説明

被成形物循環式の樹脂成形法及び樹脂成形装置

【課題】 端子付きコード、その他の被成形物の二色成形等を、装置の大型化、複雑化、高コスト化を招くことなく、効率良くできるようにする。

【解決手段】 被成形物1を横向きに配置する複数の成形用枠体2を循環路5で順送りし、循環路5に設けられている上下一対の金型6の間に成形用枠体2を配置して金型6で被成形物1の外周部を樹脂で成形し、その後取り出し位置に送って成形用枠体2から被成形物1を取り出す。上記の循環路5を平面から見て方形の枠状に形成し、この循環路5に上下一対の金型6を連続して複数設ける。この金型6の位置に成形用枠体2を順送りし、金型6の間に成形用枠体2が配置されると型締めして樹脂を注入する。そして被成形物1の外周部を最初の金型6で一次成形し、次ぎの金型6で二次成形と、金型6の個数に応じて複次的に成形する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばプラグ端子等の電気接続端子とコードの接続部を樹脂で覆って一体成形するのに好適な樹脂成形法に関し、更に詳しくは、この種の被成形物を成形用枠体にセットした状態で循環搬送し、所定の位置で樹脂の注入と、被成形物の取り出し操作を行なうよう形成した被成形物循環式の樹脂成形法及びこれに使用する樹脂成形装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の成形法及び成形装置としては、例えば特許文献1に記載のものがある。
この従来の装置は、複数のプラグ金具固定用枠をループ状に移送し、その間にプラグ金具の装着、成形、冷却、取り出しを行ない、プラグ金具を連続的に製造できるよう形成しているものである。
しかしながら、この従来装置の場合は、上記の通り、循環路がループ状に形成されているものであったから、プラグ金具固定用枠を移送する構造が、大型化、複雑化するのを避けられなかった。
またこの従来装置の場合は、循環路に金型が単数設けられているだけであった。
従ってこれによっては、プラグ金具を連続成形することができるだけであり、例えば異なる性質の樹脂で、二色成形品等を効率良く連続的に製造することができない、という問題点があった。
【特許文献1】特公昭56−5033号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、このような従来技術の問題点に鑑み、提案されたものである。
従って本発明の解決しようとする技術的課題は、例えば端子付きコード、その他の被成形物の二色成形等を、装置の大型化、複雑化、高コスト化を招くことなく、効率良くできるよう形成した被成形物循環式の樹脂成形法及びこれに使用する樹脂成形装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、上記の課題を解決するため、次ぎのような技術的手段を採る。
即ち本発明の樹脂成形法は、被成形物1を横向きに配置する複数の成形用枠体2を循環路5で順送りし、循環路5に設けられている上下一対の金型6の間に成形用枠体2を配置して金型6で被成形物1の外周部を樹脂で成形し、その後取り出し位置に送って成形用枠体2から被成形物1を取り出す樹脂成形法であって、上記の循環路5が平面から見て方形の枠状に形成され、この循環路5に上下一対の金型6が連続して複数設けられ、この金型6の位置に成形用枠体2を順送りし、金型6の間に成形用枠体2が配置されると型締めして樹脂を注入し、被成形物1の外周部を最初の金型6で一次成形、次ぎの金型6で二次成形と、金型6の個数に応じて複次的に成形することを特徴とする(請求項1)。
【0005】
ここで、被成形物1としては、例えばプラグ端子1a等の電気接続端子付きコード1bなどがある。また順送りとは、予め定めた行程分ごと、順を追って成形用枠体2を先へ送る、ということを意味する。行程は、金型6の配設位置等により、適宜選定されるので良い。また循環路5は、具体的には正方形や長方形に形成される。また本発明の場合、金型6の個数は任意であるが、金型6が2個連続して循環路5に設けられる場合は、例えば硬質樹脂で一次成形を行い、次に軟質樹脂で二次成形することができ、また3個連続して設けられる場合は、所定の樹脂で三色成形が可能になる。なお、本発明は、通常、被成形物1の外周部の全体を樹脂で覆って成形するが、これに限定されるものではなく、被成形物1の外周部の一部を樹脂で覆って成形する場合も含むものである。
