説明

表面弾性波装置

【課題】 封止樹脂部の良好な接着力を維持し、剥がれを少なくできる表面弾性波装置を提供する。
【解決手段】 本発明の表面弾性波装置は、圧電基板1と封止基板7とを封止樹脂により上下に気密結合し、且つ、圧電基板1と封止基板7との間の振動空間部10を密封する第1の封止樹脂部8とを備え、四角状の第1の封止樹脂部8のコーナ部8aには、円弧状、或いは複数の鈍角の角を有した面取り部8bが設けられたため、この面取り部8bによって、圧電基板1と封止基板7の膨張、収縮の差によるコーナ部8aにおける応力を分散できて、第1の封止樹脂部8の良好な接着力を維持し、第1の封止樹脂部8の剥がれを少なくできる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は種々の電気機器に使用される共振器やフィルタ等に適用して好適な表面弾性波装置に関する。
【背景技術】
【0002】
図11は従来の表面弾性波装置の要部の断面図、図12は図11の12−12線における断面図を示し、次に、従来の表面弾性波装置の構成を図11,図12に基づいて説明すると、圧電基板51の下面には、一対の櫛歯電極52と、この櫛歯電極52に接続された引出導体53が設けられている。
【0003】
封止基板を兼ねる配線基板54は、櫛歯電極52との間に振動空間部55を持たせた状態で、圧電基板51の下面に対向して配置され、この配線基板54と圧電基板51との間には、櫛歯電極52を囲むように、感光性樹脂からなる四角形の帯状体の第1のダム56と、この第1のダム56の外側に位置し、感光性樹脂からなる四角形の帯状体の第2のダム57と、この第2のダム57の外側に位置し、四角形の帯状体の封止樹脂部58が設けられ、振動空間部55が密封された構成によって、従来の表面弾性波装置が形成されている。(例えば、特許文献1参照)
【0004】
従来の表面弾性波装置の圧電基板51と配線基板54は、異なる材料で形成され、外部環境による温度変化によって、膨張、収縮が異なるため、圧電基板51と配線基板54間に介在する封止樹脂部58は、圧電基板51と配線基板54の膨張、収縮の差による応力を受けると共に、この応力が封止樹脂部58の90度のコーナ部に集中して、封止樹脂部58の接着を弱め、剥がれが生じる。
【0005】
【特許文献1】特開2004−336671号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の表面弾性波装置において、圧電基板51と配線基板54間に介在する封止樹脂部58は、圧電基板51と配線基板54の膨張、収縮の差による応力を受けると共に、この応力が封止樹脂部58の90度のコーナ部に集中して、封止樹脂部58の接着を弱め、剥がれが生じるという問題がある。
【0007】
そこで、本発明は封止樹脂部の良好な接着力を維持し、剥がれを少なくできる表面弾性波装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するための第1の解決手段として、一対の櫛歯電極、或いは複数対の櫛歯電極を一面側に形成した圧電基板と、前記櫛歯電極を形成した側に振動空間部を持たせた状態で、前記圧電基板に対向して配設された封止基板と、前記櫛歯電極から外れた位置で、前記圧電基板と前記封止基板とを結合し、且つ、前記圧電基板と前記封止基板との間の前記振動空間部を密封する第1の封止樹脂部とを備え、四角状の前記第1の封止樹脂部のコーナ部には、円弧状、或いは複数の鈍角の角を有した面取り部が設けられた構成とした。
【0009】
また、第2の解決手段として、複数角状の前記面取り部は、前記コーナ部に直線が3つ以上設けられて、4つ以上の鈍角からなる角が前記コーナ部に形成された構成とした。
また、第3の解決手段として、複数対の前記櫛歯電極を有すると共に、前記櫛歯電極のそれぞれは、長方形状の個別の前記振動空間部を有するように前記第1の封止樹脂部によって仕切られ、長方形状の前記振動空間部の短辺側は、外側に膨らむ円弧状部によって形成された構成とした。
【0010】
また、第4の解決手段として、前記第1の封止樹脂部から空隙部を設けて外側に位置し、環状の帯状体で形成された第2の封止樹脂部を有し、前記第1の封止樹脂部の外側の前記コーナ部、及び前記第2の封止樹脂部の外側と内側の前記コーナ部には、前記面取り部が設けられた構成とした。
