説明

表面保護フィルム

【課題】表面保護フィルム中の基材層、中間層及び粘着層の各層の接着性が良好であり、かつ表面保護フィルム間(基材層−粘着層間)での剥離抵抗力(接着性)の小さい表面保護フィルムを提供する。
【解決手段】基材層が、軟質ポリエステル樹脂、及びポリエステル系エラストマーを含む重合体組成物から形成され、中間層が、芳香族系ビニル単位及び共役ジエン単位からなる共重合体又はその水素添加物、及びポリプロピレン系樹脂を含む重合体組成物から形成される中間層(A)、又は変性オレフィン系樹脂を含む重合体組成物から形成される中間層(B1)、並びに芳香族系ビニル単位及び共役ジエン単位からなる共重合体又はその水素添加物、ポリプロピレン系樹脂を含む重合体組成物から形成される中間層(B2)からなる二層構造であり、粘着層が、オレフィン系エラストマー、及びスチレン系エラストマーを含む重合体組成物から形成される表面保護フィルムである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基材層、中間層及び粘着層を有する表面保護フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
建築部材、光学用途用のアクリル樹脂等の樹脂製品、アルミ等の金属製品、ガラス製品等の輸送、保管や加工時の傷付き、又は異物混入を防ぐことを目的として、これらの部材や製品に表面保護フィルムを貼り付けることが知られている。前記表面保護フィルムは、一般的に基材層、中間層及び、前記被着体と接着させるための粘着層で構成される。
【0003】
基材層は通常、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂、ポリエチレンテレフタラート等のポリエステル樹脂等で形成され、粘着層に離型フィルムを貼り合せた状態でロール状としたものが知られているが、大量の廃棄物を発生させないという観点から、離型フィルムがなくても容易にロールから繰り出すことの出来る表面保護フィルムが知られている(特許文献1〜3)。
【0004】
ところで、表面保護フィルムは、一般的に、ロール状に巻き取られるため、表面保護フィルム中の粘着層と基材層とが重なることとなり、フィルムをロール状から繰り出す際、フィルムにシワ等の模様が入る、ジッピング現象が生じるという問題点がある。このようなジッピング現象が生じないようにするためには、表面保護フィルム間の基材層と粘着層の剥離抵抗力を小さくする必要があるが、該剥離抵抗力を小さくすると、表面保護フィルム自体の剥離が生じてしまうという問題があった。そのため、表面保護フィルム自体の各層の接着性が良好であり、かつ表面保護フィルム間における基材層と粘着層の剥離抵抗力の小さい表面保護フィルムが求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−327936号公報
【特許文献2】特開2004−2624号公報
【特許文献3】特開2008−214492号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、表面保護フィルム中の基材層、中間層及び粘着層の各層の接着性が良好であり、かつ表面保護フィルム間(基材層−粘着層間)での剥離抵抗力(接着性)の小さい表面保護フィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このような問題を解決するために、鋭意検討した結果、表面保護フィルムにおける基材層を軟質ポリエステル樹脂とポリエステル系エラストマーを含む重合体組成物から形成し、特定の重合体組成物から形成される中間層を適用することによって、表面保護フィルム中の基材層、中間層及び粘着層の各層の接着性を向上させ、かつ、表面保護フィルム間(基材層−粘着層間)での接着性の低減に有用であるという知見を得た。本発明は、斯かる知見に基づき完成されたものである。
【0008】
項1.基材層、中間層及び粘着層を有する表面保護フィルムであって、
基材層が、軟質ポリエステル樹脂を30〜90重量%含み、ポリエステル系エラストマーを10〜70重量%含む重合体組成物から形成され、
中間層が、
芳香族系ビニル単位及び共役ジエン単位からなる共重合体又はその水素添加物を30〜50重量%含み、ポリプロピレン系樹脂を50〜70重量%含む重合体組成物から形成される中間層(A)、又は
変性オレフィン系樹脂を含む重合体組成物から形成される中間層(B1)、並びに芳香族系ビニル単位及び共役ジエン単位からなる共重合体又はその水素添加物を0〜50重量%含み、ポリプロピレン系樹脂を50〜100重量%含む重合体組成物から形成される中間層(B2)からなる二層構造であり、
粘着層が、オレフィン系エラストマーを20〜90重量%含み、スチレン系エラストマーを10〜80重量%含む重合体組成物から形成される
