説明

被検査体の外観検査装置

【課題】 本発明は、被検査体の外観検査において、拡張性が高くフレキシブルなシステム構成を可能とし、また基板などの被検査体の検査時間を短縮し、または検査精度を向上することを目的とする。
【解決手段】 基板2の外観検査装置200において、複数のスレーブPC140は、基板2の撮像を行う複数の撮像部30と、該複数の撮像部30の各々に対応して設けられ、対応する撮像部30により撮像された基板2の撮像データに基づいて基板2の検査を行う。該複数のスレーブPC140の各々は他のスレーブPC140に、該他のスレーブPC140による検査に必要な共用データを送信する。共用データは、各々のスレーブPC140が対応する撮像部30により撮像された基板2の撮像データから取得してものである。スレーブPC140は各々、他のスレーブPC140から受信した共用データを参照して基板2の外観検査を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検査体の外観検査技術に関し、特に複数の撮像手段を有する実装基板の外観検査技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、あらゆる機器に電子基板が実装されるようになっている。これらの電子基板が実装される機器においては、小型化や薄型化および低価格化が常に課題とされており、このため、高集積度設計が広く行われている。この高集積度設計を実現する要素には、各種設計ツールの充実、半導体技術の進歩のほかに、高密度実装技術が挙げられる。この高密度実装のポイントは、製造技術および検査技術にあり、この部品実装後のプリント基板(以下「基板」という)の検査に画像認識技術を用いる技術が提案されている。
【0003】
このため、例えば特許文献1には、コンピュータグラフィックスの応用分野において安価なPC(Personal Computer)と低解像度の表示装置を複数組み合わせた高精細画像生成表示装置において、個々のPCの画像生成負荷を分散させて効率的に高精細画像を呈示する技術について提案されている。また、例えば特許文献2には、実装基板の最終検査結果を管理コンピュータへ出力する最終結果出力手段を備えた実装基板の外観検査システムについて提案されている。
【特許文献1】特開2003−115047号公報
【特許文献2】特開平11−118439号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
基板の検査に画像認識技術を用いる技術は提案されているが、拡張性が高くフレキシブルなシステム構成が可能な外観検査装置が求められている。また更なる基板の検査時間の短縮や基板の検査精度の向上も求められている。しかし、上記提案技術では、全体を統括するコントローラが無くても独立したPCが独自の判断を行う外観検査装置は提案されておらず、拡張性が高くフレキシブルなシステム構成が可能であるとは言えない。また、基板の検査を行うための画像認識は、現在においても高精細画像の認識には検査時間がかかり、検査時間を短縮すれば検査精度を改善することができない。
【0005】
本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、その目的は、被検査体の外観検査において、拡張性が高くフレキシブルなシステム構成を可能とし、また基板などの被検査体の検査時間を短縮しまたは検査精度を向上することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の被検査体の外観検査装置は、被検査体の撮像を行う複数の撮像部と、該複数の撮像部の各々に対応して設けられ、対応する撮像部により撮像された被検査体の撮像データに基づいて被検査体の検査を行う複数の検査手段と、を有する。該複数の検査手段の各々は他の検査手段に、該他の検査手段による検査に必要な共用データを送信する。この態様によると、被検査体の外観検査において、拡張性が高くフレキシブルなシステム構成を可能にすることができ、また基板などの被検査体の検査時間を短縮し、または検査精度を向上することができる。
【0007】
共用データは、各検査手段が対応する撮像部により撮像された被検査体の撮像データから取得したものであってもよい。この態様によると、共用データをあらかじめ他の手段により検査装置に入力するなどの必要がなく、検査の効率を向上することができる。
【0008】
