説明

被搬送物の転写装置

【課題】被搬送物の表面に凹凸があっても、該被搬送物を安定して保持ヘッドに転写することができ、更に該被搬送物を他の部材に転写することができる装置を提供すること。
【解決手段】凹凸表面を有する被搬送物3を、保持ヘッド15の保持表面15aに転写して吸引保持し、更に他の部材17a等に転写する被搬送物の転写装置10である。保持ヘッド15の保持表面15aが、被搬送物3の凹凸表面と相補形状をなす凹凸形状となっている。被搬送物3の凹凸表面が段差を有しており、保持表面15aのうち、該段差が変化する部位に対応する部位の近傍に、吸引孔が設けられていることが好適である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面に凹凸を有する被搬送物を保持ヘッドに転写し、更に該被搬送物を他の部材に転写するための装置に関する。
【背景技術】
【0002】
使い捨ておむつや生理用ナプキンなどの各種吸収性物品の製造においては、該物品又はそれを構成する材料を搬送するときに、吸引ヘッドによって対象物を吸着保持することがしばしば行われている。例えば特許文献1には、吸引孔を前吸着部及び後吸着部に有する吸着パッドが、物品を吸着していない非吸着状態において該吸引孔に負圧を作用させた際に、前吸着部の空気の吸入量の方が、後吸着部の空気の吸入量よりも大きくなるように設定することが記載されている。空気の吸入量をこのように設定することで、物品を吸着し始める際に、後吸着部の吸入量が小さくなって吸引ロスが小さくなると共に、前吸着部の吸入量が大きくなるので、吸着の確実性が向上すると、同文献には記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−301679号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に記載の吸着パッドは、両端部はテーパ状にカットされ、中央が若干膨出したような曲面となっているが、物品を吸着保持する表面がほぼ平坦になっていることから、吸着保持の対象である物品の表面が平坦でない場合には、吸着パッドと物品との間に隙間が生じてしまい、十分な吸引力が得られないことがある。また、隙間が生じることで、物品の隅部等に折れやめくれが生じてしまい、そのような状態のままで、他の部材に転写されてしまうこともある。特に対象となる物品として吸収性物品を用いる場合、吸収性物品には一般に多くの弾性部材が用いられていることから、前記の隙間が生じることに起因する吸引力の低下で、吸収性物品に縮みが生じやすくなる。
【0005】
本発明は、前述した従来技術が有する欠点を解消し得る被搬送物の転写装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、凹凸表面を有する被搬送物を、保持ヘッドの保持表面に転写して吸引保持し、更に他の部材又は装置に転写する被搬送物の転写装置であって、
前記保持ヘッドの保持表面が、前記被搬送物の凹凸表面と相補形状をなす凹凸形状となっている被搬送物の転写装置を提供するものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、被搬送物の表面に凹凸があっても、該被搬送物を安定して保持ヘッドに転写することができ、更に該被搬送物を他の部材に転写することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】図1は、本発明の装置によって好適に製造されるパンツ型使い捨ておむつを示す斜視図である。
【図2】図2は、図1に示すおむつの製造前の状態を、表面シート側から見た平面図である。
【図3】図3(a)は、図1に示すおむつの吸収性本体を、表面シート側から見た平面図であり、図3(b)は、図3(a)におけるb−b線断面図である。
【図4】図4は、本発明の装置の構造を示す模式図である。
【図5】図5(a)は、図4に示す装置に備えられた保持ヘッドを、保持表面側から見た平面図であり、図5(b)は、図5(a)におけるb−b線断面図である。
