説明

表面促進マイケル硬化組成物

【課題】表面促進マイケル硬化組成物を提供する。
【解決手段】少なくとも1つの多官能性マイケルドナー、少なくとも1つの多官能性マイケルアクセプター、および少なくとも1つの反応促進剤を含む硬化性組成物であり、ここで、前述の少なくとも1つの反応促進剤が少なくとも1つの基体に適用され、または少なくとも1つの基体に適用される1以上の組成物に含められる。また、少なくとも1つの多官能性マイケルドナー、および少なくとも1つの多官能性マイケルアクセプターの反応生成物と接触する少なくとも2つの基体を含み、ここで、少なくとも1つの反応促進剤が、ラミネーション工程の前に、前記少なくとも1つの基体の表面に存在している、ラミネートも提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接着剤、シーラント、発泡体、エラストマー、フィルムおよびコーティングとして有用な硬化性組成物、硬化性組成物から誘導されるポリマー組成物、ポリマー組成物を製造する方法、硬化性組成物を使用する方法、ならびに硬化性組成物から調製される物品に関する。
【0002】
詳細には、本発明は、長いポットライフおよび短い硬化時間を有する硬化性組成物に関する。硬化性組成物は、多官能性マイケルドナー成分、多官能性マイケルアクセプター成分、および少なくとも1つの反応促進剤を含み、ここで、反応促進剤の少なくとも一部は、組成物が接触する少なくとも1つの表面上に存在している。反応促進剤を含有している表面と接触すると、組成物は、触媒された炭素マイケル付加反応によって硬化する。
【背景技術】
【0003】
接着剤、シーラント、発泡体、エラストマー、フィルムおよび他のコーティングは、典型的には、硬化の際に重合または架橋によって分子量が増大するより低い分子量の前駆体から製造される。
【0004】
米国特許第5,219,958号は、ブロックされた触媒を使用して硬化を遅らせることを開示している。しかし、この技術は、乾燥させて揮発性の有機化合物を除去する工程を必要とする点において制限されている。
【0005】
米国特許第5,945,489号は、炭素マイケル反応から誘導されるオリゴマーを開示しているが、これらの物質の最終的な硬化はフリーラジカル放射線開始プロセスによって起こる。しかし、この技術は、硬化のためにUV放射線を必要とし、不透明な基体または印刷された基体を通過してなし得ない点において制限されている。
【特許文献1】米国特許第5,219,958号明細書
【特許文献2】米国特許第5,945,489号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、乾燥工程または放射線を必要とせず、迅速に硬化させることができ、長いポットライフを有し、不透明な基体または印刷された基体の間に配置された場合でも硬化させることができる、新規な硬化性組成物を提供することが望まれている。これらの硬化性組成物は、多官能性マイケルドナー成分および多官能性マイケルアクセプター成分および少なくとも1つの反応促進剤を含み、ここで、反応促進剤の少なくとも一部ないし全ては、組成物が接触する少なくとも1つの基体表面上に存在する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、長いポットライフおよび短い硬化時間を有する硬化性組成物を見出した。さらに、このような硬化性組成物のポットライフおよび硬化時間を独立して調節することができる。硬化性組成物は少なくとも1つの反応促進剤を使用して調製される。本明細書で使用する場合、反応促進剤は、硬化性組成物を迅速に硬化させるために、炭素ベースのマイケル付加を触媒もしくは触媒補助する物質、および/または酸阻害を克服するための酸捕捉剤(acid scavenger)として作用する物質のいずれかである。特定の酸捕捉剤は触媒としても機能することができる。本発明者らは、ある表面は反応を促進させる官能基を本来的に含有していること、または化学的もしくは物理的な処理によってこのような基を導入することできることを見出した。
【発明の効果】
【0008】
当業者であれば、従来の多成分熱硬化性組成物について、ポットライフおよび硬化時間は通常互いに強く関連しており、従ってポットライフの改善は硬化時間の悪化を伴い、硬化時間の改善はポットライフの悪化を伴うことが理解されよう。この相互関係は、2つのファクターを御する共通の根底的なプロセスによるものである:すなわち熱硬化性組成物の分子量の増大である。
【0009】
当業者により予測されるように、硬化性組成物から幾分かのまたは全ての反応促進成分を除去すれば、触媒レベルの低下または酸阻害の増大のいずれかにより、粘度増大の責を担う分子量構築が遅延化されるため、ポットライフが増大するであろう。
【0010】
他に何も変更点が存在しない場合には、硬化時間も増大する。しかし、本発明者らは、比較的薄いコーティングの場合において、調製される基体と接触させる熱硬化性組成物をマイケル硬化させるのに充分な、反応促進性成分を含有する基体表面を調製することができることを見いだした。
【0011】
少なくとも1つの表面は、硬化性組成物が接触する少なくとも1つの反応促進剤の一部ないし全てを含有する。反応促進剤を含有する表面は、また、任意に、一部ないし全てのマイケルドナーまたはアクセプターを含有することができる。少なくとも1つの反応促進剤は基体の元来の組成物中に含まれていてもよく、1以上の化学的な処理により少なくとも1つの基体に組み込まれ、および/または1以上の物理的な処理により少なくとも1つの基体に組み込まれる。加えて、反応促進剤を、少なくとも1つの基体にコーティングとして適用される、組成物、たとえばインク中に含有させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
従って、本発明は、少なくとも1つの多官能性マイケルドナー、少なくとも1つの多官能性マイケルアクセプター、および少なくとも反応促進剤を含む硬化性組成物を提供し、ここで、少なくとも1つの反応促進剤は、組成物が接触する表面上に存在する。一つの実施態様によれば、反応促進剤は、触媒、補助触媒および酸捕捉剤のうちの1以上から選択される。別の実施態様によれば、少なくとも1つの反応促進剤はプライマーもしくはインクに含有されており、または、代替的に、プライマーもしくはインクが本来的に反応促進剤である。
【0013】
本発明は、少なくとも1つの多官能性マイケルドナー、少なくとも1つの多官能性マイケルアクセプターの反応生成物と接触する少なくとも2つの基体を含むラミネートを提供し、ここで、少なくとも1つの反応促進剤が、ラミネーション工程の前に、少なくとも1つの基体の表面上に存在している。本発明は、また、少なくとも1つの反応促進剤がプライマーもしくはインクに含有されていてよく、またはプライマーもしくはインクが本来的に反応促進剤であることも提供する。本発明は、また、ラミネートを形成する方法を提供し、これは、少なくとも1つの基体の少なくとも1つの側面を、少なくとも1つの多官能性マイケルドナー、少なくとも1つの多官能性マイケルアクセプターを含む硬化性組成物でコーティングする工程、ならびに硬化性組成物を硬化させる工程を含み、ここで、少なくとも1つの反応促進剤が、ラミネーション工程の前に、少なくとも1つの基体の表面上に存在している。
【0014】
本発明は、また、物品の表面の少なくとも一部が、少なくとも1つの多官能性マイケルドナー、少なくとも1つの多官能性マイケルアクセプターの反応生成物と接触しており、反応促進剤が、マイケルドナーおよびアクセプターの反応の前に、物品の表面上に存在している、その物品を提供する。本発明は、また、少なくとも1つの反応促進剤がプライマーもしくはインクに含有されていてよく、またはプライマーもしくはインクが本来的に反応促進剤であることも提供する。本発明は、また、ある表面の一部に、少なくとも1つの多官能性マイケルドナー、少なくとも1つの多官能性マイケルアクセプターを含む硬化性組成物を適用し、硬化させることによって、このような物品を製造する方法を提供し、ここで、反応促進剤が、硬化の前に、物品の表面上に存在している。
【0015】
本発明は、また、基体の製造中に基体中に組み入れられた少なくとも1つの反応促進剤を含む基体、または、基体を少なくとも1つの反応促進剤を含む硬化性組成物でコーティングすることにより基体に組み入れられた少なくとも1つの反応促進剤を含む基体、または、基体をその表面上に反応促進剤を発生させ、もしくは組み入れる少なくとも1つのプロセスに付すことにより基体に組み入れられた少なくとも1つの反応促進剤を含む基体を提供する。本発明は、また、少なくとも1つの反応促進剤がプライマーもしくはインクに含有されていてよく、またはプライマーもしくはインクが本来的に反応促進剤であることも提供する。
【0016】
本発明は、また、反応促進剤を含有するインク、プライマーまたはコーティングを提供する。本発明は、また、触媒を含有するインク、プライマーまたはコーティングを提供する。本発明は、また、補助触媒を含有するインク、プライマーまたはコーティングを提供する。更に、本発明は、酸捕捉剤を含有するインク、プライマーまたはコーティングを提供する。
【0017】
本発明はまた、ポリマーを調製するための方法を提供し、これは、少なくとも1つの基体を少なくとも1つの多官能性マイケルドナーおよび少なくとも1つの多官能性マイケルアクセプターを含む硬化性組成物と接触させる工程、および硬化性組成物を硬化させる工程を含み、ここで、少なくとも1つの反応促進剤が、硬化の前に、少なくとも1つの基体の表面上に存在している。
【0018】
本明細書で使用する場合、反応促進剤という用語は、本発明の反応物を本発明の生成物へ進行させることができる任意の化合物を表し、これらに限定されないが、たとえば触媒、補助触媒、酸捕捉剤、およびこれら組合せのうちの1以上が挙げられる。
【0019】
本明細書で使用する場合、触媒は、マイケルドナーとマイケルアクセプターとの間の反応を触媒する物質である。理論にも拘束されるものではないが、触媒は、マイケルドナーからプロトンを抽出し、エノラートアニオンを発生させると考えられる。
【0020】
いくつかの好適な触媒は以下のものから選択することができる:カルボン酸のナトリウム塩、カルボン酸のマグネシウム塩、カルボン酸のアルミニウム塩、1〜22の炭素原子(たとえば6以下の炭素原子)を有するアルキルカルボン酸のクロム塩、芳香族カルボン酸のクロム塩、1〜22の炭素原子(たとえば6以下の炭素原子)を有するアルキルモノカルボン酸のカリウム塩、多カルボン酸のカリウム塩、およびこれらの混合物。「モノカルボン酸」という用語は、本明細書において、1つの分子当たり1つのカルボキシル基を有するカルボン酸を意味する。「多カルボン酸」という用語は、本明細書において、1つの分子当たり1つより多くのカルボキシル基を有するカルボン酸を意味する。カルボン酸のナトリウム塩、マグネシウム塩およびアルミニウム塩の中でもとりわけ好適な塩は、たとえば、以下のタイプのカルボン酸のナトリウム塩、マグネシウム塩およびアルミニウム塩である:芳香族カルボン酸、7〜22の炭素原子を有するアルキルカルボン酸、6以下のカルボン酸を有するアルキルカルボン酸、およびこれらの混合物である。
【0021】
他の有用な触媒はナトリウムおよびカリウムの、炭酸塩ならびに重炭酸塩、リン酸塩、リン酸水素塩およびリン酸エステルを含む。
【0022】
いくつかの好適な弱塩基性触媒は、たとえば酢酸カリウム、オクタン酸ナトリウム、カプリル酸カリウムおよび酢酸クロムである。好適な可溶性弱塩基性触媒の混合物も適している。
【0023】
好適な強塩基性触媒は、たとえば強塩基であるアルコキシド、炭酸塩、重炭酸塩、リン酸塩、リン酸水素塩、アセトアセトネート、アミジン、グアニジン、ジアザ化合物、アルキルアミン、テトラアルキルアンモニウム塩、これらの誘導体、およびこれらの混合物を含む。塩基の任意の金属塩が有用に使用され、たとえばアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩および他の金属塩を含む。
【0024】
他の、触媒として機能することが知られている更なる化合物は、ブロックされた触媒であり、これは、アミンまたはアンモニウム化合物であってカルボン酸と組み合わせて使用され硬化条件下において蒸発するか脱炭酸するかのいずれかである。ブロックされた触媒は、たとえば米国特許第5,219,958号に記載されている。いくつかのブロックされた触媒は、アミジン化合物、第四級アンモニウム化合物、またはこれらの混合物をカルボン酸との組み合わせにおいて使用して、硬化条件下において蒸発するか脱炭酸するかのいずれかである。
【0025】
いくつかのケースにおいて、製造業者により供給されるような多官能性マイケルアクセプター化合物は、幾分かの量(通常は比較的少量)のカルボン酸の塩を含む。本発明は、このような塩を含有する多官能性マイケルアクセプターを使用して、このような塩を含有していない多官能性マイケルアクセプターを使用して、またはこれらの混合物を使用して実施することができると想定される。しばしば、アクセプターは酸を含む場合がある。一つの実施態様によれば、酸は、反応を阻害しないことを目的として、使用前または使用中に塩基で中和される。別の実施態様によれば、触媒はその場で発生する。
【0026】
ある実施態様において、製造業者により供給されるような好適な多官能性マイケルアクセプターは、可溶性弱塩基性触媒として適した少なくとも1つの塩を含む。このような多官能性マイケルアクセプターは、本発明の実施において使用されると想定される。いくつかのケースにおいて、製造業者により供給されるような多官能性マイケルアクセプター中に存在する塩の量は、本発明の実施において、付加的な量の可溶性弱塩基性触媒を使用することが望まれるのに充分な低量であり、付加的な量の可溶性弱塩基性触媒は、多官能性マイケルアクセプター中に既に存在しているものと同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0027】
