表面処理粘土膜

【課題】透湿度とガス透過性が低く、表面が撥水性、耐水性であり、自立膜として利用可能な機械的強度を有する粘土膜及びその部材を提供する。
【解決手段】粘土、又は添加物を含有する粘土、又は添加物及び補強材を含有する粘土の分散液を調製し、この分散液を容器に流し込むか又は支持体の表面に塗布した後、分散媒である液体を分離して粘土膜とし、これを必要に応じて容器あるいは支持体から剥離して、自立膜を得た後、更に、少なくとも一方の表面に、樹脂を用いて表面処理を行うことにより、表面を撥水性及び/又は耐水性を有する粘土膜を得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘土膜及びその製造方法等に関するものであり、更に詳しくは、自立膜として利用可能な機械的強度を有し、柔軟性が高く、耐熱性が高く、電気絶縁体であり、断熱性に優れ、耐水性に優れる、新規粘土膜、その製造方法及びその製品に関するものである。
本発明は、粘土薄膜の作製技術及びその製品の技術分野において、従来法では、自立膜として利用可能な機械的強度を有し、柔軟性が高く、耐熱性が高く、電気絶縁体であり、熱伝導率が低く、膜内部に種々の化学物質を内包することが可能な、粘土膜を製造することは困難であり、その開発が強く要請されていたことを踏まえ、自立膜として利用可能な機械的強度を有し、しかも、優れた柔軟性、熱安定性、多孔性を併せ持つ粘土膜及びその製造技術、及び電気絶縁性部材、断熱材等の新技術・新素材を提供するものとして有用である。
【背景技術】
【0002】
一般に、多くの化学産業分野において、高温条件下での種々の生産プロセスが用いられている。それらの生産ラインの配管連結部などでは、例えば、パッキンや溶接などによって、液体や気体のリークを防止する方策がとられている。これまで、例えば、フレキシビリティーに優れたパッキンは、有機高分子材料を用いて作られていた。しかしながら、その耐熱性は、液晶ポリエステルの350℃が最高であり、これ以上の温度では、金属製パッキンを用いなければならないが、その金属製パッキンは、有機高分子材料のものと比較して、フレキシビリティーに劣るという問題点があった。アルミホイルあるいはアルミ蒸着膜は、高いガスバリア性を有しているが、透明ではない。また、アルミホイルは、金属であるため、螺子部に巻きつけるシール材として利用することはできない。また、透明で、ガスバリア性に優れたシリカ蒸着膜もあるが、このシリカ蒸着膜は、ベースとなる材料は有機化合物フィルムであるため、やはり350℃を超える高温条件下で使用することができない。
【0003】
粘土は、水やアルコールに分散し、その分散液をガラス板の上に広げ、静置乾燥することにより粒子の配向の揃った膜を形成することが知られており、例えば、この方法でX線回折用の定方位試料が調製されてきた(非特許文献1)。しかしながら、ガラス板上に膜を形成した場合、ガラス板から粘土膜を剥がすことが困難であり、剥がす際に、膜に亀裂が生じるなど、自立膜として得ることが難しいという問題があった。また、膜を剥がせたとしても、得られた膜が脆く、強度が不足であった。
【0004】
最近、ラングミュアーブロジェット法(Langmuir−Blodgett Method)を応用した粘土薄膜の作製が行われている(非特許文献2)。しかし、この方法では、粘土薄膜は、ガラス等の材料でできた基板表面上に形成されるものであり、自立膜としての強度を有する粘土薄膜を得ることができなかった。更に、従来、例えば、機能性粘土薄膜等を調製する方法が種々報告されている。例えば、ハイドロタルサイト系層間化合物の水分散液を膜状化して乾燥することからなる粘土薄膜の製造方法(特許文献1)、層状粘土鉱物と燐酸又は燐酸基との反応を促進させる熱処理を施すことによる層状粘土鉱物が持つ結合構造を配向固定した層状粘土鉱物薄膜の製造方法(特許文献2)、スメクタイト系粘土鉱物と2価以上の金属の錯化合物を含有する皮膜処理用水性組成物(特許文献3)、等をはじめ、多数の事例が存在する。しかしながら、これまで、自立膜として利用可能な機械的強度を有し、柔軟性に優れた粘土膜の開発例はなかった。
