説明

表面組成および適用方法

水性液体中に長期間沈漬される表面の劣化及び退色を低減するための表面組成が提供される。この表面組成は、少なくとも1つの透明バリア層と少なくとも1つの下地層とを含み、ここで透明バリア層は、使用中、下地層の上に配置され液体と接触し、それにより透明バリア層は下地層の構造及び外観を保護している。この表面組成は、表面が、加水分解剤または酸化剤を含む液体中での長期間の沈漬、紫外線に対する曝露またはそれらの組合せを受ける利用分野において特に有用であり、それにより透明バリア層は、薬品による腐食由来の劣化及びUV曝露に起因する退色に対する構造的保護を提供する。スイミングプール用表面組成を製造する方法も同様に提供されている。さらに、スイミングプールまたはスパプールの製造における表面組成の使用が提供されている。さらに、本発明の表面組成を用いて製造されたスイミングプールまたはスパプールも提供されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、長期間の沈漬を受ける表面を劣化や退色から保護するため、例えばスイミングプールやスパプールの表面層仕上げを保護するために使用される表面組成に関する。本発明は同様に、表面組成の適用方法およびこの表面組成を用いて製造される製品にも関する。
【背景技術】
【0002】
スイミングプールおよびスパプールは、私用または公共用としてならびにさまざまな異なる用途、例えば競技、運動、娯楽、休養または療法向けに設置される可能性がある。プールの建設方法はさまざまであり得るが、プールが恒久設備としてとどまる場合に最もよく知られているのは、地中式(in−ground)バージョンである。地中式プールの主要なタイプは、コンクリートプール、ガラス繊維強化プラスチック(FRP)プールおよびビニルライニングの施されたプールである。
【0003】
ガラス繊維プールは、典型的に、私用の設備、例えば個人の住宅に設置されるプールとして最もよく知られているものである。ガラス繊維プールは、プールの最終的形状である水槽状に成形されたガラス繊維強化プラスチックで作られる。プールの形状および構成は、金型の形状および構成に左右される。典型的には、どのプールメーカーも、設定された金型の選択肢一式を有しており、その中から消費者は自分のプールのデザインを選択することができる。
【0004】
ガラス繊維プールの形状やサイズの選択は、消費者が自分のプールを選択するときに下さなければならない重要な決定である。ほぼ間違いなくもう一つの最も重要な決定事項は、プールの表面仕上げの選択であり、これは水を満たした時にそのプールが呈する外観に影響を及ぼす。表面仕上げの選択には、色彩、光輝感または揺らめく光の選択が含まれ、これらの組合せによりプールの外観をその周囲環境にマッチさせることができ、また色の深みおよび輝度といった外観が得られ、かつ大理石または御影石の効果が得られる。
【0005】
選択されたプールの形状または表面仕上げの如何に関わらず、ひとたび設置されたならば表面は水中に完全に浸漬され極めて長期にわたりそのままの状態にとどまるということは、全てのガラス繊維プールに共通である。すなわち、水が完全に排出されることは決してなく、プール構造の内部にはつねに水が入っている。このことは不可避的に二重の問題を発生させる。第1の問題は、典型的に12〜41℃の間の温度にある水自体が、あらゆる水溶性物質(WSM)を溶解させプールの製造に用いられる水溶性の構成要素のことごとく加水分解することのできる強力な溶媒であるという点にある。
【0006】
第2の問題は、水を消毒して藻類および病原体、例えば細菌および原生動物を殺さなければならないという点にある。これは、消毒を行わないと、病原体が水中でより盛んに繁殖し、微生物が人から人へと移るための理想的な場所を作り上げるからである。プール濾過システムは水を清浄に保つ上で助けとなるが、水中の病原体を適切に処理するためには、水中に殺菌剤を導入することが必要である。
【0007】
最も良く知られているプール用殺菌剤は塩素であり、これは次亜塩素酸カルシウムまたは次亜塩素酸ナトリウムなどの様々な形態で導入することができる。塩素は、一般に「塩水塩素処理装置(salt water chlorinator)」と呼ばれる塩の電気分解によって生成される。これらの化合物を水に添加した場合、塩素成分は反応して、病原体を殺すように作用する次亜塩素酸を含めたさまざまな化学物質を形成する。代替的な消毒剤、例えば臭素、オゾンまたは過酸化水素も、本質的に同じ殺菌機能を果たす。
【0008】
次亜塩素酸は特に安定した化合物ではないことから、シアヌル酸などの安定剤を含めたさらなる化学物資をプール用水に添加することが通常必要である。さらに、プール用水のpHレベルは、一般に中性レベル(7〜7.8の間)に維持することが望ましい。これは、過度に酸性または過度にアルカリ性の水は、望ましくない化学反応を引き起こすからである。プール用水には、pHを維持するためのさらなる化学物質、例えばpH上昇用の炭酸ナトリウムまたは重炭酸ナトリウム、そして重硫酸ナトリウムまたは液体酸例えば塩酸または硫酸が典型的に添加される。
【0009】
水性環境内の化学的カクテルの組合せは場合によって、プール表面の漂白および劣化を引き起こす。通常はプール表面の退色および劣化の明確な兆候が経時的に現れ、これはプールの美的外観を著しく損なう。退色および劣化の問題は、次のようなさまざまな他の要因により増大する:
a)特にプールが屋外にある場合の、UV光に対する曝露;
b)消費者によるプールの放置および化学物質の不適当な適用を含めた管理不全;
c)水及び化学物質による劣化の過程を悪化させる、スパプールの加熱及び利用に起因する水温の上昇;および
d)製品の有効運転パラメータを逸脱したプールへの酸、アルカリおよび酸化剤の過剰投入を導く可能性のある、自動消毒装置、塩水塩素処理装置およびpH制御装置の使用。
