説明

表面検査装置

【課題】設置環境に変動が生じても、表面形状の測定を高精度に行う。
【解決手段】表面検査装置1に、保持部材2(把持部2a)と、光学部材60と、表側第1光源11と、表側第2光源12と、ミラー30と、コリメータレンズ40と、ミラー50と、ハーフミラー70と、ダイクロイックミラー80と、表側第1撮像部91と、表側第1撮像部92と、画像処理プログラムと、を備え、第1波長の光を試料Wの表面の一面で反射させる一方で、第2波長の光を把持部2aの一面側に取付け固定された光学部材60で反射させ、画像処理プログラムにより、双方から反射された光に基づく輝度データを用いて試料Wの表面の形状を算出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試料表面の形状を測定する表面検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ウェーハ等の平板状の試料の表面の形状を測定する表面検査装置が知られている。
具体的には、表面検査装置は、試料保持部に保持された試料に対して光を照射する照射部と、試料で反射した光を結像する結像部と、結像された像を撮像して画素ごとの輝度データを生成する撮像部と、この輝度データに基づいて試料表面の形状を算出する画像処理部とを備えている(例えば、特許文献1参照)。そして、試料保持部に保持された試料を入射方向(法線方向)に対して傾斜させて、結像部により結像され撮像部により撮像された光量に応じた像の輝度から試料表面の凹凸部の有無や凹凸部の形状等を算出するようになっている。
【0003】
ところで、近年、半導体集積回路、メモリの集積度は、飛躍的に高密度化されてきており、集積密度の向上に伴って回路パターンの微細化も行われている。これにより、ウェーハの平坦度の要求が厳しくなってきており、例えば、集積回路用のウェーハにおいては、45nm以下の平坦度が要求されている。
また、生産効率の向上のためにウェーハサイズが拡大してきており、例えば、φ450mmのウェーハのように、よりサイズの大きいウェーハの表面形状の測定を高精度に行うことができる表面検査装置が望まれている。
【0004】
また、ウェーハ表裏面に形成される干渉縞を観測し、当該干渉縞の画像に基づいてウェーハ表裏面の平面形状を演算することでウェーハの表裏面の形状を測定する形状測定装置が知られている(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開平10−307011号公報
【特許文献2】特開2006−138871号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記特許文献2記載の発明においては、ウェーハ表面の平坦度の測定をより高精度なものとするために、ウェーハに剛体平板を略平行に近接配置して、空気中を伝搬する振動の影響で被検体が振動するのを防止している。
しかしながら、試料の表面形状の測定に際して、表面検査装置が設置されている環境の変動の影響を受けてしまうといった問題がある。即ち、特許文献2記載の発明は、剛体平板により空気中を伝搬する振動の影響でウェーハが振動するのを防止するものであり、かかる構成によりウェーハ自体に生ずる空気振動等の影響は防止できるが、形状測定装置に備えられたウェーハ以外の構成(例えば、照射部や結像部のレンズ等)の温度変化による熱膨張等の影響によって測定値に誤差が生じる虞がある。
つまり、たとえ上記特許文献2記載の発明によって、ウェーハ自体に発生し得る振動を防止できたとしても、試料の測定の際における、表面検査装置自体の振動の有無、試料保持部の振動の有無、照射部や結像部のレンズの温度変化等によって、表面形状の測定を高精度に行うことができない。
【0006】
そこで、本発明の課題は、設置環境に変動が生じても、試料の表面形状の測定をより高精度に行うことができる表面検査装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、請求項1に記載の発明の表面検査装置は、
平板状の試料の表裏面のうち、少なくとも一面に光を照射して、前記試料の少なくとも一面の測定対象領域の形状を測定する表面検査装置であって、試料を保持する試料保持部と、前記試料保持部の一面側に取付け固定され、所定の第1波長の光を透過し、且つ、前記第1波長と異なる第2波長の光を反射する光学部材と、前記第1波長の光と前記第2波長の光を同時に照射する照射部と、前記照射部から照射され、前記試料の一面で反射した光及び前記光学部材で反射した光を結像する光結像部と、前記光結像部により結像された前記第1波長の光学像を撮像して画素ごとの第1輝度データを生成する第1撮像部と、前記光結像部により結像された前記第2波長の光学像を撮像して画素ごとの第2輝度データを生成する第2撮像部と、前記第1撮像部により生成された第1輝度データ及び前記第2撮像部により生成された第2輝度データに基づいて試料表面の形状を算出する画像処理手段と、を備えることを特徴とする。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の表面検査装置において、前記画像処理手段は、前記第1撮像部により生成された第1輝度データを前記第2撮像部により生成された第2輝度データに基づいて補正する補正手段を備えることを特徴とする。
