説明

表面保護用粘着テープ

【課題】半導体ウェハの加工、更に詳しくはシリコンウェハなどの裏面研削工程において、極薄膜の領域までウェハ研削を可能し、薄膜ウェハや大口径ウェハに対しても反りを抑制しウェハ破損を防ぐ表面保護用粘着テープを提供する。
【解決手段】少なくとも基材と粘着剤層を有する表面保護用粘着テープであって、該表面保護用粘着テープの厚さの合計が80〜350μmであり、前記基材が外層A1と粘着剤層側の基材層A2と、及び前記A1とA2に挟まれた中間層Bを有し、引張り弾性率が1.0〜3.0GPaである表面保護用粘着テープ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体デバイスの加工に用いられる表面保護テープに関し、更に詳しくは半導体ウェハの裏面研削時に用いるのに好適な表面保護用粘着テープに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体ウェハの加工工程において、ウェハ表面にパターンを形成した後、ウェハ裏面を所定厚さまで研削するいわゆるバックグラインド工程が行なわれる。その際、ウェハ表面を保護する目的で、ウェハ表面に表面保護用粘着テープを貼り合わせ、その状態でウェハ裏面が研削される。表面保護用粘着テープとしては、エチレン酢酸ビニル共重合体などのポリオレフィンやポリエチレンテレフタラートフィルムなどの基材樹脂フィルム上に粘着層が設けられたものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
近年では、半導体デバイスの小型化に伴い、半導体ウェハ、例えば、シリコンウェハの厚さも更なる薄膜化が望まれており、厚さが100μm以下まで研削する要求が高まっている。また、歩留まり向上のためにウェハ自体の大型化が進み、直径が8インチ、12インチといった従来よりも大口径のウェハが主流となっている。
しかし、大口径のウェハを加工したり、厚さ100μm以下の薄膜までウェハを研削する場合、従来よりもウェハ自身の強度・剛性が低下するため、研削後の反りが大きくなる傾向にある。このため、ウェハを薄膜まで研削した場合に、特許文献1記載の表面保護用粘着テープでは、ウェハの反りを十分低減することができない。
【0004】
また、加熱条件下で測定された収縮応力が特定の値以下の基材フィルムを用いた表面保護用粘着テープが提案されている(例えば、特許文献2参照)。しかし、特許文献2記載の表面保護用粘着テープを用いると、ある程度ウェハの変形を低減することはできるが、テープ自体の反りは抑制できるものの、ウェハが反る力に対して矯正する効果はほとんど無いため、より薄膜になるとウェハの反りが増大する可能性がある。
そこで、薄膜化・大口径化したウェハでもウェハの反りや、ウェハの割れ等の問題を解決できる表面保護用粘着テープが望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−338911号公報
【特許文献2】特開2004−256595号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記の問題点を解決し、半導体ウェハの加工、更に詳しくはシリコンウェハなどの裏面研削工程において、極薄膜の領域までウェハ研削を可能し、薄膜ウェハや大口径ウェハに対しても反りを抑制しウェハ破損を防ぐ表面保護用粘着テープを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記課題について鋭意検討した結果、基材が少なくとも3層からなり、その中間層を有し、引張り弾性率が特定の範囲内の表面保護用粘着テープが、裏面研削工程において、大口径の半導体ウェハ研削し、あるいは半導体ウェハを極薄膜の領域まで研削しても反りを抑制でき、ウェハの破損を著しく低減できることを見出した。本発明はこの知見に基づきなされたものである。
【0008】
すなわち本発明は、
<1>少なくとも基材と粘着剤層を有する表面保護用粘着テープであって、該表面保護用粘着テープの厚さの合計が80〜350μmであり、前記基材が外層A1と粘着剤層側の基材層A2と、及び前記A1とA2に挟まれた中間層Bを有し、引張り弾性率が1.0〜3.0GPaであることを特徴とする表面保護用粘着テープ、
<2>前記外層A1と前記粘着剤層側の基材層A2のうち少なくとも一方が20〜150μmであることを特徴とする<1>記載の表面保護用粘着テープ、
