説明

表面処理されていない基質にプローブを固定するためのゾル−ゲルバイオチップ用のゾル組成物及びそのスクリーニング方法

本発明は、表面処理されていない基質にプローブを固定するためのゾル−ゲルバイオチップ用のゾル組成物のスクリーニング方法、前記方法によりスクリーニングされたゾル組成物及び前記ゾル組成物が固定されているゾル−ゲルバイオチップに関する。本発明によりスクリーニングされたゾル組成物はプローブと混合して既存のバイオアッセイに広く用いられる96ウェルプレートに表面処理なしに集積することができ、固定されたプローブの変形が少なくて優れた分析結果が得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は表面処理されていない基質にプローブを固定するためのゾル−ゲルバイオチップ用のゾル組成物のスクリーニング方法、該方法によりスクリーニングされたゾル組成物及び該ゾル組成物が固定されているゾル−ゲルバイオチップに関する。
【背景技術】
【0002】
バイオチップは、ナノテクノロジー(NT)などの物質技術と、その技術のコンテンツ及び応用分野であるバイオテクノロジー(BT)と、結果を解析し且つ多量の結果を分析する情報テクノロジー(IT)と、が融合された代表的な技術である。バイオチップは様々な種類の生体物質を単位面積の固体状支持体の表面に高密度に微細配列(High-Density Microarraying)したものである。バイオチップの細部技術としては、生体物質を固定化する技術、固体状支持体を生体物質に馴染ませる技術、生体物質を微細配列する技術、製作されたチップ上において種々の生体反応を行うアッセイ技術、反応された結果を感知する技術、固定対象となる生体物質を製作するタンパク質工学、遺伝子組換え技術などが挙げられ、バイオチップはこれらの技術が集積された産物である。
【0003】
バイオチップのうち代表的なプロテインチップは、種々のタンパク質を単位面積の固体状支持体の表面に高密度に微細配列したものである。プロテインチップを用いると、少量の試料により疾病の診断、高効率スクリーニング(HTS)、酵素活性測定など様々な目的の実験を大規模で簡単に行うことができる。
【0004】
既に商用化しているDNAチップと同じ原理と技術要素を導入してプロテインチップを製作しようとする努力がなされている。一般に、商用化しているDNAチップのほとんどは、コーティング物質により表面を前処理したガラス基板の上にDNAを固定化して製作したものである。DNAチップの製作とほとんど同様な方法によりプロテインチップを製造する場合、すなわち、コーティング物質により表面を前処理したガラス基板の上にタンパク質を固定化してプロテインチップを製造する場合、固定される標的タンパク質の物理化学的な特性差により種々の問題が発生している。
【0005】
初期のプロテインチップは、表面処理されたガラス基板の上にタンパク質をそのまま付着した後、簡単な結合分析を行うものであったが、固定化されたタンパク質の活性によって実際の性能が左右されて、本来の目的を達成するのに多くの難点があった(MacBeath and Schreiber, Science,289:1760, 2000)。このような問題点は、タンパク質が有する固有の物理化学的な特性差により発生するタンパク質の変性、不活性化、及び分解などにより引き起こされるものである。
【0006】
このような問題点を克服するために、DNAとは区別されるタンパク質の特性に適するタンパク質付着表面処理技術及びタンパク質固定物質などへの研究がなされている。このような研究は、プロテインチップ表面の上に固定反応を引き起こすと同時に、タンパク質の活性を維持する方法を提供するのに焦点が合わせられている。その例として、パーキンエルマーのヒドロゲルコーティングスライド、プロリンクスのベルサリンクスチップ及びジオミックスのバイオチップであるPDCチップなどが挙げられる。
【0007】
特に、ヒドロゲルコーティングスライドは、3次元ポリアクリルアミドゲルを用いた技術であり、光学的に平らなシラン処理されたスイスガラスを基本支持物質として用い、その上に表面を変形させたアクリルアミド重合体を載置してタンパク質の結合力及び構造的な安定性を高めたものである。このとき、タンパク質はポリアクリルアミドゲル官能基との共有結合形成によって固定化されている。また、プロリンクスのベルサリンクチップはTiO表面上にビオチン誘導体化されたポリ(L−リシン)−g−ポリ(エチレングリコール)の自己組立単層を形成し、前記形成された単層にタンパク質を固定してタンパク質の活性を増大したものである。これらの方法は3次元微細構造を作って、変形された表面にタンパク質を共有結合などにより固定してスポット上のタンパク質活性を維持するのに有利である。このような方法の他に、微細加工を用いたマイクロウェル状のチップを作って、溶液状態のチップを製作することもある。
【0008】
一方、ゾル−ゲル工程は、微細加工によって微細構造を作るのに用いられてきた技術であり、特に、無機物質に生体分子を化学的に付着する代わりに、穏やかな工程によって結合網を形成し、この結合網内に生体分子を共有結合以外の方法により固定化する技術である(Gill, I. and Ballesteros, A., Trends Biotechnol., 18:282, 2000)。酵素をはじめとする多くの生体分子を塊状ゾル−ゲルマトリックス内に固定して、生体触媒やバイオセンサーの製作に用いられている(Reetz et al., Adv. Mater., 9:943, 1997)。特に、ゾル−ゲルの透明な光学的な性質のため、光学的な発色検出にも用いられている(Edminston et al., J. Coll. Interf. Sci., 163:395, 1994)。さらに、生体分子は、ゾル−ゲルに固定化されると、化学的及び熱的に極めて安定化されることが知られている(Dave et al., Anal. Chem., 66:1120, 1994)。
【0009】
バイオセンサーの場合、ゾル−ゲル反応は単なる固定だけではなく、固体支持体の上に微細構造を形成してパターン化する方法として用いられている。このとき、パターン化方法は、流体力学を用いて液状であるゾル状態においてモールドにより成形してゲル化した後、モールドを除去してパターンを作ることである。例えば、毛細管内マイクロモジューリング(micro-moduling in-capillaries;MIMIC)技法(Kim et al., J. Ferment.Bioeng., 82:239, 1995; Marzolin et al., Adv. Mater., 10:571, 1998; Schuller et al., Appl. Optics, 38:5799, 1999)と呼ばれる技術は、メゾスコピックシリカをパターン化する技術であり、微視流体工学の基本的なパターン化に利用可能である。
