説明

表面改質カーボンナノチューブ系材料、その製造方法、電子部材および電子装置

【課題】他の材料と接した場合に親和性が向上し、電子機器や電子部材等に好適に利用することができる、新規なCNT系材料を提供する。
【解決手段】カーボンナノチューブ系材料に対し、紫外線を照射し、この紫外線との組合せによりカーボンナノチューブ系材料の表面を改質し得る含ケイ素化合物を供給して、カーボンナノチューブ系材料の表面を改質する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カーボンナノチューブ系材料の表面改質技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体装置やプリント配線基板等を含む半導体集積回路装置では、導電体や熱伝導体の性質を持った電子部材に、いわゆるカーボンナノチューブ(CNT)を用いる検討がされている。
【0003】
特にCNTは、化学的安定性に優れ、また、特異な物理的・電気的性質を有する等、様々な特性を有しており、半導体装置の形成材料として注目され、たとえば、その太さや長さの制御のほか、形成位置制御やカイラリティ制御等、現在も様々な検討が続けられている。
【0004】
具体的な用途としては、電子機器の電磁波しゃへい用部材、超LSI等の高機能電子デバイスの冷却用バンプ用部品材料、および半導体装置(電子デバイス)の配線ビヤ構造部材等が注目を集めている。
【0005】
例えば、CNTが極めて熱伝動性が高いという性質を利用して、CNTを高密度に半導体プロセス基板上に成長させあるいは基板上に予め合成したCNTを散布するなどしてCNT部を形成・搭載し、これを導電回路の一部やプロセス基板上に搭載された半導体装置(電子デバイス)からの接着部構造、およびその構造部からのデバイス発熱の排熱パス(いわゆる「バンプ構造」)として用いるような応用が考えられる。
【0006】
さらに、CNTの極めて高い電気伝導性を利用して、超微細構造を持つ半導体装置(半導体デバイス)の高密度配線構造におけるビヤ配線構造体として用いる場合も応用として考えられる。
【0007】
図5に、そのようなCNTを利用した高機能電子デバイスの冷却用バンプ材料として用いた構造(たとえば非特許文献1参照。)の一例を示す。このような高機能電子デバイスの冷却用バンプ構造は、図5に示すように、たとえば、基板(窒化アルミニウム(AlN、アルミナ等)51上の電極52上に触媒金属担持膜(例えばTiN膜)と触媒金属膜(Co等)(両者を併せて番号53で示す)をスパッタ等により堆積し、ついで、炭化水素系ガス(CH4、C22等)を用いた熱CVD法(熱化学的気相成長法)等でCNT54を成長させ、その後、このCNT付き基板のCNT部にメッキ(ウェット処理)等により伝導性物質(Cu、Al等の金属、等)を付着させ、CNTバンプ構造を作製することができる。この後この基板上に、電子デバイスを、熱圧着(250〜450℃程度が望ましい)し、高熱伝導性電子デバイスを作製することができる。
【0008】
また、図1に、上記のCNTを利用した配線ビア構造(たとえば特許文献1および非特許文献2参照。)の一例を示す。このようなビア構造は、図1に示すように、たとえば、基板1上に、下地層2およびCu配線層3を設け、このCu配線層3上にCuの拡散を防ぐバリア膜(Ta膜など)4を堆積し、絶縁層5をその上に設け、ビアホールを設けた後、触媒金属担持膜(例えばTi膜)6とCo等の触媒金属膜(あるいは触媒微粒子層)7とをスパッタ等により堆積し、ついで、炭化水素系ガス(CH4、C22等)を用いた熱CVD法(熱化学的気相成長法)等でCNT8を成長させ、その後、上部配線を形成することで作製することができる。図1にはCNT8を固定するための充填樹脂9も示されている。
【特許文献1】特開2002−329723号公報(特許請求の範囲)
【非特許文献1】富士通株式会社,株式会社富士通研究所,「世界初!カーボンナノチューブを半導体チップの放熱基板に活用」,2005年12月5日,[2006年8月18日検索],インターネット、<URL:http://pr.fujitsu.com/jp/news/2005/12/5.html>
【非特許文献2】二瓶ら,「ジャパニーズ・ジャーナル・オブ・アプライド・フィジックス(Japanese Journal of Applied Physics)」,2005年,第44巻,p. 1626
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、CNT自体は優れた導電性、半導体性、熱伝導性、化学的安定性等を有するものの、他の材料と接した場合に親和性が充分ではなく、接続部における導電性や熱伝導性が大幅に低下したり、層間における十分な接着性、密着性が得られない場合があると言う問題が知られている。この問題は、Si基板上に、一端を固定してCVDにより製造されるナノチューブを配線用途に用いる場合についても同様である。
【0010】
このような問題は、部材の製造時に、CNTの周辺層との密着が完全に行われることで実現可能と考えられる。しかしながら、他材料との界面の親和性が乏しい現状の解決なしにはこのような密着を実現できないという問題がある。これは、CNTの全ての用途に共通の課題でもある。
【0011】
CNTは、従来、レーザアブレーション、化学的気相成長法(CVD)、HiPCO(high−pressure carbon monoxide)法等の各種の製造方法で製造されている。これらの方法により製造されたCNTの表面の性質は、グラファイト様の表面分子構造、すなわち、ベンゼン環のつながった電子的超共役構造の性質に依存し、他の材料との濡れ性もまた、グラファイトのごとき性質を示す。すなわち、製造されたまま(たとえば粉状)の分子表面では、通常、いずれの溶媒にも分散性が不良であり、特定の条件で処理した場合(たとえばエタノールと共に超音波処理した場合等)に、高々数週間程度の分散状態が得られるのが限界であった。
【0012】
この性質は、上記のように、CNTの各種の工学的応用に大きな制約となっていた。すなわち、製造されたCNTと他の材料とのハイブリッド材料、例えば樹脂との機能性混合構造材を製造せんとする場合においては、現状では、他の材料との混練等の操作によっても、界面活性剤等の添加物なしでは、ミクロ的に相溶性の十分に良い複合材料の製造は困難であり、また添加物を加えると、その材料の性質が複合材料に与える悪影響(例えば電気的性質の低下、機械的強度の低下、化学的性質の劣化)から逃れられない。なお、ここで、電気的性質の低下とは、例えば、比抵抗の増大、中長期の電気的性質の維持信頼性の低下、重量あたりの比抵抗の増加および電磁波しゃへい性能の劣化、ならびに同信頼性の低下等を言う。また、機械的強度の低下とは、剛性率、破壊強度の低下、およびそれらの長期性能の劣化等、を言う。また、化学的性質の劣化とは、対環境による材料物性(例えば、吸湿性、対溶媒性、空気中の酸素による酸化)の劣化等を言う。
【0013】
たとえば、一例として、超LSI等の高密度高機能電子装置のビヤ配線用材料としてCNTを応用するためには、ビヤ内に成長させたCNTの上端をCMP(Chemical Mechanical Polishing)により削り取る必要がある。このとき、CNTの束を固定し、あるいはCMP時に研磨材、研磨液がCNT束内に流れ込んでCNT内部を汚染しないようにするため(あるいは、もし流れ込んでも後から容易に除去できるようにするため)、絶縁材料等でCNTの束の周りを他の物質で充填、または固定する必要がある場合があるが、この絶縁材料等との親和性が悪いと、溶媒に溶かした樹脂をスピンコート法等により塗布する方法を用いても、真空環境にて樹脂状物質を製膜する方法を用いても、CNTの束の間にこの絶縁材料等が十分満たされないことがある。