本明細書において定められている酸捕捉剤は、酸と反応することができる化合物であり、前述の酸はカルボン酸または他の酸のいずれかである。「酸と反応する」という用語により、本明細書において、酸捕捉剤が酸と(たとえば共有結合、イオン結合または錯体を形成することにより)相互作用し、一時的または恒久的な生成物を形成し得ることを意味している;酸捕捉剤と酸との間の相互作用は、酸が酸捕捉剤以外の化合物との相互作用に関与する傾向を排除または低減する。酸捕捉剤のいくつかの例は、第三級アミン(たとえばトリエタノールアミンなど)、アジリジン(たとえばエチレンイミンなど)、カルボジイミド、有機チタン化合物、有機ジルコニウム酸塩、弱塩基性イオン交換樹脂、窒素含有樹脂(たとえば、ポリ−2−エチル−2−オキサゾリンおよびポリビニルピロリドンなど)、アルカリ金属炭酸塩および重炭酸塩(たとえば炭酸カリウムなど)、ならびにこれらの混合物である。酸捕捉剤として効果的であることが知られているいくつかの有機チタン化合物は、たとえばチタン酸テトラブチル、チタン酸テトライソプロピルおよびアセチル酢酸チタンであり、DuPont Co.により、それぞれ、Tyzor(商標)TnBT、Tyzor(商標)TPTおよびTyzor(商標)AAとして販売されている。
【0028】
本明細書において、補助触媒は、触媒を活性化し、またはアセトアセテートからエノラートアニオンへ平衡をシフトさせ、これにより硬化速度を増加させる任意の物質である。
【0029】
好適な補助触媒は、これらに限定されないが、アジリジンおよびカルボジイミドを含む。好適なアジリジンは、Bayer AGから入手可能なXAMA(登録商標)2およびXAMA(登録商標)7を含む。好適なカルボジイミドは、Niishimboから入手可能なCarbodilite V−02L2、およびUnion Carbideから入手可能なUcarlink XL25を含む。いくつかの例において、補助触媒は酸捕捉剤としても機能することができる。
【0030】
ある実施態様において、硬化性組成物は1以上の反応促進剤を含む。他の実施態様において、硬化性組成物は反応促進剤を全く含まず、表面内または表面上の1以上の反応促進剤に頼っている。
【0031】
本明細書で使用する場合、「(メタ)アクリレート」はアクリレートまたはメタクリレートを意味し、「(メタ)アクリル」はアクリルまたはメタクリルを意味する。
【0032】
本明細書で使用する場合、粘度が有用でないレベルにまで増大するのに要する時間を「ポットライフ」と呼ぶ。本発明の組成物は、当技術分野において知られている従来の組成物に比べ、長いポットライフを有する。接着強度が許容可能なレベルにまで達するのに要する時間を「硬化時間」と呼ぶ。本発明の組成物は、当技術分野において知られている従来の組成物に比べ、急速な硬化時間を有する。「反応促進剤」という用語は、任意の通常の物理的な促進剤、たとえば、これらに限定されないが、熱および化学線、ならびに化学的な促進剤、たとえば、これらに限定されないが、触媒、補助触媒および酸捕捉剤のうちの1以上から選択される反応促進剤を表す。また、本発明者らは、それら自体が反応促進剤である特定の基体も見いだした。好適な化学的促進剤は、これらに限定されないが、たとえばポリエチレンイミン、アミン末端ポリアミド、アミノシラン、および塩基中和ラテックスを含む。
【0033】
本発明は、マイケル付加反応を受けることができる官能基を有する化合物の使用を伴う。マイケル付加は、たとえば、RT MorrisonおよびRN Boydによる「Organic Chemistry」(第三版、Allyn and Bacon、1973年)で教示されている。反応は、塩基性触媒の存在下において、マイケルドナーとマイケルアクセプターとの間で起こるものと考えられる。
【0034】
本発明は少なくとも1つの多官能性マイケルドナー、少なくとも1つの多官能性マイケルアクセプター、および少なくとも反応促進剤を含む硬化性組成物を提供し、ここで、少なくとも1つの反応促進剤が少なくとも1つの基体に適用され、または少なくとも1つの基体に適用される1以上の組成物に含まれており、ならびにここで、ポリマー組成物は延長されたポットライフおよび短い硬化時間を有する。反応促進剤を含有する少なくとも1つの基体の表面と接触すると、組成物は、促進または触媒された炭素マイケル付加反応によって硬化する。
【0035】
本発明者らは、マイケル硬化される熱硬化性組成物を実質的に阻害しており、従って、非常に短いポットライフを有する熱硬化性組成物であっても硬化しない特定の基体もまた見いだした。多くの場合、これらの阻害性基体は、基体の製造中に、または基体のそれ以降の処理中に、反応促進性成分を組み入れることにより、マイケル硬化性熱硬化性組成物に適したものに為すことができる。
【0036】
反応促進剤は主に表面で作用することができ、または、代替的に、硬化性組成物のバルク全体で作用することができる。
【0037】
硬化性組成物は少なくとも1つの基体に適用される。少なくとも1つの基体は触媒、補助触媒または酸捕捉剤のうちの一部ないし全てを含有し、そこへ接着剤、シーラント、コーティングおよびエラストマーが適用される。加えて、触媒、補助触媒または酸捕捉剤を、少なくとも1つの基体へ適用される組成物、たとえばインク中に含有させることができる。触媒、補助触媒または酸捕捉剤は、基体元来の組成物中に含まれていてもよく、1以上の化学的な処理により少なくとも1つの基体に組み入れることができ、および/または1以上の物理的な処理により少なくとも1つの基体に組み入れることができる。
【0038】
硬化性組成物は任意の従来の方法、たとえばスプレーコーティング、ロールコーティング、スロットコーティング、メニスカスコーティング、浸漬コーティング、ならびにダイレクト、オフセットおよびリバースグラビアコーティングなどにより基体に適用される。接着剤の形態における組成物は広範囲の様々な基体、たとえば、これらに限定されないが、ポリオレフィン、たとえば延伸ポリプロピレン(OPP)、SiOx被覆OPP、PVDC被覆OPP、キャストポリプロピレン、ポリエチレン、LDPE、PVDC被覆LDPEなど、およびポリエチレンコポリマー、ポリスチレン、ポリエステル、たとえばポリエチレンテレフタレート(PET)、SiOx被覆PET、PVDC被覆PET、またはポリエチレンナフタレート(PEN)など、ポリオレフィンコポリマー、たとえばエチレン酢酸ビニル、エチレンアクリル酸およびエチレンビニルアルコール(EVOH)、ポリビニルアルコール、ならびにこれらのコポリマーなど、ポリアミド、たとえばナイロンおよびメタ−キシレンアジパミド(MXD6)など、ポリイミド、ポリアクリロニトリル、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、およびポリアクリレート、イオノマー、多糖類、たとえば再生セルロースなど、およびシリコーン、たとえばゴムまたはシーラントなど、他の天然または合成のゴム、グラシンまたはクレー被覆紙、板紙またはクラフト紙、ならびに金属化されたポリマーフィルムおよび蒸着金属酸化物被覆ポリマーフィルム、たとえばAlO、SiO、またはTiOなど、金属箔、たとえばAlホイルおよびCuホイルなど、インク(ポリアミドベース、ポリウレタンベース、ニトロセルロースベース、ポリアクリレートベース、ポリビニルブチラールベース、ポリ塩化ビニルベースのインク)、ガラス、床仕上げ材(コンクリートを含む)、金属(鋼を含む)に配置される。
【0039】
前述の多くの基体はフィルムまたはシートの形態をしていることが多いが、これは必須ではない。基体は、コポリマー、ラミネート、共押出し品、ブレント、コーティング、または、物質相互間の適合性により、上でリストアップされている基体の任意の組合せであってよい。加えて、基体は、たとえばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリアミド、PET、EVOHなどの物質でできた物品、またはこのような物質を含有するラミネートの形態をとることができる。加えて、基体は、組み立てられた物体の形態、たとえばガラス製の窓、セラミック製の浴室設備、床仕上げ材、コンクリート製の設備などの形態をとることができる。
【0040】
また、前述の基体を、コーティングの前に、コロナ処理、プラズマ処理、火炎処理、酸処理および火炎処理により前処理することができ、これらは全て当技術分野において知られている。
【0041】
組成物を第一の基体に適用した後、次いで、別の基体と接触させて、複合体を形成することができる。このようにして形成された複合体を、任意に、加圧、たとえばローラーの間に通すなどして、基体と組成物との接触を増加させる。本発明の別の実施態様において、組成物を同時にまたは逐次的に第一の基体の両面に適用することができ、次いで、組成物を同時にまたは逐次的に更なる2つの基体に結合することができ、ここで2つの基体は同じものであってよく、または異なるものであってもよい。更に、複合体構造は、ここで説明されているプロセスの前または後に、本発明の組成物または異なる組成物を使用して、他の基体へ逐次的に結合することができると想定される。本発明の方法で結合される第一および第二の基体は同じものであってもよいし、異なるものであってもよく、たとえばプラスチック、金属化されたプラスチック、金属および紙を含み、基体は滑らかな表面または構造化された表面を有することができ、ロール、シート、フィルム、ホイルなどの形態で提供することができる。
【0042】
本発明のある実施態様において、基体は比較的薄く、平坦であり、得られる複合体はラミネートと呼ばれる。基体は、ポリオレフィン、たとえばポリエチレン、およびポリプロピレン、ポリエステルなど、ならびにポリアミド(ナイロン)、金属化されたポリプロピレン、アルミニウムホイルなどをベースとした多重ラミネート構造の形態で構築することができる。二重ラミネート構造の例はポリプロピレン/ポリプロピレン、ポリエステル/ナイロン、ポリエステル/ポリエチレン、ポリプロピレン/金属化ポリプロピレン、ポリプロピレン/アルミニウムホイル、ポリエチレン/アルミニウムホイル、ポリエステル/アルミニウムホイル、ポリアミド/アルミニウムホイルなどを含む。
【0043】
本発明の硬化性組成物は、本明細書において「硬化」と呼ばれる化学反応を受けるであろうと想定される。本発明をいかなる特定の理論にも限定する意図ではないが、硬化は、硬化性組成物が形成されたときに始まり、少なくともポットライフが終了するまで続き、ポットライフの終了後も続く場合があると考えられる。ある実施態様において、ポットライフが終了する前に、硬化性混合物の層を基体に適用する。これらの実施態様の幾つかにおいて、少なくとも1つの更なる基体を硬化性混合物の層と接触させる;しばしば、更なる基体を、ポットライフが終了する前に、硬化性混合物層と接触させる。従って、ある実施態様において、硬化は、硬化性組成物と両基体とが接触した後であっても終わらないであろう。硬化した混合物が基体間における有用な接着結合を形成すると想定される。
【0044】
本発明は接着剤として特に有用であるが、コーティング、フィルム、高分子発泡体、シーラントおよびエラストマーにも適用可能であると想定される。コーティングまたはシーラントとして使用される場合、硬化性混合物または組成物は、基体に適用され、次いで硬化され、更なる基体を硬化性混合物または組成物と接触させない。シーラント、発泡体、またはエラストマーとして使用される場合、硬化性混合物は、たとえば型内または剥離表面上に置かれ、硬化させることができる;硬化した混合物は、次いで型または剥離表面から取り除かれ、意図された用途に使用することができる。
【0045】
本明細書で使用する場合、「マイケルドナー」は少なくとも1つのマイケルドナー官能基を有する化合物であり、マイケルドナー官能基少なくとも1つのマイケル活性水素原子を有する官能基であり、マイケル活性水素原子は2つの電子求引性基、たとえばC=Oおよび/またはC≡Nの間に位置する炭素原子に結合された水素原子である。マイケルドナー官能基の例は、マロン酸エステル、アセト酢酸エステル、マロンアミドおよびアセトアセトアミド(ここにおいて、マイケル活性水素は2つのカルボニル基の間の炭素原子に結合している);ならびにシアノ酢酸エステルおよびシアノアセトアミド(ここにおいて、マイケル活性水素はカルボニル基とシアノ基との間の炭素原子に結合している)である。2以上のマイケル活性水素原子を有する化合物は、本明細書において多官能性マイケルドナーとして知られる。マイケルドナーは、それぞれが1以上のマイケル活性水素原子を含有する1、2、3以上の別々の官能基を有することができる。分子に存在するマイケル活性水素原子の合計数がマイケルドナーの官能性である。本明細書で使用する場合、マイケルドナーの「骨格」または「スケルトン」は、マイケル活性水素原子を含有する官能基以外のドナー分子部分である。
【0046】
本発明の硬化性組成物は、石油ベースの反応物もしくはバイオベースの反応物のいずれか、またはこれらの組合せをベースとすることができる。1以上のバイオベースのマイケル成分を本発明に従って有用に使用することができ、このような成分は、これらに限定されないが、バイオベースのマイケルドナー、バイオベースのマイケルアクセプター、およびバイオベースのマイケルドナーとバイオベースのマイケルアクセプターとの組合せを含む。これらから得られる硬化性組成物およびポリマー組成物は更に反応性であることができる。炭素マイケルドナーおよびアクセプターをベースとする硬化性組成物またはポリマー組成物は、1つより多くのドナーおよび/または1つより多くのアクセプターを含むことができる。いくつかのマイケルドナーおよび/またはアクセプターが存在する実施態様において、バイオベースの原料から誘導された反応物の重量百分率が硬化性組成物またはポリマー組成物の合計重量を基準として、25重量パーセントより大きい限り、その化学的骨格が石油ベースの原料およびバイオベースの原料の両方またはいずれかをベースとする、ドナーおよびアクセプターの組合せが使用される。
【0047】
本明細書で使用する場合、「バイオベースのマイケルドナー」は少なくとも1つのマイケルドナー官能基を有する化合物であり、ここで、先に定められている通りのマイケルドナー官能基は、糖、デンプン、セルロース、作物油、動物性脂肪または動物性タンパク質のいずれかから誘導された「骨格」分子上に位置している。このようなバイオベースのマイケルドナーの例は、単糖類および二糖類のアセトアセテート、たとえばマルトース、フルクトースまたはスクロースなどのアセトアセテートである。たとえば、糖アセトアセテートを製造する一つのプロセスが、以下に示されているように、米国特許第4,551,523号に記載されている。
【0048】
【化1】