【0010】
しかしながら、タンパク質の活性はpHなどの種々の因子により影響されるため、ゾル−ゲル過程においてはゾル状態からタンパク質を添加して活性を維持する条件を設定することが重要である。このために、中性pHなど種々の穏やかな条件を用いてタンパク質とゾルを予め混合してタンパク質をパターン化するなどの技術(Kim et al., Biotechnol. Bioeng., 73:331, 2001)が発表されているが、中性pHにおいてはゾル−ゲル過程が急激に進んでゲルとなるだけではなく、添加剤の選択によって亀裂が生じたり不透明になったりするなどの不都合がある。
【0011】
本発明者らは上記の如きプロテインチップの短所を補完して、ゾル−ゲル反応を用いたバイオチップを開発している(大韓民国公開特許10−2004−0024510)。すなわち、従来は、タンパク質をはじめとする生体物質入りのゾル−ゲルマトリックスをスポット状にチップ基質の上に固定可能な技術が存在していなかったため、生体物質の固定されたゾル−ゲルマトリックスをスポット状に集積したバイオチップが存在していなかった。前記先行特許においては、チップ基質を特有のコーティング成分により表面処理する技術を開発することにより、チップ基質上におけるゾル−ゲル反応を用いたバイオチップを最初に製造することができた。前記先行特許によるチップ基質表面処理技術によれば、生体物質入りのゾル混合物をスポット状にチップ基質の上に集積することができ、前記ゾル混合物をゲル化するゾル−ゲル反応がチップ基質上において誘起でき、ゾル−ゲルマトリックスをチップ基質の上に固定化することができる。特に、前記先行技術においては、チップ基質の表面に生体物質が共有結合により固定されている従来のバイオチップと異なり、生体物質が内部の気孔に捕集されてカプセル化されているゲル状のスポットがチップ基質の上に集積及び固定されているバイオチップを開発している。
【0012】
しかしながら、前記バイオチップは生体物質入りのゲルスポットを基質の上に固定するために、ポリビニールアセテートなどのコーティング剤により基質を表面処理し、前記表面処理された基質の上にゾル混合物をスポッティングしなければならないため、費用面や大量生産の面から不利であり、コーティングできない表面や形状のバイオチップには適用することができないという限界がある。
【0013】
そこで、本発明者らは、バイオチップの商用化のために従来の技術において必須とされていた表面処理をしていない基質の上にも強く結合可能なゾル−ゲルカプセル化に用いられる物質組成を見出すために鋭意努力した結果、効率よいゾル組成物スクリーニング方法を考案し、基質表面に強く結合してバイオチップの分析過程中の激しい洗浄に耐え、且つ、良好なアッセイ結果が得られるゾル組成物を見出し、本発明を完成するに至った。
【発明の詳細な説明】
【0014】
《技術的課題》
従って、本発明の目的は、表面処理されていない基質にプローブを固定するためのゾル−ゲルバイオチップ用のゾル組成物のスクリーニング方法を提供するところにある。
【0015】
本発明の他の目的は、前記方法によりスクリーニングされた、PMMA基質、ゴールドまたはシリコンウェーハ基質用のゾル組成物及び前記ゾル組成物が固定されているゾル−ゲルバイオチップを提供することにある。
【技術的解決方法】
【0016】
前記目的を達成するために、本発明は、(a)テトラメチルオルトシリケート(TMOS)、テトラエチルオルトシリケート(TEOS)、メチルトリメトキシシラン(MTMOS)、エチルトリエトキシシラン(ETrEOS)、トリメトキシシラン(TMS)、メチルトリメトキシシリケート(MTMS)及び3−アミノプロピールトリメトキシシリケート(3−ATMS)よりなる群から選ばれるいずれか1種以上のシリケート単量体、及びポリグリセリルシリケート(PGS)、ジグリセリルシラン(DGS)、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(GPTMOS)、(N−トリエトキシシリルプロピル)−O−ポリエチレンオキシドウレタン(PEOU)、グリセロール及び分子量100〜10,000のポリエチレングリコール(PEG)よりなる群から選ばれるいずれか1種以上の添加剤をバッファに種々の割合にて混合したゾル組成物の第1のライブラリーを得るステップと、(b)前記ゾル組成物の第1のライブラリーを表面処理されていない目的基質にスポッティングするステップと、(c)前記(b)ステップにおいて形成されたスポットの接着性、外観、透過度及びゲル化にかかる時間を測定して、洗浄後にチップにより直接的に引っ掻いてもスポットが脱落することなく、100〜800μmのスポット径を有しながらも元の形状を維持し、バックグラウンド未満の低い自己蛍光性を有し、チューブ内における4〜48時間及び基質のスポットにおける1〜4時間のゲル化所要時間を有する組成物を選択してゾル組成物の第2のライブラリーを得るステップと、(d)前記得られたゾル組成物の第2のライブラリーにプローブを混合した後、表面処理されていない基質にスポッティングするステップと、(e)前記プローブに対するスポットの固定化率及びプローブと目的物質との間の特異性を測定して、プローブの固定化率が70%以上であり、プローブと目的物質の特異シグナル/非特異シグナルの比が3倍以上であるゾル組成物を選択するステップと、を含む、表面処理されていない基質にプローブを固定するためのゾル−ゲルバイオチップ用のゾル組成物のスクリーニング方法を提供する。
【0017】
また、本発明は、TMOS17.5〜25重量部、MTMS5〜15重量部、GPTMOS2.5〜15重量部、10mMHCl12.5重量部、蒸留水25重量部、10mMナトリウムフォスフェートバッファ(pH5.8)11〜13重量部、及びプローブ溶液10〜15重量部を含有する、表面処理されていないプラズマ処理PMMA基質にプローブを固定するためのゾル−ゲルバイオチップ用のゾル組成物及び表面処理されていないプラズマ処理PMMA基質に前記ゾル組成物が固定されていることを特徴とするゾル−ゲルバイオチップを提供する。
【0018】
さらに、本発明は、TMOS22.5〜25重量部、MTMS7.5〜10重量部、GPTMOS2.5〜5重量部、10mMHCl12.5重量部、蒸留水25重量部、10mMナトリウムフォスフェートバッファ(pH5.8)11〜13重量部、及びプローブ溶液10〜15重量部を含有する、表面処理されていないPMMA基質にプローブを固定するためのゾル−ゲルバイオチップ用のゾル組成物及び表面処理されていないPMMA基質に前記ゾル組成物が固定されていることを特徴とするゾル−ゲルバイオチップを提供する。