【図6】図6は、図5に示す保持ヘッドに吸収性本体が保持された状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下本発明を、その好ましい実施形態に基づき図面を参照しながら説明する。本実施形態においては、吸収性物品の一つである使い捨ておむつにおける吸収性本体の搬送を例にとる。図1及び図2には、そのような吸収性本体を備えた使い捨ておむつが示されている。図1及び図2に示す使い捨ておむつ1はパンツ型のものであり、装着時に装着者の腹側に配される腹側シート2Aと、装着時に装着者の背側に配される背側シート2Bと、腹側シート2A及び背側シート2Bにわたって固定された吸収性本体3とを具備する。そして、腹側シート2Aの両側縁部2a,2aと背側シート2Bの両側縁部2b,2bとが接合されてサイドシール部5が形成され、ウエスト開口部WOと一対のレッグ開口部LO,LOとが形成されている。
【0010】
腹側シート2Aは、おむつ1の伸長状態(図2参照)において、おむつ幅方向(X方向)に長い長方形状をなしている。背側シート2Bも腹側シート2aと同様であり、おむつ1の伸長状態(図2参照)において、おむつ幅方向(X方向)に長い長方形状をなしている。腹側シート2Aと背側シート2Bとは一般に同形であるが、おむつ1の具体的な目的に応じて互いに異なる形状としても差し支えない。
【0011】
腹側シート2A及び背側シート2Bとしては、2枚のシート間に伸長状態で配された糸ゴム等の弾性部材の収縮によって伸縮性を発現するものを用いることができる。それ自体が伸縮性を有する伸縮不織布を用いることができる。どのような材料を用いる場合であっても、腹側シート2A及び背側シート2Bは、おむつ1の少なくとも幅方向Xに伸縮性を有していることが好ましい。図1のおむつ1では、X方向に延びる糸ゴムが、2枚のシート間に伸長状態で配されて、おむつ1の幅方向に伸縮性を有している。
【0012】
吸収性本体3は、図2に示すように、実質的に縦長の長方形状をしている。吸収性本体3の長手方向は、展開状態のおむつ1における長手方向Yと一致している。吸収性本体3は、その長手方向に沿う前端域及び後端域が、腹側シート2A及び背側シート2Bと接合されている。この場合、腹側シート2A及び背側シート2Bの長手方向と、吸収性本体3の長手方向が直交するように、両者は接合されている。吸収性本体3の長手方向に沿う中央域は、腹側シート2A及び背側シート2Bには接合されず、図1に示すように、おむつ1のレッグ開口部LO,LOと股下部を構成する。
【0013】
図3(a)及び(b)に示すように、吸収性本体3は、液透過性の表面シート31、液不透過性又は撥水性の裏面シート32、及び両シート31,32間に介在配置された液保持性の吸収体33を有している。表面シート及び裏面シートとしては、吸収性物品の技術分野において公知の材料が特に制限なく用いられる。後述する側部シート部34についても同様である。また、吸収性本体3においては、裏面シート32の外側に不織布等を配置してもよい。
【0014】
吸収性本体3は、長手方向に沿う両側部に、吸収体33の長手方向の両側縁それぞれより外方に位置し、少なくともおむつの股下部(吸収性本体3の長手方向における腹側シート2Aと背側シート2Bとの間)に第1防漏カフ34cを形成する一対の側部シート部34,34を有している。側部シート部34は、図3(a)に示すように、吸収性本体3の全長にわたって存在している。側部シート部34は、液抵抗性ないし撥水性のシート材35及び該シート材35に固定された弾性部材36,36を備えている。弾性部材36は、少なくとも股下部に伸長状態で固定されており、少なくとも股下部に第1防漏カフ34cを形成する。第1防漏カフ34cは、側部シート部34に配された弾性部材36が収縮することで、側部シート部34を構成するシート材35が襞寄せされたり波状の断面形状に変形したりして形成されるものである。第1防漏カフ34cは、おむつ1の自然状態及び/又は着用状態で着用者の肌側に向かって起立するように形成されていればよい。
【0015】
