説明

表面保護フィルム、光学部材プラスチックシート

【課題】本発明は、被貼着体のプラスチックシートから良好に剥離できる、粘着剤とポリプロピレンフィルムを基材とする表面保護フィルムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】本発明は、ポリプロピレンフィルムの基材と、前記基材上に形成された第1粘着層と、前記第1粘着層上に形成された第2粘着層とを備え、該第1粘着層がポリオレフィンポリオールを主成分とすることを特徴とする表面保護フィルムにより上記課題を解決するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面保護フィルム、および該表面保護フィルムが表面に貼着された光学部材プラスチックシートに関するものである。
【背景技術】
【0002】
液晶パネルや、PDPパネルなどのディスプレイ製品中に利用される光学部材として、種々のプラスチックシートが使われている。
【0003】
ディスプレイ製品のパネルとして組み立てられる前は、これらの光学部材プラスチックシートの表面には、輸送中や保管中に汚れたり傷つけられないように,表面保護フィルムが貼られている。
【0004】
表面保護フィルムは、勝手に剥がれたりしないことや剥がしたときに粘着剤がプラスチックシート上に残らないことが必要である。
【0005】
また、光学部材プラスチックシートの表面形状は、平滑状、マット状、三角プリズム形状、かまぼこプリズム形状などの様々である。そのため、同じ粘着力を持つ表面保護フィルムであっても、プラスチックシートの表面形状が異なることにより剥離に必要な力が強くなったり弱くなったりして、剥離作業をする上で問題となる。剥離強度が異なる場合は、特に自動機械で表面保護フィルムを剥離するときに個別に自動機械を調整する必要があり問題となる。
【0006】
従来、金属鋼板等に貼着して表面を保護する表面保護フィルムの粘着剤としてα‐オレフィンを含む重合体を主剤とする特許文献1が提案されている。
【0007】
また、凹凸形状のある樹脂版の表面保護フィルムとして、2種の粘着剤を積層する特許文献2が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第3370198号公報
【特許文献2】特開2011−6523号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
例えば、ディスプレイパネルを組み立てる工程中で表面保護フィルムを剥がさずに、光学部材プラスチックシートの検査をする場合、表面保護フィルムには、透明なポリプロピレンフィルムを使用することが好ましい。
【0010】
しかし、光学部材プラスチックシートには、成型が容易であることや透明性が必要なため、アクリル樹脂などの比較的密着性が良い樹脂が使われることが多いが、表面保護フィルムとアクリル樹脂などの光学部材プラスチックシートとを粘着させるために、通常の粘着剤を使用すると、粘着剤の光学部材プラスチックシートに対する粘着力が粘着剤のポリプロピレンフィルムに対する粘着力より大きくなって、粘着剤が光学部材のプラスチックシート上に残りやすくなる。
【0011】
そこで、本発明は、ポリプロピレンフィルムを基材とし、被貼着体から良好に剥離できる表面保護フィルムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
第1の発明は、ポリプロピレンフィルムの基材と、該基材上に形成された第1粘着層と、該第1粘着層上に形成された第2粘着層とを備え、該第1粘着層がポリオレフィンポリオールを主成分とすることを特徴とする表面保護フィルムである。
【0013】
第2の発明は、表面に凸形状を有し、第1の発明の表面保護フィルムが該凸形状の表面に貼着された光学部材プラスチックシートであって、該光学部材プラスチックシートの表面の凸形状が該表面保護フィルムの第2粘着層を通過して第1粘着層まで貫入していることを特徴とする光学部材プラスチックシートである。
【0014】
第3の発明は、第1の発明において、該ポリオレフィンポリオールが、ヒドロキシアルキルビニルエーテル重合体、またはヒドロキシアルキルビニルエーテルとアルキルビニルエーテルとの共重合体であることを特徴とする表面保護フィルムである。
【0015】