【0011】
また、第5の解決手段として、前記第1の封止樹脂部は、一対の前記櫛歯電極、或いは複数対の前記櫛歯電極を内方に位置して囲むように、環状の帯状体で形成され、帯状体の前記第1の封止樹脂部の外側と内側の前記コーナ部には、前記面取り部が設けられた構成とした。
また、第6の解決手段として、前記第1の封止樹脂部から空隙部を設けて外側に位置し、環状の帯状体で形成された第2の封止樹脂部を有し、前記第2の封止樹脂部の外側と内側の前記コーナ部には、前記面取り部が設けられた構成とした。
【発明の効果】
【0012】
本発明の表面弾性波装置は、圧電基板と封止基板とを結合し、且つ、圧電基板と封止基板との間の振動空間部を密封する第1の封止樹脂部とを備え、四角状の第1の封止樹脂部のコーナ部には、円弧状、或いは複数の鈍角の角を有した面取り部が設けられたため、この面取り部によって、圧電基板と封止基板の膨張、収縮の差によるコーナ部における応力を分散できて、第1の封止樹脂部の良好な接着力を維持し、第1の封止樹脂部の剥がれを少なくできる。
【0013】
また、複数角状の面取り部は、コーナ部に直線が3つ以上設けられて、4つ以上の鈍角からなる角がコーナ部に形成されたため、コーナ部における応力を効果的に分散できて、第1の封止樹脂部の一層良好な接着力を維持し、第1の封止樹脂部の剥がれを少なくできる。
【0014】
また、複数対の櫛歯電極を有すると共に、櫛歯電極のそれぞれは、長方形状の個別の振動空間部を有するように第1の封止樹脂部によって仕切られ、長方形状の振動空間部の短辺側は、外側に膨らむ円弧状部によって形成されたため、円弧状部によって、個別の振動空間部のコーナ部における第1の封止樹脂部の剥がれを少なくできる上に、第1の封止樹脂部の幅を広くできて、振動空間部内への水分の侵入防止を確実に行うことができる。
【0015】
また、第1の封止樹脂部から空隙部を設けて外側に位置し、環状の帯状体で形成された第2の封止樹脂部を有し、第1の封止樹脂部の外側のコーナ部、及び第2の封止樹脂部の外側と内側のコーナ部には、面取り部が設けられたため、面取り部によって、コーナ部における第1、第2の封止樹脂部の剥がれを少なくできる上に、第1、第2の封止樹脂部の存在によって、振動空間部内への水分の侵入防止を確実に行うことができる。
【0016】
また、第1の封止樹脂部は、一対の櫛歯電極、或いは複数対の櫛歯電極を内方に位置して囲むように、環状の帯状体で形成され、帯状体の第1の封止樹脂部の外側と内側のコーナ部には、面取り部が設けられたため、面取り部によって、コーナ部における第1の封止樹脂部の良好な接着力を維持し、第1の封止樹脂部の剥がれを少なくできる。
【0017】
また、第1の封止樹脂部から空隙部を設けて外側に位置し、環状の帯状体で形成された第2の封止樹脂部を有し、第2の封止樹脂部の外側と内側のコーナ部には、面取り部が設けられたため、面取り部によって、コーナ部における第1、第2の封止樹脂部の剥がれを少なくできる上に、第1、第2の封止樹脂部の存在によって、振動空間部内への水分の侵入防止を確実に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明の表面弾性波装置の図面を説明すると、図1は本発明の表面弾性波装置の第1実施例に係る正面図、図2は図1の2−2線における断面図、図3は図2の3−3線における断面図、図4は図2の4−4線における断面図、図5は本発明の表面弾性波装置の第1実施例に係る封止樹脂部の要部の拡大図である。
【0019】
また、図6は本発明の表面弾性波装置の第2実施例に係る封止樹脂部の要部の拡大図、図7は本発明の表面弾性波装置の第3実施例に係る封止樹脂部の要部の拡大図、図8は本発明の表面弾性波装置の第4実施例に係る要部断面平面図、図9は本発明の表面弾性波装置の第5実施例に係る要部断面平面図、図10は本発明の表面弾性波装置の第6実施例に係る要部断面図である。
【0020】