【0049】
本明細書で使用する場合、「マイケルアクセプター」は、構造(II)を有する少なくとも1つの官能基を有する化合物である:
【0050】
【化2】

【0051】
式中、R、RおよびRは、独立して、水素、または有機基、たとえばアルキル(直鎖状、分枝状または環状)、アリール、アリール置換アルキル(アルアルキルまたはアリールキルとも呼ばれる)、およびアルキル置換アリール(アルカリールまたはアルキルアリールとも呼ばれる)など(これらの誘導体および置換体を含む)である。R、RおよびRは、独立して、エーテル結合、カルボキシル基、更なるカルボニル基、これらのチオ類似体、窒素含有基、またはこれらの組合せを含むことができ、または含まなくてもよい。Rは酸素、窒素含有基、またはR、RおよびRに対して上で説明されているいずれかの有機基である。それぞれが構造(II)を有する2以上の官能基を有する化合物は、ここでは多官能性マイケルアクセプターとして知られている。分子上の構造(II)を有する官能基の数がマイケルアクセプターの官能性である。本明細書で使用する場合、マイケルアクセプターの「骨格」または「スケルトン」は、構造(II)以外のドナー分子部分である。任意の構造(II)が別の(II)基または骨格に直接に結合されていてよい。
【0052】
本明細書で使用する場合、「バイオベースのマイケルアクセプター」は少なくとも1つのマイケルアクセプター官能基を有する化合物であり、ここで、先に定められている通り、官能基は、糖、デンプン、セルロース、作物油、脂肪またはタンパク質のいずれかから誘導された「骨格」(上のR構造(II))分子上に位置している。このようなバイオベースのマイケルアクセプターの例は、これらに限定されないが、以下に例示されているようなエポキシ化ダイズ油のジアクリレート、またはプロポキシル化グリセリルトリアクリレートを含む。
【0053】
【化3】

【0054】
本発明は少なくとも1つの触媒の使用を含む。本明細書で使用する場合、「触媒」はマイケル付加反応を触媒する化合物である。本発明はいかなる特定の理論にも限定されるものでもないが、触媒がマイケルドナーから水素イオンを引き抜くものと考えられる。一つの実施態様によれば、触媒は塩基性である。別の実施態様によれば、触媒は弱塩基性である。別の実施態様によれば、マイケルアクセプターおよびドナーは、触媒の濃度に比べ、低い酸含量を有する。別の実施態様によれば、マイケルドナーおよびアクセプターは、使用される触媒のタイプと無関係である。
【0055】
ある実施態様において、1以上の任意のアジュバントを使用することができる。アジュバントはマイケルドナー、マイケルアクセプターまたは触媒ではない物質であり;アジュバントは、ここでは「非官能性成分」とも呼ばれる。アジュバントは、ポリマー組成物または硬化したポリマー組成物のいずれかの特性を改善すべく選択される。好適なアジュバントは、種々の物質、たとえば、これらに限定されないが、溶媒、粘着付与剤、乳化剤、ポリマー、可塑剤、発泡剤、膨張可能な微小球体、色素、染料、充填剤、安定剤および増粘剤などの物質を含む。アジュバントは、好適には、本発明の実施を妨げないように選択され、使用される(たとえば、アジュバントは、好適には、成分の混合、硬化性組成物の硬化、基体への適用、または硬化された硬化性組成物の最終的な特性に支障をきたさないように選択されるであろう)。アジュバントのほかに、1以上の接着促進剤の添加が本発明の硬化性組成物およびポリマー組成物において有用に採用される。
【0056】
本発明の実施において、多官能性マイケルアクセプターの骨格は、多官能性マイケルドナーの骨格と同じであってもよいし、異なっていてもよい。ある実施態様において、1以上の多価アルコールが少なくとも1つの骨格として使用される。多官能性マイケルアクセプターまたは多官能性マイケルドナーのいずれかに対する骨格として好適な多価アルコールは、これらに限定されないが、たとえばアルカンジオール、アルキレングリコール、アルカンジオールダイマー、アルカンジオールトリマー、グリセロール、ペンタエリトリトール、多価ポリアルキレンオキシド、他の多価ポリマー、およびこれらの混合物を含む。骨格として好適なさらなる多価アルコールは、たとえばシクロヘキサンジメタノール、ヘキサンジオール、トリメチロールプロパン、グリセロール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ペンタエリトリトール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ブタンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、トリメチロールエタン、同様の多価アルコール、これらの置換体、およびこれらの混合物を含む。
【0057】
本発明における骨格として好適な更なる多価アルコールの例は、(本明細書において上で名前を挙げられているこれらのほかに)たとえば分子量が150以上の多価アルコールを含む。また、好適な多価アルコールの混合物も適している。
【0058】
ある実施態様において、多官能性マイケルドナーもしくは多官能性マイケルアクセプター、または両者の骨格はオリゴマーまたはポリマーである。本明細書で使用され、FW Billmeyer,JRによる「Textbook of Polymer Science」(第二版、1971年)(「Billmeyer」)で定められているポリマーは、より小さな化学的繰返し単位の反応生成物からなる比較的大きな分子である。通常、ポリマーは11以上の繰返し単位を有する。ポリマーは直鎖状構造、分枝状構造、星形構造、ループ状構造、ハイパーブランチ構造、または架橋構造を有することができ;ポリマーは単一のタイプの繰返し単位を有することができ(「ホモポリマー」)、または1つより多くのタイプの繰返し単位を有することができる(「コポリマー」)。コポリマーは、ランダム、シーケンス、ブロック、他の配列、または任意の混ぜ合わせもしくは組合せに配列された様々なタイプの繰返し単位を有することができる。
【0059】
ポリマーは比較的大きな分子量を有する。ポリマーの分子量は、標準的な方法、たとえばサイズ排除クロマトグラフィーまたは固有粘度法などにより測定することができる。一般的に、ポリマーは、1,000以上の数平均分子量(Mn)を有する。ポリマーは極めて高いMnを有することができ;いくつかのポリマーは1,000,000を越えるMnを有しており;典型的なポリマーは1,000,000以下のMnを有する。
【0060】
本明細書で使用する場合、「オリゴマー」は、ポリマーよりも少ない数の繰返し単位を有し、ポリマーよりも小さな分子量を有する点を除き、ポリマーと同様の構造物である。通常、オリゴマーは2〜10の繰返し単位を有する。一般的に、オリゴマーは400〜1,000のMnを有する。
【0061】
ある実施態様において、硬化性組成物は、「バッチ」として製造され、使用されるであろう。すなわち、特定の量の硬化性組成物が容器内で形成され、次いで必要に応じて使用されるであろう。また、硬化性組成物を連続的に製造および使用する実施態様も想定されており、たとえば全ての成分またはパックを連続ストリーム装置、たとえば押出機などに加えることなどによる。
【0062】
本発明の実施において、成分は任意の組合せにおいて、任意の順番で調合することができる。ある実施態様において、成分は容器に同時にまたは逐次的に加えられ、混ぜ合わされるであろう。ある実施態様において、2以上の成分が共に混合され、そして混合物(ここでは「パック」と呼ばれる)として保管され、後の時点で、更なる成分と混ぜ合わせられ、本発明の硬化性組成物を形成する。いくつかの成分を共に混合してパックを形成する場合には、残りの成分も、それらが純粋な形態で保管されている場合であっても、本明細書において「パック」と呼ぶ。成分が2以上のパックの形態で保管される実施態様は、本明細書において「多−パック」実施態様と呼ばれる。
【0063】
ある実施態様において、本発明の硬化性組成物は2−パック組成物である。「2−パック」という用語は、本明細書において、第一のパックと第二のパックを混ぜ合わせることにより得られる混合物中にマイケル付加を起こすのに必要な全ての成分が含まれていることを意味している。本発明のある実施態様は、第一のパックと第二のパックを混ぜ合わせることにより得られる混合物に何らアジュバントを加えることなく、第一のパックと第二のパックを混ぜ合わせることにより得られる硬化性組成物を使用することを想定している。また、第一のパック、第二のパック、および1以上のアジュバントを混ぜ合わせて、本発明の硬化性組成物を形成する実施態様も想定している。
【0064】
本発明の2−パック実施態様の実施において、第一のパックが少なくとも1つの多官能性マイケルアクセプターを含み、第二のパックが少なくとも1つの多官能性マイケルドナーを含む。本発明の2−パック実施態様の実施において、第一のパックと第二のパックのうちの一方または両方が少なくとも1つの可溶性弱塩基性触媒を含む。いくつかの2−パック実施態様において、第一のパックもしくは第二のパック、または両方のパックは、任意にアジュバントを更に含む。いくつかの2−パック実施態様において、各パックに対する成分は、1つのパックがマイケルアクセプター、マイケルドナーおよび触媒の3つ全てを含むことがないように選択される。
【0065】
また、マイケルアクセプターおよびマイケルドナーの両者である少なくとも1つの化合物の使用を伴う実施態様も想定している;このような化合物は、少なくとも1つのマイケルドナー官能基と構造(II)を有する少なくとも1つの官能基の両方を有する。このような化合物は、マイケル付加に対する触媒として有効な化合物と同じパックでは使用されないと想定される。
【0066】
ある実施態様において、全ての多官能性マイケルアクセプターの合計重量の、全ての多官能性マイケルドナーの合計重量に対する比は、少なくとも0.25:1、もしくは少なくとも0.33:1、もしくは少なくとも0.5:1、または少なくとも0.66:1である。独立して、ある実施態様において、全ての多官能性マイケルアクセプターの合計重量の、全ての多官能性マイケルドナーの合計重量に対する比は、4:1以下、または3:1以下、または2:1以下、または1.5:1以下である。
【0067】
本発明のある実施態様において、硬化性組成物の1以上の成分は溶媒中に溶解されており、または別な仕方で(たとえばエマルジョンまたはディスパーションとして)流体媒質中に担持されている。溶媒または他の流体媒質が1以上の成分と共に使用される場合、複数の成分の溶媒または他の媒質を、相互に独立して選択することができる。ある実施態様において、硬化性組成物は溶媒を実質的に含まない。本明細書における定義によれば、物質が、物質の合計重量を基準として、少なくとも75重量%の固形分を有する場合、物質は「実質的に溶媒を含まない」。「固形分」という用語は、本明細書において、全てのマイケルドナー、全てのマイケルアクセプター、全てのポリマー、純粋なときに25℃において固体である全ての物質、および200℃より高い沸点を有する全ての物質の重量を意味する。ある実施態様において、硬化性組成物は、硬化性組成物の重量を基準にして、少なくとも80重量%の固形分であり、もしくは少なくとも90重量%の固形分であり、もしくは少なくとも95重量%の固形分であり、または少なくとも98重量%の固形分である。
【0068】
また、「低固形分含量」の実施態様も想定されており、この実施態様において、硬化性組成物の重量を基準にして、硬化性組成物は75重量%未満の固形分を有する。いくつかの低固形分含量の実施態様において、固形分は流体媒質に溶解させることができ、もしくは流体媒質中に分散させることができ、またはこれらの組合せであってよい。低固形分含量の実施態様において、非固形分成分は1以上の非水性化合物、または水、またはこれらの組合せを含むことができる。いくつかの低固形分含量の実施態様において、硬化性組成物は、硬化性組成物の重量を基準にして、25重量%以上の固形分を有する。いくつかの低固形分含量の実施態様において、1以上の多官能性マイケルドナー、1以上の多官能性マイケルアクセプター、またはそれぞれのうちの1以上はポリマーである。
【0069】
独立して、本発明のある実施態様において、硬化性組成物はエポキシド基を有する化合物を全く含まない。独立して、本発明のある実施態様において、硬化性組成物はイソシアネート基を有する化合物を全く含まない。独立して、本発明のある実施態様において、硬化性組成物は、マイケル付加反応に関与する反応性基を有する化合物以外には、硬化に有効な化学反応を為し得る反応性基を有する化合物を全く含まない。
【0070】
ドナーとアクセプターの反応当量比、反応物の官能性、触媒および触媒の量、ならびにアジュバントのレベルまたは他の添加剤のレベルを操作することにより、当業者であれば、直鎖状、分枝状および架橋構造を有する本発明のポリマーを調製することができる。
【0071】
本発明の硬化性組成物において、多官能性マイケルアクセプターの、多官能性マイケルドナーに対する相対的な割合は反応当量比により表すことができ、これは、硬化性組成物における全ての官能基(II)の数の、硬化性組成物におけるマイケル活性水素原子の数に対する比である。ある実施態様において、反応当量比は0.1:1以上;または0.2:1以上;または0.3:1以上;または0.4:1以上;または0.45:1以上である。ある実施態様において、反応当量比は3:1以下;または2:1以下;または1.2:1以下;または0.75:1以下;または0.6:1以下である。
【0072】
ある実施態様において、硬化された硬化性組成物は未反応の官能基(II)を殆どまたは全く有さないと想定される。
【0073】
ある実施態様において、硬化された硬化性組成物は未反応の多官能性マイケルアクセプター分子を殆どまたは全く有さないが、有用な量の未反応官能基(II)を有すると想定される。ある実施態様において、硬化された硬化性組成物における未反応官能基(II)の存在は、未反応の多官能性マイケルアクセプター分子を有する場合または有さない場合のいずれにおいても、(たとえば、更なる化学反応を行うことが意図されている場合)望ましいであろう。他の実施態様において、硬化された硬化性組成物は未反応の多官能性マイケルアクセプター分子を殆どもしくは全く有さないことが望ましく、または硬化された硬化性組成物が未反応官能基(II)を殆どまたは全く有さないことが望ましいであろう;このような実施態様において、望ましい場合、実施者は、硬化された硬化性組成物が未反応の多官能性マイケルアクセプター分子を殆どもしくは全く有さないようにするのに充分な低さの反応当量比、または未反応官能基(II)を殆どもしくは全く有さないようにするのに充分な低さの反応当量比を容易に選択することができると想定される。類似的に、硬化された硬化性組成物は有用な量の未反応ドナー基を有することができる。
【0074】
本発明のある実施態様において、多官能性マイケルドナー、多官能性マイケルアクセプター、可溶性弱塩基性触媒、および他の任意の成分は、これらの成分からなる硬化性組成物が均質(すなわち、混合物が放置時または硬化時に相分離しない)になるように選択される。また、硬化性組成物が液体中におけるサスペンションとして分散されている1以上の成分を含む実施態様も想定している;いくつかのこのような実施態様において、サスペンションが安定していること(すなわち、固形分が放置時または硬化時に沈降または凝析しないこと)が有用である。
【0075】
本発明の実施は少なくとも1つの多官能性マイケルアクセプターの使用を含む。ある実施態様において、多官能性マイケルアクセプターの骨格は、多価アルコールの残基、たとえば本明細書において上でリストアップされているものなどの多価アルコールの残基である。ある実施態様において、多官能性マイケルアクセプターの骨格はポリマーであってよい。ある実施態様において、多官能性マイケルアクセプターの骨格はオリゴマーであってよい。
【0076】
本発明におけるいくつかの好適な多官能性マイケルアクセプターは、たとえば、構造(II)のうちの幾分かまたは全てが、エステル結合またはアミド結合を介して多官能性マイケルアクセプター分子に結合された(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリルアミド、フマル酸もしくはマレイン酸、これらの置換体、またはこれらの組合せの残基である分子を含む。エステル結合で化合物に結合された(メタ)アクリル酸の2以上の残基を含む構造(II)を有する化合物は、本明細書において、「多官能性(メタ)アクリレート」と呼ばれる。マイケル付加におけるアクセプターとして作用することができる少なくとも2つの二重結合を有する多官能性(メタ)アクリレートは、本発明における好適な多官能性マイケルアクセプターである。いくつかの好適な多官能性(メタ)アクリレートは、たとえば多官能性アクリレート(各残基がエステル結合によって骨格に結合しているアクリル酸の2以上の残基を有する化合物;MFAsとも呼ばれる)である。
【0077】
本明細書において、ある化合物「のアクリレート」(または、ある化合物「のジアクリレート」もしくは、ある化合物「のトリアクリレート」)と記載されているアクセプター、または「アクリル化された」化合物と記載されているアクセプターは、化合物をアクリル酸と反応させることにより形成することができる構造を有すると理解すべきである。多くの場合、このように記載されているアクセプターは、実際、このような反応を実施することにより生成されるが、このように記載されているアクセプターは、実際には、他の方法により生成することもできよう。いくつかの好適なアクセプターは、ヒドロキシル基、アミン基、エポキシド基、カルボキシル基と反応することが考えられる他の基、またはこれらの組合せを有する「アクリル化された」化合物もしくはこのような化合物「のアクリレート」(またはこのような化合物「のジアクリレート」もしくは「トリアクリレート」など)と記載されると想定される。たとえば、以下のアクセプターは、アクリル化されたブタンジオールと述べられ、また、ブタンジオールのジアクリレートとも記載される:
【0078】
【化4】