第4の発明は、第1の発明において、該ポリオレフィンポリオールが、ウレタン結合で架橋されたポリオレフィンポリオールであることを特徴とする表面保護フィルムである。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、ポリプロピレンフィルムを基材とし、被貼着体から良好に剥離できる表面保護フィルムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の表面保護フィルムの構成断面図である。
【図2】被貼着体のプラスチックシートの両面に表面保護フィルムを貼った模式図である。
【図3】粘着層が1層である表面保護フィルムを貼った模式図である。
【図4】フィルム上に形成されたプラスチックシートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の表面保護フィルムは、ポリプロピレンフィルムの基材と、該基材上に形成された第1粘着層と、該第1粘着層上に形成された第2粘着層とを備え、第1粘着層がポリオレフィンポリオールを主成分とするものである。
【0019】
ポリオレフィンポリオールは、ヒドロキシアルキルビニルエーテル重合体、またはヒドロキシアルキルビニルエーテルとアルキルビニルエーテルとの共重合体であることが好ましい。あるいは、ポリオレフィンポリオールは、ウレタン結合で架橋されたポリオレフィンポリオールであることが好ましい。
【0020】
表面保護フィルムには、被貼着体表面に対する適度のプロテクト性、すなわち、表面を傷付けない程度の柔軟性、経時や温度による伸び、スクラッチ、機械的強度、耐熱性、耐食性などの物性を保持することが求められる。本発明の表面保護フィルムは、基材にポリプロピレンが使用されているので、これらの特性に優れている。
【0021】
また、各種形状の被貼着体表面や、平均粗さの異なる被貼着体表面に対しても、ある程度一定な剥離強度、剥離感覚を与えることができる表面保護フィルムが求められる。さらに、表面が平面、裏面がレンズ面で構成されるプラスチックシートにおいても、1品種の表面保護フィルムで両面に使用できる表面保護フィルムが求められている。本発明の表面保護フィルムは、ポリプロピレンフィルムの基材に第1粘着層と第2粘着層を形成してなり、第1粘着層がポリオレフィンポリオールを含有するので、これらの要求に応えることができる。
【0022】
また、光学部材プラスチックシートは、ディスプレイパネルの組み立て工程中で表面保護フィルムを貼着したままさまざまな検査が行われる。本発明の表面保護フィルムは、基材に光学的透明性が高いポリプロピレンが使用されているので、検査への影響が小さい。
【0023】
また、光学部材プラスチックシートは、例えばプリズム等の形状が刻まれたダイから溶融したアクリル樹脂を押出して成型される。あるいは、加熱して賦型しやすくしたアクリルシートを型押しして成型される。
【0024】
さらにポリエステル(PET)フィルム上に紫外線や可視光で硬化する樹脂を塗布し、型に押し付けた状態で露光することにより、より精密な形状を持つ光学部材のプラスチックシートを成型することができる。この場合、図4に示すように、凹凸面にはアクリル系の硬化樹脂で、反対面はポリエステルフィルムとなる2層構造の光学部材のプラスチックシートとなる。
【0025】
一般的な粘着剤であるアクリル系の粘着剤や酢酸ビニル系の極性基を持つ粘着剤は、ポリプロピレンフィルムに対する粘着力は弱いいっぽう、被貼着体のアクリル樹脂などの樹脂を用いたプラスチックシートには良く粘着するため、表面保護フィルムを剥離したときに、極性基を持つ粘着剤はポリプロピレンフィルムから脱離して被貼着体に残り易くなってしまう。
【0026】
発明者らは、オレフィン系の粘着剤のなかでも特にポリオレフィンポリオールを主成分とする粘着剤がポリプロピレンフィルムに良好な粘着性を示すことを見出した。
しかしながら、ポリプロピレンフィルムには良好な粘着性を示すポリオレフィンポリオールの粘着剤が、アクリル樹脂で形成された光学部材のプラスチックシートに対しては十分な粘着性を示さなかった。
【0027】
さらに、光学部材のプラスチックシートの片面はフラットな平面あるいは微細なマット状の平面を持つが、他の面は三角柱や半円柱を横に並べた凹凸面を持っているため、光学部材のプラスチックシートへの粘着強度や剥離力を適切な値にするためには、ポリオレフィンポリオールを主成分とする粘着剤以外の粘着剤を使用する必要があった。
【0028】
