説明

表面性識別装置、シート材識別装置及び画像形成装置

【課題】プローブを接触させて摺擦することにより被測定物表面の表面性を識別する際のプローブによるジャム発生防止及びプローブ破損防止性を改善した表面性識別装置、シート材識別装置及び画像形成装置の提供。
【解決手段】S字型プローブ15aの固定端部を取り付けるネジ穴15c”と、ネジ穴15c”に取り付けられたS字型プローブ15aが回転軸15eに回転可能となるよう固定する軸受け部15”と、S字型プローブ15aの先端当接部の左右側面に所定の距離を隔てて設けられるプローブ先端保護リブ(18a,18b,18c,18d)とを有し、S字型プローブ15aを保持するプローブ先端保護リブ付きプローブホルダー18を備え、S字型プローブ15aの先端当接部は、走査方向の側面から見たとき、プローブ先端保護リブ(18a,18b,18c,18d)からシート材7の側に所定の長さ露出しシート材7の表面に当接する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面性識別装置、シート材識別装置及び画像形成装置に関するものである。特に、被測定物の表面摩擦抵抗の差とその要因となる表面粗さの差及び表面材質の差を識別する表面性識別装置、更にシート状被測定物の剛性の差とその要因となる厚さ、密度及び材質の差も検出可能なシート材識別装置の信頼性および性能向上に関するものである。そして、シート材識別装置を備えた加熱装置及び電子写真方式のプリンタ、複写機、インクジェットプリンタ、サーマルヘッドプリンタ、ドットインパクトプリンタ、ファクシミリやこれらの複合機器等の画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、各種画像形成装置は、一般的に普通紙、はがき、ボール紙、封書、OHP用のプラスチック製薄板等のシート状記録材(以下、単に記録材とする)上に画像を形成する装置である。その代表例としての電子写真方式を用いたプリンタ、複写機、ファクシミリ等の画像形成装置では、トナーを現像剤として用いて静電的な画像形成手段によって記録材上にトナー像を形成する。そして、その後、定着手段によって記録材を加熱及び加圧してトナー像を溶融固着させて画像形成するものである。
【0003】
また、他の画像形成装置であるインクジェット方式を用いたプリンタ、複写機、ファクシミリ等の装置は、インクを現像剤として用いている。そして、機械的または熱的反応を利用して微小なオリフィスを有するノズルを多数用いて構成された記録ヘッドからインクを高速で吐出させる画像形成手段によって記録材上に画像形成するものである。
【0004】
更に、他の画像形成装置である熱転写方式を用いたプリンタ、複写機、ファクシミリ等の装置は、インクリボンを現像剤として用い、サーマルヘッドを用いてインクリボンからインクを熱転写させる画像形成手段によって記録材上に画像形成するものである。
【0005】
ところで、これらの画像形成装置は近年改良が施され、高画質化と処理速度の高速化に対する工夫が種々の手段によって実現されるようになってきており、同時にコストダウン対策も工夫されて低価格化が進み、広く普及するようになっている。
【0006】
しかしながら、これらの画像形成装置に使用される記録材の種類は普通紙から封書用に特殊な表面処理を施された高級紙やOHP用の樹脂製シート等多種多様である。更に画像形成装置の普及に伴って世界中で使用されるようになってきたため、各地で使用されるどのような記録材に対しても良好な画像を形成することができるよう対応する必要が生じている。このため、特に画像形成条件に大きく影響する記録材表面の粗さは非常に重要な要素である。
【0007】
例えば、電子写真方式を採用する画像形成装置では、使用される記録材の表面が平滑な場合(以下、平滑紙と称する)と粗い場合(以下、ラフ紙と称する)では次のような違いがある。すなわち、定着部において加熱源から紙表面へ熱を伝える加熱効率が表面性の差による熱抵抗差に従って異なっており、平滑紙で適正な定着温度でラフ紙を定着しても定着不足を招いてしまう。このため、ラフ紙に対してはより高い温度で定着する必要がある。
【0008】
そこで、現状の画像形成装置では、ラフ紙を定着することができる温度を標準の定着温度として用い、平滑紙に対しては常に過剰な温度で定着させたままにしている。更により粗い紙に対しては更に高い定着温度が必要であるため、このような紙を用いる際にはユーザに定着温度の設定を変更させるための選択モードを設けていた。
【0009】
これらの具体的な例として電子写真方式を採用するプリンタの基本構成を図9に示す。図9は、従来例に係る電子写真方式の画像形成装置の要部構成断面図である。このプリンタにおいては、帯電ローラ1で感光ドラム2の表面を一様に所定の極性に帯電させた後、レーザー等の露光装置(露光手段)3によって感光ドラム2を露光した領域のみを除電して感光ドラム2上に潜像を形成する。そして、この潜像は現像器4のトナー5によって現像されてトナー像として顕像化される。つまり、まず、現像器4のトナー5を現像ブレード4aと現像スリーブ4bの間で感光ドラム2の帯電表面と同極性に摩擦帯電させる。そして、感光ドラム2と現像スリーブ4bが対向する現像ギャップ部においてDCとACバイアスを重畳印加し、電界の作用によってトナー5を浮遊振動させつつ感光ドラム2の潜像形成部に選択的に付着させる。その後、このトナー5を転写ローラ6(画像形成手段)と感光ドラム2で形成される転写ニップ部まで感光ドラム2の回転によって搬送する。
【0010】
一方、画像が記録される紙等の記録材であるシート材7は、シート材カセット7aから給紙ローラ対7c(下ローラはパッドでも良い)によって垂直搬送ローラ対7dまで先端部が給紙される。この後、この垂直搬送ローラ対7dによって転写前搬送ローラ7eまで搬送されるか、または手差しトレイ7bから給紙ローラ対7cによって転写前搬送ローラ7eまで搬送されるかのいずれかの経路を通して搬送される。更にこの転写前搬送ローラ7e(シート材搬送手段)によって転写上ガイド板9及び転写下ガイド板9’の間に沿って予め規定された進入角度で転写ニップ部まで搬送される。この転写前搬送ローラ7eから転写ニップ部までシート材7が搬送されるまでの間には、シート材7がこの領域に搬送されて来るまでに接触した種々の部材との摺擦によってこのシート材7の表面が帯電している可能性がある。このため、静電的記録を行うに際して画像を乱す要因となるこのような不要な帯電を取り除くための除電ブラシ8(帯電防止部材)が搬送中のシート材7の背面側に接するように設けられ、接地されている。
【0011】
転写部において感光ドラム2上のトナー5を静電的に引き付けてシート材7側に移動させるためにトナー5と逆極性の高電圧がシート材7背面の転写ローラ6に印加される。そして、シート材7の裏面にトナー5が静電的に引き付けられてトナー像がシート材7に転写されるとともに、シート材7の裏面はトナー5と逆極性に帯電され、転写されたトナー5を保持し続けるための転写電荷がシート材7の裏面に付与される。
【0012】
最後に、トナー像が転写されたシート材7は、加熱回転体13とニップ部を形成する加圧ローラ14で構成される定着器12(定着手段)まで搬送される。そして、ニップ部で予め設定されている定着温度を保持するように加熱回転体13側に設けられたヒータによって温度制御されながら加熱及び加圧されてトナー像が定着される。
【0013】
尚、トナー像転写後の感光ドラム2の表面には極性の異なるトナー等の付着物が僅かに残る。このため、転写ニップ部を通過した後の感光ドラム2の表面はクリーニング容器10で感光ドラム2表面にカウンター当接されるクリーニングブレード10aによって付着物が掻き落とされて清掃された後、次の画像形成に備えて待機する。
【0014】
尚、以上の帯電ローラ1、感光ドラム2、現像器4、クリーニング容器10の各構成要素は交換周期が比較的短いため、これらを一体化したカートリッジ11の単位で交換可能にしたカートリッジ交換方式の画像形成装置が主として普及している。
【0015】
以上の工程の中で、画像の定着方式としては熱効率及び安全性が良好な接触加熱型の定着器が広く知られている。従来は、主に次に説明する熱ローラ定着器が用いられてきた。熱ローラ定着器は、金属製円筒芯金表面に離型性層を形成し、円筒内部にハロゲンヒータを内包する熱定着ローラと、金属芯金に耐熱性ゴムから成る弾性層を形成し、その表面に加圧側離型性層を形成して成る加圧ローラを加圧当接して構成される。しかし、近年、更に加熱効率の高い方式として、フィルム加熱型定着器が用いられるようになっている。フィルム加熱型定着器は、上記熱定着ローラの代わりに低熱容量の耐熱性樹脂フィルムを円筒状に加工してその表面に離型性層を形成した定着フィルムを用い、このフィルムの定着ニップ部の内側からセラミックヒータを当接させて加熱する構成である。
【0016】
この種のフィルム加熱型定着器は、近年の省エネルギー推進の観点から、従来のハロゲンヒータを内包する円筒状の金属を定着ローラとして用いる熱ローラ方式に比べて熱伝達効率が高い。このため、定着器の立ち上がりも速い方式として注目され、より高速の機種にも適用されるようになってきている。しかし、特にこの方式では昇温速度を重視するために定着部の加熱表面の熱容量を小さくする必要があり、結果として加熱面には弾性層を形成することが難しく、硬い加熱面が使用されている。このため、この種の定着方式は、記録材表面の凹凸差によって一層加熱効率に差が生じ易い構成となっている。
【0017】
このような定着器を用いたプリンタ等の各種画像形成装置においては、前述のような処理速度の高速化に伴い、紙の種類の違いによって定着性の差が顕著になるという問題が生じている。そして、ユーザが使用しようとする紙種に応じて予め適正な定着モードをユーザ自身がプリンタに入力する必要がある。
【0018】
しかしながら、このように使用する紙の種類によってその都度定着条件を切り替えるためにユーザにモード選択を強いることはユーザの作業負担の増加になる。また、ユーザが選択モードを間違えた場合にはそのプリント分の定着性が不足したり、逆に過剰に加熱して電力を無駄にするとともに高温オフセットによる画像不良が生じたり、定着器のトナー汚染を招くおそれがある等の可能性があった。