【0014】
本発明は上記問題を解決し、他の材料と接した場合に親和性の向上したカーボンナノチューブ系材料(CNT系材料とも言う)を提供することを目的としている。本発明のさらに他の目的および利点は、以下の説明から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の一態様によれば、表面の改質されたカーボンナノチューブ系材料の製造方法において、カーボンナノチューブ系材料に対し、紫外線を照射し、当該紫外線との組合せにより当該カーボンナノチューブ系材料の表面を改質し得る含ケイ素化合物を供給して、当該カーボンナノチューブ系材料の表面を改質することを含む、表面改質カーボンナノチューブ系材料の製造方法が提供される。
【0016】
前記紫外線が真空紫外線であること、前記表面改質カーボンナノチューブ系材料が、含ケイ素基と含ケイ素化合物との少なくともいずれか一方で表面を改質されたものであること、前記含ケイ素化合物が、紫外線により活性化されて化学的に活性な種を発生し得る物質であること、前記の表面を改質すべきカーボンナノチューブ系材料がCVD法によって作製されたものであること、前記の表面を改質すべきカーボンナノチューブ系材料が基板上で成長させたものであること、前記表面改質カーボンナノチューブ系材料が、含ケイ素物質と接した場合に、前記改質前に比べ親和性が向上したものであること、前記表面改質カーボンナノチューブ系材料が、導電性物質、絶縁性物質、親水性物質、親油性物質および特定の基を有する物質からなる群から選ばれた少なくとも一つの物質と接した場合に、前記表面改質前に比べ親和性が向上したものであること、前記表面改質カーボンナノチューブ系材料表面にケイ素原子が存在すること、前記表面改質カーボンナノチューブ系材料表面にケイ素−炭素結合が存在すること、前記化学的に活性な種が、電子供与性基のラジカルと電子吸引性基のラジカルとの少なくともいずれか一方を含むこと、前記含ケイ素化合物が前記紫外線を照射しても、前記カーボンナノチューブ系材料の表面を改質しない不活性物質で希釈されたものであること、および、前記含ケイ素化合物が、炭化水素類、酸素、アミン類、ハロゲン化アルキル類、アルコール類、エーテル類およびこれらの混合物からなる群から選ばれた少なくとも一つの物質と共に供給されること、が好ましい。
【0017】
本発明態様により、他の材料と接した場合に親和性の向上した新規なCNT系材料が得られる。このような材料は、半導体装置(電子デバイス)等の電子機器や電子部材等に好適に利用することができる。
【0018】
本発明の他の一態様によれば、含ケイ素基と含ケイ素化合物との少なくともいずれか一方で表面を改質された表面改質カーボンナノチューブ系材料が提供される。本発明態様により、他の材料と接した場合に親和性の向上した新規なCNT系材料が提供される。このような材料は電子機器や電子部材等に好適に利用することができる。
【0019】
前記表面改質カーボンナノチューブ系材料が、含ケイ素物質と接した場合に、前記改質前に比べ親和性が向上したものであること、および、前記表面改質カーボンナノチューブ系材料が、導電性物質、絶縁性物質、親水性物質、親油性物質および特定の基を有する物質からなる群から選ばれた少なくとも一つの物質と接した場合に、前記表面改質前に比べ親和性が向上したものであること、が好ましい。
【0020】
本発明の更に他の態様によれば、上記のいずれかの表面改質カーボンナノチューブ系材料を含んでなる電子部材、および、上記のいずれかの表面改質カーボンナノチューブ系材料を含んでなる電子装置が提供される。
【0021】
上記電子部材は、半導体装置(電子デバイス)配線、特に配線ビア、電子デバイス放熱バンプ、導電性シート、電磁波しゃへい材用シート、または当該シートを製造するためのプリプレグであることが好ましい。
【発明の効果】
【0022】
本発明により、他の材料と接した場合に親和性の向上した新規なCNT系材料が得られる。このような材料は、半導体装置(電子デバイス)等の電子機器や電子部材等に好適に利用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下に、本発明の実施の形態を図、実施例等を使用して説明する。なお、これらの図、実施例等および説明は本発明を例示するものであり、本発明の範囲を制限するものではない。本発明の趣旨に合致する限り他の実施の形態も本発明の範疇に属し得ることは言うまでもない。
【0024】
本発明に係る表面改質CNT系材料は、CNT系材料に対し、紫外線を照射し、当該紫外線との組合せにより当該CNT系材料の表面を改質し得る含ケイ素化合物(「紫外線との組合せによりCNT系材料の表面を改質し得る含ケイ素化合物」を、以下、「特定物質」ともいう)を供給して、カーボンナノチューブ系材料の表面を改質することを含む方法で製造することができる。
【0025】
本発明により、他の材料と接した場合に親和性の向上した新規なCNT系材料が得られる。このため、他の材料との接続部における導電性や熱伝導性が大幅に低下したり、層間における十分な接着性、密着性が得られないという問題を抑制できる。このような材料は電子機器や電子部材等に好適に利用することができる。
【0026】
CNT系材料に対し、紫外線を照射し、この特定物質を供給することで、CNT系材料の表面が改質されるのは、恐らく、この物質が紫外線によって活性化されてラジカル等の化学的に活性な種を発生し、その化学種がCNT系材料表面に作用するためであろうと考えられている。
【0027】
そのメカニズムはたとえば次のようなものであろうと推察されている(ただし、その是非は本発明の本質とは無関係である)。すなわち、紫外線照射を受けて、ナノチューブ分子近傍に浮遊した状態の特定物質の結合が開裂し、各種のケイ素を含んだラジカル等の化学種が発生する。ケイ素を含んだアミノラジカル、アルキルラジカル、アルコキシラジカル等の化学種が発生する場合もある。これらのラジカル等は不安定で反応性が高いため、近傍のナノチューブのグラフェンシート上の比較的反応性の高い欠陥部分(五員環、七員環部分、通常ダングリングボンドと呼ばれる不安定結合状態部等)に、速やかに結合し、共有結合を形成する。このようにして含ケイ素基でCNT系材料の表面が改質される。あるいは、ナノチューブには直接化学結合せず、ラジカル等の化学的に活性な種同士が反応し再結合するなどして、より高沸点(低揮発性)の生成物となり、その含ケイ素化合物がCNT系材料表面に吸着し、これにより、含ケイ素化合物でCNT系材料の表面が改質されるというメカニズムである。
【0028】
しかしながら、このほかに、たとえば、この物質またはその一部が、CNT系材料の表面上に吸着され、紫外線による作用により、ラジカル等の化学的に活性な種を経ないでCNT系材料表面に作用する等、他のメカニズムも存在するかも知れない。更に上記作用としては恐らく化学結合が主体であろうと考えられるが、物理的吸着等も存在しているかも知れない。なお、これらの改質に至るメカニズムや作用形態は本発明の本質とは関係しない。
【0029】
上記は全体的に見れば、CNT系材料が、含ケイ素基と含ケイ素化合物との少なくともいずれか一方で表面を改質されたものであることが好ましいと把握することができる。
【0030】
含ケイ素基と含ケイ素化合物との少なくともいずれか一方で表面を改質されたことは、表面改質されたCNT系材料表面にケイ素原子が存在することで確認することができる。あるいは、表面改質されたCNT系材料表面にケイ素−炭素結合が存在することで確認することができる。このケイ素原子やケイ素−炭素結合は溶媒による表面の洗浄では大幅に減少したり消滅したりしないものであることが好ましい。存在は、任意の方法で確認することができる、たとえばケイ素−炭素結合は、XPS(X線光電子分光)IR(赤外吸収)スペクトル等で容易に確認することができる。
