被検体の検知または経皮的薬物送達のための皮膚透過装置
測定された皮膚の電気的パラメータによって制御される、皮膚の透過性を増す装置、システム、キットが本明細書に記載される。これらは、経皮的薬物送達および/または被検体の抽出または測定に使用することができる。制御型剥削装置は、(i)ハンドピース、(ii)剥削用チップ(20)、(iii)フィードバック制御機構、(iv)2以上の電極(42、44)、および(v)電気モータを含む。好ましくは、フィードバック制御機構は内部フィードバック制御機構である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、被検体(analyte)の経皮での検知または薬物送達のための装置および方法の分野に関する。
【0002】
(関連出願の引用)
本願は、2007年4月27日に出願された「Device for Permeabilizing Skin for Analyte Sensing or Transdermal Drug Delivery」との題名のU.S.S.N.60/914,552に対する優先権を主張する。
【背景技術】
【0003】
(発明の背景)
一般に、皮膚を通じた薬物の透過は、起こるとしても非常にゆっくりとした速度で進行する。このプロセスにおける主な律速ステップは、角質層と呼ばれる皮膚の最外層を化合物が通過することである。角質層は不透過層として作用する死んだ細胞の薄い層であり、この層の内外で大きな違いを生む。角質層は主に皮膚のバリア機能を担っている。角質層を除去する、または変化させると多くの物質に対する透過性が高まる、すなわち物質が皮膚内へまたは皮膚からより容易に拡散可能になるものと長い間認識されてきた。皮膚のバリア機能は、薬物の経皮投与または体液の皮膚を通しての採取に関心のある医薬品製造業者にとっては非常に大きな問題となる。
【0004】
ヒトの皮膚を介しての電気信号および生体物質の授受もまた、角質層によって阻害される。例えば、皮膚を介して測定された生体電位および電流の信号忠実度は、角質層の高いインピーダンスによって悪化する。従って、この高いインピーダンスが、ヒトの細胞、臓器、および組織からの生体電気信号の理想的な送信信号および測定値を皮膚を介して受信する際の障害となる。
【0005】
角質層の除去は皮膚の高いインピーダンスを低下させ、ヒト組織の中へのおよびヒト組織からの電気信号または生物学的種のより良好な授受を可能にする。電磁エネルギーによって誘発された角質層の変化が物質に対する透過性を高めることも実証されてきた(例えば、Yaegashiに付与された米国特許第6,315,722号(特許文献1)、Flock他に付与された米国特許第6,251,100号(特許文献2)、Marchitto他に付与された米国特許第6,056,738号(特許文献3)、およびWaner他に付与された米国特許第5,643,252号(特許文献4)参照)。あるいは、角質層を透過させるために一般には「透過促進剤」と言われる化合物の使用が可能であり、成功した例もみられる。従来のアプローチは、サンドペーパーおよびブラシを用いた皮膚の剥削(abration)、テープおよび有毒化学物質を用いた皮膚の剥離、レーザーまたは熱アブレーションによる角質層の除去、または針を用いた皮膚の穿刺を必要とする。これらの方法による皮膚の調整(preparation)は対象にとっては極めて不安定で危険、かつ痛みを伴うものであって、一般的には不便なものである。
【0006】
皮膚を介した薬物送達または被検体の抽出のための皮膚の調整を行う従来のアプローチは、皮膚の調整の程度を制御するための外部フィードバック機構を必要とする。実際には、制御された皮膚の調整のためのフィードバック機構を有効にするには導電性伝達媒質(conductive coupling medium)、リターン電極および/またはヒドロゲルパッチが一般的には必要である(例えば、Marchitto他による米国特許公開第20060100567号、およびMarchitto他による米国特許公開第20030204329号参照)。こうした装置およびシステムの信頼性は、リターン電極は十分な導電率を有する皮膚部位上に置かれた場合のみ正確なフィードバックを提供し得ることから、疑わしい場合がある。残念なことに、皮膚の導電率は、年齢、位置、日光曝露、ローションの使用、湿気レベル、および周囲の状態など様々な条件によって変化する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第6,315,722号明細書
【特許文献2】米国特許第6,251,100号明細書
【特許文献3】米国特許第6,056,738号明細書
【特許文献4】米国特許第5,643,252号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って、皮膚の高いインピーダンスを低下させる改良型のシステムが必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の目的は、皮膚の高いインピーダンスを低下させる改良型のシステムを提供することである。
【0010】
本発明の別の目的は、皮膚のインピーダンスを測定する改良型の方法を提供することである。
【0011】
本発明の更に別の目的は、改良型の経皮薬物送達および/または被検体検知システムを提供することである。
【0012】
(発明の概要)
皮膚の透過性を高める装置、システム、キットおよび方法が本明細書に記載される。これらは経皮的薬物送達および/または被検体抽出および測定に使用することができる。制御型剥削装置は、(i)ハンドピース、(ii)剥削用チップ、(iii)フィードバック制御機構、(iv)2以上の電極、および(v)電気モータを含む。好ましくは、フィードバック制御機構は内部フィードバック制御器である。本実施形態においては、剥削用チップが2つの電極、すなわちソース電極およびリターン電極の両方を含む。別の実施形態においては、フィードバック制御機構が外部フィードバック制御器である。外部フィードバック制御器の場合の本好適な実施形態においては、装置が該2つの電極の同軸または同心配置を含む。本実施形態においては、ソース電極とリターン電極を含む剥削用チップがハンドピースの近位端に位置している。剥削用チップは、皮膚を剥削可能な表面を有する任意の材料で製造することが可能である。材料は、導電性または非導電性とすることが可能である。本好適な実施形態においては、材料は導電性材料である。必要に応じ、皮膚への適用に先立ち剥削用チップを湿潤化液で濡らす。制御型剥削装置は、キットに備えることができ、その場合、キットは該装置、1以上の剥削用チップおよび、必要に応じて湿潤化液を含む。一実施形態においては、剥削用チップは湿潤化液で湿らせてあり、チップの湿潤化液を保持するために容器に密封される。別の実施形態においては、湿潤化液は、別容器に入れて、または予め包装した清拭具などの素材に含ませて供給される。皮膚の透過性を増す方法は、制御型剥削装置を皮膚の表面の一部分に短時間、例えば最大30秒間適用することを含む。皮膚のインピーダンスまたはコンダクタンスの望ましいレベル、ひいては結果として得られる被処理部位の透過性は、所定値として設定可能である。
【0013】
あるいは、皮膚のインピーダンスまたはコンダクタンスのレベルは、皮膚完全性の望ましいレベル、対象の不快感、または適用継続時間に基づいて選択可能である。装置は、フィードバック制御機構の一部としてフィードバック回路を含み、これはいつ皮膚が望ましい透過性レベルに到達したかを判定するために導電率情報に基づく適切なアルゴリズムまたは信号処理を用いる。望ましい透過性レベルに到達すると、剥削装置は取り除かれ、薬物送達組成物もしくは装置または被検体センサーのいずれかが被処理部位に適用される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は、外部フィードバック制御機構を用いた例示的制御型剥削装置を示す。
【図2】図2Aおよび図2Bは、内部フィードバック制御器用の2つの電極を含む剥削用チップの図である。図2Aは、剥削装置と関連させて示した剥削用チップの正面図および分解図を含む。図2Bは、皮膚表面に接触させた状態を示した剥削用チップの側面図である。
【図3A】図3Aは、外部フィードバック制御機構を用いた制御型剥削装置の図であり、制御型剥削装置の断面図であって、皮膚を通過し装置内に至る電流路を示している。
【図3B】図3Bは、外部フィードバック制御機構を用いた制御型剥削装置の図であり、2つの電極の同軸または同心配置を示す制御型剥削装置の近位端の底平面図であって、ソース電極としても機能する剥削用チップを示す。
【図3C】図3Cは、外部フィードバック制御機構を用いた制御型剥削装置の図であり、2つの電極の同軸または同心配置を示す制御型剥削装置の近位端の底平面図であって、導電素子が挿入され、導電素子がソース電極として作用する剥削用チップを示す。
【図3D】図3Dは、外部フィードバック制御機構を用いた制御型剥削装置の図であり、使い捨ての剥削用チップの近位端の断面図であって、ソース電極と剥削用チップからモータ軸への導電路を与えるバネとの接触を示す。
【図4】図4は、望ましい透過性レベルを実現するために皮膚表面上のエリアの剥削を制御する方法のフローチャートである。
【図5】図5は、制御型剥削装置を皮膚に適用している間の皮膚導電率の時間変化(I,カウント単位の)のグラフである。実線は時間(秒)に対するカウント(1カウント=0.0125μA(Amp))のグラフ(実線)であり;破線は導電率曲線の一次導関数のグラフ、すなわち時間(秒)に対するΔI/ΔT(カウント/秒)である;水平破線は一次導関数の最大値を表す。
【図6】図6は、透過ステップをいつ終了すべきか判定する方法を示すフローチャートである。
【図7A】図7Aは、図6のフローチャートのステップに対応する典型的グラフである。
【図7B】図7Bは、図6のフローチャートのステップに対応する典型的グラフである。
【図7C】図7Cは、図6のフローチャートのステップに対応する典型的グラフである。
【図8】図8は、皮膚を透過させるために試験対象に対して剥削システムを用い、続いて継続的経皮グルコースモニタリングを行って得られた結果の血中グルコースレベル(mg/dL)対時間(時間)のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(発明の詳細な説明)
本明細書に記載した装置、システム、キットおよび方法は、皮膚の透過性を高める便利で迅速、経済的、かつ最小侵襲のシステムおよび方法を提供する。これらの装置、システム、キットおよび方法は、経皮的薬物送達および/または被検体測定に用いることができる。
I.制御型剥削装置
制御型剥削装置(10)が図1に示されている。装置は、(i)ハンドピース(12)、(ii)剥削用チップ(20)、(iii)フィードバック制御機構(30)、(iv)2以上の電極(40)、および(v)電気モータ(50)を含む。装置は、追加の制御器および/またはユーザーインターフェースを含んでもよい。
【0016】
図1および3A〜Dに示す装置は、外部フィードバック制御機構を有する。好ましくは、フィードバック制御機構は内部フィードバック制御機構である。内部フィードバック制御機構を有する例示的制御型剥削装置を図2Aに示す。
【0017】
a.剥削用チップ
剥削用チップ(20)は、再利用可能でも使い捨てでもよい。再利用可能である場合、剥削用チップは使用後再利用されるまでの間にクリーニングされるように設計される。好適な実施形態においては、剥削用チップは使い捨てである。
【0018】
使い捨ての剥削用チップは、ハンドピースの近位端に任意好適な接続手段によって脱着可能である。
【0019】
使い捨ての剥削用チップの好適な実施形態を図3Aおよび3Dに示す。好適な実施形態においては、使い捨ての剥削用チップはチューブ(24)、好ましくは、プラスチックチューブに取り付けられる。チューブ(24)は、プラスチックカップまたはコーン(27)の中心空隙であって、該チューブを受容するように成形されるとともに、装置を作動させたときには該チップが動くことを可能にする中心空隙に挿入される(図3D参照)。カップまたはコーン(24)は、流体がハンドピース(12)に接触するのを防ぐように設計され、使用後のハンドピースのクリーニングを最低限または不要にする。本好適な実施形態においては、カップまたはコーン(24)の開口部(25)がハンドピース(12)の近位端(14)の外壁(21)の内側にぴったりと収まる(図3D参照)。本好適な実施形態においては、外壁(21)がリターン電極(44)として機能する導電性材料を含む。
【0020】
i.材料
剥削用チップは、皮膚の剥削が可能な表面を有する任意の材料、例えばサンドペーパー、美容用マイクロダーマブレーションで用いられ、通常は100%医療グレードナイロン製であって複数のコーティングおよび仕上げ層を有する皮膚用グレード織物などの粗目布、ワイヤーブラシ、炭素繊維、または極微針で製造することが可能である。材料は導電性とすることも非導電性とすることも可能である。例えば、非導電性材料である白色酸化アルミニウムは医療グレードでも低コストで容易に入手可能である。この材料は剥削用チップを製造するための大量化合/生産(high volume binding/fabrication)に必要であり得るガラス化プロセスにおいて通常現れるような高温に耐えることが可能である。一部の実施形態においては、酸化アルミニウムよりも皮膚を刺激しないように酸化アルミニウムよりも柔らかい材料が好ましい。剥削用材料として、酸化アルミニウムに代えてポリマービーズを使用してもよい。一般に、ポリマービーズは、酸化アルミニウムよりも柔らかく、刺激の少ない材料となる。材料の採択は、処置される特定個体および処置の目的に基づいて決められる。従って、個体によって異なる材料を上に挙げた材料に代えて使用してもよい。