【0009】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の表面検査装置において、前記照射部は、前記第1波長の光を照射する第1照射部と、前記第2波長の光を照射する第2照射部と、を備え、前記第1照射部からの前記第1波長の光の照射と前記第2照射部からの前記第2波長の光の照射とを同時に行うことを特徴とする。
【0010】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3の何れか一項に記載の表面検査装置において、前記光学部材、前記照射部、前記光結像部、前記第1撮像部、前記第2撮像部は、前記試料の表裏面の各々の測定対象領域の形状の測定用に別個に設けられていることを特徴とする。
【0011】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜4の何れか一項に記載の表面検査装置において、前記光結像部は、前記第1波長の光を透過し、且つ、前記第2波長の光を反射するダイクロイックミラーを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、照射部より同時に照射される第1波長の光及び第2波長の光のうち、第1波長の光を試料の一面で反射させる一方で、第2波長の光を試料保持部の一面側に取付け固定された光学部材で反射させ、双方から反射された光に基づいて生成された第1輝度データ及び第2輝度データを用いて試料表面の形状を算出することができる。即ち、試料保持部に光学部材が取付け固定されているので、当該光学部材で反射された第2波長の光に基づく第2輝度データを考慮して画像処理を行うことができることとなって、試料の表面形状の測定の際に、当該表面検査装置自体の振動、試料保持部の振動、照射部や結像部のレンズの温度変化等が生じた場合であっても、これらの影響を考慮して試料表面の形状を算出することができる。
したがって、設置環境に変動が生じても、試料の表面形状の測定をより高精度に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下に、本発明について、図面を用いて具体的な態様を説明する。ただし、発明の範囲は、図示例に限定されない。
図1は、本発明の基本となる表面検査装置の構成図であり、図2は、表面検査装置の制御部、表側撮像部及び裏側撮像部の構成を示すブロック図である。
また、図1における表面検査装置の左右をX軸方向、上下をY軸方向とする。
【0014】
表面検査装置1は、ウェーハ等の平板状の試料Wの表裏面の形状を測定するものであり、表面の形状を測定する表面測定部1Aと、裏面の形状を測定する裏面測定部1Bとを備えている。
具体的には、表面検査装置1は、図1及び図2に示すように、試料Wを保持する保持部材2と、表側光源部10と、裏側光源部110と、第1ミラー20、120と、第2ミラー30、130と、コリメータレンズ40、140と、第3ミラー50、150と、光学部材60、160と、ハーフミラー70、170と、ダイクロイックミラー80、180と、表側撮像部90と、裏側撮像部190と、制御部200等を備えて構成されている。
このうち、保持部材2と、表側光源部10と、第1ミラー20と、第2ミラー30と、コリメータレンズ40と、第3ミラー50と、光学部材60と、ハーフミラー70と、ダイクロイックミラー80と、表側撮像部90と、制御部200によって、表面測定部1Aが構成され、また、保持部材2と、表側光源部110と、第1ミラー120と、第2ミラー130と、コリメータレンズ140と、第3ミラー150と、光学部材160と、ハーフミラー170と、ダイクロイックミラー180と、裏側撮像部190と、制御部200によって、裏面測定部1Bが構成されている。
【0015】
保持部材2は、試料Wの端部を把持する把持部2aを備えるとともに、光学部材60、160をそれぞれY軸方向両端部で取り付け固定している。
把持部2aは、試料Wの表裏面のY軸方向両端部を挟み込んで把持する部材であり、試料Wを保持する試料保持部として機能している。
【0016】