【0019】
また、近年のように1台のネットワークプリンタを複数のユーザが共有するような使用環境においては、1人のユーザが特殊な紙を用いてそれに応じたモード設定切り替えを行った後、その特殊紙を画像形成装置に残したままになることもあり得る。このため、そのことを知らない他のユーザが使用する際にモードが一致せず、適切な定着がなされないために前述のような問題が生じてしまう可能性も高くなっている。
【0020】
また、設定可能な定着モードの数に関しても、実際の紙の平滑度には厳密には種々のレベルが存在し、その各々に対して最適な条件を設けることは不可能である。このため、或る範囲の平滑度を有する紙をまとめて同一モードで定着することによって設定モードの数を制限しており、特定の紙に対しては必要以上の電力を用いて定着する場合があり、紙と設定の組み合わせによっては効率の良くない定着が行われる場合もある。
【0021】
一方、前記インクジェット方式を採用する画像形成装置においては、使用される記録材が平滑紙の場合とラフ紙の場合では必要なインクの量が異なる。すなわち、平滑紙で適正なインク量でラフ紙上に画像形成しても紙の厚さ方向にインクが浸透して濃度不足を招いてしまうため、ラフ紙に対してはより多くのインクを吐出する必要がある。このため、現状の画像形成装置では、これらの異なる表面性の紙に対してユーザが予めその紙種をプリンタに認識させる作業を行う必要があった。
【0022】
また、熱転写方式を採用する画像形成装置では、使用される記録材が平滑紙の場合とラフ紙の場合では必要な電力の量が異なっている。このため、平滑紙で適正な電力量でラフ紙上に熱転写しても熱抵抗が大きいためにインクの転写性が低下して濃度不足を招いてしまっていた。
【0023】
以上のように、現状の画像形成装置では何れも記録材の表面粗さによる画像の画質低下を防ぐために余分な温度やインク、電力を消費し、画質の低下を招くことになるおそれがある。これらの問題を防ぐためには記録材の表面粗さに応じてこれらの条件を切り替えることが必要である。しかし、現状ではユーザに設定変更の手間を強いるような方法や一部の画像形成装置に用いられている複雑な構成や信号処理を必要とする光学式センサしか考えられておらず大幅なコストアップを招くしかなかった。
【0024】
このため、記録材表面の粗さを検知し、その検知結果に応じて画像形成条件を変更して画像形成する装置の提案がこれまでに幾つかなされている。例えば、それらの中で比較的安価且つ高速に記録材表面粗さを検知可能な検知原理を提案したものとして、特許文献1及び特許文献2に示すものが挙げられる。これらの提案では、記録材表面に接触する接触手段が記録材表面との摺擦によって生じる振動や摺擦音等の物理的現象を検知し、その検知量の差を表面粗さの差として検知する方法が開示されている。その具体的構成として接触手段に圧電素子を設けて振動を電気信号に変換して検知する構成が提案されている。
【0025】
しかしながら、上記提案には実際に記録材表面に接触させる部材(以下、プローブと称する)に必要な具体的構成条件は詳細に開示されていない。すなわち、単純な直線状のプローブが走査方向、すなわち記録材の搬送方向の上流側で一方の端部を固定され、下流側の先端を搬送方向に逆らわないように斜めに当接させる構成が示されているだけに留まっている。したがって、この内容だけで実際に精度の高い検知を実現することは困難であると考えられる。
【0026】
このため、本願発明者は圧電素子を用いた検知方式で、表面性識別性能を飛躍的に改善して実用可能とするために、センサプローブ形状及び取り付け構成を新たに検討した。その結果、プローブ先端部に先端当接部がシート材搬送平面上を搬送方向前後(走査方向前後)に振動可能となる機械的構造部を付与した。且つ、先端当接部を搬送方向に逆らって測定表面に食い込む角度に当接する構成、すなわち、記録材がプローブ先端部に進入する際のプローブ先端部と記録材とのなす角度が鋭角となる構成とした。尚、当接圧力はシート材の搬送圧力によっては逆方向に跳ね上がり可能な軽圧で良い。このような構成にすることにより非常に高い識別性能が得られることを見出した。このような構造を、記録材搬送を阻害することなく最も安価に実現する構成として、S字型表面性検知センサ15(表面性識別装置)(図10参照)を発明した。S字型表面性検知センサ15は、短冊状金属板金を2回折り曲げたS字型の側面形状を有するプローブを回転軸に回転可能に固定する構成である。且つ、1つのS字型表面性検知センサ15でシート材カセット7aまたは手差しトレイ7bのどちらからシート材7を給紙しても検知できるように取り付ける。すなわち、このS字型表面性検知センサ15を、両者の記録材搬送経路合流部の記録材搬送方向下流側で記録材の表面側から検知が可能な位置として最適な転写上ガイド板9に取り付けて評価を行った。この結果、記録材搬送を阻害することなく非常に高い識別性能が得られることを確認し、その結果をまとめたものを提案している(例えば、特許文献3参照)。
【0027】
このS字型表面性検知センサ15は、より詳細には図10(A)に示すような構成である。すなわち、圧電素子15b(圧電素子部)を平坦部(平坦部表面)に形成されたS字型プローブ15aがその反走査側端部を座金付き固定ネジ15dでプローブホルダー15cに固定された固定端部を有している。そして、このプローブホルダー15cは搬送方向に垂直且つシート材搬送平面(走査平面)に平行な方向に軸方向を有するプローブ回転軸15eに回転可能に固定されている。また、S字型プローブ15aの先端部(以下、単にプローブ先端部ともいう)はこのプローブ回転軸15eを中心としてシート材搬送平面に対して0.0196〜0.294N程度の当接圧で加圧手段により加圧当接されている。なお、加圧手段は、S字型プローブ15a自体にバネ機構が備わり当接する構成であっても、あるいは、S字型プローブ15a自体にバネ機構が備わっていない場合においては、外部からS字型プローブ15aを加圧する構成であってもよい。更にこのプローブ回転軸15eは軸受け15fを介して転写上ガイド板9を兼ねるセンサ保持板15g上に固定されており、シート材搬送平面として搬送平面板15hがシート材7の搬送路上に設けられ、シート材識別装置を構成している。
【0028】
図10(B)はこれらの構成部材を上から見た場合の各部材の配置関係を示したものである。センサ保持板15gの中央部にはS字型表面性検知センサ15の先端部をシート材搬送平面に当接させるため角穴が開けられている。また、圧電素子15b表面とS字型プローブ15aの板金表面からは検知信号を取り出すための信号線15kがハンダ付けされて画像形成装置の電装部までセンサ保持板15g表面を長手方向に沿って引き回されている。
【0029】
図10(C)はこのS字型表面性検知センサ15を用いた電子写真方式のプリンタの定着器制御を行うためのブロック図である。画像形成装置の検知部であるS字型表面性検知センサ15(以降、検知部15とする)から出力された検知信号に基づき、使用される紙種に応じて定着器12へ最適な制御信号を出力する。このとき、制御部15’(制御手段)の推測部15’aにおいて、使用される紙種に応じて定着器12へ最適な制御信号を出力する。推測部15’aは、予め所定の検知信号(識別結果)に対して最適な制御温度(定着温度)が関連づけられている温度テーブル15’b(判定テーブル)のデータを参照することで、最適な制御信号を出力することができる。これにより、必要最小限の電力で十分な定着性を得ることが可能となる。なお、判定テーブルとしては、温度テーブル15’bに限らず、検知信号に対してシート材搬送速度や複数シート材搬送時のシート材搬送間隔の情報を関連づけたテーブルでもよい。
【0030】
図11はこのようなセンサで実際に複数の紙種を検知して識別性を評価した結果の資料である(シート表面粗さ vs センサ検知特性)。S字型表面性検知センサとしてはプローブにSUS(ステンレス鋼)304板金を用い、前述の表面粗さのみを検知するタイプの構成を用いている。この資料中の評価に用いた紙は実際の市場で使用される頻度の高い紙種を12種類選び、各紙の名称の大文字の記号部が同じものは同じ表面性を示す。ここで、Rタイプの紙は微細な凹凸が表面に均一に形成されているラフ紙、Fタイプの紙は平滑紙を示し、Wタイプの紙は紙表面に波型の修飾が施されたラフ紙を示しており、各紙の数字部は紙の坪量を示している。
【0031】
図11のグラフではこれらの紙種を基本的に坪量の小さな紙を左から右へと順にラフ紙と平滑紙を交互に並べ、最後にOHT用紙(以下OHTと称する)を配置した。また、各紙に対して非接触表面粗さ計による平均表面粗さ=Ra[μm]の測定結果(黒丸プロット点、破線)をプロットした。そして、上記S字型表面性検知センサを既存の画像形成装置の中で最も高速の機種に搭載して各紙の全長の1/4程度の距離を走査して表面性を検知させた際の検知信号を積分処理した信号レベルをプロットした(ひし形プロット点、実線)。図11のグラフはこれらを比較したものであり、大小関係を見やすくするために各データのプロット点を折れ線グラフ表示させている。このグラフから明らかなように、このS字型表面性検知センサを用いた紙表面の検知結果は表面粗さ計の測定結果と非常に良い相関がある。従って、S字型表面性検知センサ15を用いることにより、搬送されてきたシート材7の表面性の検知を少なくとも定着工程前に完了して定着制御を切り替えることができるようになる。このため、ユーザは使用するシート材7の種類を気にすること無く、且つ、画像不良や不要な電力の消費を招くことなく、画像形成装置を使用することが可能となる。
【0032】
さらに上記構成のS字型表面性検知センサ15を用いて実際に電子写真方式のプリンタの定着温度制御を行うための基礎検討として、各紙種に対する必要且つ十分な最適定着温度が実際にどのように紙種に依存して変化するかを調べた。この結果、単純にシート材7の表面粗さのみで分類することが難しい場合があることが判明したため、画像形成装置のシート材搬送路に屈曲構造を設けることによってシート材の剛性や厚みを検知する方法を提案している(例えば、特許文献4参照)。
