説明

被検体欠陥部等の検出装置及びその検出方法

【課題】 被検体の欠陥部等を精度よく確実に検出し、しかも工業的な連続処理にも適用しうる被検体欠陥部等の検出装置及びその検出方法を提供する。
【解決手段】 被検体を加熱又は冷却する第1の手段と、第1の手段による加熱又は冷却と同時に第1の手段とは逆の熱作用である同被検体を冷却又は加熱する第2の手段と、被検体の同時加熱及び冷却中に被検体から放射される赤外線を検出する赤外線検出手段と、を含む。被検体を同時に加熱及び冷却し、赤外線放射量を増加させて連続的な処理の製品の検出精度を向上させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、種々の原材料、半製品、製品の表面又は内部のクラックあるいは表面異物付着を含む欠陥部等を非接触かつ高い検出精度で、さらに、高効率に検出可能な被検体欠陥部等の検出装置及びその検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、金属やセラミック製品、その他の製品についての表面あるいは内部クラックの有無等の検査が製品製造中の種々の工程で必要とされる。これらの物品の欠陥部検出の方法として、従来、可視光を用いた外観検査、X線透過試験、超音波探傷試験等の方法が知られている。X線透過試験では、被検体へX線を照射し、X線の透過割合を解析することで欠陥検出を行なうようになっている。また、超音波探傷試験では、被検体へ探触子を接触させるか、又は液体へ浸漬させて超音波を発信し、反射波を解析して欠陥部の検出を行なうものである。これに関し、例えば、セラミックあるいはガラス製品等についての欠陥部検出方法が特許文献1及び特許文献2に開示されている。
【0003】
【特許文献1】特開昭59−217139号
【特許文献2】特開平5−142172号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の検出方法は、シリコン系セラミック焼結体へ赤外線照射または加熱後に放冷し、その放冷中の赤外線量分布を測定し、欠陥部を検出するものであり、加熱後の放冷状態における被検体表面の赤外線検出では、熱分布が緩和されているので、欠陥部が明確になりにくいとともに、加熱後、放冷中の物品の検査となるから検査全体の作業時間がかかり、工業製品等の大量検査処理が必要な工程では実用しにくい問題があった。また、特許文献2においては、ガラス壜の欠陥検出方法が開示されており、成型直後の高温状態にあるガラス壜の外観を赤外線カメラにより撮影し、得られる画像の温度分布を画像処理して等温線を演算し、この等温線が欠陥部等温線と交差することを利用して、良否判定を行なうようにしたものである。しかしながら、この特許文献2の検出方法においても、結局、特許文献1のものと同様に、加熱後、放冷中の被検体全体の徐々の温度降下状態での温度分布からの検出であるから、欠陥部分が顕在化しにくく検出精度の点で不十分な点があった。また、この特許文献2の方法では成型直後に連続搬送される壜についての適用例であり、高温溶融成型品等のみについてしか採用できない不利な点があった。また、等温線が必ずしも欠陥部等と交差するとは限らず、判定結果についてのばらつきがあって、検出精度の信頼性に不安定なものがあった。
【0005】
本発明は、上記従来の課題に鑑みてなされたものであり、その1つの目的は、被検体の欠陥部等を精度よく確実に検出し、しかも工業的な連続処理にも適用しうる被検体欠陥部等の検出装置及びその検出方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、本発明は、被検体を加熱又は冷却する第1の手段(12,14)と、第1の手段による加熱又は冷却と同時に第1の手段とは逆の熱作用を加えるべく同被検体を冷却又は加熱する第2の手段(14,12)と、被検体の同時加熱及び冷却中に被検体から放射される赤外線を検出する赤外線検出手段(16)と、を含む被検体欠陥部等の検出装置10から構成される。被検体に対し、同時に加熱、冷却作用を行なうことにより被検体からの赤外線放射量を増加させ、多数物品の連続処理において、欠陥部の有無の検出精度を向上させる。加熱及び冷却温度は任意に設定できるから、任意の温度差を形成でき、被検体ごとについて予めならい試験を行なって基準温度を設定して連続検出処理を行なうようにすることができる。また、赤外線放射量検出を介して画像処理により欠陥部等を特定する際に温度差を際立たせることにより、より検出が確実となり検出精度さらには、欠陥部等の部位検出精度を大幅に向上させる。被検体に対する加熱及び冷却を加える方向、位置、被検体部位は任意に設定できる。例えば、被検体に対して上下方向からの加熱、冷却、側面側からの加熱、冷却、斜め方向からの加熱、冷却、それらの組み合わせた方向からの加熱及び冷却のいずれの構成としても良い。
【0007】
赤外線検出手段(16)は、被検体に対して相対的に移動しながら被検体から放射される赤外線を検出するものであるとよく、連続処理、処理効率の向上に資する。被検体を移動させた状態で赤外線検出手段を固定状態として被検体からの赤外線量を検出するようにしても良いし、赤外線検出手段側を移動させ、被検体側を静止状態で検出するようにしても良いし、さらに、両者を同時に移動させながら検出してもよい。
【0008】
また、その際、加熱又は冷却する手段のいずれかが加熱流体又は冷却流体を直接に被検体に吹き付けて作用させるものであるとしてもよい。
【0009】
また、加熱又は冷却する手段のいずれかが被検体を上面に着脱自在に載置させて移動する加熱搬送装置12Aあるいは冷却移動装置からなるようにするとよい。
【0010】
また、移動中の被検体の進行方向前部側から順次後部側にかけて相反する熱作用を生じさせる流体(Ir)を被検体Rに加えるようにするとよい。被検体を例えば搬送移動させながら冷却あるいは加熱流体を被検体の上面側に吹き付ける構成では、単に流体を所要の噴射量で噴射させ、被検体を所定の方向に移動させるだけで、被検体の進行方向前部側から順次後部側にかけて相反する熱作用を生じさせる構成を実現しうる。
【0011】
また、加熱又は冷却作用を生じさせる流体は搬送移動される被検体Rの進行方向に対して交差する線状又は帯状に供給されるようにするとよい。
【0012】
さらに、加熱流体又は冷却流体は、一定の流量で被検体Rの表面に当てられるようにするとよい。流体の冷却又は加熱の温度管理を精度よく行なえ、同時加熱、冷却による温度差の設定を自在に行なえる。
【0013】
また、冷却手段は、連続又は不連続に開口する所定方向に向けた噴射ノズル144を有する冷却ガス供給装置14Aからなるとよい。
【0014】
