説明

表面処理亜鉛系めっき鋼板の製造方法

【課題】汎用クロメート処理亜鉛系めっき鋼板と同等の耐食性と導電性を共に有し、しかも加工性にも優れたクロムフリーの表面処理亜鉛系めっき鋼板の製造方法を提供する。
【解決手段】亜鉛系めっき鋼板を、金属塩と該金属塩の1〜50質量%の樹脂とを含み、かつpHが1〜4および遊離酸度が0.1規定水酸化ナトリウム換算で3〜20である処理液で処理し、金属塩の量として0.05〜3.0g/m2の固形物を付着させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、表面処理亜鉛系めっき鋼板の製造方法に関するものであり、特にクロムおよびクロム化合物を含まない処理液を用いて製造され、クロメート処理鋼板に匹敵する耐食性、導電性および加工性を有する表面処理亜鉛系めっき鋼板の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
亜鉛めっき鋼板は、建材、自動車、家電品などに幅広く利用されている。特に、耐食性が必要な自動車、家電品、複写機およびその内部に使用するモーター製品には、亜鉛めっき鋼板の上に、耐食性向上の目的でクロメート処理を施した表面処理鋼板が広く用いられてきた。クロメートには、その自己修復作用により、亜鉛めっき鋼板の耐食性を向上させる効果がある。しかし、クロメート処理を行うには、水質汚染防止法に規定される特別な排水処理を行う必要があり、コストアップの原因となる短所を有している。このため、鋼板、特に亜鉛系めっき鋼板の白錆の発生を防止するために、クロムを用いない表面処理技術が求められている。
【0003】
また、近年、パソコンおよび複写機などの事務機器や、エアコンなどの家電製品およびこれらに使用されるモーター等の部品においても、クロムを含有せず、耐食性を有し、さらに表面電気抵抗の小さい表面処理鋼板が求められている。なぜなら、表面電気抵抗が小さい鋼板、すなわち導電性が良好な鋼板は、電磁波によるノイズの漏洩を防止する効果があるためである。従って、かような用途においては、耐食性と導電性とを両立することが重要である。
このような観点から、クロムやクロム化合物を用いない表面処理技術が数多く提案されている。
【0004】
すなわち、特許文献1には、(a)少なくとも4個のフッ素原子と、チタンやジルコニウムなどの少なくとも1個の元素とからなる陰イオン成分(例えば、TiF62-で示されるフルオロチタン酸)、(b)コバルトおよびマグネシウムなどの陽イオン成分、(c)pH調節のための遊離酸および(d)有機樹脂を含有する、クロムを含有しない組成物による金属の表面処理技術が提案されている。以下、クロムやクロム化合物を含有しないことを「クロムフリー」とも呼ぶ。
【0005】
特許文献2には、(a)Alのりん酸化合物、(b)Mn、Mg、Ca、Sr化合物の1種あるいは2種以上、(c)SiO2、水系有機樹脂エマルジョンを含有する、クロムフリーの金属の表面処理組成物が提案されている。
【0006】
特許文献3には、(a)ポリヒドロキシエーテルセグメントと不飽和単量体の共重合体セグメントとを有する樹脂、(b)りん酸および(c)カルシウム、コバルト、鉄、マンガン、亜鉛などの金属のりん酸塩を含有する、クロムフリーの金属の表面処理剤組成物が提案されている。
【0007】
特許文献4には、(a)Al(C5H7O23、 V(C5H7O23、VO(C5H7O22、Zn(C5H7O2)2およびZr(C5H702)2から成る群から選ばれた少なくとも1種の金属アセチルアセネート、(b)水溶性無機チタン化合物および水溶性無機ジルコニュウム化合物から選ばれた少なくとも1種の化合物を有することを特徴とする、金属表面処理液が提案されている。
【0008】
特許文献5には、(a)チオカルボニル基含有化合物、(b)りん酸イオンおよび(c)水分散性シリカ、加水分解縮合物を含有する、水性防錆コーティング剤を亜鉛被覆鋼にコーティングする方法が提案されている。
【0009】
前記の特許文献1〜4の方法において、金属板に十分な付着量の表面処理剤(被覆剤、コーティング剤)を被覆した場合、すなわち、十分な厚さの被膜を施した場合には、まずまずの耐食性が得られる。しかし、金属板の凸部などの一部が露出するような被膜が施されていたり、膜厚が薄過ぎる場合には、耐食性が極めて不十分であった。つまり、金属板に対する表面処理剤の被覆率が100%の場合にのみ、耐食性があるが、被覆率が100%未満の場合には耐食性が不十分であった。一方、これら表面処理剤には、導電性物質が含まれていないため、これを全面的に厚く被覆すると、導電性は低下する不利がある。この導電性を上げようと被膜の膜厚を薄くすると、耐食性が劣化するという問題が浮上する。
【0010】