表側光源部(照射部)10は、所定の第1波長の光を照射する表側第1光源(第1照射部)11と、第1波長と異なる第2波長の光を照射する表側第2光源(第2照射部)12とを備えて構成され、波長の異なる上記2つの光を同時に第1ミラー20に向けて照射する。
裏側光源部(照射部)110は、表側光源部10と略同様の構成をなしている。即ち、裏側光源部110は、所定の第1波長の光を照射する裏側第1光源(第1照射部)111と、第1波長と異なる第2波長の光を照射する裏側第2光源(第2照射部)112とを備えて構成され、波長の異なる上記2つの光を同時に第1ミラー120に向けて照射する
【0017】
表側第1光源11及び裏側第1光源111は、例えば、第1波長の光としての赤色光(波長域600〜760nm程度)を照射するLEDを含んで構成される。
表側第2光源12及び裏側第2光源112は、例えば、第2波長の光としての青色光(波長域430〜460nm程度)を照射するLEDを含んで構成される。
【0018】
なお、表側光源部10及び裏側光源部110は、例えば、それぞれ光ファイバ(図示省略)を備えており、表側第1光源11及び裏側第1光源111より照射された第1波長の光と、表側第2光源12及び裏側第2光源112より照射された第2波長の光を、それぞれの光ファイバに導いて集光した後に、第1ミラー20、120に向けて照射する。
これにより、第1ミラー20、120に対する、表側光源部10、裏側光源部110の照射位置の調整が容易になるとともに、第1波長の光と第2波長の光の間で不慮の光路差等が生じ、後述の画像処理プログラム203実行時に、数値誤差等を発生させるのを未然に防止することができる。
【0019】
第1ミラー20は、表側光源部10の表側第1光源11及び表側第2光源12よりY軸方向上側に同時に照射された第1波長の光及び第2波長の光を第2ミラー30に向けてX軸方向左側に反射させる。
第1ミラー120は、裏側光源部110の裏側第1光源111及び裏側第2光源112よりY軸方向上側に同時に照射された第1波長の光及び第2波長の光を第2ミラー130に向けてX軸方向右側に反射させる。
【0020】
第2ミラー30、130と、コリメータレンズ40、140と、第3ミラー50、150と、ハーフミラー70、170と、ダイクロイックミラー80、180は、それぞれ試料Wにて反射する第1波長の光、及び、光学部材60、160にて反射する第2波長の光を結像する光結像部の一部として機能している。
なお、光結像部の構成は、一例であってこれに限定されるものではない。
【0021】
第2ミラー30は、第1ミラー20により反射された第1波長の光及び第2波長の光をコリメータレンズ40に向けてY軸方向下側に反射させる。また、第2ミラー30は、試料Wの表面にて反射してコリメータレンズ40を透過した第1波長の光及び光学部材60にて反射してコリメータレンズ40を透過した第2波長の光をハーフミラー70に向けてX軸方向右側に反射させる。
第2ミラー130は、第1ミラー120により反射された第1波長の光及び第2波長の光をコリメータレンズ140に向けてY軸方向下側に反射させる。また、第2ミラー130は、試料Wの裏面にて反射してコリメータレンズ140を透過した第1波長の光及び光学部材160にて反射してコリメータレンズ140を透過した第2波長の光をハーフミラー170に向けてX軸方向左側に反射させる。
【0022】
コリメータレンズ40は、第2ミラー30により反射された第1波長の光及び第2波長の光を透過させて平行光にするとともに、試料Wの表面にて反射した後、第3ミラー50により反射された第1波長の光及び光学部材60にて反射した後、第3ミラー50により反射された第2波長の光を透過させて所定位置に集光させる。
コリメータレンズ140は、第2ミラー130により反射された第1波長の光及び第2波長の光を透過させて平行光にするとともに、試料Wの裏面にて反射した後、第3ミラー150により反射された第1波長の光及び光学部材160にて反射した後、第3ミラー150により反射された第2波長の光を透過させて所定位置に集光させる。
【0023】
第3ミラー50は、コリメータレンズ40により平行光にされた第1波長の光及び第2波長の光を光学部材60に向けてX軸方向左側に反射させる。また、第3ミラー50は、試料Wの表面にて反射された第1波長の光及び光学部材60にて反射された第2波長の光をコリメータレンズ40に向けてY軸方向上側に反射させる。
第3ミラー150は、コリメータレンズ140により平行光にされた第1波長の光及び第2波長の光を光学部材160に向けてX軸方向右側に反射させる。また、第3ミラー150は、試料Wの裏面にて反射された第1波長の光及び光学部材160にて反射された第2波長の光をコリメータレンズ140に向けてY軸方向上側に反射させる。
【0024】
光学部材60、160は、例えば、所定の波長域からなる光を透過させる一方で、異なる波長域からなる光を反射させる光学フィルタを含んで構成される。