【0006】
またこのような樹脂成形法に使用する本発明の樹脂成形装置としては、図1等に示されるものがある。
【0007】
即ち、本発明の装置は、被成形物1を横向きに配置する複数の成形用枠体2と、この成形用枠体2を順送りする順送り装置4と、この順送り装置4で成形用枠体2を順送りして循環させるため平面から見て方形枠状に形成されている循環路5と、この循環路5に成形用枠体2の順送り距離を隔てて連続して複数設けられている上下一対の金型6と、この金型6の間に成形用枠体2が配置されると型締めし、樹脂の硬化後に型開きする型開閉機構7と、この型開閉機構7で型締めされた金型6のキャビティに樹脂を注入する樹脂充填手段8とを備えて形成されていることを特徴とする(請求項2)。
【0008】
この場合、本発明は、成形用枠体2が、金型6の個数より少なくとも一つ多く設けられているのが好ましい(請求項3)。
なぜならこれによると、被成形物1を金型6で成形しているとき、取り出し位置で成形済みの被成形物1を取り出したり、セット位置で新しい被成形物1のセット作業を行なうことができ、効率良く連続成形できるからである。
【0009】
また本発明の場合、上記の樹脂充填手段8は、金型6ごと夫々設けられているのが好ましい(請求項4)。
なぜならこれによると、樹脂充填手段8から金型6のキャビティまでの樹脂の充填路を短縮でき、樹脂の流れを円滑化できるからである。
【0010】
また本発明は、成形用枠体2が循環路5の直線状の一辺の長さを一行程として順送りされ、金型6が循環路5の奥側の一辺の両端部に設けられているのが好ましい(請求項5)。
なぜならこれによると、循環路5の一辺の長さ単位で成形用枠体2を順送りでき、成形用枠体2の送り装置の仕組み、構造を、簡単化、低コスト化できるからである。またこの場合は、金型6が循環路5の奥側の一辺に設けられているため、セット作業等を循環路5の手前側の一辺の両端位置で行うことができ、作業し易いことからである。
【0011】
また本発明は、図10に示されるように、金型6が循環路5の奥側の一辺の両端部と、この一辺の中間部に設けられているのでも良い(請求項6)。
なぜならこれによると、樹脂の性質等に応じて被成形物1を効率良く、三色成形できるからである。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、このように被成形物をセットした成形用枠体を循環路で順送りして連続成形する樹脂成形法及び装置であって、上記の循環路を平面から見て方形の枠状に形成し、この循環路に上下一対の金型を連続して複数設け、この金型の位置に成形用枠体を順送りし、金型の間に成形用枠体を配置して型締めした後、樹脂を注入し、被成形物の外周部を最初の金型で一次成形、次ぎの金型で二次成形と、金型の個数に応じて複次的に成形するよう構成されているものである。
従って本発明によれば、例えば電気接続端子と、コードの接続箇所を樹脂で覆って一体成形する場合、装置を大型化、複雑化、高コスト化することなく、金型の個数に応じて二色成形品や三色成形品等を、効率良く連続的に製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための最良の形態を説明する。
図1等において、1は、被成形物であり、この被成形物1は、図4に示されるように、この実施形態ではプラグ端子1aと、コード1bで構成されている。
【0014】
2は、このような被成形物1を横向きに配置する成形用枠体である。プラグ端子1aと、コード1bは、保持爪3(図4参照)等で成形用枠体2の所定位置に仮止めされ、本発明はこの成形用枠体2が、エアシリンダ等を備えた順送り装置4(図1参照)で循環路5を順送りされるものである。成形用枠体2は、この実施形態では循環路5の直線状の一辺の長さを一行程として順送りされ、循環路5の各コーナーに対応して、計4個配置されている。またこの実施形態では、同時に計6本のプラグ端子1a付きコード1bを製造できるよう、成形用枠体2の上面にはプラグ端子1aとコード1bのセット部分1c(図4参照)が、左右対称状に計6箇所形成されている。