【0079】
このアクセプターは、ブタンジオールをアクリル酸と反応させることにより生成することができるが、同じ構造を任意の方法で生成することができると想定される。別の例として、ある既知のジグリシジルエーテル化合物が構造(III)を有する場合:
【0080】
【化5】

【0081】
「IIIのジアクリレート」と記載されるMFAは、以下の構造を有するであろう:
【0082】
【化6】

【0083】
MFAsである好適な多官能性マイケルアクセプターの例は、これらに限定されないが、たとえば以下の1以上のジアクリレートを含む:アルキルジオール、グリコール、エーテル含有ジオール(たとえばグリコールのダイマー、グリコールのトリマー、およびポリアルキレンジオール)、アルコキシル化アルキルジオール、ポリエステルオリゴマージオール、ビスフェノールA、エトキシル化ビスフェノールA、および少なくとも2つのヒドロキシル基を有するポリマー。また、同様のトリオールのトリアクリレートも適切であり、たとえばアルキルトリオールおよびアルコキシル化アルキルトリオールを含む。加えて、同様の多価化合物のテトラ−、ペンタ−、およびより高次のアクリレートも適切である。バイオベースのマイケルアクセプターは、これらに限定されないが、エポキシ化ダイズ、糖、ヒマシ油、グリセロール、1,3−プロパンジオール、プロポキシル化グリセロール、Lesquerellaオイル、イソソルビド、ソルビトールおよびマンニトールから誘導されたアクセプターを含む。
【0084】
好適なMFAsの更なる例は、アクリル酸とエステル結合を形成することができるヒドロキシル基以外の2以上の官能基を有する化合物のジ−、トリ−、テトラ−、およびより高次のアクリレートを含む。このようなMFAsは、たとえば2つのエポキシド基を有する化合物のジアクリレートを含み、たとえばエポキシ樹脂、ジグリシジルエーテル、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、エトキシル化ビスフェノールAジグリシジルエーテル、およびこれらの混合物のジアクリレートを含む。
【0085】
また、中でもとりわけ好適な多官能性マイケルアクセプターは、それぞれ構造(II)を有する2以上の官能基を有し、構造(II)を有する官能基の1以上が(メタ)アクリルアミドの残基である化合物である。他の好適な多官能性マイケルアクセプターにおいて、構造(II)を有する少なくとも1つの官能基は(メタ)アクリルアミドの残基であり、構造(II)を有する少なくとも1つの官能基は、(メタ)アクリルアミドの残基以外の官能基である。
【0086】
本発明の実施は、少なくとも1つの多官能性マイケルドナーの使用を伴う。本発明のある実施態様において、多官能性マイケルドナーの骨格は多価アルコールの残基であり、たとえば本明細書において上でリストアップされているものなどの多価アルコールの残基である。ある実施態様において、多官能性マイケルドナーの骨格はポリマーであってよく、たとえばポリアルキレンオキシド、ポリウレタン、ポリエチレン酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリジエン、水素化ポリジエン、アルキド、アルキドポリエステル、ポリオレフィン、ハロゲン化ポリオレフィン、ポリエステル、ハロゲン化ポリエステル、(メタ)アクリレートポリマー、これらのコポリマー、またはこれらの混合物などのポリマーであってよい。バイオベースのマイケルドナーは、これらに限定されないが、エポキシ化ダイズ、糖、ヒマシ油、グリセロール、1,3−プロパンジオール、プロポキシル化グリセロール、Lesquerellaオイル、イソソルビド、ソルビトールおよびマンニトールから誘導されたドナーを含む。
【0087】
多官能性マイケルドナーの骨格がポリマーである実施態様において、マイケルドナー官能基はポリマー鎖からペンダントであってよく、もしくはポリマー鎖に組み込まれていてよく、またはこれらの組合せであってよい。
【0088】
好適な多官能性マイケルドナーにおいて、マイケル活性水素を有する官能基は、広範囲の様々な配列のうちのいずれかで骨格に結合されていてよい。ある実施態様において、多官能性マイケルドナーは、次の構造を有しており:
【0089】
【化7】