検査手段は各々、他の検査手段から受信した共用データを参照して被検査体の外観検査を行う。この態様によると、共用データをあらかじめ他の手段により検査装置に入力するなどの必要がなく、検査の効率を向上することができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明の外観検査装置によれば、全体を統括するコントローラが無くても独立したPCが独自の判断を行うことで、拡張性が高くフレキシブルなシステム構成が可能となる。また、基板などの被検査体の検査時間を短縮し、または検査精度を向上することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態(以下、「実施形態」という。)について説明する。
【0011】
図1は、本実施形態にかかる外観検査装置200の構成を示す。外観検査装置200は、検査テーブル10や基板搬送テーブル50、撮像システム80などを有している。基板搬送テーブル50は、支持プレート52および2本の搬送レール54などを有しており、搬送レール54は支持プレート52により支持されている。
【0012】
搬送レール54はモータを駆動することにより基板2を搬送する搬送ベルトを有しており、搬送ベルトに載置された基板2を検査テーブル10の略中央まで搬送する。搬送レール54の上方であって検査テーブルの略中央には、基板2の搬送を検知する図示しない光センサなどの非接触センサを使った搬送センサを有しており、この搬送センサが基板2の端面や基板2に設けられた検知孔を検知することにより、基板2が検査テーブル10の略中央に搬送されたことを検知して、搬送ベルトの基板2の搬送を停止させる。
【0013】
支持プレート52および搬送レール54を有する基板搬送テーブル50は、外観検査装置200の下方に設けられた支持シャフトに挿通される挿通部を有しており、これにより基板搬送テーブル50は、搬送レール54が基板2を搬送する方向と垂直な方向に可動に支持されている。基板搬送テーブル50下のボールネジ56がモータの駆動により回転することによって、基板搬送テーブル50を移動し、基板2を撮像システム80へ搬送する。なお、本図手前側の搬送レール54には、搬送レール54上の載置された基板2を上方から押圧して基板2の形状を矯正するクランプが設けられており、検査テーブル10の略中央に搬送された基板2はこのクランプによりゆがみが矯正された状態で、基板2を撮像システム80へ搬送する。
【0014】
撮像システム80は、上部撮像システム80aと下部撮像システム80bを有し、上部撮像システム80aは、上部照明ユニット100a、第1撮像部30a、第2撮像部30bなどから構成され、下部撮像システム80bは、下部照明ユニット100b、第3撮像部30c、第4撮像部30dなどから構成される。(以下、必要に応じて、上部照明ユニット100a、下部照明ユニット100bを「照明ユニット100」と記載し、第1撮像部30a、第2撮像部30b、第3撮像部30c、第4撮像部30dを「撮像部30」と記載する。)。
【0015】
基板搬送テーブル50により基板2が撮像システム80まで搬送されると、照明ユニット100により基板2に光が照射され、撮像部30が基板2の面を撮像する。上部撮像システム80aは、搬送レール54よりも上部に配設され、下部撮像システム80bは、上部撮像システム80aと被検査体である基板2を挟むように搬送レール54よりも下部に配設される。上部撮像システム80aと下部撮像システム80bとの間の基板2の搬送は、照明ユニット100による基板2への光の照射や、撮像部30による基板2の面の撮像とともに制御される。これにより、基板搬送テーブル50により搬送された基板2は、上部撮像システム80aと下部撮像システム80bの間を搬送されながら撮像されることが可能となり、上部撮像システム80aは基板2の一方の面を、下部撮像システム80bは基板2の他方の面を、それぞれ1回の基板搬送工程の中で撮像を完了することができる。なお、1回の基板搬送工程とは、基板の一方向の移動工程でもよく、基板の往復の移動工程であってもよい。
【0016】
撮像システム80により基板2の両面の撮像を終了すると、ボールネジ56を回転することにより、搬送レール54により基板2を搬送した位置まで基板搬送テーブル50を移動し、検査の終了した基板2を次の工程へと搬送する。次に検査2を行う基板がある場合は前述と同様に搬送レール54により検査テーブル10の略中央まで基板2を搬送し、同様に基板2の撮像を行う。