<3>前記中間層Bの厚さが、20〜100μmであることを特徴とする<1>又は<2>記載の表面保護用粘着テープ、
<4>前記中間層Bが、構成成分としてアクリル酸エステルを含む重合体と硬化剤を用いてなることを特徴とする<1>〜<3>のいずれか1項記載の表面保護用粘着テープ、
を提供するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、半導体ウェハの加工、更に詳しくはシリコンウェハなどの裏面研削工程において、極薄膜の領域までウェハ研削を可能し、薄膜ウェハや大口径ウェハに対しても反りを抑制しウェハ破損を防ぐ表面保護用粘着テープを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の表面保護用粘着テープの一実施形態を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の表面保護用粘着テープ100について、図面を参照しながら説明する。本発明の表面保護用粘着テープは、少なくとも基材10と粘着剤層20を有している。後述のように、粘着剤層上には、離型フィルム(図示せず)を設けてもよい。基材10は、外層A1と粘着剤層側の基材層A2と、及び前記A1とA2に挟まれた中間層Bを有している。図1では、基材に直接、粘着剤層10が設けられているが、粘着剤層20と粘着剤層側の基材層A2との間にプライマー層など(図示せず)を設けてもよい。
【0012】
1.外層A1又は粘着剤層側の基材層A2
本発明の表面保護用粘着テープは、シリコンウェハなどの半導体ウェハを、例えば、
50μm程度まで薄膜まで研削しても、本発明の表面保護用粘着テープが貼合された半導体ウェハの反りを抑制することができる。本発明の表面保護用粘着テープは、該表面保護用粘着テープの厚さの合計が80〜350μmであり、表面保護用粘着テープの引張り弾性率は、1.0〜3.0GPaである。表面保護用粘着テープの引張り弾性率は、好ましくは1.5〜2.0GPaである。前記基材と粘着剤層の厚さの合計は90〜300μmであることが好ましい。
本明細書において、引張り弾性率とは、幅25mmで長さが10cmの矩形の表面保護用粘着テープを引っ張り試験機にチャック間距離が50mmとなるように固定し、引張り速度300mm/secで引っ張り試験を行い、伸び率1〜3%の範囲から求めたものをいう。引張り弾性率が小さすぎると、十分な反り抑制効果を得ることができない。引張り弾性率が大きすぎると、表面保護用粘着テープを半導体ウェハに貼合するときや該テープを半導体ウェハから剥離するときの作業性が大きく悪化する。本発明において基材中の外層A1と前記粘着剤層側の基材層A2のうち少なくとも一方は、厚さ20〜150μmであることが好ましい。外層A1と前記粘着剤層側の基材層A2が厚さ20〜150μmであることが好ましい。この厚さが薄すぎると、半導体ウェハの反りを抑制することが困難な場合がある。また、基材中の中間層B以外の厚さの合計が厚すぎると、半導体ウェハへの表面保護用粘着テープ貼合時やテープ剥離時の作業性が大きく悪化する。
【0013】
外層A1又は粘着剤層側の基材層A2として用いられる樹脂としては、ポリプロピレンや高密度ポリエチレンなどのポリオレフィンや、ポリエチレンテレフタラート、ポリブチレンテレフタラート、ポリエチレンナフタラート等のポリエステルなど従来のものを用いることができる。A1とA2として、これらの中から2種類を組み合わせてもよい。また、A1又はA2の一方に、剛性樹脂を使用した場合は、もう一方の外層には柔軟な樹脂を使用することができる。例えば、柔軟な樹脂としては、低密度ポリエチレンのようなポリオレフィン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体およびエチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体のようなエチレン共重合体、軟質ポリ塩化ビニル、半硬質ポリ塩化ビニル、ポリウレタン、ポリアミド、ポリイミド、天然ゴムならびに合成ゴムなどの高分子材料を用いるができる。剛性樹脂としては、ポリエチレンテレフタラート、高密度ポリエチレン、ポリプロピレンなどを使用することができる。
外層A1の融点は80℃以上が好ましい。当該の表面保護用粘着テープは工程中でテープ側から70℃程度に加熱されることがあり、融点が低すぎると基材が溶融し、テープとしての性能を発現することが困難な場合がある。