【0031】
ある含ケイ素化合物が本発明における特定物質であるかどうかは、紫外線の照射後に何らかの意味でCNT系材料の表面が改質されたことで確認することができる。また、紫外線を使用しないで特定物質をCNT系材料と接触させたときにもCNT系材料の表面改質が起こる場合には、その表面改質の程度がより大きくなることで知ることができる。
【0032】
このような表面改質は、具体的には、表面張力の変化、特定の溶媒への濡れ性の変化、CNT系材料の表面上への特定の基(たとえば極性基)の導入、特定の材料との接着性の変化、特定の物質の吸着量の変化等によって、何らかの意味でCNT系材料の表面が改質され、またはその改質が紫外線を使用しないときに比べ改善されたことで確認することができる。このような改質の結果、他の物質との親和性が向上する。
【0033】
あるいは、上記のごとく、紫外線によってラジカル等の化学的に活性な種を発生し得る物質が特定物質に該当する場合が多いので、上記のような具体的変化によらず、紫外線によってラジカル等の化学的に活性な種を発生し得る含ケイ素化合物を特定物質と考えてもよい。これは、ラジカル等の化学的に活性な種が発生すれば、論理的に何らかの変化がCNT系材料の表面に生じている筈であるからである。
【0034】
このようなラジカル等の化学的に活性な種については、電子供与性基のラジカル等の化学的に活性な種と電子吸引性基のラジカル等の化学的に活性な種との少なくともいずれか一方を含むものであることが好ましい場合がある。このようなラジカル等の化学的に活性な種が関与する場合には、CNT系材料に極性基が導入されることになり、極性を有する物質との親和性が向上する。
【0035】
なお、本発明において「表面」は、いわゆる表面改質における表面を意味し、CNT系材料の最外面のみならずくぼんだ表面や内部表面も該当し得るが、本発明との関係においては、具体的にCNT系材料のどこが改質されたかは重要ではない。
【0036】
本発明における特定物質については、紫外線との組合せによりCNT系材料の表面を改質し得る含ケイ素化合物である限り特に制限はなく、任意の含ケイ素化合物から選択することができる。具体的には、どのような表面改質を行いたいかに応じて選択することが好ましい。含ケイ素化合物を使用することにより、含ケイ素化合物一般に対する親和性を向上させることができるが、たとえば、更に極性溶媒に対する親和性を向上させるには、特定物質がCNT系材料表面に極性基を導入できる物質であることが好ましい。特定の構造を持つ溶媒に対する親和性を向上させるには、特定物質が、CNT系材料表面にその特定の化学構造、あるいはそれに近い化学構造を導入できる物質であることが好ましい。
【0037】
このような特定物質としては、シラン類、ジシラン類、ハロゲン化シラン類、アミノシラン類、アルキルシラン類およびその誘導体を例示することができる。
【0038】
より具体的には、例えば、トリイソプロピルシラン、トリイソプロピルシリルクロライド、トリイソプロピルシリルアクリレート、アリルトリメチルシラン、トリメチルシリル酢酸メチル、ビニルトリメトキシシラン、アリルトリコロロシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルジエトキシメトチルシラン、3‐クロロプロピルジメトキシメチルシラン、トリエロキシ−1H,1H,2H,2H,トリデカフロロ−n−オクチルシラン、およびこれら異性体、誘導体を挙げることができる。
【0039】
特定物質の供給は、特定物質をCNT系材料と接触させるために行う。この供給は気相で行われる。特定物質を蒸気として供給する場合、常圧、室温下では蒸気圧が低く、または蒸発しにくいものもあるので、後述のごとく減圧を採用したり、後述の、紫外線を照射しても、前記CNT系材料の表面を改質しない不活性物質で希釈することによりこの不活性物質に同伴させたり、特定物質を加熱したりすることが好ましい場合もある。このことは、逆に言えば、特定物質を蒸気として供給する場合には、使用温度で特定物質がある蒸気圧を有することが好ましいことを意味する。上記のシラン類、ジシラン類、ハロゲン化シラン類、アミノシラン類、アルキルシラン類およびその誘導体は、この意味でも好ましい場合が多い。
【0040】
ただし、特定物質自体は必ずしも蒸気になっている必要はない。したがって、噴霧により特定物質が他の気体中に浮遊している状態で供給することも有用である場合がある。この場合、浮遊した特定物質が液状のままCNT系材料の改質に寄与することもあり得るかも知れない。
【0041】
極性溶媒に対する親和性等他の親和性も付与したい場合には、CNT系材料表面に極性基等その親和性を付与できる基を導入できる物質を共存させることが好ましい。より具体的には、紫外線照射時に、特定物質が、炭化水素類、酸素、アミン類、ハロゲン化アルキル類、アルコール類、エーテル類およびこれらの混合物からなる群から選ばれた少なくとも一つの物質と共に供給されることが好ましい。
【0042】
このようにすると、一重項酸素等の活性酸素、アミノラジカル、アルキルラジカル、アルコキシラジカル等の化学種が発生する。これらのラジカルも不安定で反応性が高いため、近傍のナノチューブのグラフェンシート上の比較的反応性の高い欠陥部分(五員環、七員環部分、通常ダングリングボンドと呼ばれる不安定結合状態部等)に、速やかに結合し、共有結合を形成する。あるいは、ナノチューブには直接化学結合せず、ラジカル等の化学的に活性な種同士が反応し再結合するなどして、より高沸点(低揮発性)の生成物となり、それがナノチューブ分子表面に吸着する。このため、含ケイ素化合物に対する親和性に加えて、導電性物質、絶縁性物質、親水性物質、親油性物質、特定の基を有する物質等への親和性を向上させることもできる。
【0043】
酸素、アミン類、ハロゲン化アルキル類、アルコール類、エーテル類およびこれらの混合物としては、例えば、トリエチルアミン、塩化−n−ブチル、塩化イソブチル、臭化−n−ブチル、臭化イソブチル、エタノール、2−プロパノール(イソピロピルアルコール)、アセトン、ジエチルエーテル、ジクロロエタン、n−ヘキサン、シクロヘキサン、n−ヘキサノン、シクロヘキサノン、ベンゼン、キシレン、メチルエチルケトン(MEK)、DMF(ジメチルホルムアミド)、DMSO(ジメチルスルホキシド)、ジメチルアセトアミド、あるいはジエチルケトン、メチルイソブチルケトン(MIBK)、n−メチルピロリドン、ジクロロエタン、ジクロロエタン、ピリジンを例示することができる。
【0044】
紫外線は、波長が315nmを超え、400nm以下の範囲のUV−A、波長が280nmを超え、315nm以下の範囲のUV−B、波長が200nmを超え、280nm以下の範囲のUV−Cおよび波長が10〜200nmの範囲の真空紫外線(VUV)に分類することができるが、本発明に係る紫外線は、これらの範囲内から適宜選択することができる。しかしながら、CNT系材料は一般的に表面の安定性(化学安定性等)が高いため、UV−A〜UV−Cの紫外線の照射では十分に表面の改質ができない場合がある。このような場合にはVUVが好ましい。
【0045】
VUVを得る手段には特に制限はない。幅が狭く中心波長が172nmのXeエキシマUVランプを好ましく例示できる。通例、160〜200nm程度の波長分布を示すXe封入エキシマUVランプが好ましいが、必ずしもこれに限定されるものではない。なお、本発明に係る化合物の結合の切断エネルギーはVUV等の紫外線の波長に直接関係するので、特定の結合の切断を排除したい場合には、VUV等の紫外線の使用波長範囲を目的に応じて狭く制限することも有用である。