【0033】
図12(A)はその一例として原理説明用のセンサ検知部であるS字型表面性検知センサ15(以下、検知部15とする)を備えたシート材識別装置の側面模式図を示している。尚、ここでは上記センサの主な構成要素は全てセンサ固定ベース15i上に設けられた後、このセンサ固定ベース15iごと上記センサ保持板15gの取り付け穴にセットされている。そして、このセンサ固定ベース15iの下部にはシート材をプローブ先端部に誘導してプローブ上部に侵入させないようにするためのシート材ガイドリブ15i’が形成されている。但し、このシート材ガイドリブ15i’を余り大きくすると厚いシート材の搬送を阻害するため、リブ最下面とシート材搬送平面板15h表面との間には1mm以上の隙間を設けている。
【0034】
この図からわかるように本構成では、シート材搬送方向の検知部下流側に、センサ保持板15g及び搬送平面板15hの下流側を下方に折り曲げた屈曲センサ保持板15g’及び屈曲搬送平面板15h’(シート材変形手段)を設ける。これらによって屈曲搬送路構造を形成することで薄紙7’と厚紙7”の先端部が検知部15を通過した場合の検知信号の差を検知することが可能となる。まず、薄紙7’の先端部が検知部15を通過した場合、図12(A)に示すように剛性の低い薄紙7’の検知部15における搬送状態に大きな変化は無い。しかし、剛性の高い厚紙7”は、屈曲センサ保持板15g’及び屈曲搬送平面板15h’とから構成される屈曲搬送路によって厚紙7”先端部を下方に折り曲げられる。そして、厚紙7”の剛性によって検知部15にループを形成してプローブ先端部を持ち上げる力(Fup)を発生する。この力はプローブ当接加圧力に逆らって作用するので相対的に当接圧が上昇して摩擦強度が増大し、結果として検知信号が高くなる。さらにこのようにプローブ先端が持ち上げられた際にプローブの第1折り曲げ部R1が衝突するようなカバー15jを設けると、この衝突時の衝突強度に応じて検知信号も高くなる。また、このときの反作用でプローブを下方に押し下げる力(Fdown)も生じるのでこの衝突の繰り返しによっても検知信号は増幅される。なお、図12(A)のR2は、S字型プローブ15aの第2折り曲げ部である。
【0035】
図12(B)はこのような構成を用いて、表面粗さがほぼ同じで厚さのみ異なる3種類のシート材7を通紙して検知した結果をグラフ化して示したものである(シート厚さ vs 信号レベル)。このグラフからわかるように、横軸の各シート材厚さに対して検知信号レベルはほぼ直線近似が可能なほど比例して発生することがわかる。
【0036】
尚、以上の説明においては、発明の本質を明確化させるためにS字型表面性検知センサの基本構成のみを記載している。実際のセンサ構成では、通常のSUSなどの板金を曲げ加工しただけのプローブを回転可能に組み込んで上記センサ固定ベース15i下部のシート材ガイドリブ15i’で保護しただけである。このような構成では、万一、シート材(紙)の先端が浮いたまま侵入すると紙先端部がセンサの上方向に侵入してプローブに引っかかってしまい搬送不良を生じるおそれが考えられる。このため、この対策としてプローブの左右に紙押さえ用のコロを設けて、プローブの左右両側で紙をシート材搬送平面に押し付けるように構成している。このようにすることで、この紙押さえコロの紙押さえ力の強度を高くすればするほど紙の搬送安定性と表面粗さ検知精度の向上が期待できる。しかしながらその一方で、紙厚検知性能を付与したい場合には紙押さえを余り強くしすぎると、上記原理から薄紙と厚紙での剛性差に基づく屈曲量の差が生じにくくなって紙厚識別性能が低下してしまう。このため、紙の搬送不良を生じない程度の紙押さえ機能を残すために「プローブの当接圧<紙押さえコロの当接圧」となるように当接圧強度の大小関係は維持しつつ、紙押さえ力を可能な限り弱く設定している。
【特許文献1】特開2000−314618号公報
【特許文献2】特開2000−356507号公報
【特許文献3】特開2002−340518号公報
【特許文献4】特開2005−170640号公報
【特許文献5】特開2004−317358号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0037】
しかしながら、上記構成のS字型表面性検知センサ15を用いて実際に電子写真方式のプリンタの定着温度制御を行うための基礎検討を行った結果、さらに次のようなことがわかった。すなわち、実際に印刷に使用されるシート材(紙)には前述のように紙種の区別以外に、紙の保管状態や使用形態を考慮する必要がある。例えば、搬送されてくる紙先端部が大きく上向きにカール変形している場合、上記のシート材ガイドリブ15i’や紙押さえコロを用いてその影響を防ごうとすると、次のような点に対して高精度に設定する必要がある。
・シート材ガイドリブ15i’の取り付け位置精度
・紙押さえコロの加圧バネ強度誤差
さらには、
・紙厚(紙の剛性さ)検知性能を向上させるために紙押さえコロの当接圧を抑制する
・高温多湿環境下で薄紙はカール変形しやすい一方で吸湿によって剛性が低下しやすい
なども考慮しなければならない。すなわち、使用目的や使用環境による条件が重なると、例えシート材ガイドリブ15i’や紙押さえコロを用いても、プローブ先端部による紙先端部の変形防止や紙先端部のプローブ先端部への引っ掛かりによる紙搬送不良の発生を完全に防止できないことがある。そして、特に吸湿してカール変形しやすいうえに剛性も低下しやすいため容易に変形しまう薄紙の先端部に大きな上向きカール変形が生じたまま、薄紙がS字型表面性検知センサ15の検知部に搬送されてくると、上記のような問題を防止することは困難になる。
【0038】
上記問題の確認検討として、既存製品に後付け搭載可能なようにS字型表面性検知センサ15(以下、単にセンサともいう)を小型化して実機内部に組み込み、次のような評価を行い調べた。すなわち、実際に使用される頻度の高い用紙の中から特に薄い紙として坪量52gの平滑な紙を選んで先端部に上向きカールを形成したうえで通紙評価を行い、この薄紙がセンサの検知部を通過できるかどうかを調べた。
【0039】
図13(A)、(B)、(C)はこの実験に使用したS字型表面性検知センサ15のS字型プローブ15a、プローブホルダー15c及びこれらを組み合わせた部品を組み込んだ状態のセンサ全体の主な構成要素を各々示したセンサ全体斜視図である。図13(A)では圧電素子15bを平坦部に形成されたS字型プローブ15a(以下、単にプローブとも記す)を示している。圧電素子15b表面には信号線接続用のハンダ電極15b’、プローブ板金後端部にはプローブ固定ネジ取り付け穴15a’、プローブ先端部には耐久磨耗対策としてセラミックチップ16が各々形成されている。なお、R1はS字型プローブ15aの第1折り曲げ部、R2は第2折り曲げ部である。
【0040】
一方、図13(B)はこのプローブ15aを固定保持してプローブ回転軸15eに取り付けるためのプローブホルダー15cを示す。ここで、取り付け座面中央部にプローブ固定用のネジ穴15c’(取り付け部)、下側にプローブ回転軸15eに取り付けるための軸受け15c”が設けられている。
【0041】
両者を組み合わせて座金付き固定ネジ15dで固定し、図13(C)に示すように、プローブ15aの左右に紙押さえコロ17(一対のシート材押さえ手段)を、各アームを介してプローブ回転軸15eに回転可能に固定する。そして、不図示のプローブ加圧バネよりも強い加圧強度のバネを用いてシート材7をシート材搬送平面に押し付けるよう構成した。
【0042】
図14(A)、(B)は上記のように構成したS字型表面性検知センサ15の検知部を側面から見た図であるが、センサ先端部をわかりやすくするため、手前側の紙押さえコロ17を省略して記載している。ここで、図14(A)のように紙面の右手上流側から先端が上向きにカールした薄紙(シート材7)が侵入してくる場合を考える。S字型プローブ15aのセンサ先端部(ここではセラミックチップ16の先端部)は、検知性能を高めるために垂直に近い角度で待機している。図13(C)に示すように、例え左右の紙押さえコロ17がシート材7を強く押さえていたとしても、紙押さえコロ17とS字型プローブ15aの先端部の板金端面との間には紙押さえコロ17を当接するためのアーム部材などの厚さ分だけ隙間ができてしまう。また、S字型プローブ15aの当接領域を通過しようとする薄紙の先端部は柔軟性が高いため、図14(A)のように搬送されてきたシート材7は、図14(B)のように局所的にS字型プローブ15aの上方向に侵入しようとしてさらに変形してしまう。
【0043】
結果として図14(C)のようにS字型プローブ15a当接部を中心としたジャム(シート材搬送不良)を生じて紙搬送が停止し、例え通過できたとしても通紙後の紙先端部に局所的な凹形状を残してしまうという現象が生じた。
【0044】
また、このような構成では、例え紙先端部が通過できたとしても、次のような問題が生じる。例えば、図15(A)のように通過中の紙先端部がなんらかの他の要因でジャムを生じてしまった場合を考える。さらに、図15(B)のように、図15(A)で生じたジャムを解消するため、ジャム紙を紙搬送上流側に引き戻して除去しなければならないようになった場合を考える。通常このような状態では、転写前搬送ローラ7eが逆方向回転不可能に設計されているため、まず、転写上ガイド板9先端部をシート材搬送方向上流側に設けられた回転軸を中心として引き上げる動作を行う。この引き上げ動作に連動し、転写前搬送ローラ7eの圧解除機能が作動するようになっており、転写上ガイド板9の先端部を引き上げ、転写前搬送ローラ7eの圧解除機能を作動させてからジャム紙を引き戻すように設計されている。このような操作をすれば、転写上ガイド板9上に固定されているS字型表面性検知センサ15全体は紙表面から完全に離間され、どのようにジャム紙を引き戻されてもセンサには影響ないはずである。しかし、ユーザによってはこの操作を行わずに、逆転防止されているジャム紙を強引に引き戻してしまう場合がないとはいえず、そのような場合多くの紙は途中で破れてしまう。このような場合、紙が破れる前にS字型表面性検知センサ15のプローブ当接部に対し、ジャムで変形した紙が引き戻されることによってS字型プローブ15aに加わる力は、左右の紙を紙押さえコロ17で押さえていたとしても無視できない。ときには、まず図15(B)中央の矢印方向に逆回転してS字型プローブ15a先端部がシート材搬送平面に押し付けられ固定状態になった後、さらに下流側のジャム紙が衝突してくるのでプローブ先端部が搬送方向と逆方向に変形して破損するおそれがある。