e)水の加水分解効果に対する連続的曝露。
【0010】
これらの問題にもかかわらず、消費者は、劣化に耐えることができしかも重要なことに、長期間当初の色を保持することが可能であり、プール表面の劣化が発生した場合に唯一の永続的かつ消費者が許容できる改善措置である時間とコストのかかるプール表面の剥離および修復作業さらにはプール自体の交換も必要としない製品を期待している。同様にして、一般にプールについて或る程度の保証を提供しているプールメーカーも、プール表面が規定の期間中劣化に耐えることができない場合の修繕または交換の責任を担保することは希望していない。
【0011】
退色を含めた表面劣化の問題はこのように広く知られた問題であることから、この問題を改善するかまたは少なくとも軽減するさまざまな試みがなされてきた。このような改善措置としては、一般に比較的鮮やかであるものの安定性が低い有機顔料ではなくむしろ、金属塩および金属酸化物などの無機着色顔料を使用することが含まれる。別の改善措置は、単に最小限の退色効果しか示さない白色、クリーム色または非常に薄い青色などの色でプールを生産することである。このような改善措置は、この場合色および仕上げの選択肢が大幅に制限されることになる、という残念な結果をもたらす。
【0012】
幾分かのUV耐性を有するポリエステルゲルコートでの着色および装飾表面仕上げの適用によって、一定の成功は収められた。しかしながら、公知のゲルコートは、プールの外観に或る程度の耐性と寿命を提供できるものの、約6〜10年後、表面仕上げ顔料は不可避的に退色し始め、プールの外観は損なわれた状態となり、色褪せしたように見える。
【0013】
さらに、追加の保護層またはバリア層を塗布することでプール表面の美観特に色、質を保護することは当初実行可能な解決法と思われるかもしれないが、今までのところ、プール表面が長期間の沈漬に付されるプールという独特の状況の下では、このような塗布で成功したものはない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
したがって、色や仕上げの選択の可能性を失わせることなくプール表面仕上げの変色および劣化を防止することのできる製品に対するニーズが存在する。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の第1の態様によると、水性液体中に長期間沈漬される表面の劣化及び退色を低減するための表面組成であって、前記表面組成は少なくとも1つの透明バリア層と少なくとも1つの下地層とを含み、透明バリア層が、使用中、下地層の上に配置され液体と接触し、それにより透明バリア層が下地層の構造及び外観を保護している表面組成が提供される。
【0016】
この表面組成は、表面が、加水分解剤または酸化剤を含む液体中での長期間の沈漬、紫外線に対する曝露またはそれらの組合せを受ける利用分野において特に有用であり、それにより透明バリア層は、薬品による腐食由来の劣化及びUV曝露に起因する退色に対する構造的保護を提供する。
【0017】
本発明の特に好ましい実施形態において、下地層は、所望の視覚的または美的外観を付与するために提供される1つ以上の装飾または観賞作用物質を含む装飾層である。この装飾用または観賞用作用物質としては、顔料、粒子およびチップが含まれるがこれらに限定されない。
【0018】
この表面組成は、スイミングプールおよびスパプール;詳細には繊維強化プラスチック(FRP)プールに対する表面仕上げの創製のために利用される。
【0019】
この表面組成は、バリア層と下地層の間に強力な層間結合を提供する。本発明の表面組成は、有利には、層間剥離を最小限に抑え、浸透作用によるブリスターを防止する。
【0020】
一実施形態において、この組成は、1つ以上のUV阻害剤、吸収剤および/または安定剤を含む。好ましくは、透明バリア層は、1つ以上のUV阻害剤、吸収剤および/または安定剤を含む。
【0021】
別の実施形態において、透明バリア層は透明ポリエステルゲルコートである。好ましくは、透明ポリエステルゲルコートは、1つ以上のフタレート含有ポリエステル類、ビニル含有ポリエステル類またはメタクリル酸メチル含有ポリエステル類を含む。より好ましくは、透明ポリエステルゲルコートは、フタレート含有ポリエステル、詳細にはイソフタル酸ネオペンチルグリコール(iso−NPG)から誘導されるフタレート含有ポリエステルを含む。
【0022】
iso−NPGは有利には、促進剤およびUV阻害剤/吸収剤を含めた添加剤と組合されこれらの添加剤はプール金型へのiso−NPGの塗布前に添加される。
【0023】
一実施形態において、バリア層はトリアジン系のUV吸収剤を含む。追加的または代替的に、バリア層はヒンダードアミン系光安定剤を含む。
【0024】
さらにもう一つの実施形態において、バリア層は、1つ以上の金属促進剤、好ましくは、オクチル酸亜鉛、オクチル酸カリウムまたはオクチル酸コバルトからなる群から選択される1つ以上の金属促進剤を含む。特に好ましい促進剤は、オクチル酸亜鉛とオクチル酸カリウムの混合物である。
【0025】
下地層は、1つ以上のポリエステル類、ビニルエステル類またはテレフタレート系樹脂を含む。好ましくは、下地層は、1つ以上のエポキシビニルエステル類、臭素化エポキシビニルエステル類、ノボラックエポキシビニルエステル樹脂またはエラストマで修飾されたビニルエステル樹脂を含む。特に好ましい下地層は、ビスフェノール−Aエポキシビニルエステル樹脂を含むエポキシビニルエステル樹脂である。
【0026】
一実施形態において、下地層は1つ以上の金属促進剤を含む。
【0027】
下地層には、有機顔料または無機顔料を含み得る顔料などの修飾用添加剤、そして任意には小さなチップや粒子などの他の装飾的要素が具備されて、御影石、大理石、結晶質または石英の外観が付与される。
【0028】
