説明

表面実装水晶発振器

【課題】電源投入直後の周波数変動を抑制することができる表面実装水晶発振器を提供する。
【解決手段】本発明の表面実装水晶発振器は、容器本体1内に収納された水晶片3と、容器本体1内に収納され、かつバンプ7、回路端子6、ビアホール11、保持端子12及び導電性接着剤8等の導電性部材により水晶片3電気的に接続されたICチップ2と、を有する。ICチップ2には、ICチップ2の一主面2aから他主面2bまで貫通し、かつ内面にメッキ層22が形成された貫通穴20が形成されている。また、ICチップ2の他主面2bメッキ層22と機械的に接触した金属ペースト21が塗布されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面実装用の水晶発振器に関する。
【背景技術】
【0002】
表面実装用の水晶発振器(以下、「表面実装水晶発振器」と呼ぶ。)は、小型、軽量であることから、例えば携帯型の電子機器に、周波数や時間の基準源として内蔵される。
【0003】
特許文献1には、積層セラミックからなる凹部を有する容器本体にICチップを超音波熱圧着によって固着し、水晶片とともに一体化したタイプの表面実装水晶発振器が開示されている。
【0004】
図4に、特許文献1等に開示された表面実装水晶発振器の構成を有する、表面実装水晶発振器の一従来例の断面図を示す。
【0005】
表面実装発振器は、概ね、容器本体101、水晶片102及びICチップ103からなる。容器本体101は両主面に凹部を有する断面H構造とした積層セラミックからなり、平板状の中央層101aと開口部を有する上下枠層101b、101cとを有する。中央層101aは一層目Aと二層目Bとを積層してなり、一層目Aの一主面は凹部113の底面(図の上面側)となり、二層目Bの他主面は凹部114の底面(同下面側)となる。
【0006】
中央層101aの一層目Aは、一方の凹部底面となる一主面の一端部両側に一対の水晶保持端子108を有し、例えば両端側の中央部に設けられた電極貫通孔としてのビアホール111と配線路106によって接続されている。また、中央層の二層目Bには、配線路109に接続されたビアホール111bが形成されている。
【0007】
ビアホール111a、111b内にはタングステン(W)やモリブテン(Mo)などの高融点金属ペーストが充填されている。また、配線路106を含めた回路パターンは、所定のセラミックグリーンシートにタングステン(W)やモリブテン(Mo)をシート表面に所定形状に印刷することにより形成される。このようなグリーンシートを積層・圧着した後、中央層101a及び上下枠101bを積層し、その後、一体的に焼成される。
【特許文献1】特開2007−158918号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
表面実装水晶発振器において、電源投入後の周波数変化は、より小さい事が望ましい。電源投入後の周波数変化を悪化させるのは、ICチップの発熱によりICチップの温度センサの感知する温度が水晶片の温度要理高くなり、この温度差が時間とともに変化することが要因と考えられる。電源投入によりICチップで生じた熱は中央層を介して伝熱される。電源投入によりICチップで生じた熱が水晶片に伝わることで水晶片に急激な温度変化を起こし、これによりICチップと水晶片の温度差が変化し、周波数が変化する。
【0009】
これに対して、電源投入直後にICチップで生じた熱を水晶片に伝えないようにするため、ICチップと水晶片との間に形成されている配線路を用いることが考えられる。すなわち、配線路の一部を表面実装水晶発振器の外部まで延出させ、この延出した配線路を熱放出用の伝熱路として用いることで電源投入直後の周波数変動を回避することが考えられる。
【0010】
しかしながら、配線路を構成するタングステン(W)やモリブテン(Mo)はその熱伝導率がそれぞれ177[W・m-1・K-1]、139[W・m-1・K-1]程度であるため、周波数変動を回避することができるほどの放熱は期待できない。
【0011】