【0045】
このような問題に対し、本発明者はすでに特許文献5において、プローブを保護するセンサケースを設け、ケースごと検知部から回避可能とすることでプローブ先端部への力の集中を軽減する構成を提案している。しかし、この対策においても引き戻された紙表面が直接プローブ先端部に接触したまま上方への回転回避動作を行うので、この回避動作中にプローブ先端部に紙の引き戻し力が作用することを完全に防ぐことはできなかった。
【0046】
上記問題を解消または軽減するには、次のような対策が有効と考えられる。
・上記センサ固定ベース15iの下部に設けられているシート材ガイドリブ15i’を大きくしてシート材搬送平面との隙間を小さくし、紙(シート材7)とS字型プローブ15aの接触面積を極力小さくする。
(即ち、カールした薄紙の先端部が乗り越えなければならないプローブ先端部の高さを減少させ、また引き戻されたジャム紙もプローブ先端部をすり抜けやすくする)
・上記紙押さえコロ17を極力S字型プローブ15aの左右近傍に配置する。
【0047】
しかし、次のような問題がある。
・シート材ガイドリブ15i’とシート材搬送平面との隙間を余り少なくすると、厚紙搬送時の紙表面とリブ表面の摺擦が強くなりすぎて紙表面に擦り傷や摺擦帯電などの影響を与え、画質に影響する。
・紙押さえコロ17を当接するには紙押さえコロ17を支持するアームが必要であり、このアームの厚さ分だけS字型プローブ15aとの間には距離を生じるため、十分近傍に設けることは困難である。
【0048】
また、ジャム処理の問題に対しては、ジャム紙が引き戻された場合は他の部材が紙表面と接触してプローブ先端部と紙表面との接触圧を軽減させることが望ましい。しかし、上記構成ではこのような部材の付与は困難であり、ジャム処理時にこのように作用させるような機構を設けることは構成全体の複雑化とコストアップを招き、好ましくない。
【0049】
本発明は上記問題に鑑みてなされたもので、ユーザによる紙種選択設定作業が不要で、如何なる紙が使用されても、良好な熱処理と定着及び画像形成を効率良く行える表面性識別装置、シート材識別装置及び画像形成装置を提供することを課題とする。また、画像形成前のシート材がどのような変形をしたままで使用されても検知部でシート材搬送不良やシート材先端部の局所的な変形を招くことのない表面性識別装置、シート材識別装置及び画像形成装置を提供することを課題とする。さらに、ジャム処理時に逆方向にシート材が引き戻されても検知部に破損を招くことのない表面性識別装置、シート材識別装置及び画像形成装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0050】
本発明の表面性識別装置、シート材識別装置及び画像形成装置は、前記課題を解決するため、以下の構成を備える。
【0051】
(1)圧電素子部と、先端当接部と、前記先端当接部が被測定物の走査方向前後に振動可能となる機械的構造部と、前記走査方向に垂直ないし垂直に近い且つ走査平面に平行ないし平行に近い回転軸に回転可能に固定される固定端部とを有するプローブと、前記回転軸を中心として前記走査方向と逆方向に前記プローブを加圧する加圧手段とを備える表面性識別装置であって、前記プローブの前記固定端部を取り付ける取り付け部と、前記取り付け部に取り付けられた前記プローブが前記回転軸に回転可能となるよう固定する軸受け部と、前記先端当接部の左右側面に所定の距離を隔てて設けられる一対のプローブ先端保護リブとを有し、前記プローブを保持するプローブ先端保護リブ付きプローブ保持部材を備え、前記先端当接部は、前記走査方向の側面から見たとき、前記一対のプローブ先端保護リブから前記被測定物の側に所定の長さ露出し前記被測定物の表面に当接することを特徴とする表面性識別装置。
【0052】
(2)前記(1)に記載の表面性識別装置と、シート材を搬送するシート材搬送手段とを備え、前記被測定物は、前記シート材搬送手段により搬送されるシート材であり、前記表面性識別装置は、前記シート材を前記シート材搬送手段により搬送させて、前記プローブ先端保護リブ付きプローブ保持部材によって保持された前記プローブにより走査し、該シート材の表面性を識別することを特徴とするシート材識別装置。
【0053】
(3)前記(2)に記載のシート材識別装置と、前記先端当接部を通過した前記シート材にトナー像を形成する画像形成手段と、前記トナー像を加熱及び加圧して前記シート材の表面に定着させる定着手段と、前記シート材と該シート材の特性に応じて前記トナー像を前記定着手段により溶融固着するための定着温度とシート材搬送速度及び複数シート材搬送時のシート材搬送間隔の情報とを関連づけた判定テーブルと、前記シート材識別装置の識別結果に基づき前記判定テーブルを参照し、該判定テーブルの情報に応じて前記定着手段を制御する制御手段とを備えることを特徴とする画像形成装置。
【0054】
(4)前記(2)に記載のシート材識別装置と、前記先端当接部を通過した前記シート材にインクを吐出して画像を形成するインク吐出式画像形成手段と、前記シート材識別装置の識別結果に基づき前記インク吐出式画像形成手段のインク吐出量を制御する制御手段とを備えることを特徴とする画像形成装置。
【0055】
(5)前記(2)に記載のシート材識別装置と、前記先端当接部を通過した前記シート材にサーマルヘッドを用いてインクリボンのインクを熱転写させる熱転写式画像形成手段と、前記シート材識別装置の識別結果に基づき前記熱転写式画像形成手段の前記サーマルヘッドへの供給電力を制御する制御手段とを備えることを特徴とする画像形成装置。
【発明の効果】
【0056】
本発明によれば、表面粗さ検知用プローブを被測定物表面の大きな凹凸との衝突で破損することを防止できる。また、プローブ先端部周辺において万一何らかの外力が検知方向以外の方向から作用するようなことが生じても作用範囲をプローブ先端部の限られた範囲に制限して、全ての外力がプローブに作用することを避けることができる。
【0057】
また、プローブ保護部材自体の強度を増すとともに該プローブを樹脂で形成した場合の製造時の変形を防止し、加工精度を高めることで検知結果の信頼性を向上できるようになる。
【0058】
また、万一先端部が大きく変形したシート状被測定物を通過させた場合にも変形したシート先端部を矯正しながら滑らかに検知部に導いて測定可能とするとともに、シート先端部がプローブ上部に侵入してシート材が搬送停止することを防止できる。また、シート材の一部が通過した後にジャム(シート材搬送不良)が発生して搬送方向と逆方向にシート材を引き戻された場合にも、シート材表面とプローブ先端部の接触圧を軽減して検知動作時と逆方向に力が作用した場合のプローブ破損を防止できる。
【0059】
また、より高精度にシート材の剛性差を識別することができる。
【0060】
また、プローブ保護部材と被測定物表面との摺擦帯電の発生を防止できる。
【0061】
また、画像形成装置本体のシート材搬送を阻害することなく、シート材に応じて次のような画像形成装置を実現できる。すなわち、定着条件を最適化できるトナー像定着式画像形成装置やインク吐出量を最適化できるインク吐出式画像形成装置、加熱電力を最適化できる熱転写式画像形成装置を実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0062】
以下本発明を実施するための最良の形態を、実施例により詳しく説明する。
【実施例1】
【0063】
図1(A)〜図1(C)は各々本発明の実施例1に係るシート材識別装置のプローブ先端保護リブ付きプローブホルダー斜視図、プローブ先端保護リブ付きプローブホルダー側面図、及びこれらを組み込んだセンサ全体斜視図である。尚、これらの各図において、図13に示したものと同一要素には同一符号を付している。
【0064】
本実施例では、図1(A)に示すように、従来のプローブホルダー15c(図13(B)参照)の先端側まで左右の壁を延長したリブが形成されたプローブ先端保護リブ付きプローブホルダー18(プローブ先端保護リブ付きプローブ保持部材)を用いている。そして、その側面形状は、図1(B)に示すように、リブの最下点を中心として紙面右手の紙搬送上流側は緩やかな曲面部18aで構成される(走査方向上流側リブ形状)。一方、紙面左手の紙搬送下流側には第1直線部18bと第2直線部18cの間に角部18dで構成されている(走査方向下流側リブ形状)。
【0065】
このような特徴を有する新規のプローブ先端保護リブ付きプローブホルダー18に、従来と同様に軸受け15c”の近傍(軸受け部近傍)にあるプローブ固定ネジ取り付け穴15a’にS字型プローブ15aをネジ止めする。そして、紙押さえコロ17付きのセンサ固定ベース15iにセットすると図1(C)に示すようになる。このように、プローブ先端保護リブ付きプローブホルダー18のリブは、S字型プローブ15aのプローブ先端部の左右側面に所定の距離を隔てて設けられる。また、一対の紙押さえコロ17は、プローブ先端保護リブ付きプローブホルダー18の両端部近傍に設けられる。
【0066】
尚、本構成におけるS字型プローブ15aは、より詳しくは短冊状金属板金をシート材の走査方向側面、すなわち搬送方向側面から見てS字型になるように折り曲げた第1折り曲げ部R1と第2折り曲げ部R2とを有するS字型板金である(図12、図13参照)。以下、実験結果について記載するが、材質及び寸法や速度などの各数値はあくまで本実施例の一条件であり、本発明のセンサの性能は必ずしもこれらの条件に限定して得られるものではない。また、被測定物や装置の形状及び大きさ、検知速度などさまざまな条件の組み合わせに応じて各々適した材質及び寸法や速度など許容可能範囲も含めて多数存在するものである。