【0090】
式中、nは2以上であり;Rは以下であり:
【0091】
【化8】

【0092】
は以下であり:
【0093】
【化9】

【0094】
、R、R、R10およびR11は、独立して、H、アルキル(直鎖状、環状または分枝状)、アリール、アリールキル、アルカリール、またはこれらの置換体であり;Rは、多官能性マイケルドナーの骨格として適切であると本明細書において上で検討されている任意の多価アルコールまたはポリマーの残基である。ある実施態様において、Rはマイケルアクセプターの残基であろう。ある実施態様において、R、R、R、R10およびR11の1以上は、マイケル活性水素を有する更なる官能基に結合しているであろう。
【0095】
ある実施態様において、nは3以上である。ある実施態様において、組成物は1つより多くの多官能性マイケルドナーを含有している。このような実施態様において、多官能性マイケルドナーの混合物はnの数平均値により表すことができる。ある実施態様において、組成物における多官能性マイケルドナーの混合物は、4以下、または3以下のnの数平均値を有する。
【0096】
いくつかの好適な多官能性マイケルドナーは、たとえばアセトアセトキシ置換アルキル(メタ)アクリレート;マロン酸のアミド、アセト酢酸のアミド、マロン酸のアルキルエステル、およびアセト酢酸のアルキルエステルを含み、ここで、アルキル基は直鎖状、分枝状、環状、またはこれらの組合せであってよい。
【0097】
いくつかの好適な多官能性マイケルドナーは、たとえば、2以上のアセトアセテート基を有するアルキル化合物である。このような多官能性マイケルドナーは、たとえば、アルキルジオールジアセトアセテート(アルキルジオールビスアセトアセテートとしても知られている)、たとえばブタンジオールジアセトアセテート、1,6−ヘキサンジオールジアセトアセテート、ネオペンチルグリコールジアセトアセテート、4,8−ビス(ヒドロキシメチル)トリシクロ[5.2.1.02,6]デカンのジアセトアセテート、2−メチル−1,3−プロパンジオールジアセトアセテート、エチレングリコールジアセトアセテート、プロピレングリコールジアセトアセテートなど;シクロヘキサンジメタノールジアセトアセテート;他のジオールジアセトアセテート;アルキルトリオールトリアセトアセテート(アルキルトリオールトリスアセトアセテートとしても知られている)、たとえばトリメチロールプロパントリアセトアセテート、ペンタエリトリトールトリアセトアセテート、グリセロールトリスアセトアセテート、またはトリメチロールエタントリアセトアセテート;などを含む。好適な多官能性マイケルドナーのいくつかの更なる例は、多価アルコールのテトラ−、ペンタ−、およびより高次のアセトアセテート(すなわち、エステル結合を通じて4つ、5つ、またはより多くのヒドロキシル基がアセトアセテート基に結合している多価アルコール)を含み、たとえばペンタエリトリトールテトラアセトアセテート、ジペンタエリトリトールペンタアセトアセテート、およびジペンタエリトリトールヘキサアセトアセテートを含む。
【0098】
好適な多官能性マイケルドナーのいくつかの追加的な例は、グリコールエーテルジアセトアセテート(グリコールエーテルビスアセトアセテートとしても知られている)であり、たとえばジエチレングリコールジアセトアセテート、ジプロピレングリコールジアセトアセテート、ポリエチレングリコールジアセトアセテート、およびポリプロピレングリコールジアセトアセテートなどである。
【0099】
いくつかの他の好適な多官能性マイケルドナーは、1つの分子当たり単一のマイケルドナー官能基を有するものであり、ここで、マイケルドナー官能基は2つのマイケル活性水素原子を有する。このような多官能性マイケルドナーは、たとえばアルキルモノアセトアセテート(すなわち、その構造が、単一の結合されたアセトアセテート基を有するアルキル基である化合物)を含む。
【0100】
好適な多官能性マイケルドナーの追加的な例は、1以上の以下の官能基を有する化合物を含む:アセトアセテート、アセトアセトアミド、シアノアセテート、およびシアノアセトアミド;ここで、官能基は1以上の以下の骨格に結合されていてよい:ポリエステル、ポリエーテル、(メタ)アクリルポリマー、およびポリジエン。
【0101】
代替的には、マイケルドナーはアクセプターと過剰なドナーとの反応生成物である。たとえば、多官能性アクセプターと過剰なアセトアセトネートの反応生成物である。
【0102】
いくつかの好適な多官能性マイケルドナーは、たとえば、アセトアセトキシエチルメタクリレート(AAEM)を含むモノマーと1以上の以下のものから生成されるオリゴマーおよびポリマーを含む:(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸のエステル、(メタ)アクリル酸のアミド、これらの置換体、およびこれらの混合物。ある実施態様において、オリゴマーまたはポリマーを生成するために使用される全てのモノマーの重量を基準にして、10重量%以上のAAEMを含むモノマーから生成される少なくとも1つのこのようなオリゴマーまたはポリマーが使用されると想定される。
【0103】
いくつかの好適な多官能性マイケルドナーは、多官能性のアセトアセテート官能性ポリエステルポリマーおよびアセトアセテート官能性ポリエステルアミドである。
【0104】
好適な多官能性マイケルドナーの混合物も適している。
【0105】
多官能性マイケルドナーの一つのカテゴリーはマロネートとして知られている。マロネートは以下を有する:
【0106】
【化10】