また、前記特許文献5の方法におけるチオカルボニル基含有化合物のような硫化物は、亜鉛などの金属表面に吸着しやすく、さらにチオカルボニル基は、りん酸イオンとの相乗作用により、コーティング時に活性な亜鉛表面のサイトに吸着されて防錆効果を発揮する。この表面処理方法で得られた亜鉛系めっき鋼板は、表面を−NCS、−OCS基を有する層により被覆されると高耐食性を有するが、この層は導電性がないことが問題である。また、導電性を確保するために、被膜の膜厚を薄くすると、チオカルボニル其含有化合物で被覆されていない部分が出現し、発錆の原因になる。すなわち、この方法でも、耐食性と導電性を両立させることができないのである。
【0011】
さらに、前記特許文献1〜5の従来技術は、いずれも金属表面と表面処理剤が形成する被膜とを界面で強固に付着させる発想に基づく技術である。微視的に捕らえれば、金属表面と表面処理剤とは完全には密着し得ないため、付着性向上には限界があった。したがって、このような従来の技術においては、耐食性向上には、密着性ではなく、表面処理剤による被膜の緻密性向上が重要であるところ、上記した従来のクロムを用いない技術では、その点は何ら考慮されていない。
【特許文献1】特開平5-195244号公報
【特許文献2】特開平11-35O157号公報
【特許文献3】特開平11-50010号公報
【特許文献4】特開2000-199077号公報
【特許文献5】特開2001-164182号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
この発明は、汎用クロメート処理亜鉛系めっき鋼板と同等の耐食性と導電性を共に有し、しかも加工性にも優れたクロムフリーの表面処理亜鉛系めっき鋼板の製造方法を提供することを目的とする。特に、耐食性については、平板部耐食性と加工後耐食性の両者とも満足することを目標とする。
【0013】
また、この発明の他の目的は、クロムやクロム化合物を用いず表面処理液の被覆工程および得られた表面処理材の使用の際に特別な排水処理を不要とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
発明者らは、前記目的を達成するための手段について鋭意検討した結果、亜鉛系めっき鋼板の表面に、クロメート被覆することなく、樹脂と金属塩とを含有する表面処理液を塗布することにより、特に耐食性および導電性に優れ、しかもプレス成形性および加工後耐食性にも優れた被膜を形成できることを見出し、この発明を完成するに至った。
【0015】
すなわち、この発明の要旨構成は、次のとおりである。
(1)亜鉛系めっき鋼板を、金属塩と該金属塩の1〜50質量%の樹脂とを含み、かつpHが1〜4および遊離酸度が0.1規定水酸化ナトリウム換算で3〜20である処理液で処理し、金属塩の量として0.05〜3.0g/m2の固形物を付着させることを特徴とする表面処理亜鉛系めっき鋼板の製造方法。
【0016】
(2)上記(1)において、前記処理液がさらに潤滑剤を含むことを特徴とする表面処理亜鉛系めっき鋼板の製造方法。
【0017】
(3)上記(1)または(2)において、前記金属塩は、Al,Mn,Mg,VおよびZnから選ばれる少なくとも1種または2種以上の金属の、りん酸塩、硝酸塩、炭酸塩、硫酸塩、酢酸塩および水酸化物からなる群より選ばれる1種又は2種以上であることを特徴とする表面処理亜鉛系めっき鋼板の製造方法。
【0018】
(4)上記(1)、(2)または(3)において、処理液の適用は、亜鉛系めっき鋼板の表面に前記処理液を塗装する工程と、次いで該処理液を塗装した部分を加熱して乾燥する工程と、から成ることを特徴とする表面処理亜鉛系めっき鋼板の製造方法。
【発明の効果】
【0019】
この発明により、汎用のクロメート処理亜鉛系めっき鋼板に匹敵する優れた平板部耐食性、加工後耐食性、導電性および加工性を兼備するクロムフリーの表面処理亜鉛系めっき鋼板が得られる。また、本発明の方法では、クロムやクロム化合物を用いないので、表面処理液の被覆工程や該鋼板の使用に際しても特別な排水処理なども不要である。したがって、環境汚染への特別な配慮もなく、従来の自動車分野や家電製品分野で使用されているクロメート処理鋼板に代えて広い分野で利用できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、この発明が対象とする表面処理亜鉛系めっき鋼板について、詳細に説明する。
まず、表面処理を施す亜鉛系めっき鋼板は、電気亜鉛めっき鋼板、電気亜鉛−ニッケルめっき鋼板、溶融亜鉛めっき鋼板、亜鉛−アルミ溶融めっき鋼板などであり、亜鉛を含有するめっきが施された鋼板であれば特に制限されることはない。
【0021】
この発明の表面処理亜鉛系めっき鋼板は、上記の亜鉛系めっき鋼板のめっき層表面に、金属塩と亜鉛系のめっき金属との反応物および樹脂を含む表面処理被膜を有する。