【0014】
2.中間層B
中間層Bは、上記の外層A1と粘着剤層側の基材層A2との間に中間層Bを有する、サンドイッチ構造をとることで、基材の剛性を高めることができる。中間層Bの厚さは、20〜100μmが好ましい。さらに好ましくは、40〜60μmである。中間層Bの厚さが薄すぎる場合は、十分なクッション性が得られず、研削時にウェハの割れが発生する場合がある。
【0015】
中間層Bは、構成成分としてアクリル酸エステルを含む重合体と硬化剤を用いて硬化されていることが好ましい。構成成分としてアクリル酸エステルを含む重合体としては、重量平均分子量が20万以上であるものが好ましい。構成成分としてアクリル酸エステルを含む重合体の分子量が小さすぎるオリゴマーでは安定した膜とすることができない。中間層に用いるアクリル酸エステルを含む重合体としては、(メタ)アクリル酸エステルを構成成分とする単独重合体や、(メタ)アクリル酸エステルを構成成分として有する共重合体を挙げることができる。構成成分中の(メタ)アクリル酸エステルの含有量は、重量比で60〜80%が好ましい。その他の官能性単量体との共重合体およびこれら重合体の混合物、複層の粘着剤層で積層されたものでもよい。
アクリル酸エステルを構成成分として含む重合体を構成する単量体成分としては、例えば、メチル、エチル、n−プルピル、イソプルピル、n−ブチル、t−ブチル、イソブチル、アミル、イソアミル、ヘキシル、ヘプチル、シクロヘキシル、2−エチルヘキシル、オクチル、イソオクチル、ノニル、イソノニル、デシル、イソデシル、ウンデシル、ラウリル、トリデシル、テトラデシル、ステアリル、オクタデシル、及びドデシルなどの炭素数30以下、好ましくは炭素数4〜18の直鎖又は分岐のアルキル基を有するアルキルアクリレート又はアルキルメタクリレートが挙げられる。これらアルキル(メタ)アクリレートは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0016】
上記以外のアクリル樹脂中の構成成分としては、以下の単量体(a)を含むことができる。例えば、アクリル酸、メタクリル酸、カルボキシエチル(メタ)アクリレート、カルボキシペンチル(メタ)アクリレート、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、及びクロトン酸などのカルボキシル基含有モノマー、無水マレイン酸や無水イタコン酸などの酸無水物モノマー、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸6−ヒドロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸8−ヒドロキシオクチル、(メタ)アクリル酸10−ヒドロキシデシル、(メタ)アクリル酸12−ヒドロキシラウリル及び(4−ヒドロキシメチルシクロヘキシル)メチル(メタ)アクリレートなどのヒドロキシル基含有モノマー、スチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、(メタ)アクリルアミドプロパンスルホン酸、スルホプロピル(メタ)アクリレート及び(メタ)アクリロイルオキシナフタレンスルホン酸などのスルホン酸基含有モノマー、2−ヒドロキシエチルアクリロイルホスフェートなどのリン酸基含有モノマー、(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリル酸N−ヒドロキシメチルアミド、(メタ)アクリル酸アルキルアミノアルキルエステル(例えば、ジメチルアミノエチルメタクリレート、t−ブチルアミノエチルメタクリレート等)、N−ビニルピロリドン、アクリロイルモルフオリン、酢酸ビニル、スチレン、アクリロニトリル等が挙げられる。これらモノマー成分は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0017】
また、アクリル樹脂としては、構成成分として、以下の多官能性単量体(b)を含むことができる。その例としては、例えば、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、及びウレタン(メタ)アクリレートなどが挙げられる。これら多官能性単量体は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。多官能性単量体の使用量は、粘着特性等の観点より、全単量体成分の20質量%以下が好ましく、さらに10質量%以下が好ましい。
