説明

表面温度測定方法

【課題】Δとψを検出することにより薄膜表面温度の測定を可能とする。
【解決手段】表面に一様な厚さの薄膜が形成された基板である温度測定用試料であって、前記薄膜の特定温度での厚さが既知であり、前記薄膜と基板について屈折率nと消衰係数kの温度依存性が既知である温度測定用試料を温度測定対象位置に配置し、温度測定用試料の温度を計測するために偏光された測定光を照射してその反射光についてp偏光成分とs偏光成分の位相差信号Δと反射率の比の信号ψを検出するための偏光測定装置を用いて光の電界が入射面に平行なp偏光成分の反射率Rpと、光の電界が入射面に垂直なs偏光成分の反射率Rsを測定して位相差信号Δと反射率の比の信号ψを算出し、偏光解析によって薄膜の屈折率nもしくは膜厚tの少なくともひとつを算出し、算出したnもしくはtをもとに、上記既知の薄膜の屈折率nと消衰係数kの温度依存性から薄膜の温度Tを算出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体基板等を用いた薄膜形成プロセスで基板加熱を伴う場合における、その基板の表面温度の計測方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子デバイスや機能性薄膜を基板上に形成する各種成膜プロセスが工業分野では幅広く用いられており、薄膜形成プロセスでは、基板表面での化学反応を利用するため基板の『表面』の温度管理が重要である。
基板の温度を測る方法として、熱電対を基板に埋め込んで装置内に設置し通常の成膜処理と同じ加熱条件にしてその温度を測定する方法や、放射温度計を用いて基板から放射される赤外線強度を計る方法が多用されている。
その他にも、基板の温度を計測する方法として、アモルファス層を基板上に形成した試料を温度測定対象の加熱装置に設置し、加熱後に取り出してアモルファス層の厚みの減少レートから加熱温度を求める方法がある(特許文献1、2参照)。
また試料が半導体の場合、光の反射率が半導体のエネルギーバンドのバンドギャップに相当する波長の前後で急変し、その波長が温度によって変化することを利用して基板の温度をもとめる方法がある(特許文献3参照)。
しかしながら上記の方法のうちリアルタイムで測定できる方式では、与えられる温度は厚さ数百ミクロンの基板の厚み方向の平均温度であって、数nm〜数百nmの厚さの薄膜が形成される基板の『表面』温度ではない。
基板表面の温度は、雰囲気ガスへの放熱や、表面での成膜反応熱や、熱源の位置関係によって影響を受けるため、薄膜部分と基板の平均温度とは厳密には一致しない。そこでプロセスの精密な制御には、薄膜の存在する表面温度を直接測定する方法が必要である。
基板の表面温度の計測に関して触れられているものとして、偏光解析をもちいて基板表面の酸化膜除去を監視する手法(特許文献4参照)の中で基板の温度にともなって偏光パラメータが変化することが示されている。その他には、屈折率や膜厚が温度により変化する例が特許文献5の中で示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−232142号公報
【特許文献2】特開2002−208567号公報
【特許文献3】特開平7−159132号公報
【特許文献4】特開2000−91240号公報
【特許文献5】特開2009−42038号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1〜5で示される従来の手法では、基板表面からどこまでの深さの温度を表面温度として計測しているかが不明瞭である。とくに、後述する偏光パラメータΔやψを用いて、薄膜つきの基板を測定している場合は、薄膜のみならず基板からの影響も受けるため、薄膜と基板とを総合した光学特性の温度依存性を観測してしまうことになり、得られた温度が指し示す表面からの深さが不明瞭となってしまう。
また、上記特許文献1〜5では測定の再現性を確認する方法も示されておらず、温度測定手段としては不足している。とくに温度測定用試料を高温にさらす場合は、雰囲気ガスによっては薄膜の酸化もしくは蒸発による膜厚減少が生じる可能性があるため、得られた温度データの信頼性を向上させるためにも再現性の確認が必要である。
そこで、本発明は、加熱中の基板の表面温度を計測するため、基板の厚さよりも十分に薄い膜が表面に形成された基板を温度測定用試料として用い、薄膜の温度を計測することで基板の表面温度を測定する方法を提供するものである。これにより、厚さtの異なる温度測定用試料を用いれば、基板の表面から各種深さtまでの平均温度を得ることも可能となる。