本発明のさらなる態様によると、透明ゲルコート液体を金型に塗布するステップと、ゲルコートを硬化させるステップと、その後着色または装飾ビニルエステル層を硬化したゲルコートに塗布するステップとを含む、プールの表面組成の製造方法が提供される。
【0029】
本発明のさらなる態様によると、スイミングプールまたはスパプールの製造における、上述の実施形態のいずれかに係る表面組成の使用が提供される。
【0030】
本発明のさらにもう一つの態様によると、少なくとも1つの透明バリア層と少なくとも1つの下地層で構成された表面組成を有するスイミングプールまたはスパプールにおいて、透明バリアが、使用中、下地層の上に配置され、プール内の液体と接触し、こうして透明バリア層が下地層を劣化から保護している、プールが提供される。
【0031】
本明細書全体を通して、「〜を含む(comprisesまたはcomprising)」という用語またはその文法的変形形態の使用は、記載の特徴、整数、ステップまたは構成要素の存在を特定するためと考えられるものとするが、そのために具体的に言及されていない1つ以上の他の特徴、整数、ステップ、構成要素またはそれらの一群の存在または追加が排除されるわけではない。
【0032】
ここで、本発明について添付の図を参照しながら記述する。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明に係る表面組成の層の略図である。
【図2】公知の表面組成および本発明の表面組成のFRPのパネルに対する沈漬および化学的曝露の効果を比較する写真である。
【図3】耐候性を比較するテストパネルの写真である。
【図4】耐候性を比較するテストパネルの写真である。
【図5】耐候性を比較するテストパネルの写真である。
【図6】耐候性を比較するテストパネルの写真である。
【図7】耐候性を比較するテストパネルの写真である。
【図8】耐候性を比較するテストパネルの写真である。
【図9】耐候性を比較するテストパネルの写真である。
【図10】耐候性を比較するテストパネルの写真である。
【図11】耐候性を比較するテストパネルの写真である。
【図12】耐候性を比較するテストパネルの写真である。
【図13】耐候性を比較するテストパネルの写真である。
【図14】耐候性を比較するテストパネルの写真である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下で記述する本発明は、その好ましい実施形態の説明であり、本発明の考えられる実施形態の非限定的な例を示す目的での説明として理解されるべきものである。記述される実施形態および実施例は本発明のより広い全体的範囲を定義するものではない。
【0035】
本発明の表面組成は、表面が水、詳細にはプール消毒用化学物質由来の加水分解剤および/または酸化剤を含む水の中に長期間沈漬され、これらの水と直接接触しているFRPスイミングプールおよびプールスパにおいて表面仕上げまたは層を作り上げるために特に利用される。表面組成は、水中に浸漬されている間FRP製品の構造的無欠性を維持することのみならず、水、化学物質および紫外線に対する長時間曝露によって引き起こされる損傷または退色から、顔料着色などの装飾的要素を保護することを主たる目的としている。
【0036】
表面組成は、使用中、水および水が含有しているかもしれないあらゆる化学物質と直接接触する透明バリアゲルコート表面層を含む。この透明バリア層の目的は、顔料着色およびチップまたは粒子などの装飾的構成要素または添加剤を含む第2のゲルコート層つまり装飾層を、水、化学物質および紫外線による劣化から保護することにある。すなわち、第2の装飾的または着色されたゲルコート層を塗布する前に、プールまたはスパプールの金型に塗布される透明バリア層は、プールの化粧的または美的品質を保つために維持することが不可欠である第2層の内部の装飾的質を保護することをその目的とする。
【0037】
今日まで、表面が長期の浸漬と同時に多くの場合長期にわたる紫外線曝露に付されるという独特の状況下で装飾層の質を保護するための透明バリア層の塗布に成功したことはない。第2の着色ゲルコートの塗布に先立つ透明ゲルコートの塗布になぜ成功しなかったという主な理由の1つは、2つの類似のゲルコート物質の重層塗布が、水中に完全に沈漬されて加水分解および浸透圧を受けた場合に、最終的に失敗に終わるということにある。さらに悪いことに、必要とされる顔料および物理的試薬の大量使用は、2つの表面間の適切な結合を妨げる。以前の試みにおいては、浸透作用によるブリスターが2層の界面に発生し、それがプールの美的質を損なうばかりでなく、構造的無欠性をも危うくする。今日まで、透明ポリエステルゲルコートを別の着色されたまたは装飾的なポリエステルゲルコート上に塗布することは、プール表面に対するあらゆる適用において失敗に終わっている。
【0038】
異なる材料を使用することを追求してきた他の試みにおいて、選択された材料がもつ固有の品質は、プールの表面組成において使用するのに適切かつ必要な構造的質を有する一方で、一部には失敗にも寄与してきた。ゲルコートを製造するために使用される基本的樹脂は、製造プロセスが樹脂に褐色の質を付与することから、透明ではない。さらに、室温で樹脂を硬化させるために必要な促進剤または硬化促進剤は一般にコバルト系であり、これは紫色をしており、したがって同様に最終的樹脂の色を改変させる。同様に、樹脂の実際の触媒作用および固化プロセスも変色を引き起こす。要するに、樹脂は、スプレー用にひとたび加工された時点でもはや透明ではない。このような色の表面を有するプールを製造することは、一般に望ましくない。いずれの場合でも、褐色または紫色になる樹脂の使用は、入手可能で消費者が所望する一連の色および化粧効果全ての使用を妨げる。
【0039】
着色層の上に透明保護層を具備するいくつかの他の試みは、この透明層がひとたび紫外線に曝露された時点で半透明または曇った状態になり保護層の透明性が永久に失われることになるため、失敗に終わった。