【0017】
図2は、本実施形態にかかる撮像システム80の構成を示す図である。本実施形態においては、被検査体である基板2の検査面を、ラインセンサで走査して画像を形成し、画像認識によって部品の実装状態の合否を判定する。基板搬送テーブル50をモータに制御信号を入力して移動して、このラインセンサによる走査方向と垂直に基板2を搬送することにより、順次ラインごとの画像が得られ、被検査体である基板2の一次元運動で走査が完了する。外観検査装置の別のタイプとして、検査面を二次元的に移行させて停止し、これをくり返してつぎつぎにスポット撮影をするものもあるが、その場合、一般に機構系が複雑となり、検査時間も長い場合が多い。その点で、本実施形態のようにラインセンサを用いる形態は有利である。
【0018】
上部撮像システム80aは、上部照明ユニット100a、上部フレーム36a、上部支持フレーム38、第1撮像部30a、第2撮像部30b、モータ40、中間レンズ42などにより構成され、下部撮像システム80bは、下部照明ユニット100b、下部フレーム36b、第3撮像部30c、第4撮像部30d、中間レンズ42などにより構成される。
【0019】
上部フレーム36aには、第1撮像部30a、第2撮像部30b、中間レンズ42が載置され固定されている。第1撮像部30aは、第1レンズ32a、第1ラインセンサ34aから構成され、第2撮像部30bは、第2レンズ32b、第2ラインセンサ34bから構成される。このように基板の一方の面の撮像を行うために複数の撮像部30を設けることにより、まず高い解像度により基板2の撮像を行うことができることから、検査精度を向上させることができる。また撮像した画像の画像処理を分散することができることから、検査速度を向上することもできる。
【0020】
上部フレーム36aは、上部支持フレーム38に、本図における基板2の搬送方向に摺動可能に支持されており、モータ40が駆動することにより、上部フレーム36aは上部支持フレーム38に対して摺動する。基板の撮像を制御する撮像制御部は、あらかじめ入力されている基板厚さデータに基づいて、モータ40に制御信号を与えて駆動することにより、上部フレーム36aを上部支持フレーム38に対して摺動し、基板2の上面の撮像を行うために焦点を合わせる。
【0021】
上部撮像システム80aにおいて、第1撮像部30aおよび第2撮像部30bは、被検査体である基板2の一面を分担して撮像すべく、基板2の一面に対向して並列して配設されている。また、第1撮像部30aおよび第2撮像部30bの両者の撮像範囲の間に位置する基板2上の部品の検査を行うため、両者の撮像範囲に重複撮像範囲を持つように、第1レンズ32a、第1ラインセンサ34a、第2レンズ32b、第2ラインセンサ34b、および中間レンズ42のそれぞれの配置などが決定される。下部撮像システム80bにおいても同様に、第3撮像部30cおよび第4撮像部30dは、被検査体である基板2の他の一面を分担して撮像すべく、基板2の他の一面に対向して並列して配設されている。また、第3撮像部30cおよび第4撮像部30dの両者の撮像範囲に重複撮像範囲を持つように、第3レンズ32c、第3ラインセンサ34c、第4レンズ32d、第4ラインセンサ34d、および中間レンズ42のそれぞれの配置などが決定される。第1撮像部30aおよび第2撮像部30bと、第3撮像部30cおよび第4撮像部30dは、撮像部30と被検査体である基板2が1回の相対的な移動工程を行うことにより基板2の両面の撮像を行うことができるよう、被検査体である基板2を挟んで対向するよう配置される。
【0022】
上部照明ユニット100aは、相互の光干渉によるブルーミング抑制のため、下部照明ユニット100bよりも基板搬送方向上流側に配設されている。そのため、基板搬送テーブル50が基板2を搬送することにより、基板2は、まず第1ラインセンサ34aおよび第2ラインセンサ34bによる走査範囲であるスタート位置に移動される。以降、基板2がラインセンサ34により1ライン走査されるたびにボールネジ56を駆動するモータに制御信号を与え、基板2が1ライン分進行する。このようにしてラインセンサ34が基板2の搬送方向の長さすべてを走査することにより、基板2の両面の撮像を、一つの基板搬送工程の中で行うことができる。
【0023】