【0005】
一般的に、粘土、特に可塑性に優れた粘土は水によく分散し、均一な膜を作りやすい。また、このような粘土は親水性化学物質との親和性に優れ複合体を作り安い。このような利点を有する粘土は、一方で、耐水性に劣り、浸水すると、膨潤し、脆弱になり、ついにはその形態を保てなくなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平6−95290号公報
【特許文献2】特開平5−254824号公報
【特許文献3】特開2002−30255号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】白水晴雄「粘土鉱物学−粘土科学の基礎−」、朝倉書店、p.57(1988)
【非特許文献2】梅沢泰史、粘土科学、第42巻、第4号、p.218−222(2003)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
このような状況の中で、本発明者らは、上記従来技術に鑑みて、自立膜として利用可能な機械的強度を有し、しかも、優れたフレキシビリティーを有し、高温度条件下で使用でき、耐水性に優れる新しい粘土膜を開発することを目標として鋭意研究を積み重ねる過程で、粘土あるいは粘土と少量の添加物、あるいは粘土と少量の添加物と少量の補強材を含む均一な分散液を調製し、この分散液を容器に流し込む、あるいは支持体の表面に塗布した後、分散媒である液体を種々の固液分離方法、例えば、遠心分離、ろ過、真空乾燥、凍結真空乾燥、又は加熱蒸発法で分離し、粘土膜を得た後、これを必要に応じて容器あるいは支持体から剥離し、粘土自立膜を得られることを見出した。更に、この製造方法において、特に表面処理を行うことにより、粘土膜の撥水性、防水性、靭性、光透過性を向上させることが可能であることに注目し、更に研究を重ねて、好ましい原料の組成及び作製法を見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
本発明は、自立膜として利用可能な機械的強度を有し、しかも、優れた柔軟性、熱安定性を併せ持つ粘土膜及びその製造技術、及び電気絶縁材、断熱材として使用可能な部材等の新技術・新素材を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するための本発明は、以下の技術的手段から構成される。
[1]粘土、又は添加物を含有する粘土、又は添加物及び補強材を含有する粘土から構成された自立膜であって、少なくとの一方の表面が樹脂膜により撥水処理及び/又は耐水処理されていることを特徴とする粘土膜。
[2]室温における、空気、酸素ガス、窒素ガス、水素ガス、又はヘリウムガスに対する透過係数が1×10-12cm2-1cmHg-1未満である[1]に記載の粘土膜。
[3]前記樹脂膜が、フッ素系膜、シリコン系膜、ポリシロキサン膜、フッ素含有オルガノポリシロキサン膜、アクリル樹脂膜、塩化ビニル樹脂膜、及びポリウレタン樹脂膜からなる群のうちのいずれかである[1]又は[2]に記載の粘土膜。
[4]前記粘土膜の主要構成成分が、天然粘土又は合成粘土である[1]〜[3]のいずれかに記載の粘土膜。
[5]前記天然粘土又は合成粘土が、雲母、バーミキュライト、モンモリロナイト、鉄モンモリロナイト、バイデライト、サポナイト、ヘクトライト、スチーブンサイト、及びノントロナイトからなる群のうちの一種以上である[4]に記載の粘土膜。