【0107】
式中のR、RおよびRについては本明細書において上で定義されている。マロネートを使用しても使用しなくてもよい;すなわち、このような実施態様において、非マロネート多官能性マイケルドナーが使用される。
【0108】
本発明は、組成物が接触する表面上に存在する反応促進剤を提供するが、組成物も反応促進剤を含むことができると理解すべきである。
【0109】
一つの実施態様によれば、少なくとも1つの可溶性弱塩基性触媒が使用される。触媒は、以下の溶解度判定基準を満たす場合、本明細書では「可溶性」であると定義される。好適な試験混合物が選択される:試験混合物は、単一の多官能性マイケルアクセプター、2以上の多官能性マイケルアクセプターの混合物、単一の多官能性マイケルドナー、または2以上の多官能性マイケルドナーの混合物であってよい。試験混合物は、弱塩基性触媒が使用される、硬化性組成物の一部または全てである。硬化性組成物における全ての多官能性マイケルアクセプターおよび全ての多官能性マイケルドナーの重量の総和に対する、硬化性組成物において使用される触媒の重量の比は、ここではX1と呼ばれる。硬化性組成物における全ての多官能性マイケルアクセプターおよび全ての多官能性マイケルドナーの重量の総和に対する試験混合物の成分の重量の総和の比は、ここではX2と呼ばれる。従って、溶解度試験を行うため、少なくとも試験混合物の重量に対する触媒の重量の比がY以上になるのに充分な量の触媒が試験混合物に加えられ、ここで、Y=X1/X2である。触媒と試験混合物との混合物が本明細書において以下で説明されている溶解手順に掛けられ、これにより、試験混合物に実際に溶解した触媒の量が決定される。試験混合物の重量に対する、実際に溶解した触媒の重量の比がY以上である場合には、触媒を可溶性であるとみなす。
【0110】
溶解度試験を実施する一つの有用な方法は、1以上のマイケルドナーを含むが、マイケルアクセプターを何ら含まない試験混合物を選ぶことである。溶解度試験を実施する別の有用な方法は、1以上のマイケルアクセプターを含むが、マイケルドナーを何ら含まない試験混合物を選ぶことである。
【0111】
溶解度を決定するために使用される溶解手順は以下のように本明細書において定められている。触媒と試験混合物との混合物を75℃に2時間加熱する;得られた混合物が透明な場合(すなわち、混合物が裸眼で視覚可能な曇りまたは沈降物を何ら示さない場合)、触媒を可溶性であるとみなす。得られた混合物が、75℃より低い温度に加熱した後に透明な場合、もしくは得られた混合物が75℃より低い温度で混合したときに透明な場合、または得られた混合物が、試験混合物に触媒を加えてから2時間より短い時間で透明になった場合、触媒を可溶性であるとみなす。もし、75℃で2時間後、得られた混合物が透明でない場合には、45〜60μmのフリットガラスを通じて濾過する;濾液を希HClで滴定し、試験混合物中に実際に溶解した触媒の量を決定する。
【0112】
濾液を希HClで滴定する場合、一つの許容可能な手順は以下の通りである。0.1ミリ当量から0.2ミリ当量(meq)までの間の触媒を含むべく見積もられたある量の濾液を30mlの変性アルコールに溶解する。次いで、濾液の溶液をシャープな終点まで0.1モルのHCl水溶液で滴定する。滴定は、当技術分野において既知の任意の広範囲にわたる様々な方法および/または装置を使用して行うことができる。たとえば、Radiometer Analytical SASにより製造されたRTS822記録滴定システムを使用することができる。滴定の進捗度および終点は、当技術分野において既知の任意の広範囲にわたる様々な方法および/または装置により測定することができ、たとえば電極、たとえばガラス電極および参照電極、たとえばRadiometer Analytical SASから入手可能なpHG201およびREF201電極を使用して測定することができる。終点が検出された後、標準的な方法により以下の量が算出される:濾液の溶液中に存在する触媒のモル数、および試験混合物中に実際に溶解した触媒の量(重量%)。
【0113】
一般的に、本発明の実施において、硬化性組成物が形成されたときに硬化を起こすのに充分な量の触媒を硬化性組成物にもたらすのに充分な触媒が試験混合物中に溶解する場合、触媒は可溶性である。ある実施態様において、触媒は、100グラムの試験混合物当たり、0.1グラム以上の触媒の量;または100グラムの試験混合物当たり、0.2グラム以上の触媒の量;または100グラムの試験混合物当たり、0.5グラム以上の触媒の量;または100グラムの試験混合物当たり、1グラム以上の触媒の量で試験混合物中に溶解する。触媒と試験混合物との混合物が75℃より低い温度で、もしくは2時間より短い時間で、または前述の両方の条件で混合され、充分な重量の触媒が試験混合物中に実際に溶解された場合には、触媒を可溶性であるとみなす。
【0114】
本発明のある実施態様において、少なくとも1つの可溶性弱塩基性触媒が純粋な物質の形態で使用される。本明細書において、「純粋な物質」という用語は、商業的な製造業者から容易に入手可能なあるレベルの純度を有する物質、またはより高いレベルの純度を有する物質を意味する。
【0115】
本発明の他の実施態様において、硬化性組成物は、可溶性弱塩基性触媒の溶液を他の成分に加えることにより形成される。本明細書において、「可溶性弱塩基性触媒の溶液」という用語は、溶媒(これは本明細書において上で定義されている通りの非官能性成分である)および可溶性弱塩基性触媒(本明細書において上で定義されている通りの)の均質な混合物を意味する。このような実施態様における溶媒は、水、または有機溶媒、たとえば炭化水素、アルコールおよびケトンなどであってよい。水は適切であることが知られている。たとえば、ある実施態様において、可溶性弱塩基性触媒の溶液が1以上の多官能性マイケルアクセプターに加えられる。可溶性弱塩基性触媒のいくつかの好適な溶液は、溶液の重量を基準にして、50重量%以上、または65重量%以上の濃度の可溶性弱塩基性触媒を有する。可溶性弱塩基性触媒の溶液の追加を伴うある実施態様において、可溶性弱塩基性触媒を含有するパックまたは硬化性組成物は、加熱温度もしくは低圧、または前述の条件の両方に付されて、溶媒の幾分かまたは全てを除去する。硬化性組成物を加熱温度に付して、溶媒を除去するある実施態様において、溶媒のこのような除去は、硬化性組成物の基体への適用および/または硬化性組成物の硬化を妨害しないような仕方で実施されると想定される;たとえば、溶媒の除去は、硬化性組成物を基体へ適用した後に実施することができ、この場合において、溶媒の除去と硬化は、相互に同時に完全にまたは部分的に起こり得ると想定される。可溶性弱塩基性触媒の溶液の添加を伴う他の実施態様において、溶媒はそのまま放置される;すなわち、溶媒を除去するための工程は何ら講じられない。一つの実施態様によれば、組成物をコーティングする前に全ての溶媒が除去される。
【0116】
可溶性弱塩基性触媒の溶液がパックに、または硬化性組成物に添加される本発明のある実施態様の実施において、可溶性弱塩基性触媒の溶液が加えられるパックまたは硬化性組成物は均質性を呈するであろう。
【0117】
可溶性弱塩基性触媒の溶液がパックに、または硬化性組成物に添加される本発明のある実施態様において、得られる混合物は曇りを呈するであろう。このような実施態様において、本発明をいかなるモデルまたは理論にも限定する意図ではないが、可溶性弱塩基性触媒の溶液に使用される溶媒が他の成分と適合しないため、または他の成分に溶解しないため、曇りが生じ;溶媒は分離した相として留まり;溶媒はパックの体積全体にわたって分散した液滴として存在すると想定される。さらに、このような溶媒液滴の分散が生じる場合には、可溶性弱塩基性触媒は溶媒液滴内に留まってよく、もしくは可溶性弱塩基性触媒は溶媒から移動し、他の成分に溶解された状態になってよく、または可溶性弱塩基性触媒は、ある割合で、溶媒液滴と他の成分との間で分配されてもよい。実施態様において、可溶性弱塩基性触媒の配置の如何にかかわらず、可溶性弱塩基性触媒が本明細書において上で定められている溶解度判定基準を満たすことができる限り、このような溶媒液滴の分散を含むパックまたは硬化性組成物は、本発明を実施するのに適しているとみなされる。
【0118】
一つの例として、ある実施態様において、可溶性弱塩基性触媒は、水に溶解して水溶液を形成し、次いで、水溶液が1以上の多官能性マイケルアクセプターと混合される。
【0119】
本発明のある実施態様において、硬化プロセスを開始する以前には、硬化性組成物は、マイケルドナー化合物からマイケル活性水素原子を除去することにより創出することができるいかなるアニオン(本明細書では「ドナー誘導アニオン」と呼ばれる)も含まない。ドナー誘導アニオンの一例はアセトアセトネートアニオンであり、これは、アセトアセテート基からマイケル活性水素原子を除去することにより創出することができる。本明細書において上で記載されているマイケルドナー官能基の任意の1つからマイケル活性水素原子を除去することにより、同様のドナー誘導アニオンを創出することができる。本発明をいかなる特定の理論にも限定する意図ではないが、ある実施態様において、硬化性組成物が形成された後、一旦硬化プロセスが始まると、1以上のドナー誘導アニオンを含むある化合物がマイケル付加反応中の中間体として形成される場合があると想定される。
【0120】
本発明のある実施態様において、硬化性組成物は、連鎖停止の原因になると知られる単官能性マイケルアクセプターまたはドナーを何ら含まない。他の実施態様において、硬化性組成物は少なくとも1つの単官能性マイケルアクセプターを含む。本明細書で使用する場合、「単官能性マイケルアクセプター」は、各分子に正確に一つの構造(II)を有する(本明細書において上で定義されている通りの)マイケルアクセプターである。いくつかの単官能性マイケルアクセプターは、たとえば、一つの分子当たり1つの構造(II)を有する(メタ)アクリル酸および(メタ)アクリル酸のエステルを含み、たとえばアルキル(メタ)アクリレートを含む。
【0121】
本発明のある実施態様において、硬化性組成物は単官能性マイケルドナーを何ら含まない。他の実施態様において、硬化性組成物は、少なくとも1つの多官能性マイケルドナーに加え、少なくとも1つの単官能性マイケルドナーを含む。本明細書で使用する場合、「単官能性マイケルドナー」は、各分子に正確に1つのマイケル活性水素を有する(本明細書において上で定義されている通りの)マイケルドナーである。
【0122】
本発明の硬化性組成物の成分は、本発明を実施する条件下においてマイケル付加が起こるように選択されると想定される。たとえば、ある特定の多官能性マイケルアクセプターは、他の多官能性マイケルドナーとの場合よりもいくつかの多官能性マイケルドナーとの場合の方がマイケル付加反応を受けにくいことがあり得る。たとえば、メタクリレート基は、通常、アセトアセテート基との場合よりもシアノアセテート基との場合の方が一層容易に反応する。加えて、いくつかの可溶性弱塩基性触媒は、他の触媒よりも強力にマイケル付加反応を促進する。しかし、特定の多官能性マイケルドナーと特定の多官能性マイケルアクセプターとの間の反応が遅かったり、または効果的でない場合であっても、いくつかのケースにおいて、より塩基性の強い触媒を使用することにより、より多量の塩基性触媒を使用することにより、混合物を加熱することにより、または手段の組合せを使用することにより、反応を加速し、または反応を効果的に為すことができるであろう。本発明の実施者は、本発明の実施における硬化の望ましい速度を達成すべく、効果的な成分の組合せを容易に選択することができるであろう。
【0123】
本発明の実施において、硬化性組成物は成分を混ぜ合わせることにより形成され;混合は任意の手段により行うことができる。ある実施態様において、成分は全て液体であり、成分を容器に入れ、攪拌することにより、簡単に混合することができる。いずれかの成分が固体である場合には、固体を硬化性組成物に溶解または懸濁させるべく、充分な攪拌が行われると想定される。ある実施態様において、たとえば基体の同じ領域に様々な成分の層を交互に適用することにより、または様々な成分の別々の流れを噴霧することにより、様々な成分を基体上で混ぜ合わせることができる。
【0124】
本発明の硬化性組成物は、新たに混合されたばかりの場合、23℃において有用な粘度を持っているべきである。粘度を測定する一つの有用な手段は、Brookfield粘度計を用い、粘度計の製造業者の指示により、測定されるべき物質に対して適切であるように選択されたスピンドルのタイプおよび回転速度で測定する方法である。一般的に、Brookfield粘度計を適切に使用するための条件は、たとえば、本機器の目盛りでフルスケールの10%から90%までのある読み取り値を与えるスピンドルおよび回転速度を選択することを伴う。ある実施態様に対しては、#4のスピンドルが適切である。ある実施態様において、新たに混合されたばかりの硬化性組成物は、0.01Pa*s(10cps)以上の粘度を有する液体であろう。また、新たに混合されたばかりの硬化性組成物は、10,000Pa*s(10,000,000cps)以下の粘度を有する液体であろう。望ましい粘度は成分を混合するために使用される手段、および硬化性組成物を成形するために使用される手段または硬化性組成物を基体に適用するために使用される手段によって決まるであろう。硬化性組成物を基体へ適用することを伴うある実施態様において、硬化性組成物の粘度は0.1Pa*s(100cps)以上;または0.2Pa*s(200cps)以上;または0.4Pa*s(400cps)以上である。独立して、硬化性組成物を基体へ適用することを伴うある実施態様において、粘度は2,000Pa*s(2,000,000cps)以下;または1,000Pa*s(1,000,000cps)以下;または500Pa*s(500,000cps)以下である。硬化された硬化性組成物をエラストマーとしておよび/または高分子発泡体として使用することを伴う実施態様において、好適な粘度は、通常、硬化性組成物が基体へ適用される場合の好適な粘度よりも高い。
【0125】
本発明の硬化性組成物は、23℃において7日間またはそれより短い期間で硬化することができる。硬化が起こっているという事実は、23℃における硬化性組成物のポットライフ(すなわち、硬化性組成物が形成されてから、硬化性組成物をもはや成形することができない、または基体へ適用することができない程の高い粘度にまで混合物の粘度が上昇するまでの時間)を測定することにより確認することができる。新たに混合されたばかりの硬化性組成物の粘度は、23℃において何らかの標準的な方法により測定することができる;一つの有用な粘度測定方法は、本明細書において上で記載されているように、Brookfield粘度計を使用する方法である。
【0126】
ポットライフの一つの有用な測定は、硬化性組成物の粘度が新たに混合されたばかりの硬化性組成物の粘度の5倍に相当する値に達するまでに要する時間(本明細書では「粘度5倍時間」と呼ぶ)である。ポットライフの一つの有用な代替的測定は、硬化性組成物の粘度が新たに混合されたばかりの硬化性組成物の粘度の2倍に相当する値に達するまでに要する時間(本明細書では「粘度二倍時間」と呼ぶ)である。2種類の混合物を比較する場合、より長い粘度5倍時間を有する混合物は、粘度二倍時間もより長いと想定される。ポットライフの別の有用な代替的測定は、硬化性組成物の粘度が新たに混合されたばかりの硬化性組成物の粘度の10倍に相当する値に達するまでに要する時間である。ポットライフの更なる別の有用な代替的測定は、硬化性組成物の粘度が新たに混合されたばかりの硬化性組成物の粘度の100倍に相当する値に達するまでに要する時間である。
【0127】
さらに別の有用な測定は硬化反応の半減期である。一般的に、2種類の混合物を比較する場合、より長い半減期を有する混合物は、粘度5倍時間もより長いと想定される。硬化反応の半減期は以下のようにして決定される。硬化反応が始まる前に存在する構造(II)を有する官能基(このような官能基を、ここでは「構造II−基」と呼ぶ)の濃度を測定し、且つ、硬化反応において反応した構造II−基の濃度を(硬化性組成物が形成された時点から測定された)時間の関数として測定するための何らかの既知の分析方法を使用して、硬化性組成物が調べられる。硬化反応が始まる前に存在していた構造II−基の濃度に対する、硬化反応において反応した構造II−基の濃度の比を、本明細書では「転化率」と呼ぶ。硬化反応の半減期は、転化率が0.50に達するのに要する時間である。半減期は任意の広範囲の様々な方法により評価することができる。
【0128】
硬化反応の半減期を評価する一つの方法は直線適合化法であり、直線適合化法は以下のようにして実施される。各時点において、転化率が測定され、本明細書において(転化率)/(1−転化率)として定義される「反応進行率」を算出するために使用される。時間の関数としての反応進行率の値が標準的な線型最小二乗法を使用して直線に当てはめられる。硬化反応の半減期は、このようにして決定された直線の傾きの逆数である。半減期を評価する直線適合化法は、反応進行率対時間の依存性が線型であると当業者が考える場合に適している;反応進行率対時間の依存性が非線型であると当業者が考える場合には、反応の半減期を評価する他の何らかの方法が使用されよう。
【0129】
ある実施態様において、硬化性組成物のポットライフは5分以上;または10分以上;または25分以上である。独立して、ある実施態様において、ポットライフは7日以下;または1日以下;または8時間以下;または2時間以下;または30分以下である。
【0130】
他の実施態様において、硬化性組成物のポットライフはより短いことが望ましい。いくつかのより短いポットライフの実施態様において、硬化性組成物のポットライフは30秒以上;または1分以上;または2分以上である。独立して、いくつかのより短いポットライフの実施態様において、ポットライフは20分以下;または10分以下;または5分以下である。たとえば、硬化された硬化性組成物が発泡体またはエラストマーとして使用されるある実施態様は、より短いポットライフの実施態様であることが望ましいであろう。
【0131】
本発明のある実施態様において、硬化性組成物は少なくとも1つの酸捕捉剤を含む。本明細書において定められている酸捕捉剤は、本発明の可溶性弱塩基性触媒ではない化合物であり、カルボン酸または別の酸のいずれかの酸と反応することができる化合物である。「酸と反応する」という用語は、ここにおいて、酸捕捉剤が(たとえば共有結合、イオン結合または錯体を形成することにより)酸と相互作用して一時的または恒久的な生成物を形成することができ;酸捕捉剤と酸との間の相互作用が、酸捕捉剤以外の化合物との相互作用に前述の酸が関与する傾向を排除または低減することを意味する。酸捕捉剤のいくつかの例は、第三級アミン(たとえばトリエタノールアミンなど)、アジリジン(たとえばエチレンイミンなど)、カルボジイミド、有機チタン化合物、有機ジルコニウム酸塩、弱塩基性イオン交換樹脂、窒素含有樹脂(たとえばポリ−2−エチル−2−オキサゾリンおよびポリビニルピロリドンなど)、アルカリ金属炭酸塩および重炭酸塩(たとえば炭酸カリウムなど)、ならびにこれらの混合物である。酸捕捉剤として効果的であることが知られているいくつかの有機チタン化合物は、たとえばチタン酸テトラブチル、チタン酸テトライソプロピルおよびアセチル酢酸チタンであり、DuPont Co.により、それぞれTyzor(商標)TnBT、Tyzor(商標)TPTおよびTyzor(商標)AAとして販売されている。
【0132】
1以上の酸捕捉剤が使用されるある実施態様において、酸捕捉剤は1以上のカルボジイミド(CDI)を含む。カルボジイミドは、次の化学構造式を有しており:
【0133】
【化11】

【0134】
式中のR21およびR12は、互いに独立して、炭化水素構造、または炭素および水素のほかに少なくとも1つのヘテロ原子(すなわち、水素または炭素以外の原子)、たとえば酸素、窒素、イオウまたはリンなどを含む構造である。たとえば、R21およびR12はアルキル、アリール、アルキル置換アリール、アリール置換アルキルおよび基の混合物から選択することができる。ある実施態様において、R21およびR12のうちの少なくとも一方は、少なくとも1つのエーテル結合、チオエーテル結合、エステル結合、ウレタン結合またはアミド結合を含む。また、R21およびR12のうちの一方または両方がポリマーであるケースにおけるカルボジイミドも想定している。
【0135】
ある実施態様において、本発明の酸捕捉剤は、ポリカルボジイミド(pCDI)として知られた次の構造式を有する1以上のカルボジイミドを含み:
【化12】