【0067】
ここで、S字型プローブ15aはSUS304製で厚さが0.15mm、幅(走査方向に対して垂直な方向の長さは)が4mm(4mm以下)である。このS字型プローブ15a(以降、単にプローブということもある)が上下する開口部の寸法は6mm×6mm、プローブ平坦部の長さが15mmである。また、圧電素子15b(圧電素子部)は3mm×6mmの大きさで厚さ0.2mmのPZT(チタン酸ジルコン酸鉛)を用いており、この平坦部の第1折り曲げ部R1の端部から2mmだけ固定端側寄りの位置にエポキシ系接着剤により接着されている。
【0068】
また、セラミックチップ16はジルコニア製の厚さ0.3mmで、円形の下端にDカット面(Dカット部)を有する円盤状の形状をしている。そして、サイズとしては円盤の直径=3.6mm、Dカット幅=2mmの形状及びサイズのチップを使用し、プローブ先端部にロウ付けされている。そして、必ずこのジルコニアチップの先端部が先に当接するようにジルコニアチップの先端部をプローブ板金先端部から距離dだけはみ出して固定されている。ここではd=0.5mmとしてジルコニアチップの先端部が搬送路面と不図示の加圧手段(ねじりコイルバネ)によって略0.1Nの力で当接され、搬送されるシート材表面と接触する構成となっている。このDカット面の水平部でシート材7を摺擦することで搬送方向の前後方向(走査方向前後)及び回転軸を中心とした上下回転方向に振動と離着衝撃を繰り返す。そして、圧電素子15bに、シート材7表面の凹凸及び摩擦係数に応じた振動及び衝撃による歪を誘起することで電気信号を発生し、その強度差(振動及び衝撃強度差)を基に主にシート材表面の粗さ(表面性)を識別している。
【0069】
図2(A)〜図2(C)は各々このようにして構成されたプローブ先端保護リブ付きプローブホルダー18を有するセンサユニットに、紙先端が大きく上方向にカール変形した薄紙(シート材7)を通紙させた場合の紙搬送側面から見た紙の搬送状態の概念図である。ここでもやはり、センサ先端部の動作を見やすくするために手前側の紙押さえコロ17(紙押さえ力=0.3N)は省略してある。
【0070】
まず、図2(A)では、紙面右手から先端がカールした薄紙がセンサの検知部に侵入しようとしている状態である。このように紙が検知部を通過する前の状態では、紙押さえコロ17もS字型プローブ15aも完全にシート材搬送平面に当接している。この図からは紙押さえコロ17の当接状態は観察できないが、当接状態のプローブ先端保護リブ付きプローブホルダー18の右下から0.5mm程度の高さで露出しているプローブ15aの先端セラミックチップ16はシート材搬送平面に当接していることがわかる。なお、プローブ15aの露出は(所定の長さ)少なくともシート材7の表面の凹凸量〜0.5mmの範囲であればよいので、ここでは0.5mmとしている。このときのプローブ先端保護リブ付きプローブホルダー18(以下、単にプローブホルダーともいう)の状態は、先端リブ部の第1直線部18bがシート材搬送平面に対して少なくとも0.2mm以下の距離で最接近するようにその形状と当接角度が調整されている。形状誤差や取り付け誤差を含めても少なくともプローブ先端部より下側に第1直線部18bが位置することが無いように規制されているので、この当接状態でプローブ先端部がシート材搬送平面から離間することは無い。
【0071】
次に、紙先端がさらに左方向に搬送されていくと、カールした紙の先端部の位置は0.5mmより十分高いため、プローブ先端部に衝突する前にプローブホルダー18の先端リブの曲面部18aに衝突する。そして、その曲面部18aに沿ってカールした紙の先端部が下方に押し下げられる。これとともに、この紙先端変形の反発力によってプローブホルダー18の先端部も上方に回転して回避するので紙先端部を必要以上に堰き止める作用は働かず、結果として紙先端が局所的に変形することを防止する。このままさらに進行すると、図2(B)のように紙先端がプローブホルダー18のリブ外周から露出したS字型プローブ15a先端部に差し掛かる。しかし、プローブ先端部はその左右極近傍(ここではプローブ板金端部とリブ表面間の隙間は0.5mm)にあるプローブホルダー18のリブで覆われており、且つプローブ板金自体の幅も4mmしかない。このため、合計5mm(5mm以下)程度のわずかな隙間に紙先端部の一部が変形して侵入することは極めて困難となる。そして、紙先端部はプローブ先端部の上方に沿って変形することなく、0.5mm程度露出したプローブ先端部を乗り超えてそのまま検知部を通過することができ、その後は図2(C)に示すようにプローブ先端部で摺擦されながら紙は搬送されて行く。
【0072】
このように本構成を用いることにより、S字型プローブ15aと一体で上下回避動作可能な紙ガイド機能を有するリブをプローブホルダー18に設けることで、次のような利点が得られる。
・可能な限りシート材搬送平面近傍まで紙ガイドリブを延長でき、プローブ先端部と紙先端部の直接衝突を回避して、紙先端部をプローブ先端部に緩やかに誘導できる
・リブはプローブ板金の極近傍に配置できるので、リブ間の隙間を紙先端部が変形して侵入できなくなるほど狭くすることが容易となる
・リブは紙の進行につれてプローブとともに回避動作を行うので余分な負荷が紙先端部に加わらない
【0073】
また、実際にこれまでの評価に用いた紙種の中で最も薄い坪量52gの薄紙の先端部に約3mmの高さを有する上向きカールを強制的に付与して10枚通紙を繰り返した結果、次に示すように、先端カール変形した薄紙通性において明確な性能差を確認できた。
・従来構成のセンサでは、
10枚中7枚で搬送不良が生じ、かろうじて通紙できた残り3枚の紙においても通紙後先端部にプローブとの衝突による局所的な凹み変形がついていた
・これに対して本実施例の構成を用いたセンサで繰り返し同様の通紙を行った結果、
どのような先端カール変形した薄紙を用いてもその搬送を邪魔することなく、且つ、紙先端部に局所的な変形を生じること無く、紙を通過させて紙の表面粗さ及び紙の剛性検知を行うことができた
【0074】
また、万一、図3(A)に示すように、紙先端部通過後になんらかの他の要因で紙がジャム(搬送不良)を起こして搬送停止した後、ジャム紙を図3(B)に示すように、無理にシート材搬送方向逆側に除去された場合を考える。
【0075】
このジャム紙の引き戻し力が作用すると同時に、プローブ先端部及びプローブホルダー18先端部のリブは通常の検知動作時の左上方向への回避動作と逆方向に回転する。そして、プローブホルダー18の回転軸近傍湾曲部である曲面部18aが、センサ固定ベース15iの回転軸下方近傍のプローブ通過用開口部後端壁の角部に形成されたプローブホルダー下端ストッパー15i”に衝突して停止する。このとき、プローブホルダー18のリブ先端角部18dがシート材搬送平面に当接(圧接)し、一方プローブ先端部はシート材搬送平面に最も強く当接する瞬間を通過した後に離間するようにストッパー15i”の作用位置が決められている。
【0076】
このため、それ以上引き戻し力が作用してもプローブホルダー18はそのまま回転できない。さらに引き戻し力が作用するとプローブホルダー18のリブ先端角部18dがさらに強くシート材搬送平面に押し付けられて、この角部18dを支点としてプローブホルダー18の軸受け部15c”が回転軸15eから浮き上がるように回避動作を行う。このため、プローブ先端部は回転軸15e表面と軸受け部15c”内面間の隙間分だけプローブホルダー18とともにさらに上方に離間する。なお、この間の回転軸15e表面と軸受け部15c”内面間の隙間はより詳細には、通常のプローブ当接状態では加圧手段により常にこの回転軸表面上端部と軸受け内面は接触状態にある。そして、上記ストッパー15i”による停止状態でほぼ軸受け部15c”内面が回転軸15e表面と非接触状態になり、さらにリブの角部18dを支点として回避動作を行った時点で回転軸15e表面下端部と軸受け部15c”内面が接触状態になる。
【0077】
このようにして、引き戻された検知部下流側のジャム紙は、まずシート材搬送平面に強く当接されたリブの角部18dによって堰き止められ、リブの角部18dはジャム紙表面の凹凸を下方に均すように作用する。このため、その後方でシート材搬送平面から離間しているプローブ先端部に引き戻された紙表面が衝突することをほぼ回避することができる。
【0078】
但し、万一厚い紙でジャムが発生した場合、基本的に厚紙はその剛性が高いために図3(A)のように変形するようなジャムを生じにくいが、その剛性が高いため、リブの角部18dによってジャム紙表面の凹凸を均し難くなる。このため、この軸受け部15c”に過剰な圧力が加わってプローブホルダー18を破損する可能性があるため、より好ましくは特許文献5に記載したようにセンサケース全体が傾いてこの圧力を緩和する構成にするとよい。
【0079】
または、図3(C)に示すように、S字型プローブ15aを保持する回転軸15eの軸受け部15c”を軸受けユニット15lとしてセンサ固定ベース15iから分離可能となるように別体化してもよい。すなわち、センサ固定ベース15i先端側にプローブ回避用回転軸15e’を追加してこれに回転軸加圧用ねじりコイルバネ15m(以下、バネ)を設ける構成とする。そして、このバネ15mの一方の端部をセンサ固定ベース15i前部の溝に固定し、他方のバネ15m先端部を延長してプローブ回転軸加圧アーム15nとしてプローブの回転軸15eを上から加圧するように取り付ける。そして、軸受けユニット15lをセンサ固定ベース15iの座面部に加圧当接する構成とする。このように、プローブホルダー18先端部に逆方向に大きな力が作用した際、プローブとプローブホルダー18及び回転軸15eを軸受けユニット15lごとセンサ固定ベース15i先端部の回転軸15eを中心として矢印方向に回転回避させる構成でもよい。なお、この構成では同じ回転軸15eに形成されている紙押さえコロ17も含まれる。
【0080】