また、赤外線検出手段(16)は、加熱搬送装置12Aにより加熱かつ搬送されている被検体Rを冷却装置14による冷却中に被検体上面の熱分布状態を検出するとよい。
【0015】
また、被検体Rは、表裏面を有する板状の物体からなり、その表裏面にそれぞれ相反する熱作用が加えられるとよい。例えば加熱あるいは冷却用の台上に載置させて一方側の熱作用を生じさせる場合には、台に当接する面側が例えば裏面となり、外側に向く側が表面とされる。
【0016】
また、同時に加えられる冷却及び加熱作用について、そのうちの冷却又は加熱のいずれかは被検体Rの少なくとも略全面を冷却又は加熱するように加えられるとよい。
【0017】
また、同時に加えられる冷却及び加熱作用について、それらのいずれか又は両方について、被検体Rに作用させる温度の調節が可能であるようにするとよい。
【0018】
また、加熱搬送装置12Aあるいは冷却移動装置が、被検体を磁力及び空気吸引力を含む吸引手段により着脱自在に吸着する吸着機構125を有しているとよい。
【0019】
また、本発明は、被検体Rを同時に加熱及び冷却させつつ、被検体から放射される赤外線量を検出することにより被検体の表面の温度分布を計測し、その温度分布に基いて被検体の欠陥部等(40,50)を検出する被検体欠陥部等の検出方法から構成される。
【0020】
また、上記の検出方法において、被検体を同時に加熱及び冷却する手段が搬送装置に搬送される受台に一体的に組み込まれ、被検体を受台に載置させて移動可能状態で被検体の下面側から加熱又は冷却させるとよい。
【0021】
また、上記の検出方法において、加熱又は冷却する手段のいずれかが加熱流体又は冷却流体を直接に被検体に吹き付けて作用させるものであるとよい。
【0022】
また、上記の検出方法において、被検体を受台上に載置させた状態で搬送移動させつつ上面側から冷却用流体又は加熱用流体を吹き付けながら被検体の同時冷却及び加熱を行なうようにするとよい。
【0023】
その際、下面から加熱又は冷却されながら移動する被検体に逆の熱作用となる冷却又は加熱流体を吹き付けるとともに、赤外線検出手段を介して被検体の同時加熱及び冷却中に被検体から放射される赤外線量を検出し、
赤外線量から得られる被検体の表面温度分布に基いて被検体の欠陥部を検出するとよい。
【0024】
また、被検体の表面温度分布に基いてモニタ画面に等温線を表示し、さらに欠陥部を検出判定した際に該モニタ画面に等温線の断層状の表示を行わせるようにしてもよい。
【発明の効果】
【0025】
本発明の被検体欠陥部等の検出装置によれば、被検体を加熱又は冷却する第1の手段(12,14)と、第1の手段による加熱又は冷却と同時に第1の手段とは逆の熱作用を加えるべく同被検体を冷却又は加熱する第2の手段(14,12)と、被検体の同時加熱及び冷却中に被検体から放射される赤外線を検出する赤外線検出手段(16)と、を含む構成であるから、被検体に対して加熱冷却を同時に行なうことで、ある一定の温度差の場を生じさせ、更にその状態を保持することで例えば鉄系焼結体製品内の熱移動がある一定の大きさになり欠陥部等の検出精度を大幅に向上させることができる。すなわち、同時に加熱冷却することにより、温度差を明確に設定できまた、検出機能の実効を図れる。また、ある程度の数量の連続検出処理に有効に適用しうる。また、赤外線放射量検出を介して画像処理により欠陥部等を特定する際に温度差を際立たせることにより、より検出が確実となり検出精度さらには、欠陥部等の部位検出精度を大幅に向上させることができる。
【0026】
また、赤外線検出手段(16)は、被検体に対して相対的に移動しながら被検体から放射される赤外線を検出する構成とすることにより、被検体の連続処理、処理効率の向上を具体的に実現しうる。
【0027】
また、加熱又は冷却する手段のいずれかが加熱流体又は冷却流体を直接に被検体に吹き付けて作用させるようにすることにより、非接触検出で被検体がどのような搬送のされ方によっても加熱あるいは冷却の熱作用を確実に被検体に対して作用させることができ、被検体の搬送方法、具体的な態様の自由度が高くなる。
【0028】
また、加熱又は冷却する手段のいずれかが被検体を上面に着脱自在に載置させて移動する加熱搬送装置あるいは冷却移動装置から構成すると、被検体の検査あるいは検出のための材料供給構造を極めて簡単にできる。
【0029】
また、加熱又は冷却作用を生じさせる流体は搬送移動される被検体の進行方向に対して交差する線状又は帯状に供給されるようにすることにより、噴射ノズルからの噴射による被検体の冷却等についての熱作用を効率的に行なうことができる。
【0030】
また、本発明の 被検体欠陥部等の検出方法によれば被検体を同時に加熱及び冷却させつつ、被検体から放射される赤外線量を検出することにより被検体の表面の温度分布を計測し、その温度分布に基いて被検体の欠陥部等を検出する構成であるから、温度差を自在に設定可能であり、熱の流れの変化により断層を特定して欠陥部位を検出することができる。また、同時に加熱冷却することにより、温度差を明確に設定でき、また、検出機能の実効を図れる。
【0031】
また、被検体の表面温度分布に基いてモニタ画面に等温線を表示し、さらに欠陥部を検出判定した際に該モニタ画面に等温線の断層状の表示を行わせることにより、被検体の欠陥部等の検出判定と同時に、欠陥部位の特定も容易となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
以下、添付図面を参照しつつ本発明を実施するための最良の形態について説明する。本発明は、被検体の欠陥部等を精度よく確実に検出し、しかも工業的な連続処理にも適用しうる被検体欠陥部等の検出装置及びその検出方法であり、その最良の実施形態として例えば、薄板状の鉄系焼結体製品の欠陥部等の検出装置及びその検出方法について説明する。ちなみに、具体的な物品の一つとして、薄板円板の鉄系焼結体製品(例えばフェライト相を有する鋼、鋳鉄製品)は、自動車、産業用機械機器、ロボット、工場施設、測定機器、その他の駆動部分を有する適用箇所についてその駆動による移動量に対応する回転制御部分に多用されており、工業用部品としてのニーズが大きい。
【0033】
図1ないし図5は、本発明の一つの実施形態に係る薄板状の鉄系焼結体製品を被検体Rとし、その被検体Rの欠陥部等の検出装置を示している。本実施形態における被検体としての薄板状鉄系焼結体製品は、例えば板厚3mmで縦、横が50mm×50mm程度のサイズのものが対象となっている。図1は、実施形態の薄板状の鉄系焼結体製品(R)の欠陥部等の検出装置10の概略構成及び使用状態を示す図であり、図において、被検体Rを下面側から加熱する状態で支持し、同時に上方側から冷却流体を供給し、温度差を強制的に形成させながら、被検体から放射される赤外線を検出して温度分布画像を取得し、例えば等温線表示処理を行なうことにより欠陥部等での顕在化した等温線の断層状態から被検体の欠陥部等を検出するものである。