また、基板表面に薄膜を形成する装置において、従来の基板の全厚さ方向の平均温度を管理する替わりに、基板の表面近傍の温度を管理する方法を提供できる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の薄膜の表面温度計測方法は、表面に一様な厚さの薄膜が形成された基板である温度測定用試料であって、前記薄膜の特定温度での厚さが既知であり、前記薄膜と基板について屈折率nと消衰係数kの温度依存性が既知である温度測定用試料を温度測定対象位置に配置し、温度測定用試料の温度を計測するために偏光された測定光を照射してその反射光についてp偏光成分とs偏光成分の位相差信号Δと反射率の比の信号ψを検出するための偏光測定装置を用いて光の電界が入射面に平行なp偏光成分の反射率Rpと、光の電界が入射面に垂直なs偏光成分の反射率Rsを測定して位相差信号Δと反射率の比の信号ψを算出し、偏光解析によって薄膜の屈折率nもしくは膜厚tの少なくともひとつを算出し、算出したnもしくはtをもとに、上記既知の薄膜の屈折率nと消衰係数kの温度依存性から薄膜の温度Tを算出することを特徴とする。
また、本発明の薄膜の表面温度計測方法は、さらに、測定前および測定後に温度測定用試料を特定温度Tとしたときに偏光測定を行って得られる薄膜の屈折率n(T)もしくは薄膜の消光係数k(T)もしくは薄膜の厚さt(T)の少なくともひとつの値について、温度測定の前後でその値の再現性を確認することを特徴とする。
また、本発明の薄膜の表面温度計測方法は、さらに、測定光の強度を変調させ、その変調周期に同期した反射光強度成分から偏光測定することを特徴とする。
また、本発明の薄膜の表面温度計測方法は、さらに、前記温度測定用試料の偏光パラメータΔまたはψが薄膜の温度Tの関数としてΔ(T)またはψ(T)の形であらかじめ与えられている場合、前記の温度測定用試料を用いてΔまたはψを測定し、Δ(T)またはψ(T)の逆関数からTを算出することを特徴とする。
また、本発明の薄膜の表面温度計測方法は、さらに、測定前および測定後に温度測定用試料を特定温度Tとしたときに偏光測定を行って得られるΔ(T)もしくはψ(T)の少なくともひとつの値について、測定の前後での値が一致することを確認することによりその再現性を確認することを特徴とする。
また、本発明の薄膜の表面温度計測方法は、さらに、測定光の強度を変調させ、その変調周期に同期した反射光強度成分から偏光測定することを特徴とする。
また、本発明の薄膜の表面温度計測方法は、さらに、前記薄膜の材料はSiOであり、前記基板の材料はSiであることを特徴とする。
また、本発明の薄膜の表面温度計測方法は、さらに、前記薄膜が多層構造であって、各層は厚さが面内で均一かつ膜質が各層で一様であり、各層の屈折率nと消衰係数kの温度依存性が既知であってそれぞれn(T)やk(T)として与えられていることを特徴とする。
また、本発明の薄膜の表面温度計測方法は、さらに、前記温度測定用試料の置かれる温度測定環境は、その圧力が大気圧以下の窒素を含む不活性ガス雰囲気であることを特徴とする。
また、本発明の薄膜の表面温度計測方法は、さらに、前記温度測定用試料は、測定光・反射光の光路が変わらないように入反射角を保ったままで、移動されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明は、加熱処理中の基板について、基板の厚さに比べて十分表面とみなせる表面近傍の温度を計測することができる。
また、本発明は、計測する温度領域、すなわち表面からのどの深さまでの温度を指し示しているかは、温度測定用試料の薄膜の厚さで決めることができる。これにより各種厚さの薄膜試料を用いて表面から厚さに対応した深さまでの温度を計測できる。
また、本発明は、光プローブによる方法であるのでガス雰囲気、減圧雰囲気中の基板温度を計測できる。
また、本発明によれば、通常エリプソ分光装置は薄膜の膜厚や屈折率を求めるために用いられることが多いが、ハードウエアを大きく変更することなく温度の測定機能を付加することができ、薄膜形成のリアルタイムのプロセス監視装置としても利用の範囲を広げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】図1は、本発明の方法を実施するための装置の概略を示した図である。
【図2】図2は、本発明の他の方法を実施するための装置の概略を示した図である。
【図3】図3は、本発明のさらに他の方法を実施するための装置の概略を示した図である。
【図4】図4は、ψとΔから温度Tを算出する方法を説明した図である。
【図5】図5は、再現性を確認するための装置構成を示した図である。
【図6】図6は、深さ方法の温度分布測定について説明する図であって、2層の場合を示した図である。
【図7】図7は、基板回転型装置を用いた場合を説明する図である。