【0018】
中間層Bのガラス転移温度(Tg)は−80〜0℃が好ましく、さらに好ましくは、−40〜−10℃である。硬化剤としては、特開2007−146104の記載の硬化剤を使用することができる。例えば、1,3−ビス(N,N−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、1,3−ビス(N,N−ジグリシジルアミノメチル)トルエン、1,3−ビス(N,N−ジグリシジルアミノメチル)ベンゼン、N,N,N,N’−テトラグリシジル−m−キシレンジアミンなどの分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、1,3−キシリレンジイソシアネート、1,4−キシレンジイソシアネート、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネートなどの分子中に2個以上のイソシアネート基を有するイソシアネート系化合物、テトラメチロール−トリ−β−アジリジニルプロピオネート、トリメチロール−トリ−β−アジリジニルプロピオネート、トリメチロールプロパン−トリ−β−アジリジニルプロピオネート、トリメチロールプロパン−トリ−β−(2−メチルアジリジン)プロピオネートなどの分子中に2個以上のアジリジニル基を有するアジリジン系化合物等が挙げられる。
【0019】
本発明の表面保護用粘着テープとしては、該粘着テープの引張り弾性率が、1.0〜3.0GPaであればよく、この範囲内になるように、適宜中間層Bが設定できるものであれば特に制限されない。
【0020】
本発明の粘着剤は特に制限するものではなく、従来のものを用いることができるが、(メタ)アクリル酸エステルを構成成分とする単独重合体や、(メタ)アクリル酸エステルを構成成分として有する共重合体を挙げることができる。そのほか、上記中間層Bに用いられる単量体(a)や、多官能性単量体(b)を含む共重合体を挙げることができる。これらは、単独でも、複数の重合体を混合した組成物でもよい。例えば、アクリル酸エステルとしては、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸グリシジル、アクリル酸2−ヒドロキシエチルなどを挙げることができる。また上記のアクリル酸エステルをたとえばメタクリル酸エステルに代えたものなどのアクリル系ポリマーと硬化剤を用いてなるものを使用することができる。
硬化剤としては、中間層と同様に従来のものを使用することができる。硬化剤の含有量は、所望の粘着力に応じて調整すれば良く、上記重合体100質量部に対して、0.01〜10質量部が好ましく、さらに好ましくは、0.1部〜5質量部である。
【0021】
また、上記のような粘着剤層中に光重合性化合物及び光重合開始剤を含ませることによって、紫外線を照射することにより硬化し、粘着剤は粘着力を低下させることが出来る。このような光重合性化合物としては、たとえば特開昭60−196956号公報および特開昭60−223139号公報に開示されているような光照射によって三次元網状化しうる分子内に光重合性炭素−炭素二重結合を少なくとも2個以上有する低分子量化合物が広く用いられる。
具体的には、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートあるいは1,4−ブチレングリコールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、市販のオリゴエステルアクリレートなどが用いられる。
【0022】
光重合開始剤としては、特開2007−146104又は特開2004−186429の記載の光重合開始剤を使用することができる。イソプロピルベンゾインエーテル、イソブチルベンゾインエーテル、ベンゾフェノン、ミヒラーズケトン、クロロチオキサントン、ベンジルメチルケタール、α−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシメチルフェニルプロパン等を併用することができる。
【0023】
