説明

袋内の粉体の吸引取出装置

【課題】袋内の粉体を吸引ノズルによって、所望の量を、能率よく、比較的簡単な構成で取出すことができる、袋内の粉体の吸引取出装置を提供する。
【解決手段】吸引取出装置(2)が、粉体の入った袋(F)に挿入され粉体を吸引し取出すノズル(4)と、このノズル(4)を所定の速度で、垂直方向に移動させる昇降動手段(6)および水平方向に移動させる水平動手段(8)と、袋から取出す粉体の量を設定する取出量設定手段(10)と、袋から取出した粉体の量を検出する取出量検出手段(12)と、ノズル(4)の作動を制御するコントローラ(14)を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、開封した袋の中の粉体をノズルによって吸引し取出す、袋内の粉体の吸引取出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
袋に封入された粉体を取出す装置の代表例(例えば、特許文献1参照)は、上端を開封した袋の開口から吸引ノズルを中に降ろし、粉体を吸引し、輸送管を通して、容器、貯槽などに取出している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−254942号公報(図3)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したとおりの形態の従来の袋内の粉体の取出装置には、次のとおりの解決すべき課題がある。
【0005】
袋内の粉体の上面に凹凸があるとノズルの差込み深さに深浅が生じて吸引量が安定しない。袋に振動を与えるなどの上面を平坦にする装置が必要である。
【0006】
取出量は、取出した粉体を受入れる容器、貯槽などの容量によって確認できるが、所望の量の粉体の取出しが難しい。
【0007】
流動性の悪い粉体の場合ノズル近くの粉体のみが吸引されるので、袋の内側に粉体が残ってしまう。粉体を崩すために袋に打撃を加える装置が必要である。
【0008】
ノズルを深く差込むと吸引量が多くなり輸送管が詰まり吸引取出しができなくなる、逆に差込深さを浅くすると吸引量が少なくなり吸引取出し時間が長くなる。ノズルの差込み深さの調整が難しく作業の能率がよくない。
【0009】
本発明は上記事実に鑑みてなされたもので、その主たる技術的課題は、袋内の粉体を吸引ノズルによって、所望の量を、能率よく、比較的簡単な構成で、取出すことができる、袋内の粉体の吸引取出装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明によれば上記技術的課題を解決する袋内の粉体の吸引取出装置として、粉体の入った上方の開口した袋にこの開口を通して挿入され先端の吸引口によって粉体を吸引し取出すノズルと、このノズルを所定の速度で、垂直方向に移動させる昇降動手段および水平方向に移動させる水平動手段と、袋から取出す粉体の量を設定する取出量設定手段と、袋から取出した粉体の量を検出する取出量検出手段と、コントローラと、を備え、コントローラは、
(1)袋の開口の上方に位置したノズルを昇降動手段によって袋内に下降させ、
(2)下降とともにノズルを水平動手段によって水平動させて粉体を吸引し、
(3)取出量設定手段により設定した取出量を取出量検出手段が検出したときには、水平動手段を止めるとともに昇降動手段によりノズルを上昇させ前記の上方位置に戻す、ことを特徴とする袋内の粉体の吸引取出装置が提供される。
【0011】
好適には、取出量設定手段は、粉体の取出量を袋内の粉体の上面の高さによって設定し、取出量検出手段は、袋内の粉体の上面の位置を光学的に検出する変位センサーを備えている。
【0012】
他の取出量設定手段は、粉体の取出量を粉体の重量によって設定し、取出量検出手段は、袋内の粉体の重量を検出する粉体を収容した袋が載せられる台秤を備えている。
【0013】
吸引取出装置はまた、昇降動手段によるノズルの下降速度を調整自在に設定しコントローラに指令する速度設定器を備えている。
【0014】
速度設定器はさらに、取出量検出手段により検出された取出量が設定した取出量に近くなったときにはノズルの下降速度が遅くなるように設定する。