吸収性本体3は、その長手方向の両側部に、該吸収性本体3の長手方向に沿って延びる一対の第2防漏カフ形成部38を有している。第2防漏カフ形成部38は、シート材35と、該シート材35に固定された第2防漏カフ形成用の弾性部材39とを有してなる。第2防漏カフ形成部38は、少なくとも股下部に第2防漏カフ38cを形成する。第1防漏カフ34cと同様に、第2防漏カフ38cは、おむつ1の自然状態及び/又は着用状態で着用者の肌側に向かって起立するように形成されていればよい。
【0016】
シート材35は、1枚のシートが、第2防漏カフ形成部38における、第2防漏カフ38cの自由端側の端部38aに配される折り曲げ部に沿って2つ折りされて2層構造とされている積層シートであり、該積層シートの層間に弾性部材39が接着剤を介して伸長状態で固定されている。また、その積層シートは、側部シート部34における、第1防漏カフ34cの自由端側の端部34aに配される折り曲げ部に沿って更に2つ折りされており、それによって相対向した2枚の積層シート間に弾性部材36が接着剤を介して固定されている。また、その積層シートどうしは、吸収体33の側縁部の近傍、より詳細には側縁部のやや外方の位置に形成された線状接合部30において、両者間に表面シート31を介在させた状態で接合一体化されている。線状接合部30は、長方形状の吸収体33の両側縁部それぞれに沿って延びており、また、吸収体33及び吸収性本体3の長手方向の全長にわたって延びている。
【0017】
吸収体33は、下部吸収体331とその上に配置された上部吸収体332との積層体から構成されている。各吸収体331,332はいずれも平面視して矩形状のものである。各吸収体331,332は、パルプ繊維等の吸水性繊維の集合体(不織布であっても良い)又はこれに高吸水性ポリマーの粒子を保持させて構成されている。上部吸収体332は下部吸収体331よりも小型ものであり、下部吸収体331は、上部吸収体332の周縁から外方に延出している。その結果、吸収体は段差構造になっている。なお図示していないが、吸収体331,332は、両者が重ねられた状態で、その全体が液透過性の吸収シート(例えば紙や不織布等)によって包まれている。
【0018】
下部吸収体331は、股下部に配された部分に左右一対の折曲誘導部333を備えている。折曲誘導部333は、例えば下部吸収体331を構成する材料が欠落して形成されている。あるいは、折曲誘導部333は、下部吸収体331の他の部位よりも薄く形成されたものである。一対の折曲誘導部333の間の距離は、上部吸収体332の幅よりも大きくなっている。折曲誘導部333が形成されていることで、下部吸収体331は、該折曲誘導部333よりも幅方向外方の部位が、おむつ1の着用状態において、上方に向けて起立するようになっている。
【0019】
吸収体33が上述した段差構造を有することによって、吸収性本体3の表面シート31側には、該段差構造に起因する凹凸が形成される。また、吸収性本体3の左右の側部域においては、下部吸収体331と第1防漏カフ34cとの間に、厚みの相違に起因する段差構造が形成され、吸収性本体3の表面シート31側には、この段差構造に起因する凹凸も形成される。このように、吸収性本体3は、その表面シート31側が凹凸表面になっている。表面シート31側と異なり、裏面シート32側においては、吸収性本体3は概ね平坦になっている。
【0020】
以上の構成を有するおむつ1における吸収性本体3の搬送について説明する。図4には、吸収性本体1の搬送に好適に用いられる転写装置10が示されている。装置10は、所定の間隔をおいて搬送されてくる吸収性本体3を受け取る受け取り部11と、受け取り部11において受け取った吸収性本体3の向きを変更する反転部12と、向きが変更された吸収性本体3を受け渡す受け渡し部13とを備えている。
【0021】
装置10は、図4中矢印R1方向に回転する略筒状の回転ドラム14を備え、該回転ドラム14は、その周面部に複数の保持ヘッド15を備えている。保持ヘッド15は、回転ドラム14の回転方向R1に沿って一方向に移動するようになっている。保持ヘッド15は保持表面15aを有し、該保持表面15a上に、吸収性本体3を保持し、その状態で、矢印R1方向に搬送可能になされている。
【0022】