この表面処理被膜は、鋼板表面に施した亜鉛系めっき層の表層部のめっき金属と金属塩との反応物を主体として含み、この反応物は、強力なイオン結合、すなわち金属塩の解離イオンとめっき層中の金属イオンとの結合により、亜鉛系めっき層との間で強固な密着状態を形成する結果、優れた耐食性を有するものとなっている。
【0022】
かかる強固な密着状態を達成するために、この反応物を主体として有する層は、表面処理被膜において0.02〜3μmの厚さを有する必要がある。すなわち、この層の厚さが0.02μm未満であると、亜鉛めっき層と表面処理被膜との結合が不十分になって、耐食性が劣化する。一方、3μmを超えると、曲げ加工などの加工を行った際に、反応物が主体の層において剥離が生じ易くなり、表面処理被膜の密着性が劣化するためプレス成形性が悪化する。特に、加工後の外観が低下する。
【0023】
ちなみに、金属塩とめっき金属との反応物を主体とする層は、金属塩の解離イオンがめっき層の表面から内部へと侵入してめっき金属と反応することにより形成されるから、その厚さは、金属塩の解離イオンがめっき層表面(反応物を有する層が形成される前のめっき層表面)からめっき層内部へ侵入した深さと同等である。よって、この反応物を有する層の厚さは、例えばGDS(Glow Discharge Spectroscopy:グロー放電分光法)等を用いた金属塩成分の深さ方向分析により測定することができる。
【0024】
この金属塩としては、Al、Mn、Mg、VおよびZnから選ばれる1種または2種以上の金属の、りん酸塩、硝酸塩、炭酸塩、硫酸塩、酢酸塩および水酸化物からなる群より選ばれる1種又は2種以上を用いることが好ましい。より好ましくは、Mg、MnおよびVの金属の無機塩と、亜鉛の無機塩とを併用、あるいはMg,MnおよびVの金属の水酸化物と、亜鉛の水酸化物とを併用するとよい。
【0025】
ここで、この発明において、“金属塩”とは、金属と酸との反応生成物のみならず、金属水酸化物も含むものとする。ちなみに、金属塩のほとんどが導電性を有している。
【0026】
さらに、表面処理被膜は、金属塩および亜鉛系のめっき金属との反応物のほか、樹脂を含むことを特徴とする。ここで、樹脂は、金属塩と亜鉛系めっき金属との反応物を主体として有する層と完全に分離して層を形成しているのではなく、この反応物を主体として有する層中に所定量の樹脂が存在している必要がある。金属塩と亜鉛系めっき金属が反応して強固に結合している層中に樹脂が存在することにより、樹脂と亜鉛めっき層との密着性も強固なものとなり、鋼板を加工した後にも表面処理被膜の剥離が生じないため、加工後外観は良好なものとなる。なお、めっき金属には、加熱処理等によりめっき層中に拡散した鋼板の成分元素類も含まれる。
【0027】
すなわち、本発明に従う表面処理被膜では、金属塩とめっき金属との反応物と、樹脂とが明確な境界をもって積層しているわけではなく、金属塩とめっき金属との反応物を主体として有する層中に、樹脂が層厚方向に徐々に濃度を高めるような濃度分布を持って存在している。つまり、樹脂はめっき層側からその比率を徐々に増大させながら、金属塩と亜鉛系めっき金属との反応物と共存している状態である。
【0028】
図1に、MgおよびMnの各リン酸塩と、樹脂(ポリエチレン樹脂エマルション)とを、樹脂/金属塩=0.1として混合した表面処理液を、電気亜鉛めっき鋼板に塗布して乾燥させて表面処理被膜を形成させた本発明の表面処理亜鉛系めっき鋼板について、GDSを用いて表面からの金属塩の金属成分(Mg,Mn)と樹脂成分(C)とめっき金属(Zn)の深さ方向分析を実施し、各深さでの各元素の信号強度(存在量)を測定した例を示す。ここで、この分析は理学社製[RF-GDS3860]を用いて、アノード径4mm、20WおよびArガス流量300cc/分の条件にて行った。なお、図1から鉄換算のスパッター速度を基に、スパッタリング時間と深さとを対応づけることができ、金属塩とめっき金属との反応物を主体として有する層(以下「中間層」とも呼ぶ)の厚さを求めることもできる。
【0029】
図1において、スパッタリング時間0秒の時が、表面処理亜鉛系めっき鋼板の最表面を指す。スパッタリング時間がおよそ35s以下の深さ領域においては、金属塩の金属成分(Mg,Mn)はめっき金属(Zn)と共存していることがわかる。また、この深さ領域において樹脂成分(C)ピークは金属塩の金属成分(以下、単に金属塩成分と呼ぶこともある)のピークよりも表層側に存在するものの、金属塩成分(Mg,Mn)とも共存している。このように、金属塩と樹脂との反応物と、樹脂とが共存している層が形成されているのである。
【0030】
ここに、この発明における反応物を主体として有する層(中間層)は、各元素の信号強度(存在量)の測定結果(例えば図1)において、各金属塩成分のピークのうちで最大のピークを有する金属のピークに着目し、その最大値のある位置からめっき層方向に該最大ピークの強度が1/10となる位置までと定義する。
