の製造方法の一実施形態における積層体と賦形型の断面図である。
【0011】
図1及び図2に示すインソール10は、本発明の製造方法により製造されたものであり、ポリオレフィン系樹脂発泡体からなる基材13と、接着剤15と、表面にシボ18が形成された連続気泡ポリウレタン発泡体からなる表面材17とで構成した積層体11が、加熱軟化された後、プレスにより賦形されたものである。
【0012】
前記基材13、接着剤15及び表面材17からなる積層体11について説明する。基材13を構成するポリオレフィン系樹脂発泡体は、公知のポリオレフィン系樹脂発泡体を用いることができ、例えば、ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン、エチレンープロピレン共重合体、ポリ−4−メチル−1―ペンテン、ポリビニルクロライド、ポリビニリデンクロライド、ポリビニリデンフルオライド、テトラフルオロエチレン、エチレン共重合体等のポリオレフィン系樹脂の発泡体を挙げることができる。なお、前記ポリオレフィン系樹脂発泡体の製造方法は、オレフィン系樹脂に架橋剤、発泡剤、発泡助剤等を添加し、混合混練りして発泡させる公知の発泡方法により行うことができる。また、一段発泡、二段発泡の何れでもよい。なお、前記基材13を構成するポリオレフィン系樹脂発泡体の密度(積層体11プレス前における密度)は、25〜200kg/m、好ましくは50〜90kg/mである。
【0013】
接着剤15としては、有機溶剤系接着剤が好ましい。有機溶剤系接着剤としては、フェノール系接着剤、例えばノボラック型フェノール樹脂系接着剤又はレゾール型フェノール樹脂およびエポキシ変性フェノール樹脂を含有するフェノール樹脂系接着剤、さらにこれらに未加硫NBR等のゴム組成物成分を含有させたフェノール樹脂系接着剤などが挙げられる。また、従来、広く用いられているスチレン・ブタジエン共重合体ゴム・有機溶剤系接着剤を挙げることもできる。スチレン・ブタジエン共重合体は、ランダム共重合体及びブロック共重合体の何れでもよい。さらにスチレン・ブタジエン共重合体ゴムの接着力が損なわれない限り、少割合のコモノマー、例えばアクリル酸、メタクリル酸、メタクリル酸メチル、アクリロニトリルなどのエチレン系不飽和単量体が共重合されていてもよい。スチレン・ブタジエン共重合体は、単独で用いても、あるいは2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、接着剤に配合する有機溶剤としては、スチレン・ブタジエン共重合体ゴムを溶解し得る有機溶剤であってハロゲンを含まないものが用いられる。この有機溶剤の具体例として、シクロヘキサン、シクロオクタンなどの脂環式炭化水素、n−ヘキサン、n−ヘプタンなどの脂肪族炭化水素、トルエン、ベンゼンなどの芳香族炭化水素、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン、テトラハイドロフランなどのエーテル、酢酸メチル、酢酸エチルなどのエステル、ジメチルスルフォキサイド、ジメチルホルムアミドなどが挙げられる。これらの有機溶剤は、単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。なお、前記接着剤15は、前記基材13及び前記表面材17における接着面の何れか一方あるいは両方に塗布される。
【0014】
表面材17を構成する連続気泡ポリウレタン発泡体は、軟質スラブ、モールド成形品等、各種の発泡体を使用することができる。特には、適度なクッション性があり、耐久性、硬度等を考慮した低発泡品であるのが好ましいことから、公知のメカニカルフロス法により製造された発泡体が好ましい。メカニカルフロス法は、ポリウレタン原料中にミキサーによって不活性ガスを混入させ、不活性ガスの混入したポリウレタン原料を実質的に発泡させることなく吐出することによりポリウレタン発泡体を形成する方法である。また、連続気泡ポリウレタン発泡体の密度(積層体11プレス前における密度)は、0.15〜0.8g/cm、より好ましくは0.20〜0.48g/cm、さらに好ましくは0.20〜0.32g/cmである。前記表面のシボ18は、微細な凹凸で構成され、前記メカニカルフロス法で不活性ガスを混入させたポリウレタン原料を、シボ付きの離型紙上に吐出し、厚み調整をした後、加熱硬化させることで得られる。なお、前記表皮材17を構成する連続気泡ポリウレタン発泡体は、ポリウレタン発泡体において連続気泡の割合が独立気泡の割合よりも高いものを言い、全ての気泡が連続気泡からなるものだけを示すものではない。一般的には連続気泡ポリウレタン発泡体として、軟質ポリウレタン発泡体が知られている。
【0015】
前記インソールの製造は、前記積層体11を加熱軟化させた後、図3で示す賦形型21でプレスし賦形することにより行われる。
【0016】