図3は、本実施形態にかかる照明ユニット100の構成を示す図である。照明ユニット100は、上部照明ユニット100aおよび下部照明ユニット100bから構成される。上部照明ユニット100aおよび下部照明ユニット100bは、第1光源102、第2光源104、第3光源106、ハーフミラー110、アクリルシート112などにより構成され、ハーフミラー110を第1光源102、第2光源104、第3光源106が取り囲むようにそれぞれが配置される。
【0024】
第1光源102は、ラインセンサ34の走査方向に被検査体である基板2の長さ以上に列ぶLED(発光ダイオード)群により構成される。第1光源102は、基板2に落射する光を照射することができるように、ラインセンサ34が走査する基板2上の走査ラインの真上に配置され、本実施形態においては、第1光源102は、基板2と平行に配設された基板に設けられたLED群により構成される。なお、効率的に検査中の走査ラインへ落射光を投ずるために、LED群を取り付ける基板を中央からふたつのサブ基板に分け、それぞれのサブ基板に走査方向に列んだLED群を構成してもよい。第1光源102により落射光を基板2に投じ、これをラインセンサ34で検出することにより、基板2内の部品の位置ずれ、欠品、ハンダのヌレの判定などを行うことができる。
【0025】
第2光源104は、基板2と平行に配設された2つの基板に設けられた、ラインセンサ34の走査方向に被検査体である基板2の長さ以上に列ぶLED群により構成される。LEDが取り付けられた2つの基板は、第1光源が走査ラインに落射光を投ずる光路に干渉しないように、基板の搬送方向に走査ラインを挟んで両側に配置される。
【0026】
第3光源106も、第2光源104と同様に、基板2と平行に配設された2つの基板に設けられた、ラインセンサ34の走査方向に被検査体である基板2の長さ以上に列ぶLED群により構成される。LEDが取り付けられた2つの基板は、第1光源および第2光源が走査ラインに光を照射する光路に干渉しないように、基板の搬送方向に走査ラインを挟んで両側に配置される。第2光源104により側射光を基板2に投じ、これをラインセンサ34で検出することにより、基板2内のハンダブリッジの有無、実装部品の間違い、極性の反転などの判定を行うことができる。
【0027】
これらの光源は、第1光源102は緑色の光を照射し、第2光源104は白色の光を照射し、第3光源106は青色の光を照射し、各々の光源は、異なる入射角度で被検査体である基板2を照射する。このため、照明ユニット100は被検査体である基板2に複数の入射角度の光を照射する複合光源として機能する。第1光源102を緑色とし、第3光源106を青色としたのは、近年のLED技術の進歩により、緑色LEDや青色LEDは、白色LEDよりも明るく、SN比のよいクリアな画像が得られるためである。このため、プリント基板は緑色の場合が多いことから、落射光により平明を明るく照射するため、第1光源を緑色としている。また、ICやチップのボディにレーザー印字された文字は、低い角度から青い光を当てることにより認識しやすくなるため、第3光源106を青色としている。
【0028】
第1光源102からの落射光は、ハーフミラー110を通過して基板2の検査面へ入射角がほぼゼロで投じられる。本実施形態においては、第1光源102に幅をもたせており、基板2が反ったときでも入射角がゼロになるような落射光成分が存在するように配慮されている。走査ラインからの反射光は、ハーフミラー110で反射し、中間レンズ42を通過してレンズ32へ入射する。
【0029】
第2光源104および第3光源106と走査ラインの間には、アクリルシート112が設けられる。このアクリルシート112は、第2光源104および第3光源106からの光を拡散する。第2光源104および第3光源106は点光源であるLEDの集合体であるため、拡散作用がなければスポット的な光が画像データに写り込んで検査精度に影響を与える可能性があるからである。
【0030】
本実施形態においては、第2光源104による白色の光、第1光源による緑色の光、第2光源による青色の光の順に、それぞれの光源が独立に、一つの走査ラインについて3回点灯し、1回の点灯ごとにラインセンサ34で基板2を走査している。これにより、基板2に各光源が光を照射した状態の画像を得ることができる。
【0031】