粘着剤層として、重合体中に光重合性炭素−炭素二重結合を有する重合体、光重合開始剤、及び硬化剤を含む樹脂組成物を用いてなる光重合性粘着剤を用いることができる。重合体中に炭素−炭素二重結合を有する重合体としては、側鎖に炭素原子数が4〜12、さらに好ましくは炭素原子数8のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルなどの単量体や共重合性改質単量体を1種または2種以上を任意の方法で単独重合または共重合した(メタ)アクリル系重合体が好ましい。
このようにして形成される光重合性粘着剤層は、放射線、好ましくは紫外線を照射することにより、粘着力を初期のから大きく低下させて、容易に被着体から粘着テープを剥離することができる。
【0024】
本発明において粘着剤層の厚さは、適用しようとする被着体により適宜設定することができ、特に制限するものではないが、好ましくは5〜60μmである。
【0025】
以上、本発明にかかる粘着テープの好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されない。
【実施例】
【0026】
以下、本発明について実施例を挙げて詳細に説明し、比較例と共に性能試験例を示し、本発明の優れた効果を明示するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0027】
(アクリル酸エステルを構成成分として含む重合体)
エチルアクリレート、ブチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、メタクリル酸からなるアクリル酸エステルを構成成分として含む重合体を調製した。得られた重合体100質量部に対して、イソシアネート系架橋剤コロネートL(商品名、日本ポリウレタン社製)を2.0質量部配合し、酢酸エチルで濃度を調整してアクリル酸エステルを含む重合体塗布液を得た。この塗布液を用いて、中間層を形成した。
【0028】
(アクリル系粘着剤)
エチルアクリレート、ブチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、メタクリル酸からなるアクリル系重合体を調製した。その後、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネートを加えて、このアクリル系重合体の2−ヒドロキシエチルアクリレート側鎖末端OH基と、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネートのNCO基を反応させて、主鎖の繰り返し単位に対して放射線硬化性炭素−炭素二重結合含有基を有する(メタ)アクリル系単量体部を有する残基を結合した重合体を得た。このアクリル系重合体100質量部に対して、イソシアネート系架橋剤コロネートL(商品名、日本ポリウレタン社製)を2.0質量部、光重合開始剤イルガキュア184(商品名、チバジャパン社製)を3質量部配合し、酢酸エチルで濃度を調整してアクリル系粘着剤塗布液を得た。
本発明の表面保護用粘着テープは大口径のウェハの研磨工程に適用でき、例えば、直径8インチ程度のような大口径のウェハの研磨に対して厚さ50μm程度の薄膜にする研磨加工でも良好なクッション性を示す。
【0029】
(実施例1)
厚さが40μmのポリプロピレン樹脂フィルムA1に、上記のアクリル酸エステルを含む重合体塗布液を塗布して、110℃に設定した温風乾燥炉を通して、乾燥後の膜厚が30μmの中間層Bを形成した。その後、この中間層B上に、A1と同じポリプロピレン樹脂フィルムA2を張り合わせて基材を得た。その後、A2上に上記アクリル系粘着剤塗布液を塗布して、110℃に設定した温風乾燥炉を通して、乾燥後の粘着剤層膜厚が20μmの表面保護用粘着テープを得た。
【0030】
(実施例2)
実施例1でA1の厚さを80μmとした以外は同様の方法で、表面保護用粘着テープを得た。
【0031】
(実施例3)
実施例1でA1の厚さを38μmのポリエチレンテレフタラート樹脂フィルム、中間層の厚さを30μmとした以外は同様の方法で、表面保護用粘着テープを得た。
【0032】
(実施例4)
実施例1でA1を25μmのポリエチレンテレフタラート樹脂フィルム、A2を厚さ100μmのエチレン−酢酸ビニル共重合体フィルム、中間層の厚さを30μmとした以外は同様の方法で、表面保護用粘着テープを得た。
【0033】
(実施例5)
実施例3でA1、A2をそれぞれ38μmのポリエチレンテレフタラート樹脂フィルム、中間層の厚さを25μmとした以外は同様の方法で、表面保護用粘着テープを得た。
【0034】
(実施例6)