【0046】
VUVの出力についても制限はなく、市販の数十mW/cm程度の出力のものを好ましく使用できる。ただし、VUVを発生しうる装置(エキシマUVランプ、等)の冷却や配置に問題がなければ、より高出力の装置を用いるか、あるいはUVランプを近接して複数個並べて、実際の面あたりの照射量を増やすことは、生産性の向上につながることもありうる。
【0047】
なお、VUVはその名前が示すように真空中または減圧下で使用されるのが一般的であるが、本発明においては必ずしもそうではなく、常圧下においても可能である。すなわち、本発明におけるVUV照射は、減圧または常圧の雰囲気中におかれたCNT系材料に対して行われる。
【0048】
紫外線と特定物質との組合せ作用をコントロールする意味や紫外線とCNT系材料との間の距離を大きくできるという実用性上の意味からは、CNT系材料を取り囲む雰囲気中の特定物質の濃度をコントロールすることが有用である場合が多い。特にVUVの場合に重要である。たとえば、酸素を20体積%含む空気ではVUVが1cm以内でほぼすべて吸収されるというように、特定物質は吸光係数が大きいことが多く、何らかの手段で特定物質の濃度(または蒸気圧や分圧でもよい)を低下させることが好ましい場合が多いからである。これは、雰囲気の減圧度を調整することによって行うこともできるが、VUVを照射してもCNT系材料の表面を改質しない物質である不活性物質で希釈した特定物質を使用することも好ましい場合が多い。具体的には、常圧状態で、特定物質を0.001〜50体積%の間に希釈することが好ましく、0.01〜10体積%の間に希釈することがより好ましい。なお、この不活性物質については特に制限はないが、本発明の環境が気相であるので、一般的に、気体物質または揮発性の物質が適切である。ネオン、アルゴン等の不活性ガスや窒素ガスを好ましく例示できる。
【0049】
照射対象であるCNT系材料と紫外線照射源との間の距離については、紫外線が吸収されやすいので、小さい方が好ましい場合が多い。紫外線がVUVである場合に特に重要である。CNT系材料とVUV照射源との間に存在する物質の種類および濃度(または蒸気圧あるいは分圧)にもよるが、一般的には、この距離はたとえば、0.1〜100mmが好ましい。さらに言えば、多くの場合、0.2mmから数cm程度が好ましい場合が多い。
【0050】
紫外線照射の仕方には特に制限はない。特定物質の供給とは必ずしも同時である必要はない場合もあり得る。CNT系材料に対し特定物質を連続的に供給し、紫外線照射を連続的に行う方法、CNT系材料に対し特定物質を断続的に供給し、その供給時に合わせて紫外線照射を断続的に行う方法、CNT系材料に対し特定物質を断続的に供給し、その供給時に合わせかつその後ある時間継続するように紫外線照射を断続的に行う方法等を例示することができる。
【0051】
CNT系材料の表面改質が紫外線に直接照射されている箇所のみに生じているのかどうかは不明である。たとえば生じたラジカル等の化学的に活性な種の寿命が長い場合には、紫外線に直接照射されていない箇所にも表面改質が生じ得ると考えられる。したがって、CNT系材料が全体として紫外線に照射され、結果として表面改質されていれば、本発明の趣旨に合致するが、一般的には、個々のCNT系材料ができるだけ直接紫外線に照射されるようになっていることが好ましい。この意味では、基板からCNT系材料が立ち上がり、並ぶ方向の揃った状態や、基板上に分散された状態が好ましいが、これに限定されるものではない。
【0052】
なお、従来のリソグラフィー技術等を応用して、CNT系材料の表面の一部を覆った状態で上記処理を行うことで表面における改質箇所を限定したり、更には、この操作を複数回行い、場所によって異なった改質を行うことも可能である。これはバンプ作製時の基板上の異なった位置への異なった処理の場合等に有用である。
【0053】
本発明における「CNT系材料」は、CNTまたはCNTが何らかの意味で修飾された材料を意味する。典型的には、ナノサイズの断面(たとえば断面直径が0.3〜10nm)を有するカーボンチューブであるCNTである。その長さについては数十nm〜数mmのものを好ましく例示できるが、特に制限があるわけではない。
【0054】
CNTには、金属的な性質を示すための条件を満たすバンド構造を取るものと、半導体的(半金属的)な性質を示すための条件を満たすバンド構造を取るものとがある。本発明に係るCNTとしては金属的な性質を示すものと半導体的な性質を示すものとのいずれを使用してもよい。
【0055】
本発明における「CNT系材料」には、金属を内包したフラーレンなどの、全体として金属的性質を示す、ナノチューブとは別のナノ構造体がCNT内に詰まっている、いわゆるピーポッド構造のナノチューブも含まれる。すなわち、上記における「修飾」にはこのような場合も含まれる。
【0056】
このような別のナノ構造体を含むピーポッド構造のナノチューブを用いることにより、たとえばビアの電気伝導特性あるいは機械的強度を増強することも可能になり得る。例えば、金属内包フラーレンを含むCNTの場合、内包された金属の電荷がフラーレン外側に現れ、更にナノチューブ外側に現れることが、第一原理計算から知られており、それによってビアの電気伝導特性を向上させることができる。
【0057】
金属内包フラーレンのように全体として金属的性質を示す、ナノチューブとは別の構造体もしくは分子あるいは原子は、ナノチューブ内ではなく、一つのビアを構成している隣接ナノチューブ間に存在していてもよい。また、内部に金属フラーレンを含む隣接ナノチューブ間に、上記のナノチューブとは別の構造体もしくは分子あるいは原子を配置することも可能である。このようにしてCNTが修飾されている場合も、本発明における「CNT系材料」に属する。
【0058】
CNT等のCNT系材料の形成には、従来はアーク放電やレーザーアブレーションが用いられてきたが、現在ではプラズマCVD(プラズマ化学的気相成長法)や熱CVDがよく用いられている。CVDによる形成方法は、ナノチューブを直接基板上に形成できることから、集積回路の製造への応用が期待されている。もちろん本発明は使用されるCNTの製造方法に限定されるものでない。
【0059】
本発明に係るCNT系材料は、このようにCVDで作製することが好ましい場合が多い。その場合には、CNT系材料が基板上に生成する。CNT系材料が基板上に生成すること自体は本発明の必須要件ではないが、CNT系材料が基板上に生成している場合には、先述したごとく、紫外線の直接照射がし易く、また、基板との密着性が良好であるため、好ましい場合が多い。
【0060】
CVDで本発明に係るCNT系材料を作製する場合、この基板を形成する材料には特に制限はなく公知のものから適宜選択できるが、導電性を得る場合には、導電性のものを使用し、熱伝導性を得る場合には熱伝導性の良好なものを選択することが好ましい。
【0061】
本発明において、CNT系材料に対し、紫外線を照射し、特定物質を供給するための装置については特に制限はない。たとえば図2,3に示す構造を持つ装置を例示することができる。図2において、紫外線源21の下に特定物質を不活性物質で希釈したガス22の供給経路23、特定物質の吹き出し口24がある。紫外線源21は冷却用媒体25によって冷却されている。そして、吹き出し口24の下には縦に並んだCNTの束26を有する基板27が紙面の左から右に移動していくのである。図3は、冷却媒体が水冷ダクト31に代わり、特定物質を不活性物質で希釈したガス22の供給経路23中で基板27が移動する以外は図2と同様である。なお、縦に並んだCNTの束26は、たとえばビアホール中で成長させたCNTの束として実現することができる。図2,3中実線付きの矢印は、特定物質を不活性物質で希釈したガス22や冷却用媒体25の流れを、波線付きの矢印は紫外線の照射を表している。