前記賦形型21は、下型23と上型25とよりなる。前記下型23は、金属あるいは樹脂などの硬い材質からなり、上型25の型面26と対向する面に、インソール形状に合わせた凹状の型面24が形成されている。前記下型の型面24には、前記積層体11の基材13側が配置される。一方、上型25は、前記下型23の型面24に嵌る凸状の型面26を備えている。前記上型25の型面26は、前記積層体11のプレス時に、前記表面材17の表面のシボ18と対向する型面であり、前記下型23の型面24よりも硬度の低い発泡体で構成されている。前記上型25の型面26を構成する発泡体としては、前記加熱軟化された積層体11を前記下型23と上型25でプレスした際に、前記シボ18を押し潰さない程度に積層体11を押圧して賦形できる硬さのものとされ、硬さ9〜500N(JIS K6400−2:2004 D法に準拠)、より好ましくは硬さ186〜246Nの発泡体が好ましい。また材質としては、ポリウレタン発泡体が好ましい。前記型面26を構成する発泡体の硬度が9Nに近い場合、プレス時の圧縮量を増して、高い硬度でプレスを行う。また、前記型面26を構成する発泡体の硬度が500Nに近い場合、プレス時に圧縮することなく、押さえつける程度でプレスを行う。なお、前記型面26の発泡体は、圧縮により前記硬さに調整されたものでもよい。
【0017】
前記プレス前における前記積層体11の好ましい厚みは、前記基材13が3〜15mm、より好ましくは5〜11mm、前記表面材17が1〜5mm、より好ましくは1.5〜3mmである。また、前記積層体11の加熱温度は、前記積層体11をプレスにより賦形可能な軟化状態にできる温度である。前記積層体11を構成する各部材のうち、前記ポリオレフィン系樹脂発泡体からなる基材13が最も低い軟化温度であるため、前記積層体11の加熱温度は、前記ポリオレフィン系樹脂発泡体の軟化温度に依存することになり、通常は、70〜160℃、好ましくは110〜140℃である。また、加熱時間は1分〜5分、好ましくは1〜2分である。前記積層体11の加熱は、加熱炉に積層体11を収容したり、熱風を積層体11に吹き付けたりする等、適宜の方法で行うことができる。
【実施例】
【0018】
表面材として厚み2mm、密度0.27g/cmの連続気泡ポリウレタン発泡体(表面にシボ付き、シボ面の面組度23μm、品名:ポロン(登録商標)#4000、株式会社イノアックコーポレーション製)を用い、基材として厚み8mmのポリオレフィン系樹脂発泡体(密度70kg/m、品名:PEライトA−8、株式会社イノアックコーポレーション製)を用い、表面材の裏面(シボの無い面)と、基材の接着面の両方に、溶剤系SBR接着剤(品名:G−99Z、コニシ株式会社製)をスプレー塗布し、次いで表面材と基材をラミネーターで積層して接着し、積層体を得た。
【0019】
前記積層体を縦80×横160mmに切り出し、トムソン刃で所定の足型に打ち抜いた。そして、打ち抜き後の積層体を加熱炉に収容し、130℃で90秒間加熱して軟化させた。前記加熱軟化させた積層体を、速やかに常温の賦形型でプレスして賦形した。賦形型は、図3に示したものを用い、また上型は本体部がアルミニウム、型面が軟質スラブポリウレタン発泡体の切り出し品(密度75kg/m、引張強度98kPa、硬さ210N、品名:SP−80、株式会社イノアックコーポレーション製)で構成され、一方下型については型面を含めてアルミニウムで構成されている。下型の型面に積層体の基材側を載置して表面材のシボが上型の型面と対向するようにし、その状態で上型を積層体に押し賦けて1分間プレスすることにより賦形した。
【0020】
賦形品を脱型してインソールを得た。得られたインソールは、足裏接触面にシボが明確に残っていた。また、足裏接触面の面組度を、KEYENCE社製、VH−7000マイクロスコープ、200倍で測定したところ、23μmであり、表面材のシボがプレスにより潰されていないのを確認できた。
【0021】
なお、前記実施例では、上型の型面を発泡体で構成したが、下型の型面を発泡体で構成すると共に上型の型面を樹脂や金属で構成し、下型の型面に積層体表面のシボを向けて積層体を載置して、上型の型面で積層体の基材側を押圧するようにしてインソールを製造してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の製造方法により製造されたインソールの一実施形態の斜視図である。
【図2】図1の2−2拡大断面図である。
【図3】本発明の製造方法の一実施形態における積層体と賦形型の断面図である。
【符号の説明】
【0023】
10 インソール
11 積層体
13 基材
15 接着剤
17 表面材
18 シボ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオレフィン系樹脂発泡体からなる基材と、接着剤と、表面にシボが形成された連続気泡ポリウレタン発泡体からなる表面材とで構成した積層体を、
加熱軟化させ、
前記シボが形成された表面と対向する型面を硬さ9〜500Nの発泡体で構成した賦形型で、プレスし賦形することを特徴とする表面にシボを有するインソールの製造方法。
【請求項2】
前記発泡体がポリウレタン発泡体からなることを特徴とする請求項1に記載の表面にシボを有するインソールの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−144002(P2007−144002A)
【公開日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−344896(P2005−344896)
【出願日】平成17年11月30日(2005.11.30)
【出願人】(000119232)株式会社イノアックコーポレーション (1,145)
【Fターム(参考)】