各保持ヘッド15は、それぞれ、保持表面15aに略垂直な軸線の周りに90度回転し、それにより、保持ヘッド15の保持表面15aに保持された吸収性本体3が、該吸収性本体3の平面、すなわち保持表面15aに垂直な軸線Pの回りに90度回転するようになされている。
【0023】
また、各保持ヘッド15は、図4中矢印R1方向に回転しながら、隣り合う保持ヘッド間の距離(保持ヘッド15が一方向に移動する軌跡に沿って測定した距離)が短縮又は伸長するようになされている。即ち、各保持ヘッド15が受け渡し部11に位置しているときは、各保持ヘッド15は、その保持表面15aに垂直な方向から見たときの該保持ヘッドの長手方向を回転ドラム14の周方向に向けて、相互間の間隔がほぼなくなる程度に近接しているが、受け渡し部11を越えた辺りの位置を始点として、保持ヘッド間の距離が僅かに広がり、その状態で、上述したヘッドの90度の回転が始まり、90度の回転途中から今度は保持ヘッド間の距離がさらに増加する。そして、保持ヘッド間の距離が当初よりも増加した状態で吸収性本体3の受け渡し(転写)が行われる。受け渡し部13において吸収性本体3を受け渡すときには、保持ヘッド15は、その保持表面15aに垂直な方向から見たときの該保持ヘッドの長手方向が、長手方向を回転ドラム14の周方向と直交している。
【0024】
本製造方法においては、サイズや機能等が相違する複数種類の被搬送物の受け渡しができることが好ましい。この場合、回転方向R1に沿って隣り合う被搬送物の距離は、被搬送物の種類に応じて様々なので、隣り合う保持ヘッド間の距離は、受け取り部11における距離に比べて減少又は増加のどちらにも変化が可能であり、所望の間隔にリピッチできることが好ましい。ここで、隣り合う保持ヘッド間の距離とは、回転方向R1に沿って隣り合う保持ヘッドにおいて向かい合う端部間の距離のことである。
【0025】
吸収性本体3の転写の完了後、保持ヘッド15は、吸収性本体3の受け取り部11に戻るまでの間に、保持ヘッド間の距離が減少する。また、その間に、各保持ヘッド15が、それぞれ保持表面15aに略垂直な軸線Pの周りに90度回転する。このときの回転方向は、吸収性本体3を受け渡す前の保持ヘッド15の回転方向と逆方向であり、元の位置に戻る。
【0026】
装置10における保持ヘッド15間の距離の変更及び保持ヘッド15の90度の回転は、それぞれ公知の方法及び装置を用いて実施することができる。例えば、保持ヘッド15間の距離の変更及び保持ヘッド15の回転方法(及び装置)としては、特開昭63−317576号公報、特開2003−135517号公報、特開平3−226411号公報等に記載の方法や装置を用いることができる。また、装置10に設ける保持ヘッド15の移動を、同軸の回転軸を有し、該回転軸とは反対側の端部又はその近傍が各保持ヘッドに連結された複数のアーム(図示せず)を回転させることによって行ってもよい。この場合、それぞれのアームの回転速度を、各アームの回転軸に連結したサーボモータ等により個別に制御してもよい。保持ヘッド15を保持表面15aに略垂直な軸線の回りに90度回転させる手段としては、保持ヘッド15の軌道の近傍にカム溝を設け、そのカム溝に、各保持ヘッドに連結した従動節の突起を挿入し、該保持ヘッド15が移動するに伴って生じる従動節の往復運動を、公知の手法によってヘッドの回転運動に変換する方法が挙げられる。カムには、円筒カム、板カム、正面カム等を用いることができる。また、カム溝を設ける代わりに凸条部を設け、これに従動節を摺接させることもできる。
【0027】
図5(a)には、本装置10に備えられている保持ヘッド15をその保持表面側からみた平面図が示されている。図5(b)は図5(a)におけるb−b線断面図である。保持表面15aは長手方向Yとそれに直交する幅方向Xを有している。上述した吸収性本体3は、この保持表面15aに保持される。この場合、保持ヘッド15の長手方向Yが、吸収性本体3の長手方向と一致するように、保持が行われる。吸収性本体3の保持は、該本体3の表面シート31側と、保持ヘッド15の保持表面15aが対向当接するように行われる。
【0028】