【発明の効果】
【0015】
本発明に従って構成された袋内の粉体の吸引取出装置は、粉体を吸引するノズルを垂直方向および水平方向に所定の速度で移動させる手段と、取出す粉体量の設定手段と、取出した粉体量の検出手段と、ノズルの動きを制御するコントローラを備えている。
【0016】
したがって、ノズルを水平および下降方向に所定の速度で動かすことにより粉体の上面に凹凸を発生させることがなく、またノズルを粉体の取出量と設定した量との関係で移動させることにより、所望の量の粉体を、能率よく、比較的簡単な構成で、取出すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に従って構成された袋内の粉体の吸引取出装置の構成説明図。
【図2】図1のA−A矢印方向に袋を上方から見た図。
【図3】ノズルの下降量と下降時間の関係を示した線図。
【図4】取出量とノズル下降量とノズル下降時間の関係を示した線図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に従って構成された袋内の粉体の吸引取出装置について、好適実施形態を図示している添付図面を参照して、さらに詳細に説明する。
【0019】
図1および図2、主として図1を参照して説明する。全体を番号2で示す袋内の粉体の吸引取出装置は、粉体Pの入った上方の開口した袋Fにこの開口を通して挿入され先端の吸引口4aによって粉体Pを吸引し取出すノズル4と、このノズル4を所定の速度で、垂直方向(矢印Zで示す)に移動させる昇降動手段6および水平方向(矢印Xで示す)に移動させる水平動手段8と、袋Fから取出す粉体Pの量を設定する取出量設定手段10と、袋Fから取出した粉体Pの量を検出する取出量検出手段12と、ノズル4の動きを制御するコントローラ14を備えている。
【0020】
ノズル4は真直のステンレス鋼管によって形成された周知のものである。下端の吸引口4aには、空気噴出手段などを有した周知の袋吸着防止ガイド(図示していない)が備えられている。ノズル4の上端には、可撓性ホースを備えた輸送管5が連結され、輸送管5はブロワーのような吸引空気源に連結されており、輸送管5の途中に吸引した粉体を収容する貯槽が備えられている。
【0021】
粉体Pを収容する袋Fは、例えば、クラフト紙で作られた袋体と、袋体に内挿されたポリエチレン製の樹脂袋を備えている。袋Fは、枠体状のカセット16内に開口を上方にした安定状態が維持されて納められている。袋Fは内方への移動が、内側の四隅それぞれに配置された(図2参照)周知の棒状の内袋押さえ17によって押さえられている。
【0022】
吸引取出装置2の基台18には支柱20が立設され、支柱20には上下Z方向に昇降自在に取付けられた上下移動体22が取付けられている。上下移動体22には水平X方向に移動自在に取付けられ先端にノズル4を支持した水平移動体24が備えられている。上下移動体22は、上下移動体22を支柱20に沿って昇降移動させる昇降動手段としての電動モータ6と、水平移動体24を水平移動させる水平動手段としての電動モータ28を備えている。電動モータ6、8の作動はコントローラ14の指令によって制御される。
【0023】
取出量検出手段12は、袋F内の粉体Pの上面の高さを上方から光学的に検出しコントローラ14に入力する、基台18に取付けられた変位センサーであるレーザ変位計13を備えている。レーザ変位計13のレーザ光投射部には、圧力空気の噴出口および吸引口からなるエアーシールド(図示は省略)が備えられている。
【0024】
他の取出量検出手段として、粉体Pの取出量を粉体Pの重量によっても検出する取出量検出手段30が備えられている。取出量検出手段30は、基台18の底部に、粉体Pを収容した袋Fをカセット16とともに載せ袋F内の粉体Pの重量Wを検出しコントローラ14に入力する台秤26を備えている。
【0025】
取出量設定手段10は、粉体Pの取出量を、袋F内の粉体Pの上面の高さHまたは粉体Pの重量Wによって設定し、コントローラ14に入力する。
【0026】