基板2は、基板2の端部から対向する照明ユニット100に光が漏れる場合がある。また、基板2は孔が設けられていたりハンダで埋めきらなかった孔が残っている場合などがあるため、この孔から対向する照明ユニット100に光が漏れる場合がある。このように対向する照明ユニット100から漏れた光がラインセンサ34により直接走査されると、ブルーミングという現象が生じ、基板2の撮像に影響を与えるおそれが生じる。このため、本実施形態において、上部照明ユニット100aと下部照明ユニット100bは、基板の搬送方向にLだけオフセットして配設されている。オフセットする長さLは、ブルーミング抑制の観点から50mm以上であることが望ましい。
【0032】
図4は、本実施形態にかかる検査部であるスレーブPC140を含む外観検査装置200の構成を示す図である。上部撮像システム80aは、第1撮像部30aおよび第2撮像部30bから構成され、第1撮像部30aは第1画像処理部130aおよび検査部である第1スレーブPC140aに対応しており、第2撮像部30bは第2画像処理部130bおよび第2スレーブPC140bに対応している。同様に、下部撮像システム80bは、第3撮像部30cおよび第4撮像部30dから構成され、第3撮像部30cは第3画像処理部130cおよび第3スレーブPC140cに対応しており、第4撮像部30dは第4画像処理部130dおよび第4スレーブPC140dに対応している(以下、必要に応じ、第1画像処理部130a、第2画像処理部130b、第3画像処理部130c、第4画像処理部130dを「画像処理部130」と記載し、第1スレーブPC140a、第2スレーブPC140b、第3スレーブPC140c、第4スレーブPC140dを「スレーブPC140」と記載する。)。
【0033】
各々のスレーブPC140は、スイッチングハブ150を介してネットワークによって他のスレーブPC140にデータの送受信可能に接続されている。また、スレーブPC140は、管理部であるマスターPC160にも接続されている。マスターPC160は、LAN(Local Area Network)にも接続されており、LANに接続された他のPCにも検査結果などを送信することができる。
【0034】
各々の撮像部30のラインセンサ34が走査することにより得られた画像は、各々の撮像部30に対応する画像処理部130に送信される。各々の画像処理部130は、送られた画像の画像処理を行い、対応するスレーブPC140に画像を入力する。
【0035】
スレーブPC140は、それぞれ画像が入力される画像入力ボード、画像データなどのデータを格納するメモリ、画像認識を行うことにより基板2の外観検査を行うCPU(Central Processing Unit)などを有しており、各々の画像処理部130から対応する画像入力ボードへ画像が入力される。画像が入力された各々のスレーブPC140は、メモリに画像を格納し、この対応する撮像部がスキャンした画像を解析することにより、まず認識マークやバーコード、その他検査に必要なデータである共用データを取得する。共用データを取得したスレーブPC140は、他のすべてのスレーブPC140にこの共有データを送信する。共有データを受信した各々のスレーブPCは、この共有データを参照して被検査体である基板2の検査を行う。これにより、各々のスレーブPCは独自に行うべき検査を実行することができる。
【0036】
この処理は、生物の細胞の動きと同様である。すべての細胞は同じ遺伝子を持ち、あるトリガに従って自分に関係する指令のみを選択して実行する。本実施形態において、遺伝子に相当するのは検査データであり、細胞はスレーブPC140に相当する。従来はマスターPC160が複数の画像処理ボードに検査箇所や内容を振り分けて指示していたが、本実施形態のように、各々のスレーブPC140が同じ検査データをもち、自分に関係する箇所のみを選択して実行することにより、被検査体の外観検査において、拡張性が高くフレキシブルなシステム構成を可能とし、検査精度を向上することができ、また検査時間を短縮することができる。
【0037】
図5は、本実施形態にかかる外観検査装置の概念構成図である。本図においては、例として、上部撮像システムの第1撮像部30aおよび第2撮像部30bと、これらに対応する第1スレーブPC140aおよび第2スレーブPC140bの構成について記載するが、下部撮像システムの第3撮像部30c第4撮像部30dと、これらに対応する第3スレーブPC140cおよび第4スレーブPC140dの構成についても適用される。また上部と下部のスレーブPC140同士、例えば、第1スレーブPC140aと第3スレーブPC140cの間のデータの送受信についても適用される。
【0038】