なお、後者の場合(軸受けユニット15lごと矢印方向に回転回避させる構成)、回避動作をスムーズに行うためにセンサ先端側にも回転軸を設けてS字型プローブ15a及び紙押さえコロ17を回転軸15eごと回転回避させている。しかし、多少のばたつきを許容できる場合には次のようにしてもよい。すなわち、センサ固定ベース15iから分離可能に別体化した軸受けユニット15lを単純に他の加圧手段で垂直方向にプローブ当接圧より十分大きく且つ紙の引き抜きが可能な範囲の圧力で押さえつけて上下方向に揺動可能に固定するだけの構成にしてもよい。
【0081】
以上により、万一先端部が大きく変形したシート状被測定物を通過させた場合にも変形したシート先端部を矯正しながら滑らかに検知部に導いて測定可能とするとともに、シート先端部がプローブ上部に侵入してシート材が搬送停止することを防止できる。また、シート材の一部が通過した後にジャム(シート材搬送不良)が発生して搬送方向と逆方向にシート材を引き戻された場合にも、シート材表面とプローブ先端部の接触圧を軽減して検知動作時と逆方向に力が作用した場合のプローブ破損を防止できる。
【実施例2】
【0082】
図4(A)〜図4(C)は各々本発明の実施例2に係るシート材識別装置の補強型プローブ先端保護リブ付きプローブホルダー斜視図、補強型プローブ先端保護リブ付きプローブホルダー正面図、及びこれらを組み込んだセンサ全体斜視図である。尚、これらの各図において、図1に示したものと同一要素には同一符号を付している。
【0083】
本実施例では、図4(A)及び図4(B)に示すプローブホルダーを用いる。すなわち、実施例1で示したプローブ先端保護リブ付きプローブホルダー18の左右先端のリブを補強ピラー19aで連結した(1箇所以上連結)補強型プローブ先端保護リブ付きプローブホルダー19を用いる。また、実施例1と同様にS字型プローブ15aを座金付き固定ネジ15dでネジ止めして、紙押さえコロ17付きのセンサ固定ベース15iにセットすると図4(C)に示すようになる。
【0084】
尚、本構成におけるS字型プローブ15a及びPZTの基本的構成は実施例1と同じであるため、説明を省略する。
【0085】
本実施例では、プローブホルダーの左右先端リブを独立のまま用いるのではなく次のように構成する。すなわち、プローブ板金と接触しないように板金周辺から十分な隙間を確保した位置に、プローブの検知動作中の変形領域を考慮してその動作の妨げとならない大きさの連結部材を設けて左右のリブを部分的に連結補強する。且つ、連結部材の表面側を左右のリブ表面と一体化して形成することを特徴としており、このような連結部材である補強ピラー19aを形成することで、次のようなメリットが得られる。
・樹脂加工成形時の、左右のリブの反り変形を抑制し形状精度を向上できる
・リブ先端部の剛性を高くし、外力が作用した際のプローブ先端保護性能を向上できる
・リブの隙間を埋めることで引き戻された際のジャム紙からプローブ先端を保護できる
【0086】
特に本実施例の構成を用いることにより、実施例1のジャム処理操作において、逆方向に引き戻されるジャム紙表面に万一、左右のリブ間の隙間位置に局所的な突起状の変形を有するジャム紙が引き戻された場合でも、次のような効果が得られる。すなわち、この補強ピラー19aによって、ジャム紙の変形部も下方に押し付けて均すことが可能となり、どのような形態のジャム紙が発生してもプローブを損傷することなく、センサの検知性能の安定性向上と破損防止性能の向上を実現できる。
【実施例3】
【0087】
図5(A)、図5(B)は各々本発明の実施例3に係るシート材識別装置の補強型プローブ先端保護リブ付きプローブホルダー19を組み込んだ紙押さえレス型センサの全体斜視図と厚紙通紙中のセンサ断面図である。この図において、図4に示したものと同一要素には同一符号を付している。
【0088】
本実施例では、図5(A)に示すように、実施例2の構成に対してS字型プローブ15aの左右の紙押さえコロ17を廃止してS字型プローブ15aのみを取り付けたシンプルな構成になっている。本実施例の構成は、基本的にシート材7の表面粗さのほかにシート材7の厚み情報も検知する構成に対して好的に用いられるべきものである。
【0089】
本発明の基本構成であるプローブホルダーの先端部を延長してシート材ガイドリブを兼ねる構造とすることにより、特に紙押さえ手段(紙押さえコロ17)を設けなくても通紙に問題は無い。
【0090】
一方、紙押さえ手段を設けると、紙搬送時の紙(シート材7)の屈曲変形量が抑制されてしまうため、理想的には紙押さえがないほど紙の厚さ(剛性)情報の検知特性を向上できることは以前から理論的には明らかであった。しかし、以下の理由から紙押さえ手段を用いて検討してきた。
・実際の検討では紙押さえ手段の無い構成で、紙搬送を安定して繰り返すことは困難
・紙押さえ手段の当接圧を適度に調節することで、紙の表面粗さと紙厚情報を適度に調整して所望の制御量に合わせ込むことができる
【0091】
しかしながら、紙の厚さ情報をより強く検知させたい場合には、本実施例の構成のように紙押さえコロ17をなくすことで、以下のような点を実現することが可能となった。
・紙厚検知性能の向上
・部品点数の削減及びコストダウン
【0092】
本構成は、屈曲させた際のシート材の剛性差に応じてシート材のループ高さが変化することを利用して、各シート材の剛性差に応じてプローブ先端部の振動及び衝突強度を変化させてシート材の剛性差を識別する方法である。この本構成の方法を用いることにより、図5(B)の断面図に示すように厚紙通紙時には本センサのS字型プローブ15aは従来の紙押さえコロ17が設けられていた場合よりもはるかに大きな力でホルダーごと大きく矢印方向に回転して跳ね上げられる。そして、上部に設けられたセンサカバー15jの内壁と衝突して強い信号を発生するとともに太矢印方向(Fdown)に大きな反作用力が生じてプローブ先端部をシート材表面に衝突させる。このため、再び強い信号を発生するとともに跳ね上げられるという工程が繰り返され、厚紙が通紙された場合にその紙が厚いことをより強調して検知することが容易となる。 一方、薄紙に対しても、従来の紙押さえコロ17を用いていた構成では薄紙同士で微妙な厚み差(剛性差)があっても紙押さえコロ17によっていずれもシート材搬送平面に押し付けられてしまう。このため、表面粗さの差以外を反映しにくく、薄紙同士の微妙な厚み差(剛性差)の識別が困難であったが、上記構成により微妙な厚み差(剛性差)が検出できるようになり、制御の幅を広げることが可能となった。
【0093】
図6はこのように紙押さえコロ17を廃止した本実施例を用いた実験結果の一例である。従来の紙押さえコロ17を用いた構成(プローブ当接力=0.1N、紙押さえ力=0.2N)と本実施例の紙押さえコロ17を廃止した構成(プローブ当接力=0.05N)の2通りのセンサを用いて、各々電子写真方式を採用するプリンタ内部に搭載した。そして、今回は紙種を増やして14種類の紙(シート材7)を搬送速度266mm/秒の速度で高速搬送させながら検知させた際の検知結果を示したものである。なお、各センサの出力の最大値が3.0v以内に収まるように入力電圧または信号処理回路の増幅率で調整している。ここで、グラフの横軸の紙種は左から右に掛けて定着に必要な温度が高くなる順に並べており、基本的に表面粗さが粗いほど、厚さが厚いほど右側に位置するようになっている。ただし、F90gとF105gのみ逆転しており、これはF90gの表面粗さの方がF105gより大きく、その定着性に与える影響の度合いが厚さの差による影響より大きいためと考えられる。
【0094】
このグラフからわかるように従来の紙押さえコロ17を用いた構成の検知特性(黒三角印プロットの破線)では平滑紙のF52gやF120g紙、紙表面に波型の修飾が施されたラフ紙W105g紙の信号レベルが特に低くなっている。これは、F52gについては従来の紙押さえ手段を用いた評価では、その剛性が弱すぎて紙押さえ手段の圧力に負けてしまい、検知部周辺でほとんど屈曲変形がほとんど生じないことが原因とも考えられる。一方、F120gやW105gは同系列(種類と厚み)の紙に比べて表面粗さが比較的少なく加工されていることが要因と思われる(W105gはラフ紙であるがあまりに定着しにくくなるため同じ系列のW90gよりも表面粗さ加工の量が抑制されている)。しかしながらこれらの紙厚は厚いため、その熱容量分に見合った加熱を行わなければ定着性が低下してしまう。従ってこのような検知特性を基に定着器12の温度制御を切り替えると定着性の不足を招くおそれがあり、その度合いによっては別途紙厚検知用のセンサを設ける必要があった。
【0095】
一方、本実施例の構成を用いることで余分な紙押さえ力を排除し、紙の剛性に応じて生じさせる屈曲変形量を最大限活用できるようになった。このため、グラフの検知特性(黒丸印プロットの実線)に示すように従来構成のセンサで特に低くなっていた信号レベルを補って所望の制御に一致するレベルまで高くすることができるようになる。また、同時に紙押さえ手段が不要となるので、部品点数を半減でき、コストダウンも可能となる。
【0096】
ここで、以上の各実施例におけるプローブ先端保護リブ付きプローブホルダー(18や19)はいずれもPOM(ポリオキシメチレン)などの樹脂で成形された部品を想定している。しかし、特にS字型プローブ15aとともにこれを加圧する不図示の加圧手段(ねじりコイルバネなど)の加圧力強度とシート材7の材質及びその搬送速度の組み合わせによっては次のような問題が生じる。すなわち、リブ表面とシート材表面との摺擦強度が高くなり過ぎてシート材表面に部分的な帯電を招き、その後の転写工程において画像上に帯電跡を生じるおそれがある。このため、より好ましくは樹脂表面に帯電防止加工を施すか樹脂そのものを導電性材料で構成することが望ましい。また、このホルダーは必ずしも樹脂で成形された部品である必要は無く、同様の機能を果たす形状に加工されていれば金属その他の材料で構成されていてもよい。
【実施例4】
【0097】
図7は本発明の実施例3に係るシート材識別装置を搭載したインクジェット型画像形成装置の断面図である。
【0098】