そこで、本発明は、電源投入直後の電源投入直後の周波数変動による水晶片の周波数変動を抑制することができる表面実装水晶発振器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するため本発明の表面実装水晶発振器は、容器本体内に収納された水晶片と、容器本体内に収納され、かつ導電性部材により水晶片と電気的に接続された平板状の電子部品と、を有し、電子部品には、電子部品の一の主面から他の主面まで貫通し、かつ内面にメッキ層が形成されたスルーホールが形成されているとともに、電子部品の一の主面及び他の主面のうちの少なくともいずれか一方には、メッキ層と機械的に接触した金属ペーストが塗布されている。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、電源投入直後の周波数変動を抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
図1に本実施形態のH型構造を有する表面実装水晶発振器の一例の断面図を、図2に図1に示す表面実装水晶発振器の平面図をそれぞれ示す。
【0015】
本実施形態の表面実装水晶発振器は、容器本体1にICチップ2及び水晶片3を収容して一体化してなる。
【0016】
容器本体1は底壁層1aと枠壁層1bとの積層セラミックからなり、H型構造となっている。底壁層1aの一主面側1a1の凹部13内には水晶片3が収納され、他主面側1a2の凹部14内にはICチップ2が収納されている。H型構造とは、底壁層1aの両主面側1a1、1a2に枠壁層1bを設けて凹部13、14を形成することで容器本体1の断面形状がH字形状となった構造をいう。
【0017】
水晶片3は、水晶片3の一端部両側が、例えば熱硬化型の導電性接着剤8によって、一主面側1a1の底壁層1a上に形成された保持端子12に固着されている。水晶片3が収納された凹部13を形成する枠壁層1bの上面には溶接用の金属リング17が設けられている。凹部13の開口面は、例えばシーム溶接によって金属リング17に対して金属カバー10が接合されることで密閉される。金属カバー10と金属リング17との接合には、AuSn、AuGe、AuSi等の共晶合金を用いることができる。
【0018】
シリコンを主材料とするICチップ2は、少なくとも発振回路を集積化しており、また、水晶片3の温度特性に対して温度補償を行うための温度補償機構を有する。この温度補償機構は、ICチップ2と水晶片3とが熱的に平衡な状態にて適切な温度補償が行えるように設定されている。ICチップ2は、超音波熱圧着によって底壁層1aの回路端子6に位置決めして固着される。ICチップ2の一主面2aにはバンプ7が設けられており、ICチップ2の他主面2b側から超音波による振動を加えながら加熱して圧着される。なお、一主面2aは凹部14の底面14aに対面する面であり、他主面2bよりも水晶片3に近い位置にある。一方、他主面2bは、底面14aに対面する面とは反対側の面であり、一主面2aよりも水晶片3から遠い位置にある。
【0019】
ICチップ2が搭載された側の枠壁層1b上には実装端子9が形成されている。実装端子9は、ICチップ2の端子と電気的に接続されている。また、水晶片3の保持端子12はビアホール11により回路端子6に電気的に接続されている。
【0020】
ICチップ2には、図2(a)〜図2(c)に示すように、一主面2a側から他主面2b側まで貫通した貫通穴20が複数形成されている。貫通穴20の内面にはアルミニウムからなるメッキ層22が形成されている。また、他主面2b上には銀ペーストからなる金属ペースト21が塗布されている。貫通穴20のメッキ層22と金属ペースト21とは機械的に接触しており、メッキ層22内を伝わった熱は金属ペースト21へと伝導されるようになっている。金属ペースト21は、ICチップ2の他主面2bの全面を覆うように形成されているので、十分な放熱面積が確保されている。
【0021】
なお、図2(a)に示す例では、メッキ層22を比較的薄く層状に形成している(熱伝導層)ので、貫通穴20内に一主面2a側から他主面2b側まで貫通した穴20aが残っている。換言すれば、貫通穴20内のメッキ層22には、ICチップ2の一主面2a側から他主面2b側まで貫通する穴20aが形成されている、といえる。しかし、図2(a)に示す構成の場合、他主面2bの金属ペースト21は、この穴20aを閉じるように塗布されている。