そのために、ポリプロピレンフィルムの基材上に、ポリオレフィンポリオールを主成分とする粘着剤を第1粘着層として設け、さらに、第1粘着層上に、光学部材のプラスチックシートに良好な粘着性を示して輸送時や保管時には表面を保護するとともに、使用時には容易に剥離できるようにするための粘着剤を第2粘着層に設けることにより本発明にいたったものである。
【0029】
さらに第1粘着層と第2粘着層の2層構造にすることで、表面保護フィルムを被貼着体の平滑な面から剥離しても、凹凸面から剥離しても剥離力はほとんど変わらないという効果を見出して本発明にいたったものである。
【0030】
以下、図に従って本発明を説明する。図1に示すごとく、表面保護フィルム15は基材11に第1粘着層1と第2粘着層2を積層したものである。
【0031】
図2はシート表面に複数の三角柱を設けた光学部材のプラスチックシート21の両面に本発明の表面保護フィルム15を貼り付けたものである。
【0032】
プラスチックシート21の下面は平滑状あるいは微細なマット状である場合が多いが、適度な剥離強度を持つ第2粘着層で粘着しており剥離は良好である。
【0033】
プラスチックシートの上面は三角柱の突起があり、粘着層が1層の場合は図3の2'のように粘着剤と接触している面積が大きくなるため、表面保護フィルムを剥離するのに必要な力は、下面から表面保護フィルムを剥離する力より大きくなる。
【0034】
本発明の表面保護フィルムは図2に示すように、プラスチックシートの三角柱は第1粘着層に食い込むため、第2粘着層とプラスチックシート表面の三角柱と接触している面積は、表面が平滑な下面の場合と比べても大きくはならない。加えて第1粘着層はポリプロピレン基材とは強固に粘着しているが、プラスチックシートに対しては粘着力が小さいため剥離時に余分な力は必要としない。
【0035】
このようにして、本発明の表面保護フィルムは被貼着体のプラスチックシートの平滑な面でも凹凸のある面でも剥離に必要な力をほぼ同等にすることができる。また粘着層1はポリプロピレンフィルム基材に強固に粘着しているので、被貼着体に粘着剤が残ることがない。
【0036】
以下、詳細に本発明に使用する材料について説明する。
≪基材≫
基材となるポリプロピレンフィルムは、溶融したポリプロピレンを主成分とする樹脂組成物をインフレーション法やTダイでの押出し法で所定の厚みに製膜して透明で平滑なものであればいずれのフィルムでも利用できる。また、厚みは30μmから200μmの範囲で、さらに好ましくは50〜125μmで、適宜選定される。
【0037】
光学位相差のないフィルムが必要である場合には、Tダイによる押出し法で製膜した未延伸のフィルムが適しており、使用する樹脂にはメタロセン触媒で重合したポリプロピレンが適している。なお、樹脂フィルムは、主成分とする樹脂のみで作製されることはほとんどなく、例えば加工適性や諸物性の調整のために他の樹脂や、無機粒子、添加剤などが含まれていることが通常である。そこで、本発明におけるポリプロピレンフィルムとは、一般的にポリプロピレンフィルムと呼ばれ得るポリプロピレンを主成分とする樹脂フィルムを意味している。
【0038】
また、必要に応じポリプロピレンフィルムの表面は粘着剤との粘着力を増すために、コロナ処理、火炎処理、化学処理、プライマー処理をしてもよい。
【0039】
『第1粘着層』
≪ポリオレフィンポリオール粘着剤≫
第1粘着層は、ポリプロピレンフィルムの基材と第2粘着層との密着性を確保し、かつ特に、表面に凸形状を有する光学部材プラスチックシートの表面に対して剥離可能な粘着性を確保する層であり、本発明では、ポリオレフィンポリオールを主成分としている。このような密着性および粘着性を確保するため、第1粘着層中にポリオレフィンポリオールは、少なくとも50%以上含まれていることが好ましく、70%以上含まれていることがより好ましく、90%以上含まれていることが特に好ましい。
ポリオレフィンポリオールは、重合体または架橋体のいずれも使用することができる。重合体だけでも、架橋体だけでも使用できるが重合体と架橋体を混合してもよい。また、粘着強度を調整するためにタッキファィアー(粘着付与剤)を添加してもよい。なお、本発明において重合体とはモノマーを重合して得られる樹脂をさし、架橋体とは、官能基を持つオリゴマーやポリマーを架橋して得られる樹脂をさす。
【0040】
(ポリオレフィンポリオール重合体)
ポリオレフィンポリオール重合体は、ヒドロキシアルキルビニルエーテル重合体、またはヒドロキシアルキルビニルエーテルとアルキルビニルエーテル共重合体のいずれか一つまたは両者の混合物を用いる。それぞれの重合体はそれぞれのモノマーをカチオン重合することにより得られる。