【0031】
発明者らは、樹脂と金属塩とを有する表面処理液を亜鉛系めっき鋼板に適用して表面処理被膜を形成させる場合に、付着させた樹脂のうち、金属塩とめっき金属との反応物を有する層(中間層)の中に存在する樹脂の比率を多くすることによって、鋼板の加工性、加工後外観、加工後耐食性が向上するという知見を得た。そこで、以下のような方法で、これらの特性を向上させ得る要素として、樹脂、さらに金属塩とめっき金属との反応物との存在状態について評価した。
【0032】
図2に、金属塩成分、樹脂成分、めっき金属塩成分の深さ方向のGDS分析の一例を示す。この図で説明すれば、中間層は、各金属塩成分のピークのうちで最大のピークを有する金属のピークに着目し、その最大値のある位置からめっき層方向に該最大ピークの強度が1/10となる位置までと定義する。いま、樹脂の全体量は、炭素強度の全ピーク面積を求めることにより数値化できる。同様に、中間層に含まれる樹脂量は、中間層側の炭素量、すなわち金属塩成分の最大ピークよりも深層側にある炭素量を、チャート上の面積(図2中斜線部分の面積)から求めて数値化できる。したがって、中間層の樹脂比率を樹脂全体に占める体積比率として表すことができる。そして、この比率が、加工後外観におよぼす影響を調査したところ、樹脂の中間層に占める割合が20vol%以上の場合に、加工後にも表面処理被膜の剥離が生じることなく、加工後外観が非常に優れた表面処理亜鉛系めっき鋼板が得られることがわかった。従って、本発明では、表面処理被膜中の樹脂の20vol%以上が、中間層に含まれることが必要である。
【0033】
ここで、図3に、表面処理被膜中の樹脂の中間層に占める比率が20vol%に満たない例を示す。すなわち、上記と同義の中間層において、樹脂の占める比率が20vol%未満であり、かような構成の表面処理被膜は、特に加工後外観に劣る上、後述する耐ブロッキングにおいて不利なものとなる。なお、図3における表面処理被膜中の金属塩としては、Mn、Srのリン酸塩を用いた。
【0034】
さらに、この発明では、表面処理被膜中の樹脂と金属塩との比率:樹脂/金属塩を質量比で0.01〜0.5とする必要がある。すなわち、樹脂の金属塩に対する質量比が1〜50%である必要がある。この質量比が50%を超えると、耐食性は向上する方向にあるものの、プレス成形時に剥離が生じて黒色異物が生成して加工後外観が劣化し易くなり、さらに、導電性の低下の問題も発生する。一方、この質量比が1%未満では、潤滑性が著しく低下し、プレス成形時に黒色異物が発生したり、型かじりが生じ易くなる。このため、表面処理被膜中の樹脂の金属塩に対する質量比は1〜50%とする。
なお、被膜中樹脂の金属塩に対する質量比は蛍光X線により測定可能である。
【0035】
この樹脂としては、カルボキシル基含有単量体の重合体、カルボキシル基含有単量体とその他の重合性単量体との重合体、水酸基含有単量体とカルボキシル基含有単量体との共重合体、水酸基含有単量体およびカルボキシル基含有単量体とりん酸含有単量体との共重合体のいずれか1種又は2種以上を含有するものであることが好ましく、さらには、水分散性樹脂とを含有するものが好ましい。
【0036】
ここで、カルボキシル基含有単量体としては、エチレン性不飽和カルボン酸とその誘導体を挙げることができる。エチレン性不飽和カルボン酸は例えばアクリル酸、メタアクリル酸、クロトン酸などのモノカルボン酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸などのジカルボン酸である。誘導体としては、アリカリ金属塩、アンモニウム塩、有機アミン塩などが代表例である。好ましいのはアクリル酸、メタアクリル酸である。
【0037】
水酸基含有単量体としては、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ヒト゛ロキシプロピル、(メタ)アクリル酸−3−ヒドロキシブチル、アクリル酸−2,2−ビス(ヒドロキシメチル)エチル、(メタ)アクリル酸−2,3−ジヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸−3−クロル2−ヒドロキシプロピルなどの(メタ)アクリル酸ヒドロキシエステル類、アリルアルコール類、N−メチロールアクリルアミド、N−ブトキシメチロール(メタ)アクリルアミドなどの水酸基含有アクリルアミド類のような、還元性水酸基を有する単量体を挙げることができる。好ましいのは、アクリル酸ヒドロキシエチル、メタアクリル酸ヒドロキシエチルである。
【0038】
なお、水酸基含有単量体とカルボキシル基含有単量体とを含有する水溶性共重合体は、この発明で期待する有機樹脂層の特性を維持する範囲内であれば、他の重合性単量体をさらに共重合してもよい。好適な単量体としては、例えばスチレン、メタアクリル酸メチルなどの(メタ)アクリル酸エステルを挙げることができる。