【0019】
さらにまた、本発明は、TMOS16.2〜18.7重量部、MTMS3.7〜6.2重量部、GPTMOS13.7〜16.2重量部、粘着剤0.01〜20重量部、10mMHCl12.5重量部、蒸留水23.7〜24.5重量部、10mMナトリウムフォスフェートバッファ(pH5.8)11〜13重量部、及びプローブ溶液10〜15重量部を含有する、表面処理されていないゴールドチップ(Au)にプローブを固定するためのゾル−ゲルバイオチップ用のゾル組成物及び表面処理されていないゴールドチップ(Au)に前記ゾル組成物が固定されていることを特徴とするゾル−ゲルバイオチップを提供する。
【0020】
さらにまた、本発明は、TMOS5〜30重量部、MTMS2〜35重量部、GPTMOS1〜15重量部、粘着剤0.01〜20重量部、10mMHCl12.5重量部、蒸留水23.7〜24.5重量部、10mMナトリウムフォスフェートバッファ(pH5.8)12.5重量部、及びプローブ溶液12.5重量部を含有する、表面処理されていないシリコンウェーハにプローブを固定するためのゾル−ゲルバイオチップ用のゾル組成物及び表面処理されていないシリコンウェーハに前記ゾル組成物が固定されていることを特徴とするゾル−ゲルバイオチップを提供する。
【0021】
本発明の他の特徴及び具現例は、下記の詳細な説明及び特許請求の範囲からなお一層明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明による96ウェルプレート型バイオチップを用いた分析方法を示す図である。
【図2】表面処理していない基質上においてスポットを形成するゾル組成物をスクリーニングする方法を示すフローチャートである。
【図3】前記スクリーニング方法により選択された組成と脱落された組成の例を示す図である。
【図4】HIV抗原タンパク質p24を本発明のスクリーニング過程によって得られたゾル組成物に混合した後、96ウェルプレートに表面処理なしに固定化して、HIV患者の診断に用いた結果を示す図である。
【図5】HCVマーカーを本発明のスクリーニング過程によって得られたゾル組成物に混合した後、96ウェルプレートに表面処理なしに固定化してC型肝炎を診断した結果を示す図である。
【図6】本発明によるゾル混合物が固定されているバイオチップ分析法を用いたC型肝炎の診断結果及び前記結果を定量化ソフトウェアを用いて定量分析したグラフである。
【図7】本発明の方法によりスクリーニングされたゾル混合物を金(Au)基質の上にスポッティングして製作したゴールドチップを示す図である。
【図8】本発明の方法によりスクリーニングされたゾル混合物を半導体基質の上にスポッティングして製作した半導体チップを示す図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
本発明は、一観点において、次のステップを含む、表面処理されていない基質にプローブを固定するためのゾル−ゲルバイオチップ用のゾル組成物のスクリーニング方法に関する:
(a)テトラメチルオルトシリケート(TMOS)、メチルトリメトキシシラン(MTMOS)、テトラエチルオルトシリケート(TEOS)、エチルトリエトキシシラン(ETrEOS)、トリメトキシシラン(TMS)、メチルトリメトキシシリケート(MTMS)及び3−アミノプロピールトリメトキシシリケート(3−ATMS)よりなる群から選ばれるいずれか1種以上のシリケート単量体、及びポリグリセリルシリケート(PGS)、ジグリセリルシラン(DGS)、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(GPTMOS)、(N−トリエトキシシリルプロピル)−O−ポリエチレンオキシドウレタン(PEOU)、グリセロール及び分子量100〜10,000のポリエチレングリコール(PEG)よりなる群から選ばれるいずれか1種以上の添加剤をバッファに種々の割合にて混合したゾル組成物の第1のライブラリーを得るステップと、
(b)前記ゾル組成物の第1のライブラリーを表面処理されていない目的基質にスポッティングするステップと、
(c)前記(b)ステップにおいて形成されたスポットの接着性、外観、透過度及びゲル化にかかる時間を測定して、洗浄後にチップにより直接的に引っ掻いてもスポットが脱落することなく、100〜800μmのスポット径を有しながらも元の形状を維持し、バックグラウンド未満の低い自己蛍光性を有し、チューブ内における4〜48時間及び基質のスポットにおける1〜4時間のゲル化所要時間を有する組成物を選択してゾル組成物の第2のライブラリーを得るステップと、
(d)前記得られたゾル組成物の第2のライブラリーにプローブを混合した後、表面処理されていない基質にスポッティングするステップと、
(e)前記プローブに対するスポットの固定化率及びプローブと目的物質との間の特異性を測定してプローブの固定化率が70%以上であり、プローブと目的物質の特異シグナル/非特異シグナルの割合が3倍以上であるゾル組成物を選択するステップ。
【0024】
本発明において、プローブは、タンパク質、オリゴペプチド、核酸及び低分子物質、微生物、カビ及び漢方薬よりなる群から選ばれるいずれか1種であることを特徴とし、前記表面処理されていない基質は、高分子プレート、金属、シリコンウェーハ、ガラス及びLCDよりなる群から選ばれるいずれか1種であることを特徴としている。
【0025】
本発明は、他の観点において、次の組成を含有する、表面処理されていないプラズマ処理PMMA基質にプローブを固定するためのゾル−ゲルバイオチップ用のゾル組成物及び表面処理されていないプラズマ処理PMMA基質に前記ゾル組成物が固定されていることを特徴とするゾル−ゲルバイオチップに関する:
TMOS 17.5〜25重量部;
MTMS 5〜15重量部;
GPTMOS 2.5〜15重量部;
10mMHCl 12.5重量部;
蒸留水 25重量部;
10mMナトリウムフォスフェートバッファ(pH5.8) 11〜13重量部;
プローブ溶液 10〜15重量部。
【0026】
本発明は、さらに他の観点において、次の組成を含有する、表面処理されていないPMMA基質にプローブを固定するためのゾル−ゲルバイオチップ用のゾル組成物及び表面処理されていないPMMA基質に前記ゾル組成物が固定されていることを特徴とするゾル−ゲルバイオチップに関するものである:
TMOS 22.5〜25重量部;
MTMS 7.5〜10重量部;
GPTMOS 2.5〜5重量部;
10mMHCl 12.5重量部;