保持ヘッド15の保持表面15aは段差構造になっている。詳細には、保持表面15aは、最も深い位置にある第1保持表面151a、最表面である第3保持表面153a、第1保持表面151aと第3保持表面153aとの間の深さに位置する第2保持表面152aとを有している。保持表面15aの平面視において、第1保持表面151aは、図5(a)中、長手方向Yに長い矩形をしており、その周囲が第2保持表面152aによって取り囲まれている。第2保持表面152aは、保持表面15aの平面視において、図5(a)中、長手方向Yに長い矩形をしており、保持表面15aの長手方向Yの両端まで延びて、幅方向Xに沿う端縁の一部をなしている。幅方向Xに関しては、一対の第3保持表面153aによって挟まれている。第3保持表面153aは、図5(a)中、幅方向Xに所定幅を有し、長手方向Yに延びる細長い矩形をしている。第3保持表面153aは、保持表面15aの長手方向Yの両端まで延びており、幅方向Xに沿う端縁の一部をなしている。また第3保持表面153aは、保持表面15aの幅方向Xの両端まで延びており、幅方向Xに沿う側縁の全体をなしている。
【0029】
保持表面15aの段差構造は、先に述べた吸収性本体3の表面シート側の凹凸表面と相補形状をなしている。つまり、保持表面15aは、吸収性本体3の表面シート側の凹凸表面と嵌り合う凹凸形状になっている。更に詳述すると、図5(b)及び図6に示すように、保持表面15aにおける第1保持表面151aを含む第1凹部151bには、吸収性本体3における上部吸収体332によって形成される凸状部が嵌り合う。第2保持表面152aを含む第2凹部152bには、吸収性本体3における下部吸収体331によって形成される凸状部が嵌り合う。また、第2凹部152bには、第2防漏カフ38cも当接する。そして、第3保持表面153aには、第1防漏カフ34cが当接する。
【0030】
保持表面15aには、吸引孔151c,152c,152c',153cが複数個設けられている。各吸引孔151c,152c,152c',153cは、保持表面15aにおいて開口しており、かつ保持ヘッドの高さ方向に延びている。これらの吸引孔のうち、第1吸引孔151cは、第1保持表面151aにおいて開口している。第2吸引孔および第3吸引孔152c,152c'は、第2保持表面152aにおいて開口している。第4吸引孔153cは、第3保持表面153aにおいて開口している。各吸引孔151c,152c,152c',153cは、吸引ポンプ等の吸引手段(図示せず)に接続されている。吸引手段を作動させることで、吸収性本体3は保持表面15aに吸引保持される。吸引手段による吸引の程度を調整することで、吸引孔151c,152c,152c',153cによる吸引力を可変とすることができる。第1吸引孔151cが接続されている吸引系統と、第2及び第3吸引孔152c,152c'が接続されている吸引系統と、第4吸引孔153cが接続されている吸引系統とを別系統にすることで、各保持表面151a,152a,153aにおける吸引力を異ならせることもできる。
【0031】
吸引孔151c,152c,152c’,153cの大きさ、個数及び配置位置は、保持の対象である吸収性本体3の表面シート側における凹凸形状を考慮して適切に設定される。特に、配置位置に関しては、これらの吸引孔151c,152c,152c',153cは、保持表面15aのうち、吸収性本体3の表面シート側に形成された段差が変化する部位に対応する部位の近傍に設けられていることが好ましい。詳細には、図5(a)及び(b)に示すように、第1吸引孔151cは、第1凹部151bと第2凹部152bとの境目の近傍における第1保持表面151aで開口している。第2吸引孔152cは、第1凹部151bと第2凹部152bとの境目の近傍における第2保持表面152aで開口している。第3吸引孔152c'は第2凹部152bと第3保持表面153aとの近傍における第2保持表面152aで開口している。なお、第3吸引孔153cは、第3保持表面153aにおいて開口している。
【0032】
なお図5(a)及び(b)に示す実施形態では、吸引孔は凹部の底面において開口していたが、これに代えて又はこれに加えて凹部の側面において吸引孔が開口していてもよい。
【0033】