【0136】
式中、nは2以上であり、R13、R14およびR15は、それぞれ独立して、R21およびR12に適していると本明細書において上で記載されている基から選択される。R14基は全てが同じであってよく、または(n個までの)任意の数の異なる基であってもよい。ある実施態様において、R13およびR15のうちの少なくとも一方は、少なくとも1つのエーテル結合、チオエーテル結合、エステル結合、ウレタン結合またはアミド結合を含む。ある実施態様において、R13およびR15のうちの少なくとも一方は200以上の分子量を有する。ある実施態様において、R14基はアルキル、アリール、アルキル置換アリールおよびこれらの混合物から選択される。全てのR14基がアリール、アルキル置換アリールおよびこれらの混合物から選択されるpCDIはここでは「芳香族pCDIs」として知られている。ある実施態様において、少なくとも1つのpCDIが使用される。ある実施態様において、R14基が全て同じであるケースにおいて少なくとも1つのpCDIが使用される。
【0137】
本発明のある実施態様は、硬化性組成物の層を基体へ適用することを伴う。層は連続的または不連続的なフィルムであってよい。適用方法は当業者に知られた数多くの方法のうちのいずれかによるものであってよく、たとえば刷毛塗り、吹き付け、ローラーコーティング、輪転グラビアコーティング、フレキソ印刷コーティング、流し塗り、カーテンコーティング、浸漬、ホットメルトコーティング、押出し、共押出し、これらと同様の方法、およびこれらの組合せなどにより適用することができる。ある実施態様において、硬化性組成物の層の基体への適用は環境温度で実施される。他の実施態様において、適用を加熱温度で実施して、たとえば硬化性組成物の粘度を調整することができる。
【0138】
他の実施態様、特に硬化された硬化性組成物が発泡体またはエラストマーとして使用される実施態様において、硬化性組成物は、型または他の好適な容器内において成分を混合し、硬化反応の間、そこに保持することにより形成することができる。代替的に、成分を混合した後、硬化性組成物を型または他の好適な容器に入れ、硬化反応の間、そこに保持してもよい。
【0139】
ある実施態様において、硬化性組成物は乾燥することができる。すなわち、第一のパックと第二のパックを共に混合した後であるが、硬化性組成物を使用に供する前に、任意の揮発性の化合物(何らかの揮発性化合物が存在する場合)、たとえば溶媒などを蒸発させることができるようにするため、ある時間の期間を費やしてよい。この期間の間、ある実施態様において、硬化性組成物は、低減された圧力または移動する雰囲気に晒することができる。乾燥は、硬化反応が起こる前、硬化反応が起こっている間、または硬化反応が起こった後に行うことができる。独立して、硬化性組成物を基体へ適用することを伴う実施態様、または硬化性組成物を型に入れることを伴う実施態様において、乾燥は、硬化性組成物を基体へ適用する前、適用している間、もしくは適用後、または硬化性組成物を型に入れる前、型に入れている間、もしくは型に入れた後に行うことができる。
【0140】
ある実施態様において、揮発性化合物は硬化プロセス中に殆どまたは全く放出されない。たとえば、ある実施態様において、硬化性組成物の重量は、硬化プロセスの間に、硬化性組成物の初期重量(すなわち、新たに混合されたばかりの硬化性組成物の重量)に基づき、10%以下だけ低減する。ある実施態様において、硬化性組成物の重量は、硬化プロセスの間に、硬化性組成物の初期重量を基準にして、5%以下、または2%以下、または1%以下だけ低減する。
【0141】
硬化性組成物の層を基体へ適用することを伴うある実施態様において、1以上の基体は、硬化性組成物と接触する前に、1以上の処理手段を使用して、たとえばコロナ放電または化学的プライマーでのコーティングなどの処理手段を使用して処理することができる。他の実施態様において、基体は、事前の処理を有することなく、本発明の硬化性組成物と接触させられる。硬化性組成物は、たとえば0.2g/mから5.8g/mまで(0.12 lb/リームから3.56 lb/リームまで)のレベルで適用することができる。
【0142】
硬化性組成物が基体を相互に結合するために使用される実施態様において、硬化性組成物の層を第一の基体に適用した後、複合体を形成すべく、層を別の基体と接触させることができる。このようにして形成された複合体は、基体と組成物との増強された接触を行うべく、任意に圧力が加えられ、たとえば複合体をローラーの間に通す方法などにより圧力が加えられる;このような圧力は、硬化反応が実質的に完了する前に加えられることが多い。本発明の別の実施態様において、硬化性組成物の層を第一の基体の両面に同時的または逐次的に適用し、次いで層を2つの更なる基体と同時的または逐次的に接触させることができ、2つの更なる基体は同じものであってよく、または異なるものであってもよい。加えて、複合体の構築は、ここで説明されているプロセスの前または後に、本発明の硬化性組成物または別の異なる組成物を使用して他の1つまたは複数の基体に逐次的に結合することができることも想定している。本発明の方法において結合される第一および第二の基体は同じものであってもよいし、または異なるものであってもよく、たとえばプラスチック、金属化されたプラスチック、金属および紙を含み、基体は滑らかな表面または構造化された表面を有することができる。
【0143】
硬化性組成物が基体を相互に結合するために使用される実施態様の中で、ある実施態様において、複合体は23℃より高く加熱されるであろう。本発明の硬化性組成物は23℃で硬化することができるが、ある実施態様において、複合体を23℃より高い温度に加熱することにより、硬化プロセスを急速化または別な仕方での改善を行うことが望ましい。このような加熱が実施される場合、複合体は35℃より高く、もしくは50℃より高く、または100℃より高い温度に加熱することができる。また、硬化プロセスの間、複合体が35℃以下の温度に維持される実施態様も想定している。
【0144】
硬化性組成物が基体を相互に結合するために使用される実施態様の中で、ある実施態様において、殆どまたは全てのマイケル付加反応は、硬化性組成物を基体と接触させる前になされ、または硬化性組成物を1つの基体のみと接触させながらなされる。
【0145】
硬化性組成物が基体を相互に結合するために使用される他の実施態様において、マイケル付加反応の実質的な部分は、硬化性組成物が少なくとも2つの基体と接触しているときに起こる。いくつかのこのような実施態様において、生じるマイケル付加反応のうちの少なくとも25モル%は、硬化性組成物が少なくとも2つの基体と接触しているときに起こり;他のこのような実施態様において、生じるマイケル付加反応のうちの少なくとも50モル%、もしくは少なくとも75モル%、または少なくとも90モル%は、硬化性組成物が少なくとも2つの基体と接触しているときに起こる。
【0146】
別の実施態様によれば、硬化性組成物は有用な感圧性接着剤組成物である。別の実施態様によれば、硬化性組成物は、剥離塗膜を含む少なくとも1つの基体と接触した状態で硬化される。別の実施態様によれば、硬化された硬化性組成物は、30℃未満および25℃未満を含め、50℃未満のTgを有しており、溶媒の使用を伴い、または溶媒の使用を伴わずに、ポリマーフィルムに適用される。本発明のポリマー組成物および硬化性組成物を使用して広範囲のラミネートが有用に調製される。本発明のある実施態様において、基体は比較的薄く、平坦であり、得られる複合体はラミネートと呼ばれる。ラミネート用の基体のいくつかの例は、ポリアルキレン、たとえばポリエチレンおよびポリプロピレンなど、ポリ塩化ビニル、ポリエステル、たとえばポリエチレンテレフタレートなど、ポリアミド(ナイロン)、エチルセルロース、酢酸セルロース、金属化ポリプロピレン、紙、アルミニウムホイル、他の金属、セラミックシート物質などであり、基体はロール、シート、フィルム、ホイルなどの形態で提供することができる。ラミネート用の基体の更なる例は織物または不織布であり、これは、種々の物質、たとえばコットン、ウール、レーヨン、ナイロン、ポリエステル、ポリアルキレン、ガラスまたはセラミックスなどの物質でできた1以上の天然または合成の繊維を使用して、繊維から構成することができる。
【0147】
ラミネートを形成すべく基体を共に結合させるのに適した接着剤は、ここでは「ラミネート接着剤」として知られている。
【0148】
本発明の実施において、ラミネートを形成すべく本発明の硬化性組成物により相互に結合することができる基体は、互いに同じものであってよく、または互いに異なるものであってもよい。
【0149】
硬化された組成物は、任意の広範囲にわたる様々な目的で使用することができる。たとえば、硬化された組成物は、基体に結合された状態のエラストマーまたはエラストマー物品のいずれかとして使用することができる。別の例において、硬化された組成物は、発泡体をもたらす条件下において形成され、硬化することができる。更なる例において、硬化性組成物の層を基体へ適用し、次いでコーティングを形成すべく、空気に晒したまま放置することができ;このようなコーティングは連続的または不連続的であってよく;保護用もしくは装飾用、または保護と装飾の両方を目的としたものであってよく;たとえばペイントとして、別なタイプのコーティングとして、またはインクとして機能してよい。硬化性組成物の使用は、たとえばガスケット、シーラント、屋根用膜、またはフィルムのうちの1以上としてであってよい。
【0150】
硬化された硬化性組成物はガラス転移温度(Tg)を測定することにより特徴付けることができる。ガラス転移温度は、1ヘルツ(1サイクル/秒)におけるフレクスラルモードでの動的機械分析(DMA)により測定することができる。Tgは損失正接対温度曲線におけるピークとして確認される。DMA試験は硬化された硬化性組成物自体で実施することができ、またはDMA試験は、硬化された硬化性組成物が他の物質と接触しているときに実施されてもよい。たとえば、硬化された硬化性組成物が複合体の基体間における層の状態である場合、複合体全体をDMA試験で試験することができる;当業者であれば、基体または硬化された組成物以外の物質に因る損失正接対温度曲線における任意のピークを無視する仕方を容易に知り得よう。ある実施態様(ここでは「多−Tg」実施態様と呼ぶ)において、硬化された組成物は、損失正接対温度曲線に1つより多くのピークを有するであろう。
【0151】
硬化された組成物が特定の値「のTgを有する」という表現は、ここにおいて、硬化された組成物が特定の値の唯一のTgを有するか、または硬化された硬化性組成物が損失正接対温度曲線に多数のピークを有しており、ピークのうちの1つが特定の値のピークを有するかのいずれかを意味するものと理解すべきである。
【0152】
本発明の硬化された硬化性組成物は、広範囲にわたるTgのうちのどのようなTgを有してもよい。ある実施態様において、硬化された硬化性組成物は−80℃またはそれより高いTgを有するであろう。独立して、ある実施態様において、硬化された硬化性組成物は120℃またはそれより低いTgを有するであろう。Tgまたは複数のTgは、硬化された組成物の意図される用途にとって望ましい最良の特性を与えるべく選択されるであろう。
【0153】
たとえば、硬化された組成物が構造用接着剤として使用されることが意図されている場合、硬化性組成物は、通常、硬化された硬化性組成物が50℃またはそれより高いTgを有するように選ばれるであろう。別の例として、硬化された組成物が感圧性接着剤として使用されることが意図されている場合、硬化性組成物は、通常、硬化された硬化性組成物が15℃もしくはそれより低いTg;または0℃もしくはそれより低いTg;または−25℃もしくはそれより低いTg;または−50℃もしくはそれより低いTgを有するように選ばれるであろう。更に別の例として、硬化された組成物がラミネート接着剤として使用されることが意図されている場合、硬化性組成物は、通常、硬化された硬化性組成物が−30℃もしくはそれより高いTg;または−15℃もしくはそれより高いTg;または−5℃もしくはそれより高いTg;または15℃もしくはそれより高いTg;または30℃もしくはそれより高いTgを有するように選ばれるであろう。
【0154】
本明細書および請求項の目的上、ここで言及されている範囲および比の限度は組み合わせられ得るものと理解すべきである。たとえば、特定のパラメーターに対して60から120まで、および80から110までの範囲が言及されている場合、60から110までの範囲および80から120までの範囲も想定していることを理解すべきである。加えて、1および2の最小範囲値が言及されており、更に3、4および5の最大範囲値が言及されている場合には、以下の範囲が全て想定されている:1から3まで、1から4まで、1から5まで、2から3まで、2から4まで、および2から5まで。
【実施例】
【0155】
実施例
以下の実施例において、省略記号および物質が使用される:
SR−259=ポリエチレングリコール(200)ジアクリレート、Sartomer Co.から入手
CD−501=プロポキシル化(6)トリメチロールプロパントリアクリレート、Sartomer Co.から入手
SR−306HP=トリプロピレングリコールジアクリレート、Sartomer Co.から入手
Morcure(商標)2000=ジグリシジルエーテルビスフェノール−Aのジアクリレート、Rohm and Haas Co.から入手
EB−8402=ウレタンジアクリレート、UCB Co.から入手
SR−9003=プロポキシル化(2)ネオペンチルグリコールジアクリレート、Sartomer Co.から入手
SR−610=ポリエチレングリコール(600)ジアクリレート、Sartomer Co.から入手
IRR−214=環状脂肪族ジアクリレート、UCB Co.から入手
GF−19=高滑度の低密度ポリエチレンフィルム、厚み0.025mm(1mil)
PET=コロナ処理されたポリエチレンテレフタレート、92ゲージ
OPP=コロナ処理された延伸ポリプロピレン、厚み0.025mm(1mil)
Alホイル=アルミニウムホイル、厚み0.025mm(1mil)
LLDPE=直鎖状の低密度ポリエチレンフィルム、厚み0.05mm(2mil)
金属化OPP=金属化された延伸ポリプロピレン、厚み0.025mm(1mil)
【0156】
連続コーティング手順
実施例1の接着剤を92ゲージのPETフィルム(Dupont 92 LBT Mylar(商標))にPolytype labのコーター/ラミネーターを使用して20フィート/分でコーティングした。接着剤の被膜重量は1.5〜2ポンド/フィルム リームであった。
【0157】
被膜の定置後、直ちに、接着剤被膜の上面に第二の92ゲージPETフィルムを連続的に適用し、ニップローラーを使用して適宜にプレスした。様々な処理の効果を評価することができるように、任意に、手作業で調製した様々な基体のサンプルを第二のフィルムに継ぎ合わせた。
【0158】
積層されたフィルムサンプルにおける硬化の程度をモニタリングするための手順
30〜40cmの積層されたフィルムのサンプルを切り出し、2枚のフィルムを分離した。これら2枚の別々のフィルムを円筒状に巻き上げ、1.5ml用のバイアルに挿入した。10mlの重クロロホルム当たり0.6μlの酢酸を含有する0.9mlの重クロロホルムをバイアルに加えた。(酢酸は、分析中における接着剤の継続的な硬化を抑制するために加えられた)。バイアルにキャップをし、5分間振盪した後、液体をNMRチューブにピペッティングした。
【0159】
サンプルのNMRスペクトルをBruker 500 Ultrashield装置を使用して記録した。5.9ppmのオフセットにおけるピークの積分面積を6.9ppmのオフセットにおける不変ピークと比較することにより、アクリルオレフィン基の濃度をモニタリングし、不変ピークを内部標準として用いた。
【0160】
ある与えられた時間における5.9ppmのピークの面積を6.9ppmのピークの面積で割り算することにより、相対的なアクリレート残量を算出した。%硬化率は、100%〜100*(ある時間tにおける相対的なアクリレート量を時間ゼロにおける相対的なアクリレート量で割り算した値)として算出された。
【0161】
T−ピール接着力を測定するための手順
T−ピール試験において、熱硬化性組成物の層が第一のフィルムに適用される。熱硬化性組成物中に存在する任意の溶媒または他の揮発性化合物は、層の適用前、適用中、または適用後に実質的に取り除かれる。次いで、第二のフィルム(第一のフィルムと同じ物質のフィルム、または第一のフィルムとは異なる物質のフィルム)が熱硬化性組成物の層と接触させられ、このようにして形成されたラミネートがニップローラー間でプレスされる。
【0162】
ラミネートを、試験する前に、様々な期間、環境条件(20〜25℃)下において保管する。
【0163】
幅25mm(1インチ)のラミネートのストリップを切断し、ストリップを引張試験機内において4.2mm/秒(10インチ/分)の速度で引き剥がす。T−ピール試験の結果は、ストリップを引き剥がすのに要した平均荷重として記録される。
【0164】
実施例1:熱硬化性組成物の調製
3種類の熱硬化性組成物を以下のように調製した:トリメチロールプロパントリス(アセトアセトネート)、Morecure 2000、Sartomer SR−259および水中における70%酢酸カリウムを、表1で特定されている割合で、手操作により激しく混ぜ合わせた。
【0165】
【表1】