【0022】
一方、図2(b)に示す例では、図2(a)の構成と同様に、メッキ層22を比較的薄く層状に形成しているので、貫通穴20内に一主面2a側から他主面2b側まで貫通した穴20aが残っている。しかし、図2(b)に示す例の場合、他主面2bの金属ペースト21には、穴20aに連通した連通穴21aが形成されている点で図2(a)の構成とは異なっている。この連通穴21aは金属ペースト21を貫通している。
【0023】
図2(c)には、メッキ層22の膜厚をより厚くすることで貫通穴20内をメッキ層22で埋めた例(熱伝導部)を示している。
【0024】
図2(a)の構成や、図2(b)の構成の場合、貫通穴20内に穴20aが残存していることからメッキ層22に伝わった熱をメッキ層22の表面から穴20aへと放熱させることができる。一方、図2(c)に示す構成の場合、メッキ層22の表面から貫通穴20内の空間へと放熱することはできないが、メッキ層22を厚くすることで図2(a)あるいは図2(b)の構成に比べて、金属ペースト21に伝える単位時間当たりの熱量を多くすることができる。
【0025】
また、上述した各例では、一主面2aよりも水晶片3から遠い位置にある他主面2b側にのみ金属ペースト21が塗布されている例を示したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、図3(a)に示すように、金属ペースト21は一主面2a及び他主面2bの双方に塗布されているものであってもよい。あるいは、図3(b)に示すように、一主面2a側にのみ金属ペースト21が塗布されているものであってもよい。なお、図3(a)あるいは図3(b)に示す構成とする場合、金属ペースト21が、バンプ7等の水晶片3と電気的に接続されている部品とは電気的に接続されていないように留意する。
【0026】
ここで、ICチップ2で生じた熱の伝熱経路について説明する。本実施形態の表面実装水晶発振器は、導電性部材によってICチップ2から水晶片3への伝熱経路が形成されている。すなわち、ICチップ2で生じた熱は、バンプ7、回路端子6、ビアホール11、保持端子12、導電性接着剤8を経て水晶片3へと伝わる。このように、ICチップ2で生じた熱は、導電性を有する各部材を経て水晶片3へと伝わってしまうこととなる。
【0027】
一方、本実施形態の表面実装水晶発振器は、金属ペースト21への伝熱経路も形成されている。すなわち、ICチップ2で生じた熱は、まず貫通穴20の内面に形成されたメッキ層22内へと伝導する。なお、メッキ層22に伝わった熱の一部は、図2(a)あるいは図2(b)に示す構成の場合、メッキ層22の表面から外気に放熱される。メッキ層22の表面から放熱されなかった熱は、金属ペースト21へと伝導される。金属ペースト21へと伝わった熱は金属ペースト21の表面から外気に放熱される。本実施形態においては、ICチップ2から水晶片3までの伝熱経路よりもICチップ2から金属ペースト21までの伝熱経路のほうが短くなっている。
【0028】
表面実装水晶発振器は、電源を投入することでICチップ2が駆動され、これによりICチップ2が発熱する。この熱が水晶片3に熱が伝わると、周波数変動を起こすこととなる。しかしながら、本実施形態の場合、ICチップ2から水晶片3までの伝熱経路よりもICチップ2から金属ペースト21までの伝熱経路のほうが短い。このため、表面実装水晶発振器の電源を投入した直後から熱的平衡状態になるまでの間の過渡状態においてICチップ2で生じた熱は、水晶片3に伝導する前に金属ペースト21に伝導されることとなる。これにより、電源投入直後の周波数変動を抑制することができる。
【0029】
また、ICチップ2と、メッキ層22と、金属ペースト21との熱伝導率の関係は、ICチップ2の熱伝導率をKe、メッキ層22の熱伝導率をKm、金属ペースト21の熱伝導率をKpとしたとき、Ke<Km<Kpの関係が成立するのが好ましい。本実施形態の場合、ICチップ2は主としてシリコンからなり、メッキ層22はアルミニウムとし、金属ペースト21は銀ペーストからなるものとしている。シリコンの熱伝導率は168[W・m-1・K-1]、アルミニウムの熱伝導率は236[W・m-1・K-1]、金属ペースト21の熱伝導率は420[W・m-1・K-1]であるので、熱伝導率の関係は、Ke<Km<Kpを満たしている。