【0021】
工学的設計が適切であれば、剥削用チップにおける剥削用材料として導電性材料を使用することも可能である。好適な導電性材料としては、金属、炭素、導電性ポリマーおよび導電性エラストマーが挙げられるが、これに限らない。
【0022】
好適な実施形態においては、材料は導電性材料であり、好ましくは、金属、最も好ましくは、ステンレス鋼シートメタルであり、多数の穴または穿孔(22AおよびB)を有する。本実施形態の一例を図3Bに示す。剥削用チップは、材料を打ち抜いて剥削すべき皮膚の面積に合った直径のディスクを形成することによって形成することができる。次いでディスクはドーム形に成形され、チューブ(24)、好ましくは、プラスチックチューブに取り付けられる。
【0023】
ii.寸法
剥削用チップは、任意好適な厚さおよび直径を有することが可能である。一実施形態においては、剥削用粒子がアクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)などのプラスチック基材にコーティングされ、剥削用コーティングの厚さは剥削用粒子のグリットサイズによって規定される。好適な実施形態においては、剥削用粒子のグリットサイズはおよそ120(直径約0.0044インチ、すなわちおよそ120ミクロン)である。グリットサイズが120を超える粒子は挫傷を生じることがわかっているため、グリットサイズは通常120以下である。
【0024】
通常、剥削用チップは0.5ミクロン〜150ミクロンの範囲、好ましくは、15ミクロン〜120ミクロンの範囲の厚さとなる。
【0025】
チップは、任意好適な形または幾何形状とすることが可能である。通常、円形の断面を有する。チップのサイズは、剥削によって透過性とすべきエリアのサイズに依存する。例えば、小さな透過性化エリアを必要とする用途の場合は、剥削用チップは数マイクロメートル以下、例えば1〜25マイクロメートルの直径とすることが可能である。より大きな透過性化エリアを必要とする用途の場合は、剥削用チップは数インチ以下、例えば0.1〜5インチの直径とすることが可能である。
【0026】
iii.湿潤化液
剥削用チップを濡らすことによって皮膚に至る導電路を確保するために湿潤化液が必要になるかどうかは、剥削用チップ材料の電気伝導度次第である。湿潤化液は、水、塩類、イオン性または非イオン性界面活性剤、防腐剤、アルコール、グリセロール、ゲル、およびその他類似の薬剤など、任意好適な薬剤を含有してもよい。所望の用途応じてこれら薬剤の各種混合物を様々な導電率レベルの湿潤化液に調合してもよい。本明細書において使用する場合、「高導電性流体」または「導電率の高い流体」とは、およそ1,000〜およそ100,000μS(Siemens)/cmの導電率を有する流体を意味する。本明細書において使用する場合、「導電率の低い流体」とは、およそ0.1〜およそ999μS/cmの導電率を有する流体を意味する。例えば、図1に記載するような外部フィードバック制御機構の場合、剥削用チップがプラスチックまたは粒状材料などの非導電性材料でできていると、皮膚を貫通する導電路を確保するには高導電性流体が必要である。剥削用チップが金属などの導電性材料でできている場合、導電率の高い湿潤化液、導電率の低い湿潤化液のどちらを使用してもよい。あるいは、金属製剥削用チップそれ自体が十分に導電性であって透過させた皮膚を通る導電路を確保できる場合などは、システムは湿潤化液を必要としないこともある。好適な実施形態においては、外部フィードバック制御機構と共に導電率が500〜50,000μS/cmの湿潤化液が使用される。
【0027】
図2Aおよび2Bに記載したような内部フィードバック制御機構の場合、導電率の低い湿潤化液を使用すべきである。一般に、短絡および装置の誤作動の原因となることが多いため、導電率の高い湿潤化液は避けるべきである。図2Aおよび2Bに示す剥削用チップは、通常非導電性材料で形成される。こうした湿潤化液を使用すると、皮膚が未処理であるときには導電率ベースラインが低くなり、その後皮膚部位を剥削装置によって透過させると導電率が大幅に増加する。
【0028】
好ましくは、湿潤化液は水、塩類、アルコール、グリセロール、非イオン性界面活性剤、防腐剤、ポリエチレングリコール、および/またはこれらの混合物を含有する。導電率の高い湿潤化液の一例は、精製水に0.1〜20%(wt/wt)の塩類、0〜2%(wt/wt)のイオン性界面活性剤、0〜20%(wt/wt)のアルコール、および0〜1%(wt/wt)の防腐剤を含有する。導電率の低い湿潤化液の一例は、精製水に0〜2%の非イオン性界面活性剤、0〜50%のアルコールおよび0〜1%の防腐剤を含有する。
【0029】
必要に応じ、湿潤化液は、対象に送達すべき1種以上の活性薬剤、例えば薬物、診断用薬または予防薬を含有する。こうした湿潤化液は、薬物送達用途において特に有用である。
【0030】
一実施形態においては、剥削用チップは非導電性材料で形成され、湿潤化液は導電率の低い流体である。
【0031】
iv.電極
剥削用チップ(20)は通常、透過すべき組織上の目的とする部位と電気的に接触し、フィードバック制御回路網との連続性を確保するためにモータ(50)と電気的に連通する第1の電極(42)(本明細書においては「ソース電極」とも呼ぶ)を含む。好適な一実施形態においては、剥削用チップはソース電極として機能する導電素子を含むか、またはソース電極として機能する導電性材料で形成されているかのいずれかであり(図3D参照)、ソース電極は剥削用チップ(20)からモータ軸への連続性を確保するためにバネ(28)と接触している。図3Dはソース電極としても機能する剥削用チップの使用を示しているが、それに挿入された少なくとも1つの導電素子を含む非導電性材料で形成された剥削用チップと共に同じバネ構成を使用することが可能である。本実施形態においては、ソース電極は剥削用チップ(20)内で剥削用チップの外面と同じ高さの位置に置かれている。
【0032】
図3Dに示す同じバネ構成を内部制御フィードバック機構を含む装置、例えば図2Aに示すような装置と共に使用することが可能である。
【0033】
外部フィードバック制御機構を含む剥削装置の一部の実施形態においては、剥削用チップは電極を含まない。これらの実施形態においては、第1の電極(42)(またはソース電極)は位置決めリング(60)(例えば、図1参照)内に位置してもよい。
【0034】
電極は、金属および導電性ポリマーといった、任意好適な導電性材料製とすることが可能である。加えて、両電極は、電極が皮膚に接触しフィードバック制御回路網と電気的に連通することを可能にする任意好適な形を想定して設計することが可能である。
【0035】
より均一な皮膚透過を達成するために多数の電極を使用することが可能である。正確な電気的示度を与えるため、少なくとも1つの電極に接触する患者の皮膚の表面は十分に透過させなければならない、すなわち、電極が適用される部位から角質層を除去する必要がある。
【0036】
好適な実施形態においては、剥削用チップ(20)は内部フィードバック制御機構を想定して設計される。本実施形態においては、剥削用チップは2つの電極を含み、これらは剥削用チップ内で剥削用チップの外面と同じ高さにした位置に置かれている。本実施形態においては、剥削用チップは第1の電極、またはソース電極(42)および第2の電極、またはリターン電極(44)の両方を含む。電極は、例えば金属および導電性ポリマーといった、任意好適な導電性材料製である。本実施形態において内部フィードバック機構が適切に機能するには、剥削用チップは好ましくは非導電性材料で形成される。湿潤化液を剥削用チップに適用する場合は、湿潤化液は好ましくは導電率の低い流体である。
【0037】
外部フィードバック制御機構を有する装置の場合の好適な実施形態においては、剥削装置(10)の近位端(14)は、同軸または同心に配置された2つの電極を含む(図3Bおよび3C参照)。本実施形態においては、剥削装置(10)の近位端(14)は、第1の電極、またはソース電極(42)および第2の電極、またはリターン電極(44)の両方を含む。剥削装置の近位端(14)の平面図を見ると、ソース電極は剥削装置の近位端の中心に位置している。ソース電極は空気で満たされた空間(26)に囲まれており、この空間はリターン電極(44)に囲まれている。図3Bは、剥削用チップが導電性材料で形成されソース電極としても機能する実施形態を示す。図3Cは、剥削用チップが非導電性材料で形成され、通常はワイヤーの形態であるソース電極が剥削用材料に挿入されている実施形態を示す。
【0038】
この同軸または同心配置においては、第2の電極、またはリターン電極(44)は、ハンドピースの近位端(14)の外壁(21)内に位置している。剥削装置の近位端(14)の平面図を見ると、リターン電極(44)が装置の外側リングを形成している(図3Bおよび3C参照)。
【0039】
外部フィードバック制御機構を有する装置の場合の別の実施形態においては、第2の電極、またはリターン電極(44)は制御型剥削装置(例えば、図1参照)から分離している。第2の電極の位置は、第1の電極の位置に近接していても第1の電極の位置から離れていてもよい。
【0040】
b.フィードバック制御機構
フィードバック制御機構(30)は、(i)剥削される/されている皮膚の部位(本明細書においては「皮膚剥削の部位」とする)に、皮膚剥削の部位において定期的にまたは連続して皮膚の電気的コンダクタンスを測定するために配置される第1の電極(42)、(ii)少なくとも1つの第2の電極(44)であり、皮膚剥削の部位から離れた部位に位置してもよく、皮膚剥削の部位に近接して位置してもよく、皮膚剥削の部位に接触して位置してもよい電極、および(iii)制御装置(32)の使用を伴う。制御装置は、適切なアルゴリズムまたは信号処理を用いて電極(42および44)が提供する導電率情報に対して数学的解析を実行するとともに、皮膚コンダクタンスの動態を計算する。制御装置は更に、剥削装置(10)を制御する。
【0041】
剥削装置が皮膚に適用されている間は皮膚を介したコンダクタンスの動的変化がリアルタイムで測定される。測定値に基づいて信号処理が実行され、動的数学的解析を実行することによって皮膚透過のレベルが制御される。こうした解析の結果は、皮膚インピーダンスの望ましいレベルを達成するために剥削装置の適用を制御するのに使用される。皮膚インピーダンスの望ましいレベルは、所定値に設定することが可能である。あるいは、皮膚インピーダンスのレベルは、皮膚完全性の望ましいレベル、対象の不快感、または適用継続時間に基づいて選択することが可能である。
【0042】
制御型皮膚透過用のリアルタイムアルゴリズムの例が、Elstrom他に付与された米国特許第6,887,239号に記載されており、図4〜7に明示されている。Elstrom他に付与された米国特許第6,887,239号は、部位が透過促進処理を受ける場合の皮膚表面の透過性を制御する一般的方法を記載している。
【0043】
図4は、望ましい透過性レベルを達成するための皮膚表面上のエリアの制御剥削の方法のフローチャートである。ステップ108で言及されている皮膚透過装置は、本明細書において記載した剥削装置である。ただし、本明細書において記載した制御型フィードバック機構を用いるように代替的透過装置および方法を改変してもよい。代替的透過方法としては、テープ剥離、摩擦、研磨、剥削、レーザーアブレーション、高周波(RF:radio frequency)アブレーション、化学物質、超音波導入(sonophoresis)、イオントフォレシス、エレクトロポレーション、および熱アブレーションが挙げられる。ステップ102において、第1の電極、またはソース電極が透過の望まれる皮膚の第1のエリアと電気的に接触した状態で結合される。
【0044】
次に、ステップ104において、第2の電極、またはリターン電極が皮膚の第2のエリアに電気的に接触した状態で結合される。この皮膚の第2のエリアは皮膚剥削の部位から離れた部位に位置していてもよく、皮膚剥削の部位に近接していてもよく、皮膚剥削の部位内にあってもよい。
【0045】
2つの電極が適切に位置決めされると、ステップ106において、2つの電極間の初期導電率が測定される。これは、電気信号を電極を通じて皮膚エリアに適用することによって達成されてもよい。一実施形態においては、電気信号は皮膚の電気的パラメータが測定できるように十分な強度とすることが可能であるが、電気信号が皮膚の永久的損傷またはその他の任意の有害作用を生じないように強度は適切に低くすることも可能である。一実施形態においては、ソース電極とリターン電極との間に電圧差を生じさせるために周波数が10〜100HzのAC電源が用いられる。供給される電圧は、500mVを超えるべきではなく、好ましくは、100mVを超えるべきではない。さもないと皮膚を損傷する危険がある。電流の大きさも適切に制限してよい。適切な回路網を用いて電源を適用した後に初期導電率測定が行われる。別の実施形態においては、10〜100Hzの周波数で皮膚のエリアのインピーダンスを測定するのに抵抗センサーが用いられる。別の実施形態においては、類似のまたは異なる刺激を用いて二重または多重AC周波数電源を用いた二重または多重測定が行われてもよい。別の実施形態においては、1kHz電源が用いられる。その他の周波数の電源も可能である。