【0015】
また上記の循環路5は、平面から見て方形の枠状に形成されている。この実施形態の場合、循環路5は、前後が短く左右が長い状態の長方形に形成され、平行一対の案内レールで形成されている。
【0016】
また順送り装置4を構成するエアシリンダは、循環路5としての案内レールの下側に、案内レールに沿って横向きに設けられ、成形用枠体2が循環路5のコーナーに配置されると、センサからの信号を受けて駆動するよう形成されている。またこの場合、順送り装置4は、成形用枠体2を循環路5のコーナーで受け渡すための機構等を備え、樹脂の充填時間に合わせて成形用枠体2を順送り可能に構成されている。
【0017】
6(図1参照)は、上下一対の金型である。この金型6は、循環路5に成形用枠体2の順送り距離を隔てて連続して複数設けられている。この実施形態の場合は、具体的には循環路5の奥側の一辺の両端部に夫々設けられている。またこの実施形態では、被成形物1としてのプラグ端子1aとコード1bの接続位置を、先ず硬質樹脂で成形し、次に外観部及び蛇腹部分を軟質樹脂で成形できるよう、循環方向において、1番目の金型6のキャビティは硬質樹脂用に形成され、2番目の金型6のキャビティは軟質樹脂用に形成されている。
【0018】
7(図1参照)は、金型6の間に成形用枠体2が配置されると型締めし、樹脂の硬化後に型開きする型開閉機構である。この型開閉機構7は、上型6a、下型6bを案内する縦向きの複数のロッド7aと、上型6a、下型6bを昇降動作させるシリンダー(図示せず)等を備えて形成されている。
【0019】
8(図1参照)は、型開閉機構7で型締めされた金型6のキャビティに、樹脂を注入する樹脂充填手段である。この樹脂充填手段8は、樹脂をキャビティに射出するノズルで構成され、循環路5の奥側の一辺の上方に横向きに配置されているプレート9に、各金型6ごと個別に設けられている。
【0020】
次に、本発明の装置で、被成形物1としてのプラグ端子1aとコード1bの所定位置を成形する方法について説明する。
【0021】
先ず作業者は、循環路5の手前側の一辺のコーナーで(図1、図2等で手前左側の位置)、成形用枠体2の上面に、プラグ端子1aとコード1b(図4参照)を、左右方向に沿わせて直列状にセットする。この実施形態は、一度に計6本のコード1bをプラグ端子1aと一体成形する例である。
【0022】
次に成形用枠体2は、順送り装置4によって1番目の金型6(図1上で左側)の上型6a、下型6bの間に送られる。そして型開閉機構7により型締めされ、硬質樹脂が樹脂充填手段8としてのノズルから、金型6のキャビティに注入され(図5参照)、樹脂が硬化したら、上型6aと下型6bが開かれる。
【0023】
その後、成形用枠体2は、一次成形された被成形物1(図6参照)と共に、循環路5の奥側の一辺の下側の順送り装置4(図示せず)によって横方向に送られ(図1〜図3参照)、2番目の金型6(図1上で右側)の上型6a、下型6bの間に配置される。そして2番目の金型6が、形開閉機構により閉じられ、樹脂充填手段8としてのノズルから、軟質樹脂が金型6のキャビティに注入され(図7参照)、プラグ端子1aとコード1bの所定位置が被覆される。
【0024】
その後、2番目の金型6が型開きし、成形用枠体2が、一次、二次成形が完了した状態の被成形物1(図8参照)と共に、循環路5の手前右側のコーナー(図1等参照)に送られる。そして被成形物1は、この取り出し位置で成形用枠体2から手動又は自動機で取り出された後、図1、図9等に矢示されるように、当初のセット位置に送られるものである。
【0025】
このように本発明は、各金型6の位置に成形用枠体2を順送りし、各金型6の間に成形用枠体2が配置されたら型締めして樹脂を注入し、被成形物1の外周部を、最初の金型6で一次成形、次ぎの金型6で二次成形と、金型6の個数に応じて複次的に成形するものである。
【0026】
以上の処において、本発明の場合、循環路5の縦横の各搬送路の長さは、被成形物1のサイズや、金型6の個数等に応じて適宜選定されるので良い。また順送り装置4の駆動源は、モータでも良く、モータの場合は回転力を直線運動に変換する伝動装置等を備えて形成される。
【0027】