蒸留水 25重量部;
10mMナトリウムフォスフェートバッファ(pH5.8) 11〜13重量部;
プローブ溶液 10〜15重量部。
【0027】
前記組成物において、前記プローブはタンパク質であることを特徴とし、前記プローブはHCV抗原であることを特徴とし、前記基質は96ウェルプレートであることを特徴としている。
【0028】
本発明は、さらに他の観点において、次の組成を含有する、表面処理されていないゴールドチップ(Au)にプローブを固定するためのゾル−ゲルバイオチップ用のゾル組成物及び表面処理されていないゴールドチップ(Au)に前記ゾル組成物が固定されていることを特徴とするゾル−ゲルバイオチップに関する:
TMOS 16.2〜18.7重量部;
MTMS 3.7〜6.2重量部;
GPTMOS 13.7〜16.2重量部;
粘着剤 0.01〜20重量部;
10mMHCl 12.5重量部;
蒸留水 23.7〜24.5重量部;
10mMナトリウムフォスフェートバッファ(pH5.8) 11〜13重量部;
プローブ溶液 10〜15重量部。
【0029】
前記組成物において、前記粘着剤は1010及び/または1020であることを特徴とし、前記プローブはタンパク質であることを特徴としている。
【0030】
本発明は、さらに他の観点において、次の組成を含有する、表面処理されていないシリコンウェーハにプローブを固定するためのゾル−ゲルバイオチップ用のゾル組成物及び表面処理されていないシリコンウェーハに前記ゾル組成物が固定されていることを特徴とするゾル−ゲルバイオチップに関する:
TMOS 5〜30重量部;
MTMS 2〜35重量部;
GPTMOS 1〜15重量部;
粘着剤 0.01〜20重量部;
10mMHCl 12.5重量部;
蒸留水 23.7〜24.5重量部;
10mMナトリウムフォスフェートバッファ(pH5.8) 12.5重量部;
プローブ溶液 12.5重量部。
【0031】
本発明において、「表面処理」とは、本発明者らの先行特許(大韓民国特許公開10−2004−0024510)に開示された用語であり、ゾル−ゲルバイオチップに用いられる基質の表面をポリビニールアセテートなどの高分子量の合成コーティング剤を塩化メチレン、テトラヒドロフランなどの有機溶媒に溶解させたコーティング液によりコーティングすることを言う。
【0032】
本発明によるバイオチップに固定可能な生体物質は標的物質と特異的に結合することができて、これらの間の結合を分析可能にするあらゆる物質が使用可能である。好ましくは、DNA、RNAまたはPNAを含む核酸、タンパク質またはオリゴペプチドなどがある。なお、低分子物質及び天然物など種々の化合物質を固定化することもできる。
【0033】
本発明を通じてチップ基質の表面に高密度で集積可能な生体物質のうちタンパク質の非制限的な例としては、HIV p24、Combo、RgpIII、HCV core、NS5、NS3、E1/E2、HBV surface antigen、antibody、IgG-Cy3をはじめとして、感染性疾病診断用の抗原若しくは抗体、またはAFP、PSA、CA1−1、glypecanをはじめとする癌診断用の抗原若しくは抗体、活性測定に用いられる酵素がある。また、タンパク質、抗原、抗体だけではなく、新薬開発に用いられる低分子物質及び自生植物、微生物、カビ、漢方薬などの天然物もゾル組成物に入れて固定化可能である。
【0034】
本発明はスクリーニングにより選択された組成により製造されたゾル混合物を96ウェルプレートタイプ基板を用いてコーティングなしにスポットを固定化するものであり、前記固定化されたバイオチップを新たな機器の導入なしに既存の免疫検査自動化機器を用いて診断検査することができ、その過程を図1に示す。96ウェルプレートの場合にはいかなる製造社製の高分子プレートを用いてもかまわないが、非制限的に、NUNC、SPL社の96ウェルプレートを用いてスポットを固定してチップを製作した。また、自動化機器は、図1に示すように、Abott社製のAxym、Roche社製の機器などと互換的に使用可能である。
【0035】
プロテインチップの場合、スポットの直径は約100〜500μmであることが好ましく、ウェル当たりに1〜1000本のスポットを集積することが好ましい。下記の実施例においては、100スポット/cmのチップを製作しているが、高集積時には1,000スポット/cmまで製作可能である。
【0036】
本発明においてゾル−ゲル反応により製造されたバイオチップの場合、反応時間が長かった免疫診断方法や既存のバイオチップ診断方法に比べて、30分から2時間内に反応結果を得ることができる。
【0037】
本発明により製造されたプロテインチップは、免疫診断方法によるサンドイッチアッセイ方法と同様に抗原を蛍光染色体により標識して診断に用いることができる。このとき、結果を測定するステップにおいて蛍光スキャナーを用い、プログラムによって診断結果を分析して定量化することができる。本発明により製作されたプロテインチップは、非制限的なHIV、HCV、HBVなどの酵素免疫診断方法に代えうるものである。
【0038】
本発明のゾル組成物は溶液状態において生体物質を添加することができるため、タンパク質または低分子物質を高集積することができ、これにより、製造されたバイオチップを用いて高効率のスクリーニング(HTS)が行える。また、ゾル混合物にタンパク質活性測定に用いられる酵素の集積が可能であるため、これにより製造されたバイオチップは酵素活性測定に用いることができる。前記活性測定用の酵素には毒性分析、環境分析、食品菌分析に用いられる酵素がある。このため、本発明による96ウェル型バイオチップは疾病診断に応用することができ、新薬開発の基盤技術だけではなく、環境及び毒性分析に使用可能である。
【0039】
図1は、本発明による96ウェルプレート型バイオチップを用いた分析方法を示すものである。本発明においては、用いられる96ウェルプレートに表面処理なしに安定してゾル組成物を固定化して既存の免疫学的な診断機器を同様に用いて分析することができる。
【0040】
また、本発明によるゾル組成物は既に開発されているバイオセンサーに適用して感度を高めることができる。高分子だけではなく、金をはじめとする金属表面、シリコンをはじめとする半導体表面、透明な高分子表面、鏡をはじめとするガラス表面などに固定化して感度を高めることができる。検出をし易くするために、標的物質には蛍光染料などの信号誘発物質を付着することが好ましい。生体物質と標的物質との間の結合に対する検出は標的物質に付ける信号誘発物質を付着する基板の性質によって、蛍光検出法、電気化学的検出法、質量変化を用いた検出法、電荷量変化を用いた検出法または光学的な性質差を用いた検出法など種々の方法により行うことができる。