【0046】
ステップ108において、剥削装置が第1の部位において皮膚に適用される。
【0047】
ステップ110において、2つの電極間の導電率が測定される。導電率は周期的に測定されてもよく、連続して測定されてもよい。初期導電率測定を行うのに用いたのと同じ電極設定を用いてモニタリング測定が行われる。
【0048】
ステップ112において、皮膚コンダクタンスデータの時間差異に対して数学的解析および/または信号処理を実行することができる。皮膚導電率は、一定期間毎に、例えば透過処理中1秒に1回、または連続して測定することが可能である
コンダクタンスデータのプロット後、グラフはS字形曲線に類似したものとなり、これは以下の一般的なS字形曲線式(式1)によって表すことが可能である:
C=Ci+(Cf−Ci)/(1+e−S(t−t*)) 式1
ただし、Cは電流;Ciはt=0における電流;Cfは最終電流;Sは感度定数;t*は変曲点を得るために必要な曝露時間;およびtは曝露時間である。
【0049】
図5は、時間に沿った電流のプロットという形態の典型的データセットを含む。図5は、剥削装置を用いて処理されている間の皮膚コンダクタンスの時間変化データを明示する。図5において、導電率(電流カウント、実線)は、試験対象に対する皮膚透過処置中連続して測定されたものである。
【0050】
式1のt*の値は、変曲点(すなわち、曲線の傾きが符号を変える点)を得るために必要な曝露時間に対応し、図4に表示されたデータに基づく625という値を有する一次導関数のピークに一致する。
【0051】
図6は、透過ステップをいつ終了するかを判定する方法を示すフローチャートである。図7A、B、およびCは、図6のフローチャートにおけるステップ対応する典型的グラフである。図6のステップ302において、A/D変換が導電率データに対して実行される。これにより図7Aに示すグラフに類似したグラフが結果として得られる。次に、ステップ304において、デジタルデータに対してフィルタリングが実行される。図7Bに示すように、フィルタリングされたデータは図7Aのフィルタリングされていないデータよりも滑らかな曲線となる。次に、ステップ306において、曲線の傾きが計算される。ステップ308において、傾きの最大値が保存される。それに続く測定において得られた傾きに対する電流値が保存された最大値よりも大きい場合、最大値はこの電流値に置き換えられる。次に、ステップ310において、傾きが最大値以上の場合は、プロセスはステップ302に戻りピークを待つ。傾きが最大値以下である場合は、ステップ312においてプロセスは図7Cに「X」と印をつけたピークまたは変曲点を検出する。そして、ステップ314において、装置は皮膚への剥削力の付加を終了する。
【0052】
一実施形態においては、ピークの検出を認証され得る。この追加ステップは、ステップ312において検出された「ピーク」が単なるノイズではなく実際にピークであったことを確認するために提供することができる。
【0053】
その他の実施形態においては、変曲点、すなわち「ピーク」に到達した後でも剥削力を加え続けてもよい。別の実施形態においては、傾きが或る値に減少するまで剥削力が加えられる。図5を参照すると、変曲点に到達した後、剥削力が加えられていても傾きは減少している(破線参照)。従って、傾きが導電率曲線の一次導関数の最大値の予め設定した割合だけ、例えば50%減少するまで、または所定の値に減少するまで剥削力を加え続けてもよい。上記のように、この判定は柔軟であり、個体ごとによって変わってもよい。同様に、図5に示すように、リアルタイムの導電率曲線の一次導関数が計算され(図6のステップ306)、最大値が625であることがわかった(ステップ308および312)。この曲線の場合のオフセット(すなわちベースライン)は、およそ17であった(ΔI/ΔT)。図5に表示したデータの場合、透過ステップの終了時点が導電率曲線の一次導関数の最大値の50%に予め決められていた場合には、一次導関数値が321(オフセットに対して補正されたデータ)に到達したときに装置は自動的に停止し、皮膚透過が完了したことを示す。その他の割合を使用してもよく、割合は痛覚閾値および皮膚特性を含む要因に基づいてもよい。
【0054】
別の実施形態においては、終了時点は所定時間に設定される。この所定時間は、変曲点に到達するための時間の割合に基づいてもよい。例えば、変曲点に到達したら、変曲点に到達するのに要した時間の50%の時間、さらに剥削装置の適用を続けるのである(例えば、図5参照)。従って、変曲点に到達するまでに14秒かかった場合は、更に7秒間剥削を適用する(図には示さず)。その他の割合を使用してもよく、割合は痛覚閾値および皮膚特性を含む要因に基づいてもよい。
【0055】
別の実施形態においては、変曲点における電流が測定され、この電流の予め決められた割合分剥削用チップの適用が続けられる。例えば、40μAで変曲点に到達し、変曲点での電流の現在の割合分、例えば変曲点での電流の10%分だけ剥削用チップを続ける場合は、剥削用チップは合計44μAの電流に到達するまで適用されることになる。ここでもこの判定は柔軟であり、個体ごとによって変わってもよい。
【0056】
図4を参照すると、ステップ114において、皮膚インピーダンス(またはコンダクタンス)の変化の動態を記述するパラメータが計算される。これらのパラメータとしては、とりわけ、皮膚インピーダンス、皮膚インピーダンスの時間変化、初期皮膚インピーダンス、皮膚インピーダンスの移動平均、最大皮膚インピーダンス、最小皮膚インピーダンス、皮膚インピーダンスの任意の数学的計算値、最終皮膚インピーダンス、変曲時点の皮膚インピーダンス、電流カウント、最終電流、変曲時間を得るための曝露時間などが挙げられる。
【0057】
ステップ116において、皮膚コンダクタンスを記述するパラメータの望ましい値が達成されるとステップ108において適用された皮膚透過装置が停止される。
【0058】
c.電気モータ
電気モータ(50)がハンドピース(12)内に位置している。剥削用チップ(20)は直接または間接的にモータ(50)と接続し、それによって、制御型剥削装置を作動させたときにモータが振動(oscillation)または回転によって剥削用チップを動かすことが可能となる。
【0059】
電気モータは、主にACおよびDCモータの2種類が利用可能である。これらは回転式またはリニア式のどちらかである。
【0060】
好ましくは、モータ(50)は回転式のDCモータである。好適な実施形態においては、より高価な希土類金属を構造物に利用している「ブラシレス」モータに比べて標準的なパワーサプライ(すなわち直流バッテリー)で比較的容易に使用できる点、および入手可能性から、モータは、回転式ブラシDCモータである。ただし、装置と共にブラシレスモータを使用することもできる。
【0061】
モータは、直線的、振動(vibration)、同心性、同軸(co−axle)、および非同軸(off−axle)運動など、様々な運動パターンを生みだすことが可能である。加えて、モータは例えば0.01〜10,000rpsまたはHzに及ぶ様々な運動速度を生みだすことが可能である。
【0062】
d.剥削用チップに力を供給する手段
本好適な実施形態においては、制御型剥削装置を作動させたときに剥削用チップと皮膚との接触を確実に保つため、制御型剥削装置は剥削用チップに力を供給する手段を1以上含む。好適な手段としては、剥削用チップが皮膚表面に接触したときに剥削用チップに下向きの(すなわち皮膚表面に向かう方向の)力を供給するバネ(16)を装填したモータ軸またはカプラが挙げられる(図3A参照)。
【0063】
図3Aに示すように、剥削用チップが皮膚に押しつけられるとバネ(16)は収縮する。バネが収縮すると、ハンドピース(12)の近位端(14)が皮膚の表面に近づき、リターン電極(44)を皮膚に接触させる。従って、この位置で、ソース電極(42)、剥削用チップ(20)およびリターン電極(44)が皮膚表面に接触している。
【0064】
e.リターン電極
上記のように、装置は通常リターン電極(44)として機能する少なくとも1つの第2の電極を含む(例えば、図1、2A、2B、および3A〜D参照)。装置が内部フィードバック制御機構を含むように設計されている場合、リターン電極は剥削用チップ内に位置する(図2Aおよび2B参照)。しかし、装置が外部フィードバック制御機構を含むように設計されている場合は、リターン電極は皮膚剥削の部位とは異なる皮膚表面上の部位に配置される(図1および図3A〜C参照)。リターン電極は、皮膚剥削の部位から離れた皮膚上の部位に配置してもよい(例えば、図1参照)。あるいは、リターン電極は皮膚剥削の部位に近接した皮膚上の部位に配置してもよい(例えば、図3A〜C参照)。図1に示すように、リターン電極(44)は、制御装置と電気的に接触するとともに、第1の電極(42)と電気的に接触する。図3Aに示すように、リターン電極(44)は装置に組み込まれてもよい。リターン電極(44)は制御装置に電気的に接触するとともに、第1の電極(42)に電気的に接触する。
【0065】
透過すべき部位から離れた部位にあるリターン電極を有するこうした装置の信頼性は、リターン電極は十分な電気伝導度を有する皮膚部位上に位置する場合のみ正確なフィードバックを提供可能であることから、疑わしい場合がある。従って、本好適な実施形態においては、リターン電極は剥削用チップ上に位置している。本実施形態においては、リターン電極は透過すべき皮膚にも接触している。
【0066】
外部フィードバック制御機構の場合の好適な実施形態においては、第1の電極と同軸または同心に配置されたリターン電極(44)。本実施形態においては、第2の電極、またはリターン電極(44)はハンドピースの近位端(14)の外壁(21)内に位置しており、ソース電極と剥削用チップを囲む外側リングを形成している(図3Bおよび3C参照)。装置の中心から外方向に移動すると、剥削用チップおよびソース電極は剥削用チップが取り付けられたプラスチックチューブ(24)に取り囲まれ、プラスチックチューブは空気で満たされた空隙または空間(26)に囲まれ、空隙はリターン電極(44)として機能する導電性材料に囲まれたプラスチックカップまたはコーン(27)に囲まれている。
II.被検体検知用システム
本明細書に記載した制御型剥削装置は、体液内に存在する1以上の目的とする被検体のレベルを検出するための被検体センサーと組み合わせることが可能である。体液は、物理的力、化学的力、生物的力、減圧、電気的力、浸透圧力、拡散力、電磁力、超音波力、キャビテーション力、機械的力、熱的力、毛細管力、皮膚を横切る流体循環、電気音響力、磁力、マグネト流体力学の力、音響力、対流分散、光音響力、皮膚から体液を洗い流すこと、およびこれらの任意の組合せによって抽出することができる。体液は、吸収、吸着、相分離、機械的、電気的、化学的誘発、およびこれらの組合せを含む採取方法によって採取してもよい。被検体の存在は、電気化学的技術、光学的技術、音響的技術、生物学的技術、酵素的技術、およびこれらの組合せを含む検知方法によって検知してもよい。
【0067】
例えば、皮膚部位において望ましいレベルの透過性を実現するために制御型剥削装置を使用した後、グルコースセンサー装置などの被検体センサーを剥削システムによって処理された皮膚部位上に配置してよい。グルコースセンサーは皮膚を通して連続的にグルコースフラックスを受け取ることによって機能する。これに応じて装置はナノアンペア(nA)単位の電気信号を提供し、電気信号は市販の指先穿刺グルコース測定器を用いて対象の参照血中グルコース(BG)値に較正される。制御型剥削システムと血中グルコースセンサーとの組合せは、以下の実施例において記載する。
【0068】
上記の例ではグルコース検知に言及しているが、同じ方法を用いてその他の被検体を解析することも可能である。被検体は、血液、血漿、血清または間質液など、生体液内に存在する任意の分子または生物学的種でよい。モニターすべき被検体は、任意の目的とする被検体とすることが可能であり、グルコース、ラクテート、血液ガス(例えば、二酸化炭素または酸素)、血液pH、電解質、アンモニア、タンパク質、バイオマーカーまたはその他任意の生体液内に存在する生物学的種を含むが、これに限らない。
III.薬物送達用システム
本明細書に記載した制御型剥削装置は、対象に薬物を経皮的に送達するための薬物送達組成物または装置と組み合わせることが可能である。薬物は任意好適な形態の任意好適な治療用、予防用、または診断用分子または薬剤でよい。薬物は液体、固体、半固体に溶解または懸濁させてもよく、微粒子もしくはナノ粒子、エマルション、リポソーム、または脂質小胞内または内部に封入および/または分布させてもよい。薬物送達は、血液、リンパ液、間質液、細胞、組織、および/または臓器、またはこれらの任意の組合せに対して行うことができる。薬物は通常全身的に送達される。
【0069】