具体的には、光学部材60は、表側光源部10から照射された光のうち、第1波長の光(例えば、赤色光)を透過させる一方で、第1波長の光と波長の異なる第2波長の光(例えば、青色光)を当該光学部材60にて反射させて、反射光に照射時と逆向きの光路を辿らせる。
光学部材160は、裏側光源部110から照射された光のうち、第1波長の光(例えば、赤色光)を透過させる一方で、第1波長の光と波長の異なる第2波長の光(例えば、青色光)を当該光学部材160にて反射させて、反射光に照射時と逆向きの光路を辿らせる。
【0025】
また、光学部材60、160は、保持部材2の把持部2aの表裏面側にそれぞれ取り付け固定されており、試料Wが設置環境等の変動により所定の振動等を行っている場合には試料Wと一体となって振動する。
【0026】
ハーフミラー70は、第1ミラー20により反射された第1波長の光及び第2波長の光を透過させる。また、ハーフミラー70は、試料Wの表面にて反射した後、第2ミラー30により反射された第1波長の光及び光学部材60にて反射した後、第2ミラー30により反射された第2波長の光をダイクロイックミラー80に向けてY軸方向下側に反射させる。
ハーフミラー170は、第1ミラー120により反射された第1波長の光及び第2波長の光を透過させる。また、ハーフミラー170は、試料Wの裏面にて反射した後、第2ミラー130により反射された第1波長の光及び光学部材160にて反射した後、第2ミラー130により反射された第2波長の光をダイクロイックミラー180に向けてY軸方向下側に反射させる。
【0027】
ダイクロイックミラー80、180は、可視光において、任意の波長域の光のみを選択的に反射/透過させ、その他の波長の光は透過/反射させる性質を有するミラーである。
具体的には、ダイクロイックミラー80は、例えば、ハーフミラー70により反射された光のうち、第1波長の光を透過させるとともに、第1波長と異なる第2波長の光をX軸方向左側に反射させる。
ダイクロイックミラー180は、例えば、ハーフミラー170により反射された光のうち、第1波長の光を透過させるとともに、第1波長と異なる第2波長の光をX軸方向右側に反射させる。
【0028】
表側撮像部90は、ダイクロイックミラー80を透過した第1波長の光が入射される表側第1撮像部91と、ダイクロイックミラー80にて反射された第2波長の光が入射される表側第2撮像部92とを備えて構成される。
裏側撮像部190は、表側撮像部90と略同様の構成をなしている。即ち、裏側撮像部190は、ダイクロイックミラー180を透過した第1波長の光が入射される裏側第1撮像部191と、ダイクロイックミラー180にて反射された第2波長の光が入射される裏側第2撮像部192とを備えて構成される。
【0029】
表側第1撮像部91及び裏側第1撮像部191は、例えば、CCDカメラ等で構成され、光結像部により結像された第1波長の光学像を撮像して、画素ごとの第1輝度データを生成し、後述のRAM202に対して出力する。
表側第2撮像部92及び裏側第2撮像部192は、例えば、CCDカメラ等で構成され、光結像部により結像された第2波長の光学像を撮像して画素ごとの第2輝度データを生成し、後述のRAM202に対して出力する。
【0030】
制御部200は、表側撮像部90及び裏側撮像部190にて生成された輝度データに基づいて画像処理(形状測定)を行うものである。
具体的には、制御部200は、図2に示すように、CPU201、RAM202、記憶部203等を備えて構成され、記憶部203に記憶された所定のプログラムが実行されることにより、表面検査装置1の動作制御を行っている。
【0031】
CPU201は、記憶部203に格納された処理プログラム等を読み出して、RAM202に展開して実行することにより、表面検査装置1全体の制御を行う。
【0032】
RAM202は、CPU201により実行された処理プログラム等を、RAM202内のプログラム格納領域に展開するとともに、入力データや上記処理プログラムが実行される際に生じる処理結果等をデータ格納領域に格納する。
【0033】
記憶部203は、例えば、プログラムやデータ等が予め記憶されている記録媒体(図示省略)を有しており、この記録媒体は、半導体メモリ等で構成されている。また、記憶部203は、CPU201が表面検査装置1全体を制御する機能を実現させるための各種データ、画像処理プログラム203a等の各種処理プログラム及びこれらプログラムの実行により処理されたデータ等を記憶している。
【0034】
画像処理プログラム203aは、CPU201に、表側第1撮像部91、裏側第1撮像部191により生成される第1輝度データと、表側第1撮像部92、裏側第2撮像部192により生成される第2輝度データとに基づいて試料表裏面の各々の形状を算出する機能を実現させるためのプログラムである。