【0041】
本発明のゲル組成物を用いると、1ウェルの上に最大1000個以上のスポットに種々のタンパク質、抗原及び抗体だけではなく、低分子物質、バクテリアなどを集積することができる。本発明は代表的に採血時に輸血適合性(感染疾患マーカー、例、HIVI、II、HCV、HBV、マラリア、H.pylori、Syphillisなど)をスクリーニングする血液銀行スクリーニングに利用できるだけではなく、通常の癌の診断マーカーと特定癌の診断マーカーを一括して集積して診断することができる。更に、各種の金属、半導体基板を用いて既存の蛍光ラベルなしに疾病及び菌を検出可能なPOCTなどの製品群を開発することができる。また、環境汚染、特に、水質汚染などに敏感なマーカーを一括して集積して水質汚染を一度に見出すこともできる。
【実施例】
【0042】
以下、実施例を挙げて本発明をより詳細に説明する。但し、これらの実施例は単に本発明を一層詳しく説明するためのものであり、本発明の要旨により本発明の範囲がこれらの実施例に限定されるものではないということは、当業界における通常の知識を有する者にとって明らかである。
【0043】
<実施例1:基質及び生体物質に特異的であり、且つ、基質上に直接的に固定可能なゾル組成物のスクリーニング>
表面処理していない基質に直接的に固定しても強い洗浄に耐えながらバイオチップとして製作時に優れた物理的特性を有するゾル−ゲル組成物を本発明のスクリーニング方法(図2)により素早く選別した。図2は、表面処理していない基質上にスポットを形成するゾル組成物をスクリーニングする方法を示すフローチャートであり、図3は、前記スクリーニングにおいて選択された組成と脱落された組成の例を示すものである。脱落された組成は表面処理なしではタンパク質などバイオ物質を固定化することができず、洗浄過程において全て脱落していることが分かる。
【0044】
まず、シリケート単量体をベースとする約100,000の組成のゾル組成物のうち前記ゾル組成物を基質にスポッティングしたとき、分析過程の洗浄に耐えうる強い接着性、スポットの形状を一定に維持可能な物性、ゲル化にかかる時間、光学的透明性、低い自己蛍光性を測定して、洗浄後にチップにより直接的に引っ掻いてもスポットが脱落することなく、100〜800μmのスポット直径を有しながら元の形状を維持し、バックグラウンド未満の低い自己蛍光性を有し、チューブ内における4〜48時間及び基質のスポットにおける1〜4時間のゲル化所要時間を有する、合計で700種類のゾル組成物を1次スクリーニングした。
【0045】
前記700種類のゾル組成物のうち、生体物質の固定化収率、免疫判読時の感度などを考慮して、プローブの固定化率が70%以上であり、プローブと目的物質の特異シグナル/非特異シグナルの割合が3倍以上である組成物を選択した。
【0046】
最終的に、生体物質が低分子物質、タンパク質及び抗体である場合、それぞれ組成2種類、組成7種類の及び組成8種類の組成物を得た。
【0047】
本発明によるゾル組成物のスクリーニング方法をより具体的に説明する。
【0048】
ゾル組成物の1次スクリーニング
シリケート単量体(TMOS、MTMOS、TEOS、TrEOS、TMS、MTMS及び3−ATMS)、中間体(PGS及びDGS)及び添加剤(GPTMOS、PEOU、グリセロール、PEG200、PEG400及びPEG8000)を10mMHCl溶液に種々の組成により添加した。最終的に、各組成に他のpH(4−9)、濃度(0−500mM)及び塩(カリウム及びアンモニウム)を有するバッファを添加した。その結果、100,000個以上の組成が得られ、これらの組成を市販中のPMMA(ポリメチルメタクリレート)プレートに集積し、接着性、スポットの外観、ゲル化時間、透過度及びバックグラウンドなどを試験した。
【0049】
接着性は、洗浄後のスポットの激しいスクラッチにより試験し、激しい洗浄(10%Tweenを含む1XPBSを用いて1200rpmにおいて5分間3回洗浄)後、チップにより直接的に引っ掻いてもスポットが脱落しない組成を選択した。スポットの外観は光学顕微鏡により直接的に観察して円形を維持し、スポット直径が100〜800μmであるものを選択した。ゲル化にかかる時間はチューブ及びスポット上の両方において測定し、チューブ内において4時間以上、スポットにおいて1時間以上のゲル化時間を示す組成を選択した。光学透過率はレーザースキャナーを用いてバックグラウンドよりも低い自己蛍光性を有すると認められた組成を選択した(GenePix 4100, Axon Instrument)。
【0050】
最適組成の選択
前記1次スクリーニング組成物を用いて、洗浄過程の前後に各組成のスポット固定化率をCy−3により標識された固定化されたペプチド、BSAタンパク質及び抗体の信号を比較して測定した。活性分析のために、前記1次スクリーニング組成物にBSAタンパク質(500ng/μL)を添加し、最終混合液をタンパク質と共にPMMAスライド型プレートに集積した。前記スライドをCy−3により標識されたBSA抗体(Sigma)と30分間反応させた後、反応の終わったスライドを洗浄溶液(1×PBS、0.1%Tween(Sigma))により激しく洗浄した後に乾燥した。シグナルの感度を分析するために、前記スライドのスポットをスキャンし、GenePix Pro4.0ソフトウェア(Axon Instrument)を用いてシグナル値に対するバックグラウンド値を定量してシグナルの感度を分析した。
【0051】
その結果、表1に示すように、前記1次スクリーニングゾル組成物のうち2つの組成物において混合された低分子物質に対して70%以上の固定化率を示し、7個の組成物において混合されたタンパク質に対して80%以上の固定化率を示し、8個の組成物において抗体に対して約90%の固定化率を示している。
【0052】
【表1】

【0053】
表面分析
スポットの表面はSEM(S−4800SEM、Hitachi Co.)を用いて観察した。SEM観察のために伝導性コーティングはスポットが完全にゲル化された後、イリジウムターゲット(〜20nmの厚さ)によりイオンビームスパッターコーターを用いて行った。気孔の孔径はイメージ分析ソフトウェア(Image-Pro Plus, MediaCybernetics)を用いて測定した。気孔の数は9個の異なるエリア(576nm×430nm)を測定し、平均気孔密度は[Σ気孔面積]/[全体の面積(576nm×430nm)]として計算した。
【0054】
溶液内における内部スポットの分析