【0041】
ヒドロキシアルキルビニルエーテルのモノマーとしては、2‐ヒドロキシエチルビニルエーテル、3−ヒドロキシプロピルビニルエーテル、2−ヒドロキシプロピルビニルエーテル、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル、3−ヒドロキシブチルビニルエーテル、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピルビニルエーテル、5−ヒドロキシペンチルビニルエーテル、6−ヒドロキシヘキシルビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールモノビニルエーテル等が挙げられる。
【0042】
アルキルビニルエーテルのモノマーとしては、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、t‐ブチルビニルエーテル、n−ペンチルビニルエーテル、n−ヘキシルビニルエーテル、n−オクチルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル等の置換基を有さないアルキルビニルエーテル、クロロメチルビニルエーテル、クロロエチルビニルエーテル、ベンジルビニルエーテル、若しくはフェニルエチルビニルエーテル等のヒドロキシ基以外の置換基を有するアルキルビニルエーテル類、又は、シクロペンチルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、若しくはメチルシクロヘキシルビニルエーテル等の環状アルキルビニルエーテル類等が挙げられる。あるいは4−ブタンジオールジビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテルなどビニル基を分子内に2つ持つものが挙げられる。
【0043】
(重合開始剤)
ビニルエーテル類はブレンステッド酸やルイス酸を開始剤としてカチオン重合する。
例えば、一般に塩酸、燐酸、硫酸、臭酸、沃化水素などの無機酸、蟻酸、酢酸、トリフルオロ酢酸などの有機酸、そのほか、水、アルコールなどのプロトン性溶媒と共存させることでそのプロトンを発生させる金属若しくは金属化合物が挙げられる。具体的にはプロトン酸(硫酸、リン酸、塩酸、臭酸、硝酸、弗化水素、沃化水素、蟻酸、酢酸およびこの塩素化物、プロピオン酸、酪酸、トリフルオロ酢酸、p‐トルエンスルホン酸、等)、また金属酸化物およびその他の固体酸(酸化クロム、酸化リン、酸化チタン、酸化アルミ、酸化コバルト、酸化マンガン、酸化モリブデン、シリカ−アルミナ、酸化バナジウム、硫酸アルミ、硫酸鉄、硫酸クロム、等)、ハロゲン(沃素、臭素、塩素、臭化沃素、塩化沃素、塩化臭素)、ハロゲン化金属(ベリリウム、マグネシウム、亜鉛、カドニウム、水銀、ホウ素、アルミニウム、ガリウム、チタン、ジルコニウム、錫、リン、アンチモン、ニオブ、ビスマス、タリウム、ウラン、レニウム、鉄、等の臭化物、塩化物あるいは弗化物)が挙げられる。
【0044】
あるいは、三弗化ホウ素等のルイス酸触媒、酸化クロム(III)やシリカアルミナ等の固体酸を用いる不均一系での重合や、硫酸塩や酸性白土等、二酸化ケイ素と酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化鉄および酸化チタンから選ばれる1種以上の金属酸化物から成る触媒が利用できる。
【0045】
さらに、カチオン重合の触媒としては、ヘテロポリ酸として、例えば、リンタングステン酸、ケイタングステン酸、リンモリブデン酸、ケイモリブデン酸、ホウタングステン酸、ホウモリブデン酸、コバルトモリブデン酸、コバルトタングステン酸、ヒ素タングステン酸、ゲルマニウムタングステン酸、リンモリブドタングステン酸、ホウモリブドタングステン酸等が挙げられる。これらの中でも、リンタングステン酸やリンモリブデン酸が無着色、溶解性及び重合開始能力の点で特に好ましい。
【0046】
(重合安定化剤)
カチオン重合では移動反応などの種々の副反応が起こりやすいため、分子量分布の広い重合体ができやすい。ルイス塩基の弱い塩基を導入すると成長末端の反応種が安定化されるため、副反応を抑制して分子量分布の狭い重合体を得ることができる。
【0047】