【0034】
図1において、被検体欠陥部等の検出装置10は、被検体Rを加熱する加熱装置12と、該被検体Rを同時に冷却する冷却装置14と、その際、被検体Rから放射される赤外線を検出する赤外線検出装置16と、を含む。本実施形態において、加熱装置12は、被検体Rを加熱する第1の手段であり、冷却装置14は、加熱装置による加熱と同時に第1の手段とは逆の熱作用となる冷却作用を加えるべく同被検体Rを冷却する第2の手段である。
【0035】
加熱装置12は被検体Rを加熱して被検体R自体の温度を上昇させ、赤外線放射量を増加させる赤外線放射量増加手段であり、熱放射する加熱用器体に物理的に接触させて行なう直接の熱伝導による加熱のほか、ガス、液体その他の加熱流体を吹き付けて加熱する方法、さらには、電磁波等を介した加熱等を含む。
【0036】
本実施形態において、加熱装置12は、被検体Rを上面に着脱自在に載置させて搬送移動させ、同時に該被検体Rを加熱する加熱搬送装置12Aとして構成されている。すなわち、本実施形態では、加熱装置は、被検体Rの下面側を加熱する。さらに、被検体をその上面側に載置させて支持する。加熱搬送装置12Aは、搬送コンベア等の搬送装置122と、該搬送装置に適宜の間隔で複数配置されて搬送される加熱受台124と、を含む。すなわち、本実施形態では、加熱装置は、被検体を同時に加熱又は冷却する手段が搬送装置に搬送される受台Tに一体的に組み込まれた加熱受台とされている。そして、被検体を加熱受台に載置させて移動可能状態で被検体の下面側から加熱又は冷却させる。なお、被検体の下面側を冷却し、上面側を加熱する場合で、被検体を搬送しながら冷却する場合には、通常は受台に冷却装置を搭載するか受台自体を冷却してその上面に被検体を載置させて搬送させる。このときは、例えば加熱受台は、冷却受台とされ、かつ冷却搬送装置として構成される。図1に戻って、加熱受台124は、被検体Rを上面に着脱自在に載置させ、かつ、被検体を下面から面接触により熱伝導加熱する手段である。図3−aにおいて、加熱受台124は、その内部に発熱源128を有している。具体的には、図において、ロッドヒータ130が加熱受台124の内部に挿入されて、図示しない電源に接続することにより、通電によってその電気抵抗により発熱する。発熱源128は、第1の温度調節装置132により加熱温度調節、設定が可能となっており、加熱温度を一定に保持することにより、一定温度で加熱し続けた状態で被検体を搬送する。被検体の搬送速度は、被検体の上方からの冷却能力、赤外線検出装置の検出機能にもよるが、本実施形態では、例えば、2mm/sec〜15mm/secが好ましく、最適には、3.5mm/sec〜10mm/secがよい。
【0037】
鉄系焼結体製品の加熱を大きくすると、加熱・冷却による被検体製品のクラックの拡大、製品内部への熱的損傷を生じさせるおそれがあり、この点から、むしろ、加熱温度は可能な限り低い温度に抑制するのがよい。すなわち、欠陥部等と正常部分とで放射赤外線量に大きな差異が出るものであって、その範囲で可能な限りの低い温度に設定するのがよい。本実施形態では、加熱受台124による加熱は、その上面に載置した被検体としての鉄系焼結体製品の表面温度が60℃〜120℃の温度範囲となるように行なうと良い。より好ましくは、加熱される鉄系焼結体製品の表面温度が90℃〜100℃の範囲であるとよい。加熱受台124の底面あるいは底面及び側面は、断熱材134により断熱されており、周辺部品への熱伝導による影響を遮断し、安全が確保される。発熱源としては、ロッドヒータのほかに、例えば、図3−bのように、パネルヒータ136を下面側に配置させて加熱させてもよい。
【0038】
加熱受台124は、四角箱形の外形を有し、上面が均一平面の載置面126とされる。載置面126は、内部の発熱源128を介して面全体が均等な温度となるように加熱されるのが好ましい。また、本実施形態では、搬送コンベア上に加熱受台124を載置させ、その上面に被検体を載置させて搬送移動させるようにしているが、加熱受台自体を自走式としてもよい。なお、被検体は静止状態で加熱してもよい。これによって、加熱搬送装置12Aは、被検体Rを上面に着脱自在に載置させ、かつ、被検体を下面から面接触により熱伝導加熱し、さらに、該被検体Rを移動させる機能を有する。被検体Rを移動しながら加熱させることにより、被検体の加熱と搬送を同時に行なえ、ある程度の数量を集中的に処理する必要がある生産ライン等において、効率よく、短時間で欠陥部等の検出を行なえる。また、被検体Rを移動しながら加熱させる場合には、流体の吹き付けによる熱作用が有効に機能する。
【0039】
なお、本実施形態では、被検体を加熱受台に受けさせてこれを搬送させることにより、被検体の載置支持、加熱、搬送を行なうようにしているが、被検体を冷却受台に受けさせてこれを搬送させることにより、被検体の載置支持、冷却、搬送を行なうようにし、被検体の上面側から同時に加熱させるようにしてもよい。
【0040】
さらに、本実施形態では、図2に示すように加熱受台124には、磁力吸着部127が設置されている。磁力吸着部127は、被検体Rを磁力または空気吸引力を含む吸引手段により着脱自在に吸着する吸着機構125を構成する。本実施形態では、載置面126の一部あるいは全部について磁性体を磁力吸着可能な磁石装置が設置されており、これによって、鉄系焼結体製品による被検体Rを簡単に加熱受台上に着脱自在に載置させ、載置したときに磁力作用により位置が確実に固定されて容易にずれることがなく、被検体の装置への供給、検出、回収を簡単、確実に行なえる。磁力吸着部127は、永久磁石部材や電磁石を用いることができる。なお、被検体の受台に対する吸引手段としては、磁力の他、空気吸引力、接着力、その他の任意の吸着手段があり、これを利用して被検体を着脱自在に受台上に載置させ吸着された状態で搬送しながら同時加熱、冷却させるようにすると良い。例えば、空気吸引力による場合には、図7に示すように受台上面に複数の空気吸引孔129aを設け、これらの孔に共通に連通する空気溜り室129bを設け、この空気溜り室にフレキシブルダクト129cを介して空気吸引駆動装置129dに連通接続し、これによって、複数の空気吸引孔129aから、被検体を吸着しつつ、被検体を搬送移動させることができる。
【0041】