内部スポットイメージはTappingModeTM AFM(MultiMode SPM, Nanoscope IIIa, Vecco Instrument)を用いて大気中において測定した。スポットの切断は垂直マイクロトームを用いて行った。
【0055】
スポットスキャンプロファイルの分析
スポットイメージは共焦点レーザースキャン顕微鏡(LSM 5 pascal, Carl Zeiss Inc.)を用いて標準反射形態を通じて測定した。スポットの中央に対するスキャンプロファイルは厚さが63μm以下、直径が380μm以下と測定された。
【0056】
免疫分析後のスポット内部のタンパク質と抗体の分布を測定するために、CLSM(LSM 5 pascal, Carl Zeiss Inc.)により内部スポットの垂直断層撮影イメージを撮影した。ステッピングモーターを用いたz軸の最大解像度は50nmであり、スキャンモジュールを用いたxy軸の最大解像度は×100及び×40であった。CLSMを撮影するために、まず、p24タンパク質を含むマイクロスポットをガラススライドに集積し、前記p24タンパク質を含むスポットが集積されたスライドをp24抗体と1時間かけて反応させた後、激しく洗浄した。その後、Cy3により標識された2次抗体と30分かけて反応させた後、洗浄し且つ乾燥して、CLSMイメージを撮影した。
【0057】
プローブと目的物質との間の特異性及び活性測定
ゾル−ゲル基質上においてタンパク質−タンパク質相互作用の特異性と活性を測定するために、HIV抗原タンパク質であるp24タンパク質を表2の組成IVのゾル組成物と混合して固定化した。p24タンパク質に対応するHIV抗体を含む血清の順次的希釈液により免疫分析を行った。同時に、HIV抗体の非特異吸着を確認するために、BSAタンパク質はゾル−ゲル基質内において同じチップに固定した。タンパク質が添加されていないゾル組成物のスポットと関連性のないタンパク質(4−1BB)を反応させたときに発生する非特異的な相互作用は極めて低く現れた。しかしながら、BSAまたは4−1BB抗原に対するBSAまたは4−1BB抗体とは正確なスポットにおいて特異的な相互作用を示した。
【0058】
表2には、本発明によりスクリーニングされた7種類のタンパク質固定化用のゾル組成物の性質を示す。組成0はTMOSとMTMSのみよりなる比較組成物である。
【0059】
【表2】

【0060】
タンパク質固定化に用いられる前記7種類の組成のうち、組成IVがシグナル及びシグナル/バックグラウンドの割合において最も良好な結果を示した。前記組成IVは他の組成と比較したとき、低いTMOS比を有し、高い分子量のPEGが添加された組成であり、高い気孔密度と非特異的な抗体含有率が低かった。
【0061】
<実施例2:96ウェルプレート上に固定されたゾル−ゲルプロテインチップスポットの固定化を通じての酵素免疫学的疾病の診断>
この実施例においては実施例1において選定されたゾル組成物を肝炎診断に用いて現在用いられている肝炎診断用のELISA自動診断プロセスを用いて測定した。前記自動診断プロセスは激しい洗浄過程を含んでいるため、前記スクリーニングされた組成のうちスポットが強い接着性を示し、洗浄後にもスポット特有の円形を維持可能な組成を用いた。この実施例において用いたゾル組成は形成されたスポットがAbbott Axsym及びRoche Elecsys機構を用いた物理的なスクラッチにも耐えうるように最適化した。
【0062】
この実施例においては、このような過程によって選択された組成のうち、96ウェルプレートの材質がプラズマ処理されたPMMAである場合に、固定化されるゾル組成物とタンパク質溶液の混合物の割合はTMOS17.5〜25重量部、MTMS5〜15重量部、GPTMOS2.5〜15重量部、10mMHCl12.5重量部、蒸留水25重量部、10mMナトリウムフォスフェートバッファ(pH5.8)12.5重量部、及びタンパク質溶液12.5重量部であった。
【0063】
17.5〜25重量部範囲を超えるTMOSを含有する組成物の場合には気孔密度が低すぎ、気孔の孔径が小さくて標的物質の固定化率が低く、前記範囲未満のTMOSを含有する場合には気孔密度が高すぎ、孔径が大きくて標的物質が固定化できなかった。5〜15重量部範囲を超えるMTMSを含有する組成物の場合には気孔密度が低すぎ、気孔の孔径が小さくて標的物質の固定化率が低く、前記範囲未満のMTMSを含有する場合には気孔密度が高すぎ、孔径が大きくて標的物質が固定化できなかった。2.5〜15重量部を超えるGPTMOSを含有する組成物の場合にはスポットの吸着力が高くて非特異的な反応が頻繁に起こり、前記範囲未満のGPTMOSを含有する場合には気孔の孔径が大きくて標的物質の固定化が容易ではなかった。
【0064】
タンパク質溶液としては、HIV抗原であるP24タンパク質を用いて96ウェルプレート上にゾル−ゲルスポットを集積した。その結果、図4に示すように、HIVp24タンパク質にのみ特異的に反応することが分かり、図示の4個のサンプルは全てHIV陽性であった。前記ゾル−ゲル混合物を用いて前記プラズマ処理されたPMMA材質の96ウェルプレート上にタンパク質を強く3次元的に固定化することができ、前記バイオチップを用いて既存の診断の自動化機器及びアッセイ方法を活用して抗原−抗体反応の結果を確認することができた。
【0065】
また、プラズマ処理していない市販中のPMMA材質の96ウェルプレートに固定化されるゾル組成物とタンパク質溶液の混合物の割合は全体の混合物のうちTMOS22.5〜25重量部、MTMS7.5〜10重量部、GPTMOS2.5〜5重量部、10mMHCl12.5重量部、蒸留水25重量部、10mMナトリウムフォスフェートバッファ(pH5.8)12.5重量部、及びタンパク質溶液12.5重量部であった。
【0066】
22.5〜25重量部範囲を超えるTMOSを含有する組成物の場合には気孔密度が低すぎ、気孔の孔径が小さくて標的物質の固定化率が低く、前記範囲未満のTMOSを含有する場合には気孔密度が高すぎ、孔径が大きくて標的物質が固定化できなかった。7.5〜10重量部範囲を超えるMTMSを含有する組成物の場合には気孔密度が低すぎ、気孔の孔径が小さくて標的物質の固定化率が低く、前記範囲未満のMTMSを含有する場合には気孔密度が高すぎ、孔径が大きくて標的物質が固定化できなかった。2.5〜5重量部を超えるGPTMOSを含有する組成物の場合にはスポットの吸着力が高くて非特異的な反応が頻繁に起こり、前記範囲未満のGPTMOSを含有する場合には気孔の孔径が大きくて標的物質の固定化が容易ではなかった。
【0067】