【0166】
混合物を直ちに使用した。
【0167】
実施例2:組成物のポットライフ
実施例1の組成物を35℃で平衡化し、Brookfield LVDVI粘度計を使用して組成物の粘度をモニタリングした。スピンドル25を100rpmで使用した。組成物の初期粘度および粘度二倍時間(ポットライフ)が以下の表に与えられている。
【0168】
【表2】

【0169】
酢酸カリウム触媒のレベルを低減させると、ポットライフが劇的に増大することが分かる。
【0170】
実施例3:インクへの触媒の添加
白色インクのサンプル(Color Converting Industriesから入手したF−11白、53.1%の固形分)を振盪し、任意の沈降物を再懸濁させた。インク固形分量に基づき3%の酢酸カリウムを与えるべく、インクのサンプルに、n−プロピルアルコール中における6%酢酸カリウムの溶液を加えた。オリジナルインクのアリコートおよび3%の酢酸カリウムを有するインクを92ゲージのPETフィルム(Dupont 92LBT Mylar(商標))上に#4の巻線ロッドを使用してコーティングした後、強制エアーオーブン内において60℃で4分間乾燥させた。
【0171】
92LBT PETフィルムに連続コーティングを使用して熱硬化性組成物1Aをコーティングし、準備されたインクフィルムに積層した。ラミネートにおける本接着剤の硬化の程度をNMRによりモニタリングした。結果が表にまとめられ、グラフで表されている:
【0172】
【表3】

【0173】
修飾されていない白色インクと接触状態にあった接着剤は、29時間の期間にわたり、非常に僅かな硬化しか示さなかったことが分かる。これとは対照的に、触媒として酢酸カリウムが組み込まれたインクと接触状態にあった接着剤は、前者よりずっと速い硬化を示した。
【0174】
実施例4:インクへの酸捕捉剤の付加
青色インクのサンプル(Color Converting Industriesから入手したF−11シアンブルー、29.3%の固形分)を振盪し、任意の沈降物を再懸濁させた。混合インクのサンプルに、インク固形分量に基づき4%のレベルで酸捕捉剤としてのトリエタノールアミンを加えた。処理されたインクおよび非修飾のインクを92ゲージのPETフィルム(Dupont 92LBT Mylar(商標))に#2.5の巻線ロッドを使用してコーティングした後、強制エアーオーブン内において60℃で4分間乾燥させた。
【0175】
92LBT PETフィルムに連続コーティングを使用して熱硬化性組成物1Aをコーティングし、準備されたインクフィルムに積層した。ラミネートにおける本接着剤の硬化の程度をNMRによりモニタリングした。結果が表にまとめられ、グラフで表されている:
【0176】
【表4】

【0177】
酸捕捉剤を含有するインクと接触状態にあった接着剤は、非修飾の対照インクと接触状態にあったサンプルよりも速い硬化を示したことが分かる。
【0178】
実施例5:触媒による基体の処理
水中における10%水酸化カリウム触媒の溶液を調製した。5mlの触媒溶液を5”×10”のクラフト紙シート上にピペッティングした後、#4の巻線ロッドを使用して拡げた。シートを強制エアーオーブン内において60℃で10分間乾燥させた。
【0179】
5mlの熱硬化性組成物1Aまたは1Dを触媒で処理されたクラフト紙シートまたは非修飾クラフト紙シート上にピペッティングした後、#4の巻線ロッドを使用して拡げた。PET(92LBT)のシートを各接着剤被膜上に巻き、サンプルを室温で18.5時間エージングさせた。後、サンプルを触感およびT−ピール接着力について評価した。結果が以下の表にまとめられている:
【0180】
【表5】

【0181】
非修飾のクラフト紙はマイケル硬化される熱硬化性組成物にとって適した基体ではないことが分かる。触媒によるクラフト紙の処理は、基体を、マイケル硬化される熱硬化性組成物、たとえば処方物1Aなどにとって適したものに為すことが分かる。
【0182】
加えて、クラフト紙の表面を触媒で処理することにより、それ自体は反応促進剤を全く含まず、硬化時間より長いポットライフを示した処方物である組成物1Dを用いた場合においてさえ、急速な硬化および接着力の発現が可能となったことが分かる。
【0183】
実施例6:高分子触媒による基体の下塗り
Rhoplex ASE−95アルカリ可溶性エマルジョンを5%の固形分量にまで希釈した後、45%水酸化カリウム溶液でpH13に中和した。中和されたポリマーは、高分子弱塩基性触媒であると考えられる。
【0184】
容量5mlの高分子弱塩基性触媒溶液を5”×10”のPET(92LBT、Dupont)シート上にピペッティングした。シートを強制エアーオーブン内において60℃で10分間乾燥させた。
【0185】
92LBT PETフィルムに連続コーティングを使用して熱硬化性組成物1Aをコーティングし、修飾されていないPETシートまたは高分子弱塩基性触媒が下塗りされたPETシートのいずれかに積層した。サンプルを室温で22時間エージングした後、触感およびT−ピール接着力について評価した。結果が以下の表にまとめられている:
【0186】
【表6】

【0187】
PET基体の表面を高分子弱塩基性触媒で下塗りすることにより、修飾されていないPETよりも急速な硬化が得られたことが分かる。
【0188】
実施例7:本来的に触媒性を有する基体
ガラス片(Kodak Projector Slide Cover Glass、3.25”×4”、カタログ番号140 2130)を石鹸水で洗い、DI水ですすいだ後、60℃で10分間乾燥させた。
【0189】
2mlの熱硬化性組成物1Dをガラス片上またはPETフィルム(92LBT、Dupont)上のいずれかにピペッティングした後、#2.5の巻線ロッドを使用して拡げた。コーティングされたサンプルを、室温でxx時間、カバーをせずに放置した。後、サンプルを触感について評価した。
【0190】
ガラス表面は、反応促進性成分を何ら含まない熱硬化性組成物の硬化を触媒できることが分かる。
【図面の簡単な説明】
【0191】
【図1】図1は、インク中における酢酸カリウムの使用がインクと接触する組成物の硬化に及ぼす効果を示すグラフである。
【図2】図2は、インク中における酢捕捉剤の使用がインクと接触する組成物の硬化に及ぼす効果を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)少なくとも1つの多官能性マイケルドナー;
(b)少なくとも1つの多官能性マイケルアクセプター;および
(c)少なくとも1つの反応促進剤;
を含む硬化性組成物であって、
ここで、前記反応促進剤の少なくとも一部は組成物が適用される少なくとも1つの表面上に存在する、硬化性組成物。
【請求項2】
反応促進剤がプライマーもしくはインクに含まれているか、または、代替的に、プライマーもしくはインクが本来的に反応促進剤である、請求項1記載の硬化性組成物。
【請求項3】
(a)少なくとも1つの多官能性マイケルドナー;
(b)少なくとも1つの多官能性マイケルアクセプター;および
(c)少なくとも1つの反応促進剤;
を含む硬化性組成物であって、
ここで、前記少なくとも1つの反応促進剤が:少なくとも1つの触媒、補助触媒および酸捕捉剤;からなる群から選択される、硬化性組成物。
【請求項4】
(a)少なくとも1つの多官能性マイケルドナーおよび(b)少なくとも1つの多官能性マイケルアクセプターの反応生成物と接触する少なくとも2つの基体を含むラミネートであって、
ここで、少なくとも1つの反応促進剤が、ラミネーションの前に、少なくとも1つの基体の表面上に存在している、ラミネート。
【請求項5】
反応促進剤がプライマーもしくはインクに含まれているか、または、代替的に、プライマーもしくはインクが本来的に反応促進剤である、請求項4記載のラミネート。
【請求項6】
物品であって、
該物品の表面の少なくとも一部が、(a)少なくとも1つの多官能性マイケルドナーおよび(b)少なくとも1つの多官能性マイケルアクセプターの反応生成物と接触しており、ここで、反応促進剤が、前記(a)および(b)の反応の前に、前記表面上に存在している、物品。
【請求項7】
反応促進剤がプライマーもしくはインクに含まれているか、または、代替的に、プライマーもしくはインクが本来的に反応促進剤である、請求項6記載の物品。
【請求項8】
基体であって、
当該基体の製造中に該基体に含まれる、少なくとも1つの反応促進剤;または当該基体を少なくとも1つの反応促進剤を含む混合物でコーティングすることにより該基体に含まれる、少なくとも1つの反応促進剤;または基体の表面上に反応促進剤を生じさせるかもしくは含有させる少なくとも1つのプロセスに、当該基体をかけることにより該基体に含まれる、少なくとも1つの反応促進剤:を含む基体。
【請求項9】
反応促進剤がプライマーもしくはインクに含まれているか、または、代替的に、プライマーもしくはインクが本来的に反応促進剤である、請求項8記載の基体。
【請求項10】
請求項1記載のマイケル反応を硬化させるための少なくとも1つの反応促進剤を含む、基体のためのインク、プライマー、またはコーティング。
【請求項11】
マイケルドナーおよびアクセプターの反応を促進または触媒する少なくとも1つの反応促進剤を含む、基体のためのインク、プライマー、またはコーティング。
【請求項12】
マイケルドナーおよびアクセプターの反応のための少なくとも1つの補助触媒を含む、インク、プライマー、またはコーティング。
【請求項13】
少なくとも1つの酸捕捉剤を含む、基体のためのインク、プライマー、またはコーティング。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−111880(P2006−111880A)
【公開日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2005−297715(P2005−297715)
【出願日】平成17年10月12日(2005.10.12)
【出願人】(590002035)ローム アンド ハース カンパニー (524)
【氏名又は名称原語表記】ROHM AND HAAS COMPANY
【Fターム(参考)】