【0062】
本発明に係る表面改質CNT系材料は、他の物質と接した場合に、改質前に比べ親和性が向上したものである。この「親和性の向上」は、他の物質と接触させた場合における表面張力の向上、濡れ性の向上、接着性の向上、吸着量の増大、他の物質との層間に入り込む異物(水分等)、空洞(ミクロな空間)の減少等を意味する。
【0063】
この場合の「他の物質」としては、まず、含ケイ素物質を挙げることができる。すなわち、本発明に係る表面改質CNT系材料は、表面改質前に比べ、含ケイ素物質との親和性が向上する。この場合における「含ケイ素物質」には特に制限はない。CNT系材料の表面について親和性を上げたい対象である、具体的な「含ケイ素物質」について、適宜特定物質を選択し、本発明に係る処理を施し、その結果、その「含ケイ素物質」に対する親和性が向上したかどうかを評価することを通して、本発明を有効に利用することができる。一般的に言えば、「含ケイ素物質」と特定物質との間に化学構造上の類似点が多い場合に良好な親和性が得られやすい。
【0064】
この場合の「他の物質」は、導電性物質、絶縁性物質、親水性物質、親油性物質および特定の基を有する物質からなる群から選ばれた少なくとも一つの物質であってもよい。電子装置等の部材としてCNT系材料を使用する場合に、共に使用される他の部材との電気的接続、熱的接続、機械的結合、溶媒や接着剤に対する濡れ等の向上が図れ、長期使用における剥がれ、断線等の不具合を回避できるからである。含ケイ素物質であって、かつ、導電性物質、絶縁性物質、親水性物質、親油性物質および特定の基を有する物質からなる群から選ばれた少なくとも一つの物質であってもよい。この場合には、各種の親和性が複合的に作用し、より好ましい効果を与える場合が多い。なお、本発明および明細書の記載を通じて、「特定の基」、「特定の物質」、「特定の構造」、「特定の溶媒」、「特定の結合」、「特定の材料」等における「特定の」は、固定的に決められたあるものを意味するものではなく、実用上の要請に応じて任意に決められるあるものを意味する。
【0065】
上記における含ケイ素物質としては、絶縁性物質としては、SOG、TEOS(テトラエトキシシラン)、マイクロポアを含むまたは含まない、いわゆる「Low−k樹脂」類の、半導体装置の層間絶縁膜等の絶縁膜に使用される絶縁材料の内ケイ素を含有するもの等を例示することができる。
【0066】
また、上記における導電性物質としては、電子配線部に使用される銅、アルミニウム、その他の、金属をはじめとする電気伝導性物質一般を、絶縁性物質としては、SOG、TEOS(テトラエトキシシラン)、ポリイミド樹脂等の任意の半導体封止用絶縁樹脂類、あるいは最近多用される、マイクロポアを含むまたは含まない、誘電率の低い、いわゆる「Low−k樹脂」類、あるいは、PFA、FEP、テフロン(登録商標)等のフッ素系樹脂等、すなわちCNTを固定するに好適な電気絶縁性の材料一般を、親水性物質としては、水、エタノール、メタノール、フェノール、ジオキサン類、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、グリセリン等のアルコール系溶媒等を、親油性物質としては、石油エーテル、n−ヘキサン、シクロヘキサン等のパラフィン系溶媒、ベンゼン、トルエン、キシレン、クレゾール等、の芳香族系溶媒、あるいは、THF(テトラヒドロフラン)、2H‐Pyran(ピラン)、1,4−ジオキサン、DMF(ジメチルホルムアミド)、DMSO(ジメチルスルホキシド)、ジメチルアセトアミド、あるいはジエチルケトン、MIBK(メチルイソブチルケトン)等のケトン、n−メチルピロリドン、ジクロロエタン、ジクロロエタン、ピリジン、等のヘテロ元素(C、O、H以外の元素)を含む極性溶媒を挙げることができる。また、特定の基を有する物質としては、基本的には、前述した絶縁性物質、親水性物質、親油性物質に多く含まれる官能基を含む物質(望ましくは低粘度の気体または液体)ならいかなるものでもよいが、典型的な例としては、以下のものを挙げることができる:
−OH、−COOH、−NH2、−NR2(Rは脂肪族、芳香族アルキル基あるいはその誘導体)、−CO−、−C=O、イミド結合およびエーテル結合の少なくともいずれか一つ以上を有する物質、すなわち、アルコールおよびフェノール、カルボン酸、アミン類、ケトン類およびキノン類、等。
【0067】
なお、上記の含ケイ素物質、導電性物質、絶縁性物質、親水性物質、親油性物質および特定の基を有する物質が、同一物質を指す場合もあり得る。
【0068】
本発明に係るCNT系材料は、ニーズに応じて、電気製品、電子製品、機械品等、CNT系材料の使用されるあるいは使用される可能性のあるどのような用途に使用されてもよいが、CNT系材料の優れた電気的特性および熱的特性に鑑み、特に、電磁波を発生しうる医療用、航空宇宙用、あるいは、携帯性のある電子機器(携帯電話、パソコン等の携帯電子機器端末を含む)、あるいは、電子部材や電子装置(たとえば、半導体装置やプリント配線基板等を含む半導体集積回路装置)に好適に利用できる。また、長期使用における高性能で軽量、劣化の少ない電子機器用に用いられる導電性部材(シート等)、電磁波しゃへい用部材(シート等)、または、剥がれ、断線等の不具合の少ない電子部材や電子装置を実現することも期待できる。なお、このような電子部材としては、電子デバイス実装用放熱用バンプ、半導体装置(電子デバイス)の多層配線、半導体装置(電子デバイス)用等の配線ビアを挙げることができる。
【0069】
また本発明はさらに、上記の電子部品や電子デバイス素子等に限らず、例えば、対重量比の導電性と伝熱性を要求される、(平面状あるいは曲面状の)宇宙航空用の電子機器、医療機器、あるいは、携帯電話、パソコン等を含む、電磁波を発生する電子機器、導電性シート、電子端末用の高周波電磁波しゃへい材、およびこれらの部材作製用前駆体(いわゆるプリプレグを含む)を挙げることができる。
【0070】
図4は、本発明に係るCNT系材料をLSI用配線ビアに利用した半導体集積回路装置を模式的に示す断面図である。図4では、シリコン基板41にトランジスタ42等の素子が複数作りこまれ、それらを覆って複数の絶縁層(層間絶縁膜)43a〜43fが形成されている。絶縁層を挟んで配線層が位置し、所定の配線層の配線45は絶縁層を貫通して形成されたビア46により別の層の配線45につながれている。47は、素子同士をつなぐ配線45に接続するコンタクトを表している。一番上の配線層は保護層48で被覆されている。この図に示した集積回路装置では、ビア46に本発明に係るCNT系材料を適用し、このナノチューブを特定の溶媒に対する濡れ性を良くすることにより、これに溶解さられているSOG等の絶縁性樹脂のCNT周りへの浸透性を向上させ、結果的に、CNT周りの空洞を塞ぎ、またCNT束を固定化することにより、ビヤ内に成長させたCNT系材料の上端をCMPにより良好に削り取ることができ、したがって配線部分との良好な電気的接続を実現できる。
【0071】