前記最適化された組成物とHCV抗原を混合してプラズマ処理していないPMMA材質の96ウェルプレートに集積させたバイオチップを用いてRoche HCV EIAキットにより79名の患者(陰性25名、陽性54名)を対象として試験した。図5は、患者12名の血液分析結果を示すものである。その結果、既存のELISA方法を用いた結果と100%一致し、本発明のバイオチップが高い結果の再生性を有することが分かった。本発明によるバイオチップは高い遂行能力、高い感度、多い処理量及び高い正確性を有し、安価で測定可能であるために既存のELISA診断方法に代えうるものであることが分かった。また、既存の免疫診断よりも多量のタンパク質を固定化することにより既存の診断法よりも偽陽性を低減することができ、正確な肝炎診断を行うことができた。
【0068】
また、本発明のバイオチップを用いて定量的な分析を行うことができるかどうかを調べるために、患者検体の連続した希釈によって検出限界及び定量範囲実験を行った(図6)。その結果、定量的な分布を示すことを確認した。この結果から、本発明によるバイオチップを用いる場合、既存の免疫診断法において測定できなかった定量的な分析も行うことができるということを確認することができた。
【0069】
<実施例3:ゴールドチップ基質を用いたバイオチップの製作及び分析>
この実施例においてはSPRiシステムに用いられるゴールド(Au)チップを用いて実施例1の方法と同様にしてゴールドチップ基質に固定化されるゾル組成を見出した。ゴールドチップの場合、固定化されるゾル組成に添加剤として粘着剤(1010、1020;LG化学、大韓民国)を添加した。ゾル混合物はスポッティングされた後、ガラスのように透明で且つ気孔を有する物質から変形されるが、Auにより表面がコーティングされたゴールドチップの上には固定化が起こらなかった。この実施例においては、ゴールドチップの表面にゾルスポットを固定するために添加剤を用い、用いたゾル混合物の組成はTMOS16.2〜18.7重量部、MTMS3.7〜6.2重量部、GPTMOS13.7〜16.2重量部、粘着剤(1010、1020など)、0.01〜20重量部、10mMHCl12.5重量部、蒸留水23.7〜24.5重量部、10mMナトリウムフォスフェートバッファ(pH5.8)12.5重量部、及びタンパク質溶液12.5重量部であった。
【0070】
16.2〜18.7重量部範囲を超えるTMOSを含有する組成物の場合には気孔密度が低すぎ、気孔の孔径が小さくて標的物質の固定化率が低く、前記範囲未満のTMOSを含有する場合には気孔密度が高すぎ、孔径が大きくて標的物質が固定化できなかった。3.7〜6.2重量部範囲を超えるMTMSを含有する組成物の場合には気孔密度が低すぎ、気孔の孔径が小さくて標的物質の固定化率が低く、前記範囲未満のMTMSを含有する場合には気孔密度が高すぎ、孔径が大きくて標的物質が固定化できなかった。13.7〜16.2重量部を超えるGPTMOSを含有する組成物の場合にはスポットの吸着力が高くて非特異的な反応が頻繁に起こり、前記範囲未満のGPTMOSを含有する場合には気孔の孔径が大きくて標的物質の固定化が容易ではなかった。
【0071】
前記混合物をゴールドチップの上に実施例2及び3の方法と同様にしてスポッティングした後、p24タンパク質に対するアッセイを行った。ゴールドチップアッセイと前記96ウェルプレートに固定されたバイオチップのアッセイとの相違点は、抗体反応時に1次抗体反応を行い、蛍光標識された2次反応なしに結果を検出することができるということである。1次反応させたゴールドチップの結果はSPRシステムを用いて反応時に発生する共鳴変化により測定してイメージ化することにより判読することができた(図7)。前記ゴールドチップは多量のタンパク質を固定化することができ、化学標識なしに直接的にタンパク質−タンパク質の結合を検出することができて高い感度を有する。
【0072】
<実施例4:半導体チップ上におけるスポットの固定化及び電気化学的検出>
この実施例は電気化学的測定に用いられる半導体チップの両極の間に伝導性を有するゾル混合物を固定化してその間にできた反応前後の電気的な抵抗差を測定して反応をモニターリングするシステムに関する。用いた金属表面はシリコンウェーハであって電極に最も多用されるものであるが、表面が極めて均一で且つ平滑であるために従来は、表面処理なしに高分子物質を付着することが困難であった。しかしながら、実施例1の方法により電極に固定化されるゾル組成物をスクリーニングし、前記ゾル組成物とタンパク質p24を混合して半導体ウェーハの上に固定化した。
【0073】
この実施例において用いられた半導体チップ用のゾル組成物の組成は、TMOS5〜30重量部、MTMS2〜35重量部、GPTMOS1〜15重量部、粘着剤0.01〜20重量部10mMHCl12.5重量部、蒸留水23.7〜24.5重量部、10mMナトリウムフォスフェートバッファ(pH5.8)12.5重量部、及びプローブ溶液12.5重量部であった。
【0074】
前記ゾル組成物とタンパク質p24が固定されている半導体チップを用いて反応前後の電気的な抵抗差を電気化学的な測定法により測定した結果、図8に示すように、感度がかなり向上しただけではなく、バックグラウンドのノイズの割合を低減できることを確認することができた。このため、この実施例による半導体チップは安価で且つ小型のバイオチップ分析システムの製作に有用である。
【産業上の利用可能性】
【0075】
以上述べたように、本発明は、表面処理されていない基質にプローブを固定するためのゾル−ゲルバイオチップ用のゾル組成物のスクリーニング方法を提供する効果がある。また、本発明は、前記方法によりスクリーニングされたPMMA基質、ゴールド及びシリコンウェーハ基質用のゾル組成物及び前記ゾル組成物を用いて製造されたゾル−ゲルバイオチップを提供する効果がある。本発明によるバイオチップはバイオアッセイに広く用いられる96ウェルプレートに生体物質が含有されたゲル状のスポットを直接的に固定して既存の反応システム及び分析システムを利用することができ、便利で且つ経済的であり、固定された生体物質の変形が少なくて優れた分析結果が得られる。特に、蛍光分析の他にプローブのない分析方法を用いる場合、既存の分析方法の問題であった感度問題を3次元ゾル−ゲルスポットを強く結合することにより解決することができ、POCTなどの技術開発に有用であることが期待される。
【0076】
以上、本発明の内容の特定の部分を詳述したが、当業界における通常の知識を有する者にとって、このような具体的な記述は単なる好適な実施様態に過ぎず、これにより本発明の範囲が制限されることはないという点は明らかであろう。よって、本発明の実質的な範囲は特許請求の範囲とこれらの等価物により定まると言えるであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次のステップを含む表面処理されていない基質にプローブを固定するためのゾル−ゲルバイオチップ用のゾル組成物のスクリーニング方法:
