説明

表面下印刷された感圧複合材料

多層複合材料は、印刷可能なフェイスストックを備えており、その上面に直接、支持体シートが別個に積層されている。そのフェイスストックは、寸法が不安定および/または曲げ剛性が低い透明フィルムであり、その厚みは、約0.1mm(4.0ミル)以下である。その後の処理において、フェイスストックの底面にグラフィックスが印刷され、さらに、感圧接着剤および剥離ライナーが貼付される。このライナーは、除去可能であり、グラフィックスがフェイスストックの下方にこれによって保護された状態に保たれたまま、この複合材料が基材に接着されることを可能にする。支持体シートは、剥離ライナーの除去前あるいは除去後のいずれであっても、フェイスストックの上面から分離することが可能である。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願)
本願は、2003年5月21日に出願された米国仮出願第60/472,373号に基づく優先権を主張する。
【0002】
本発明は、温度上昇および/または張力増加にさらされると寸法が不安定になることから、あるいは、曲げ剛性が低いことから、加工が難しい、あるいは加工が不可能なフェイスストック(facestocks)に関する。本発明は、特に、支持体シート(carrier sheets)を備えたそのようなフェイスストックを、グラフィックス、接着剤、および剥離ライナー(release liners)を貼付することができる露出面を有する積層複合材料に、一時的に組み込み、続いて、その支持体シートが、フェイスストックから分離され、それによって、グラフィックスが、基材に接着貼付されたときに、フェイスストックの下方に保護された状態に保たれることを可能にすることに関する。
【背景技術】
【0003】
本明細書において用いるように、「フェイスストック」という用語は、約0.1mm(4.0ミル)以下の厚みを有しており、望ましくは、ビニル、ウレタン、アクリル、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリエチレン、およびそれらの混合物からなる群から選択された透明フィルムを意味する。フェイスストックは、拘束されない状態(unrestrained state)において、マシン方向(流れ方向)またはクロスマシン方向(幅方向)に1.0%よりも大きく寸法が変化する場合に「寸法が不安定」であると考えられる。寸法は、24時間の間にわたって約60℃(140°F)よりも高い温度に加熱された、および/または約2.2N/25mm(0.5PLI(ポンド/リニアインチ))よりも大きい張力をかけられた150mm×150mm(6×6インチ)のサンプルを用いて、ASTMのD1204によって測定される。「曲げ剛性が低い」フェイスストックとは、150mm×150mm(6×6インチ)のサンプルを用いて、かつ、140グラムのロードセルによってニュートラル(0)荷重に片持ち支持された梁(beam)を用いて、ASTMのD2923によるポリオレフィンフィルムおよびシート材の剛性のための標準試験方法によって測定したときにハンドルオメータ単位(Handle-o-Meter units)が30グラム以下のものである。測定は、マシン方向およびクロスマシン方向において、サンプルの上面を上向きにして、さらにもう一度、サンプルの上面を下向きにして行われており、本明細書に記載する値は、グラム単位のこれらの4つの測定値の平均である。
【0004】
従来のやり方によれば、寸法が不安定および/または曲げ剛性が低いフィルムが、例えば、ビニルを鋳型成形シート上に被覆することによって形成される。さらに、剥離ライナーが、その鋳型成形ビニルフィルムの露出面に感圧接着剤を用いて積層される。さらに、鋳型成形シートを、鋳型成形ビニルフィルムの反対側の面から剥がして、その表面は、その後の印刷処理に備えて露出された状態のままにしておく。数多くの用途において、印刷されたグラフィックスは、さらに、様々な手法によって、例えば、オーバープリントワニス、感圧被覆フィルムオーバーラミネート、熱融着オーバーラミネート、所定位置硬化接着剤オーバーラミネート等を用いることによって保護されなければならない。
【0005】
米国特許第4,517,044号(特許文献1(アーノルド(Arnold)))に開示された別のアプローチにおいて、グラフィックスは、エンジニアリングされた硬化ポリマーの厚い保護層の下側面に反転印刷されており、結果として得られる硬化転写ステッカー(cured decals)の伸びは、25%未満である。
【0006】
これらの方法は、印刷されたグラフィックスに必要とされる保護を得るという点でうまくいっているとはいえ、これは、用いることのできるフィルムの選択を制限するという犠牲を払ってなされており、および/または順応性を犠牲にしてなされており、すなわち、結果として得られる複合材料は、その剛性のせいで、湾曲した面および/または粗い面に順応できなくなっている。
【0007】
【特許文献1】米国特許第4,517,044号明細書