図1とともに図3を参照して説明する。袋内の粉体の吸引取出装置2は、ノズル4の下降速度である単位時間当たりの下降量および水平移動量を調整自在に設定しコントローラ14に指令する速度設定器28を備えている。速度設定器28は、下降速度を、取出量検出手段12のレーザ変位計13により検出された下降量が設定した取出量である定量設定値H1に近づいた定量前設定値H2になったときにはノズル4のH2からH1までの時間であるT2からT1までの時間を長くして下降速度を遅くする(図3に太実線で示す)。このH2、T2の値は適宜に変更することができる。
【0027】
速度設定器28はさらに、ノズル4の下降速度を前記の速度よりも速く(図3に点線で示す)あるいは遅く(図3に二点鎖線で示す)設定することができる。すなわち、粉体Pの性状などに応じて設定を変えることにより、粉体Pの吸引量の過大によるノズル4の詰まり、あるいは吸引量の過少を防止する。
【0028】
なお、取出量を粉体Pの重量Wによって設定するときには、速度設定器28は、粉体Pの上面の高さHに代えて粉体Pの重量Wに基づいて設定される。
【0029】
重量Wによって設定する場合、ノズル4を粉体Pの中に入れて動かし吸引するとノズル4の動きによって、また粉体Pを吸引する力によって、重量Wが正確に測れないので、速度設定器28は取出重量を定量設定値と合致させやすくするようにノズル4の下降量の制御を行う。
【0030】
図1とともに図4を参照して説明する。速度設定器28は、ノズル4の下降速度を、取出量検出手段30の台秤26により検出された取出量Wが定量設定値W1に近づいた定量前設定値W2になったときには、ノズル4のW2からW1までの時間であるT2からT1までの時間を長くして下降速度を遅くするとともに、W1に近づいた時間T3においてはノズル4の下降を止め上昇させる。かくしてノズル4は、粉体P中への差込深さを浅くしてあるいは粉体Pの上面から離れて、取出量を設定値と合致させるように粉体Pを吸引する。
【0031】
コントローラ14は、マイクロコンピュータ、電気リレー回路などによって構成され、取出量設定手段10、速度設定器28、取出量検出手段12(レーザ変位計13)、取出量検出手段30(台秤26)の出力に基づいて、昇降動手段である電動モータ6および水平動手段である電動モータ8に制御信号を出力し下記の手順で制御する。
【0032】
(1)袋Fの開口の上方に位置したノズル4を昇降動手段の電動モータ6によって袋F内に所定の速度で下降させる。
【0033】
(2)下降とともにノズル4を水平動手段の電動モータ8によって所定の速度で水平動させ粉体Pを吸引する。
【0034】
(3)取出量設定手段10によって設定した取出量を、取出量検出手段12(30)が検出したときには、水平動手段の電動モータ8を止めるとともに昇降動手段の電動モータ6によってノズル4を上昇させ前記の上方位置に戻す。
【0035】
上述したとおりの袋内の粉体の吸引取出装置2の作用効果について説明する。
【0036】
袋内の粉体の吸引取出装置2は、粉体Pを吸引するノズル4を垂直方向Zおよび水平方向Xに所定の速度で移動させる手段6,8と、取出す粉体量の設定手段10と、取出した粉体量の検出手段12,30と、ノズル4の動きを制御するコントローラ14を備えている。
【0037】
したがって、ノズル4を水平Xおよび下降Z方向に所定の速度で動かすことにより袋F内の粉体Pの上面に凹凸を発生させることがなく、またノズル4を粉体Pの取出量と設定した量との関係で移動させることにより、所望の量の粉体を、能率よく、比較的簡単な構成で、取出すことができる。
【0038】
取出量設定手段10は、粉体Pの取出量を袋F内の粉体Pの上面の高さHによって設定し、取出量検出手段12は、袋F内の粉体Pの上面の位置を光学的に検出する変位センサー13を備えている。したがって、粉体Pの取出量を袋F内の粉体Pの上面の高さHによって容易に設定し検出し取出すことができる。
【0039】
他の取出量検出手段30は、袋F内の粉体Pの重量を検出する粉体Pを収容した袋Fが載せられる台秤26を備え、取出量設定手段10は、粉体Pの取出量を粉体の重量Wによって設定する。したがって、粉体Pの性状などによっては、取出量を袋F内の粉体Pの重量Wによって設定し検出し取出すことができる。
【0040】