本実施例では、S字型表面性検知センサ15を図7に示すようなインクジェットプリンタに応用することにより紙種検知機能付きインクジェットプリンタ22を構成している。
【0099】
本画像形成装置は、この断面構造において次のように構成されている。すなわち、給紙トレイ23、インクジェット用の給紙ローラ25(シート材搬送手段)、紙ガイド24、ピンチローラ対26、記録ヘッド27(吐出式画像形成手段)、プラテン28、排紙ローラ対29等で構成されている。
【0100】
この方式の画像形成装置は、記録ヘッド27までシート材7を搬送した後、シート材移動方向に対して直角なシート材幅方向に記録ヘッド27を往復運動させて主走査方向の画像を形成し、副走査方向についてはステップ送りで画像を形成する方式が主流である。本実施例もこの方式であるため、実施例1乃至実施例3で搭載した電子写真方式の画像形成装置に比べると比較的紙搬送速度が遅く、コスト的にもより安価な構成が求められる。このため、本実施例ではコストを安価に抑えるため、実施例3の紙押さえ手段(紙押さえコロ17)を無くしたセンサ構成を用いてより安価な紙種検知機能付きインクジェットプリンタを実現している。
【0101】
尚、本画像形成装置では、一般的にはシート材7の特性としてシート材表面によるインクのはじき性や浸透性などに関連するシート材7の表面粗さや材質差に関する情報の方が厚さ情報より重要である。厚さに関しては薄いシート材7に対してインクを載せすぎた場合の画像の裏移りによる裏面のインク汚れやシート裏面に画像が透けて見えるなどの問題が懸念される程度である。そして、一定以上の厚さを有するシート材7においては搬送路に通紙可能な厚さ範囲内であれば、余り厚紙の識別を細かく行う必要は無く、センサとしては薄紙検知性が十分機能すればよい。しかしながら、本実施例ではこのように紙押さえ手段を廃止して安価に構成させたS字型表面性検知センサ15を用いているため、紙押さえ手段を設けた構成のセンサに比べてより紙厚差に対する検知性能が向上し、余分な厚さ情報まで検知しやすくなる。このため、本画像形成装置の構成では積極的にセンサ検知部周辺にシート材7をその剛性に応じて屈曲変形させるような工夫を設けていない。そのかわり、薄紙の検知信号のみが低く検知されるように、センサ検知部直下の紙ガイド24の紙搬送面に紙ガイド斜面24’を設けた段差構造を付与している。これにより、剛性の低い薄紙のみこの斜面に沿って傾斜しながらプローブ先端部と摺擦されるのでプローブ先端と紙表面の当接圧力が低下して摩擦強度が減衰し、結果として検知信号を低くできる。一方、所定以上の厚さ(剛性)を有するシート材7はこの斜面部である紙ガイド斜面24’に到達してもすぐに斜面に沿って変形することなく、斜面部との間に隙間を生じながら紙ガイドの平端部における高さを各シート材の剛性に応じて一定長さ分だけ維持する。このため、薄紙より厚いシートでは主にその表面粗さのみが検知されるようになる。
【0102】
このようにして検知された情報に基づき不図示の制御部(制御手段)が、シート材7の表面粗さや材質及び厚さの差など複数の条件に応じたインク吐出量を最適化し制御することが可能となる。このように、本実施例はシート材7の特性に応じた最も良好な画質が得られるようにしたものであり、本実施例の構成により、先端カールを有する薄紙が搬送されても搬送不良を招くことがない。また、ジャム発生時に万一逆方向に引き戻すような力が作用してもプローブを破損することなく安定してシート材7の識別能力の長期に渡る信頼性向上などを促進できるようになる。
【0103】
尚、本実施例では安価に装置を実現することを優先して紙押さえ手段(紙押さえコロ17)を有しない低コストのセンサ構成を用いた。しかし、特にコストを優先する必要が無い場合には紙押さえ手段とセンサ検知部周辺にシート材屈曲構造または手段を設けてプローブの当接圧と紙押さえ圧力を調整する方法で実現しても良い。
【実施例5】
【0104】
図8は本発明の実施例5に係るサーマルヘッド型画像形成装置の断面図である。
【0105】
本実施例では、S字型表面性検知センサ15を図8に示すようなサーマルヘッドプリンタに応用することにより紙種検知機能付きサーマルヘッドプリンタ30を構成している。
【0106】
本発明におけるサーマルヘッド型画像形成装置は、インクリボン33、一対のインクリボン搬送ローラ31、サーマルヘッド32(熱転写式画像形成手段)、ヘッド対向板兼紙搬送ガイド34等で構成されている。通常、プリント信号を受け取ってから不図示の給紙ローラ及び紙搬送ローラ(シート材搬送手段)によりシート材7はヘッド対向板兼紙搬送ガイド34と給紙側のインクリボン搬送ローラ31のニップ部まで搬送される。そして、シート材7はインクリボン33とヘッド対向板兼紙搬送ガイド34の間に挟持された後、インクリボン33に密着したままインクリボン33と共にサーマルヘッド32部まで搬送される。ここで、サーマルヘッド32部にプリント信号に応じて必要な電力が供給されてインクリボン33上のインク層33’を加熱溶融して熱的にシート材表面に転写する。これにより、そのシート材7上にインク画像33”を形成した後、搬送ローラ部の動作によって順次送り出されるように構成されている。
【0107】
この方式の画像形成装置も上記実施例で搭載した電子写真方式の画像形成装置に比べると比較的紙搬送速度が遅く、コスト的にもより安価な構成が求められる。このため、本実施例ではコストを安価に抑えるため、実施例4と同様に紙押さえ手段を無くしたセンサ構成を用いてより安価な紙種検知機能付きサーマルヘッドプリンタを実現している。
【0108】
本実施例では、ヘッド対向板兼紙搬送ガイド34部と給紙側のインクリボン搬送ローラ31のニップ部より手前のヘッド対向板兼紙搬送ガイド34部の対向位置に上記のように安価な構成のS字型表面性検知センサ15を配置する。そして、このS字型表面性検知センサ15のプローブ先端当接部のシート材搬送方向上流側近傍には、上流側シート材凸型変形搬送路34”が設けられている。上流側シート材凸型変形搬送路34”は、ヘッド対向板兼紙搬送ガイド34の上流側傾斜面と対向する紙搬送斜面上ガイド34’で構成され、プローブの下方からプローブ先端部を突き上げるようなシート材搬送を可能とする位置及び角度で設けられている。
【0109】
この上流側シート材凸型変形搬送路34”(シート材変形手段)は、シート材搬送平面の下方向(搬送平面に対してプローブから遠ざかる方向)にシート材搬送路を折り曲げた構成である。このように、シート材搬送路に屈曲構造を設けてセンサS字型表面性検知センサ15の検知信号でシート材7の表面性の情報に加えてシート材7の剛性の情報を検知可能とする構成である。このような構成において、特にシート材7の屈曲変形方法としてプローブの斜め下方からシート材7を搬送してセンサのプローブ先端部でシート材7を屈曲させると、斜め上方向へのシート材搬送力とシート材7の屈曲部における上方向への変形圧力が合成される。このため、プローブ先端部はより強く上方向に持ち上げられやすくなり、紙厚(剛性)検知特性を強化することができる。さらに本構成ではS字型表面性検知センサ15自体も紙押さえ手段を廃した紙厚(剛性)検知性能の高い構成であるため、本構成によってシート材7の紙厚差は特に検知されやすくなっている。サーマルヘッド型画像形成装置は使用されるシート材7の表面粗さが熱抵抗となって表面が粗いシート材ほど温度が上がりにくく、インクの転写性が低下する作用が働く。その一方で、その厚さ(熱容量)によっても同じ温度に加熱するために必要な電力が変化し、厚いシート材ほど供給電力を増大させる必要がある。このため、このようにシート材7の厚さ検知性能を強化した構成を用いることが好ましい。そして、検知された情報に基づき不図示の制御部(制御手段)が、シート材表面の接触熱抵抗に加えてシート材7の熱容量に応じたサーマルヘッド32部への供給電力量を最適化して制御することが可能となる。そして、シート材7の特性に合わせて必要最小限の温度及び電力で最も良好な画質が得られるようになる。
【0110】
本実施例はシート材7の特性に応じた最も良好な画質が得られるようにしたものであり、本実施例の構成により、先端カールを有する薄紙が搬送されても搬送不良を招くことがない。さらに、ジャム発生時に万一逆方向に引き戻すような力が作用してもプローブを破損することなく安定してシート材7の識別能力の長期に渡る信頼性向上などを促進できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0111】
【図1】本発明の実施例1に係るシート材識別装置を示す図で、(A)はシート材識別装置のプローブホルダー斜視図、(B)はシート材識別装置のプローブホルダー側面図、(C)はシート材識別装置の全体斜視図である。
【図2】本発明の実施例1に係るシート材識別装置の先端上向きカールシート搬送前後の状態変化を示す図で、(A)はシート材進入直前のシート材識別装置断面図、(B)はシート材先端部通過途中のシート材識別装置断面図、(C)はシート材識別中のシート材識別装置断面図である。
【図3】本発明の実施例1に係るシート材識別装置の検知部下流側シート材搬送不良発生時のジャム処理前後の状態変化を示す図で、(A)は検知部下流側シート材搬送不良停止中のシート材識別装置断面図、(B)はシート材逆方向引き戻し中のシート材識別装置断面図、(C)はプローブ回転回避型シート材識別装置斜視図である。
【図4】本発明の実施例2に係るシート材識別装置を示す図で、(A)はシート材識別装置のプローブホルダー斜視図、(B)はシート材識別装置のプローブホルダー正面図、(C)はシート材識別装置の全体斜視図である。
【図5】本発明の実施例3に係るシート材識別装置を示す図で、(A)はシート材識別装置の全体斜視図、(B)はシート材識別装置断面である。
【図6】本発明の実施例3に係るシート材識別装置による紙種検知特性を説明するグラフである。
【図7】本発明の実施例4に係る紙種検知装置付きインクジェットプリンタの概略構成断面図である。
【図8】本発明の実施例5に係る紙種検知装置付きサーマルヘッドプリンタの概略構成断面図である。