リン酸含有単量体は、リン酸基と、エチレン性不飽和基を有する化合物で代表される付加重合性基を有する化合物であり、具体的にはメタアクリル酸−2−ヒドロキシエチルのリン酸エステル、メタアクリル酸のペンタ(プロピレンオキサイド)エステルのリン酸エステルなどが挙げられる。
【0039】
樹脂は、さらに水分散性樹脂を含有することにより、加工性、加工後耐食性をより良好とすることが可能となる。特に、水分散性樹脂には、低pH(酸性水溶液(pH:1〜4)中で安定で、均一分散しうる特性)に優れるものが好ましい。これは、後述するように、表面処理被膜を形成させるにあたり、処理液として低pHのものを用いる必要があるためである。そのようなものとして、カルボキシル基または水酸基を含有する単量体以外の不飽和単量体を、カルボキシル基を含有する単量体と共重合してなるものが挙げられる。前者の好適な単量体としては、スチレン、メタアクリル酸ブチル、メタアクリル酸メチルなどのメタアクリル酸のアルキルエステルが挙げられる。水分散性樹脂としては、さらに酸性水溶液(pH=1〜4)中で安定であり、均一に分散することができる樹脂も使用可能である。例えば、従来金属材料の表面処理に使用されているポリエステル系、アクリル系、ウレタン系が挙げられる。これらは2種以上併用することもできる。
【0040】
また、水分散性有機樹脂は、そのガラス転移温度(Tg)が20〜100℃のものを使用することが好ましい。すなわち、Tgが20℃未満であると、被膜を乾燥させた後の耐ブロッキンク性に劣り、一方Tgが100℃を超えると、加工時の鋼板変形に被膜が追随せずに被膜破壊が発生し、加工後の耐食性が劣化する、おそれがある。
【0041】
なお、水分散性樹脂の量は、前記金属塩に対する質量比で1〜25%とすることが好ましい。この量は皮膜乾燥後のものである。この量が25%超では、耐食性の向上効果があるものの、プレス成形時に黒色異物が生成しやすくなり、さらに導電性の低下や皮膜乾燥性の劣化の問題も発生するため、25%以下とすることが好ましい。好ましくは10%以下である。一方、この量が1%未満では、潤滑性が著しく低下し、プレス成形時に黒色異物や型かじりが発生しやすくなるため、1%以上とすることが好ましい。さらに好ましくは2%以上である。
【0042】
さらに、プレス成形性の向上を所期して、表面処理被膜中には潤滑剤を含有させてもよい。この潤滑剤の量は、金属塩に対する質量比で0.1〜25%とすることが好ましい。この量は被膜乾燥後のものである。この量が0.1%以上であれば、潤滑性が良好でプレス成形性が向上するため、0.1%以上とすることが好ましい。一方、この量が25%以下であれば、プレス成形時に外観も優れるので、25%以下とすることが好ましい。より好ましくは10%以下である。潤滑剤としては、低pH安定性を有しかつ軟化温度が100℃以上のものが好ましい。潤滑剤として、ポリエチレンワックス、フッ素系ワックスが好ましく用いうる。
【0043】
さらに、めっき金属と金属塩との反応物を含む層、すなわち中間層は、連続性がないと十分な耐久性が得られず、また、プレス成形性および加工後耐食性にも乏しくなるので、連続性をもつものでなければならない。
ここで、“連続性をもつ”とは、処理皮膜の中間層中に欠陥部分がなく、亜鉛めっきの露出部分がないことを意味する。
【0044】
次に、この発明の表面処理亜鉛系めっき鋼板の製造方法について、詳しく説明する。
この発明に従う表面処理被膜は、金属塩と樹脂とを含有する表面処理液を鋼板のめっき表面に付着させることで形成させる。
【0045】
ここで用いる表面処理液は、金属塩と該金属塩に対する質量比で1〜50%の樹脂とを含み、かつpHが1〜4および遊離酸度が0.1規定水酸化ナトリウム換算で3〜20であることが肝要である。
[樹脂/金属塩:1〜50%]
まず、表面処理液中の金属塩に対する樹脂の質量比を1〜50%とするのは、50%を超えると、耐食性の向上効果があるものの、プレス成形時に黒色異物が生成しやすくなり、さらに導電性の低下や皮膜乾燥性の劣化の問題も発生するため、50%以下とする。一方、この量が1%未満では、潤滑性が著しく低下し、プレス成形時に黒色異物や型かじりが発生しやすくなるため、1%以上とする。好ましくは3%以上である。
【0046】
[pH:1〜4]
表面処理液のpHが1未満である場合は亜鉛系めっき層が溶解してしまい、めっき層の薄膜化やめっき金属と金属塩との反応物の再溶解が発生してしまい、耐食性向上が得られない場合があるため、pHは1以上の範囲に規制する。一方、pHが4を超えると、めっき金属と金属塩との反応物が形成されなくなり、耐食性が著しく低下する。よって、処理液のpHは1〜4とする。このために、前記したように処理液中の水分散性樹脂としては、低pH安定性に優れたものが好ましい。