基板2が上部照明ユニット100aによって光が照射されたとき、第1撮像部30aは第1レンズ32aを通して第1ラインセンサ34aにより、第2撮像部30bは第2レンズ32bを通して第2ラインセンサ34bにより、画像を走査する。1ライン画像が走査されると、モータ58に制御信号が入力され、基板2が1ライン分移動する。
【0039】
走査されることにより得られた画像は、第1撮像部30aにより得られた画像は第1画像処理部130aに、第2撮像部30bにより得られた画像は第2画像処理部130bにそれぞれ送信される。各々の画像処理部130は、受信した画像の画像処理を行い、第1画像処理部130aは第1スレーブPC140aのメモリ141aに画像処理を行った画像を送信し格納し、第2画像処理部130bは第2スレーブPC140bのメモリ141bに画像処理を行った画像を送信し格納する。
【0040】
各々のスレーブPC140の解析部142は、それぞれのメモリ141に格納された画像の中で、他のスレーブPC140において基板2の検査に必要な共用データの解析を行う。共同データとは、例えば基板2に設けられた、基板2の位置を示す認識マークの位置データ、基板2に設けられたバーコードなどの識別マークを解析することにより得られる基板2シリアルナンバーや製造年月日などの識別データ、第1撮像部30aおよび第2撮像部30bにまたがって撮像された部品の画像、その他、基板2の検査に必要なデータをいう。
【0041】
解析部142が画像を解析することにより、基板2の検査に必要な共用データを取得すると、メモリ141に共用データを格納し、他のスレーブPC140に共用データを送信する。本図においては、第1スレーブPC140aおよび第2スレーブPC140bが記載されているが、第3スレーブPC140cおよび第4スレーブPC140dとともに、スレーブPC140が相互に共用データの送受信を行う。
【0042】
共用データを受信したスレーブPC140の解析部142aは、受信した共用データを参照して、メモリ141に格納された画像の解析を行い、判定基準記憶部143に記憶された判定基準に基づいて、基板2の検査を行う。これにより、複数の撮像部30により基板2の撮像を行い、複数の撮像部の各々に対応して設けられたスレーブPC140により基板2の検査を行う場合において、各々のスレーブPC140は共用データを共有することができることから、被検査体の外観検査において、拡張性が高くフレキシブルなシステム構成を可能とし、また基板の検査精度を向上させることができ、また基板の検査時間を短縮することができる。
【0043】
なお、各々のスレーブPCのメモリに格納される、基板2を撮像した画像や認識マークの位置データなどの共用データなど、およびスレーブPC140が行った基板2の検査結果は、マスターPC160に送信される。マスターPCは基板2の画像や基板2の検査結果に基づいて、必要に応じて基板2のエラー箇所などの画面への表示などを行う。
【0044】
図6は、本実施形態において、基板2を複数のスレーブPC140で検査する場合の検査の概要を示す図であり、(a)は、基板2の撮像範囲を示す図であり、(b)は、撮像後の基板2の画像を示す図であり、(c)は、検査のため部品のデータを取得した状態の基板2の画像を示す図である。本図においては、基板2の一方の面を例として説明するが、基板2の他方の面についても同様である。
【0045】
図6の(a)において、基板2の左側は第1撮像部30aが撮像し、右側は第2撮像部30bが撮像する。第1撮像部30aによる撮像範囲と第2撮像部30bによる撮像範囲の間において画像が欠落した範囲が生じないように、第1撮像部30aおよび第2撮像部30bの撮像範囲には、重複した撮像範囲が設けられている。
【0046】
基板2には、基板の位置を示す第1認識マーク4aおよび第2認識マーク4bが設けられている。また、基板2の略中央部には、第1撮像部30aの撮像範囲と第2撮像部30bの撮像範囲にまたがって第1部品6と第2部品8が取り付けられている。また、図示しないが、基板2には基板2の識別データを記録したバーコードが設けられている。
【0047】
第1撮像部30aおよび第2撮像部30bにより基板2の撮像を行うと、図6の(b)のように、第1撮像部30aにより本図における基板2の左側の画像が撮像され、第2撮像部30bにより本図における基板2の右側の画像が撮像される。第1撮像部30aにより撮像された画像は、第1スレーブPC140aのメモリ141aに格納され、第2撮像部30bにより撮像された画像は第2スレーブPC140bのメモリ141bに格納される。このとき、第1認識マーク4a、第1部品6および第2部品8の一部の画像は第1撮像部30aにより撮像され、第1スレーブPC140aのメモリ141aに格納される。また第2認識マーク4b、第1部品6および第2部品8の残りの一部の画像は第2撮像部30bにより撮像され、第2スレーブPC140bのメモリ141bに格納される。