以上の構成を有する装置10を用いた吸収性本体3の受け渡し方法について説明する。まず、弾性部材が引き伸ばされ、図3(a)に示す状態に保持されている吸収性本体3を、コンベアベルト16a,16b上に載置した状態で搬送し、矢印R1方向に規則的に回転する回転ドラム14に供給する。吸収性本体3の引き伸ばし状態は、コンベアベルト16a,16bを介して該吸収性本体3を吸引することで達成される。このとき、吸収性本体3は、その長手方向が搬送方向を向いた状態で、所定間隔をおいて順次搬送される。また吸収性本体3は、その表面シート31側が上方を向き、裏面シート32側がコンベアベルト16a,16bと対向当接した状態で搬送される。そして、吸収性本体3は、その長手方向が搬送方向を向いた状態で、受け取り部11において保持ヘッド15に保持される。吸収性本体3の保持は、吸引孔151c,152c,152c',153cによる吸引によって達成される。受け取りに際して、吸収性本体3の引き伸ばし状態は維持される。吸収性本体3の受け取り(転写)においては、吸収性本体3が保持ヘッド15の保持表面15aに保持された状態において、吸収性本体3の表面シート側が、保持表面15aの凹凸形状に嵌り合うように、回転ドラム14の回転速度と吸収性本体3の搬送速度とが同期される。
【0034】
吸収性本体3は、その表面シート側が保持ヘッド15に吸引保持されたまま搬送され、反転部12において、保持ヘッド15の回転によって、吸収性本体3の平面に垂直な軸線Pの周りに90度回転する。90度回転した吸収性本体3は、保持ヘッド15間のピッチが、保持表面15aに垂直な方向から見たときの該ヘッドの長手方向を回転ドラム14の周方向に向けている状態に比べて、保持ヘッド15が90度回転して、保持表面15aに垂直な方向から見たときの該ヘッドの幅方向が回転ドラム14の周方向に向いている状態の方が狭くなるように増加する。この90度の反転の間、保持ヘッド15における吸収性本体3の引き伸ばし状態は維持されている。
【0035】
反転部12において保持ヘッド15間の距離が増加した後、保持ヘッド15に搬送された吸収性本体3は、受け渡し部13に備えられたコンベアベルト17a,17bへと受け渡される。これらの操作によって吸収性本体3は、その幅方向(短手方向)を、コンベアベルト17a,17bの走行方向に一致させて、該コンベアベルト17a,17bの走行方向に所定間隔をおいて規則的に配置される。吸収性本体3の受け取りに際して、該吸収性本体3の引き伸ばし状態は維持される。吸収性本体3の引き伸ばし状態の維持は、コンベアベルト17a,17bを介して該吸収性本体3を吸引することで達成される。
【0036】
受け取り部11における吸収性本体3の受け取りから、受け渡し部13における吸収性本体3の受け渡しの間、吸収性本体3は、保持ヘッド15における保持表面15aの凹凸形状に嵌り合った状態が維持されており、吸収性本体3は保持表面15aに密着している。その結果、受け取りから受け渡しの間、吸収性本体3にめくれ上がりや折れが発生することが効果的に防止される。特に、吸収性本体3における第1防漏カフ34cは、2枚のシート及び弾性部材から構成されているだけなので、剛性が低くめくれ上がりや折れが発生しやすいが、上述のとおりの密着によってそれらが効果的に防止される。また、吸収性本体3は、引き伸ばされた状態で保持ヘッド15に保持されており、常に収縮力が作用しているところ、上述のとおりの密着によって、吸収性本体3の縮みも効果的に防止される。
【0037】
特に、保持ヘッド15の保持表面15aに設ける吸引孔の位置として、吸収性本体3の表面シート31側の凹凸の段差が変化する部位に対応する部位の近傍を選択することで、吸収性本体3と保持表面15aとの密着性が一層向上し、上述しためくれ上がりや折れ、縮み等が一層効果的に防止される。
【0038】
また、保持ヘッド15の保持表面15aに摩擦係数を高める表面処理を行って、該表面15aの摩擦係数を高めてもよい。このようにすることで、吸引性本体3の縮み、特に伸縮性を有する部位である防漏カフ34c,38cの縮みを効果的に防止できる。表面処理としては、例えは保持表面15aを溶射する処理等が挙げられる。保持表面15aの摩擦係数を高めることによる縮みの防止は、該保持表面15aが凹凸形状であることとの相乗効果で、一層顕著なものとなる。