図1に戻って、冷却装置14は、加熱装置12による加熱と同時に該加熱装置とは逆の熱作用を加えるべく、この被検体を冷却する冷却手段であり、本実施形態において、該冷却手段すなわち、冷却装置14が第2の手段とされる。すなわち、本実施形態においては、被検体の下面側から該被検体Rを加熱し、同時に、該被検体Rの上方から被検体上面を冷却するものである。冷却装置14自体は移動するようにしても良いが、被検体の赤外線量の検出の上では、両方が移動する必然性は薄く、むしろある熱作用を加えながら被検体を搬送させるとともに、同時に相反する熱作用を加える加冷(加熱)側は、静止状態として欠陥部等を検出するほうが効率が良い。本実施形態では、冷却装置14は、図示しない固定機構により、加熱受台124の搬送移動経路上で固定設置されている。
【0042】
図1、図2において、加熱受台124の搬送移動経路上方(図1,2上被検体の上方位置)に設置された冷却装置14は、例えばコンプレッサによる圧縮空気あるいは低温空気を被検体の上方から被検体の表面に向けて供給する冷却用流体供給手段であり、本実施形態において、該冷却装置14は、空気供給源としてのファン142と、空気の噴射ノズル144と、ノズル口145を含む冷却ガス供給装置14Aから構成されている。
【0043】
図4、図6において、冷却ガス供給装置14Aは、移動中の被検体Rの進行方向前部側から順次後部側にかけて相反する熱作用を生じさせる流体を被検体に加えるように設置されている。このとき、図6−aのように、被検体の移動方向に向けて吹き降ろすようにノズル口を配置させてもよいし、逆に、図6−bのように、被検体の移動方向に逆行するような向きに冷却空気を吹き降ろすように配置させてもよい。そして、本実施形態では、冷却ガス装置14Aの噴射ノズル144は、搬送移動される被検体Rの進行方向に対して交差する線状又は帯状に冷却作用を生じさせる空気Irを供給するように設置されている。このときの冷却能力としては、被検体としての鉄系焼結体製品の上面内及び赤外線検出手段の視野範囲内での温度差が50℃以内になるように冷却するのがよく、有利には、20℃〜30℃の温度差で鉄系焼結体製品上面を冷却するのが良い。したがって、少なくとも鉄系焼結体製品においては、上記を目安に冷却空気温度、流量を設定すると良い。この際、冷却流体(Ir)は、一定の流量で被検体の表面に当たるように設定するのが好ましい。
【0044】
図2、図4において、噴射ノズル144のノズル口145は、搬送される被検体の進行方向に対して交差する方向に長く線状又は帯状に形成され、かつ、連続又は不連続に開口を形成して設けられている。そして、該ノズル口145の開口は、図6のように、搬送される被検体の上方位置から空気又はガスを吹き降ろすような向きに設定されている。ノズル口145と被検体Rとは例えば1mm〜10mm程度の間隙幅が設定されており、至近距離でこれらの冷却(加熱)流体を被検体に噴射させることにより、同時加熱、冷却を効果的に行なえるようにしている。なお、このノズル口と被検体Rとの間隔は上記に限らず、流体温度、流速、流量等に応じて任意に設定することができる。ノズル口145の向きは、上方から被検体の表面に向けて直角状に吹き降ろすように噴射してもよいが、冷却用流体が被検体の表面に吹き付けられた後、被検体の面上を帯状に広がるように噴射させるのがよい。このようにある一定の広がりをもった面状に冷却用流体を下面側から加熱される被検体の上面側に吹き付けることにより、赤外線センサによる線量検出の範囲を広く確保でき、検出精度を向上させ得る。また、赤外線センサによる線量の検出時のセンサ側の取り付け自由度を確保できることや、センサの狙い位置設定操作容易性、並びに、赤外線カメラによる視野範囲の設定の自由度が高くなる。なお、本実施形態の冷却装置のノズル口145は、図5(a)のように、一方向に長く連続するスリット状の開口としているが、図5(b)のように、複数の長孔を直線状かつ不連続に配置させた構造としても良いし、また、図5(c)のように、複数の丸孔を直線状かつ不連続に配置させた構造としても良い。
【0045】
本実施形態では、図示しないが、この冷却装置の冷却用流体の吹出し温度を調節する第2の温度調節装置を設け、この第2温度調節装置を制御装置に接続して、加熱側の温度調節装置132と、冷却装置による冷却流体の温度を調節自在とし、加熱と同時に行なわれる冷却の両者の温度差を自在に可変設定可能とするとよく、被検体の種類や特性に応じて検出のための最適な赤外線放射量を得られる条件を設定することができる。
【0046】
本実施形態において、噴射ノズル144により、加熱受台124上に載置された鉄系焼結体製品の上面を冷却する際の圧縮空気、低温空気を吹き付ける範囲は、図4において、赤外線検出手段の視野範囲の1/3程度の範囲を冷却するように設定されている。本実施形態では、赤外線カメラを介して取り込まれたデータを画像処理により等温線処理し、表示装置に等温線を常時表示した状態とし、欠陥部等で表面温度が変動する際に等温線の帯が断層状にずれた状態で表示させるようにしている。したがって、このような低温空気による冷却範囲と、赤外線検出手段による視野範囲を設定しておくことにより、特に被検体を一定方向に移動させながら連続的に検出する作業の場合に、検出精度を維持し得る。なお冷却流体(被検体の下面冷却の場合は加熱流体)は、一定の流量で被検体の表面に当てられる。これにより、画像処理による安定した等温線表示が可能となり、同時に、欠陥部等における異常な温度分布状態を視覚的にも検出しやすいものとなる。
【0047】
図1、2において、赤外線検出装置16は、被検体Rの同時加熱及び冷却中に被検体から放射される赤外線を検出する赤外線検出手段であり、本実施形態では、被検体Rは、表裏面を有する板状の物体からなり、その表裏面にそれぞれ相反する熱作用が加えられる。そして、赤外線検出手段は、加熱搬送装置12Aにより加熱かつ搬送されている被検体を冷却ガス供給装置14Aによる冷却中に被検体上面の熱分布状態を検出する。本実施形態において、被検体Rの上方側に赤外線検出装置の集光部が配置されており、下方側の被検体から放射される赤外線量を測定し、欠陥部等の有無を検出する。
【0048】
本実施形態において、赤外線検出装置16は、赤外線撮像装置162と、赤外線撮像装置からのデータを基礎として欠陥部等の有無を判定し有りの場合に外部に信号を出力するとともに、表示装置18と冷却装置14に接続された制御装置20と、制御装置20の指示により赤外線撮像装置からの画像データに基づき画像表示して欠陥部等を可視的に表示させる表示装置18と、を含む。
【0049】
本実施形態において、赤外線撮像装置162は、被検体から放射される赤外線エネルギー量により温度分布を測定する赤外線サーモグラフ(赤外線サーモグラフィ)と、赤外線カメラと、を含む。赤外線撮像装置162は、例えば、光学系としての集光レンズ164、焦電素子などの検知素子、増幅回路、A/D変換回路、温度変換、画像処理装置等を含み、被検体からの赤外線放射エネルギーを検出し、そのデータからの温度分布を画像データとして生成させる。