例えば、皮膚部位において望ましいレベルの透過性を実現するために制御型剥削装置を使用した後、投与すべき薬物を含有する軟膏、クリーム、ゲルまたはパッチなどの薬物送達組成物または器具を剥削システムによって処理された皮膚部位上に配置することができる。
【0070】
あるいは、薬物は剥削用チップに適用される湿潤化液に含まれてもよい。本実施形態においては、表面を剥削するのと同時に薬物を投与することができる。
IV.キット
制御型剥削用のキットは、上記の剥削装置と、1以上の剥削用チップを備える。必要に応じ、キットは適切な容器に封入された、剥削用チップに添加する湿潤化液を備える。別の実施形態においては、湿潤化液は該1以上の剥削用チップに予め塗布され、剥削用チップの湿度を保つために封入される。更に別の実施形態においては、キットは湿潤化液を含有する1以上の予め湿らせた清拭具を備える。
【0071】
装置が使い捨ての剥削チップを利用する場合、好ましくはキットは1以上の使い捨てのプラスチックカップまたはコーン(27)を更に含む。好ましくは、使い捨ての剥削用チップは、ハンドピースに適当にあわさりおよびそれと接続するように設計されたチューブ(24)に取り付けられている。
【0072】
剥削装置が外部フィードバック制御機構を含むように設計されている場合、キットは1以上のリターン電極を更に備える。
V.皮膚インピーダンスを低下少させる方法
A.制御型剥削装置
本明細書に記載した制御型剥削装置は、対象の皮膚の表面に適用し、皮膚透過処理を行なわず純水で濡らした後に測定した皮膚インピーダンスと比較して30倍以上皮膚インピーダンスを低下させることが可能である。皮膚透過処理を行なわずに純水で濡らした後の典型的な皮膚インピーダンス測定値は、濡らした皮膚上に約1cm以内の距離で2つの電極を配置して測定した場合、およそ300kΩ(ohm)以上である。制御型剥削装置を用いて皮膚の同じエリアの処理を行った後では、インピーダンス値はおよそ10kΩ以下に低下させることが可能である。
【0073】
剥削用チップは通常短期間、最大90秒間、例えば1〜30秒間、好ましくは5〜25秒間適用される。皮膚インピーダンス(またはコンダクタンス)の好ましいレベル、ひいては結果として得られる被処理部位の透過性は、所定値に設定可能である。あるいは、皮膚インピーダンス(またはコンダクタンス)のレベルは、上記のように皮膚完全性の望ましいレベル、対象の不快感、または適用継続期間に基づいて選択することが可能である。
【0074】
望ましい透過性のレベルに到達したら、剥削装置を取り除き、薬物送達組成物もしくは装置、または被検体センサーを被処理部位に適用する。剥削後の皮膚に薬物送達系を適用後、即座に薬物送達を進めることが可能である。同様の様式で、被検体センサーを皮膚に適用後すぐ、被検体は体からおよび被検体センサー内に拡散可能である。しかし、被検体の正確な値は通常「ウォームアップ」期間(すなわち経皮の被検体フラックスが平衡に達し、センサーが皮膚媒介被検体および、場合によってはその他の干渉種を消費し、センサーの皮膚部位への物理的結合が安定するまでの時間)の間は得られない。ウォームアップ期間は通常被検体センサーの調整部位への適用後およそ1時間続く。
【0075】
剥削装置の適用後、適用部位は通常最大24時間、一部の実施形態においては、最大72時間透過状態を保つ。
【0076】
B.その他の透過装置
皮膚透過の望ましいレベルを実現するために本明細書に記載した制御型剥削装置に代えて他の透過装置および技法を使用してもよい。例えば、フィードバック制御機構は、テープ剥離、摩擦、研磨、剥削、レーザーアブレーション、高周波(RF)アブレーション、化学物質、超音波導入、イオントフォレシス、エレクトロポレーション、および熱アブレーションなどの他の皮膚調整方法と組み合わせることが可能である。
【実施例】
【0077】
(実施例1:2種類の皮膚透過方法の比較:超音波導入および剥削)
6人の対象による24時間調査において、図4に示すものと同じ制御アルゴリズム使用し、剥削方法の性能をElstrom他に付与された米国特許第6,887,239号に記載の超音波導入方法と比較した。各対象は胸部または腹部に1カ所の剥削部位および1カ所の超音波処理部位を有した。
【0078】
制御型剥削システムの場合、図1に記載の剥削装置を患者の皮膚に導電率フィードバック閾値が得られるまで5〜25秒間適用した(以前I.b.フィードバック制御機構のセクションに記載したように)。
【0079】
制御型超音波導入システムの場合、Sontra SonoPrep(登録商標)超音波皮膚透過装置を用いて周波数55kHzで超音波を患者の皮膚に5〜30秒間照射した。超音波は導電率フィードバック閾値が得られるまで照射した(以前I.b.フィードバック制御機構のセクションに記載したように)。
【0080】
制御型剥削または超音波導入で調整した2カ所の標的皮膚部位上それぞれにグルコースセンサーユニットを配置した。調査の過程全体を通し、覚醒時間は1時間おきに、または食事時間に近い時間帯では15分おきに指先穿刺血中グルコース(「BG」)サンプルを採取し、センサーの電気信号と関連づけた。
【0081】
この相関の解析によって、装置の精度、一貫性および性能が実効である時間長に関する情報が得られる。
【0082】
図8は、試験対象に対して剥削システムを用いて皮膚を透過させ、続いて継続的経皮グルコース検知を行って得られた結果のグラフである。表1は、剥削と超音波処理との持続的グルコースモニタリングのための皮膚透過手段としての直接比較結果を示す。表1は、6人の対象から得られたデータに基づく平均値を示す。
【0083】
【表1】
【0084】
指先穿刺を用いた市販の血中グルコース測定器によって参照血中グルコース(参照BG)値を測定した。参照BG値に基づいてグルコースセンサーに対して較正を1.2時間と9.1時間(図8に「較正点」と表示)の2回行った。センサーグルコース示度(予測BG)の参照血中グルコース(参照BG)との高い近似は、経皮グルコースセンサーの高い精度を表すものである。参照BGと予測BGとの間の24時間平均絶対相対差(Mean Absolute Relative Difference)(MARD)は11.9mg/dlであった。
【0085】
制御型剥削装置を用いた透過の場合、平均24時間MARDが11.7mg/dlであり、信号ドリフトが31%であった。制御型超音波導入システムの場合、平均24時間MARDが13.1mg/dlであり、信号ドリフトが26%であった。従って、制御型剥削装置は、ウォームアップ時間(1時間)、精度(mg/dl単位でのセンサー予測グルコースと参照BGとの間のMARD(平均絶対相対差))、およびドリフト(センサーグルコースおよび参照BGの時間依存%偏差)、ならびにクラーク誤差グリット解析に基づく「A領域」におけるデータ分散の割合(「A領域%」)に関して、超音波導入システムに匹敵するかまたは、場合によっては、超音波導入システムよりも良好な追随性(BGに対するnAの相関)を実現した。
【0086】
(実施例2:剥削装置の適用に続く皮膚のインピーダンスの低下)
ヒトの皮膚を純水で濡らすと、濡らした皮膚上に約1cm以内の距離で2つの電極を配置して測定した場合、インピーダンス値は通常300kΩ以上である。しかし、同じエリアを図1に示す制御アルゴリズムを用いた制御型剥削装置を用いて処理し、装置を皮膚表面上に5〜25秒間配置して装置の適用と同時にインピーダンス値を得ることによって、インピーダンス値はおよそ10kΩ以下にまで大幅に低下した。本調査において、剥削用チップはABSベース上にコーティングした白色酸化アルミニウム(120グリット)を含んでいた。
【0087】
他様に定義しない限り、本明細書において使用した技術用語および科学用語は全て本開示した発明が属する分野の当業者が一般に理解するものと同じ意味を有する。本明細書において引用した出版物およびそれらに引用された材料は、参照することによって具体的に組み込まれる。
【0088】
当業者は、これ以上の通常の実験を用いずに本明細書において記載した本発明の具体的実施形態の多くの均等物を認識する、または確認できる。こうした均等物は、以下の特許請求の範囲に包括されることが意図される。
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、被検体(analyte)の経皮での検知または薬物送達のための装置および方法の分野に関する。
【0002】
(関連出願の引用)
本願は、2007年4月27日に出願された「Device for Permeabilizing Skin for Analyte Sensing or Transdermal Drug Delivery」との題名のU.S.S.N.60/914,552に対する優先権を主張する。
【背景技術】
【0003】
(発明の背景)
一般に、皮膚を通じた薬物の透過は、起こるとしても非常にゆっくりとした速度で進行する。このプロセスにおける主な律速ステップは、角質層と呼ばれる皮膚の最外層を化合物が通過することである。角質層は不透過層として作用する死んだ細胞の薄い層であり、この層の内外で大きな違いを生む。角質層は主に皮膚のバリア機能を担っている。角質層を除去する、または変化させると多くの物質に対する透過性が高まる、すなわち物質が皮膚内へまたは皮膚からより容易に拡散可能になるものと長い間認識されてきた。皮膚のバリア機能は、薬物の経皮投与または体液の皮膚を通しての採取に関心のある医薬品製造業者にとっては非常に大きな問題となる。
【0004】
ヒトの皮膚を介しての電気信号および生体物質の授受もまた、角質層によって阻害される。例えば、皮膚を介して測定された生体電位および電流の信号忠実度は、角質層の高いインピーダンスによって悪化する。従って、この高いインピーダンスが、ヒトの細胞、臓器、および組織からの生体電気信号の理想的な送信信号および測定値を皮膚を介して受信する際の障害となる。
【0005】
角質層の除去は皮膚の高いインピーダンスを低下させ、ヒト組織の中へのおよびヒト組織からの電気信号または生物学的種のより良好な授受を可能にする。電磁エネルギーによって誘発された角質層の変化が物質に対する透過性を高めることも実証されてきた(例えば、Yaegashiに付与された米国特許第6,315,722号(特許文献1)、Flock他に付与された米国特許第6,251,100号(特許文献2)、Marchitto他に付与された米国特許第6,056,738号(特許文献3)、およびWaner他に付与された米国特許第5,643,252号(特許文献4)参照)。あるいは、角質層を透過させるために一般には「透過促進剤」と言われる化合物の使用が可能であり、成功した例もみられる。従来のアプローチは、サンドペーパーおよびブラシを用いた皮膚の剥削(abration)、テープおよび有毒化学物質を用いた皮膚の剥離、レーザーまたは熱アブレーションによる角質層の除去、または針を用いた皮膚の穿刺を必要とする。これらの方法による皮膚の調整(preparation)は対象にとっては極めて不安定で危険、かつ痛みを伴うものであって、一般的には不便なものである。
【0006】
皮膚を介した薬物送達または被検体の抽出のための皮膚の調整を行う従来のアプローチは、皮膚の調整の程度を制御するための外部フィードバック機構を必要とする。実際には、制御された皮膚の調整のためのフィードバック機構を有効にするには導電性伝達媒質(conductive coupling medium)、リターン電極および/またはヒドロゲルパッチが一般的には必要である(例えば、Marchitto他による米国特許公開第20060100567号、およびMarchitto他による米国特許公開第20030204329号参照)。こうした装置およびシステムの信頼性は、リターン電極は十分な導電率を有する皮膚部位上に置かれた場合のみ正確なフィードバックを提供し得ることから、疑わしい場合がある。残念なことに、皮膚の導電率は、年齢、位置、日光曝露、ローションの使用、湿気レベル、および周囲の状態など様々な条件によって変化する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第6,315,722号明細書
【特許文献2】米国特許第6,251,100号明細書
【特許文献3】米国特許第6,056,738号明細書
【特許文献4】米国特許第5,643,252号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って、皮膚の高いインピーダンスを低下させる改良型のシステムが必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の目的は、皮膚の高いインピーダンスを低下させる改良型のシステムを提供することである。
【0010】
本発明の別の目的は、皮膚のインピーダンスを測定する改良型の方法を提供することである。
【0011】
本発明の更に別の目的は、改良型の経皮薬物送達および/または被検体検知システムを提供することである。
【0012】
(発明の概要)