具体的には、CPU201が画像処理プログラム203aを実行すると、試料Wの表裏面の各々の形状を表す輝度データであって、試料Wの設置環境等の変動を考慮せずに検出される第1波長の光に基づく第1輝度データから、試料Wと一体となって振動等する光学部材60により反射される第2波長の光に基づく第2輝度データを減算し、輝度データの補正を行う。そして、その減算(補正)した結果を測定対象領域の各点における輝度データとすることにより、試料Wの設置環境等の変動の影響を低減させることができる。
次いで、その各点における(補正された)輝度データから隣接画素の輝度データとの差を演算し、傾斜方向に沿う1つのライン(データ処理における走査ライン)について、輝度データの分布の1次微分を得る。この1次微分によって求められたデータは測定対象領域の傾斜量を反映しているので、上記1次微分の結果から走査ラインに沿った傾斜分布が求まる。さらに、走査ライン方向について、輝度データの初期位置の画素(通常は端の画素)から各画素までの輝度データを積算し、各位置の積分データを求め、この積分データから得られる回帰曲線と積分データとの差に基づいて測定対象領域の凹凸を求めることができる。
ここで、試料Wの裏面形状の算出(補正)にあっては、試料Wの裏面形状の測定用に備えられた光学部材160等により、裏側第2撮像部192によって生成される裏面側の第2輝度データを用いることができるので、例えば、裏面側の第1輝度データに対する上記補正にあたって、裏面側の第2輝度データの代わりに表面側の第2輝度データを使用した際の、第1/第2輝度データ間の位置・角度・時間的な突合せや調整を図る必要が無いため、迅速かつ高精度な画像処理が可能となる。
したがって、CPU201は、かかる画像処理プログラム203aを実行することで、画像処理手段及び補正手段として機能する。
【0035】
なお、記憶部203は、試料の表裏面形状の測定の際に、表側光源部10、裏側光源部110を左右方向(X軸方向)や前後方向(XY軸に直交する方向)に所定量(例えば、10cm程度)移動させる機能をCPU201に実現させるプログラムを備えても良い。
つまり、例えば、試料Wの測定対象領域が平坦部である場合、表側光源部10、裏側光源部110より照射され、試料Wの表裏面で反射する第1波長の光は、照射方向と同じ方向に反射し、表側第1撮像部91、裏側第1撮像部191によって全て受光されるので、その輝度(第1輝度データの輝度)は100%となる。しかし、測定対象領域に任意の傾き角を備える凸部が存在する場合、その凸部に照射された第1波長の光は、凸部の傾き角に応じて照射方向と異なる方向(表側第1撮像部91、裏側第1撮像部191によって受光されない方向)に反射し、輝度が0%となる場合がある。
そこで、上記のような場合、例えば図3に示されるように、表側光源部10、裏側光源部110を図中矢印の方向に移動させ、第1波長の光の照射位置を所定量(図3の破線位置から実線位置に)ずらすような制御をCPU201に実行させることにより、凸部に照射された第1波長の光が、表側第1撮像部91、裏側第1撮像部191によって全て受光されるようにすることが可能となる。
つまり、上記プログラムの実行により、試料Wの表裏面にある、任意の傾斜角を備えた凸凹や傷、パーティクルを検知することが可能となる。
【0036】
次に、表面検査装置1の動作について説明する。
試料Wの表裏面の形状を同時に計測する場合、表面測定部1A及び裏面測定部1Bにより同時計測を行う。
【0037】
具体的には、表面測定部1Aにおいて、表側光源部10の表側第1光源11が第1波長の光を、表側第2光源12が第2波長の光を同時に照射し、双方の光は第1ミラー20により第2ミラー30に向けて反射される。そして、双方の光は第2ミラー30によりコリメータレンズ40に向けて反射され、コリメータレンズ40を透過して平行光となり、第3ミラー50により光学部材60に向けて反射される。さらに、光学部材60に向けて反射された双方の光のうち、第1波長の光は光学部材60を透過して試料Wの表面で反射する一方で、第2波長の光は光学部材60にて反射する。
次いで、試料Wの表面で反射した第1波長の光及び光学部材60にて反射した第2波長の光は、ハーフミラー70まで上記入射時と逆の光路を辿る。つまり、双方の反射光は、第3ミラー50によりコリメータレンズ40に向けて反射され、コリメータレンズ40を透過し、第2ミラー30によりハーフミラー70に向けて反射される。そして、双方の反射光は、ハーフミラー70によりダイクロイックミラー80に向けて反射し、第1波長の光はダイクロイックミラー80を透過して表側第1撮像部91に入射されて撮像され、第2波長の光はダイクロイックミラー80により反射して表側第2撮像部92に入射されて撮像される。