【0050】
制御装置20は、赤外線撮像装置からの被検体の赤外線エネルギーの画像データを基礎として欠陥部等の有無を判定し有りの場合に外部に信号を出力する機能と、冷却装置14に接続されて所定の温度差で被検体を同時加熱、冷却しうるように制御する機能と、を有し、さらに、本実施形態では、赤外線撮像装置162の画像データより等温線データを演算し生成してCRT、液晶モニタ等からなるディスプレイ装置などの表示装置18に所要の温度差幅の複数の帯状等温線を所要の間隔で表示させる。制御装置20は、冷却装置14の空気の供給駆動ファン142に電気的に接続されており、冷却装置を駆動して被検体の上面側を冷却する状態で赤外線撮像装置による赤外線データを取得するように制御する。なお、制御装置20は、被検体の加熱装置による加熱温度調節装置132や、冷却装置を圧縮用ポンプで構成する際の温度調節装置に接続して、予め設定された同時加熱、冷却による温度範囲を維持するようにし、赤外線検出手段による検出を行うようにしても良い。また、制御装置20は、冷却装置14に接続されて外部操作により冷却装置14の冷却用流体の吹出し量を設定する機能と、を有してもよい。
【0051】
赤外線検出装置16は、上記の実施形態では、固定状態とされ、一定の視野範囲Vで一定の視野領域において被検体を撮像するようにしているが、これに限らず、被検体Rに対して相対的に移動しながら被検体から放射される赤外線を検出するようにしてもよい。
【0052】
また、本実施形態において、制御装置20は、赤外線エネルギーの画像データを基礎とした欠陥部有りの判定により、当該欠陥部有りの被検体製品を加熱受台124から離脱させ、搬送装置122の搬送経路K1から他の区画側K2に除外させる図示しない選別装置に接続されており、まとまった数量の被検体について連続的にそのキズ等の欠陥部の検出を行なえるようになっている。
【0053】
次に、本実施形態の被検体欠陥部等の検出装置10を用いた鉄系焼結体製品としての被検体Rの検出方法について、説明する。図1において、搬送コンベア等の搬送装置122に搬送されて所定の間隔で複数の加熱受台124が搬送され、該加熱受台124の上面に薄板状鉄系焼結体製品からなる被検体Rが着脱自在に載置されている。複数の被検体は搬送装置によりそれぞれ等速で例えば直線状に移動する。このとき、被検体Rは、加熱受台の磁力吸着部127により磁気吸着されて確実に固定された状態で搬送移動される。加熱受台124は、発熱源を介して上面の薄板状鉄系焼結体製品を加熱し、その際、該薄板状鉄系焼結体製品の表面温度が例えば90℃程度となるようにされ、その加熱状態を維持したまま搬送ライン上を移動する。
【0054】
冷却装置14の噴射ノズル144から鉄系焼結体製品の表面温度との温度差が例えば25℃程度となるような冷却用空気が噴射され、被検体Rを同時に加熱、冷却させる。冷却用空気の温度は、制御装置20に接続された調整ダイアル等の外部操作部により入力設定される。このとき、赤外線検出装置の赤外線撮像装置162は、レンズにより集光して鉄系焼結体製品Rから放射される赤外線Lを検出する。赤外線検出装置16は検出された赤外線データを見掛け上の温度分布として画像処理する。赤外線検出装置16の視野範囲は、少なくとも被検体Rの移動経路であって、被検体の上面全体からの放射赤外線を検出し得るような範囲として設定されており、このとき、被検体Rからの赤外線データによる画像を所定の時間間隔で更新処理し、被検体Rの移動に伴ない被検体表面側からの放射赤外線量を検出する。同時に赤外線検出装置16は、赤外線データを制御装置20に供給する。
【0055】
制御装置20は、赤外線撮像装置からの被検体の赤外線エネルギーの画像データを処理して、温度データが設定された基準となる閾値を越えた際に、欠陥部等の存在による温度変化として、欠陥部有りとの判定結果を選別装置側に出力する。さらに、制御装置20は、赤外線撮像装置からの被検体の赤外線エネルギーの画像データを基礎として等温線を演算し、生成した等温線データを表示装置18に出力する。表示装置18は、制御装置20からの等温線画像処理データを入力して色分け処理したカラーの等温線画像を表示する。制御装置20は、さらに、冷却装置の冷気の温度制御機能を有し、所定の設定温度を維持して温度差を保持させる。
【0056】
次に、図8ないし図13により、被検体に加えられる同時加熱、冷却による被検体内の熱移動について説明する。図8は、欠陥部としてのクラック欠陥がない場合の鉄系焼結体製品からなる被検体R上面の熱移動を示し、図9は、そのときの被検体Rを断面的に見た説明図である。被検体Rには、常に加熱受台124からの熱2が加えられ(図7)、その加えられる熱は図9のように、被検体内部に熱流入2Aする。同時にこの被検体Rの上面は部分的(例えば進行方向についての前部側)に冷却されるので、被検体R上面全体では温度差が生じ、被検体R上面では高温領域3と、低温領域4が形成される。図9より、被検体R断面の温度分布では、表層部において高温領域3(被検体後部側)から低温領域4(被検体前部側)への熱移動5が生じ、同時に被検体Rの下面の加熱受台側からの熱流入2Aの双方が発生して被検体Rの上面になだらかな温度分布が形成される。
【0057】
一方、図10、図11は、クラック欠陥40がある場合を示す。図10は、クラック欠陥がある場合の被検体R上面の熱移動、図11はそのときの断面から見た熱移動を示している。図10において欠陥40部分を挟んで高温領域3から低温領域4への熱移動5は該クラック欠陥40により遮られ、被検体R下面からの熱2の一部が低温領域に熱流入2Aするが、高温領域2から低温領域3への熱移動5は遮断される。このため、クラック欠陥40の境界において、高温領域3側と低温領域4側とで欠陥部等を有さない正常な被検体に比べてより大きな温度差が生じる。これによって、被検体のクラック欠陥部等における大きな温度差を利用してそれらの欠陥部等を検出しやすくできる。
【0058】
この大きな温度差は、例えば、本実施形態の鉄系焼結体製品その他の被検体の上面に異物が付着しているような場合においても形成される。図12、図13は、被検体表面に異物が存在する場合の検出の際の熱移動作用について説明しており、図において、冷却装置14により赤外線検出装置16の視野範囲全体を冷却すると、異物部分50の温度が異物非付着部分(正常部)に比べ低くなる。これは図13に示すように、被検体Rには下面からの熱流入2Aがあり、正常部ではそれらの流入熱は被検体上面へ到達するが、異物部分50では、正常部より熱伝導率が低いため、該異物部分の上面側へ達する熱流入2Bは小さい。したがって、異物部分50上の赤外線放射量は正常部と比較して少なくなるため、異物部分50の温度は正常部に比べ低くなる。したがって、上記のように、同時加熱、冷却工程を行なうことにより、欠陥部と正常との境界に正常部と比較して大きな温度差を生じさせ、赤外線検出装置16により得られる温度分布画像へ画像処理しやすくなり、非破壊的に確実かつ精度良く欠陥を検出することができる。