ルイス塩基としては例えば、酢酸エチル、酢酸n−ブチル、酢酸フェニル等のエステル化合物。ピリジン、2,6−ジメチルピリジ等のピリジン誘導体、さらにはN,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、等のアミド化合物、等を挙げることができる。これらルイス塩基は単独で、または二種以上を適宜選択して使用できる。
【0048】
(重合溶媒)
重合溶媒として、トルエンやキシレン、ベンゼンなどの芳香族炭化水素溶媒、n−ヘキサンやn−ヘプタンなどの脂肪族炭化水素溶媒、ジクロロメタンやジクロロエタン、四塩化炭素などのハロゲン系溶媒などが挙げられるが、単独で、または二種以上を適宜使用する。重合溶媒に関しては、重合系の状態に合わせて添加量を決定することができる。
【0049】
重合の温度としては、通常のビニル系化合物のリビングカチオン重合におけると同様の条件を採用することができ、必ずしも限定されるものではないが、一般には−150℃〜+60℃の範囲内から適宜選ぶことができる。重合時間は必要とする重合度から設定するものであり限定されるものではないが、一般的には0.2〜50時間の範囲内である。
【0050】
(ポリオレフィンポリオール架橋体)
またポリオレフィン両末端ジオールを多官能イソシアネートで架橋したポリオレフィンポリオールも本発明の粘着剤として使用できる。
【0051】
ポリオレフィン両末端ジオールとしてはポリオレフィン構造を有するポリオールからなる群から選ばれる1種類以上のポリオレフィンポリオールを含むことが好ましい。 ポリオレフィン構造を有するポリオールとしては、ポリエチレン両末端ジオール、ポリプロピレン両末端ジオール、水素添加ポリブタジエン両末端ジオール、水素添加ポリイソプレン両末端ジオール、又はその他のポリオレフィンポリオールが挙げられる。
【0052】
架橋体に使用できるポリオレフィン両末端ジオールは、数平均分子量(Mn)が1500〜50000、好ましくは1500〜5000、さらに好ましくは1500〜4000、最も好ましくは1500〜3000のポリオレフィンポリオールが好適である。
ポリオレフィンポリオールは剥離剤塗膜の強度や硬化性や溶剤への溶解性の観点から、水酸基価(mgKOH/g)が、20以上が好ましく、また、剥離力への影響の観点から、水酸基価(mgKOH/g)が、75以下が好ましい。より好ましくは水酸基価(mgKOH/g)が25〜60である。
そのため、水酸基価が20〜75mgKOH/gである、水素添加ポリブタジエン両末端ジオール、水素添加ポリイソプレン両末端ジオール、又は前記その他のポリオレフィン両末端ジオールが好ましい。
【0053】
架橋体に使用できるポリオレフィン両末端ジオールは、市販品を使用することができる。例えば、Pоlybd(登録商標)R‐45HT(水酸基末端液状ポリブタジエン:Mn=2800、水酸基価=46.6mgKOH/g、出光興産株式会社製)、Poly jp(登録商標)(水酸基末端液状ポリイソプレン:Mn=2500、水酸基価=46.6mgKOH/g、出光興産株式会社製)、エポール(登録商標)(水酸基末端液状水添ポリイソプレン:Mn=2500、水酸基価=50.5mgKOH/g、出光興産株式会社製)、GI−1000(水酸基含有液状水添ポリブタジエン:Mn=1500、水酸基価=60〜75mgKOH/g、日本曹達株式会社製)、GI−2000(水酸基含有液状水添ポリブタジエン:Mn=2100、水酸基価=40〜55mgKOH/g、日本曹達株式会社製)、GI−3000(水酸基含有液状水添ポリブタジエン:Mn=3000、水酸基価=25〜35mgKOH/g、日本曹達株式会社製)などが挙げられる。これらのポリオールはいずれも常温で液状である。
【0054】
あるいは、常温で固体であるその他のポリオレフィンポリオールとしては、例えば、ユニストール(登録商標)P−801(水酸基含有ポリオレフィンの16%トルエン溶液、水酸基価40mgKOH/g、三井化学株式会社製)があり、トルエン除去すると固体で粘着性を示す。若しくはユニストール(登録商標)P−901(水酸基含有ポリオレフィンの22%トルエン溶液、水酸基価50mgKOH/g、三井化学株式会社製)を使用することもできる
【0055】
架橋剤として使用できる多官能イソシアネートとしては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ジフェニメメタンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等のポリイソシアネート化合物、あるいはプレポリマー化したポリイソシアネートやイソシアネートの変性体が利用できる。