そして、表側第1撮像部91は、第1波長の光に基づいて第1輝度データを生成してRAM202に出力し、一方、表側第2撮像部92は、第2波長の光に基づいて第1輝度データを生成してRAM202に出力する。
【0038】
一方、裏面測定部1Bにおいても、表面測定部1Aと略同様の動作が同時になされる。
具体的には、裏側光源部110の裏側第1光源111が第1波長の光を、裏側第2光源112が第2波長の光を同時に照射し、双方の光は第1ミラー120により第2ミラー130に向けて反射される。そして、双方の光は第2ミラー130によりコリメータレンズ140に向けて反射され、コリメータレンズ140を透過して平行光となり、第3ミラー150により光学部材160に向けて反射される。さらに、光学部材160に向けて反射された双方の光のうち、第1波長の光は光学部材160を透過して試料Wの裏面で反射する一方で、第2波長の光は光学部材160にて反射する。
次いで、試料Wの裏面で反射した第1波長の光及び光学部材160にて反射した第2波長の光は、ハーフミラー170まで上記入射時と逆の光路を辿る。つまり、双方の反射光は、第3ミラー150によりコリメータレンズ140に向けて反射され、コリメータレンズ140を透過し、第2ミラー130によりハーフミラー170に向けて反射される。そして、双方の反射光は、ハーフミラー170によりダイクロイックミラー180に向けて反射し、第1波長の光はダイクロイックミラー180を透過して裏側第1撮像部191に入射されて撮像され、第2波長の光はダイクロイックミラー180により反射して裏側第2撮像部192に入射されて撮像される。
そして、裏側第1撮像部191は、第1波長の光に基づいて第1輝度データを生成してRAM202に出力し、一方、裏側第2撮像部192は、第2波長の光に基づいて第1輝度データを生成してRAM202に出力する。
【0039】
その後、CPU201が画像処理プログラム203aを実行して、表側第1撮像部91より出力された第1輝度データから表側第1撮像部92より出力された第2輝度データを減算することで第1輝度データを補正して、当該補正後の第1輝度データに基づいて、試料Wの表面の形状を算出する。
同様に、試料Wの裏面についても、CPU201が画像処理プログラム203aを実行して、裏側第1撮像部191より出力された第1輝度データから裏側第1撮像部192より出力された第2輝度データを減算することで第1輝度データを補正して、当該補正後の第1輝度データに基づいて、試料Wの裏面の形状を算出する。
【0040】
なお、試料Wの表裏面の形状を同じタイミングで測定する場合について説明したが、試料Wの表面と裏面とを異なるタイミングで測定するようにしても良い。
【0041】
以上のように、本発明にかかる表面検査装置1によれば、表側光源部10より同時に照射される第1波長の光及び第2波長の光のうち、第1波長の光を試料Wの表面で反射させる一方で、第2波長の光を把持部2aの一面側に取付け固定された光学部材60で反射させ、CPU201が画像処理プログラム203を実行することにより、双方から反射された光に基づく輝度データを用いて試料Wの表面の形状を算出することができる。
即ち、把持部2aに光学部材60が取付け固定されているので、例えば、当該表面検査装置1の設置環境等の変動により試料Wが所定の振動等を行っている場合に、光学部材60と試料Wが一体となって振動することから、試料Wの設置環境等の変動を考慮せずに検出される第1波長の光に基づく第1輝度データを光学部材60で反射された第2波長の光に基づく第2輝度データに基づいて補正することができる。従って、試料Wの表面形状の測定の際に、当該表面検査装置1自体の振動、把持部2aの振動、表側光源部10や結像部のレンズ(例えば、コリメータレンズ40等)の温度変化等が生じた場合であっても、これらの影響を排除して試料Wの表面の形状を適正に算出することができる。
また、試料Wの裏面についても、同様に、当該表面検査装置1の設置環境等の変動の影響を排除して試料Wの裏面の形状を適正に算出することができる。
つまり、表面検査装置1の設置環境の変動の主たる原因として、各部材を保持するフレーム等の熱膨張や、試料Wと表側撮像部90及び裏側撮像部190とが同じ振動でない場合などが考えられる。
ここで、特許文献2記載の発明は、剛体平板によりウェーハ自体に生ずる空気振動等を防止又は軽減するものであるが、測定中にウェーハが振動して当該振動を減衰させるように作用すると測定値に影響を生じさせる虞がある。これに対して、本発明にかかる表面検査装置1によると、試料Wの表面形状の測定中に、所定の外乱によって試料Wに振動が生じたとしても、把持部2aにより当該試料Wと光学部材60、160が一体となって振動することで当該外乱の影響を排除することができ、これにより、特許文献2記載の発明に比して測定値の誤差を少なくすることができ、試料Wの表面形状をより精確に算出することができる。