【0040】
本発明の組成は、透明バリア層およびその下側にある着色装飾層の各々に特定の成分および添加剤を使用することによってこれらの課題を解決した。
【0041】
本発明のここで記述する実施形態において、本発明の表面組成の透明バリア層は、透明なイソフタル酸ネオペンチルグリコール(iso−NPG)などの透明ポリエステルゲルコートとして提供される。好ましくは、iso−NPGは高品質で高分子量のiso−NPGである。適切なiso−NPGの非限定的例としては、スチレンモノマー中の不飽和ポリエステル樹脂である市販のCray Valley(Cray Valley Korea Co.,Ltd)調合ゲルコート、Polycor GPLY9107−011がある。
【0042】
これは、透明バリア層のための好適な組成であるが、透明オルトフタル酸NPG系ゲルコート、透明オルトフタル酸系ゲルコート、透明ビニルエステルゲルコートまたは透明メタクリル酸メチル修飾ゲルコートなど(ただしこれに限定されない)の他の選抜された一連の適切な製品も使用可能であると想定されている。
【0043】
第2の装飾層を保護するのに必要とされる品質を付与するため、未促進のiso−NPGに対し特定の添加剤が添加される。この実施形態において、添加剤には、特定の促進剤およびUV阻害剤および/またはUV吸収剤が含まれる。
【0044】
添加される促進剤(硬化促進剤)の具体的な選択は、透明バリアゲルコート層の塗布およびこの表面組成内へのその内含を成功に導く主要な要因の1つである。選択される促進剤をコバルト系にすること、すなわち紫色であるオクチル酸コバルトにすることは、FRPプール製造技術において通常のことである。この成分のみを添加するだけで、樹脂の色を改変させて透明度を失わせるのに充分である。
【0045】
本発明においては、iso−NPGに混合型の金属促進剤が添加される。好ましい金属促進剤はオクチル酸亜鉛(6%)およびオクチル酸カリウム(12%)であり、これらは、iso−NPGに添加された場合に色を改変させない。さらに触媒作用および硬化の時点でさえ、これらはゲルコートの透明度を改変させない。
【0046】
オクチル酸亜鉛およびオクチル酸カリウムが好ましい促進剤であるが、他の促進剤も同様に適切であり得る。このプロセス中で使用するのに適している可能性のある他の製品としては、SHEN触媒PC−6、EFKA−2020消泡剤、ジメチルアニリンおよび少量のオクチル酸コバルト(6%)が含まれるが、これに限定されない。
【0047】
添加される促進剤の選択は同様に、混合型金属促進剤の特定の選択がiso−NPGの利用に伴う硬化の問題点を解決したという点においても重要である。Iso−NPGは、オルトフタル酸系樹脂などの他の樹脂に比べてより高い加水分解安定性を有することが知られており、この利用分野にとって理想的である物理的品質を有する一方で、塗布はより困難であり、加工もさらに困難である。少なくともこの理由から、iso−NPGは、透明バリアゲルコートの提供という目的には適してない、あるいは実際FRPプールの製作における一般的に広まった利用分野のためでさえ適さないものと考えられてきた。高分子量のiso−NPGは、反応性がより高く、過度に厚く塗布された場合あるいは過剰の触媒作用または促進を受けた場合または決して理想的でない条件でスプレーされた場合、金型からの収縮を受けやすい。しかしながらオクチル酸亜鉛およびオクチル酸カリウムなどの混合型金属促進剤を選択すると、硬化の問題が克服され、強い確実な硬化を有する透明層を作り出すことができた。
【0048】
透明バリアゲルコートが有利にも、UV退色から着色ゲルコート層を保護する品質を有するように、少なくとも1つのUV阻害剤および/または吸収剤あるいは光安定剤もiso−NPGに添加される。この特定の実施形態においては、各々Ciba(商標)Specialty Chemicals Inc製であるTinuvin(商標)400およびChimasorb(商標)という商標で商業的に公知の2つのUV吸収剤が添加される。好ましいブレンドは、Tinuvin(商標)384−2およびChimasorb(商標)119FLである。特に好ましいブレンドはTinuvin(商標)およびTinuvin(商標)123である。これらのUV吸収剤および安定剤は、変色、亀裂形成および退色などのUV曝露障害に対する透明バリアゲルコートの耐性を改善するように作用する。
【0049】
必要に応じて、チキソトロープ剤などのさらなる添加剤がiso−NPGに対して添加される。当該技術分野では公知のFRPプールの製作におけるiso−NPGの塗布方法にとって必要である、未硬化成分を適切にスプレー可能にすることだけを目的とする場合には、チキソトロープ剤の選択それ自体はこの表面組成を機能させるために重要ではない。しかしながら、チキソトロープ剤は、撥水性を示すために疎水性でなければならない。水分によってゲルコートは霧状になり美的品質を損なうことから、透明バリアゲルコートの透明度を維持するためには、水分を除去する必要がある。
【0050】
以上で記述されている具体的成分の組合せは、有利にも、第2の着色ゲルコートの塗布に先立ちプール金型上にスプレーできる透明バリアゲルコートを提供する。この成分組合せは、塗布前に透明であり、塗布および硬化後も透明であり続ける。しかしながら、透明バリアゲルコートの製作は、それが透明な皮膜に皺を形成させることなく第2の着色ゲルコートの塗布をも容易にするのでないかぎり、プール表面組成として意図された利用分野においては成功ということはできない。同様に、第1のゲルコートと第2のゲルコートの間に強い層間結合が作り出されて隣接するゲルコート層間の層剥離の可能性がなくなるようにすることも必要である。
【0051】
これらの利点を達成し、本発明の表面組成に到達するためには、第2の着色ゲルコートの組成が極めて重要である。この実施形態において、第2の着色ゲルコートは本質的にビニルエステル樹脂で構成されている。