吸引取出装置2はまた、昇降動手段6によるノズル4の下降速度を調整自在に設定しコントローラ14に指令する速度設定器28を備えている。したがって、粉体Pの性状、ノズル4の吸引能力などに応じて、ノズル4の差込み深さを調整することができ、粉体Pの吸引作業を能率よく行うことができる。
【0041】
速度設定器28はさらに、取出量検出手段12(30)により検出された取出量が設定した取出量に近くなったときにはノズル4の下降速度が遅くなるように設定する。したがって、粉体Pを、より安定した状態で吸引し取出すことができる。
【0042】
以上、本発明を実施例に基づいて詳細に説明したが、本発明は上記の実施例に限定されるものではなく、例えば下記のように、本発明の範囲内においてさまざまな変形あるいは修正ができるものである。
【0043】
本発明の実施の形態においては、粉体Pの上面の位置を光学的に検出する変位センサーとしてレーザ変位計13を備えているが、変位センサーとしてはCCDカメラを用いたものでもよい。
【0044】
本発明の実施の形態においては、ノズル4の昇降動手段として電動モータ6が、水平動手段として電動モータ8が備えられているが、移動できるものであれば、例えば流体圧シリンダを備えてもよい。
【0045】
本発明の実施の形態においては、ノズル4は水平X方向に直線状に移動されているが、袋Fの開口が大きいような場合には、例えばジグザグに移動できるようにした水平動手段を備えてもよい。
【符号の説明】
【0046】
2:袋内の粉体の吸引取出装置
4:ノズル
6:電動モータ(昇降動手段)
8:電動モータ(水平動手段)
10:取出量設定手段
12:取出量検出手段
13:レーザ変位計(変位センサー)
14:コントローラ
26:台秤
28:速度設定器
30:取出量検出手段
F:袋
P:粉体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉体の入った上方の開口した袋にこの開口を通して挿入され先端の吸引口によって粉体を吸引し取出すノズルと、
このノズルを所定の速度で、垂直方向に移動させる昇降動手段および水平方向に移動させる水平動手段と、
袋から取り出す粉体の量を設定する取出量設定手段と、
袋から取り出した粉体の量を検出する取出量検出手段と、
コントローラと、を備え、
コントローラは、
(1)袋の開口の上方に位置したノズルを昇降動手段によって袋内に下降させ、
(2)下降とともにノズルを水平動手段によって水平動させて粉体を吸引し、
(3)取出量設定手段により設定した取出量を取出量検出手段が検出したときには、水平動手段を止めるとともに昇降動手段によりノズルを上昇させ前記の上方位置に戻す、
ことを特徴とする袋内の粉体の吸引取出装置。
【請求項2】
取出量設定手段は、粉体の取出量を袋内の粉体の上面の高さによって設定し、
取出量検出手段は、袋内の粉体の上面の位置を光学的に検出する変位センサーを備えている、
ことを特徴とする請求項1記載の袋内の粉体の吸引取出装置。
【請求項3】
取出量設定手段は、粉体の取出量を粉体の重量によって設定し、
取出量検出手段は、袋内の粉体の重量を検出する粉体を収容した袋が載せられる台秤を備えている、
ことを特徴とする請求項1記載の袋内の粉体の吸引取出装置。
【請求項4】
昇降動手段によるノズルの下降速度を調整自在に設定しコントローラに指令する速度設定器を備えている、
ことを特徴とする請求項1記載の袋内の粉体の吸引取出装置。
【請求項5】
速度設定器は、
取出量検出手段により検出された取出量が設定した取出量に近くなったときにはノズルの下降速度が遅くなるように設定する、
ことを特徴とする請求項4記載の袋内の粉体の吸引取出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−1303(P2012−1303A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−136998(P2010−136998)
【出願日】平成22年6月16日(2010.6.16)
【出願人】(591147786)赤武エンジニアリング株式会社 (27)
【Fターム(参考)】