よって、本発明は、設置環境に変動が生じても、試料Wの表面形状の測定をより高精度に行うことができる表面検査装置1であるといえる。
【0042】
また、表面検査装置1は、試料Wの裏面側の測定対象領域の形状の測定用として、裏面測定部1B、即ち、光学部材160と、裏側光源部110(裏側第1光源111及び裏側第2光源112)と、第1ミラー120と、第2ミラー130と、コリメータレンズ140と、第3ミラー150と、ハーフミラー170と、ダイクロイックミラー180と、裏側撮像部190(裏側第1撮像部191及び裏側第1撮像部192)と備えている。
これによって、試料Wの表裏面の各々を測定対象とすることができることとなり、表裏面の何れか一方のみを測定対象とする場合に比べて、一層高精度な形状の測定が可能となるのはもちろんのこと、試料Wの裏面形状の算出(補正)にあって、輝度データ間の位置・角度・時間的な突合せや調整を図る必要が無いため、迅速かつより高精度な画像処理が可能となる。
【0043】
また、表面検査装置1は、第1波長の光を透過し、且つ、第2波長の光を反射するダイクロイックミラー80、180を備えている。
これによって、波長の異なる第1波長の光及び第2波長の光のうち、第1波長の光を透過させて表側第1撮像部91、裏側第1撮像部191に入射させる一方で、第2波長の光を反射させて表側第2撮像部92、裏側第2撮像部192に入射させることができるので、より高精度に第1波長の光及び第2波長の光を分離し、確実にその分離した光を表側撮像部90及び裏側撮像部190に入射させることができる。
【0044】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、種々の改良並びに設計の変更を行っても良い。
例えば、表面検査装置1として、試料の表裏面の測定対象領域の形状を測定するものを例示したが、これに限られるものではなく、試料Wの片面側の測定対象領域の形状の測定用の表面測定部1A及び裏面測定部1Bのうち、何れか一方を備えるものであっても良い。
即ち、表面測定部1Aを構成する、光学部材60と、表側光源部10(表側第1光源11及び表側第2光源12)と、第1ミラー20と、第2ミラー30と、コリメータレンズ40と、第3ミラー50と、ハーフミラー70と、ダイクロイックミラー80と、表側撮像部90(表側第1撮像部91及び表側第1撮像部92)を備えたものであっても当然よい。
【0045】
また、上記実施形態にあっては、表側光源部10及び裏側光源部110として、第1波長の光と第2波長の光を別々の光源から同時照射させるものを例示したが、表側光源部10及び裏側光源部110の構成はこれに限られるものではなく、第1波長の光と第2波長の光を同時に照射する構成のものであれば如何なるものであっても良い。
即ち、表側光源部10及び裏側光源部110は、必ずしも第1波長の光と第2波長の光を別々の光源から同時照射させる必要はなく、例えば、第1波長の光と第2波長の光が混在した光を照射する光源を備えていても良い。かかる場合であっても、光学部材60、160により、第1波長の光と第2波長の光を分離することができるので、上記構成と同様の効果を発揮することができる。
さらに、例えば、表面検査装置1が表面測定部1Aのみからなる場合に、試料Wの裏面側にのみ光学部材を設け、第1照射部から第1波長の光を試料Wの表面側に向けて照射し、当該第1波長の光の照射と同期させて、第2照射部から第2波長の光を試料Wの裏面側に向けて光学部材により反射させるように照射する構成であっても良い。
【0046】
また、上記実施形態では、光学部材60(160)が保持部材2に取付け固定された構成、即ち、光学部材60(160)と試料Wを一体とした構成を例示したが、光学部材60(160)は、保持部材2の他に、当該表面検査装置1の表側光源部10(裏側光源部110)以外の各部と一体となるように構成されても良い。つまり、光学部材60(160)と表側光源部10(裏側光源部110)とが一体となって構成されると、表側光源部10(裏側光源部110)から照射される第1波長の光や第2波長の光が振動の影響を受けてしまい、試料Wの表面形状の測定の際に、保持部材2の振動の影響を排除することができなくなってしまうためである。
具体的には、例えば、光学部材60(160)は、光結像部の各種ミラーやレンズとも一体となって構成されても良いし、表側撮像部90(裏側撮像部190)とも一体となって構成されても良い。また、表面検査装置1は、例えば、表側光源部10(裏側光源部110)を別体として、それ以外の全てを一体として構成しても良い。
【0047】
また、表面検査装置1の構成は、上記実施形態に例示したものは一例であり、これに限られるものではない。