皮膚の透過性を高める装置、システム、キットおよび方法が本明細書に記載される。これらは経皮的薬物送達および/または被検体抽出および測定に使用することができる。制御型剥削装置は、(i)ハンドピース、(ii)剥削用チップ、(iii)フィードバック制御機構、(iv)2以上の電極、および(v)電気モータを含む。好ましくは、フィードバック制御機構は内部フィードバック制御器である。本実施形態においては、剥削用チップが2つの電極、すなわちソース電極およびリターン電極の両方を含む。別の実施形態においては、フィードバック制御機構が外部フィードバック制御器である。外部フィードバック制御器の場合の本好適な実施形態においては、装置が該2つの電極の同軸または同心配置を含む。本実施形態においては、ソース電極とリターン電極を含む剥削用チップがハンドピースの近位端に位置している。剥削用チップは、皮膚を剥削可能な表面を有する任意の材料で製造することが可能である。材料は、導電性または非導電性とすることが可能である。本好適な実施形態においては、材料は導電性材料である。必要に応じ、皮膚への適用に先立ち剥削用チップを湿潤化液で濡らす。制御型剥削装置は、キットに備えることができ、その場合、キットは該装置、1以上の剥削用チップおよび、必要に応じて湿潤化液を含む。一実施形態においては、剥削用チップは湿潤化液で湿らせてあり、チップの湿潤化液を保持するために容器に密封される。別の実施形態においては、湿潤化液は、別容器に入れて、または予め包装した清拭具などの素材に含ませて供給される。皮膚の透過性を増す方法は、制御型剥削装置を皮膚の表面の一部分に短時間、例えば最大30秒間適用することを含む。皮膚のインピーダンスまたはコンダクタンスの望ましいレベル、ひいては結果として得られる被処理部位の透過性は、所定値として設定可能である。
【0013】
あるいは、皮膚のインピーダンスまたはコンダクタンスのレベルは、皮膚完全性の望ましいレベル、対象の不快感、または適用継続時間に基づいて選択可能である。装置は、フィードバック制御機構の一部としてフィードバック回路を含み、これはいつ皮膚が望ましい透過性レベルに到達したかを判定するために導電率情報に基づく適切なアルゴリズムまたは信号処理を用いる。望ましい透過性レベルに到達すると、剥削装置は取り除かれ、薬物送達組成物もしくは装置または被検体センサーのいずれかが被処理部位に適用される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は、外部フィードバック制御機構を用いた例示的制御型剥削装置を示す。
【図2】図2Aおよび図2Bは、内部フィードバック制御器用の2つの電極を含む剥削用チップの図である。図2Aは、剥削装置と関連させて示した剥削用チップの正面図および分解図を含む。図2Bは、皮膚表面に接触させた状態を示した剥削用チップの側面図である。
【図3A】図3Aは、外部フィードバック制御機構を用いた制御型剥削装置の図であり、制御型剥削装置の断面図であって、皮膚を通過し装置内に至る電流路を示している。
【図3B】図3Bは、外部フィードバック制御機構を用いた制御型剥削装置の図であり、2つの電極の同軸または同心配置を示す制御型剥削装置の近位端の底平面図であって、ソース電極としても機能する剥削用チップを示す。
【図3C】図3Cは、外部フィードバック制御機構を用いた制御型剥削装置の図であり、2つの電極の同軸または同心配置を示す制御型剥削装置の近位端の底平面図であって、導電素子が挿入され、導電素子がソース電極として作用する剥削用チップを示す。
【図3D】図3Dは、外部フィードバック制御機構を用いた制御型剥削装置の図であり、使い捨ての剥削用チップの近位端の断面図であって、ソース電極と剥削用チップからモータ軸への導電路を与えるバネとの接触を示す。
【図4】図4は、望ましい透過性レベルを実現するために皮膚表面上のエリアの剥削を制御する方法のフローチャートである。
【図5】図5は、制御型剥削装置を皮膚に適用している間の皮膚導電率の時間変化(I,カウント単位の)のグラフである。実線は時間(秒)に対するカウント(1カウント=0.0125μA(Amp))のグラフ(実線)であり;破線は導電率曲線の一次導関数のグラフ、すなわち時間(秒)に対するΔI/ΔT(カウント/秒)である;水平破線は一次導関数の最大値を表す。
【図6】図6は、透過ステップをいつ終了すべきか判定する方法を示すフローチャートである。
【図7A】図7Aは、図6のフローチャートのステップに対応する典型的グラフである。
【図7B】図7Bは、図6のフローチャートのステップに対応する典型的グラフである。
【図7C】図7Cは、図6のフローチャートのステップに対応する典型的グラフである。
【図8】図8は、皮膚を透過させるために試験対象に対して剥削システムを用い、続いて継続的経皮グルコースモニタリングを行って得られた結果の血中グルコースレベル(mg/dL)対時間(時間)のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(発明の詳細な説明)
本明細書に記載した装置、システム、キットおよび方法は、皮膚の透過性を高める便利で迅速、経済的、かつ最小侵襲のシステムおよび方法を提供する。これらの装置、システム、キットおよび方法は、経皮的薬物送達および/または被検体測定に用いることができる。
I.制御型剥削装置
制御型剥削装置(10)が図1に示されている。装置は、(i)ハンドピース(12)、(ii)剥削用チップ(20)、(iii)フィードバック制御機構(30)、(iv)2以上の電極(40)、および(v)電気モータ(50)を含む。装置は、追加の制御器および/またはユーザーインターフェースを含んでもよい。
【0016】
図1および3A〜Dに示す装置は、外部フィードバック制御機構を有する。好ましくは、フィードバック制御機構は内部フィードバック制御機構である。内部フィードバック制御機構を有する例示的制御型剥削装置を図2Aに示す。
【0017】
a.剥削用チップ
剥削用チップ(20)は、再利用可能でも使い捨てでもよい。再利用可能である場合、剥削用チップは使用後再利用されるまでの間にクリーニングされるように設計される。好適な実施形態においては、剥削用チップは使い捨てである。
【0018】
使い捨ての剥削用チップは、ハンドピースの近位端に任意好適な接続手段によって脱着可能である。
【0019】
使い捨ての剥削用チップの好適な実施形態を図3Aおよび3Dに示す。好適な実施形態においては、使い捨ての剥削用チップはチューブ(24)、好ましくは、プラスチックチューブに取り付けられる。チューブ(24)は、プラスチックカップまたはコーン(27)の中心空隙であって、該チューブを受容するように成形されるとともに、装置を作動させたときには該チップが動くことを可能にする中心空隙に挿入される(図3D参照)。カップまたはコーン(24)は、流体がハンドピース(12)に接触するのを防ぐように設計され、使用後のハンドピースのクリーニングを最低限または不要にする。本好適な実施形態においては、カップまたはコーン(24)の開口部(25)がハンドピース(12)の近位端(14)の外壁(21)の内側にぴったりと収まる(図3D参照)。本好適な実施形態においては、外壁(21)がリターン電極(44)として機能する導電性材料を含む。
【0020】
i.材料
剥削用チップは、皮膚の剥削が可能な表面を有する任意の材料、例えばサンドペーパー、美容用マイクロダーマブレーションで用いられ、通常は100%医療グレードナイロン製であって複数のコーティングおよび仕上げ層を有する皮膚用グレード織物などの粗目布、ワイヤーブラシ、炭素繊維、または極微針で製造することが可能である。材料は導電性とすることも非導電性とすることも可能である。例えば、非導電性材料である白色酸化アルミニウムは医療グレードでも低コストで容易に入手可能である。この材料は剥削用チップを製造するための大量化合/生産(high volume binding/fabrication)に必要であり得るガラス化プロセスにおいて通常現れるような高温に耐えることが可能である。一部の実施形態においては、酸化アルミニウムよりも皮膚を刺激しないように酸化アルミニウムよりも柔らかい材料が好ましい。剥削用材料として、酸化アルミニウムに代えてポリマービーズを使用してもよい。一般に、ポリマービーズは、酸化アルミニウムよりも柔らかく、刺激の少ない材料となる。材料の採択は、処置される特定個体および処置の目的に基づいて決められる。従って、個体によって異なる材料を上に挙げた材料に代えて使用してもよい。
【0021】
工学的設計が適切であれば、剥削用チップにおける剥削用材料として導電性材料を使用することも可能である。好適な導電性材料としては、金属、炭素、導電性ポリマーおよび導電性エラストマーが挙げられるが、これに限らない。
【0022】
好適な実施形態においては、材料は導電性材料であり、好ましくは、金属、最も好ましくは、ステンレス鋼シートメタルであり、多数の穴または穿孔(22AおよびB)を有する。本実施形態の一例を図3Bに示す。剥削用チップは、材料を打ち抜いて剥削すべき皮膚の面積に合った直径のディスクを形成することによって形成することができる。次いでディスクはドーム形に成形され、チューブ(24)、好ましくは、プラスチックチューブに取り付けられる。
【0023】
ii.寸法
剥削用チップは、任意好適な厚さおよび直径を有することが可能である。一実施形態においては、剥削用粒子がアクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)などのプラスチック基材にコーティングされ、剥削用コーティングの厚さは剥削用粒子のグリットサイズによって規定される。好適な実施形態においては、剥削用粒子のグリットサイズはおよそ120(直径約0.0044インチ、すなわちおよそ120ミクロン)である。グリットサイズが120を超える粒子は挫傷を生じることがわかっているため、グリットサイズは通常120以下である。
【0024】
通常、剥削用チップは0.5ミクロン〜150ミクロンの範囲、好ましくは、15ミクロン〜120ミクロンの範囲の厚さとなる。
【0025】
チップは、任意好適な形または幾何形状とすることが可能である。通常、円形の断面を有する。チップのサイズは、剥削によって透過性とすべきエリアのサイズに依存する。例えば、小さな透過性化エリアを必要とする用途の場合は、剥削用チップは数マイクロメートル以下、例えば1〜25マイクロメートルの直径とすることが可能である。より大きな透過性化エリアを必要とする用途の場合は、剥削用チップは数インチ以下、例えば0.1〜5インチの直径とすることが可能である。
【0026】
iii.湿潤化液
剥削用チップを濡らすことによって皮膚に至る導電路を確保するために湿潤化液が必要になるかどうかは、剥削用チップ材料の電気伝導度次第である。湿潤化液は、水、塩類、イオン性または非イオン性界面活性剤、防腐剤、アルコール、グリセロール、ゲル、およびその他類似の薬剤など、任意好適な薬剤を含有してもよい。所望の用途応じてこれら薬剤の各種混合物を様々な導電率レベルの湿潤化液に調合してもよい。本明細書において使用する場合、「高導電性流体」または「導電率の高い流体」とは、およそ1,000〜およそ100,000μS(Siemens)/cmの導電率を有する流体を意味する。本明細書において使用する場合、「導電率の低い流体」とは、およそ0.1〜およそ999μS/cmの導電率を有する流体を意味する。例えば、図1に記載するような外部フィードバック制御機構の場合、剥削用チップがプラスチックまたは粒状材料などの非導電性材料でできていると、皮膚を貫通する導電路を確保するには高導電性流体が必要である。剥削用チップが金属などの導電性材料でできている場合、導電率の高い湿潤化液、導電率の低い湿潤化液のどちらを使用してもよい。あるいは、金属製剥削用チップそれ自体が十分に導電性であって透過させた皮膚を通る導電路を確保できる場合などは、システムは湿潤化液を必要としないこともある。好適な実施形態においては、外部フィードバック制御機構と共に導電率が500〜50,000μS/cmの湿潤化液が使用される。
【0027】
図2Aおよび2Bに記載したような内部フィードバック制御機構の場合、導電率の低い湿潤化液を使用すべきである。一般に、短絡および装置の誤作動の原因となることが多いため、導電率の高い湿潤化液は避けるべきである。図2Aおよび2Bに示す剥削用チップは、通常非導電性材料で形成される。こうした湿潤化液を使用すると、皮膚が未処理であるときには導電率ベースラインが低くなり、その後皮膚部位を剥削装置によって透過させると導電率が大幅に増加する。
【0028】
好ましくは、湿潤化液は水、塩類、アルコール、グリセロール、非イオン性界面活性剤、防腐剤、ポリエチレングリコール、および/またはこれらの混合物を含有する。導電率の高い湿潤化液の一例は、精製水に0.1〜20%(wt/wt)の塩類、0〜2%(wt/wt)のイオン性界面活性剤、0〜20%(wt/wt)のアルコール、および0〜1%(wt/wt)の防腐剤を含有する。導電率の低い湿潤化液の一例は、精製水に0〜2%の非イオン性界面活性剤、0〜50%のアルコールおよび0〜1%の防腐剤を含有する。
【0029】
必要に応じ、湿潤化液は、対象に送達すべき1種以上の活性薬剤、例えば薬物、診断用薬または予防薬を含有する。こうした湿潤化液は、薬物送達用途において特に有用である。
【0030】
一実施形態においては、剥削用チップは非導電性材料で形成され、湿潤化液は導電率の低い流体である。
【0031】
iv.電極