【0052】
ビニルエステル樹脂は、極めて強く、高い加水分解安定性を有し、優れた引張りおよび曲げ強度を提供し、高い加熱ひずみ温度を有し、したがって浸透作用によるブリスターに耐えることができるという点において、この利用分野に有利に役立つ特性を有する。さらに、ビニルエステル樹脂は優れた接着特性および結合特性を有し、耐薬品性が高い。しかしながら、これらの品質を有するにも関わらず、ビニルエステル類は、プール表面組成において、または表面が長期間にわたり水に曝露されるあらゆる利用分野において、顔料およびテクスチャー剤などの装飾用作用物質のための担体として使用されたことはなかった。ビニルエステル類は、恒常な沈水および連続的な紫外線曝露を受けた場合に劣化することが公知である。したがって、ビニルエステルから作られプールの表面に塗布されたゲルコートは全て、製造時、塗布時そしてとくに経年劣化および水や紫外線に対する曝露の後に色が変化する。
【0053】
さらに、ビニルエステルは、ゲルコートとして使用された場合、特徴的にポリエステル樹脂に比べて硬化の程度が低い(軟かい)ことに起因して、プール表面における利用には本質的に適していないと考えられてきた。すなわち、バーバーコールマンインプレッサーを用いてバーコル硬度を試験した場合、ビニルエステル樹脂は、iso−NPGまたはオルト−NPG系ゲルコートの硬度より約25%低い硬度を示す結果となり得る。したがって、数多くのプラスの属性を有するにも関わらず、ビニルエステルゲルコートは一般に、プールの使用の過酷さ、特に清浄用製品、清浄方法および自動プールクリーナーに由来する摩滅に耐えることができない。
【0054】
しかしながら、顔料入りビニルエステルが透明バリアゲルコートによりこのような要素に対する曝露から保護される本発明の概念は、これらの問題点を解決し、この利用分野においてビニルエステルの有利な品質を利用することを可能にする。
【0055】
本発明のために選択されるビニルエステル樹脂は、透明となるように、かつ重要なことに従来のビニルエステル樹脂の際立った褐色の色調を示さないように調合されたものである。標準的なビニルエステル樹脂は褐色であり、したがって利用可能なさまざまな異なる顔料着色の利用にとって優れた基礎を提供しない。本発明の目的の1つは、プールにおける標準的な色だけでなく、拡大された一連の色ならびに小さなチップまたは粒子の添加を用いた色の埋込みおよびテクスチャー付与も使用できるようにすることにあるため、選択されたビニルエステルが、塗布および硬化の後でも可能なかぎり透明性を維持できることが望ましい。したがって、ビニルエステル樹脂が透明バリアゲルコートと同じ程度に透明である必要はないものの、暗色のビニルエステルは、一部の色と同様にチップや粒子の効果を打ち消す効果を有し、したがって望ましくない。したがって基礎のビニルエステルは、塗布および硬化の後でさえ、可能な限り透明に維持されることが好ましい。
【0056】
本発明において利用するのに適したものであることがわかっているビニルエステルの非限定的な例は、透明透過性の液体樹脂であるビスフェノール−Aエポキシビニルエステル樹脂、例えばCray Valley Epovia Kayak(商標)KRF−1001MVである。ビニルエステルゲルコートの優れた硬化を提供できかつ透明バリアゲルコートの背後における耐水性および耐薬品性の高いビニルエステル樹脂の共存を可能にすることができるかぎり、適切ないかなるビニルエステルでも利用可能である。
【0057】
透明バリアゲルコートのための組成の選択と同様、他の製品も着色ゲルコート層中での使用に適しているかもしれない。考えられる非限定的な例は、任意のビスフェノール−Aエポキシビニルエステル樹脂、臭素化エポキシビニルエステル樹脂、ノボラックエポキシビニルエステル樹脂またはエラストマ装飾ビニルエステル樹脂を含めた、顔料および/またはテクスチャー構成要素を取込むことのできる選抜された一連のポリエステル、ビニルエステルまたはテレフタレート系の樹脂またはゲルコートである。
【0058】
iso−NPGの場合と同様に、ビニルエステルに添加される添加剤の選択は、表面組成全体に所望の品質を付与するために有意である。ビニルエステルのほぼ透明な質を維持するためには、促進剤としてのオクチル酸コバルトの使用を再び回避することが望ましい。ここでもまた、混合型金属促進剤例えばオクチル酸亜鉛およびオクチル酸カリウムを使用することが好まれる。しかしながら、適切な添加剤のさらなる例としては、Shen触媒PC−6、ジメチルアニリン、EFKA−2020消泡剤およびスチレンモノマーが含まれる。着色層の最終的な色が比較的暗色である利用分野においては、オクチル酸コバルト(6%および8%)を添加することが適切であるかもしれない。
【0059】
スプレー性を可能にするための適切なチキソトロープ剤も添加される。
【0060】
本発明は同様に、表面組成の製造およびFRP製品、例えばスイミングプールまたはスパプールの製造方法も含んでいる。この方法は本質的に、透明ポリエステルゲルコート液体(この場合は透明高分子量iso−NPG)を金型の表面に塗布するステップを含む。上述の添加剤を含むiso−NPGは、当該技術分野において公知の方法で金型上に均一にスプレーされ、0.65mmの最小湿潤厚みを達成する。硬化されたゲルコートは好ましくは、塗布から24時間以内に35というバーコル硬度を達成する。こうして、透明バリア層は、自動プールクリーナーの使用を含めたスイミングプールの通常の日常的使用に耐えるための、そして特にスパプールの場合には最高41℃の温度に対する耐久性および耐摩擦性を提供することができる。
【0061】
iso−NPGがひとたび適切に硬化して透明バリア層を形成したならば、ゲルコートの施された金型上に上述の添加剤と共にビニルエステル(この場合はビスフェノール−Aエポキシビニルエステル樹脂)をスプレーして、着色されたそして任意にはテクスチャー付与された外観を製品に対して提供する。このとき、必要に応じてビニルエステルも同様に硬化されてよい。