表面保護フィルム。
【0009】
項2.軟質ポリエステル樹脂のショア硬度Dが60以下である項1に記載の表面保護フィルム。
【0010】
項3.ポリエステル系エラストマーが、少なくとも1種のポリエステルハードセグメントと、少なくとも1種のポリエーテルソフトセグメントからなる共重合体である項1又は2に記載の表面保護フィルム。
【0011】
項4.粘着層を形成する重合体組成物において、ポリプロピレン系樹脂をさらに、オレフィン系エラストマー及びスチレン系エラストマーの合計量100重量部に対して45重量部以下含む項1〜3のいずれかに記載の表面保護フィルム。
【0012】
以下、各層における各成分について、詳細に説明する。
【0013】
基材層
基材層は、表面保護フィルムを製品ロールから巻き出すときの剥離力(巻き戻し力)を小さくするために設けられる層であり、軟質ポリエステルとポリエステル系エラストマーを含む重合体組成物から形成される。
【0014】
本発明で用いる軟質ポリエステル樹脂は、以下に示す酸成分(1−1)とジオール成分(1−2)からなるものである。ここで軟質とは、ショア硬度D(JIS K 7215)で60以下のものをいう。
【0015】
(1−1)酸成分
酸成分としては、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、ジフェニルジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸;アジピン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、アゼライン酸、セバシン酸、ダイマー酸(オレイン酸、リノール酸、リノレン酸等の不飽和脂肪酸が二量化して生成する化合物)等の脂肪族ジカルボン酸;シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環族ジカルボン酸等を挙げることができる。これらは1種単独又は2種以上混合して使用することもできる。
【0016】
また、本発明においては、酸成分として、テレフタル酸を必須成分とし、その他のジカルボン酸を含む酸成分混合物を用いることが好ましいが、その他のジカルボン酸としては、特に限定されるものではなく、上記酸成分から適宜選択することができる。
【0017】
(1−2)ジオール成分
ジオール成分としては、2−メチル−1,3−プロパンジオール又は1,4−シクロヘキサンジメタノールを含むジオール成分が好ましく、2−メチル−1,3−プロパンジオールと1,4−シクロヘキサンジメタノールの両方を含むジオール成分がより好ましい。
【0018】
2−メチル−1,3−プロパンジオールの配合量としては、全ジオール成分中、10〜90モル%であることが好ましく、50〜70モル%であることがより好ましい。
【0019】
また、1,4−シクロヘキサンジメタノールの配合量としては、全ジオール成分中、10〜90モル%であることが好ましく、30〜50モル%であることがより好ましい。1,4−シクロヘキサンジメタノールの配合量が10モル%未満であると、得られる軟質ポリエステル樹脂の耐熱性及び耐衝撃性が不十分となる傾向があり、90モル%を超えると、結晶化速度が速くなるために得られるフィルムの透明性が低下する傾向がある。
【0020】
本発明の軟質ポリエステル樹脂の製造方法としては、特に限定されるものではなく、公知の直接重合法やエステル交換法等を採用することができる。
【0021】
本発明で用いる軟質ポリエステル樹脂の密度は、1.30g/cm3以下であることが好ましい。また、密度の下限値は特に限定されるものではないが、例えば、0.5g/cm3以上を挙げることができる。密度がこの範囲にあることで、結晶化しにくく透明性に優れたフィルムが得られるため好ましい。
【0022】
本発明で用いる軟質ポリエステル樹脂の比重は、1〜2であることが好ましく、1〜1.5であることがより好ましい。
【0023】
本発明で用いる軟質ポリエステル樹脂のメルトフローレート(MFR(JIS K 7210 190℃ 21.2N))は、1〜10g/10分であることが好ましく、3〜9g/10分であることがより好ましい。
【0024】
本発明で用いる軟質ポリエステル樹脂のヘーズ値は、0.1〜5%であることが好ましく、0.1〜1%であることがより好ましい。なお、このヘーズ値は、JIS K 7105に準じて測定したものである。
【0025】
基材層を形成する重合体組成物における軟質ポリエステルの含有割合は、90〜30重量%であり、70〜30重量%が好ましく、60〜40重量%がより好ましい。軟質ポリエステルの含有割合が30重量%未満であると、剥離抵抗力が上昇し、またジッピング現象が発生する傾向がある。一方、軟質ポリエステルの含有割合が、90重量%を超えると剥離抵抗力が上昇し、またジッピングが発生する傾向がある。