さらに、上記実施形態では、画像処理手段、補正手段としての機能を、CPU201によって画像処理プログラム203aが実行されることにより実現される構成としたが、これに限られるものではなく、例えば、各種機能を実現するためのロジック回路等から構成しても良い。
【0048】
また、上記実施形態では、第1波長の光として赤色光を、第2波長の光として青色光を例示したが、第1波長の光及び第2波長の光はこれらに限られるものではなく、波長の異なる組合せであれば適宜任意に変更することができる。例えば、第1波長の光が赤色光で変更がない場合、第2波長の光として青色光に代えて緑色光(波長域498〜530nm程度)を適用しても良い。
【0049】
加えて、今回開示された実施形態は、全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明の基本となる表面検査装置の構成図である。
【図2】本発明に係る表面検査装置の要部構成を示すブロック図である。
【図3】本発明に係る表面検査装置の光源を移動させる場合の、移動前後の状態を示した図である。
【符号の説明】
【0051】
1 表面検査装置
2 保持部材
2a 把持部(試料保持部)
10 表側光源部(照射部)
11 表側第1光源(第1照射部)
12 表側第2光源(第2照射部)
110 裏側光源部(照射部)
111 裏側第1光源(第1照射部)
112 裏側第2光源(第2照射部)
20、120 第1ミラー
30、130 第2ミラー(光結像部)
40、140 コリメータレンズ(光結像部)
50、150 第3ミラー(光結像部)
60、160 光学部材
70、170 ハーフミラー(光結像部)
80、180 ダイクロイックミラー(光結像部)
90 表側撮像部
91 表側第1撮像部(第1撮像部)
92 表側第2撮像部(第2撮像部)
190 裏側撮像部
191 裏側第1撮像部(第1撮像部)
192 裏側第2撮像部(第2撮像部)
200 制御部
201 CPU(画像処理手段、補正手段)
203a 画像処理プログラム(画像処理手段、補正手段)
W 試料

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平板状の試料の表裏面のうち、少なくとも一面に光を照射して、前記試料の少なくとも一面の測定対象領域の形状を測定する表面検査装置であって、
試料を保持する試料保持部と、
前記試料保持部の一面側に取付け固定され、所定の第1波長の光を透過し、且つ、前記第1波長と異なる第2波長の光を反射する光学部材と、
前記第1波長の光と前記第2波長の光を同時に照射する照射部と、
前記照射部から照射され、前記試料の一面で反射した光及び前記光学部材で反射した光を結像する光結像部と、
前記光結像部により結像された前記第1波長の光学像を撮像して画素ごとの第1輝度データを生成する第1撮像部と、
前記光結像部により結像された前記第2波長の光学像を撮像して画素ごとの第2輝度データを生成する第2撮像部と、
前記第1撮像部により生成された第1輝度データ及び前記第2撮像部により生成された第2輝度データに基づいて試料表面の形状を算出する画像処理手段と、を備えることを特徴とする表面検査装置。
【請求項2】
前記画像処理手段は、前記第1撮像部により生成された第1輝度データを前記第2撮像部により生成された第2輝度データに基づいて補正する補正手段を備えることを特徴とする請求項1に記載の表面検査装置。
【請求項3】
前記照射部は、
前記第1波長の光を照射する第1照射部と、
前記第2波長の光を照射する第2照射部と、を備え、
前記第1照射部からの前記第1波長の光の照射と前記第2照射部からの前記第2波長の光の照射とを同時に行うことを特徴とする請求項1又は2に記載の表面検査装置。
【請求項4】
前記光学部材、前記照射部、前記光結像部、前記第1撮像部、前記第2撮像部は、前記試料の表裏面の各々の測定対象領域の形状の測定用に別個に設けられていることを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載の表面検査装置。
【請求項5】
前記光結像部は、前記第1波長の光を透過し、且つ、前記第2波長の光を反射するダイクロイックミラーを備えることを特徴とする請求項1〜4の何れか一項に記載の表面検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−60539(P2010−60539A)
【公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−229583(P2008−229583)
【出願日】平成20年9月8日(2008.9.8)
【出願人】(592153517)株式会社レイテックス (18)
【Fターム(参考)】