次に、本発明の表面弾性波装置の第1実施例に係る構成を図1〜図5に基づいて説明すると、四角形の圧電基板1は、一面(上面)側に設けられた一対の櫛歯電極2と、この櫛歯電極2に接続された状態で、角部に引き出された引出導体3と、この引出導体3の位置で、厚み方向に貫通して設けられた複数の貫通孔1aと、圧電基板1の下面の貫通孔1aの外周部に設けられたランド部4と、貫通孔1a内に設けられ、引出導体3とランド部4を接続する接続導体5と、圧電基板1の下面外側面に設けられ、接続導体5に接続された半田バンプ等からなるバンプ6を有する。
【0021】
セラミック材等からなる四角形状の封止基板7は、圧電基板1に対向し、櫛歯電極2から僅かに間隔を置いて配設されており、この封止基板7と圧電基板1との間は、圧電基板1と封止基板7との間の隙間を密封する熱硬化性樹脂等からなり、四角状の環状で帯状体をなした第1,第2の封止樹脂部8,9が設けられている。
そして、第1の封止樹脂部8は、櫛歯電極2から外れた位置で櫛歯電極2を囲むように設けられて、封止基板7と櫛歯電極2との間に振動空間部10を形成すると共に、第2の封止樹脂部9は、第1の封止樹脂部8の外側の位置に空隙部11を持って形成されている。
【0022】
また、四角状の第1,第2の封止樹脂部8,9の外側と内側のコーナ部8a、9aは、特に図5に示すように、円弧状からなる面取り部8b、9bが設けられてると共に、円弧状の面取り部8b、9bは、半径が5μ以上のもので形成されて、本発明の表面弾性波装置の第1実施例が形成されている。
このような構成を有する本発明の表面弾性波装置は、バンプ6が電気機器のマザー基板(図示せず)上に載置、半田付けされて、面実装されるようになっている。
【0023】
そして、本発明の表面弾性波装置が電気機器に搭載された際、圧電基板1と封止基板7が異なる材料で形成されているため、外部環境の温度変化による膨張、収縮が異なり、圧電基板1と封止基板7間に介在する第1,第2の封止樹脂部8,9は、膨張、収縮の差による応力を受けるが、第1,第2の封止樹脂部8,9のコーナ部8a、9aにかかる応力は、面取り部8b、9bによって分散して、接着力が維持され、剥がれが少なくなる。
なお、上記実施例では、第1,第2の封止樹脂部8,9を設けたもので説明したが、第1,第2の封止樹脂部8,9の何れか一方のみでも良い。
【0024】
また、図6は本発明の表面弾性波装置の第2実施例を示し、この第2実施例について説明すると、第1,第2の封止樹脂部8,9のコーナー部8a、9aは、1本の直線によって切り欠きされて、2つの鈍角の角を有した面取り部8b、9bが設けられたものである。
その他の構成は、上記第1実施例と同様の構成を有し、同一部品に同一番号を付し、ここではその説明を省略する。
【0025】
また、図7は本発明の表面弾性波装置の第3実施例を示し、この第3実施例について説明すると、第1,第2の封止樹脂部8,9のコーナー部8a、9aは、3本の直線によって切り欠きされて、4つの鈍角の角を有した面取り部8b、9bが設けられたものである。
その他の構成は、上記第1実施例と同様の構成を有し、同一部品に同一番号を付し、ここではその説明を省略する。
なお、コーナー部8a、9aは、5つ以上の鈍角の角を有した面取り部8b、9bが設けられたものでも良い。
【0026】
また、図8は本発明の表面弾性波装置の第4実施例を示し、この第4実施例は、複数対の櫛歯電極2が設けられた表面弾性波フィルタからなる表面弾性波装置で形成され、第1の封止樹脂部8によって、複数対の櫛歯電極2の全体が囲まれると共に、複数対の櫛歯電極2の位置に設けられた共通の振動空間部10が設けられた構成となっている。
その他の構成は、上記第1実施例と同様の構成を有し、同一部品に同一番号を付し、ここではその説明を省略する。
【0027】
また、図9は本発明の表面弾性波装置の第5実施例を示し、この第5実施例は、複数対の櫛歯電極2が設けられた表面弾性波フィルタからなる表面弾性波装置で形成され、複数対の櫛歯電極2のそれぞれが第1の封止樹脂部8によって仕切られて、長方形状の個々の振動空間部10を有すると共に、長方形状の振動空間部10の短辺側は、外側に膨らむ円弧状部8cによって形成されたものである。
【0028】
この円弧状部8cは、長方形を形成する短辺の長さに対して、1.05〜1.25倍程度の長さによって形成すると、曲線の半径が大きくならず、小型化に支障のないものが得られる。