剥削用チップ(20)は通常、透過すべき組織上の目的とする部位と電気的に接触し、フィードバック制御回路網との連続性を確保するためにモータ(50)と電気的に連通する第1の電極(42)(本明細書においては「ソース電極」とも呼ぶ)を含む。好適な一実施形態においては、剥削用チップはソース電極として機能する導電素子を含むか、またはソース電極として機能する導電性材料で形成されているかのいずれかであり(図3D参照)、ソース電極は剥削用チップ(20)からモータ軸への連続性を確保するためにバネ(28)と接触している。図3Dはソース電極としても機能する剥削用チップの使用を示しているが、それに挿入された少なくとも1つの導電素子を含む非導電性材料で形成された剥削用チップと共に同じバネ構成を使用することが可能である。本実施形態においては、ソース電極は剥削用チップ(20)内で剥削用チップの外面と同じ高さの位置に置かれている。
【0032】
図3Dに示す同じバネ構成を内部制御フィードバック機構を含む装置、例えば図2Aに示すような装置と共に使用することが可能である。
【0033】
外部フィードバック制御機構を含む剥削装置の一部の実施形態においては、剥削用チップは電極を含まない。これらの実施形態においては、第1の電極(42)(またはソース電極)は位置決めリング(60)(例えば、図1参照)内に位置してもよい。
【0034】
電極は、金属および導電性ポリマーといった、任意好適な導電性材料製とすることが可能である。加えて、両電極は、電極が皮膚に接触しフィードバック制御回路網と電気的に連通することを可能にする任意好適な形を想定して設計することが可能である。
【0035】
より均一な皮膚透過を達成するために多数の電極を使用することが可能である。正確な電気的示度を与えるため、少なくとも1つの電極に接触する患者の皮膚の表面は十分に透過させなければならない、すなわち、電極が適用される部位から角質層を除去する必要がある。
【0036】
好適な実施形態においては、剥削用チップ(20)は内部フィードバック制御機構を想定して設計される。本実施形態においては、剥削用チップは2つの電極を含み、これらは剥削用チップ内で剥削用チップの外面と同じ高さにした位置に置かれている。本実施形態においては、剥削用チップは第1の電極、またはソース電極(42)および第2の電極、またはリターン電極(44)の両方を含む。電極は、例えば金属および導電性ポリマーといった、任意好適な導電性材料製である。本実施形態において内部フィードバック機構が適切に機能するには、剥削用チップは好ましくは非導電性材料で形成される。湿潤化液を剥削用チップに適用する場合は、湿潤化液は好ましくは導電率の低い流体である。
【0037】
外部フィードバック制御機構を有する装置の場合の好適な実施形態においては、剥削装置(10)の近位端(14)は、同軸または同心に配置された2つの電極を含む(図3Bおよび3C参照)。本実施形態においては、剥削装置(10)の近位端(14)は、第1の電極、またはソース電極(42)および第2の電極、またはリターン電極(44)の両方を含む。剥削装置の近位端(14)の平面図を見ると、ソース電極は剥削装置の近位端の中心に位置している。ソース電極は空気で満たされた空間(26)に囲まれており、この空間はリターン電極(44)に囲まれている。図3Bは、剥削用チップが導電性材料で形成されソース電極としても機能する実施形態を示す。図3Cは、剥削用チップが非導電性材料で形成され、通常はワイヤーの形態であるソース電極が剥削用材料に挿入されている実施形態を示す。
【0038】
この同軸または同心配置においては、第2の電極、またはリターン電極(44)は、ハンドピースの近位端(14)の外壁(21)内に位置している。剥削装置の近位端(14)の平面図を見ると、リターン電極(44)が装置の外側リングを形成している(図3Bおよび3C参照)。
【0039】
外部フィードバック制御機構を有する装置の場合の別の実施形態においては、第2の電極、またはリターン電極(44)は制御型剥削装置(例えば、図1参照)から分離している。第2の電極の位置は、第1の電極の位置に近接していても第1の電極の位置から離れていてもよい。
【0040】
b.フィードバック制御機構
フィードバック制御機構(30)は、(i)剥削される/されている皮膚の部位(本明細書においては「皮膚剥削の部位」とする)に、皮膚剥削の部位において定期的にまたは連続して皮膚の電気的コンダクタンスを測定するために配置される第1の電極(42)、(ii)少なくとも1つの第2の電極(44)であり、皮膚剥削の部位から離れた部位に位置してもよく、皮膚剥削の部位に近接して位置してもよく、皮膚剥削の部位に接触して位置してもよい電極、および(iii)制御装置(32)の使用を伴う。制御装置は、適切なアルゴリズムまたは信号処理を用いて電極(42および44)が提供する導電率情報に対して数学的解析を実行するとともに、皮膚コンダクタンスの動態を計算する。制御装置は更に、剥削装置(10)を制御する。
【0041】
剥削装置が皮膚に適用されている間は皮膚を介したコンダクタンスの動的変化がリアルタイムで測定される。測定値に基づいて信号処理が実行され、動的数学的解析を実行することによって皮膚透過のレベルが制御される。こうした解析の結果は、皮膚インピーダンスの望ましいレベルを達成するために剥削装置の適用を制御するのに使用される。皮膚インピーダンスの望ましいレベルは、所定値に設定することが可能である。あるいは、皮膚インピーダンスのレベルは、皮膚完全性の望ましいレベル、対象の不快感、または適用継続時間に基づいて選択することが可能である。
【0042】
制御型皮膚透過用のリアルタイムアルゴリズムの例が、Elstrom他に付与された米国特許第6,887,239号に記載されており、図4〜7に明示されている。Elstrom他に付与された米国特許第6,887,239号は、部位が透過促進処理を受ける場合の皮膚表面の透過性を制御する一般的方法を記載している。
【0043】
図4は、望ましい透過性レベルを達成するための皮膚表面上のエリアの制御剥削の方法のフローチャートである。ステップ108で言及されている皮膚透過装置は、本明細書において記載した剥削装置である。ただし、本明細書において記載した制御型フィードバック機構を用いるように代替的透過装置および方法を改変してもよい。代替的透過方法としては、テープ剥離、摩擦、研磨、剥削、レーザーアブレーション、高周波(RF:radio frequency)アブレーション、化学物質、超音波導入(sonophoresis)、イオントフォレシス、エレクトロポレーション、および熱アブレーションが挙げられる。ステップ102において、第1の電極、またはソース電極が透過の望まれる皮膚の第1のエリアと電気的に接触した状態で結合される。
【0044】
次に、ステップ104において、第2の電極、またはリターン電極が皮膚の第2のエリアに電気的に接触した状態で結合される。この皮膚の第2のエリアは皮膚剥削の部位から離れた部位に位置していてもよく、皮膚剥削の部位に近接していてもよく、皮膚剥削の部位内にあってもよい。
【0045】
2つの電極が適切に位置決めされると、ステップ106において、2つの電極間の初期導電率が測定される。これは、電気信号を電極を通じて皮膚エリアに適用することによって達成されてもよい。一実施形態においては、電気信号は皮膚の電気的パラメータが測定できるように十分な強度とすることが可能であるが、電気信号が皮膚の永久的損傷またはその他の任意の有害作用を生じないように強度は適切に低くすることも可能である。一実施形態においては、ソース電極とリターン電極との間に電圧差を生じさせるために周波数が10〜100HzのAC電源が用いられる。供給される電圧は、500mVを超えるべきではなく、好ましくは、100mVを超えるべきではない。さもないと皮膚を損傷する危険がある。電流の大きさも適切に制限してよい。適切な回路網を用いて電源を適用した後に初期導電率測定が行われる。別の実施形態においては、10〜100Hzの周波数で皮膚のエリアのインピーダンスを測定するのに抵抗センサーが用いられる。別の実施形態においては、類似のまたは異なる刺激を用いて二重または多重AC周波数電源を用いた二重または多重測定が行われてもよい。別の実施形態においては、1kHz電源が用いられる。その他の周波数の電源も可能である。
【0046】
ステップ108において、剥削装置が第1の部位において皮膚に適用される。
【0047】
ステップ110において、2つの電極間の導電率が測定される。導電率は周期的に測定されてもよく、連続して測定されてもよい。初期導電率測定を行うのに用いたのと同じ電極設定を用いてモニタリング測定が行われる。
【0048】
ステップ112において、皮膚コンダクタンスデータの時間差異に対して数学的解析および/または信号処理を実行することができる。皮膚導電率は、一定期間毎に、例えば透過処理中1秒に1回、または連続して測定することが可能である
コンダクタンスデータのプロット後、グラフはS字形曲線に類似したものとなり、これは以下の一般的なS字形曲線式(式1)によって表すことが可能である:
C=Ci+(Cf−Ci)/(1+e−S(t−t*)) 式1
ただし、Cは電流;Ciはt=0における電流;Cfは最終電流;Sは感度定数;t*は変曲点を得るために必要な曝露時間;およびtは曝露時間である。
【0049】
図5は、時間に沿った電流のプロットという形態の典型的データセットを含む。図5は、剥削装置を用いて処理されている間の皮膚コンダクタンスの時間変化データを明示する。図5において、導電率(電流カウント、実線)は、試験対象に対する皮膚透過処置中連続して測定されたものである。
【0050】
式1のt*の値は、変曲点(すなわち、曲線の傾きが符号を変える点)を得るために必要な曝露時間に対応し、図4に表示されたデータに基づく625という値を有する一次導関数のピークに一致する。
【0051】
図6は、透過ステップをいつ終了するかを判定する方法を示すフローチャートである。図7A、B、およびCは、図6のフローチャートにおけるステップ対応する典型的グラフである。図6のステップ302において、A/D変換が導電率データに対して実行される。これにより図7Aに示すグラフに類似したグラフが結果として得られる。次に、ステップ304において、デジタルデータに対してフィルタリングが実行される。図7Bに示すように、フィルタリングされたデータは図7Aのフィルタリングされていないデータよりも滑らかな曲線となる。次に、ステップ306において、曲線の傾きが計算される。ステップ308において、傾きの最大値が保存される。それに続く測定において得られた傾きに対する電流値が保存された最大値よりも大きい場合、最大値はこの電流値に置き換えられる。次に、ステップ310において、傾きが最大値以上の場合は、プロセスはステップ302に戻りピークを待つ。傾きが最大値以下である場合は、ステップ312においてプロセスは図7Cに「X」と印をつけたピークまたは変曲点を検出する。そして、ステップ314において、装置は皮膚への剥削力の付加を終了する。
【0052】
一実施形態においては、ピークの検出を認証され得る。この追加ステップは、ステップ312において検出された「ピーク」が単なるノイズではなく実際にピークであったことを確認するために提供することができる。
【0053】
その他の実施形態においては、変曲点、すなわち「ピーク」に到達した後でも剥削力を加え続けてもよい。別の実施形態においては、傾きが或る値に減少するまで剥削力が加えられる。図5を参照すると、変曲点に到達した後、剥削力が加えられていても傾きは減少している(破線参照)。従って、傾きが導電率曲線の一次導関数の最大値の予め設定した割合だけ、例えば50%減少するまで、または所定の値に減少するまで剥削力を加え続けてもよい。上記のように、この判定は柔軟であり、個体ごとによって変わってもよい。同様に、図5に示すように、リアルタイムの導電率曲線の一次導関数が計算され(図6のステップ306)、最大値が625であることがわかった(ステップ308および312)。この曲線の場合のオフセット(すなわちベースライン)は、およそ17であった(ΔI/ΔT)。図5に表示したデータの場合、透過ステップの終了時点が導電率曲線の一次導関数の最大値の50%に予め決められていた場合には、一次導関数値が321(オフセットに対して補正されたデータ)に到達したときに装置は自動的に停止し、皮膚透過が完了したことを示す。その他の割合を使用してもよく、割合は痛覚閾値および皮膚特性を含む要因に基づいてもよい。
【0054】
別の実施形態においては、終了時点は所定時間に設定される。この所定時間は、変曲点に到達するための時間の割合に基づいてもよい。例えば、変曲点に到達したら、変曲点に到達するのに要した時間の50%の時間、さらに剥削装置の適用を続けるのである(例えば、図5参照)。従って、変曲点に到達するまでに14秒かかった場合は、更に7秒間剥削を適用する(図には示さず)。その他の割合を使用してもよく、割合は痛覚閾値および皮膚特性を含む要因に基づいてもよい。
【0055】
別の実施形態においては、変曲点における電流が測定され、この電流の予め決められた割合分剥削用チップの適用が続けられる。例えば、40μAで変曲点に到達し、変曲点での電流の現在の割合分、例えば変曲点での電流の10%分だけ剥削用チップを続ける場合は、剥削用チップは合計44μAの電流に到達するまで適用されることになる。ここでもこの判定は柔軟であり、個体ごとによって変わってもよい。
【0056】
図4を参照すると、ステップ114において、皮膚インピーダンス(またはコンダクタンス)の変化の動態を記述するパラメータが計算される。これらのパラメータとしては、とりわけ、皮膚インピーダンス、皮膚インピーダンスの時間変化、初期皮膚インピーダンス、皮膚インピーダンスの移動平均、最大皮膚インピーダンス、最小皮膚インピーダンス、皮膚インピーダンスの任意の数学的計算値、最終皮膚インピーダンス、変曲時点の皮膚インピーダンス、電流カウント、最終電流、変曲時間を得るための曝露時間などが挙げられる。