[6]前記添加物が、エチレングリコール、グリセリン、イプシロンカプロラクタム、デキストリン、澱粉、セルロース系樹脂、ゼラチン、寒天、小麦粉、グルテン、アルキド樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、フッ素樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、フェノール樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリイミド樹脂、ポリビニル樹脂、ポリエチレングリコール、ポリアクリルアマイド、ポリエチレンオキサイド、タンパク質、デオキシリボヌクレイン酸、リボヌクレイン酸及びポリアミノ酸、フェノール類、及び安息香酸類化合物からなる群のうちの一種以上である[1]〜[5]のいずれかに記載の粘土膜。
[7]前記補強材が、鉱物繊維、グラスウール、炭素繊維、セラミックス繊維、植物繊維、及び有機高分子繊維からなる群のうちの一種以上である[1]〜[6]のいずれかに記載の粘土膜。
[8][1]〜[7]のいずれかに記載の粘土膜の製造方法であって、
粘土、又は添加物を含有する粘土、又は添加物及び補強材を含有する粘土の分散液を調製し、この分散液を容器に流し込むか又は支持体の表面に塗布した後、分散媒である液体を分離して粘土膜とし、これを必要に応じて容器あるいは支持体から剥離して、自立膜を得た後、更に、樹脂を用いて表面処理を行うことを特徴とする粘土膜の製造方法。
[9]加熱、光照射等の任意の手段により、付加反応、縮合反応、重合反応等の化学反応を行わせ、粘土、添加物、及び補強材の成分同士、あるいは成分間において、新たな化学結合を生じることを特徴とする[8]に記載の粘土膜の製造方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明により、(1)表面が撥水性、親水性であり、自立膜として利用可能な機械的強度を有し、しかも、優れた柔軟性、優れたガスバリア性、優れた水蒸気バリア性、優れた熱安定性を併せ持つ粘土膜及びその製造技術を提供できる、(2)電気絶縁性、断熱性を有する新技術・新素材を提供できる、(3)耐熱性及び柔軟性を併せ持つパッキンあるいは固体電解質燃料電池隔膜、電気絶縁材、断熱材として使用可能な部材等の新技術・新素材を提供できる、という効果が奏される。
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に、本発明について、更に詳細に説明する。
本発明は、粘土のみ、粘土と少量の補強材、又は粘土と少量の添加物と少量の補強材から構成され、柔軟性を有し、自立膜として利用可能であり、耐熱性を有し、粘土層にクラックやピンホールが存在せず、ガスバリア性を有し、表面処理が行われていることを特徴とする粘土膜、であり、粘土膜の主要構成成分が、天然粘土又は合成粘土である請求項1に記載の粘土膜であること、表面処理が、撥水処理、防水処理、補強処理、及び表面平坦化処理のうちの一種以上であること、室温における、空気、酸素ガス、窒素ガス、水素ガス、又はヘリウムガスに対する透過係数が1×10-12cm2-1cmHg-1未満であること、を特徴とするものである。また、本発明は、粘土膜の製造方法であって、粘土を主成分とする固体原料を、水あるいは水を主成分とする分散媒である液体に分散させ、均一な粘土分散液を調製し、この分散液を容器に流し込むあるいは物体表面に塗布したのち、分散媒である液体を除去し、粘土膜を作製し、更に、任意に、粘土膜を容器あるいは物体表面から剥離し、次に、粘土膜の表面処理をすることにより、粘土自立膜を得ることを特徴とするものである。
【0013】
本発明では、粘土として、天然あるいは合成物、好ましくは、天然スメクタイト及び合成スメクタイトの何れかあるいはそれらの混合物を用い、これを、水あるいは水を主成分とする液体に加え、希薄で均一な分散液を調製する。粘土として、雲母、バーミキュライト、モンモリロナイト、鉄モンモリロナイト、バイデライト、サポナイト、ヘクトライト、スチーブンサイト、及びノントロナイトからなる群のうちの一種以上を用いることができる。粘土分散液の濃度は、好適には0.5から15重量パーセント、より好ましくは、1から10重量パーセントである。このとき、粘土分散液の濃度が薄すぎる場合、乾燥に時間がかかりすぎるという問題がある。また、粘土分散液の濃度が濃すぎる場合、よく粘土が分散しないため、粘土粒子の配向が悪く、均一な膜ができないという問題がある。