【0026】
(2)ポリエステル系エラストマー
本発明で用いるポリエステル系エラストマーは、少なくとも1種のポリエステルハードセグメントと、少なくとも1種のポリエーテルソフトセグメントからなる共重合体である。
【0027】
ハードセグメントとソフトセグメントの比率は、ハードセグメント:ソフトセグメント=15〜90:10〜85(重量%)であることが好ましい。
【0028】
(2−1)ポリエステルハードセグメント
ポリエステルハードセグメントを構成するジカルボン酸成分としては、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸;1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、シクロペンタンジカルボン酸、4,4−シクロへキサンジカルボン酸等の脂環族ジカルボン酸;アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、ダイマー酸(オレイン酸、リノール酸、リノレン酸等の不飽和脂肪酸が二量化して生成する化合物)等の脂肪族ジカルボン酸等を挙げることができ、これらを1種単独で又は2種以上を混合して用いることができる。これらの中でも、機械的性質や耐熱性の点から、芳香
族ジカルボン酸が好ましく、特にテレフタル酸が好ましい。
【0029】
ジカルボン酸成分として、芳香族ジカルボン酸を含む場合、その配合量は50モル%以上であることが好ましい。
【0030】
また、ハードセグメントを構成するジオール成分としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール等の炭素数2〜12の脂肪族ジオール;シクロヘキサンジメタノール等の脂環族ジオール等を挙げることができ、これらを1種単独で又は2種以上を混合して用いることができる。これらの中でも、炭素数2〜12の脂肪族ジオールが好ましく、エチレングリコール又は1,4−ブタンジオールがより好ましい。
【0031】
(2−2)ポリエーテルソフトセグメント
ポリエーテルソフトセグメントを構成するポリエーテルとしては、ポリ(アルキレンオキシド)グリコールが好ましい。
【0032】
ポリ(アルキレンオキシド)グリコールとしては、たとえば、ポリエチレングリコール、ポリ(1,3−プロピレングリコール)、ポリ(1,2−プロピレングリコール)、ポリ(テトラメチレンオキシド)グリコール等を挙げることができ、これらを1種単独で又は2種以上を混合して用いることができる。これらの中でも、特にポリ(テトラメチレンオキシド)グリコールが好ましい。
【0033】
本発明で用いるポリエステル系エラストマーとしては、ポリエステルハードセグメントが、テレフタル酸/エチレングリコール又は1,4−ブタンジオール共重合体からなるセグメントであり、ポリエーテルソフトセグメントが、ポリ(テトラメチレンオキシド)グリコールからなるセグメントであることが好ましい。
【0034】
本発明で用いるポリエステル系エラストマーは、ポリエステルハードセグメントとポリエーテルソフトセグメントがブロックやグラフトの形態で結合したポリエステル系エラストマーであることが好ましく、その製造方法としては、特に限定されるものではなく、公知のいかなる方法も採用することができる。
【0035】
本発明で用いるポリエステル系エラストマーの融点は、150〜300℃であることが好ましく、180〜230℃であることがさらに好ましい。
【0036】
本発明で用いるポリエステル系エラストマーのガラス転移温度は、−40〜60℃であることが好ましく、−30〜30℃であることがより好ましく、0〜20℃であることがさらに好ましい。
【0037】
本発明で用いるポリエステル系エラストマーの硬度は、ショア硬度D(JIS K 7215)40〜75であることが好ましい。
【0038】
基材層を形成する重合体組成物におけるポリエステル系エラストマーの含有割合は、10〜70重量%であり、30〜70重量%が好ましく、40〜60重量%がより好ましい。ポリエステル系エラストマーの含有割合が10重量%未満であると、剥離抵抗力が上昇し、またジッピングが発生する傾向がある。一方、ポリエステル系エラストマーの含有割合が、70重量%を超えると剥離抵抗力が上昇し、またジッピングが発生する傾向がある。
【0039】
前記重合組成物以外にも、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、軟化剤等を本願発明の効果を損なわない程度に配合し、基材層を形成することが可能である。
【0040】
中間層
中間層は、表面保護フィルムに剛性(腰)を付与し、基材層と粘着層を接着させるために設けられる層である。
【0041】