例えば、前記リン酸系酸等を水に溶かして調合した処理液のpHを1〜4に調整するには、NaOHやKOHのような水酸化物、アミン等を用いて中和すればよい。
【0047】
[遊離酸度:0.1規定水酸化ナトリウム換算で3〜20]
本発明で言う「0.1規定水酸化ナトリウム換算の遊離酸度」とは、表面処理液10mlにブロムフェノールブルー3滴を滴下し、呈色が黄色から青色へ変化するのに要する0.1規定水酸化ナトリウム水溶液の量(ml)のことであり、無名数として表した。
上記のように、表面処理液のpHを1〜4の範囲に調整しても、遊離酸度が0.1規定水酸化ナトリウム換算で3〜20の範囲を外れると、耐食性が低下する。すなわち、遊離酸度が3未満では中間層の厚さが薄くなり過ぎ、また、中間層中に被膜中の樹脂の20vol%以上を含有させることができなくなる。一方20を超えると、中間層の連続性が阻害されるためである。よって、処理液の遊離酸度は0.1規定水酸化ナトリウム換算で3〜20とする。好ましくは5〜15である。なお、同一pHの場合、遊離酸度を低下させるにはピロリン酸の使用が有効である。
【0048】
この表面処理液は、Al、Mn、Mg、VおよびZnから選ばれる1種または2種以上の金属のリン酸塩、硝酸塩、炭酸塩、硫酸塩、酢酸塩および水酸化物からなる群より選ばれた1種または2種以上からなる金属塩と、樹脂、好ましくは水分散性樹脂と、さらに好ましくは潤滑剤とを含有する。この処理液は、前記金属塩と、樹脂好ましくは水分散性樹脂と、さらに好ましく潤滑剤とを水に添加し、水溶液とすることにより得られる。
【0049】
なお、上記リン酸塩は、処理液中でリン酸となるリン含有酸と上記金属との反応生成塩であればいかなるものでもよく、かかるリン含有酸としては、リン酸の他にポリリン酸、次亜リン酸、ピロリン酸、トリポリリン酸、へキサメタリン酸、第一リン酸、第二リン酸、第三リン酸などを挙げることができる。
処理液中の金属塩は、処理液とめっき層との接触時に、めっき層中の金属と反応し、強固な結合を生成して、耐食性に富む薄層(すなわち中間層)を形成する。かかる強固な結合が生成する理由は、金属塩が処理液中の他成分(樹脂等)に優先して解離し、該解離イオンがめっき層中の金属イオンとイオン結合することにあると推定される。処理液中の金属塩の濃度は、金属塩が溶解する範囲内で適宜調整することができる。
【0050】
ここで、好ましいのは、Mg、MnおよびVの無機塩を併用した場合である。さらにZnの無機塩を併用すると、より一層好ましい。
処理液中の水分散性樹脂および潤滑剤は、処理液中に分散し、処理液とめっき層との接触により形成される中間層中にも同様に分散して含有される。水分散性樹脂の含有により、中間層の深さ方向でいかなる部位においても、均一の潤滑性が確保できる。また、潤滑剤の含有により潤滑性が十分なレベルに到達する。これらの作用によって、プレス成形性および加工後耐食性が確保される。したがって、樹脂には水分散性樹脂及び潤滑剤を混入させることが好ましい。
【0051】
かかる作用効果を十分に発現させるためには、処理液中の樹脂(さらに潤滑剤)の含有量を前記金属塩に対する質量比で1〜50%とする必要がある。これら処理液中での要件は、前記した表面処理被膜中での要件と同じものであり、したがって、これら処理液中での要件が満たされないと、前記したことから、本発明の目的が達成されないからである。
【0052】
なお、処理液に混入させる樹脂は、前述のカルボキシル基含有単量体の重合体、カルボキシル基含有単量体とその他の重合性単量体との重合体、水酸基含有単量体とカルボキシル基含有単量体との共重合体、水酸基含有単量体及びカルボキシル基含有単量体とリン酸含有単量対との共重合体のいずれか1種または2種以上を含有するものであることが好ましく、さらには、水分散性樹脂および/または潤滑剤を含有させることが好ましい。
これらの樹脂の濃度は、それぞれの安定性が確保される範囲内で適宜設定することができる。
水分散性樹脂を含有させる場合には水分散性樹脂のガラス転移温度が、20℃以上である方が乾燥後の皮膜が耐ブロッキング性にも優れたものとなり、一方、120℃以下である方が加工時の鋼板変形に皮膜が追従し易く皮膜破壊が発生し難いので、加工後耐食性が向上する。よって、前記水分散性樹脂は、ガラス転移温度が20〜120℃のものが好ましい。
【0053】
また、樹脂の粒子径が、0.1μm以上である方がプレス成形性が向上し、一方、2.0μm以下である方が中間層の連続性が維持され易く、耐食性、プレス成形性、加工後耐食性のいずれも向上する。よって、樹脂は、粒子径が0.1μm以上2.0μm以下のものとすることが好ましい。
【0054】