図5は、CNT系材料を高機能電子デバイスの冷却用バンプ材料に適用した、高熱伝導バンプを含む電子デバイスの構造の概要の例を示す模式図であるが、この場合にも本発明に係るCNT系材料を高機能電子デバイスの冷却用バンプ材料に適用することができる。たとえば、図5のCNT付き基板に対し、酸素を窒素で希釈したガスまたは酸素と微量の水とを窒素で希釈したガスの存在下VUV処理を行い、続いてこの処理済みCNT付き基板のCNT部にメッキ(ウェット処理)により、熱および電気伝導性物質(Cu、Al等の金属、等)を、CNT鎖の間の空間に、十分に浸透させたいわゆるCNTハイブリッド・バンプ構造を作製することができる。この後この処理済み基板上に、電子デバイスを、熱圧着(250〜450℃程度が望ましい)して、金属等を浸透させたCNTバンプを使用した高熱伝道性電子デバイスを作製することができる。
【0072】
図6は、本発明に係る電磁波しゃへい用シートまたはプリプレグを示す模式図である。すなわち、樹脂シート上にCNTを散布し、このシートに他の樹脂シートを貼り付けることにより電磁波しゃへい用シートまたはそのまたはプリプレグを得ることができる。
【0073】
なお、上記の説明より、その方法の如何に拘わらず、含ケイ素基と含ケイ素化合物との少なくともいずれか一方で表面を改質された表面改質CNT系材料が、上記発明態様における表面改質CNT系材料と同様な効果を与えるものと考えることができる。より具体的には、含ケイ素物質と接した場合に、その改質前に比べ親和性を向上させることや、導電性物質、絶縁性物質、親水性物質、親油性物質および特定の基を有する物質からなる群から選ばれた少なくとも一つの物質と接した場合に、その改質前に比べ親和性を向上させることができる。このような表面改質CNT系材料も、電子部材、特に配線ビア、電子デバイス放熱バンプ、導電性シート、電磁波しゃへい材用シート、または電磁波しゃへい材用シートを製造するためのプリプレグ、に好適に適用でき、従って信頼性の向上した電子装置を得ることができる。
【0074】
例えば、半導体装置(電子デバイス)の製造工程において、本発明によって表面改質したCNT複合材料によって形成されているビヤ配線構造の製作過程においてSOGの塗布を行いビヤ構造中にSOGを浸透させる際に、通常ではCNTの樹脂、溶媒等との親和性が悪く、十分な浸透させることができない場合、本発明の方法によってCNTビヤ部分の表面を改質することにより、SOGの浸透度が大幅に改善し、CNTビヤ構造の機械的強度を大幅に増すことが可能になる。これにより、その後のCMP工程など後の工程において、この部分の構造が堅固になり、工程の安定、製造条件のマージンの向上、および最終製品の信頼性の向上などが図れる。すなわち、本発明による化学処理に用いる物質、処理条件などにより、多くの含ケイ素物質との親和性を向上させることが可能となる。
【0075】
同様に、CNTを含む複合材料のプリプレグの異種材料との親和性向上においても効果がある。あるいは、CNT複合材(例えばCNT+Cu)の場合、CNTにCuメッキを施してCNTの熱伝導性をさらに向上させる場合、CNTに含ケイ素物質親和性を付与し、メッキ液浸透のためにさらに親水性を同時に付与したい場合が考えられる。このような場合に、含ケイ素物質と同時に親水性を付与しうる酸素、アミン類などの物質蒸気(あるいはミスト等)を適切な比率にて含ケイ素物質蒸気(あるいはミスト等)に混入することにより、同時に2つの親和性を付与することも可能になる。
【0076】
なお、上記発明態様における表面改質CNT系材料の説明において使用した各種定義、属性、好ましい態様は、本発明の趣旨に反しない限り、それ以外の本発明態様においても同様に適用可能である。
【実施例】
【0077】
次に本発明の実施例および比較例を詳述する。
【0078】
[実施例1]
基板として、Siウエハ{p型、(100)面}上に、Niをスパッタリングにて25nm形成したものを用い、熱CVD法により、アセチレンガスを原料として、650℃にて、マルチウオールCNTを長さ約3μmまで成長させた。ナノチューブの面密度を測定したところ、約5×1011本/cmであった。
【0079】
あらかじめこの試料を清浄な空気中で400℃で5分ベークしてナノチューブ表面の、ナノチューブ以外の可燃性不純物を取り除いた後、速やかに、本発明の処理装置に移し、本発明に係る特定物質としてのテトラメチルシラン(Si(CH)を、その蒸気圧が1気圧濃度5体積%程度となるよう純窒素で希釈したガスを使用した。ガスの流量は毎分1Lとした。
【0080】
この状態で、XeエキシマUVランプ(発生中心波長λ=172nm)を発生する出力30mW/cmのエキシマUVランプを使用してVUVを2分間かけて照射した。装置の構造は図2のものを使用した。
【0081】
本処理前後の試料をXPSおよびIRスペクトルにて分析したところ、処理前のナノチューブには存在しなかったケイ素−炭素結合が処理後に形成されていることが確認された。
【0082】
なお、VUVの照射を行わない以外は上記と同様の処理を行ったが、処理後にもケイ素−炭素結合は生じなかった。
【0083】
[実施例2]
実施例1と同様の特定物質を使用し、試料としては、Siウエハ{p型、(100)面}上にシングルウオールCNTをアーク放電法で生成させたものを使用した。
【0084】
実施例1と同様の処理を行った。ただし、処理時間は、実施例1の20%とした。
【0085】
この試料をXPSおよびIRスペクトルにて分析したところ、処理前のナノチューブに存在しなかったケイ素−炭素結合が処理後に形成されているのが確認された。
【0086】
なお、VUVの照射を行わない以外は上記と同様の処理を行ったが、処理後にもケイ素−炭素結合は生じなかった。
【0087】
[実施例3]
直径0.5μm、深さ1μmの円筒状の穴パターンをSi基板上に形成し、この穴のパタンの底部を含むウエハ全面にTi薄膜10nmをスパッタリングで形成し、平均粒径10nmのNi微粒子を穴のパタンの底部を含むウエハ全面に散布し、これに熱CVD法で長さ1500nmのマルチウオールCNTを穴の上方まで成長させた。ナノチューブの面密度を測定したところ、約3×1011本/cmであった。
【0088】
この試料に対し、実施例1と同様の装置を使用し、特定物質ヘキサメチルジシラザンを体積比1%で窒素に希釈した混合ガスを使用し、実施例1と同様にVUVを照射した。ただし、VUV照射時間は実施例1の200%とした。
【0089】
処理後の試料に対して、γ−アミノ・プロピル・エトキシ・シラン[HN(CHSi(OCHCH](以下、APESと略す)の5%アセトン溶液を滴下し、しばらくしてからホットプレートでよく乾燥し、穴内の断面を走査式電子顕微鏡(SEM)で観察したところ、ナノチューブ同士が穴内で部分的に束状になっているのが確認できた。これはAPES溶液が浸透した跡であると考えられる。すなわち、APES溶液に対する濡れ性が良好であるため、APES溶液がナノチューブ表面で濡れ、ナノチューブ同士がAPES溶液によって束状に纏められた後、APES溶液が蒸散した跡と考えることができる。本実施例でAPES溶液によって束状になったCNT上面と下面(基板面)との間の電気抵抗は、1.5Ω(オーム)と、ごく低い値となった。
【0090】
これに対し、無処理の穴パタン内ナノチューブ試料に同じ処理を施したところ、処理前後で大きな変化なく、ナノチューブは、ほとんど束状にならず、各々孤立したまま、林立しているのが確認された。すなわち、処理前のナノチューブはAPES溶液に対する濡れ性が不良であり、APES溶液がナノチューブ表面で弾かれてしまい、その結果、ナノチューブ同士がAPES溶液によって束状に纏められることがなかったと考えられる。
【0091】
その後、処理前後の試料からそれぞれナノチューブを削り取り、XPSおよびIRスペクトルにて分析したところ、処理前のナノチューブに存在しなかったケイ素−炭素結合が処理後に形成されているのが確認された。
【0092】