【0014】
次に、必要に応じて、秤量した固体状あるいは液体状の添加物を、粘土分散液に加え、均一な分散液を調製する。添加物としては、粘土膜のフレキシビリティーあるいは機械的強度を向上させる、粘土と均一に混合するものであれば、特に限定されないが、例えば、エチレングリコール、グリセリン、イプシロンカプロラクタム、デキストリン、澱粉、セルロース系樹脂、ゼラチン、寒天、小麦粉、グルテン、アルキド樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、フッ素樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、フェノール樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリイミド樹脂、ポリビニル樹脂、ポリエチレングリコール、ポリアクリルアマイド、ポリエチレンオキサイド、タンパク質、デオキシリボヌクレイン酸、リボヌクレイン酸及びポリアミノ酸、多価フェノール、安息香酸類化合物のうちの一種以上を用いることができる。
【0015】
添加物の全固体に対する重量割合は、30パーセント以下であり、好ましくは1パーセントから10パーセントである。このとき、添加物の割合が低過ぎる場合、添加の効果が現れず、添加物の割合が高すぎる場合、調製した膜中で添加物と粘土の分布が不均一になり、結果として得られる粘土膜の均一性が低下し、やはり添加効果が薄れる。また、添加物の割合が高すぎる場合、粘土膜の耐熱性が低下する。
【0016】
次に、秤量した補強材を、粘土分散液に加え、均一な分散液を調製する。補強材として、鉱物繊維、グラスウール、炭素繊維、セラミックス繊維、植物繊維、有機高分子繊維樹脂のうちの一種以上を用いることができる。補強材の全固体に対する重量割合は、30パーセント以下であり、好ましくは1パーセントから10パーセントである。このとき、補強材の割合が低過ぎる場合、添加の効果が現れず、補強材の割合が高すぎる場合、調製した膜中で補強材と粘土の分布が不均一になり、結果として得られる粘土膜の均一性が低下し、やはり添加効果が薄れる。なお、補強材と添加物の添加順序はどちらが先と決まっているわけではなく、どちらを先に加えてもよい。
【0017】
次に、この分散液を容器に流し込む、あるいは物体表面に塗布したのち、分散媒である液体を乾燥除去し、粘土膜を作製する。粘土膜の作製方法としては、例えば、分散液である液体をゆっくりと蒸発させ、膜状に成形する、分散液を支持体表面に塗布し、分散媒である液体を乾燥除去する、などの方法がある。分散媒である液体の乾燥除去法としては、例えば、種々の固液分離方法、例えば、遠心分離、ろ過、真空乾燥、凍結真空乾燥、加熱蒸発法の何れか、あるいはこれらの方法を組み合わせが可能である。これらの方法のうち、例えば、分散液を容器に流し込み加熱蒸発法を用いる場合、粘土の濃度を0.5〜3重量パーセントに調整し、事前に脱気処理した分散液を平坦なトレイ、好ましくはプラスチック製あるいは金属製のトレイ等の支持体に注ぎ、水平を保った状態で、強制送風式オーブン中で30から70℃の温度条件下、好ましくは30から50℃の温度条件下で、3時間から半日間程度、好ましくは3時間から5時間、乾燥して粘土薄膜を得る。
【0018】
また、別の例として、分散液を物体に塗布し、加熱蒸発法を用いる場合、粘土の濃度を4〜7重量パーセントに調整し、事前に脱気処理した分散液を平坦な金属板の上に2mmの厚さに塗布し、強制送風式オーブン中で30℃から100℃の温度条件下、好ましくは30℃から80℃の温度条件下で、10分間から2時間程度、好ましくは20分間から1時間、乾燥して粘土膜を得る。
【0019】