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、寸法が不安定および/または曲げ剛性が低いフェイスストックが、支持体シートの表面に直接積層される。この支持体シート表面は、必要に応じて、例えば、感熱層を貼付することによって改良(modified)してもよい。積層は、上昇した温度および/または圧力の条件下で行われるのが望ましく、別個の接着剤中間層を追加することなく行われるのが望ましい。支持体シートは、その後の処理における損傷を与えるような変形に備えてフェイスストックを補強するという役割を果たす。従って、フェイスストックの露出面に反転印刷してから、これを、剥離ライナー上に支持された感圧接着剤と結合させることもできる。支持体シートとフェイスストックとの間の境界面における結合は、処理中に層状剥離しないように耐えるだけの十分な強度を備えながら、その強度は、その後、フェイスストックを変形させたり、そうでなくても損傷を与えたりすることなく、支持体シートをきれいに分離させることを可能にするような強度である。この支持体シートを除去するのは、剥離ライナーを除去して、印刷されたフェイスストックを基材に接着固定するときの前でも、後でもよい。支持体シートを先に除去すれば、より柔軟なフェイスストックが、基材の形状および表面特性により容易に順応することが可能となる。
【発明の効果】
【0009】
いずれにせよ、印刷されたグラフィックスは、フェイスストックによって被覆された状態に保たれており、これが、摩耗、各部材に対する露出等に起因する損傷からの保護材としての役割を果たす。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
まず、図1を参照すると、寸法が不安定および/または曲げ剛性が低いフェイスストック10を支持体シート12に積層して、複合材料14を製造する。この複合材料の結果として得られる剛性は、上述したようにASTMのD2923によって測定した場合に、約60グラムよりも大きい。支持体シートは、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリスチレン、およびそれらの表面改質されたもの(surface modified versions thereof)からなる群から選択されたフィルムであってもよいし、例えば、押出被覆された紙またはフィルムのような複合材料で構成されていてもよい。フェイスストック10は、上記したもののいずれであってもよく、望ましくは、その厚みが、約0.006mm〜0.089mm(0.25〜3.5ミル)の間であり、もっとも望ましくは、約0.025mm〜0.076mm(1〜3ミル)の間であり、ASTMのD−882によって測定した伸び特性が、約50%よりも大きく、もっとも望ましくは、約100%よりも大きい。支持体シート12は、望ましくは、透明であるが、必ずしもそうであるとは限らない。
【0011】
積層は、上昇した温度および/または圧力の条件下で、別個の接着剤中間層を介在させることなく行われる。フェイスストック/支持体シートの境界面における結果として得られる結合は、その複合材料の各部材の引っ張り強さよりも小さく、望ましくは、フェイスストックの降伏強さよりも小さい。FINATの試験方法♯3(“FTM3”)によって測定した結合強さが、幅50mm(2インチ)当たり200グラムよりも小さいことが望ましく、100グラムよりも小さい結合強さがより望ましく、60グラムよりも小さい結合強さがもっとも望ましい。
【0012】
支持体シート12の剛性および引っ張り強さは、複合材料を約60℃(140°F)よりも高い温度および/または約2.2N/25mm(0.5PLI)よりも大きな張力にさらすことを伴う処理中に、フェイスストック10が、1.0%よりも大きく変形しないように防ぐのに十分である。ラミネート(積層体)の結合強さによって、支持体シート12は、フェイスストック10を搬送し、層状剥離することなく様々な処理ステップを通過するようにすることが可能となると同時に、さらに、その支持体としての機能がもはや必要とされなくなったときに比較的容易にきれいに分離することが可能となる。
【0013】
図2に示すように、続いて、例えば、フェイスストック10の下側露出面上にグラフィックス16を反転印刷し、その後に、剥離ライナー20上に支持された感圧接着剤18を貼付することを含む更なる処理を、複合材料14に施すこともできる。
【0014】
図3に示すように、続いて、引き続き行われる処理、例えば、個々のラベルを作製するためのダイカッティング(打抜型切断)およびストリッピング(取り外し)に先立って、下層の印刷されたフェイスストック10から支持体シート12を除去することができる。最後に、剥離ライナー20を除去して、基材22に貼付するために接着剤18を露出させることができる。
【0015】
代替的に、図4に示すように、剥離ライナー20が除去され、接着剤18が基材22と接触した状態となり終えるときを過ぎるまで支持体シート12が所定位置に保たれるようにすることもできる。
【0016】
貼付に先立って支持体シート12および剥離ライナー20の両方を除去することによって、フェイスストック10の順応性が最大限に活用されるが、これは、基材が、湾曲している場合および/または平坦でない場合に非常に望ましい。一方、貼付が終わるまで支持体シート12を保持しておくことによって、支持体シートの付加剛性が活用されるが、これは、例えば、床面、壁面、およびその他の大きな表面積にグラフィックスを貼付するときに望ましい場合もある。
【0017】
いずれにせよ、フェイスストック部材10の材料の選択および厚みは、高い柔軟性と順応性を提供すると同時に、さらに、損傷を与えるような摩耗および/または周囲の有害な各部材に対する露出から下層のグラフィックス16を守るようなものである。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施形態である複合材料14の製造方法を示す図である。