この発明で用いる表面処理液には、被処理面(:亜鉛系めっき鋼板表面)への適用時の発泡防止や処理液安定性の観点から、界面活性剤を含有させてもよい。界面活性剤としては、pH1〜4の環境下で安定なものであればよく、ノニオン型界面活性剤が挙げられる。また、その他性能を付与するために処理液にワックスやその他通常の表面処理で使用される各種添加剤を含有させてもよい。
【0055】
表面処理液の被処理面への適用方法としては、被処理面に処理液を接触させる塗装工程と、次いで前記接触させた部分を50〜100℃に加熱して乾燥させる乾燥工程とを有するものが好ましい。塗装工程では、ロールコート、スプレー塗装、刷毛塗り、カーテンフローなどの塗装方式が好ましく用いうる。塗布量および付着量は、前記中間層の厚さが達成されるように設定する。付着量が金属の量にして0.05〜3.0g/m2とすることにより、上述のように中間層の厚さを0.02〜3μmとすることができる。乾燥工程での加熱温度(鋼板温度)は、50℃以上の方が皮膜中の水分が残存し難くなるので、耐食性が向上する。一方100℃以下のほうがリン酸のオルソ化が抑制されるため、薬液の遊離酸度が維持され易く、やはり耐食性が向上するため、50〜100℃の範囲とするのが好ましい。加熱手段としては、熱風炉、ドライヤー、高周波加熱炉および赤外線加熱炉などを用いることができる。
【0056】
上記処理液適用方法によれば、クロムを用いずに、汎用クロメート鋼板に匹敵する耐食性、導電性およびプレス成形性を有し、さらに加工後耐食性にも優れた表面処理亜鉛系めっき鋼板を高能率かつ低コストで製造し得る。
【実施例】
【0057】
実施例1
下記に示す亜鉛系めっき鋼板a〜fに、表1に示す金属塩および樹脂A〜Eまたは水分散性樹脂F〜Iを表1に記載した割合で含有する水性表面処理液をスプレー塗布し、リンガー絞りにて塗装した。その後5秒で鋼板温度が60℃となるように加熱して、表面処理被膜を形成した。処理液の条件や得られた被膜の性状なども表1に併せて示した。
【0058】

(亜鉛系めっき鋼板a〜f)
鋼板a:電気亜鉛めっき鋼板(板厚;1mm、Zn20g/m2
鋼板b;電気亜鉛−ニッケルめっき鋼板(板厚1mm、Zn-Ni20g/m2、Ni;12mass%)
鋼板c;溶融亜鉛めっき鋼板(板厚;1mm、Zn60g/m2
鋼板d;合金化溶融亜鉛めっき鋼板(板厚;1mm、 Zn60g/m2、Fe;10mass%)
鋼板e;亜鉛-5%アルミニウムめっき鋼板(板厚;1mm、60g/m2、Al;5mass%)
鋼板f;亜鉛-55%アルミニウムめっき鋼板(板厚;1mm、 60g/m2、 Al;55mass%)
【0059】
(樹脂A〜I)
ここで、樹脂A〜Hの数値は共重合体の重合単位の重合比率である。
樹脂A;アクリル酸/マレイン酸=90/10(分子量2万)
樹脂B;アクリル酸/イタコン酸=70/30(分子量5万)
樹脂C;メタアクリル酸/マレイン酸=80/20(分子量2.5万)
樹脂D;メタアクリル酸/イタコン酸=60/40(分子量2.5万)
樹脂E;リン酸変性アクリル樹脂
樹脂F;エポキシ変性ウレタン樹脂(分子量2.5万)
樹脂G;ウレタン樹脂エマルション
樹脂H;アクリル樹脂エマルション
樹脂I;ポリエチレン樹脂エマルション
【0060】
得られた各試験片について、表面処理被膜中の樹脂の金属塩に対する質量比率(mass%)を蛍光X線にて分析して求めた。また、表面処理被膜中の樹脂の中間層に存在する比率(%)を、GDSを用いて前述の方法(図2参照)で求めた。また、中間層に膜厚についてもGDSを用いて測定した。さらに、以下の方法により表面処理被膜を形成した鋼板の各種特性を評価した。
【0061】
〔平板導電性〕
試験片を175×lOOmmの大きさにせん断後、4端子4探針式表面抵抗計(“ロレスタAP“、三菱化学株式会社製)を用いて、10点測定した表面抵抗値の平均値を、次の評価基準に従って評価した。その結果を表2に示す。
◎:0.1mΩ未満
○:0.1mΩ以上、0.5mΩ未満
△:0.5mΩ以上、1.0mΩ未満
×:0.1mΩ以上
【0062】
〔平面部耐食性〕
試験片を70×150mmの大きさにせん断後、端面部をシールし、塩水噴霧試験(JIS Z-2371)を行い、各試験片表面の面積の5%に白錆が発生するまでに要する時間を、次の評価基準に従って評価した。その結果を表2に示す。
◎:72時間以上
○:48時間以上72時間未満
△:24時間以上48時間未満
×:24時間以下
【0063】
〔加工性〕
エリクセンカップ試験機を用いて、次の条件でプレス成形を行った際の成形可否(○、×)と成形荷重を評価した。その結果を表2に示す。
加工条件
ポンチ径:33mm
ブランク径:66mm
絞りダイス肩曲率:3mmR
絞り速度:60mm/s
しわ押さえ荷重:1ton
速乾油塗油(1.5g/m2
【0064】