中間層としては、芳香族系ビニル単位及び共役ジエン単位からなる共重合体(以下、芳香族系ビニル−共役ジエン共重合体ともいう)又はその水素添加物と、ポリプロピレン系樹脂を含む重合体組成物から形成される中間層(A)一層から形成されてもよく、また、変性オレフィン系樹脂を含む重合体組成物から形成される中間層(B1)、並びに芳香族系ビニル単位及び共役ジエン単位からなる共重合体又はその水素添加物と、ポリプロピレン系樹脂を含む重合体組成物から形成される中間層(B2)からなる二層構造から形成されてもよい。
【0042】
中間層において、ポリプロピレン系樹脂の含有割合が70重量%以下である場合、芳香族系ビニル−共役ジエン共重合体が接着樹脂としての役割を兼ねるため、中間層(A)一層から形成されていることが好ましく、また、中間層におけるポリプロピレン系樹脂の含有割合が70重量%以上である場合には、接着樹脂が必要となるため、中間層(B1)、及び中間層(B2)からなる二層構造から形成されていることが好ましい。なお、中間層が二層構造からなる場合には、中間層(B1)は基材層側に、中間層(B2)は粘着層側に積層される。
【0043】
中間層(A)におけるポリプロピレン系樹脂としては、フィルムの剛性を増加させ、良好なハンドリング性を付与することができるという観点から、ポリプロピレン樹脂、すなわち、プロピレン単独重合体(ホモPP)が好ましい。ポリプロピレン系樹脂としては、アイソタクチックインデックス(以下、II値と称す。)が、95%以上が好ましく、98%以上がさらに好ましい。
【0044】
ポリプロピレン系樹脂のMFRは、JIS K7210に準じて測定でき、温度が230℃、荷重が21.18Nの測定条件で、0.5〜20g/10分であることが好ましく、1.0〜15g/10分であることがより好ましい。ポリプロピレン系樹脂のMFRが前記範囲にあることで、押出成形に適しているため好ましい。
【0045】
また、エチレンを共重合成分とすることも可能であり、プロピレン−エチレン共重合体等を用いることができる。プロピレン−エチレン共重合体におけるエチレンの共重合比率としては、9重量%以下であることが好ましい。プロピレン−エチレン共重合体は、ランダム共重合体であってもブロック共重合体であってもよく、また、核剤(結晶化核剤)を含んでも良い。核剤としては、特に限定されず、各種無機化合物、各種カルボン酸又はその金属塩、ジベンジリデンソルビトール系化合物、アリールフォスフェート系化合物、環状多価金属アリールフォスフェート系化合物と脂肪族モノカルボン酸アルカリ金属塩又は塩基性アルミニウム・リチウム・ヒドロキシ・カーボネート・ハイドレートとの混合物、各種高分子化合物等のα晶核剤等が挙げられる。これらの結晶化核剤は単独の材料でも使用でき、また二種以上の材料を併用することもできる。
【0046】
ポリプロピレン系樹脂の含有割合としては、中間層(A)を形成する重合体組成物中、50〜70重量%が好ましく、50〜65重量%がより好ましく、50〜60重量%がさらに好ましい。
【0047】
ポリプロピレン系樹脂の含有割合が50重量%未満であると、剛性(腰)が弱く、フィルムとしてのハンドリング性が悪化する傾向があり、また、含有割合が70重量%を超えると、基材層との接着性が悪化する傾向がある。
【0048】
中間層(A)における芳香族系ビニル−共役ジエン共重合体について、芳香族系ビニルとは、少なくとも1つのビニル基を有する芳香族炭化水素のことであり、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、ジビニルベンゼン、1,1−ジフェニルエチレン、N,N−ジメチル−p−アミノエチルスチレン、N,N−ジエチル−p−アミノエチルスチレン等を挙げることができる。これらは一種単独又は二種以上を混合して使用することができる。これらの中でも、スチレンが好ましい。
【0049】
共役ジエンとは、1対の共役二重結合を有するジオレフィンであり、例えば、1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン(イソプレン)、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、2−メチル−1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエン等を挙げることができる。これらは一種単独又は二種以上を混合して使用することができる。これらの中でも、ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン(イソプレン)が好ましい。
【0050】
芳香族系ビニル−共役ジエン共重合体の水素添加物は、共役ジエン由来の二重結合を、公知の方法により水素添加(例えば、ニッケル触媒等)して飽和にしておくことが好ましい。これにより、前記効果に加えて、さらに、耐熱性、耐薬品性、耐久性等に優れたより安定な樹脂にすることができるため好ましい。