【0062】
必要に応じてそして製品の具体的に意図された用途により決定されるように、さらなる構造的および化学的および/または腐食バリア層が追加される。例えば、スイミングプールまたはスパプールの製造においては、さらなる層は、耐衝撃性および断熱を改善するためのさらなるビニルエステル腐食バリア、イソフタル系腐食および構造層、ガラス繊維積層同様に、さらなる補強層を含んでいてよい。硬化した仕上げ製品は離型され、トリミングされ、その供用場所に輸送される。
【0063】
本発明の表面組成を伴うスイミングプールなどの製品を製作することにより、当該技術分野においていまだに達成されたことのない製品の品質および復元力(resilience)が付与される。この表面組成は、プールが屋外にあり長期にわたり日光に曝露されている場合に受けるような紫外線または水と化学物質の組合せの有害効果の下でも変色したり機能性を失ったりしない透明バリア層またはゲルコートを提供する。さらに、この透明バリア層は、非常に高い保護レベルを提供するため、下側に配置される第2の着色または装飾層は、顔料着色の退色または変色無くそれまで可能であったものよりもさらに長い期間持ちこたえることができる。重要なことに、透明バリア層は、広範囲の顔料を着色層内で利用できるほどの保護レベルを付与する。すなわち、そうでなければ特に紫外線および酸化剤に対する曝露の時点で破壊されるかまたは損なわれると考えられる有機顔料を、着色ゲルコート層内に含み入れることが可能である。
【0064】
本発明に係る表面組成をスイミングプールなどに利用することにより、メーカーは、自社製プールの改修および交換のために出費を行う危険性無く、消費者に対し製品のより長期の保証を提供できることが、ここで提案される。すなわち、製品は、はるかに長い期間にわたりよりきれいに見え、その新しく鮮やかな外観を保持する。
【0065】
本発明の表面組成の耐久性および復元力は、以下で記す化学的劣化に対する表面組成の耐性を試験する実験データにより明らかにされる。
【実施例】
【0066】
実施例1
塩素変色試験
工業規格より充分に高いことが知られている公知の表面組成の有効性を本発明の実施形態に係る表面組成と比較する目的で、FRPプール製造に適用可能である公知の製造技術、手順および調合物を用いて製造されたガラス繊維強化プラスチック(FRP)のパネルに対し、一連の試験を実施した。
【0067】
寸法およそ200mm×200mmの一連の正方形のパネルを、公知の表面組成を有するFRPの2つの変形形態(対照パネル)からと同様に本発明の一実施形態の表面組成が上に塗布された2つのFRP変形形態からも切り取った。これらの変形形態は、下表1に列挙された通りである:
【0068】
【表1】

【0069】
各パネルを別々の水槽に入れ、スイミングプール用のトリクロルイソシアヌレート殺菌錠剤を、各パネルの表面に直接接触させ、パネルと錠剤を共に水中に完全に沈漬させた。水および殺菌剤によるプール表面の長年にわたる劣化と漂白の効果をシミュレートするために、各パネル上に錠剤を直接置いた。各槽内の錠剤を重みで押し下げて、気体の放出および表面相互作用に起因するパネル表面を横断した錠剤の移動を防いだ。
【0070】
各槽内の水を毎日空にし、清浄で新鮮な水道水で交換して、被験水中の残留塩素が過度に高くなくパネルの早期退色に寄与することがないようにした。排水時点で、各パネルを洗浄し、写真を撮り、色または表面劣化の兆候について検査した。各槽内の水およびパネルの交換後、パネル表面上の全く同じ場所に同じ錠剤を置き直した。2時間後に各パネルを検査して、錠剤がその位置から移動しないようにした。
【0071】
このプロセスを最高7日間反復した。各パネルの観察された外観は下表2に要点がまとめられている:
【0072】
【表2】

【0073】
パネルPD(本発明の表面組成無し)は退色し、修復できないほどに劣化したため、曝露2日後に試験計画からパネルPBCとPDを除去した。
【0074】
曝露5日目の後、パネルPACを取出し清浄し、表面を穏やかに優しくこすることで細かく研磨した(乾湿600グリット)。ほとんど努力を要しないこの動作により、変色は直ちに取り除かれた。その後パネルを艶出しし、試験プロセスに戻した。
【0075】
さらなるPACパネルを、中間艶出しまたは清浄なしで試験プロセスに付した。
【0076】
試験プロセスの終了時点でパネルPCを検査し、そこで、表面が有意に劣化し、錠剤と接触した表面の極端な孔食と酸化を示すことが立証された。表面に引き起こされた損傷のレベルは、それが修復不能かつ不可逆的である程度のものであった。
【0077】
対照的に、パネルPACは、塩素によるわずかな汚れ(遊離塩素の緑色)および極めてわずかな表面孔食以外、表面に対する変化をほとんど示さなかった。パネル自体の中の実際の顔料着色に劣化は全く見られなかった。乾湿600グリッドでの軽度の摩滅の後、表面孔食および大部分の塩素変色は除去された。
【0078】
以上の結果は、水および化学物質による劣化から構造全体の無欠性および色を保護する本発明の表面組成の能力を実証している。
【0079】
実施例2
加速された高度な80°試験
実施例1で記述したパネルPACおよびPBCを、「AS/NZS1838−1994スイミングプール−予備成形繊維強化プラスチック−設計と製造」規格に準じて耐水性試験に付した。この規格は、パネルが、規定された劣化評定(規格の表E1)にしたがって80℃30日間試験に合格できることを要求している。両方のパネルは所要条件に付され、非常に優れた結果でこの試験に合格した。表面の劣化も浸透作用によるブリスターも全く存在しなかった。75日後でもなお浸透作用によるブリスターで目に見えるものは全くなく、内部表面劣化は無視できるものであった。