さらに、加工後の外観の評価として、加工後に被膜の剥離し易さを評価した。すなわち、上記のエリクセンカップ試験機を用いたプレス成形を行った成形品の側壁部にセロハンテープを密着させた後、これを剥がして、Cu板に貼付し、これを蛍光X線によりZnカウントを測定した。そして、そのカウント値により、以下の基準で判定を行った。その結果を表2に示す。
◎:10kcps以下
△:10kcps超〜15kcps
×:15kcps超
【0065】
〔加工後耐食性〕
上記条件で円筒成形を行った後、端面部をシールし、塩水噴霧試験(JIS Z−2371)を行い、各試験片表面の面積の5%に白錆が発生するまでに要する時間を、次の評価基準に従って評価した。その結果を表2に示す。
◎:12時間以上
○:6時間以上12時間未満
△:3時間以上63時間未満
×:3時間以下
【0066】
【表1】

【0067】
【表2】

【0068】
実施例2
実施例1で用いた亜鉛系めっき鋼板a〜fに、表3に示すように、金属塩、水分散性樹脂J〜Mおよび潤滑剤N〜Oを含有する水性の表面処理液をスプレー塗布し、リンガー絞りにて塗布面を平坦にし、次いで5秒で鋼板温度が60℃となるように加熱して表面処理被膜を形成させ、試験片を作製した。処理液の条件や得られた被膜の性状なども表3に併せて示した。
【0069】
(水分散性樹脂)
樹脂J:ウレタン樹脂エマルション(Tg80℃、分散粒子径0.2〜0.4μm)
ここで、Tgはガラス転移温度である(以下同じ。)。
樹脂K:アクリル樹脂エマルション(Tg70℃、分散粒子径0.3〜0.4μm)
樹脂L:ポリエチレン樹脂エマルション(Tg80℃、分散粒子径0.1〜0.2μm)
樹脂M:アクリル樹脂エマルション(Tg30℃、分散粒子径0.1〜0.2μm)
(潤滑剤)
潤滑剤N:ポリエチレンワックス(軟化温度110℃)
潤滑剤O:フッ素系ワックス(軟化温度160℃)
各試験片について、実施例1の場合と同様の方法で表面処理被膜中の樹脂の金属塩に対する質量比率(mass%)、被膜中樹脂の中間層に存在する比率(%)、中間層膜厚(μm)を求めた。この結果を表1に併記する。
また、各試験片について、下記の特性(平板導電性、平面部耐食性、加工性(プレス成形性)、加工後耐食性)を、実施例1の場合と同様の試験方法に従って評価した。その評価結果を、表4に示す。
【0070】
【表3】

【0071】
【表4】

【0072】
表4より、この発明例は、各評価において評価○以上であり、この結果はクロメート材と同等あるいはそれ以上である。また加工性については、クロメート材の成形荷重は32kNであったが、表4に示す発明例は27kN以下であり、外観についても評価○である。以上の結果から耐食性、導電性、加工性および加工後耐食性に優れたものであることが判る。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】この発明の表面処理亜鉛系鋼板のGDSによる各層の成分分布を示したグラフである。
【図2】樹脂の中間層に存在する割合の求め方を説明する図である。
【図3】比較材のGDSによる各層の成分分布を示したグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
亜鉛系めっき鋼板を、金属塩と該金属塩の1〜50質量%の樹脂とを含み、かつpHが1〜4および遊離酸度が0.1規定水酸化ナトリウム換算で3〜20である処理液で処理し、金属塩の量として0.05〜3.0g/m2の固形物を付着させることを特徴とする表面処理亜鉛系めっき鋼板の製造方法。
【請求項2】
請求項1において、前記処理液がさらに潤滑剤を含むことを特徴とする表面処理亜鉛系めっき鋼板の製造方法。
【請求項3】
請求項1または2において、前記金属塩は、Al,Mn,Mg,VおよびZnから選ばれる少なくとも1種または2種以上の金属の、りん酸塩、硝酸塩、炭酸塩、硫酸塩、酢酸塩および水酸化物からなる群より選ばれる1種又は2種以上であることを特徴とする表面処理亜鉛系めっき鋼板の製造方法。
【請求項4】
請求項1、2または3において、亜鉛系めっき鋼板の表面に前記処理液を塗装する工程と、次いで該処理液を塗装した部分を加熱して乾燥する工程と、から成ることを特徴とする表面処理亜鉛系めっき鋼板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−57047(P2008−57047A)
【公開日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−274209(P2007−274209)
【出願日】平成19年10月22日(2007.10.22)
【分割の表示】特願2003−183006(P2003−183006)の分割
【原出願日】平成15年6月26日(2003.6.26)
【出願人】(000001258)JFEスチール株式会社 (8,589)
【Fターム(参考)】