【図8】図8は、厚さ44nmのSiO膜が表面にあるSi基板を100〜500℃の範囲で波長500nmの光で偏光測定を行って求めた、SiO薄膜の屈折率n(T)を示す図である。
【図9】図9は、図1の装置を用いて、大気圧の窒素雰囲気中で、厚さ44nmのSiO膜を表面に持つSi基板についてそのΔの100〜480℃の範囲における温度依存性を、各種波長毎に示した図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0008】
(実施例1)
図1は、本発明の測定方法を実施するための温度測定装置の一実施例の概略を示した図である。表面に薄膜が形成された基板を温度測定用試料として装置内に導入してある。試料としてSiO膜がSi基板上に形成されたものが入手しやすく取扱も容易である。
エリプソ部分は、光源、偏光器、入射光強度の変調器、反射光を検知する検出器、分光を行ってその信号強度を測定する分光器、分光器で測定した信号から偏光パラメータΔ・ψを計算し薄膜の屈折率nや膜厚tを計算し屈折率nと消衰係数kの温度依存性の表を参照して温度Tを算出する分析装置からなる。
ここで偏光解析方法によって得られる偏光パラメータとは、光の電界が入射面に平行な成分の反射率Rpと、光の電界が入射面に垂直な成分の反射率Rsとについて、それらの比ρ=Rp/Rsをρ=tanψexp(iΔ)と現したときの、ψとΔである。
図1に示された装置は、入射光と反射光の光路に耐真空の窓を装備している。窓はエリプソ測定用に市販されている低歪み真空窓を使うのが望ましい。
窓と測定容器の間にはポートを設けて測定用試料の分析位置以外の位置からの輻射光や、試料加熱用のヒーターからの赤外線が、検出器に到達するのを抑制するように立体角を制限するのが望ましい。
本実施例では、エリプソには分光エリプソ装置を用い白色光源を用いた波長分散測定をしているが、単一波長もしくは複数の単一波長を切り替えて利用したものでも実施可能である。
図1での変調器は、試料の温度が高くなったときに増大する黒体輻射が偏光解析に及ぼす影響を除去するためのものである。この変調器によって入射光強度に変調をかけ信号強度からその変調周期成分を取り出すことによって、黒体輻射の影響を取り除いた反射光成分を測定することができる。
試料温度が低く黒体輻射強度が十分少ない、あるいは入射光強度が黒体輻射からの強度よりも十分大きければ変調器を省略できることはいうまでもない。
なお図1は説明のための一実施例を示す図であり、加熱方式、雰囲気ガス制御方式はこれを特定するものではない。
【0009】
(実施例2)
図2は基板を回転させながら測定する他の実施例であり、基板を回転させる点を除けば図1に示した実施例と同じである。これにより試料上の一点だけでなく円周上の温度を計測することが可能になる。この他、基板をXYテーブルに乗せて移動させることにより基板全面を分析することも可能である。
【0010】
(実施例3)
図3は、温度測定用試料の分析位置と分析角度を補償するため、距離計と角度検出器を備えた他の実施例であり、それ以外の構成は図1に示した実施例と同じであるが、ずれがあれば基板位置を微調することが可能である。これにより温度の上昇や基板の設定等による機械的な分析点のずれを把握することが可能となり、分析精度の向上につながる。
【0011】
(Δとψから温度を算出する方法)
図4は、測定で得られた偏光パラメータΔとψから温度を算出する方法を説明した図である。
測定値であるΔとψから薄膜の屈折率nと薄膜の膜厚tが求めることができる。ここで温度Tの関数として与えられている、基板と薄膜の屈折率n(T)、n(T)および消光係数k(T)、k(T)を用いる。求められたnもしくはtの温度依存性から薄膜の温度Tを求めることができる(図4中の実線で示された方式(1))。
図4中の破線でしめされた方式(2)では、方式(1)の結果を利用することでさらに簡易に求める方法である。すなわち、方式(1)によってΔやψと薄膜温度Tの直接の関係を求めることができる。この方法が利用できる条件は、温度TをΔおよびψの関数として現したとき、ΔやψがTについて単調増加もしくは単調減少の関係にあることが必要である。
実施方法としては、参照表T(Δ)もしくはT(ψ)もしくはT(Δ、ψ)を図1に示された分析装置内に保持し、観測値Δ、ψを入力することによりTを出力することができる。
この方法では、方式(1)で用いたnやtを求める必要がなくなり、計算を省略できるために高速化が測れる。
ここで注意すべきは、温度Tは試料の表面の温度すなわち薄膜の温度を指し示すものであって、基板の温度ではないことである。したがってTとして、放射温度計等で測定した基板の温度を利用するものではない。
【0012】
(再現性を確認する方法)