更に、上記のAPES溶液処理の代わりに、CVD法にて、TEOS(テトラエトキシシラン、Si(OC)を沈着し、これをSEMにて観察したところ、ナノチューブの成長した隙間によく充填されていることが見出された。これに対し、無処理の穴パタン内ナノチューブ試料に同じ処理を施し、SEMにて穴内の断面を観察したところ、ナノチューブの成長した隙間をTEOSで埋めることができず、空房が多いままであった。
【0093】
以上の結果から、本ナノチューブは対APES溶液の濡れ性が向上しており、含ケイ素基を有する溶媒、接着剤等の物質に対し良好な親和性を示すものと考えられる。なお、TEOSやSOG、LOW―k樹脂は、例えば基板上に成長させるなどしたナノチューブのチューブ間空間を埋めるのに好適な材料であり、本発明によってナノチューブとの界面親和性を向上させることで、更に優れた効果が得られる。
【0094】
[実施例4]
Si基板上に、ウエハ全面にTi薄膜10nmをスパッタリングで形成し、その後、平均粒径10nmのNi微粒子をウエハ全面に散布し、レジストを用いて、2μm×5μmの矩形パターンを光リソグラフィでパターニングしてから現像し、2μm×5μmの矩形パターン状にNi微粒子を残したものを準備した。
【0095】
これに熱CVD法で長さ1500nmのマルチウオールCNTを成長させナノチューブの立方体状の構造体を形成した。ナノチューブの面密度を測定したところ、約2×1011本/cmであった。
【0096】
この試料に対し、実施例1と同様の装置を使用し、特定物質テトラメチルシラン(Si(CH)を体積比1%で窒素に希釈した混合ガスを使用して、実施例1と同様にVUVを照射した。ただし、VUV照射時間は実施例1の300%とした。
【0097】
この処理後の試料に対して、SOG(Spin On Glass)をエタノール、MIBK(メチルイソブチルケトン)の1対1(体積比)混合液で希釈した溶液を滴下後速やかにスピンコートした後、150℃、300℃でいずれも10分間づつ、ホットプレートでよく乾燥した。
【0098】
これを、走査式電子顕微鏡(SEM)で観察したところ、ナノチューブナノチューブの立方体状の構造体が部分的に束状になっており、更にSOGでナノチューブ間の大部分にSOGが浸透していた。
【0099】
これに対し、無処理の同構造ナノチューブ試料に同じ処理を施したところ、ナノチューブは、ほとんど束状にならず、各々孤立したまま、林立しているのが確認され、この上にSOGが被った状態になっていた。すなわち、処理前のナノチューブはSOG溶液に対する濡れ性が不良であり、その結果、ナノチューブ間がSOG溶液によって埋められることがなかったと考えられる。
【0100】
[実施例5]
Si基板のウエハ全面にTi薄膜10nmをスパッタリングで形成し、その後、平均粒径10nmのNi微粒子をウエハ全面に散布し、レジストを用いて、2μm×5μmの矩形パターンを光リソグラフィでパターニングしてから現像し、2μm×5μmの矩形パターン状にNi微粒子を残したものを準備した。
【0101】
これに熱CVD法で長さ1500nmのマルチウオールCNTを成長させナノチューブの立方体状の構造体を形成した。ナノチューブの面密度を測定したところ、約2×1011本/cmであった。
【0102】
この試料に対し、実施例1と同様の装置を使用し、特定物質としてテトラメチルシラン(Si(CH)を体積比1%、トリエチルアミンを体積比0.3%で窒素に希釈した混合ガスを使用して、実施例1と同様にVUVを照射した。ただし、VUV照射時間は実施例1の400%とした。
【0103】
この処理後の試料の表面をFT−IR、XPSにて分析したところ、ケイ素−炭素結合、および窒素−炭素結合が存在することがわかった。
【0104】
この処理後の試料に対して、次の処理を行なった。
【0105】
まず、この処理後の試料のCNTをCu無電解メッキ水溶液に浸漬しメッキ処理したところ、CuをCNTの周辺に付着させることができた。
【0106】
次に、この処理後の試料にSOG(Spin On Glass)をエタノール、MIBK(メチルイソブチルケトン)の1対1(体積比)混合液で希釈した溶液を滴下後速やかにスピンコートした後、150℃、300℃でいずれも10分間づつ、ホットプレートでよく乾燥した。その結果、Si基板上にCNTとCuの矩形パタン、その周りと上をSOGで埋め込んだものが作製できた。
【0107】
さらに、この処理後の試料をCMP処理して、CNTとCuのパタンがSOGの中から「顔」を出したパタンを作製することができた。このウエハ試料をLSIの廃熱用「部材」(「ヒートスプレッダ」)として有効利用することができる。
【0108】
一方、上と同じで本発明の処理をしない場合についてもテストした。
【0109】
すなわち、Si基板のウエハ全面にTi薄膜10nmをスパッタリングで形成し、その後、平均粒径10nmのNi微粒子をウエハ全面に散布し、レジストを用いて、2μm×5μmの矩形パターンを光リソグラフィでパターニングしてから現像し、2μm×5μmの矩形パターン状にNi微粒子を残したものを準備した。
【0110】
これに熱CVD法で長さ1500nmのマルチウオールCNTを成長させナノチューブの立方体状の構造体を形成した。ナノチューブの面密度を測定したところ、約2×1011本/cmであった。
【0111】
この処理後の試料の表面をFT−IR、XPSにて分析したところ、ケイ素−炭素結合、および窒素−炭素結合が存在しないことを確認した。
【0112】
この処理後の試料に対して、次の処理を行なった。
【0113】
まず、この処理後の試料のCNTをCu無電解メッキ水溶液に浸漬しメッキ処理したところ、CNTがメッキ液に十分濡れることがなく、CuをCNTの周辺に付着させることができなかった。
【0114】
次に、この処理後の試料にSOG(Spin On Glass)をエタノール、MIBK(メチルイソブチルケトン)の1対1(体積比)混合液で希釈した溶液を滴下後速やかにスピンコートした後、150℃、300℃でいずれも10分間づつ、ホットプレートでよく乾燥した。
【0115】
さらに、この処理後の試料をCMP処理すると、SOGとCNTの密着が不十分で、この界面で「はがれ」が発生し、良好なパタンをもった試料を作製することができなかった。
【0116】
[実施例6]
Si基板上の、底面を含むウエハ全面にTi薄膜10nmをスパッタリングで形成し、その後、平均粒径10nmのNi微粒子をウエハ全面に散布したものを準備した。
【0117】
これに、実施例4と同じ方法により熱CVD法で長さ1500nmのマルチウオールCNTを作製した。
【0118】
この試料に対し、実施例1と同様の装置を使用し、特定物質としてテトラメチルシラン(Si(CH)を体積比1%、酸素を体積比0.1%で窒素に希釈した混合ガスを使用して、実施例1と同様にVUVを照射した。ただし、VUV照射時間は実施例1の400%とした。
【0119】
このSi基板から削ぎ落としたCNTをスチレンモノマーにAIBM(アゾビスイソブチロニトリル)を1/100重量%混入した液体に混入させ(1/10000重量%)、これを注意深くPET(ポリエチレンテレフタレート)フィルム上にうすく散布した。
【0120】
これを窒素雰囲気下にて65で℃15分間処理し、PETフィルムからはがし、電気伝導性の粘着シートを作製した。これを2枚重ねて、圧着したところ、硬い均一な導電性シートが作製できた。
【0121】
一方、上記のテトラメチルシラン(Si(CH)を、酸素を入れずに窒素のみで処理したものを作製したが、PETフィルムからはがした試料はクラックが入っており、均一なシートの成型はできなかった。
【0122】
なお、上記に開示した内容から、下記の付記に示した発明が導き出せる。
【0123】
(付記1) 表面の改質されたカーボンナノチューブ系材料の製造方法において、カーボンナノチューブ系材料に対し、