【0056】
粘着剤の粘着強度を調整するためにタッキファィアー(粘着付与剤)を添加することができる。タッキファィアーとしては、ロジン系樹脂,テルペン系樹脂,石油系樹脂があり、添加量は主剤のポリオレフィンポリオールエラストマーに対し20%〜30%である。
【0057】
ロジン系樹脂は天然樹脂のロジンから誘導されるエステル樹脂であり、市販品として荒川化学工業株式会社製ペンセル(登録商標)A、AZ、C、D‐125、D‐135、D‐160など、エステルガムAAL、A、AAV、AT、H、HPなどがある。
【0058】
一般的にロジン系樹脂が着色しているのに対し、着色の少ない淡色ロジン誘導体があり、市販品として荒川化学工業株式会社製パインクリスタル(登録商標)KE‐100、KE‐311、KE‐359などがある。
【0059】
テルペン系樹脂としては天然樹脂のロジンから誘導されるテルペンフェノール樹脂であり、市販品として荒川化学工業株式会社製テルペンフェノール樹脂タノマル(登録商標)803L、901などがある。
【0060】
石油系樹脂としては脂環族飽和炭化水素樹脂で、市販品として荒川化学工業株式会社製アルコン(登録商標)P‐90、P‐100、P‐115、P‐125、P‐140、M‐90、M‐100、M‐115、M‐135などがある。
天然物からのタッキファィアーが着色しているのに対し、アルコンは無色透明であり光学用部材の表面保護フィルムの粘着剤の添加物として適している。
【0061】
タッキファィアー以外にも可塑剤,油脂類、酸化防止剤等を必要に応じて添加してもよい。
【0062】
『第2粘着層』
≪第2粘着層に使用する粘着剤≫
第2粘着層13は弱粘着性で、塗工型の弱粘着タイプの粘着剤が使用できる。例えば、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤、ウレタン系粘着剤が適宜使用される。その中でも、安定性と粘着性の安定しているアクリル系粘着剤を好適に使用する。具体的には、アクリル系粘着剤としてメタアクリル酸アルキルエステルやアクリル酸アルキルエステル重合体あるいは共重合体などを主成分とする有機溶剤希釈型アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤としてポリブチレン系粘着などの塗工系粘着剤、ウレタン系粘着剤としてポリブチレン系粘着などの塗工系粘着剤などが例示できる。
【実施例】
【0063】
基材としてホモポリプロピレン(密度=0.900g/cm3、MFR=5g/10分、融点=155℃)を用い、単層のTダイキャスト製膜機を用いて厚み40μmのフィルム(ヘーズ 3%)を製造し、該単層フィルムの片側表面へコロナ処理を施したものを以下の実施例において使用した。
【0064】
(ビニルエーテルポリマーの重合体A)
三方活栓を取り付けたガラス反応容器内を窒素置換した後、乾燥窒素ガスを導入しながら150℃で加熱してガラス表面の吸着水を除去した。ガラス反応容器を室温に戻した後以下の組成の溶剤とモノマーを導入した。

シクロヘキサンジメタノールモノビニルエーテル :5重量部
4−ヒドロキシブチルビニルエーテル :3.5重量部
ノルマルプロピルビニルエーテル :2.5重量部
シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル :1重量部
1−イソブトキシエチルアセテート :0.04重量部
酢酸エチル :8重量部
トルエン :40重量部

ガラス反応容器を冷却し、温度が0℃になったところであらかじめ0℃まで冷却しておいたエチルアルミニウムセスキクロライド1ミリmolとトルエン9mlを滴下して重合を開始した。
【0065】
0℃の温度を保ちながら重合反応を24時間継続した後、ガラス反応容器内に0.3重量%のアンモニア/メタノール溶液を加えて重合反応を停止した。
固形分濃度20%のビニルエーテルポリマーの重合体A溶液を得た。
【0066】
(実施例1)
下記の組成のインキを調合して粘着剤Bインキを得た。

ビニルエーテルポリマーの重合体A溶液 :100重量部
水素化石油樹脂「アルコン(登録商標)P−90」 :3重量部
(荒川化学工業株式会社製)
【0067】
下記の組成のインキを調合して固形分濃度15%に希釈して粘着剤Cインキを得た。

アクリル樹脂「ニッセツ(登録商標)KP−1420」 :13.3重量部
(日本カーバイド工業株式会社製)