図5は温度測定の再現性を確認する方法を実現する一例として示した試料まわりの概略図である。熱伝導体の内部に試料を設置し、試料温度と熱伝導体の温度が等しくなる黒体炉の構造としたものである。試料の温度は白金測温抵抗体で測定する。
実施方法の一例としては、温度測定用試料を測定前に20℃に設定し、偏光パラメータ(Δ(20℃)、ψ(20℃))の測定を行い、温度測定終了後に再度20℃に設定し、偏光パラメータ(Δ(20℃)、ψ(20℃))を測定して測定前のΔもしくはψと値が実験装置の精度内で一致することを確認するものである。
なお、再現性を確認する温度は、20℃に限らず、設定が容易で温度の再現性のある値であればこの他の値でもよい。
確認する値は、Δやψの替わりに膜厚tを用いてもよい。膜厚tを用いた場合、試料表面の汚染を敏感に反映しその汚染量が直感的にわかりやすい利点がある。
膜厚が増加する例は、SiO膜のとき、試料が酸素や水分のある雰囲気中で高温度にさらされて酸化が進行する場合である。膜厚が減少する例は、SiO膜のとき、減圧下で700℃以上となったとき蒸発によりエッチングが進行するときである。
再現性を確認する温度は、薄膜表面に付着した有機物は加熱すると蒸発しほとんど除去できる場合が多いため、有機物を加熱除去可能な温度に試料温度を設定してΔやψやtの測定による上記の再現性の確認を行うことが望ましい。その温度は、薄膜がSiOの場合300℃以上500℃以下である。
【0013】
図6は、深さ方向の温度分布測定のための温度測定用試料の例である。このタイプの試料はSOI(Silicon on Insulator)基板として高性能デバイスを作製するために多数市販されている。Si層、SiO層の各層の温度を本発明により測定することができるので、深さ方向の温度分布を測定することができる。温度測定用試料として2層以上の構造を持つ多層構造試料にも適用が可能である。各層の条件としては、光学的特性が層内で一様であり、かつ層の厚さが面内で均一であることが必要である。
【0014】
図7は、図4の基板回転型装置を用いて、試料表面から各種深さまでの表面温度を測定するための温度測定用試料の例である。SiO膜厚を図のように例えば10〜40nmと異なる厚さの薄膜を面内に形成し、これを回転させながら温度測定する。これにより表面から各種深さまでの平均温度が得られる。
【0015】
図8は、図1の装置レイアウトを用いて、大気圧の窒素雰囲気中で、厚さ44nmのSiO膜が表面にあるSi基板を100〜500℃の範囲で波長500nmの光で偏光測定を行い、SiO薄膜の屈折率n(T)を測定した結果である。屈折率は温度とともに単調減少している。よって屈折率の値から温度を一意に求めることができる。また波長によって感度に差がみられため、適切な波長の光源を選択してもよい。
【0016】
図9は、図1の装置レイアウトを用いて、大気圧の窒素雰囲気中で、厚さ44nmのSiO膜を表面に持つSi基板についてそのΔの100〜480℃の範囲における温度依存性を、各種波長毎に示したものである。cosΔは温度上昇とともに単調に増加している。よってΔの値から温度を一意に求めることができる。また波長によって感度に差がみられることから、適切な波長の光源を選択してもよい。
なお、屈折率nの温度依存性n(T)がTについて単調増加もしくは単調減少する温度範囲において、屈折率nから温度Tを求めることができる。SiO以外の他の材料でもこの関係が成り立つ範囲で屈折率測定から温度の算出を行うことができる。
なお、温度測定用試料において、薄膜の厚さがゼロの場合、すなわち表面から測定光の侵入する深さまで同一材料のみからなる場合は、測定光の侵入深さまでにおける温度測定が可能であることを付記しておく。試料の材料と光の波長選択よっては、光の進入深さを小さくすることができ、基板の厚さに比べて十分表面と呼べる領域の温度を計測可能である。
【産業上の利用可能性】
【0017】
一般に基板の表面温度は基板の平均温度とは異なり、その温度差は基板の熱源の種類や基板の置かれる雰囲気圧力や流下されるガスの流速などのプロセスの条件により大きく左右される。そのため同じ基板の平均温度でも基板表面温度は条件によって変化し、プロセス条件を変えるたびに成膜後の製品検査による基板温度の条件探索が必要である。
本発明による基板表面温度の測定より、各プロセス条件下における基板表面温度と基板平均温度の相関を明らかとすることができ、プロセスの温度調整時間の短縮などの効果が期待できる。
薄膜形成プロセスの分野で用いた場合の例は、本来管理すべき表面温度を従来の基板温度測定値で代替制御していくための温度校正手法として用いることができる。そのためには、表面温度と基板温度の温度差について、ガス種や流下速度や基板周辺圧力などプロセス条件毎に求める必要があるが、本手法によりその問題を解決できる。