その他の構成は、上記第4実施例と同様の構成を有し、同一部品に同一番号を付し、ここではその説明を省略する。
【0029】
また、図10は本発明の表面弾性波装置の第6実施例を示し、この第6実施例は、引出導体3の接続された接続導体5が封止基板7側に導出されて、この封止基板7側にバンプ6が設けられたものである。
その他の構成は、上記第1実施例と同様の構成を有し、同一部品に同一番号を付し、ここではその説明を省略する。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の表面弾性波装置の第1実施例に係る正面図。
【図2】図1の2−2線における断面図。
【図3】図2の3−3線における断面図。
【図4】図2の4−4線における断面図。
【図5】本発明の表面弾性波装置の第1実施例に係る封止樹脂部の要部の拡大図。
【図6】本発明の表面弾性波装置の第2実施例に係る封止樹脂部の要部の拡大図。
【図7】本発明の表面弾性波装置の第3実施例に係る封止樹脂部の要部の拡大図。
【図8】本発明の表面弾性波装置の第4実施例に係る要部断面平面図。
【図9】本発明の表面弾性波装置の第5実施例に係る要部断面平面図。
【図10】本発明の表面弾性波装置の第6実施例に係る要部断面図。
【図11】従来の表面弾性波装置の要部の断面図。
【図12】図11の12−12線における断面図。
【符号の説明】
【0031】
1:圧電基板
1a:貫通孔
2:櫛歯電極
3:引出導体
4:ランド部
5:接続導体
6:バンプ
7:封止基板
8:第1の封止樹脂部
8a:コーナ部
8b:面取り部
8c:円弧状部
9:第2の封止樹脂部
9a:コーナ部
9b:面取り部
10:振動空間部
11:空隙部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の櫛歯電極、或いは複数対の櫛歯電極を一面側に形成した圧電基板と、前記櫛歯電極を形成した側に振動空間部を持たせた状態で、前記圧電基板に対向して配設された封止基板と、前記櫛歯電極から外れた位置で、前記圧電基板と前記封止基板とを結合し、且つ、前記圧電基板と前記封止基板との間の前記振動空間部を密封する第1の封止樹脂部とを備え、四角状の前記第1の封止樹脂部のコーナ部には、円弧状、或いは複数の鈍角の角を有した面取り部が設けられたことを特徴する表面弾性波装置。
【請求項2】
複数角状の前記面取り部は、前記コーナ部に直線が3つ以上設けられて、4つ以上の鈍角からなる角が前記コーナ部に形成されたことを特徴する請求項1記載の表面弾性波装置。
【請求項3】
複数対の前記櫛歯電極を有すると共に、前記櫛歯電極のそれぞれは、長方形状の個別の前記振動空間部を有するように前記第1の封止樹脂部によって仕切られ、長方形状の前記振動空間部の短辺側は、外側に膨らむ円弧状部によって形成されたことを特徴する請求項1、又は2記載の表面弾性波装置。
【請求項4】
前記第1の封止樹脂部から空隙部を設けて外側に位置し、環状の帯状体で形成された第2の封止樹脂部を有し、前記第1の封止樹脂部の外側の前記コーナ部、及び前記第2の封止樹脂部の外側と内側の前記コーナ部には、前記面取り部が設けられたことを特徴する請求項3記載の表面弾性波装置。
【請求項5】
前記第1の封止樹脂部は、一対の前記櫛歯電極、或いは複数対の前記櫛歯電極を内方に位置して囲むように、環状の帯状体で形成され、帯状体の前記第1の封止樹脂部の外側と内側の前記コーナ部には、前記面取り部が設けられたことを特徴する請求項1、又は2記載の表面弾性波装置。
【請求項6】
前記第1の封止樹脂部から空隙部を設けて外側に位置し、環状の帯状体で形成された第2の封止樹脂部を有し、前記第2の封止樹脂部の外側と内側の前記コーナ部には、前記面取り部が設けられたことを特徴する請求項5記載の表面弾性波装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2006−333130(P2006−333130A)
【公開日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−154438(P2005−154438)
【出願日】平成17年5月26日(2005.5.26)
【出願人】(000010098)アルプス電気株式会社 (4,263)
【Fターム(参考)】