【0039】
この後、吸収性本体3には、その長手方向に沿う前端域及び後端域に、上述した腹側シート2A及び背側シート2Bが接合される。接合は、吸収性本体3の裏面シート32側で行われる。引き続き、腹側シート2Aの両側部2aと背側シート2Bの両側縁部2bとを接合することで、目的とするパンツ型使い捨ておむつが得られる。
【0040】
以上、本発明をその好ましい実施形態に基づき説明したが、本発明は前記の実施形態に制限されない。例えば前記の実施形態においては、予め製造された吸収性本体3を個別に装置10に供給したが、吸収性本体3の形態によっては、個別の吸収性本体が長手方向に連なった連続体を製造し、この連続体を装置10に供給して保持ヘッド15に保持させた後に、反転部12に到達する前に該連続体をその幅方向にわたって裁断し、個別の吸収性本体3を製造するようにしてもよい。
【0041】
また、前記実施形態においては、保持ヘッド15に保持された吸収性本体3を、受け渡し部13においてコンベアベルト17a,17bに受け渡したが、これに代えて、吸収性本体3を、おむつを構成する他の部材、例えば上述した腹側シート2Aの連続体からなる帯状長尺物及び/又は背側シート2Bの連続体からなる帯状長尺物に転写してもよい。
【0042】
また前記実施形態においては、保持ヘッド15に保持された吸収性本体3が受け渡し部13で受け渡されるまでの間に、該保持ヘッド15が、保持表面15aに垂直な軸線Pの回りに回転するようになされており、かつ隣り合う保持ヘッド15の距離が短縮又は伸長するようになされていたが、これに代えて、これらの動作のうちの一方のみが行われてもよい。
【0043】
また前記実施形態は、使い捨ておむつにおける吸収性本体を被搬送物の対象としたが、本発明における被搬送物はこれに限られず、受け取り及び/又は受け渡しに際して、めくれ上がり、折れ及び又は/縮み等の発生の可能性がある物品全般を被搬送物とすることができる。
【符号の説明】
【0044】
1 パンツ型使い捨ておむつ
3 吸収性本体
34c 第1防漏カフ
10 転写装置
15 保持ヘッド
15a 保持表面
151a 第1保持表面
152a 第2保持表面
153a 第3保持表面
151c 第1吸引孔
152c 第2吸引孔
152c'第3吸引孔
153c 第4吸引孔
331 下部吸収体
332 上部吸収体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
凹凸表面を有する被搬送物を、保持ヘッドの保持表面に転写して吸引保持し、更に他の部材又は装置に転写する被搬送物の転写装置であって、
前記保持ヘッドの保持表面が、前記被搬送物の凹凸表面と相補形状をなす凹凸形状となっている被搬送物の転写装置。
【請求項2】
前記被搬送物の凹凸表面が段差を有しており、
前記保持表面のうち、前記段差が変化する部位に対応する部位の近傍に、吸引孔が設けられている請求項1記載の被搬送物の転写装置。
【請求項3】
前記被搬送物が吸収性物品の吸収性本体であり、該吸収性本体の吸収体が段差構造になっており、それによって該吸収性本体の表面シート側が凹凸表面になっており、
該吸収性本体の表面シート側が吸引保持されるようになされている請求項1又は2記載の被搬送物の転写装置。
【請求項4】
前記被搬送物が吸収性物品の吸収性本体であり、
該吸収性本体が、吸収体と、該吸収体の側縁部から外方に延出し、かつシート材から構成される防漏カフとを有し、
該防漏カフと該吸収体との間に段差を有する請求項1ないし3のいずれかに記載の被搬送物の転写装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−126695(P2011−126695A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−288869(P2009−288869)
【出願日】平成21年12月21日(2009.12.21)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】