説明

表面汚染検査装置

【課題】運用性が良く安全性の高い表面汚染検査装置を提供すること。
【解決手段】表面汚染を検査すべき被検査物体13が収容されているセル内に設けられろ紙8によって被検査物体13の表面汚染を採取する汚染採取装置1と、セル内に設けられ汚染採取装置1にろ紙8を供給し回収するろ紙供給回収装置2と、セルの内外を隔離する壁12を貫く貫通孔6内に設けられろ紙8を載置したトレイ9を運ぶトレイ搬送装置14を備えている構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、再処理関連施設から搬出される放射性廃棄物等の表面汚染を検査する表面汚染検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
再処理関連施設から搬出される放射性廃棄物等の表面汚染は、放射性廃棄物等の表面をろ紙にてふき取り、ろ紙に付着した放射能を測定することにより検査される(特許文献1,2参照)。
【0003】
従来、高放射線環境下にある物品の表面汚染を検査するには、クレーン等を用いて別室からろ紙を供給するなど比較的大掛かりな装置に頼らざる得ない状況にある。また、ろ紙を回収する際においては、下階の別室に連通する貫通孔に落下させることにより、下階の検査室に搬送するなどしているが、回収する前にカバーの設置が必要となるため、ろ紙ハンドリング技術という点において複雑な構造にせざる得ない状況にある。
【特許文献1】特開昭57−79480号公報
【特許文献2】特開2001−305283号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
再処理関連施設から搬出される放射性廃棄物は高レベルな放射能を有するものある。このため、放射性廃棄物を取り扱うセル内は高放射線環境となり、人がセル内に入ることはできない上に、廃棄物がセル外に搬出された場合においても、セル内を除染しなければならず、容易に入ることはできない。よって、表面汚染検査を行う上で、その運用性、安全性について考慮する必要がある。
そこで本発明は、運用性が良く安全性の高い表面汚染検査装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明の表面汚染検査装置は、表面汚染を検査すべき被検査物体が収容されているセル内に設けられろ紙によって前記被検査物体の表面汚染を採取する汚染採取装置と、前記セル内に設けられ前記汚染採取装置にろ紙を供給し回収するろ紙供給回収装置と、前記セルの内外を隔離する壁を貫く貫通孔内に設けられろ紙を載置したトレイを運ぶトレイ搬送装置とを備えている構成とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、運用性が良く安全性の高い表面汚染検査装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明の実施の形態を図1〜図5を参照して説明する。本実施の形態の表面汚染検査装置は図1および図2に示すように、表面汚染を検査すべき被検査物体13が隔離収容されているセル内に設けられ被検査物体13を載置あるいは保持して回転する回転テーブル3と、回転する被検査物体13の表面にアーム1aによってろ紙を押し当てて被検査物体13の表面汚染をろ紙に移行させて採取する汚染採取装置1と、汚染採取装置1にろ紙を供給し回収するろ紙供給回収装置2と、ろ紙を載せたトレイをセル内とセル外を隔てる遮蔽壁12に設けられた壁貫通孔6を通って移動させるトレイ搬送装置と、セル外に設けられセル内からの放射性物質の侵入を防ぐ密閉式の測定室であるグローブボックス5内に設けられ回収したろ紙の汚染密度を測定する汚染測定装置4とから構成されている。壁貫通孔6のセル内側とセル外側には遮蔽扉7a,7bが設けられている。
【0008】
ろ紙を汚染採取装置1に供給し、汚染採取後ろ紙を回収する動作は下記のように行う。未使用のろ紙はセル外に保管されており、グローブボックス5内に手動にて搬入される。ろ紙がグローブボックス5内に搬入された後は、図3に示すように、専用のトレイ9上にろ紙8が複数個置かれ、セル外側の遮蔽扉7bが開けられた後、手動若しくは自動にてトレイ9を壁貫通孔6に入れる。セル外側の遮蔽扉7bが閉じられた後、セル内側の遮蔽扉7aが開かれる。セル内にあるろ紙供給回収装置2は壁貫通孔6内に接近するように移動する。
【0009】
壁貫通孔6内には、図4に示すようにギヤおよびシャフトにて連結されたローラ10を備えたトレイ搬送装置14が設置されている。ろ紙供給回収装置2はトレイ搬送装置14を駆動させる。すなわち、ろ紙供給回収装置2は、トレイ搬送装置14と動力伝達するための動力伝達継手11aを具備しており、また、トレイ搬送装置14も、ローラ10に連結されたギヤを回転させるシャフトに結合された動力伝達継手11bを具備している。この継手11a,11bはその位置合わせにずれが生じても動力伝達がなされるような構造となっている。