分散液を事前に脱気処理しない場合、粘土薄膜に気泡に由来する孔ができ易くなるという問題がある場合がある。また、乾燥条件は、液体分を乾燥除去するのに十分であるように設定される。このとき、乾燥速度が遅すぎると、乾燥に時間がかかるという問題がある。また、乾燥速度が速すぎると、分散液の対流が起こり、粘土膜の均一性が低下するという問題がある。本粘土膜の厚さは、分散液に用いる固体量を調整することによって、任意の厚さの膜を得ることができる。
【0020】
粘土膜を自立膜として用いる場合は、粘土膜を容器あるいは物体表面から剥離し、粘土自立膜を得る。粘土薄膜が容器等の支持体から自然に剥離しない場合は、好適には、真空引きにより剥離を促進させ自立膜を得る。また剥離の別の方法として、好適には、約110℃から200℃の温度条件下で乾燥し、剥離を容易にして自立膜を得る。このとき、温度が低すぎる場合には、剥離が起こりにくいという問題がある。温度が高すぎる場合には、添加物が劣化しやすくなるという問題がある。
【0021】
本発明の表面処理粘土膜を構成する粘土膜自体は、粘土を主原料(90重量%以上)として用い、基本構成として、好適には、例えば,層厚約1nm、粒子径約1μm、アスペクト比約300程度の天然又は合成の膨潤性粘土が90重量%以上と、分子の大きさ数nm以下の天然又は合成の低分子・高分子の添加物が10重量%以下の構成、が例示される。この粘土膜は、例えば、厚さ約1nmの層状結晶を同じ向きに配向させて重ねて緻密に積層することで作製される。得られた粘土膜は、膜厚が3〜100μmであり、ガスバリア性能は、厚さ30μmで酸素透過度0.00001cc/m2/24hr/atm未満、水素透過度0.002cc/m2/24hr/atm未満であり、面積は100×40cm以上に大面積化することが可能であり、高耐熱性を有し、600℃で24時間加熱処理後もガスバリア性の低下はみられない。
【0022】
以上のようにして得られた粘土膜あるいは粘土自立膜は、基本的には、親水性であり、そのため、プラスチックフィルムや金属箔に比較して耐水性に劣る。そのため、結露する条件下、あるいは水に接する条件下では、膨潤し、脆弱になるという問題点がある。また、高い遮湿性を持たせることが困難である。ここで、粘土膜の表面を処理することにより、親水性から疎水性に変え、耐水性・高遮湿性を付与することが可能である。表面処理としては、粘土膜あるいは粘土自立膜表面を疎水化するものであれば、特に限定されるものではないが、例えば、被覆層作製法がある。
【0023】
被覆層作製による方法としては、フッ素系膜、シリコン系膜、ポリシロキサン膜、フッ素含有オルガノポリシロキサン膜、アクリル樹脂膜、塩化ビニル樹脂膜、ポリウレタン樹脂膜、高撥水メッキ膜、金属蒸着膜、カーボン蒸着膜などを表面に形成する方法が例示される。この場合、膜作製法として、湿式法、乾式法、蒸着法、噴霧法等の方法があげられる。表面に作製された被覆層は疎水性であり、そのため、結果として粘土膜表面の撥水性が実現する。この処理は、用途に応じて、粘土膜の片面のみ、あるいは両面とも行うことができる。表面処理法としては、他に、シリル化、イオン交換などの化学処理によって表面改質を行う方法があげられる。
【0024】
この表面処理により、以上述べた撥水性、防水性の付与の他に、膜強度を高める補強効果、表面における光散乱を押さえ、光沢を与え、外見を美麗にするとともに、透明度を高める表面平坦化効果が期待できる。一方、被覆層を有機高分子とする場合、粘土膜の常用温度範囲が被覆層の材料の常用温度範囲によって規定される場合がある。そのため、用途によって、表面処理に用いる材料の選定や膜厚が注意深く選択される。
【0025】
本発明の粘土自立膜は、例えば、はさみ、カッター等で容易に円、正方形、長方形などの任意の大きさ、形状に切り取ることができる。本発明の粘土自立膜は、好適には、厚さは1mmよりも薄く、面積は1cm2よりも大きい。また、本発明の粘土膜は、自立膜として利用可能な機械的強度を有し、柔軟性が高く、耐熱性が高く、電気絶縁体であり、熱伝導率が低いといった特徴を有する。