【0051】
芳香族系ビニル−共役ジエン共重合体の水素添加物の水素添加率は、共重合体中の共役ジエンに由来する二重結合の85%以上であることが好ましく、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上である。この水素添加率は、核磁気共鳴装置(NMR)を用いて測定することにより確認することができる。
【0052】
芳香族系ビニル−共役ジエン共重合体又はその水素添加物における芳香族系ビニル単位の含有割合は、通常5〜40重量%であり、好ましくは5〜15重量%である。また、共役ジエン単位の含有割合は、通常60〜95重量%であり、好ましくは85〜95重量%である。なお、芳香族系ビニル単位の含有割合は、紫外分光光度計又は核磁気共鳴装置(NMR)を用いて、共役ジエン単位の含有割合は、核磁気共鳴装置(NMR)を用いて測定することができる。
【0053】
芳香族系ビニル−共役ジエン共重合体又はその水素添加物の硬度(JISK6253 デュロメータータイプA)は、通常40〜90程度であり、好ましくは、55〜85程度である。
【0054】
また、芳香族系ビニル−共役ジエン共重合体又はその水素添加物の比重(ASTMD297)は、通常0.85〜1.0程度であり、MFR(ASTM D1238:230℃、21.2N)は、通常2〜6g/10分程度である。
【0055】
芳香族系ビニル−共役ジエン共重合体又はその水素添加物の重量平均分子量(Mw)は、例えば、通常10万〜50万程度であり、好ましくは15万〜30万程度であればよい。重量平均分子量は、市販の標準ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて測定できる。
【0056】
中間層(A)を形成する際に用いられる芳香族系ビニル−共役ジエン共重合体又はその水素添加物の含有割合としては、中間層(A)を形成する重合体組成物中30〜50重量%が好ましく、40〜50重量%がより好ましく、45〜50重量%がさらに好ましい。
【0057】
芳香族系ビニル−共役ジエン共重合体又はその水素添加物の含有割合が30重量%未満であると、基材層との接着性が悪化する傾向があり、また、含有割合が50重量%を超えると、剛性(腰)が弱く、フィルムとしてのハンドリング性が悪化する傾向がある。
【0058】
中間層が中間層(B1)及び中間層(B2)からなる二層構造である場合、中間層(B1)における変性オレフィン系樹脂としては、極性基を有するポリオレフィンであれば特に制限無く用いることができる。なお、変性オレフィン系樹脂は、接着樹脂として用いられる。変性オレフィン系樹脂を製造する際の原料となるポリオレフィンとしては、高圧法又は低圧法の何れかによる1種又はそれ以上のモノオレフィンを重合して得られる結晶性又は非晶性の高分子量固体生成物からなる。このような樹脂は商業的に入手できる。
【0059】
上記ポリオレフィンの適当な原料オレフィンとしては、具体例には、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、2−メチル−1−プロペン、3−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、5−メチル−1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン及びこれらのオレフィンを2種以上混合した混合オレフィンが挙げられる。
【0060】
本発明の変性ポリオレフィンとしては、例えば、極性モノマーとオレフィンとのブロック共重合体やポリオレフィンに極性モノマーをグラフト共重合したグラフト変性重合体も用いることができるが、特にグラフト変性重合体が好適に用いられる。グラフト変性重合体に用いられる原料ポリオレフィンは、上記のポリオレフィンならばいずれも用いることができるが、特に、エチレン系重合体が好適に用いられる。
【0061】
グラフト変性エチレン系重合体の原料として用いられるエチレン系重合体としてはエチレン・α−オレフィン共重合体が好ましい。グラフト変性エチレン系重合体の原料として用いられるエチレン・α−オレフィン共重合体は、エチレンと炭素原子数3〜10のα−オレフィンとの共重合体が好ましい。この炭素原子数3〜10のα−オレフィンとしては、具体的に、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、3−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ペンテン、3−エチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ヘキセン、4,4−ジメチル−1−ペンテン、4−エチル−1−ヘキセン、1−オクテン、3−エチル−1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン等が挙げられる。これらは単独でも2種以上でもよい。これらのうち、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテンのうちの少なくとも1種以上が特に好ましい。