また、基板の加熱を利用した装置は加熱方法やガス流下方式など個々に異なるため、表面温度と基板温度の差の校正も個々の装置で必要である。本製品はこのための計測器として適用できる。
以上のように従来計測できなかった表面温度を新たな制御パラメータとして提供することができ、薄膜形成を利用する工業分野に利便性を与える。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に一様な厚さの薄膜が形成された基板である温度測定用試料であって、前記薄膜の特定温度での厚さが既知であり、前記薄膜と基板について屈折率nと消衰係数kの温度依存性が既知である温度測定用試料を温度測定対象位置に配置し、
温度測定用試料の温度を計測するために偏光された測定光を照射してその反射光についてp偏光成分とs偏光成分の位相差信号Δと反射率の比の信号ψを検出するための偏光測定装置を用いて光の電界が入射面に平行なp偏光成分の反射率Rpと、光の電界が入射面に垂直なs偏光成分の反射率Rsを測定して位相差信号Δと反射率の比の信号ψを算出し、
偏光解析によって薄膜の屈折率nもしくは膜厚tの少なくともひとつを算出し、
算出したnもしくはtをもとに、上記既知の薄膜の屈折率nと消衰係数kの温度依存性から薄膜の温度Tを算出することを特徴とした、
薄膜の表面温度計測方法。
【請求項2】
請求項1記載の薄膜の表面温度計測方法において、
測定前および測定後に温度測定用試料を特定温度Tとしたときに偏光測定を行って得られる薄膜の屈折率n(T)もしくは薄膜の消光係数k(T)もしくは薄膜の厚さt(T)の少なくともひとつの値について、温度測定の前後でのその値の再現性を確認することを特徴とする薄膜の表面温度計測方法。
【請求項3】
請求項1記載の薄膜の表面温度計測方法において、
測定光の強度を変調させ、その変調周期に同期した反射光強度成分から偏光測定することを特徴とする薄膜の表面温度計測方法。
【請求項4】
請求項1ないし3記載のいずれか1項に記載の薄膜の表面温度計測方法において、
前記温度測定用試料の偏光パラメータΔまたはψが薄膜の温度Tの関数としてΔ(T)またはψ(T)の形であらかじめ与えられている場合、
前記の温度測定用試料を用いてΔまたはψを測定し、Δ(T)またはψ(T)の逆関数からTを算出することを特徴とした薄膜の表面温度計測方法。
【請求項5】
請求項4記載の薄膜の表面温度計測方法において、
測定前および測定後に温度測定用試料を特定温度Tとしたときに偏光測定を行って得られるΔ(T)もしくはψ(T)の少なくともひとつの値について、温度測定の前後でのその値の再現性を確認することを特徴とする薄膜の表面温度計測方法。
【請求項6】
請求項4記載の薄膜の表面温度計測方法において、
測定光の強度を変調させ、その変調周期に同期した反射光強度成分から偏光測定することを特徴とする薄膜の表面温度計測方法。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1項に記載の薄膜の表面温度計測方法において、
前記薄膜の材料はSiOであり、前記基板の材料はSiであることを特徴とする薄膜の表面温度計測方法。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか1項に記載の薄膜の表面温度計測方法において、
前記薄膜が多層構造であって、各層は厚さが面内で均一かつ膜質が各層で一様であり、
各層の屈折率nと消衰係数kの温度依存性が既知であってそれぞれn(T)やk(T)として与えられていることを特徴とする薄膜の表面温度計測方法。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか1項に記載の薄膜の表面温度計測方法において、
前記温度測定用試料の置かれる温度測定環境は、その圧力が大気圧以下の窒素を含む不活性ガス雰囲気であることを特徴とする薄膜の表面温度計測方法。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか1項に記載の薄膜の表面温度計測方法において、
前記温度測定用試料は、測定光・反射光の光路が変わらないように入反射角を保ったままで、移動されることを特徴とする薄膜の表面温度計測方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−44586(P2011−44586A)
【公開日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−191826(P2009−191826)
【出願日】平成21年8月21日(2009.8.21)
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【Fターム(参考)】