【0026】
耐熱性の高い粘土膜を作製する場合に、粘土に比較して耐熱性に劣る添加物の添加量を少なくすることは重要である。この場合、添加物の総固体に対する重量比は10%以下であることが好適である。特に耐熱性を要求されない場合はこの限りではない。本発明の粘土膜は、粘土が主成分であることから、絶縁性に優れ、耐熱性絶縁膜として広範に使用することができる。また、本発明の粘土膜は、断熱性に優れ、断熱膜として広範に使用することができる。
【0027】
次に、本発明の材料(基材)の特性値について説明する。
(1)密度
従来材料は、下表に示されるようにプラスチック・フィラーナノコンポジット製品において、その密度が最も高いものでも1.51である。これに対して、本発明の材料は、1.51を上回る密度を有し、2.0以上、例えば、2.10程度の密度の測定値を示す。このように、本発明の材料は、1.51を上回る密度、特に、1.60から2.50程度の高密度を有する。
【0028】
【表1】

【0029】
(2)柔軟性
従来材料で最も柔らかいものは、粘土とパルプ繊維からできている市販のシートであり、その剛軟度は、曲げ反発性試験の値として、JIS L1096:1999「一般織物試験方法」A法に準拠して測定された値は、8.0(mN)である。一方、粘土膜で最も硬いものは、HR50/5−80Hであり、表面が5.3(mN)、裏面が17.1(mN)である。これに対して、本発明の材料は、曲げ反発性試験の値が2.0mN程度であり、少なくとも、8.0mNを下回る値を有するものである。従来材料と本発明の材料の剛軟度の閾値は8.0mNであると言えることから、この値をもって、本発明の材料を従来材料と区別(識別)することができる。
【0030】
(3)原料粘土の特性
本発明では、原料粘土として、好適には、例えば、1次粒子のアスペクト比(粒子数基準)が320程度のもので、特に、メチレンブルー吸着量、陽イオン交換容量が高いものが使用される。具体例として、例えば、メチレンブルー吸着量が130mmol/100g、陽イオン交換容量が110meq/100g、2%水分散液pHが10.2、4%水分散液粘度が350mPa・s、水分散メジアン径が1.13μmの諸物性を有するものが例示される。しかし、これらに制限されるものではなく、これらを標準値として、これらと同等もしくは均等の物性を有するものであれば同様に使用することができる。これらの原料粘土として、山形県月布産粘土及びこれを主原料とする材料が好適に用いられる。
【0031】
(4)その他の特性
本発明の材料は、熱サイクルテスト(100−600℃、30サイクル)で異状がなく(高耐熱性)、電気抵抗は、体積抵抗率(500V)が2.3×107Ωm(JIS K6911:1995)であり(高絶縁性)、例えば、フレキシブル基板材料として使用される。本発明の材料は、他の特性として、例えば、以下のような特性値を有する。酸素透過度:<0.00008cm3/20μm・m2 day・atm、水素透過度:0.002cm3/20μm・m2 day・atm、破断延び:2.2%、引裂試験(JISK6252:2001):33.4N/mm、酸素指数(JIS K7201:1995):>94.0、比熱:1.19J/g・K、熱拡散率:1.12×10-72/s、熱伝導率:0.27W/m・K、熱膨張係数(−100〜100℃):0.1×10-4-1、熱膨張係数(100〜200℃):−0.06×10-4-1、耐ガス腐食試験:異状なし。これらの値は、本発明の材料の好適な特性値を示すものであり、本発明は、これらに制限されるものではなく、これらを標準値として、これらと同等もしくは均等のものであれば、本発明の範囲に含まれる。
【実施例】
【0032】
次に、実施例に基づいて本発明を具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例によって何ら限定されるものではない。