【0062】
エチレン系共重合体中の各構成単位の含有割合は、エチレンから誘導される構成単位の含有割合が通常75〜95モル%であり、好ましくは80〜95モル%であり、炭素原子数3〜10のα−オレフィンから選ばれる少なくとも1つの化合物から誘導される構成単位の含有割合が通常5〜25モル%であり、5〜20モル%であることが好ましい。
【0063】
本発明に係るグラフト変性エチレン系重合体は上記エチレン系共重合体を少なくとも1種の極性基を有するビニル化合物でグラフト変性することで得られる。極性基を有するビニル化合物としては、極性基として酸、酸無水物、エステル、アルコール、エポキシ、エーテル等の酸素含有基を有するビニル化合物、イソシアネート、アミド等の窒素含有基を有するビニル化合物、ビニルシラン等のケイ素含有基を有するビニル化合物等が挙げられる。
【0064】
これらの中でも酸素含有基を有するビニル化合物が好ましく、不飽和エポキシ単量体、不飽和カルボン酸及びその誘導体等が好ましい。
【0065】
不飽和エポキシ単量体としては不飽和グリシジルエーテル、不飽和グリシジルエステル(例えばグリシジルメタクリレート)等が挙げられる。
【0066】
不飽和カルボン酸の例としてはアクリル酸、マレイン酸、フマル酸、テトラヒドロフタル酸、イタコン酸、シトラコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸及びナジック酸TM(エンドシス−ビシクロ[2,2,1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボン酸)等が挙げられる。
【0067】
また不飽和カルボン酸の誘導体としては、たとえば上記不飽和カルボン酸の酸ハライド化合物、アミド化合物、イミド化合物、酸無水物、及びエステル化合物等を挙げることができる。具体的には塩化マレニル、マレイミド、無水マレイン酸、無水シトラコン酸、マレイン酸モノメチル、マレイン酸ジメチル、グリシジルマレエート等が挙げられる。
【0068】
これらの中では、不飽和ジカルボン酸又はその酸無水物が好適であり、特にマレイン酸、ナジック酸TM又はこれらの酸無水物が好適である。
【0069】
前記変性オレフィン系樹脂としては、例えば、商品名;アドマー(三井化学株式会社製)、商品名;モディック(三菱化学株式会社製)、商品名;アドテックス(日本ポリエチレン株式会社製)等を好適に使用することができる。
【0070】
中間層(B2)におけるポリプロピレン系樹脂としては、前記中間層(A)で挙げられたポリプロピレン系樹脂と同様のものを用いることができる。
【0071】
中間層(B2)における重合体組成物中のポリプロピレン系樹脂の含有割合は、50〜100重量%である。また、重合体組成物が、ポリプロピレン系樹脂と芳香族系ビニル−共役ジエン共重合体又はその水素添加率との混合物である場合には、ポリプロピレン系樹脂の含有割合は、90〜50重量%が好ましく、90〜60重量%がより好ましい。
【0072】
粘着層
粘着層は、被着体と表面保護フィルムを接着させるために設けられる層である。粘着層はスチレン系熱可塑性エラストマー及びオレフィン系エラストマーを含む樹脂組成物により形成される。
【0073】
スチレン系熱可塑性エラストマーとしては、ポリスチレン相をハードセグメントとするものである。具体的にはスチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−イソブチレン共重合体又はこれらの水素添加物が挙げられる。
【0074】
オレフィン系エラストマーとしては、炭素数2〜20、好ましくは2〜10のα−オレフィン共重合体が挙げられ、2元共重合体であっても、3元共重合体であってもよい。
【0075】
具体的には、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−1−ブテン共重合体、プロピレン−1−ブテン共重合体、プロピレン−エチレン−1−ブテン共重合体等が挙げられる。
【0076】
粘着層を形成するスチレン系熱可塑性エラストマー及びオレフィン系エラストマーの含有割合は、スチレン系熱可塑性エラストマー/オレフィン系エラストマー=20〜90重量%/10〜80重量%であることが好ましい。
【0077】
スチレン系熱可塑性エラストマーの含有割合は、必要な粘着力を付与するために、20重量%以上が好ましく、粘着層自体の剛性を低下させず、被着体からフィルムを剥離した時に、被着体表面に貼り付け跡が残らないという点から、90重量%以下が好ましい。