(a)テトラメチルオルトシリケート(TMOS)、メチルトリメトキシシラン(MTMOS)、テトラエチルオルトシリケート(TEOS)、エチルトリエトキシシラン(ETrEOS)、トリメトキシシラン(TMS)、メチルトリメトキシシリケート(MTMS)及び3−アミノプロピールトリメトキシシリケート(3−ATMS)よりなる群から選ばれるいずれか1種以上のシリケート単量体、及びポリグリセリルシリケート(PGS)、ジグリセリルシラン(DGS)、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(GPTMOS)、(N−トリエトキシシリルプロピル)−O−ポリエチレンオキシドウレタン(PEOU)、グリセロール及び分子量100〜10,000のポリエチレングリコール(PEG)よりなる群から選ばれるいずれか1種以上の添加剤をバッファに種々の割合にて混合したゾル組成物の第1のライブラリーを得るステップ;
(b)前記ゾル組成物の第1のライブラリーを表面処理されていない目的基質にスポッティングするステップ;
(c)前記(b)ステップにおいて形成されたスポットの接着性、外観、透過度及びゲル化にかかる時間を測定して、洗浄後にチップにより直接的に引っ掻いてもスポットが脱落することなく、100〜800μmのスポット径を有しながらも元の形状を維持し、バックグラウンド未満の低い自己蛍光性を有し、チューブ内における4〜48時間及び基質のスポットにおける1〜4時間のゲル化所要時間を有する組成物を選択してゾル組成物の第2のライブラリーを得るステップ;及び
(d)前記得られたゾル組成物の第2のライブラリーにプローブを混合した後、表面処理されていない基質にスポッティングするステップ;及び
(e)前記プローブに対するスポットの固定化率及びプローブと目的物質との間の特異性を測定して、プローブの固定化率が70%以上であり、プローブと目的物質の特異シグナル/非特異シグナルの比が3倍以上であるゾル組成物を選択するステップ。
【請求項2】
前記標識物質は抗原、タンパク質、オリゴペプチド、核酸及び低分子物質、微生物、カビ及び漢方薬よりなる群から選ばれるいずれか1種であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記表面処理されていない基質は高分子プレート、金属、シリコンウェーハ、ガラス及びLCDよりなる群から選ばれるいずれか1種であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
次の成分を含有する、PMMA基質にプローブを固定するためのゾル−ゲルバイオチップ用のゾル組成物:
TMOS 17.5〜25重量部;
MTMS 5〜15重量部;
GPTMOS 2.5〜15重量部;
10mMHCl 12.5重量部;
蒸留水 25重量部;
10mMナトリウムフォスフェートバッファ(pH5.8) 11〜13重量部;及び
プローブ溶液 10〜15重量部。
【請求項5】
前記プローブはタンパク質であることを特徴とする請求項4に記載のゾル組成物。
【請求項6】
PMMA基質に請求項4又は5に記載のゾル組成物が固定されていることを特徴とするゾル−ゲルバイオチップ。
【請求項7】
次の成分を含有する、PMMA基質にプローブを固定するためのゾル−ゲルバイオチップ用のゾル組成物:
TMOS 22.5〜25重量部;
MTMS 7.5〜10重量部;
GPTMOS 2.5〜5重量部;
10mMHCl 12.5重量部;
蒸留水 25重量部;
10mMナトリウムフォスフェートバッファ(pH5.8) 11〜13重量部;及び
プローブ溶液 10〜15重量部。
【請求項8】
前記プローブはタンパク質であることを特徴とする請求項7に記載のゾル組成物。
【請求項9】
前記プローブはHCV抗原であることを特徴とする請求項8に記載のゾル組成物。
【請求項10】
PMMA基質に請求項7又は8に記載のゾル組成物が固定されていることを特徴とするゾル−ゲルバイオチップ。
【請求項11】
前記基質は96ウェルプレートであることを特徴とする請求項10に記載のゾル−ゲルバイオチップ。
【請求項12】
次の成分を含有する、表面処理されていないゴールドチップ(Au)にプローブを固定するためのゾル−ゲルバイオチップ用のゾル組成物:
TMOS 16.2〜18.7重量部;
MTMS 3.7〜6.2重量部;
GPTMOS 13.7〜16.2重量部;
粘着剤 0.01〜20重量部;
10mMHCl 12.5重量部;
蒸留水 23.7〜24.5重量部;
10mMナトリウムフォスフェートバッファ(pH5.8) 11〜13重量部;及び
プローブ溶液 10〜15重量部。
【請求項13】
前記粘着剤は1010及び/または1020であることを特徴とする請求項12に記載のゾル組成物。
【請求項14】
前記プローブはタンパク質であることを特徴とする請求項12に記載のゾル組成物。
【請求項15】
表面処理されていないゴールドチップ(Au)に請求項12〜14のいずれか一項に記載のゾル組成物が固定されていることを特徴とするゾル−ゲルバイオチップ。
【請求項16】
次の成分を含む、表面処理されていないシリコンウェーハにプローブを固定するためのゾル−ゲルバイオチップ用のゾル組成物:
TMOS 5〜30重量部;
MTMS 2〜35重量部;
GPTMOS 1〜15重量部;
粘着剤 0.01〜20重量部;
10mMHCl 12.5重量部;
蒸留水 23.7〜24.5重量部;
10mMナトリウムフォスフェートバッファ(pH5.8) 12.5重量部;及び
プローブ溶液 12.5重量部。
【請求項17】
前記プローブはタンパク質であることを特徴とする請求項16に記載のゾル組成物。
【請求項18】
表面処理されていないシリコンウェーハに請求項16又は17に記載のゾル組成物が固定されていることを特徴とするゾル−ゲルバイオチップ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2009−524819(P2009−524819A)
【公表日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−552223(P2008−552223)
【出願日】平成19年1月23日(2007.1.23)
【国際出願番号】PCT/KR2007/000390
【国際公開番号】WO2007/086671
【国際公開日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【出願人】(508226218)
【Fターム(参考)】