また本発明は、図10に示されるように、金型6が循環路5の奥側の一辺の両端部と、この一辺の中間部との3箇所に設けられているのでも良い。この場合、樹脂充填手段8としてのノズルは、上例と同様、この実施形態では各金型6に対応してプレート9に個別に設けられている。またこの実施形態の本発明の装置は、形成用枠体が、循環路5の奥側の一辺では金型6の配設間隔ごと順送りされ、他の行程では循環路5のコーナーの間隔を1ストロークとして順送りされるよう形成されている。なお、その他の構成は、上例と同様である。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明装置の好適な一実施形態を示す斜視図である。
【図2】形成用枠体の順送り状態の一例を示す要部斜視図である。
【図3】金型と、形成用枠体の順送り状態の一例を示す要部斜視図である。
【図4】被成形物をセットした状態の形成用枠体を示す要部斜視図である。
【図5】一次成形時の樹脂注入構造を示す要部斜視図である。
【図6】一次成形後の形成用枠体を示す要部斜視図である。
【図7】二次成形時の樹脂注入構造を示す要部斜視図である。
【図8】二次成形後の形成用枠体を示す要部斜視図である。
【図9】取り出し位置に搬送された状態の形成用枠体を示す要部斜視図である。
【図10】本発明装置の他の実施形態を示す要部斜視図である。
【符号の説明】
【0029】
1 被成形物
2 成形用枠体
4 順送り装置
5 循環路
6 金型
7 型開閉機構
8 樹脂充填手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被成形物を横向きに配置する複数の成形用枠体を循環路で順送りし、循環路に設けられている上下一対の金型の間に成形用枠体を配置して金型で被成形物の外周部を樹脂で成形し、その後取り出し位置に送って成形用枠体から被成形物を取り出す樹脂成形法であって、上記の循環路が平面から見て方形の枠状に形成され、この循環路に上下一対の金型が連続して複数設けられ、この金型の位置に成形用枠体を順送りし、金型の間に成形用枠体が配置されると型締めして樹脂を注入し、被成形物の外周部を最初の金型で一次成形、次ぎの金型で二次成形と、金型の個数に応じて複次的に成形することを特徴とする被成形物循環式の樹脂成形法。
【請求項2】
請求項1記載の樹脂成形法に使用する樹脂成形装置であって、被成形物を横向きに配置する複数の成形用枠体と、この成形用枠体を順送りする順送り装置と、この順送り装置で成形用枠体を順送りして循環させるため平面から見て方形枠状に形成されている循環路と、この循環路に成形用枠体の順送り距離を隔てて連続して複数設けられている上下一対の金型と、この金型の間に成形用枠体が配置されると型締めし、樹脂の硬化後に型開きする型開閉機構と、この型開閉機構で型締めされた金型のキャビティに樹脂を注入する樹脂充填手段とを備えて形成されていることを特徴とする被成形物循環式の樹脂成形装置。
【請求項3】
請求項2記載の樹脂成形装置であって、成形用枠体が、金型の個数より少なくとも一つ多く設けられていることを特徴とする被成形物循環式の樹脂成形装置。
【請求項4】
請求項2又は3記載の樹脂成形装置であって、樹脂充填手段が、金型ごと夫々設けられていることを特徴とする被成形物循環式の樹脂成形装置。
【請求項5】
請求項2乃至4の何れかに記載の樹脂成形装置であって、成形用枠体が循環路の直線状の一辺の長さを一行程として順送りされ、金型が循環路の奥側の一辺の両端部に設けられていることを特徴とする被成形物循環式の樹脂成形装置。
【請求項6】
請求項2乃至4の何れかに記載の樹脂成形装置であって、金型が循環路の奥側の一辺の両端部と、この一辺の中間部に設けられていることを特徴とする被成形物循環式の樹脂成形装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−89450(P2010−89450A)
【公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−263740(P2008−263740)
【出願日】平成20年10月10日(2008.10.10)
【出願人】(594115393)株式会社コスモ精密 (2)
【Fターム(参考)】