【0048】
ここで、まず各々のスレーブPC140の解析部142は、メモリ141に格納された画像の解析を行い、認識マークの画像から認識マークの位置データを取得し、バーコードの画像から基板2のシリアルナンバーや製造年月日などの識別データを取得する。取得した認識マークの位置データや識別データなどの共用データは、送受信部144により他のスレーブPC140に送信される。例えば、基板2の姿勢が微少に傾いていたり、基板2の位置が走査方向や搬送方向にずれてセットされている可能性があるため、基板の検査を行うPCは基板の位置や姿勢を正確に把握して基板2の検査を行う必要がある。このため、本実施形態において、基板2の検査を行う各々のスレーブPC140は、自己が対応する撮像部30の撮像範囲に認識マークが含まれていなかったり、一部の認識マークしか含まれていない場合がある場合に、認識マークの位置データなどの共用データをスレーブPCの間で共用することにより、入力された基板2の画像において、基板2の位置や姿勢を把握することができる。そのため、基板2の検査を複数のPCで分担することができ、被検査体の外観検査において、拡張性が高くフレキシブルなシステム構成を可能とし、また基板2の検査において検査精度を向上することができ、または検査時間を短縮することができる。
【0049】
本実施形態においては、第1部品6および第2部品8のように、複数の撮像部30の撮像範囲にまたがって配設された基板2上の部品は、部品の中心部がどの撮像部30の撮像範囲に属するかによって、その部品をどのスレーブPC140が検査を行うかがあらかじめ決められている。例えば、本実施形態においては、第1部品6はその中心部が第1撮像部30aの撮像範囲に属するため、第1部品6の検査は、第1撮像部30aに対応する検査部である第1スレーブPC140aが行う。逆に、第2部品8はその中心部が第2撮像部30bの撮像範囲に属するため、第2部品8の検査は、第2撮像部30bに対応する検査部である第2スレーブPC140bが行う。
【0050】
ここで、図6の(b)のように、各々の撮像部30が基板2の撮像を行っただけでは、第1部品6および第2部品8のように、複数の撮像部30の撮像範囲にまたがって配設された基板2上の部品の画像は、一部が欠落してしまうため、検査をすることができない。このため、欠落した画像は、欠落した画像をメモリに格納している他のスレーブPC140から取得しなければならない。
【0051】
ここで、例えば、第1スレーブPC140aが第2スレーブPC140bから第2認識マーク4bの位置データを受信すると、第1スレーブPC140a自身が取得した第1認識マーク4aの位置データと受信した第2認識マーク4bの位置データを参照して、第1撮像部30aが撮像した基板2の画像の位置や姿勢を演算する。これにより、第1スレーブPC140aは、第1撮像部30aが撮像した画像の位置や姿勢を認識することができる。画像の位置や姿勢を認識することにより、第1スレーブPC140aは、第2スレーブPC140bに送るべき第2部品8の一部の画像を特定する。こうして第1スレーブPC140aは、第2スレーブPC140bに第2部品8の一部の画像を送信する。
【0052】
同様に、例えば第2スレーブPC140bが第1スレーブPC140aから第1認識マーク4aの位置データを受信すると、第2スレーブPC140b自身が取得した第2認識マーク4bの位置データと受信した第1認識マーク4aの位置データを参照して、第2撮像部30bが撮像した基板2の画像の位置や姿勢を演算する。これにより、第2スレーブPC140bは、第2撮像部30bが撮像した画像の位置や姿勢を認識することができる。画像の位置や姿勢を認識することにより、第2スレーブPC140bは、第1スレーブPC140aに送るべき第1部品6の一部の画像を特定する。こうして第2スレーブPC140bは、第1スレーブPC140aに第1部品6の一部の画像を送信する。
【0053】