【0057】
ステップ116において、皮膚コンダクタンスを記述するパラメータの望ましい値が達成されるとステップ108において適用された皮膚透過装置が停止される。
【0058】
c.電気モータ
電気モータ(50)がハンドピース(12)内に位置している。剥削用チップ(20)は直接または間接的にモータ(50)と接続し、それによって、制御型剥削装置を作動させたときにモータが振動(oscillation)または回転によって剥削用チップを動かすことが可能となる。
【0059】
電気モータは、主にACおよびDCモータの2種類が利用可能である。これらは回転式またはリニア式のどちらかである。
【0060】
好ましくは、モータ(50)は回転式のDCモータである。好適な実施形態においては、より高価な希土類金属を構造物に利用している「ブラシレス」モータに比べて標準的なパワーサプライ(すなわち直流バッテリー)で比較的容易に使用できる点、および入手可能性から、モータは、回転式ブラシDCモータである。ただし、装置と共にブラシレスモータを使用することもできる。
【0061】
モータは、直線的、振動(vibration)、同心性、同軸(co−axle)、および非同軸(off−axle)運動など、様々な運動パターンを生みだすことが可能である。加えて、モータは例えば0.01〜10,000rpsまたはHzに及ぶ様々な運動速度を生みだすことが可能である。
【0062】
d.剥削用チップに力を供給する手段
本好適な実施形態においては、制御型剥削装置を作動させたときに剥削用チップと皮膚との接触を確実に保つため、制御型剥削装置は剥削用チップに力を供給する手段を1以上含む。好適な手段としては、剥削用チップが皮膚表面に接触したときに剥削用チップに下向きの(すなわち皮膚表面に向かう方向の)力を供給するバネ(16)を装填したモータ軸またはカプラが挙げられる(図3A参照)。
【0063】
図3Aに示すように、剥削用チップが皮膚に押しつけられるとバネ(16)は収縮する。バネが収縮すると、ハンドピース(12)の近位端(14)が皮膚の表面に近づき、リターン電極(44)を皮膚に接触させる。従って、この位置で、ソース電極(42)、剥削用チップ(20)およびリターン電極(44)が皮膚表面に接触している。
【0064】
e.リターン電極
上記のように、装置は通常リターン電極(44)として機能する少なくとも1つの第2の電極を含む(例えば、図1、2A、2B、および3A〜D参照)。装置が内部フィードバック制御機構を含むように設計されている場合、リターン電極は剥削用チップ内に位置する(図2Aおよび2B参照)。しかし、装置が外部フィードバック制御機構を含むように設計されている場合は、リターン電極は皮膚剥削の部位とは異なる皮膚表面上の部位に配置される(図1および図3A〜C参照)。リターン電極は、皮膚剥削の部位から離れた皮膚上の部位に配置してもよい(例えば、図1参照)。あるいは、リターン電極は皮膚剥削の部位に近接した皮膚上の部位に配置してもよい(例えば、図3A〜C参照)。図1に示すように、リターン電極(44)は、制御装置と電気的に接触するとともに、第1の電極(42)と電気的に接触する。図3Aに示すように、リターン電極(44)は装置に組み込まれてもよい。リターン電極(44)は制御装置に電気的に接触するとともに、第1の電極(42)に電気的に接触する。
【0065】
透過すべき部位から離れた部位にあるリターン電極を有するこうした装置の信頼性は、リターン電極は十分な電気伝導度を有する皮膚部位上に位置する場合のみ正確なフィードバックを提供可能であることから、疑わしい場合がある。従って、本好適な実施形態においては、リターン電極は剥削用チップ上に位置している。本実施形態においては、リターン電極は透過すべき皮膚にも接触している。
【0066】
外部フィードバック制御機構の場合の好適な実施形態においては、第1の電極と同軸または同心に配置されたリターン電極(44)。本実施形態においては、第2の電極、またはリターン電極(44)はハンドピースの近位端(14)の外壁(21)内に位置しており、ソース電極と剥削用チップを囲む外側リングを形成している(図3Bおよび3C参照)。装置の中心から外方向に移動すると、剥削用チップおよびソース電極は剥削用チップが取り付けられたプラスチックチューブ(24)に取り囲まれ、プラスチックチューブは空気で満たされた空隙または空間(26)に囲まれ、空隙はリターン電極(44)として機能する導電性材料に囲まれたプラスチックカップまたはコーン(27)に囲まれている。
II.被検体検知用システム
本明細書に記載した制御型剥削装置は、体液内に存在する1以上の目的とする被検体のレベルを検出するための被検体センサーと組み合わせることが可能である。体液は、物理的力、化学的力、生物的力、減圧、電気的力、浸透圧力、拡散力、電磁力、超音波力、キャビテーション力、機械的力、熱的力、毛細管力、皮膚を横切る流体循環、電気音響力、磁力、マグネト流体力学の力、音響力、対流分散、光音響力、皮膚から体液を洗い流すこと、およびこれらの任意の組合せによって抽出することができる。体液は、吸収、吸着、相分離、機械的、電気的、化学的誘発、およびこれらの組合せを含む採取方法によって採取してもよい。被検体の存在は、電気化学的技術、光学的技術、音響的技術、生物学的技術、酵素的技術、およびこれらの組合せを含む検知方法によって検知してもよい。
【0067】
例えば、皮膚部位において望ましいレベルの透過性を実現するために制御型剥削装置を使用した後、グルコースセンサー装置などの被検体センサーを剥削システムによって処理された皮膚部位上に配置してよい。グルコースセンサーは皮膚を通して連続的にグルコースフラックスを受け取ることによって機能する。これに応じて装置はナノアンペア(nA)単位の電気信号を提供し、電気信号は市販の指先穿刺グルコース測定器を用いて対象の参照血中グルコース(BG)値に較正される。制御型剥削システムと血中グルコースセンサーとの組合せは、以下の実施例において記載する。
【0068】
上記の例ではグルコース検知に言及しているが、同じ方法を用いてその他の被検体を解析することも可能である。被検体は、血液、血漿、血清または間質液など、生体液内に存在する任意の分子または生物学的種でよい。モニターすべき被検体は、任意の目的とする被検体とすることが可能であり、グルコース、ラクテート、血液ガス(例えば、二酸化炭素または酸素)、血液pH、電解質、アンモニア、タンパク質、バイオマーカーまたはその他任意の生体液内に存在する生物学的種を含むが、これに限らない。
III.薬物送達用システム
本明細書に記載した制御型剥削装置は、対象に薬物を経皮的に送達するための薬物送達組成物または装置と組み合わせることが可能である。薬物は任意好適な形態の任意好適な治療用、予防用、または診断用分子または薬剤でよい。薬物は液体、固体、半固体に溶解または懸濁させてもよく、微粒子もしくはナノ粒子、エマルション、リポソーム、または脂質小胞内または内部に封入および/または分布させてもよい。薬物送達は、血液、リンパ液、間質液、細胞、組織、および/または臓器、またはこれらの任意の組合せに対して行うことができる。薬物は通常全身的に送達される。
【0069】
例えば、皮膚部位において望ましいレベルの透過性を実現するために制御型剥削装置を使用した後、投与すべき薬物を含有する軟膏、クリーム、ゲルまたはパッチなどの薬物送達組成物または器具を剥削システムによって処理された皮膚部位上に配置することができる。
【0070】
あるいは、薬物は剥削用チップに適用される湿潤化液に含まれてもよい。本実施形態においては、表面を剥削するのと同時に薬物を投与することができる。
IV.キット
制御型剥削用のキットは、上記の剥削装置と、1以上の剥削用チップを備える。必要に応じ、キットは適切な容器に封入された、剥削用チップに添加する湿潤化液を備える。別の実施形態においては、湿潤化液は該1以上の剥削用チップに予め塗布され、剥削用チップの湿度を保つために封入される。更に別の実施形態においては、キットは湿潤化液を含有する1以上の予め湿らせた清拭具を備える。
【0071】
装置が使い捨ての剥削チップを利用する場合、好ましくはキットは1以上の使い捨てのプラスチックカップまたはコーン(27)を更に含む。好ましくは、使い捨ての剥削用チップは、ハンドピースに適当にあわさりおよびそれと接続するように設計されたチューブ(24)に取り付けられている。
【0072】
剥削装置が外部フィードバック制御機構を含むように設計されている場合、キットは1以上のリターン電極を更に備える。
V.皮膚インピーダンスを低下少させる方法
A.制御型剥削装置
本明細書に記載した制御型剥削装置は、対象の皮膚の表面に適用し、皮膚透過処理を行なわず純水で濡らした後に測定した皮膚インピーダンスと比較して30倍以上皮膚インピーダンスを低下させることが可能である。皮膚透過処理を行なわずに純水で濡らした後の典型的な皮膚インピーダンス測定値は、濡らした皮膚上に約1cm以内の距離で2つの電極を配置して測定した場合、およそ300kΩ(ohm)以上である。制御型剥削装置を用いて皮膚の同じエリアの処理を行った後では、インピーダンス値はおよそ10kΩ以下に低下させることが可能である。
【0073】
剥削用チップは通常短期間、最大90秒間、例えば1〜30秒間、好ましくは5〜25秒間適用される。皮膚インピーダンス(またはコンダクタンス)の好ましいレベル、ひいては結果として得られる被処理部位の透過性は、所定値に設定可能である。あるいは、皮膚インピーダンス(またはコンダクタンス)のレベルは、上記のように皮膚完全性の望ましいレベル、対象の不快感、または適用継続期間に基づいて選択することが可能である。
【0074】
望ましい透過性のレベルに到達したら、剥削装置を取り除き、薬物送達組成物もしくは装置、または被検体センサーを被処理部位に適用する。剥削後の皮膚に薬物送達系を適用後、即座に薬物送達を進めることが可能である。同様の様式で、被検体センサーを皮膚に適用後すぐ、被検体は体からおよび被検体センサー内に拡散可能である。しかし、被検体の正確な値は通常「ウォームアップ」期間(すなわち経皮の被検体フラックスが平衡に達し、センサーが皮膚媒介被検体および、場合によってはその他の干渉種を消費し、センサーの皮膚部位への物理的結合が安定するまでの時間)の間は得られない。ウォームアップ期間は通常被検体センサーの調整部位への適用後およそ1時間続く。
【0075】
剥削装置の適用後、適用部位は通常最大24時間、一部の実施形態においては、最大72時間透過状態を保つ。
【0076】
B.その他の透過装置
皮膚透過の望ましいレベルを実現するために本明細書に記載した制御型剥削装置に代えて他の透過装置および技法を使用してもよい。例えば、フィードバック制御機構は、テープ剥離、摩擦、研磨、剥削、レーザーアブレーション、高周波(RF)アブレーション、化学物質、超音波導入、イオントフォレシス、エレクトロポレーション、および熱アブレーションなどの他の皮膚調整方法と組み合わせることが可能である。
【実施例】
【0077】
(実施例1:2種類の皮膚透過方法の比較:超音波導入および剥削)
6人の対象による24時間調査において、図4に示すものと同じ制御アルゴリズム使用し、剥削方法の性能をElstrom他に付与された米国特許第6,887,239号に記載の超音波導入方法と比較した。各対象は胸部または腹部に1カ所の剥削部位および1カ所の超音波処理部位を有した。
【0078】
制御型剥削システムの場合、図1に記載の剥削装置を患者の皮膚に導電率フィードバック閾値が得られるまで5〜25秒間適用した(以前I.b.フィードバック制御機構のセクションに記載したように)。
【0079】
制御型超音波導入システムの場合、Sontra SonoPrep(登録商標)超音波皮膚透過装置を用いて周波数55kHzで超音波を患者の皮膚に5〜30秒間照射した。超音波は導電率フィードバック閾値が得られるまで照射した(以前I.b.フィードバック制御機構のセクションに記載したように)。
【0080】
制御型剥削または超音波導入で調整した2カ所の標的皮膚部位上それぞれにグルコースセンサーユニットを配置した。調査の過程全体を通し、覚醒時間は1時間おきに、または食事時間に近い時間帯では15分おきに指先穿刺血中グルコース(「BG」)サンプルを採取し、センサーの電気信号と関連づけた。
【0081】
この相関の解析によって、装置の精度、一貫性および性能が実効である時間長に関する情報が得られる。
【0082】
図8は、試験対象に対して剥削システムを用いて皮膚を透過させ、続いて継続的経皮グルコース検知を行って得られた結果のグラフである。表1は、剥削と超音波処理との持続的グルコースモニタリングのための皮膚透過手段としての直接比較結果を示す。表1は、6人の対象から得られたデータに基づく平均値を示す。
【0083】
【表1】
【0084】
指先穿刺を用いた市販の血中グルコース測定器によって参照血中グルコース(参照BG)値を測定した。参照BG値に基づいてグルコースセンサーに対して較正を1.2時間と9.1時間(図8に「較正点」と表示)の2回行った。センサーグルコース示度(予測BG)の参照血中グルコース(参照BG)との高い近似は、経皮グルコースセンサーの高い精度を表すものである。参照BGと予測BGとの間の24時間平均絶対相対差(Mean Absolute Relative Difference)(MARD)は11.9mg/dlであった。