【0030】
なお、メッキ層22あるいは金属ペースト21には、アルミニウム、銀の他、白金、パラジウム、鉛、すず、ニッケル、インジウム、チタンなどの金属を用いてもよい。
【0031】
なお、本明細書においては、表面実装水晶発振器に実装される平板状の電子部品としてICチップを一例に挙げた。しかしながら、本発明の構成はこれに限定されるものではなく、駆動により発熱するICチップ以外の電子部品にも適用可能である。
【0032】
以上、本発明の望ましい実施形態について提示し、詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、要旨を逸脱しない限り、さまざまな変更及び修正が可能であることを理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の一実施形態に係る表面実装水晶発振器の断面図である。
【図2】スルーホールの内面に形成されたメッキ層の例を示す、本発明の一実施形態に係る表面実装水晶発振器の一部拡大断面図である。
【図3】ICチップの表面に塗布された金属ペーストの例を示す、本発明の一実施形態に係る表面実装水晶発振器の一部拡大断面図である。
【図4】従来の表面実装水晶発振器の一例の断面図である。
【符号の説明】
【0034】
1 容器本体
1a 底壁層
1b 枠壁層
1a1 一主面側
1a2 他主面側
2 ICチップ
2a 一主面
2b 他主面
3 水晶片
6 回路端子
7 バンプ
8 導電性接着剤
9 実装端子
10 金属カバー
11 ビアホール
12 保持端子
13、14 凹部
14a 底面
17 金属リング
20 貫通穴
20a 穴
21 金属ペースト
21a 連通穴
22 メッキ層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器本体内に収納された水晶片と、
前記容器本体内に収納され、かつ導電性部材により前記水晶片と電気的に接続された平板状の電子部品と、を有し、
前記電子部品には、前記電子部品の一の主面から他の主面まで貫通し、かつ内面に熱伝導層が形成された貫通穴が形成されているとともに、前記電子部品の前記一の主面及び前記他の主面のうちの少なくともいずれか一方には、金属ペーストが塗布されており、
前記熱伝導層と前記金属ペーストとは互いに接触している表面実装水晶発振器。
【請求項2】
前記電子部品を構成する主材料の熱伝導率をKe、前記熱伝導層の熱伝導率をKm、前記金属ペーストの熱伝導率をKpとしたとき、
Ke<Km<Kp
の関係が成立する、請求項1に記載の表面実装水晶発振器。
【請求項3】
前記金属ペーストには、前記貫通穴に連通し、かつ前記金属ペーストを貫通する連通穴が形成されている、請求項1または2に記載の表面実装水晶発振器。
【請求項4】
容器本体内に収納された水晶片と、
前記容器本体内に収納され、かつ導電性部材により前記水晶片と電気的に接続された平板状の電子部品と、を有し、
前記電子部品には、前記電子部品の一の主面から他の主面まで貫通している熱伝導部を有するとともに、前記電子部品の前記一の主面及び前記他の主面のうちの少なくともいずれか一方には、金属ペーストが塗布されており、
前記熱伝導部と前記金属ペーストとは互いに接触している表面実装水晶発振器。
【請求項5】
前記電子部品を構成する主材料の熱伝導率をKe、前記熱伝導部の熱伝導率をKm、前記金属ペーストの熱伝導率をKpとしたとき、
Ke<Km<Kp
の関係が成立する、請求項1に記載の表面実装水晶発振器。
【請求項6】
前記電子部品はICチップである、請求項1ないし5のいずれか1項に記載の表面実装水晶発振器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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