【0033】
[実施例1]
(1)粘土膜の製造
粘土として、0.95グラムの天然モンモリロナイト(クニピアP、クニミネ工業株式会社製)を、20cm3の蒸留水に加え、プラスチック製密封容器に、テフロン(登録商標)製回転子とともに入れ、激しく振とうし、均一な分散液を得た。この分散液に、添加剤として、イプシロン−カプロラクタム(和光純薬工業株式会社製)を0.09グラム含む水溶液を加え、均一な分散液を得た。得られた分散液を、長さ約30cm、幅約20cmの真鍮製板に塗布し、板の水平を保った状態で、強制送風式オーブン中で60℃の温度条件下で1時間乾燥して、厚さ約60マイクロメートルの均一な水溶性高分子複合粘土薄膜を得た。生成した粘土薄膜をトレイから剥離して粘土膜を得た。次に、粘土膜の撥水性及び水蒸気バリア性を高めるため、粘土膜両面にフッ素系ウレタン樹脂とシリコン樹脂のアセトン、イソプロピルアルコール溶液を噴霧し、室温で乾燥することにより、フッ素系ウレタン樹脂とシリコン樹脂の被覆層を形成した。被覆層の厚さは約1マイクロメートルであった。
【0034】
(2)粘土膜の特性
粘土膜の室温における、空気、酸素ガス、窒素ガス、水素ガス、又はヘリウムガスに対する透過係数は、1×10-12cm2-1cmHg-1未満であった。このように、両面に被覆層を作製することにより、引っ張り強度の高い粘土膜が得られた。粘土膜の40℃、相対湿度90%における透湿度をカップ法(JIS Z0208)により測定した結果、被覆前の三分の一と測定された。また、水平に静置した粘土膜に水を滴下した場合、水はじきは良好であり、撥水性の付与が確認された。このように、両面に被覆層を作製することにより、ガス透過性、透湿度共に低く、表面撥水性の粘土膜が得られた。
【0035】
[実施例2]
(1)粘土膜の製造
粘土として、0.95グラムの天然モンモリロナイト(クニピアP、クニミネ工業株式会社製)を、20cm3の蒸留水に加え、プラスチック製密封容器に、テフロン(登録商標)製回転子とともに入れ、激しく振とうし、均一な分散液を得た。この分散液に、添加剤として、イプシロン−カプロラクタム(和光純薬工業株式会社製)を0.09グラム含む水溶液を加え、均一な分散液を得た。得られた分散液を、長さ約30cm、幅約20cmの真鍮製板に塗布し、板の水平を保った状態で、強制送風式オーブン中で60℃の温度条件下で1時間乾燥して、厚さ約60マイクロメートルの均一な水溶性高分子複合粘土薄膜を得た。生成した粘土薄膜をトレイから剥離して粘土膜を得た。次に、粘土膜の機械的強度を向上させるために、粘土膜両面にアクリル樹脂とメチルフェニルポリシロキサンのエタノール溶液を噴霧し、室温で乾燥することにより、アクリル樹脂とメチルフェニルポリシロキサンの被覆層を形成した。被覆層の厚さは約1マイクロメートルであった。
【0036】
(2)粘土膜の特性
粘土膜の室温における、空気、酸素ガス、窒素ガス、水素ガス、又はヘリウムガスに対する透過係数が1×10-12cm2-1cmHg-1未満であった。粘土膜の引っ張り強度は21.6MPa(JIS K7127)であり、被覆前の値である18.9MPaよりも高い値を示した。このように、両面に被覆層を作製することにより、引っ張り強度の高い粘土膜が得られた。このように、両面に被覆層を作製することにより、ガス透過性が極めて低く、より強化された粘土膜が得られた。
【産業上の利用可能性】
【0037】