【0059】
これによって、クラック欠陥ばかりでなく、被検体の表面へ異物等が付着したような場合においても、この大きな温度差を利用して欠陥部等を検出できる。具体的には、例えば異物の場合には、0.2μm角以上の大きさであれば検出可能であることが実験的に証明されている。被検体R上面に異物が存在する場合の検出方法としては、加熱受台124を移動させた状態で冷却するようにしてもよいが、冷却工程において加熱受台124を停止させた状態で冷却空気を吹き付けるようにしてもよい。この場合においても、上記と同様に、加熱、冷却は同時に行なわれる。加熱受台124を停止させた状態で冷却を行なう場合、圧縮空気供給による場合には、例えば圧縮空気圧は0.1〜0.7Mpaが好ましく、最適には、0.3〜0.5Mpaとするとよい。また、その際の冷却時間は、0.1秒〜1秒が好ましく、より好適には、0.3〜0.7秒であるとよい。さらに、冷却の際には、赤外線検出手段の視野範囲全体の冷却を行なうようにするのが良い。
【0060】
次に、赤外線検出装置16から得られた熱分布画像へ画像処理を行なって、等温線画像を生成させる際の方法について、説明する。制御装置20において、赤外線撮像装置162の画像データより等温線データを演算し生成し、表示装置18に所要の温度差幅の複数の帯状等温線を所要の間隔で表示させる。欠陥検出時の画像処理方法としては、等温線を利用する方法又は画素間で周囲と大きく異なる温度差に対し微分を利用する方法がある。なお、ここで示す等温線とは熱分布画像中で値をある等間隔で設定し、設定した値すべてを特定の値に置き換えて、熱分布画像上へ描かれる所要の線幅を有する帯状線のことであり、直線、曲線どちらで表示しても良い。この特定の値はどのような値でも良いが、0もしくは1が好ましい。
【0061】
等温線を利用した欠陥検出方法は、赤外線検出装置16から得られた熱分布画像中へ所要間隔幅で複数の等温線を描き、その熱分布画像中の等温線部分での値は0とし、等温線以外の部分は1とする。このときのそれぞれの等温線の中心温度としては55℃〜85℃で、それらの中心温度に対して0.1℃〜0.5℃の範囲(等温線の線幅に対応する)で描くことが好ましく、また、隣接等温線間の温度は、1℃〜5℃で描かれることが好ましい。最適には、中心温度が65℃〜75℃で、その中心温度に対して0.2℃〜0.3℃の線幅範囲であり、また、等温線間温度は1℃〜3℃の範囲とするとよい。
【0062】
図14は、欠陥がない場合の鉄系焼結体製品としての被検体R上面の熱分布画像とそのときの等温線を示している。この図中に表示される等温線60a〜60c・・・は、冷却工程において、赤外線検出装置16の視野範囲17内で高温領域3から低温領域4にかけて描かれる。このとき等温線60a〜60c・・・は視野範囲の外枠17Aから対向する外枠17Aまで1本の連続した帯状の等温線として描かれる。
【0063】
図15において、等温線が欠陥箇所40を横切る場合、等温線60a自体は、図15に示すように連続しているが、線幅Waが欠陥部分40で異なる状態となる。すなわち、欠陥部分での線幅40Wa、40Wb、40Wc・・・は、例えばクラック部分における熱移動が阻害されることにより、非欠陥部分の線幅に比べて細くなる。しかも各等温線60a〜60c・・・は、欠陥部分40において非欠陥部分の等温線からオフセット状にずれて表示される。そして、各等温線に対する欠陥部分について、一般的に画像処理の手法として知られている膨張及び縮退処理を施すことで、欠陥部の細い線は消去され、図16に示すように外枠17Aから外枠17Aまでが欠陥部分の存在によりオフセット状に分断された不連続な等温線651〜653が描かれる。すなわち、欠陥部分40を境にした一方の非欠陥部分等温線と他方の非欠陥部分等温線は、断層状にずれた状態で表示される。この不連続性を欠陥部として判断する。
【0064】
また、ある画素間における周囲とは大きく異なる温度差に対して微分を利用して表示させる方法としては、エッジ検出処理がある。赤外線検出装置16から得られた熱分布画像中で、既知であるエッジ検出処理のなかでもcanny法による処理を用いることが好ましい。この画像処理により欠陥部分では、ある画素間で正常部と比べ大きな温度差あるため、欠陥部分の境界に沿った線が検出される。
【0065】
次に、具体的にクラック欠陥検出の例を示す。
[実施例1]
ここでは、鉄系焼結体製品Rにクラック欠陥がある場合を示す。表面温度が120℃程度となるまでロッドヒータにより加熱した加熱受台上に薄板状鉄系焼結体製品Rを載置させる。加熱受台124はこの温度を維持した状態で薄板状鉄系焼結体製品Rを冷却工程へ搬送する。このとき、薄板状鉄系焼結体製品の上面の温度は、加熱受台124による加熱により約100℃に保たれ、搬送速度は、4mm/secの速度である。
【0066】
搬送装置122により定速搬送される加熱受台124へ載置された薄板状鉄系焼結体製品Rは、冷却工程において搬送速度と加熱受台124からの加熱温度を変化させることなく該冷却工程を通過していく。冷却工程では冷却手段として圧縮空気を使用しており、このときの噴射ノズルのノズル口から噴射される圧縮空気流量は約5L/minである。
【0067】
加熱受台から下面を加熱され、同時に圧縮空気により上面を冷却された薄板状鉄系焼結体製品Rは、その上面から赤外線を放射する。この薄板状鉄系焼結体製品Rから放射される赤外線は、同時にその視野領域の範囲を該製品Rに設定した赤外線撮像装置162により検出され、得られたデータは赤外線検出装置16において、画素、濃度、色、テクスチャ等の属性、領域などの処理を行なった一次画像データを生成し、該データは、制御装置20へ送出される。赤外線撮像装置で得られた一次画像データは、赤外線検出装置内部で熱分布画像へ変換され、欠陥検出の基本画像とされる。なお、赤外線検出装置16の視野範囲に収まらない場合は、上記と同様に再度、冷却工程を通過させながら製品Rの表面上から放射される赤外線を検出する。このときの加熱受台124、冷却装置14の条件も上記と同様で処理される。
【0068】