【図9】従来例に係る電子写真方式の画像形成装置の要部構成断面図である。
【図10】従来例に係るS字型表面性検知センサを示す図で、(A)はS字型表面性検知センサの紙搬送路周辺断面図、(B)はS字型表面性検知センサの取り付け状態上面図、(C)はS字型表面性検知センサによる定着器制御系ブロック図である。
【図11】従来例に係るシート材識別装置の表面粗さ検知特性を説明するグラフである。
【図12】(A)は従来例に係るシート材識別装置のシート厚検知原理説明図で、(B)は従来例に係るシート材識別装置のシート厚検知特性グラフである。
【図13】(A)は従来例に係るシート材識別装置のプローブ斜視図、(B)は従来例に係るシート材識別装置のプローブホルダー斜視図、(C)は従来例に係るシート材識別装置の全体斜視図である。
【図14】(A)は従来例に係るシート材進入直前のシート材識別装置側面図、(B)は従来例に係るシート材先端部通過途中のシート材識別装置側面図、(C)は従来例に係るシート材搬送不良停止中のシート材識別装置側面図である。
【図15】(A)は従来例に係る検知部下流側シート材搬送不良停止中のシート材識別装置側面図、(B)は従来例に係るシート材逆方向引き戻し中のシート材識別装置側面図である。
【符号の説明】
【0112】
1 帯電ローラ
2 感光ドラム
3 露光装置(露光手段)
4 現像器
5 トナー
6 転写ローラ(画像形成手段)
7 シート材(被測定物)
7’ 薄紙
7” 厚紙
7e 転写前搬送ローラ(シート材搬送手段)
8 除電ブラシ(帯電防止部材)
10 クリーニング容器
12 定着器(定着手段)
15 S字型表面性検知センサ(表面性識別装置)
15a S字型プローブ
15a’ プローブ固定ネジ取り付け穴
15b 圧電素子(圧電素子部)
15b’ ハンダ電極
15c プローブホルダー
15c” ネジ穴(取り付け部)
15d 座金付き固定ネジ
15g センサ保持板
15g’ 屈曲センサ保持板(シート材変形手段)
15h 搬送平面板
15h’ 屈曲搬送平面板(シート材変形手段)
15i センサ固定ベース
15i’ シート材ガイドリブ
15l 軸受けユニット
15m 回転軸加圧用ねじりコイルバネ
15n プローブ回転軸加圧アーム
16 セラミックチップ
17 紙押さえコロ(紙押さえ手段)
18 プローブ先端保護リブ付きプローブホルダー(プローブ先端保護リブ付きプローブ保持部材)
18a 曲面部(プローブ先端保護リブ)(走査方向上流側リブ形状)
18b 第1直線部(プローブ先端保護リブ)(走査方向下流側リブ形状)
18c 第2直線部(プローブ先端保護リブ)(走査方向下流側リブ形状)
18d 角部(プローブ先端保護リブ)(走査方向下流側リブ形状)
19 補強型プローブ先端保護リブ付きプローブホルダー(プローブ先端保護リブ付きプローブ保持部材)
19a’ 補強ピラー
22 紙種検知機能付きインクジェットプリンタ(画像形成装置)
25 給紙ローラ(シート材搬送手段)
27 記録ヘッド(吐出式画像形成手段)
30 紙種検知機能付きサーマルヘッドプリンタ(画像形成装置)
32 サーマルヘッド(熱転写式画像形成手段)
33 インクリボン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電素子部と、先端当接部と、前記先端当接部が被測定物の走査方向前後に振動可能となる機械的構造部と、前記走査方向に垂直ないし垂直に近い且つ走査平面に平行ないし平行に近い回転軸に回転可能に固定される固定端部とを有するプローブと、前記回転軸を中心として前記走査方向と逆方向に前記プローブを加圧する加圧手段とを備える表面性識別装置であって、
前記プローブの前記固定端部を取り付ける取り付け部と、
前記取り付け部に取り付けられた前記プローブが前記回転軸に回転可能となるよう固定する軸受け部と、
前記先端当接部の左右側面に所定の距離を隔てて設けられる一対のプローブ先端保護リブと、
を有し、前記プローブを保持するプローブ先端保護リブ付きプローブ保持部材を備え、
前記先端当接部は、前記走査方向の側面から見たとき、前記一対のプローブ先端保護リブから前記被測定物の側に所定の長さ露出し前記被測定物の表面に当接することを特徴とする表面性識別装置。
【請求項2】
請求項1に記載の表面性識別装置において、
前記プローブは、前記被測定物が該プローブに進入する際の前記先端当接部と該被測定物とのなす角度が鋭角となるよう、且つ、前記加圧手段による加圧が該プローブにより跳ね上げ可能な強度で加圧当接するよう、該被測定物の表面を走査し、
前記圧電素子部は、前記被測定物の表面の凹凸及び摩擦係数に応じた振動及び衝撃による歪を誘起することにより電気信号を発生し、該電気信号の強度差を基に該被測定物の表面の表面性を識別することを特徴とする表面性識別装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の表面性識別装置において、
前記プローブは、短冊状金属板金を前記走査方向の側面から見てS字型になるように折り曲げた第1折り曲げ部と第2折り曲げ部とを有するS字型板金であり、
前記圧電素子部は、前記固定端部と前記第1折り曲げ部の間の平坦部表面に形成され、
前記第2折り曲げ部の先端部は、前記先端当接部であり、
前記プローブは、前記圧電素子部及び前記先端当接部が前記一対のプローブ先端保護リブと非接触になるように、前記プローブ先端保護リブ付きプローブ保持部材により保持されることを特徴とする表面性識別装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載の表面性識別装置において、
前記一対のプローブ先端保護リブは、前記プローブの動作を阻害しない領域で少なくとも1箇所以上連結されることを特徴とする表面性識別装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに記載の表面性識別装置と、シート材を搬送するシート材搬送手段とを備え、
前記被測定物は、前記シート材搬送手段により搬送されるシート材であり、
前記表面性識別装置は、前記シート材を前記シート材搬送手段により搬送させて、前記プローブ先端保護リブ付きプローブ保持部材によって保持された前記プローブにより走査し、該シート材の表面性を識別することを特徴とするシート材識別装置。
【請求項6】
請求項5に記載のシート材識別装置において、
前記一対のプローブ先端保護リブは、前記シート材を前記先端当接部へ導く走査方向上流側リブ形状と、前記シート材が前記先端当接部を通過した後に搬送方向と逆方向に引き戻された際、該シート材の表面に圧接して前記先端当接部と該シート材の表面の接触圧を軽減する走査方向下流側リブ形状と、を有することを特徴とするシート材識別装置。
【請求項7】
請求項5または6に記載のシート材識別装置において、
前記プローブの前記走査方向に対して垂直な方向の長さは4mm以下であり、
前記一対のプローブ先端保護リブの間の前記所定の距離は5mm以下であり、
前記先端当接部が前記一対のプローブ先端保護リブから露出する前記所定の長さは、少なくとも前記シート材の表面の凹凸量〜0.5mmの範囲であることを特徴とするシート材識別装置。
【請求項8】
請求項5乃至7のいずれかに記載のシート材識別装置において、
前記シート材搬送手段により前記先端当接部との対向位置に搬送された前記シート材をシート材搬送平面から前記先端当接部に向かって凸型に屈曲変形させるシート材変形手段を備え、
前記圧電素子部は、前記シート材変形手段によって凸型に屈曲変形した前記シート材の表面から各シート材の剛性差に応じて変化する前記先端当接部の振動及び衝撃強度差に基づき該シート材の剛性差を識別することを特徴とするシート材識別装置。
【請求項9】
請求項5乃至8のいずれかに記載のシート材識別装置において、
前記プローブ先端保護リブ付きプローブ保持部材の両端部近傍に、前記シート材を前記シート材搬送平面に密着させる一対のシート材押さえ手段を備えることを特徴とするシート材識別装置。
【請求項10】
請求項5乃至9のいずれかに記載のシート材識別装置と、
前記先端当接部を通過した前記シート材にトナー像を形成する画像形成手段と、
前記トナー像を加熱及び加圧して前記シート材の表面に定着させる定着手段と、
前記シート材と該シート材の特性に応じて前記トナー像を前記定着手段により溶融固着するための定着温度とシート材搬送速度及び複数シート材搬送時のシート材搬送間隔の情報とを関連づけた判定テーブルと、
前記シート材識別装置の識別結果に基づき前記判定テーブルを参照し、該判定テーブルの情報に応じて前記定着手段を制御する制御手段と、
を備えることを特徴とする画像形成装置。
【請求項11】
請求項10に記載の画像形成装置において、
前記プローブ先端保護リブ付きプローブ保持部材と前記シート材とが接触する領域に、帯電防止部材を備えることを特徴とする画像形成装置。
【請求項12】
請求項5乃至9のいずれかに記載のシート材識別装置と、
前記先端当接部を通過した前記シート材にインクを吐出して画像を形成するインク吐出式画像形成手段と、
前記シート材識別装置の識別結果に基づき前記インク吐出式画像形成手段のインク吐出量を制御する制御手段と、
を備えることを特徴とする画像形成装置。
【請求項13】
請求項5乃至9のいずれかに記載のシート材識別装置と、
前記先端当接部を通過した前記シート材にサーマルヘッドを用いてインクリボンのインクを熱転写させる熱転写式画像形成手段と、
前記シート材識別装置の識別結果に基づき前記熱転写式画像形成手段の前記サーマルヘッドへの供給電力を制御する制御手段と、
を備えることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2009−25029(P2009−25029A)
【公開日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−185740(P2007−185740)
【出願日】平成19年7月17日(2007.7.17)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】