【図2】本発明の実施形態である感圧接着剤18を貼付することを含む更なる処理を示す図である。
【図3】本発明の実施形態であるフェイスストック10から支持体シート12を除去する処理を示す図である。
【図4】本発明の実施形態であるフェイスストック10から支持体シート12を除去する代替的な処理を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
底面および上面を有するフェイスストックを備える多層複合材料であって、前記フェイスストックの少なくとも底面が印刷可能であり、支持体シートが、前記フェイスストックの上面に直接、これらの境界面に積層されている複合材料。
【請求項2】
請求項1に記載の複合材料であって、前記フェイスストックが、ビニル、ウレタン、アクリル、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリエチレン、およびそれらの混合物からなる群から選択されたフィルムを備える複合材料。
【請求項3】
請求項1に記載の複合材料であって、前記フェイスストックが、拘束されない状態において約60℃(140°F)よりも高い温度にさらされた場合に、マシン方向またはクロスマシン方向のいずれかにおいて1.0%よりも大きく変形する複合材料。
【請求項4】
請求項1または請求項3に記載の複合材料であって、前記フェイスストックが、約2.2N/25mm(0.5PLI)よりも大きい張力をかけられた場合に、マシン方向またはクロスマシン方向のいずれかにおいて1.0%よりも大きく変形する複合材料。
【請求項5】
請求項1、請求項2、請求項3、または請求項4のいずれか1項に記載の複合材料であって、前記フェイスストックの曲げ剛性が低い複合材料。
【請求項6】
請求項1に記載の複合材料であって、前記フェイスストックの厚みが、約0.006mm〜0.089mm(0.25〜3.5ミル)の間である複合材料。
【請求項7】
請求項6に記載の複合材料であって、前記厚みが、約0.025mm〜0.076mm(1〜3ミル)の間である複合材料。
【請求項8】
請求項1に記載の複合材料であって、前記フェイスストックは、ASTMのD−882によって測定した伸び特性が、少なくとも1つの方向において50%よりも大きい複合材料。
【請求項9】
請求項8に記載の複合材料であって、前記伸び特性が、少なくとも1つの方向において100%よりも大きい複合材料。
【請求項10】
請求項1に記載の複合材料であって、約60グラムよりも大きい剛性を有する複合材料。
【請求項11】
請求項1に記載の複合材料であって、前記境界面における結合強さが、前記フェイスストックおよび前記支持体シートのそれぞれの引っ張り強さよりも小さい複合材料。
【請求項12】
請求項1に記載の複合材料であって、前記境界面における結合強さが、前記フェイスストックの降伏強さよりも小さい複合材料。
【請求項13】
請求項1に記載の複合材料であって、FTM3によって測定した前記境界面における結合強さが、幅50mm(2インチ)当たり200グラムよりも小さい複合材料。
【請求項14】
請求項13に記載の複合材料であって、前記結合強さが、幅50mm(2インチ)当たり100グラムよりも小さい複合材料。
【請求項15】
請求項14に記載の複合材料であって、前記結合強さが、幅50mm(2インチ)当たり60グラムよりも小さい複合材料。
【請求項16】
請求項3に記載の複合材料であって、前記支持体シートの剛性および引っ張り強さが、前記変形を妨げるようなものである複合材料。
【請求項17】
請求項1に記載の複合材料であって、前記フェイスストックの底面に感圧接着剤によって剥離可能に接着されたライナーをさらに備える複合材料。
【請求項18】
請求項17に記載の複合材料であって、前記フェイスストックの底面と前記感圧接着剤との間に介在させたグラフィックスをさらに備える複合材料。
【請求項19】
請求項18に記載の複合材料であって、前記グラフィックスが、前記フェイスストックの底面上に印刷されている複合材料。
【請求項20】
請求項1に記載の複合材料であって、前記支持体シートが、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリスチレン、およびそれらの表面改質されたものからなる群から選択されたフィルムを備える複合材料。
【請求項21】
請求項1に記載の複合材料であって、前記支持体シートが、押出被覆された紙および押出被覆されたフィルムからなる群から選択されている複合材料。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2007−511384(P2007−511384A)
【公表日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−533238(P2006−533238)
【出願日】平成16年5月19日(2004.5.19)
【国際出願番号】PCT/US2004/015804
【国際公開番号】WO2004/106054
【国際公開日】平成16年12月9日(2004.12.9)
【出願人】(595030516)フレクスコン カンパニー インク (3)
【Fターム(参考)】