制御装置20では、得られた熱分布画像中、対象となる画素を次の方法で抽出する。例えば、80℃を基本値とし、更に基本値に対し±4℃ごとの加算値を設定する。さらに基本値と加算値に対しそれぞれの値の±0.4℃の範囲にある数値も同時に抽出してくる。具体的には、80℃を基本値とすると、加算値は、76℃と84℃となり、熱分布画像中の薄板状鉄系焼結体製品Rの範囲内で可能な限り抽出する。さらに、これらの値に対し、80℃であれば、80.4℃以上、79.6℃以下のように基本値及び加算値の±0.4℃の範囲の値をすべて抽出する。抽出後、等温線の構成要素となる値以外はすべて0と置き換える。
【0069】
上記で抽出された0以外の値を等温線の要素画素とし、これらの要素の値をすべて1と置き換える。置き換えた後、等温線は各基本値とその値に対する±0.4℃の範囲の値で構成されるので、各々の等温線を同じ値でラベリングする。具体的には79.6℃から80.4度までの値をすべて1(1)、83.6℃から84.4℃までの値すべてを1(2)、75.6℃から76.4℃までの値をすべて1(i){i=自然数}と置き換える処理である。この処理により各等温線ごとに任意の番号が割り振られる。
【0070】
上記ラベリングされた等温線に対し縮退処理をかける。この等温線がクラック欠陥を跨いでいる場合、クラック欠陥部の等温線は極端に細くなるので、縮退処理をかけることで等温線が途切れる。欠陥がない場合は途切れることはない。
【0071】
各等温線は別々の番号が割り振られているので、ある1画素を中心としてその周囲に同じ番号が振られている画素が存在すれば、その等温線上に欠陥はないと判定され、逆に存在しなければその等温線上に欠陥があると判定する。この処理は赤外線検出装置16から送信されたデータ中の薄板状鉄系焼結体製品Rの範囲内で繰り返し行なわれる。
【0072】
表示装置18では、上記の処理による撮像装置の視野範囲についての等温線表示画像が製品Rの移動に伴い表示され、欠陥箇所をモニタにより目視可能である。
【0073】
[実施例2]
次に、異物付着による欠陥検出例を示す。
【0074】
表面温度が120℃程度となるまでロッドヒータにより加熱した加熱受台上に薄板状鉄系焼結体製品Rを載置させる。加熱受台124はこの温度を維持した状態で薄板状鉄系焼結体製品Rを冷却工程へ搬送する。このとき、薄板状鉄系焼結体製品の上面の温度は、加熱受台124による加熱により約90℃に保たれている。
【0075】
加熱受台124により加熱されながら冷却工程まで搬送され、冷却工程で一旦、停止する。停止すると同時に冷却装置14により、薄板状鉄系焼結体製品Rの上面が冷却される。冷却装置14では圧縮空気を使用し、そのときの圧力は0.5Mpaで冷却時間は0.3secであり、冷却範囲は赤外線検出装置16の視野範囲全体である。
【0076】
赤外線検出装置(赤外線撮像装置)は上記冷却装置の作動と同時に薄板状鉄系焼結体製品R(被検体R)の表面上から放射される赤外線を検出する。ここで得られる赤外線検出データは赤外線検出装置内で熱分布画像へ変換される。
【0077】
この場合の熱画像の特徴は、異物付着範囲部分の値がその周辺の値よりも低くなるので、異物部分とその周囲との境界で値の差が大きくなる。これは例えば有機物からなる異物部分の熱伝導率が低いため、異物部分への熱流入が小さくなり、周囲よりも値が低くなるからである。また、金属異物の場合も上記同様の状態で境界上に値の差が現れる。
【0078】
得られた熱分布画像を基に、エッジ抽出の画像処理を施す。このとき使用するエッジ抽出方法としては、一般的に知られているcanny法を使用することで、異物部分とその周囲との境界線が抽出される。
【0079】
更に、この抽出された境界線の内側を欠陥として判定する。この方法により異物の大きさ、位置が明確になる。
【0080】
上記実施例のクラック欠陥や異物の有無判定については、等温線演算処理により行なっているが、必ずしも等温線その他の画像処理工程を介してその有無判定を行なうようにする必要はなく、欠陥位置の特定等が不要な場合には、画像処理の前の欠陥なしの場合の基準データとの数値比較判定により欠陥の有無判定を行うようにしても良い。
【0081】
以上説明した本発明の被検体欠陥部等の検出装置及びその検出方法は、上記した実施形態のみに限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した発明の本質を逸脱しない範囲において、任意の改変を行ってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0082】
本発明の被検体欠陥部等の検出装置及びその検出方法は、種々の原材料、半製品、製品の表面又は内部のクラックあるいは表面異物付着を含む欠陥部等の検出装置及びその検出方法において、有効に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】本発明の第1実施形態に係る被検体欠陥部等の検出装置の概略構成を含む使用状態説明図である。
【図2】図1の被検体欠陥部等の検出装置部分の拡大構成説明図である。
【図3−a】図1の検出装置の加熱受台の拡大概略斜視図である。
【図3−b】図1の検出装置の他の加熱受台の例の拡大概略斜視図である。
【図4】図1の検出装置の加熱受台及び冷却用噴射ノズルを表した平面説明図である。
【図5】種々のノズル口の形状、配列の例を示す図である。
【図6−a】図1の検出装置の冷却用流体噴射状態を示す説明図である。
【図6−b】図1の検出装置の他の冷却用流体噴射状態を示す説明図である。
【図7】図1の検出装置の吸着機構の他の例を示す説明図である。
【図8】本発明の第1実施形態に係る被検体欠陥部等の検出装置の正常被検体についての熱移動状態を説明する作用説明図である。
【図9】本発明の第1実施形態に係る被検体欠陥部等の検出装置の正常被検体についての熱移動状態を説明する作用説明図である。
【図10】本発明の第1実施形態に係る装置の欠陥部等有り(クラック欠陥)の被検体についての熱移動状態を説明する斜視作用説明図である。
【図11】本発明の第1実施形態に係る装置の欠陥部等有り(クラック欠陥)の被検体についての熱移動状態を説明する断面作用説明図である。
【図12】本発明の第1実施形態に係る装置の欠陥部等有り(異物付着欠陥)の被検体についての熱移動状態を説明する斜視作用説明図である。
【図13】本発明の第1実施形態に係る装置の欠陥部等有り(異物付着欠陥)の被検体についての熱移動状態を説明する断面作用説明図である。
【図14】本発明の装置の実施例による等温線表示処理の具体例を説明する図である。
【図15】本発明の装置の実施例による等温線表示処理の具体例を説明する図である。
【図16】本発明の装置の実施例による等温線表示処理の具体例を説明する図である。
【符号の説明】
【0084】
2 加熱