【0010】
ろ紙供給回収装置2は、トレイ9を汚染採取装置1との取り合い点まで搬送し、また、トレイ搬送装置14との結合点まで移動するための駆動系をもっている。これにより、ろ紙8をセル内に搬入する。搬入されたろ紙8は汚染採取装置1との取り合い点まで搬送され、汚染採取装置1に供給される。汚染採取後のろ紙8の回収は、この逆の動作フローとなる。
【0011】
汚染採取装置1は、アーム1a先端に設置した動力を用いて、若しくは機械的にろ紙8を把持し、被検査物体13の表面にろ紙8を倣わせるように動作する。このとき、被検査物体13の形状が円筒体の場合には、被検査物体13を回転テーブル3に載置し回転させながらろ紙8で表面をこする。
【0012】
被検査物体13の表面の汚染を採取したろ紙8は汚染採取装置1から取り外され、トレイ9に載せられてセル外に搬送され、図5に示すように、グローブボックス5内において手動にてトレイ9から降ろされ、汚染測定装置4によって汚染密度を測定される。
【0013】
上記のように本実施の形態の表面汚染検査装置は、セル内とセル外を連通する壁貫通孔6を通して、セル外からろ紙8を供給し、ろ紙8が汚染採取に使用された後はセル外に搬出して、セル外にて汚染密度を計測する。これにより、大掛かりな装置を設置せずに、セル内にろ紙8を供給し、またセル内からろ紙8を回収する。
【0014】
また本実施の形態においては、セル内とセル外を隔てる壁貫通孔6のセル内側及びセル外側それぞれに遮蔽扉7a,7bを設置する。これにより、セル内の放射線がセル外へ出ることを防止する。また、壁貫通孔6内にトレイ搬送装置14を設置して、セル内から動力伝達若しくはセル外から動力供給を行うことで、トレイ搬送装置14を駆動することにより、壁貫通孔6内に動力を持つことなく、ろ紙8を壁貫通孔6を通して内外へ搬送する。またセル内とセル外との間で気密を保持するグローブボックス5若しくはフード内装置を設置してセル外へ放射性物質が漏えいすることを防止し安全性を確保した上で、その内部に設置した汚染測定装置でセル外に搬出したろ紙8の汚染密度を測定する。
【0015】
したがって本実施の形態の表面汚染検査装置によれば、ろ紙供給回収のために大掛かりな装置を設置せずに済み、また、耐放射線性と放射線環境下における運用性が良く、システムとしてのコストダウン及び信頼性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施の形態の表面汚染検査装置を示す斜視図。
【図2】本発明の実施の形態の表面汚染検査装置のセル内部分を示す斜視図。
【図3】本発明の実施の形態の表面汚染検査装置に備えられるトレイを示す斜視図。
【図4】本発明の実施の形態の表面汚染検査装置に備えられるトレイ搬送装置とろ紙供給回収装置の動作を示す図。
【図5】本発明の実施の形態の表面汚染検査装置に備えられるグローブボックスを示す図。
【符号の説明】
【0017】
1…汚染採取装置、1a…アーム、2…ろ紙供給回収装置、3…回転テーブル、4…汚染測定装置、5…グローブボックス、6…壁貫通孔、7a,7b…遮蔽扉、8…ろ紙、9…トレイ、10…ローラ、11a,11b…動力伝達継手、12…遮蔽壁、13…被検査物体、14…トレイ搬送装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面汚染を検査すべき被検査物体が収容されているセル内に設けられろ紙によって前記被検査物体の表面汚染を採取する汚染採取装置と、前記セル内に設けられ前記汚染採取装置にろ紙を供給し回収するろ紙供給回収装置と、前記セルの内外を隔離する壁を貫く貫通孔内に設けられろ紙を載置したトレイを運ぶトレイ搬送装置とを備えていることを特徴とする表面汚染検査装置。
【請求項2】
前記トレイ搬送装置は、前記ろ紙供給回収装置から動力伝達を行うことにより、若しくはセル外からの動力により駆動されることを特徴とする請求項1記載の表面汚染検査装置。
【請求項3】
前記貫通孔のセル内側およびセル外側に遮蔽用の扉を備えていることを特徴とする請求項1記載の表面汚染検査装置。
【請求項4】
前記貫通孔の前記セル外側に設けられ前記ろ紙の汚染を測定する汚染測定装置を設置した密閉式の測定室を備えていることを特徴とする請求項1記載の表面汚染検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−20400(P2008−20400A)
【公開日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−194293(P2006−194293)
【出願日】平成18年7月14日(2006.7.14)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】