【0080】
したがって、本発明の表面組成が、現行の工業規格を上回る本質的に完全な耐退色性を示し、耐ブリスター性、耐薬品性および加水分解安定性に関してはAS/NZS1838−1994に適合するFRP製スイミングプールおよびスパプールの製造を有利にも可能にするということは明白である。
【0081】
実施例3
耐候性および耐紫外線性に関する製品試験
12の別々のパネルを製造し、ASTM G154−06「非金属材料の紫外線曝露用の蛍光灯装置の標準的操作実践方法」を用いて試験した。同じ試料の一部として製造した対照パネルも、比較目的で供給した。
【0082】
NATA認可実験所であるPolymer Testing Laboratory of the Chisholm Institute in Dandenong Victoria 3175、Australiaにより試験が実施された。
【0083】
各パネルを50℃で4時間の凝縮(condensation)に対し曝露し、その後8時間60℃でUV−Aに曝露した。このパターンを2000時間試験の間繰り返した反復した。
【0084】
各パネルには、パネルG、H、I、J、K、L、M、N、O、P、QおよびRという異なる識別文字を与えた。
【0085】
各パネルは本質的に異なっていた。本発明の一実施形態に係る表面組成を用いて10枚のパネルを製造し、業界で最良の実践方法とみなされてよいものから2枚のパネルを作製した。
【0086】
12枚のパネルは全て、さまざまな量の紫外線阻害剤および吸収剤を有し、かつ/または異なる紫外線阻害剤および吸収剤を利用していた。
【0087】
試験のこの特別な側面は、以下の点に関してどの添加剤が表面組成に対し有益な効果を付与するかの問題に対処するために行われた:
a)樹脂マトリクス内部で使用され、スプレー性を有し、かつゲルコートのレオロジーに影響を及ぼさない能力。
b)硬化プロセスを阻害しないこと。
c)透明ゲルコートに対し特徴的な色相または変色を全く持ち込まないこと。
d)充分に拡散した微小なまたは微視的な気泡はゲルコート中に曇りまたは乳状性を引き起こすことから、ゲルコートの通気を増大させないこと。
e)ゲルコートのバーコル苛酷度を阻害して、製品の耐摩耗性および全体的耐久性を低減しないこと。
f)ASTM G154−06で2000時間後に最適な耐候性および耐UVA性を提供すること。
g)最適な添加剤濃度を確定すること。
h)ゲルコートについて安定剤に対する紫外光吸収剤の最も適切な比率を確定すること。
【0088】
各パネルに塗布された透明ゲルコートバリア層に対して、以下の添加剤を添加した:
CIBA TINUVIN(商標)400
液体ヒドロキシフェニル−トリアジン(HPT)UV吸収剤
CIBA TINUVIN(商標)384−2
ヒドロキシフェニル−ベンゾトリアゾールクラスの液体UV吸収剤
CIBA TINUVIN(商標)123
ヒンダードアミノエーテル官能基に基づく液体HALS安定剤
【0089】
ASTM G154−06にしたがってパネルをセットし試験し、500時間、1000時間、1500時間そして2000時間後に評価を行った。
【0090】
表3には、12枚のパネルについての色、コーティング、添加剤および試験結果がまとめられている。
【0091】
【表3】

【0092】
図3〜14に示されているように、本発明の組成を有する10枚のパネルは明らかにかつ有意な形で、2枚の比較用被験パネルMおよびRより性能が優れていた。以下の結論を導くことができる:
1.パネルMおよびRは、試験の全過程にわたり、表面の外観およびテクスチャーに対する有意な劣化を示した。
2.性能が最も良いパネルは、パネルG、H、JおよびKであった。全ては光沢のわずかな喪失とわずかな黄色味しか示さなかった。全てのパネルを通して、表面摩擦の初期変化は明白であったが、パネルG、H、JおよびKは全て、先の試験以降の変化を全く示さず、きわめてわずかな初期変化とそれに続くさらに長期間の安定性およびさらなる変化の無い状態を示していた。
3.比較的高い濃度のTINUVIN(商標)添加剤を伴うパネルは、より低い濃度の添加剤を伴うパネルに比べ性能が低かった。したがって、1.5%の添加剤を伴うパネルは、2.0%の添加剤を伴うパネルよりも性能が優れていた。
4.2%の添加剤率を有するパネルは、霧がかかった/曇った外観を示した。
5.2部分の吸収剤対1部分の安定剤という比率を有するパネルは、1部分の吸収剤対1部分の安定剤を伴うパネルよりも性能が優れていた。
6.パネルG、HおよびKの間の差異は無視できる程度のものであった。
7.パネルGはパネルJよりも性能が優れ、TINUVIN(商標)400がTINUVIN(商標)384−2よりも優れた性能を提供したことを表わしていた。
【0093】
パネルGが1%であるのに対して、パネルHは1.5%の添加剤を含んでいた。2000時間後にパネルHの評価を下げる効果は全く存在しなかったことから、パネルHがほとんど確実に、2000時間よりも長い期間ASTM G154−06の条件下でパネルGよりも優れた性能を示すと考えられる、という結論が下された。
【0094】
全体的に見て、本発明の組成が、特にTINUVIN(商標)400およびTINUVIN(商標)123吸収剤および安定剤の有利な特性と組み合わされた場合に、標準的なコーティングに比べて以下のような主要な改善およびメリットを提供するという結論が下された。
【0095】
全体的結果は、本発明の表面組成を使用することで、以下のような改善および利点が得られるかもしれないということを示している。
【0096】
1.きわめて長い年月にわたり退色せずその鮮やかで鮮明な色を保持するスイミングプール。
2.漂白跡、黄化または白亜化無し。
3.プールの色は、バリア層を塗布することにより、塩素、臭素またはその他の酸化剤の漂白効果から離隔されている。
4.光輝度と持続性のある光沢仕上げは藻類と汚れに耐え、清浄がより容易であり、結果としてプールのメンテナンスは軽減される。