以上詳述したように、本発明は、粘土膜及びその製造方法等に係るものであり、透湿度とガス透過性が低く、表面が撥水性、耐水性であり、自立膜として利用可能な機械的強度を有し、しかも、優れたフレキシビリティーを有し、高温条件下で使用できる新しい粘土膜、その製造技術及びその製品を提供することができる。本発明は、耐水性、耐熱性に優れた膜を提供することを可能とする。また、本発明の粘土薄膜は、自立膜として使用可能であり、耐水性、耐熱性及びフレキシビリティーに優れ、ガスバリア性に優れることから、例えば、化学産業分野の配管の接続部分に用いられるパッキン材としても使用可能である。また、本発明により、上記粘土膜を、廃液を出さない簡便な工程で製造する方法を提供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粘土、又は添加物を含有する粘土、又は添加物及び補強材を含有する粘土から構成された自立膜であって、少なくとの一方の表面が樹脂膜により撥水処理及び/又は耐水処理されていることを特徴とする粘土膜。
【請求項2】
室温における、空気、酸素ガス、窒素ガス、水素ガス、又はヘリウムガスに対する透過係数が1×10-12cm2-1cmHg-1未満である請求項1に記載の粘土膜。
【請求項3】
前記樹脂膜が、フッ素系膜、シリコン系膜、ポリシロキサン膜、フッ素含有オルガノポリシロキサン膜、アクリル樹脂膜、塩化ビニル樹脂膜、及びポリウレタン樹脂膜からなる群のうちのいずれかである請求項1又は2に記載の粘土膜。
【請求項4】
前記粘土膜の主要構成成分が、天然粘土又は合成粘土である請求項1〜3のいずれか1項に記載の粘土膜。
【請求項5】
前記天然粘土又は合成粘土が、雲母、バーミキュライト、モンモリロナイト、鉄モンモリロナイト、バイデライト、サポナイト、ヘクトライト、スチーブンサイト、及びノントロナイトからなる群のうちの一種以上である請求項4に記載の粘土膜。
【請求項6】
前記添加物が、エチレングリコール、グリセリン、イプシロンカプロラクタム、デキストリン、澱粉、セルロース系樹脂、ゼラチン、寒天、小麦粉、グルテン、アルキド樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、フッ素樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、フェノール樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリイミド樹脂、ポリビニル樹脂、ポリエチレングリコール、ポリアクリルアマイド、ポリエチレンオキサイド、タンパク質、デオキシリボヌクレイン酸、リボヌクレイン酸及びポリアミノ酸、フェノール類、及び安息香酸類化合物からなる群のうちの一種以上である請求項1〜5のいずれか1項に記載の粘土膜。
【請求項7】
前記補強材が、鉱物繊維、グラスウール、炭素繊維、セラミックス繊維、植物繊維、及び有機高分子繊維からなる群のうちの一種以上である請求項1〜6のいずれか1項に記載の粘土膜。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の粘土膜の製造方法であって、
粘土、又は添加物を含有する粘土、又は添加物及び補強材を含有する粘土の分散液を調製し、この分散液を容器に流し込むか又は支持体の表面に塗布した後、分散媒である液体を分離して粘土膜とし、これを必要に応じて容器あるいは支持体から剥離して、自立膜を得た後、更に、樹脂を用いて表面処理を行うことを特徴とする粘土膜の製造方法。
【請求項9】
加熱、光照射等の任意の手段により、付加反応、縮合反応、重合反応等の化学反応を行わせ、粘土、添加物、及び補強材の成分同士、あるいは成分間において、新たな化学結合を生じることを特徴とする請求項8に記載の粘土膜の製造方法。

【公開番号】特開2013−79189(P2013−79189A)
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−252325(P2012−252325)
【出願日】平成24年11月16日(2012.11.16)
【分割の表示】特願2005−46324(P2005−46324)の分割
【原出願日】平成17年2月22日(2005.2.22)
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【Fターム(参考)】