【0085】
制御型剥削装置を用いた透過の場合、平均24時間MARDが11.7mg/dlであり、信号ドリフトが31%であった。制御型超音波導入システムの場合、平均24時間MARDが13.1mg/dlであり、信号ドリフトが26%であった。従って、制御型剥削装置は、ウォームアップ時間(1時間)、精度(mg/dl単位でのセンサー予測グルコースと参照BGとの間のMARD(平均絶対相対差))、およびドリフト(センサーグルコースおよび参照BGの時間依存%偏差)、ならびにクラーク誤差グリット解析に基づく「A領域」におけるデータ分散の割合(「A領域%」)に関して、超音波導入システムに匹敵するかまたは、場合によっては、超音波導入システムよりも良好な追随性(BGに対するnAの相関)を実現した。
【0086】
(実施例2:剥削装置の適用に続く皮膚のインピーダンスの低下)
ヒトの皮膚を純水で濡らすと、濡らした皮膚上に約1cm以内の距離で2つの電極を配置して測定した場合、インピーダンス値は通常300kΩ以上である。しかし、同じエリアを図1に示す制御アルゴリズムを用いた制御型剥削装置を用いて処理し、装置を皮膚表面上に5〜25秒間配置して装置の適用と同時にインピーダンス値を得ることによって、インピーダンス値はおよそ10kΩ以下にまで大幅に低下した。本調査において、剥削用チップはABSベース上にコーティングした白色酸化アルミニウム(120グリット)を含んでいた。
【0087】
他様に定義しない限り、本明細書において使用した技術用語および科学用語は全て本開示した発明が属する分野の当業者が一般に理解するものと同じ意味を有する。本明細書において引用した出版物およびそれらに引用された材料は、参照することによって具体的に組み込まれる。
【0088】
当業者は、これ以上の通常の実験を用いずに本明細書において記載した本発明の具体的実施形態の多くの均等物を認識する、または確認できる。こうした均等物は、以下の特許請求の範囲に包括されることが意図される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハンドピース、剥削用チップ、フィードバック制御機構、ソース電極、リターン電極、および電気モータを備え、該ソース電極が該剥削用チップ内に位置している、制御型剥削装置。
【請求項2】
前記フィードバック制御機構が内部フィードバック制御機構である、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記フィードバック制御機構が外部フィードバック制御機構である、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記リターン電極が前記ハンドピースの近位端に位置し、該リターン電極が前記剥削用チップを囲んでいる、請求項3に記載の装置。
【請求項5】
ハンドピース、剥削用チップ、外部フィードバック制御機構、ソース電極、リターン電極、位置決めリング、および電気モータを備え、該ソース電極が該位置決めリング内に位置している、制御型剥削装置。
【請求項6】
前記剥削用チップが湿潤化液を含む、請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の装置。
【請求項7】
前記剥削用チップが、導電性材料および非導電性材料からなる群から選択される材料を含む、請求項1および請求項3から請求項5のいずれか一項に記載の装置。
【請求項8】
前記剥削用チップが導電性材料を含み、該剥削用チップが前記ソース電極である、請求項7に記載の装置。
【請求項9】
前記導電性材料が複数の穿孔を備える、請求項8に記載の装置。
【請求項10】
前記剥削用チップが使い捨ての剥削用チップであり、前記装置が該剥削用チップを囲むカップを更に備える、請求項1から請求項9のいずれか一項に記載の装置。
【請求項11】
前記リターン電極が前記ハンドピースの外部にある、請求項5に記載の制御型剥削装置。
【請求項12】
組織部位のインピーダンスを低下させるための方法であって、
請求項1から請求項10のいずれか一項に記載の制御型剥削装置を該組織部位に適用することと、
前記剥削用チップを該組織部位上に配置することと、
前記電気モータを作動させることと、
該組織部位の電気的パラメータを測定することと
を包含する、方法。
【請求項13】
前記組織部位の電気的パラメータを測定するステップが、前記ソース電極と前記リターン電極との間に電流を適用することを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記電気的パラメータが、電流カウント、特定期間における電流カウント変化、電流カウントの瞬間変化率、前記組織部位におけるインピーダンス値、特定期間における該組織部位におけるインピーダンス値変化、該組織部位と参照組織部位との間のインピーダンス値の差からなる群から選択される、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記電気的パラメータを解析することと、および前記解析の結果に基づいて前記剥削用チップの継続期間、速度もしくは作用力、またはその組合せを制御することとを更に備える、請求項12に記載の方法。
【請求項16】
前記解析するステップが、前記測定された電気的パラメータを処理して前記組織部位の前記電流カウントまたはインピーダンス値を導き出すことを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記制御するステップが、前記解析された電気的パラメータが所定の値に実質的に等しいまたは所定の値を超える場合に前記モータを停止するステップを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記組織部位の電気的パラメータを測定するステップが、前記剥削用チップの前記組織部位への適用中連続して実行される、請求項12に記載の方法。
【請求項19】
前記剥削用チップの適用を停止した後に被検体センサーまたは薬物送達組成物もしくは装置を前記組織部位上に配置することを更に備える、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記被検体センサーが、グルコース、ラクテート、血液ガス、血液pH、電解質、アンモニア、タンパク質およびバイオマーカーからなる群から選択される被検体の検知が可能である、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
請求項1から請求項10のいずれか一項に記載の制御型剥削装置と、湿潤化液とを備える、組織部位のインピーダンスを低下させるためのキット。
【請求項22】
2以上の剥削用チップを備える、請求項21に記載のキット。
【請求項1】
ハンドピース、剥削用チップ、フィードバック制御機構、ソース電極、リターン電極、および電気モータを備え、該ソース電極が該剥削用チップ内に位置している、制御型剥削装置。
【請求項2】
前記フィードバック制御機構が内部フィードバック制御機構である、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記フィードバック制御機構が外部フィードバック制御機構である、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記リターン電極が前記ハンドピースの近位端に位置し、該リターン電極が前記剥削用チップを囲んでいる、請求項3に記載の装置。
【請求項5】
ハンドピース、剥削用チップ、外部フィードバック制御機構、ソース電極、リターン電極、位置決めリング、および電気モータを備え、該ソース電極が該位置決めリング内に位置している、制御型剥削装置。
【請求項6】
前記剥削用チップが湿潤化液を含む、請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の装置。
【請求項7】
前記剥削用チップが、導電性材料および非導電性材料からなる群から選択される材料を含む、請求項1および請求項3から請求項5のいずれか一項に記載の装置。
【請求項8】
前記剥削用チップが導電性材料を含み、該剥削用チップが前記ソース電極である、請求項7に記載の装置。
【請求項9】
前記導電性材料が複数の穿孔を備える、請求項8に記載の装置。
【請求項10】
前記剥削用チップが使い捨ての剥削用チップであり、前記装置が該剥削用チップを囲むカップを更に備える、請求項1から請求項9のいずれか一項に記載の装置。
【請求項11】
前記リターン電極が前記ハンドピースの外部にある、請求項5に記載の制御型剥削装置。
【請求項12】
組織部位のインピーダンスを低下させるための方法であって、
請求項1から請求項10のいずれか一項に記載の制御型剥削装置を該組織部位に適用することと、
前記剥削用チップを該組織部位上に配置することと、
前記電気モータを作動させることと、
該組織部位の電気的パラメータを測定することと
を包含する、方法。
【請求項13】
前記組織部位の電気的パラメータを測定するステップが、前記ソース電極と前記リターン電極との間に電流を適用することを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記電気的パラメータが、電流カウント、特定期間における電流カウント変化、電流カウントの瞬間変化率、前記組織部位におけるインピーダンス値、特定期間における該組織部位におけるインピーダンス値変化、該組織部位と参照組織部位との間のインピーダンス値の差からなる群から選択される、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記電気的パラメータを解析することと、および前記解析の結果に基づいて前記剥削用チップの継続期間、速度もしくは作用力、またはその組合せを制御することとを更に備える、請求項12に記載の方法。
【請求項16】
前記解析するステップが、前記測定された電気的パラメータを処理して前記組織部位の前記電流カウントまたはインピーダンス値を導き出すことを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記制御するステップが、前記解析された電気的パラメータが所定の値に実質的に等しいまたは所定の値を超える場合に前記モータを停止するステップを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記組織部位の電気的パラメータを測定するステップが、前記剥削用チップの前記組織部位への適用中連続して実行される、請求項12に記載の方法。
【請求項19】
前記剥削用チップの適用を停止した後に被検体センサーまたは薬物送達組成物もしくは装置を前記組織部位上に配置することを更に備える、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記被検体センサーが、グルコース、ラクテート、血液ガス、血液pH、電解質、アンモニア、タンパク質およびバイオマーカーからなる群から選択される被検体の検知が可能である、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
請求項1から請求項10のいずれか一項に記載の制御型剥削装置と、湿潤化液とを備える、組織部位のインピーダンスを低下させるためのキット。
【請求項22】
2以上の剥削用チップを備える、請求項21に記載のキット。
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図3D】
【図6】
【図7A】
【図7B】
【図7C】
【図8】
【図1】
【図4】
【図5】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図3D】
【図6】
【図7A】
【図7B】
【図7C】
【図8】
【図1】
【図4】
【図5】
【公表番号】特表2010−525881(P2010−525881A)
【公表日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−506530(P2010−506530)
【出願日】平成20年4月25日(2008.4.25)
【国際出願番号】PCT/US2008/061623
【国際公開番号】WO2008/134545
【国際公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【出願人】(509166641)エコー セラピューティクス, インコーポレイテッド (3)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年4月25日(2008.4.25)
【国際出願番号】PCT/US2008/061623
【国際公開番号】WO2008/134545
【国際公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【出願人】(509166641)エコー セラピューティクス, インコーポレイテッド (3)
【Fターム(参考)】
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