実施例3でA1、A2をそれぞれ25μmのポリエチレンテレフタラート樹脂フィルム、中間層の厚さを150μmとした以外は同様の方法で、表面保護用粘着テープを得た。
【0035】
(比較例1)
実施例1にて、ポリプロピレン樹脂フィルムを、厚さ100μmのエチレン−酢酸ビニル共重合体フィルムとした以外は同様の方法で表面保護用粘着テープを得た。
【0036】
(比較例2)
厚さが100μmであるエチレン−酢酸ビニル共重合体フィルム上に、上記アクリル系粘着剤塗布液を塗布して、粘着剤層の乾燥後の膜厚が20μmの表面保護用粘着テープを得た。
【0037】
(比較例3)
実施例1にて、中間層の厚さを160μmとした以外は同様の方法で表面保護用粘着テープを得た。
【0038】
(比較例4)
比較例1にて、エチレン−酢酸ビニル共重合体フィルムの厚さを165μmとした以外は同様の方法で表面保護用粘着テープを得た。
【0039】
(比較例5)
実施例5にて、ポリエチレンテレフタラート樹脂フィルムを厚さ50μmに変更した以外は同様の方法で表面保護用粘着テープを得た。
【0040】
(表面保護用粘着テープの性能評価)
上記実施例と比較例で得られた各表面保護用粘着テープについて、以下の試験について、以下の試験を行い、その性能を評価し、表1、2の結果を得た。
【0041】
(引張り弾性率)
各粘着テープを幅25mm、長さ10cmの矩形に切り出し、ストログラフ(東洋精機製)にてチャック間距離が50mmとなるように固定し、引張り速度300mm/secで引っ張り試験を行い、伸び率1〜3%の範囲から引張り弾性率を求めた。
【0042】
(研削時の割れ)
厚さ約0.725mmで8インチ径のシリコンベアウェハに、各粘着テープを貼合し、グラインダー((株)DISCO製 商品名DFP8760)で、8インチ径のシリコンベアウェハを3枚、50μmの厚さまで研削した際の割れの有無を調査し、割れが発生しなかったものを1枚も発生しなかったものを○、1枚でも発生したものを×とし、○を合格とした。
【0043】
(ウェハの反り)
上記研削において、8インチ径のシリコンベアウェハを50μmの厚さまで研削した際、粘着テープ付きのウェハが反ることにより発生した凸側を下にして、粘着テープ付きのウェハを水平な台に置いた。該ウェハの両端の反りを2か所測定し、その平均値をウェハの反りとした。その反りが10mm以上を×、5〜10mmを△、5mm以下を○とし、○を合格とした。
【0044】
【表1】

【0045】
【表2】

【0046】
表1、2の結果から、本発明の表面保護用粘着テープは、薄膜研削してもウェハの割れや反りを著しく低減できるという優れた効果を奏する。
【符号の説明】
【0047】
A1 外層
A2 粘着剤層側の基材層
B 中間層
10 基材
20 粘着剤層
100 表面保護用粘着テープ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも基材と粘着剤層を有する表面保護用粘着テープであって、該表面保護用粘着テープの厚さの合計が80〜350μmであり、前記基材が外層A1と粘着剤層側の基材層A2と、及び前記A1とA2に挟まれた中間層Bを有し、引張り弾性率が1.0〜3.0GPaであることを特徴とする表面保護用粘着テープ。
【請求項2】
前記外層A1と前記粘着剤層側の基材層A2のうち少なくとも一方が厚さ20〜150μmであることを特徴とする請求項1記載の表面保護用粘着テープ。
【請求項3】
前記中間層Bの厚さが、20〜100μmであることを特徴とする請求項1又は2記載の表面保護用粘着テープ。
【請求項4】
前記中間層Bが、構成成分としてアクリル酸エステルを含む重合体と硬化剤を用いてなることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載の表面保護用粘着テープ。

【図1】
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【公開番号】特開2012−211227(P2012−211227A)
【公開日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−76688(P2011−76688)
【出願日】平成23年3月30日(2011.3.30)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【Fターム(参考)】