硬化剤「CK−101」 :0.1重量部
(日本カーバイド工業株式会社製)
トルエン、メチルエチルケトン1対1混合溶剤 :74.4重量部

【0068】
ポリプロピレンフィルムのコロナ処理面に、粘着剤Bインキを乾燥膜厚2.0μmになるようにロールコーティング法で塗布し乾燥した。その上に粘着剤Cインキを乾燥膜厚10μmになるようにコンマコーターで塗布し乾燥し実施例1の表面保護フィルムを得た。
【0069】
実施例1の表面保護フィルム第2粘着層2の粘着強度はアクリル鏡面板に対して0.3N/25mmであり、第1粘着層1の粘着強度はアクリル鏡面板に対して0.2N/25mmであった。
【0070】
実施例1の表面保護フィルムを被貼着体であるプラスチックシート21へ貼り合わせたところ、片面のPET基材平滑面に対して、0.15N/25mmの粘着強度を示し、また反対面の高さ30μmの三角状の突起部を持ったアクリルレンズ賦形面に対して、0.2N/25mmの粘着強度を示した。
【0071】
貼り合わせの状態の目視から、表面保護フィルムの浮き、剥がれなどの不良は認められず、また粘着剤の剥離残りもなく、剥離作業も容易に行うことができた。なお、プラスチッくシート21への貼り合わせ法は、マルチラミネーター(日本ジービーシー社製マルチラミネーターGL835PRO)にて23℃、圧力0.5MPa、速度600mm/minの条件で行った。粘着強度の測定方法はJIS Z−0237に準拠した方法から測定した。
【0072】
(実施例2)
市販の水素化ポリオレフィン溶液を粘着剤Dインキとした。
ユニストールP−901は、塗布し乾燥するとホットメルト接着剤としての性能をもち、固形分の数平均分子量は5000以上、水酸基価50mgKOH/gである。

水酸基含有ポリオレフィンの22%トルエン溶液
ユニストール(登録商標)P−901(三井化学株式会社製)

【0073】
ポリプロピレンフィルムのコロナ処理面に、粘着剤Dインキを乾燥膜厚2.0μmになるようにグラビアリバースコーティング法で塗布し乾燥した。その上に粘着剤Cインキをコンマコーターを乾燥膜厚10μmになるようにグラビアリバースコーティング法で塗布し乾燥し実施例2の表面保護フィルムを得た。
【0074】
実施例2の表面保護フィルム第2粘着層2の粘着強度はアクリル鏡面板に対して0.3N/25mmであり、第1粘着層1の粘着強度はアクリル鏡面板に対して0.2N/25mmであった。
【0075】
実施例2の表面保護フィルムを被貼着体であるプラスチックシート21へ貼り合わせたところ、片面のPET基材平滑面に対して、0.15N/25mmの粘着強度を示し、また反対面の高さ30μmの三角状の突起部を持ったアクリルレンズ賦形面に対して、0.2N/25mmの粘着強度を示した。
【0076】
貼り合わせの状態の目視から、表面保護フィルムの浮き、剥がれなどの不良は認められず、また粘着剤の剥離残りもなく、剥離作業も容易に行うことができた。なお、プラスチックシート21への貼り合わせ法は、マルチラミネーター(日本ジービーシー社製マルチラミネーターGL835PRO)にて23℃、圧力0.5MPa、速度600mm/minの条件で行った。粘着強度の測定方法はJIS Z−0237に準拠した方法から測定した。
【0077】
(実施例3)
下記の組成のインキを調合して粘着剤Eインキを得た。

水酸基含有ポリオレフィン「ユニストール(登録商標)P−801」:100重量部
(三井化学株式会社製、16%トルエン溶液、水酸基価40mgKOH/g)
水素化石油樹脂「アルコン(登録商標)P−100」 :1重量部
(荒川化学工業株式会社製)
【0078】
ポリプロピレンフィルムのコロナ処理面に、粘着剤Eインキを乾燥膜厚1.0μmになるようにロールコーティング法で塗布し乾燥した。その上に粘着剤Cインキを乾燥膜厚9.0μmになるようにコンマコーターで塗布し乾燥し実施例3の表面保護フィルムを得た。
【0079】
実施例3の表面保護フィルム第2粘着層2の粘着強度はアクリル鏡面板に対して0.3N/25mmであり、第1粘着層1の粘着強度はアクリル鏡面板に対して0.2N/25mmであった。
【0080】
実施例3の表面保護フィルムを被貼着体であるプラスチックシート21へ貼り合わせたところ、片面のPET基材平滑面に対して、0.15N/25mmの粘着強度を示し、また反対面の高さ30μmの三角状の突起部を持ったアクリルレンズ賦形面に対して、0.2N/25mmの粘着強度を示した。
【0081】