3 高温領域
4 低温領域
5 熱移動
10 検出装置
12 加熱装置
12A 加熱搬送装置
122 搬送装置
124 加熱受台
126 載置面
127 磁力吸着部
132 第1温度調節装置
14 冷却装置
14A 冷却ガス供給装置
144 噴射ノズル
145 ノズル口
16 赤外線検出装置
162 赤外線撮像装置
17 視野範囲
18 表示装置
20 制御装置
40 クラック欠陥
50 異物部分
60a・・・ 等温線
Wa 線幅
R 被検体
L 赤外線


【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体を加熱又は冷却する第1の手段と、
第1の手段による加熱又は冷却と同時に第1の手段とは逆の熱作用を加えるべく同被検体を冷却又は加熱する第2の手段と、
被検体の同時加熱及び冷却中に被検体から放射される赤外線を検出する赤外線検出手段と、を含むことを特徴とする被検体欠陥部等の検出装置。
【請求項2】
赤外線検出手段は、被検体に対して相対的に移動しながら被検体から放射される赤外線を検出することを特徴とする請求項1記載の被検体欠陥部等の検出装置。
【請求項3】
加熱又は冷却する手段のいずれかが加熱流体又は冷却流体を直接に被検体に吹き付けて作用させるものであることを特徴とする請求項1または2記載の被検体欠陥部等の検出装置。
【請求項4】
加熱又は冷却する手段のいずれかが被検体を上面に着脱自在に載置させて移動する加熱搬送装置あるいは冷却移動装置からなる請求項1ないし3のいずれかに記載の被検体欠陥部等の検出装置。
【請求項5】
移動中の被検体の進行方向前部側から順次後部側にかけて相反する熱作用を生じさせる流体を被検体に加えることを特徴とする請求項3又は4記載の被検体欠陥部等の検出装置。
【請求項6】
加熱又は冷却作用を生じさせる流体は搬送移動される被検体の進行方向に対して交差する線状又は帯状に供給されることを特徴とする請求項3ないし5のいずれかに記載の被検体欠陥部等の検出装置。
【請求項7】
加熱流体又は冷却流体は、一定の流量で被検体の表面に当てられることを特徴とする請求項3ないし6のいずれかに記載の被検体欠陥部等の検出装置。
【請求項8】
冷却手段は、連続又は不連続に開口する所定方向に向けた噴射ノズルを有する冷却ガス供給装置からなることを特徴とする請求項3ないし7のいずれかに記載の被検体欠陥部等の検出装置。
【請求項9】
赤外線検出手段は、加熱搬送装置により加熱かつ搬送されている被検体を冷却装置による冷却中に被検体上面の熱分布状態を検出することを特徴とする請求項2ないし8のいずれかに記載の被検体欠陥部等の検出装置。
【請求項10】
被検体は、表裏面を有する板状の物体からなり、その表裏面にそれぞれ相反する熱作用が加えられることを特徴とする請求項1ないし9のいずれかに記載の被検体欠陥部等の検出装置。
【請求項11】
同時に加えられる冷却及び加熱作用について、そのうちの冷却又は加熱のいずれかは被検体の少なくとも略全面を冷却又は加熱するように加えられることを特徴とする請求項10記載の被検体欠陥部等の検出装置。
【請求項12】
同時に加えられる冷却及び加熱作用について、それらのいずれか又は両方について、被検体に作用させる温度の調節が可能であることを特徴とする請求項1ないし11のいずれかに記載の被検体欠陥部等の検出装置。
【請求項13】
加熱搬送装置あるいは冷却移動装置が、被検体を磁力及び空気吸引力を含む吸引手段により着脱自在に吸着する吸着機構が設けられていることを特徴とする請求項4ないし12のいずれかに記載の被検体欠陥部等の検出装置。
【請求項14】
被検体を同時に加熱及び冷却させつつ、被検体から放射される赤外線量を検出することにより被検体の表面の温度分布を計測し、その温度分布に基いて被検体の欠陥部等を検出することを特徴とする被検体欠陥部等の検出方法。
【請求項15】
被検体を同時に加熱及び冷却する手段が搬送装置に搬送される受台に一体的に組み込まれ、被検体を受台に載置させて移動可能状態で被検体の下面側から加熱又は冷却させることを特徴とする請求項14記載の被検体欠陥部等の検査方法。
【請求項16】
加熱又は冷却する手段のいずれかが加熱流体又は冷却流体を直接に被検体に吹き付けて作用させるものであることを特徴とする請求項14または15記載の被検体欠陥部等の検出方法。
【請求項17】
被検体を受台上に載置させた状態で搬送移動させつつ上面側から冷却用流体又は加熱用流体を吹き付けながら被検体の同時冷却及び加熱を行なうことを特徴とする請求項14ないし16のいずれかに記載の被検体欠陥部等の検出方法。
【請求項18】
下面から加熱又は冷却されながら移動する被検体に逆の熱作用となる冷却又は加熱流体を吹き付けるとともに、赤外線検出手段を介して被検体の同時加熱及び冷却中に被検体から放射される赤外線量を検出し、
赤外線量から得られる被検体の表面温度分布に基いて被検体の欠陥部を検出することを特徴とする被検体欠陥部等の検出方法。
【請求項19】
被検体の表面温度分布に基いてモニタ画面に等温線を表示し、さらに欠陥部を検出判定した際に該モニタ画面に等温線の断層状の表示を行わせることを特徴とする請求項18記載の被検体欠陥部等の検査方法。


【図1】
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【図2】
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【図3−a】
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【図3−b】
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【図4】
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【図5】
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【図6−a】
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【図6−b】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2007−327755(P2007−327755A)
【公開日】平成19年12月20日(2007.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−156816(P2006−156816)
【出願日】平成18年6月6日(2006.6.6)
【出願人】(393007916)株式会社九州ノゲデン (10)
【Fターム(参考)】