5.美的および構造的積層品は、水の攻撃的性質から完全に保護されている。
6.本発明のコーティング組成の全ての具体的な塗布が優れた層間接着力により確保され、かつスイミングプール積層品は構造的、機械的かつ化学的に結合されて、スイミングプールに対しより高い強度、耐久性および耐ブリスター性を提供している。
7.改善された加水分解安定性。
8.「浸透作用によるブリスター」の確率が劇的に最少化される。
9.紫外光線による劣化に耐え、UV曝露に由来する亀裂の傾向を無くする。高い熱安定性を有し、極限環境条件に適している。
【0097】
本発明の表面組成はスイミングプールおよびプールスパの製造において特に利用されるが、それは、あらゆる有意な期間が沈水状態でおよび/または紫外線を受けた状態で経過するあらゆる製品、特にFRP製品にも同様に応用可能でありかつ有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水性液体中に長期間沈漬される表面の劣化及び退色を低減するための表面組成であって、前記表面組成は少なくとも1つの透明バリア層と少なくとも1つの下地層とを含み、前記透明バリア層が、使用中、前記下地層の上に配置され前記液体と接触し、それにより前記透明バリア層が前記下地層の構造及び外観を保護している、
表面組成。
【請求項2】
前記下地層が1つ以上の装飾または観賞作用物質を含む装飾層である、請求項1に記載の表面組成。
【請求項3】
1つ以上のUV阻害剤、吸収剤および/または安定剤を含む、請求項1または2に記載の表面組成。
【請求項4】
前記透明バリア層が1つ以上のUV阻害剤、吸収剤および/または安定剤を含む、請求項1または3のいずれか一項に記載の表面組成。
【請求項5】
前記透明バリア層が透明ポリエステルゲルコートである、請求項1〜4のいずれか一項に記載の表面組成。
【請求項6】
前記透明ポリエステルゲルコートが1つ以上のフタレート含有ポリエステル類、ビニル含有ポリエステル類またはメタクリル酸メチル含有ポリエステル類を含む、請求項5に記載の表面組成。
【請求項7】
前記透明ポリエステルゲルコートがフタレート含有ポリエステルを含む、請求項6に記載の表面組成。
【請求項8】
前記透明ポリエステルゲルコートがイソフタル酸ネオペンチルグリコールから誘導される、請求項7に記載の表面組成。
【請求項9】
前記透明ポリエステルゲルコートが、ポリエステル中のジヒドロキシ化合物の合計モル%に基づいて70モル%超のネオペンチルグリコールから誘導される、請求項8に記載の表面組成。
【請求項10】
前記バリア層がトリアジン系のUV吸収剤を含む、請求項3〜9のいずれか一項に記載の表面組成。
【請求項11】
前記バリア層がヒンダードアミン系光安定剤を含む、請求項3〜10のいずれか一項に記載の表面組成。
【請求項12】
前記バリア層が1つ以上の金属促進剤を含む、請求項1〜11のいずれか一項に記載の表面組成。
【請求項13】
前記1つ以上の金属促進剤が、オクチル酸亜鉛、オクチル酸カリウムまたはオクチル酸コバルトからなる群から選択される、請求項1〜12のいずれか一項に記載の表面組成。
【請求項14】
前記下地層が1つ以上のポリエステル類、ビニルエステル類またはテレフタレート系樹脂を含む、請求項1〜13のいずれか一項に記載の表面組成。
【請求項15】
前記下地層が1つ以上のエポキシビニルエステル類、臭素化エポキシビニルエステル類、ノボラックエポキシビニルエステル樹脂またはエラストマで修飾されたビニルエステル樹脂を含む、請求項14に記載の表面組成。
【請求項16】
前記エポキシビニルエステル樹脂がビスフェノール−Aエポキシビニルエステル樹脂を含む、請求項15に記載の表面組成。
【請求項17】
前記下地層が1つ以上の金属促進剤を含む、請求項1〜16のいずれか一項に記載の表面組成。
【請求項18】
透明ゲルコート液体を金型に塗布するステップと、前記ゲルコートを硬化させるステップと、その後着色または装飾ビニルエステル層を前記硬化したゲルコートに塗布するステップとを含む、表面組成の製造方法。
【請求項19】
前記透明ゲルコートがイソフタル酸ネオペンチルグリコールから誘導される、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記ビニルエステル層がビスフェノールAエポキシビニルエステル樹脂を含む、請求項18または19に記載の方法。
【請求項21】
スイミングプールまたはプールスパの製造における、請求項1〜17のいずれか一項に記載の表面組成の使用。
【請求項22】
少なくとも1つの透明バリア層と少なくとも1つの下地層で構成された表面組成を有するスイミングプールまたはプールスパであって、前記透明バリアが、使用中、前記下地層の上に配置され、プール内の液体と接触し、それにより前記透明バリア層が前記下地層を劣化から保護している、スイミングプールまたはプールスパ。

【図1】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図2】
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【公表番号】特表2012−518554(P2012−518554A)
【公表日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−550379(P2011−550379)
【出願日】平成21年12月23日(2009.12.23)
【国際出願番号】PCT/AU2009/001693
【国際公開番号】WO2010/094056
【国際公開日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【出願人】(511199653)ハイドラウォール プロプライエタリー リミテッド (2)
【Fターム(参考)】