【0078】
また、オレフィン系エラストマーの含有割合は、粘着層自体の剛性を低下させず、被着体からフィルムを剥離した時に、被着体表面に貼り付け跡が残らないという点から、80重量%以下が好ましい。
【0079】
粘着層は、さらにポリプロピレン系樹脂を添加することができる。
【0080】
ポリプロピレン系樹脂としては、前記中間層(A)で挙げたものを用いることができる。
【0081】
ポリプロピレン系樹脂を添加することにより粘着力を調整することができる。
【0082】
ポリプロピレン系樹脂の含有量は、上記スチレン系熱可塑性エラストマー及びオレフィン系エラストマーの樹脂組組成物100重量部に対して45重量部以下であることが好ましい。ポリプロピレン系樹脂の含有割合が、45重量部以下であれば、粘着層は表面保護フィルムに必要な粘着力が得られる。
【0083】
粘着層には、前記の重合体の他に、粘着層の粘着性、及び被着体への汚染性を損わない程度で、必要に応じて公知の軟化剤、紫外線吸収剤、光安定剤、顔料、充填剤等の添加剤を加えることもできる。
【0084】
表面保護フィルム
本発明の表面保護フィルムは、中間層を基材層と粘着層で挟んだ構造を有するものである。具体的には、中間層が一層である場合には、基材層‐中間層(A)−粘着層の順に積層された構造を有し、また、中間層が二層構造である場合には、基材層−中間層(B1)−中間層(B2)−粘着層の順に積層された構造を有する。
【0085】
表面保護フィルムは、前記基材層を形成させるための樹脂組成物、中間層を形成させるため樹脂組成物、及び粘着層を形成させるための樹脂組成物をそれぞれドライブレンドし、各組成物をこの順で押出機に供給し、バレル温度160〜260℃程度でフィルム状に押出し、20〜40℃程度の冷却ロ−ルに通しながら冷却して引き取ることにより得られる。また、各層用樹脂を一旦ペレットとして取得した後、上記の様に押出成形してもよい。
【0086】
本発明の表面保護フィルムは、全体の厚さが20〜80μmであることが好ましい。
【0087】
中間層が一層からなる場合、表面保護フィルムの中間層(A)の厚さの比率としては、基材層の厚さを1とすると、0.125〜38が好ましく、0.5 〜10がより好ましい。また、粘着層の厚さとしては、0.5〜20が好ましく、0.5〜10がより好ましい。
【0088】
中間層が二層構造(中間層(B1)及び(B2))からなる場合には、中間層(B1)の厚さの比率としては、基材層の厚さを1とすると、0.125〜19が好ましく、0.25〜10がより好ましい。中間層(B2)の厚さの比率としては、0.125〜19が好ましく、0.25〜10がより好ましい。粘着層の厚さとしては、0.5〜20が好ましく、0.5〜10がより好ましい。
【0089】
表面保護フィルムの基材層の厚さは、2〜40μmが好ましい。また、中間層が一層(中間層(A))からなる場合には、中間層の厚さは、5〜76μmが好ましい。中間層が二層構造(中間層(B1)及び(B2))からなる場合には、中間層の厚さは、5〜76μmが好ましい。粘着層の厚さは、2〜40μmが好ましい。各層の厚さがこの範囲であれば、良好な粘着性と剥離性を有しつつ、優れた製膜性を示す。
【発明の効果】
【0090】
本発明の表面保護フィルムは、特に、基材層及び中間層において特定の重合体組成物によって形成させることによって、表面保護フィルム中の基材層、中間層及び粘着層の各層の接着性を改善することができる。さらに、表面保護フィルム間(基材層−粘着層間)での接着性を小さくすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0091】
以下に実施例及び比較例を示して、本発明をさらに具体的に説明する。なお、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではない。
【0092】
実施例及び比較例において製造した基材層、中間層及び粘着層の各層において使用した樹脂及びエラストマーを以下に示す。なお、MFRは、JIS K7121に準拠して測定した。
【0093】
軟質ポリエステル樹脂:株式会社ベルポリエステルプロダクツ製のFLX92
ポリエステル系エラストマー1:東レ・デュポン株式会社製のハイトレル 5557
ポリエステル系エラストマー2:東レ・デュポン株式会社製のハイトレル 7247
ポリプロピレン:サンアロマー株式会社製のPC412A
AD:三井化学株式会社製のアドマー SF731
SEBS:クレイトンポリマージャパン株式会社製のクレイトンMD6945
オレフィン系エラストマー:プロピレン−エチレン−1−ブテン共重合体(MFR:6g/10分、密度:0.868g/cm