紫外線照射と当該カーボンナノチューブ系材料への含ケイ素化合物の供給とを組合せることを含む、
表面改質されたカーボンナノチューブ系材料の製造方法。
【0124】
(付記2) 前記紫外線が真空紫外線である、付記1に記載の製造方法。
【0125】
(付記3) 前記表面改質カーボンナノチューブ系材料が、含ケイ素基と含ケイ素化合物との少なくともいずれか一方で表面を改質されたものである、付記1または2に記載の製造方法。
【0126】
(付記4) 前記含ケイ素化合物が、紫外線により活性化されて化学的に活性な種を発生し得る物質である、付記1〜3のいずれかに記載の製造方法。
【0127】
(付記5) 前記の表面を改質すべきカーボンナノチューブ系材料がCVD法によって作製されたものである、付記1〜4のいずれかに記載の製造方法。
【0128】
(付記6) 前記の表面を改質すべきカーボンナノチューブ系材料が基板上で成長させたものである、付記1〜5のいずれかに記載の製造方法。
【0129】
(付記7) 前記表面改質カーボンナノチューブ系材料が、含ケイ素物質と接した場合に、前記改質前に比べ親和性が向上したものである、付記1〜6のいずれかに記載の製造方法。
【0130】
(付記8) 前記表面改質カーボンナノチューブ系材料が、導電性物質、絶縁性物質、親水性物質、親油性物質および特定の基を有する物質からなる群から選ばれた少なくとも一つの物質と接した場合に、前記表面改質前に比べ親和性が向上したものである、付記1〜7のいずれかに記載の製造方法。
【0131】
(付記9) 前記表面改質カーボンナノチューブ系材料表面にケイ素原子が存在する、付記1〜8のいずれかに記載の製造方法。
【0132】
(付記10) 前記表面改質カーボンナノチューブ系材料表面にケイ素−炭素結合が存在する、付記9のいずれかに記載の表面改質カーボンナノチューブ系材料の製造方法。
【0133】
(付記11) 前記化学的に活性な種が、電子供与性基のラジカルと電子吸引性基のラジカルとの少なくともいずれか一方を含む、付記4〜10のいずれかに記載の製造方法。
【0134】
(付記12) 前記含ケイ素化合物が前記紫外線を照射しても、前記カーボンナノチューブ系材料の表面を改質しない不活性物質で希釈されたものである、付記1〜11のいずれかに記載の製造方法。
【0135】
(付記13) 前記含ケイ素化合物が、炭化水素類、酸素、アミン類、ハロゲン化アルキル類、アルコール類、エーテル類およびこれらの混合物からなる群から選ばれた少なくとも一つの物質と共に供給される、付記1〜12のいずれかに記載の製造方法。
【0136】
(付記14) 付記1〜13のいずれかに記載の製造方法により製造された表面改質カーボンナノチューブ系材料。
【0137】
(付記15) 含ケイ素基と含ケイ素化合物との少なくともいずれか一方で表面を改質された表面改質カーボンナノチューブ系材料。
【0138】
(付記16) 前記表面改質カーボンナノチューブ系材料が、含ケイ素物質と接した場合に、前記改質前に比べ親和性が向上したものである、付記15に記載の表面改質カーボンナノチューブ系材料。
【0139】
(付記17) 前記表面改質カーボンナノチューブ系材料が、導電性物質、絶縁性物質、親水性物質、親油性物質および特定の基を有する物質からなる群から選ばれた少なくとも一つの物質と接した場合に、前記表面改質前に比べ親和性が向上したものである、付記15または16に記載の表面改質カーボンナノチューブ系材料。
【0140】
(付記18) 付記14〜17のいずれかに記載の表面改質カーボンナノチューブ系材料を含んでなる電子部材。
【0141】
(付記19) 前記電子部材が、配線ビア、電子デバイス放熱バンプ、導電性シート、電磁波しゃへい材用シート、または当該シートを製造するためのプリプレグである、付記18に記載の電子部材。
【0142】
(付記20) 付記14〜17のいずれかに記載の表面改質カーボンナノチューブ系材料を含んでなる電子装置。
【図面の簡単な説明】
【0143】
【図1】CNTを利用した配線ビア構造の模式的横断面図である。
【図2】本発明に係るVUVを照射し、特定物質を供給するための装置の主要部分を示す模式図である。
【図3】本発明に係るVUVを照射し、特定物質を供給するための装置の主要部分を示す他の模式図である。
【図4】本発明に係るCNT系材料をビアに利用した半導体集積回路装置を模式的に示す断面図である。
【図5】CNT系材料を高機能電子デバイスの冷却用バンプ材料に適用した、高熱伝導バンプを含む電子デバイスの構造の概要の例を示す模式図である。
【図6】本発明に係るCNT系材料を高機能電磁波しゃへい材に適用した場合の製法例の概要を示す模式図である。
【符号の説明】
【0144】
1 基板
2 下地層
3 Cu配線層
4 Ta膜
5 絶縁層
6 Ti膜
7 触媒金属膜
8 CNT
9 充填樹脂
21 紫外線源
22 特定物質を不活性物質で希釈したガス
23 供給経路
24 吹き出し口
25 冷却用媒体
26 CNTの束
27 基板
31 水冷ダクト
41 シリコン基板
42 トランジスタ
43a〜43f
層間絶縁膜
45 配線
46 ビア
47 コンタクト
48 保護層
51 基板
52 電極
53 触媒金属担持膜と触媒金属膜
54 CNT

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面の改質されたカーボンナノチューブ系材料の製造方法において、カーボンナノチューブ系材料に対し、
紫外線照射と当該カーボンナノチューブ系材料への含ケイ素化合物の供給とを組合せることを含む、
表面改質されたカーボンナノチューブ系材料の製造方法。
【請求項2】
前記紫外線が真空紫外線である、請求項1に記載のカーボンナノチューブ系材料の製造方法。
【請求項3】
前記含ケイ素化合物が前記紫外線を照射しても、前記カーボンナノチューブ系材料の表面を改質しない不活性物質で希釈されたものである、請求項1または2に記載のカーボンナノチューブ系材料の製造方法。
【請求項4】
前記表面改質カーボンナノチューブ系材料が、含ケイ素基と含ケイ素化合物との少なくともいずれか一方で表面を改質されたものである、請求項1〜3のいずれかに記載のカーボンナノチューブ系材料の製造方法。
【請求項5】
前記含ケイ素化合物が、炭化水素類、酸素、アミン類、ハロゲン化アルキル類、アルコール類、エーテル類およびこれらの混合物からなる群から選ばれた少なくとも一つの物質と共に供給される、請求項1〜4のいずれかに記載のカーボンナノチューブ系材料の製造方法。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の製造方法により製造されたカーボンナノチューブ系材料。
【請求項7】
請求項6に記載の表面改質カーボンナノチューブ系材料を含んでなる電子部材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−239422(P2008−239422A)
【公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−83836(P2007−83836)
【出願日】平成19年3月28日(2007.3.28)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成18年度、独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構 「次世代半導体材料・プロセス基盤(MIRAI)プロジェクト」委託研究、産業活力再生特別措置法第30条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】