貼り合わせの状態の目視から、表面保護フィルムの浮き、剥がれなどの不良は認められず、また粘着剤の剥離残りもなく、剥離作業も容易に行うことができた。なお、プラスチックシート21への貼り合わせ法は、マルチラミネーター(日本ジービーシー社製マルチラミネーターGL835PRO)にて23℃、圧力0.5MPa、速度600mm/minの条件で行った。粘着強度の測定方法はJIS Z−0237に準拠した方法から測定した。
【0082】
(実施例4)
下記の組成のインキを調整して粘着剤Fインキを得た。

水酸基末端液状ポリイソプレン「Poly ip(登録商標)」:100重量部
(出光興産株式会社製、Mn=2500、水酸基価=46.6mgKOH/g)
水酸基含有液状水添ポリブタジエン「GI−1000」 :100重量部
(日本曹達株式会社製、Mn=1500、水酸基価=60〜75mgKOH/g)
ヘキサメチレンジイソシアネート :9重量部
トリレンジイソシアネート :9重量部
水素化石油樹脂「アルコン(登録商標)P−90」 :3重量部
(荒川化学工業株式会社製)
トルエン、メチルエチルケトン1対1混合溶剤 :900重量部
【0083】
ポリプロピレンフィルムのコロナ処理面に、粘着剤Fインキを乾燥膜厚2.5μmになるようにロールコーティング法で塗布し乾燥した。その上に粘着剤Cインキを乾燥膜厚10μmになるようにコンマコーターで塗布し乾燥し実施例4の表面保護フィルムを得た。
【0084】
実施例4の表面保護フィルム第2粘着層2の粘着強度はアクリル鏡面板に対して0.3N/25mmであり、第1粘着層1の粘着強度はアクリル鏡面板に対して0.2N/25mmであった。
【0085】
実施例4の表面保護フィルムを被貼着体であるプラスチックシート21へ貼り合わせたところ、片面のPET基材平滑面に対して、0.15N/25mmの粘着強度を示し、また反対面の高さ30μmの三角状の突起部を持ったアクリルレンズ賦形面に対して、0.2N/25mmの粘着強度を示した。
【0086】
貼り合わせの状態の目視から、表面保護フィルムの浮き、剥がれなどの不良は認められず、また粘着剤の剥離残りもなく、剥離作業も容易に行うことができた。なお、プラスチックシート21への貼り合わせ法は、マルチラミネーター(日本ジービーシー社製マルチラミネーターGL835PRO)にて23℃、圧力0.5MPa、速度600mm/minの条件で行った。粘着強度の測定方法はJIS Z−0237に準拠した方法から測定した。
【産業上の利用可能性】
【0087】
平滑な面でも凹凸のある面でも剥離する時の力が変わらない表面保護フィルムが提供できる。
【符号の説明】
【0088】
1 :第1粘着層
2 :第2粘着層
2':第2粘着層
11:表面保護フィルム基材
15:本発明の表面保護フィルム
21:光学部材のプラスチックシート
22:フイルム
25:フィルム上に形成された光学部材のプラスチックシート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリプロピレンフィルムの基材と、該基材上に形成された第1粘着層と、該第1粘着層上に形成された第2粘着層とを備え、該第1粘着層がポリオレフィンポリオールを主成分とすることを特徴とする表面保護フィルム。
【請求項2】
表面に凸形状を有し、請求項1に記載の表面保護フィルムが該凸形状の表面に貼着された光学部材プラスチックシートであって、該光学部材プラスチックシートの表面の凸形状が該表面保護フィルムの第2粘着層を通過して第1粘着層まで貫入していることを特徴とする光学部材プラスチックシート。
【請求項3】
該ポリオレフィンポリオールが、ヒドロキシアルキルビニルエーテル重合体、またはヒドロキシアルキルビニルエーテルとアルキルビニルエーテルとの共重合体であることを特徴とする請求項1に記載の表面保護フィルム。
【請求項4】
該ポリオレフィンポリオールが、ウレタン結合で架橋されたポリオレフィンポリオールであることを特徴とする請求項1に記載の表面保護フィルム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2013−87163(P2013−87163A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−227429(P2011−227429)
【出願日】平成23年10月14日(2011.10.14)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】