このようにして、図6の(c)のように、スレーブPC140は欠落した画像を取得することにより検査を担当する部品の画像すべてを取得することができ、これにより、基板2上のすべての部品について、検査を行うことが可能となる。各々のスレーブPC140は、自己が担当する部品などの検査を、判定基準に基づいて判定し、検査が終了すると、マスターPC160に検査結果を送信する。
【0054】
本発明は上述の各実施形態に限定されるものではなく、各実施形態の各要素を適宜組み合わせたものも、本発明の実施形態として有効である。また、当業者の知識に基づいて各種の設計変更等の変形を各実施形態に対して加えることも可能であり、そのような変形が加えられた実施形態も本発明の範囲に含まれうる。以下、そうした例をあげる。
【0055】
撮像部30は、ラインセンサ34により基板2を走査するものではなく、CCDセンサなどにより所定範囲の画像を順次撮像するものであってもよい。これにより、容易に基板2の画像を撮像することができる。
【0056】
共用データは、スレーブPC140がマスターPC160に送信し、マスターPC160が各々のスレーブPC140に送信してもよい。これにより、マスターPC160も容易に共有データを共有することができる。
【0057】
撮像部30および対応するスレーブPC140は、基板2の一面を検査する上部と他の一面を検査する下部にそれぞれ1つずつでもよい。この場合、共用データは基板2の一面の検査を行うスレーブPC140と他の一面を検査するスレーブPC140の間で送受信が行われる。これにより、例えば基板2のいずれかの一面は識別マークなどを設けなくても、識別マークを設けたもう一方の面の位置データを参照して検査を行うことができるなど、基板2の構成を簡素にすることができる。
【0058】
基板2を固定して、照明ユニット100や撮像部30を移動してもよい。これにより、基板2の撮像時において、基板2を安定して保持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本実施形態にかかる外観検査装置の構成を示す図である。
【図2】本実施形態にかかる撮像システムの構成を示す図である。
【図3】本実施形態にかかる照明ユニットの構成を示す図である。
【図4】本実施形態にかかる検査部であるスレーブPCを含む外観検査装置の構成を示す図である。
【図5】本実施形態にかかる外観検査装置の概念構成図である。
【図6】本実施形態において、基板を複数のスレーブPCで検査する場合の検査の概要を示す図であり、(a)は、基板の撮像範囲を示す図であり、(b)は、撮像後の基板の画像を示す図であり、(c)は、検査のため部品のデータを取得した状態の基板の画像を示す図である。
【符号の説明】
【0060】
2 基板、 4 認識マーク、 10 検査テーブル、 30 撮像部、 32 レンズ、 34 ラインセンサ、 50 基板搬送テーブル、 54 搬送レール、 80 モータ、 100 照明ユニット、 102 第1光源、 104 第2光源、 106 第3光源、 110 ハーフミラー、 130 画像処理部、 140 スレーブPC、 160 マスターPC、 200 外観検査装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検査体の撮像を行う複数の撮像部と、該複数の撮像部の各々に対応して設けられ、対応する撮像部により撮像された被検査体の撮像データに基づいて被検査体の検査を行う複数の検査手段と、を有し、
該複数の検査手段の各々は他の検査手段に、該他の検査手段による検査に必要な共用データを送信することを特徴とする被検査体の外観検査装置。
【請求項2】
前記共用データは、各検査手段が対応する撮像部により撮像された被検査体の撮像データから取得したものであることを特徴とする請求項1に記載の被検査体の外観検査装置。
【請求項3】
前記検査手段は各々、他の検査手段から受信した共用データを参照して被検査体の外観検査を行うことを特徴とする請求項1または2に記載の被検査体の外観検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−177887(P2006−177887A)
【公開日】平成18年7月6日(2006.7.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−373741(P2004−373741)
【出願日】平成16年12月24日(2004.12.24)
【出願人】(595039014)株式会社サキコーポレーション (31)
【Fターム(参考)】