スチレン系熱可塑性エラストマー:スチレン−イソブチレン共重合体(MFR:6g/10分、密度:0.946g/cm
ポリプロピレン3:ポリプロピレン単独重合体(MFR:2.3g/10分、Tm:160℃)
【0094】
実施例1〜12及び比較例1〜5
基材層、中間層、及び粘着層の各層を形成する樹脂を表1又は2に示す割合となるように、ドライブレンドにより、基材層用樹脂、中間層用樹脂及び粘着層用樹脂をそれぞれ調製した。調製した基材層用樹脂、中間層用樹脂及び粘着層用樹脂の各樹脂を、同順に、バレル温度160〜260℃に調整した各押出機に供給した。そして、230℃に加熱したTダイスから押出し、設定温度20℃の引き取りロールにて冷却固化して、無延伸の状態で巻き取り、表面保護フィルムを得た。このとき得られた表面保護フィルムの厚みは、実施例1〜3、7〜9及び比較例1〜5については、基材層:5μm、中間層(B1):10μm、中間層(B2):25μm、粘着層:10μmで総厚み:50μmであり、実施例4〜6については基材層:5μm、中間層:35μm、粘着層:10μmで総厚み:50μmであった。
【0095】
得られた表面保護フィルムについて、以下の測定方法により、剥離抵抗力、ジッピング及び製膜性を測定した。評価結果を表1及び2に示す。
【0096】
・製膜性
表面保護フィルムの製造工程において、以下の基準によって評価した。
【0097】
○:問題なく表面保護フィルムを製膜することができた。
×:冷却ロールへの巻き付きが発生し、サンプルが採取できなかった、又は樹脂の流速が異なる等により、各層を積層させた場合に綺麗な膜が形成できなかった。
【0098】
・剥離抵抗力
[サンプル貼り合せ]
サンプルロールから幅50mm、長さ150mmにサンプルを2枚切り出し、23℃の雰囲気下で基材層と粘着層が重なるように貼り合せた。その後、圧着ローラーにて圧力:3.0MPa、速度:5.0m/minの条件で圧着し、測定用サンプルを得た。
[剥離抵抗力測定]
前記の方法で得られた測定用サンプルを、40℃下、7.14KPaの圧力下で72h静置した。その後、剥離試験機(新東科学社製のPeeling TESTER HEIDON−17)を用いて、剥離速度:1.0m/minの設定条件で、前記圧着により貼り合わした基材層−粘着層間の剥離抵抗力を測定した。
【0099】
このとき、測定チャートにおける極大点10点の平均値を剥離抵抗力とした。剥離抵抗力が5N/25mm以下の値を示したものを良好として評価した。
[ジッピング評価]
前記剥離抵抗力の測定によって得られたチャートを用い、極大値の10点平均値を最大値、極小値の10点平均値を最小値とし、その差をAとしたとき、
○:0≦A≦0.5N/25mm
△:0.5<A≦1.5N/25mm
×:1.5N/25mm<A
とした。
【0100】
【表1】

【0101】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材層、中間層及び粘着層を有する表面保護フィルムであって、
基材層が、軟質ポリエステル樹脂を30〜90重量%含み、ポリエステル系エラストマーを10〜70重量%含む重合体組成物から形成され、
中間層が、
芳香族系ビニル単位及び共役ジエン単位からなる共重合体又はその水素添加物を30〜50重量%含み、ポリプロピレン系樹脂を50〜70重量%含む重合体組成物から形成される中間層(A)、又は
変性オレフィン系樹脂を含む重合体組成物から形成される中間層(B1)、並びに芳香族系ビニル単位及び共役ジエン単位からなる共重合体又はその水素添加物を0〜50重量%含み、ポリプロピレン系樹脂を50〜100重量%含む重合体組成物から形成される中間層(B2)からなる二層構造であり、
粘着層が、オレフィン系エラストマーを20〜90重量%含み、スチレン系エラストマーを10〜80重量%含む重合体組成物から形成される
表面保護フィルム。
【請求項2】
軟質ポリエステル樹脂のショア硬度Dが60以下である請求項1に記載の表面保護フィルム。
【請求項3】
ポリエステル系エラストマーが、少なくとも1種のポリエステルハードセグメントと、少なくとも1種のポリエーテルソフトセグメントからなる共重合体である請求項1又は2に記載の表面保護フィルム。
【請求項4】
粘着層を形成する重合体組成物において、ポリプロピレン系樹脂をさらに、オレフィン系エラストマー及びスチレン系エラストマーの合計量100重量部に対して45重量部以下含む請求項1〜3のいずれかに記載の表面保護フィルム。

【公開番号】特開2011−132392(P2011−132392A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−293975(P2009−293975)
【出願日】平成21年12月25日(2009.12.25)
【出願人】(000001339)グンゼ株式会社 (919)
【Fターム(参考)】