説明

被測定断面寸法計測装置およびコンピュータプログラム

【課題】 超音波を利用しての簡易的で高精度な被測定断面寸法を計測可能な技術を提供する。
【解決手段】 被測定断面寸法計測装置(10)は、同心円状に配列した複数列の圧電素子(23a,23b)からなる超音波発振部(21)を備えた超音波送受信装置(20)と、 その超音波送受信装置(20)が被測定断面を横切るように超音波(24)を連続発振可能であるように発振角度を変化させる超音波角度変化装置(30)と、 前記超音波送受信装置(20)が発振した超音波(24)の反射波(25)を受信して、その受信結果に基づいて前記超音波発振部(21)における複数列の圧電素子(23a,23b)の超音波発振を切り替える自動切り替え装置(40)と、 前記超音波送受信装置(20)が受信したデータから被測定断面寸法を算出する演算部(64)を備えた制御装置(50)と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、簡易的で高精度に被測定断面寸法を計測可能な、超音波を利用した被測定断面寸法計測装置および被測定断面寸法計測方法に関する。
【背景技術】
【0002】
水力発電所の取水流量の管理は、当該発電所の設備の適切な運用に重要である。水力発電は水の流量によって発電機出力が変化するとともに下流への影響もあるため、その流量を適切に制御する必要がある。例えば、小型の水力発電では河川から分岐された水路にて取水し、その水路を流れる取水流量を管理している。なお、河川から分岐された水路は、「開水路」または「開渠」と称している。
【0003】
開渠にて流量計測する場合は、開渠の所定断面の流速分布を取得し、その流速分布データに対して開渠の断面積を乗算することによる。上記の流速計測には、一般的にプロペラ流速計などが用いられている。
一方、開渠断面の寸法計測には、設計図面を用いるのが最も簡単であるが、開渠から水を抜く、いわゆる抜水した際に実測した実測値を使用する場合もある。
【0004】
また、超音波を利用した寸法計測方法を採用する場合もある。その寸法計測方法は、超音波の伝播時間と水中音速から距離を算出する。その場合の流量計測は、超音波流速分布計(ADCP)の機能を用いる。
超音波を利用して水路の流量を測定する方法の例としては、特許文献1の超音波式流量計測方法が開示されている。この特許文献1では、水路内を、中央部と、その中央部より壁面または底面よりの周辺部と、壁面または底面に近い外縁部とに分ける。その上で、水路の周辺部の流速分布を超音波で測定する。水路の中央部の流速分布は、前記測定した周辺部の流速分布を用いて補間することによって水路全体の流量を求める、という技術である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−190775号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
さて、特許文献1に開示されている技術の目的は、大規模な水路全体の流量を簡略な設備にて測定することである。 すなわち、超音波を用いてドップラー法または相互相関法を利用して水の流速を計測する。 また、既知である水路形状および寸法と別の手段で計測した水位とから流水断面積を計算し、その流水断面積と計測した前記の流速とから流量を算出する。
したがって、大規模な水路全体の流量を簡略な設備にて測定する目的を達成する点においては、既知である水路形状および寸法を利用することで十分である。
【0007】
ところで、実際の開渠の断面寸法は、水路形状が設計寸法と異なっている場合が少なくない。また、壁面へ付着する付着物、流れてきて底面に留まる石、流されてきた固体によって削られた傷、といったことが原因で経年変化も生じている。
したがって、高精度な流量計測が必要な場合には、既知である水路形状および寸法を用いることができない。
たとえば、水力発電所の効率試験を行う場合の流量の計測精度は、高精度であることが求められるため、開渠の断面寸法も高精度に計測する必要がある。開渠の大きさにもよるが、数センチメートル程度の断面寸法の違いによって1%程度の流量差が生じる場合もあるからである。
【0008】
したがって、高精度の流量計測が求められる場合には特許文献1の方法では不十分であった。
一方、抜水して実測することで開渠の断面寸法の実測値を得ることができれば、流量計測の精度は高められるが、抜水には労力と時間を要するので、開渠断面の寸法計測のためだけに抜水することは避けたい。そのため、簡易的で、よりいっそう高精度に計測可能な方法が望まれていた。
【0009】
前述した超音波を利用した寸法計測方法は、抜水せずに簡易的に寸法計測する方法として有効である。
しかし、従来においては、超音波送受信装置から発振された超音波は、その距離に応じて広がりを持つ。そのため、計測すべき開渠の壁面から反射した反射波が開渠の別の箇所へ向かって反射する。超音波送受信装置では、計測すべき開渠の壁面から反射した反射波ではなく、開渠の別の箇所で反射した反射波を間違って計測してしまうことが実際には生じてしまう。特に、底面と側面との境目付近で、このような事態が生じている。
【0010】
本発明が解決しようとする課題は、超音波を利用しての簡易的で高精度な被測定断面寸法を計測可能な被測定断面寸法計測装置および被測定断面寸法計測方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
(第一の発明)
本願における第一の発明は、 同心円状に配列した複数列の圧電素子(23a,23b)からなる超音波発振部(21)を備えた超音波送受信装置(20)と、 その超音波送受信装置(20)が被測定断面を横切るように超音波(24)を連続発振可能であるように発振角度を変化させる超音波角度変化装置(30)と、 前記超音波送受信装置(20)が発振した超音波(24)の反射波(25)を受信して、その受信結果に基づいて前記超音波発振部(21)における複数列の圧電素子(23a,23b)の超音波発振を切り替える自動切り替え装置(40)と、 前記超音波送受信装置(20)が受信したデータから被測定断面寸法を算出する演算部(64)を備えた制御装置(50)と、 を備えた被測定断面寸法計測装置(10)に係る。
【0012】
(用語説明)
同心円状に配列した複数列の圧電素子(23a,23b)からなる超音波発振部(21)において、中央に位置する圧電素子(23a)のみから超音波を発振した場合、発振される超音波は拡散しやすい。ドーナツ上の圧電素子(23b)からのみ超音波を発振した場合、発振される超音波は、ある程度の距離までは収束し、その収束後に拡散する超音波となる。
【0013】
(作用)
超音波送受信装置(20)の超音波発振部(21)における複数列の圧電素子(23a,23b)のいずれかの圧電素子(23aまたは23b)から、超音波(24)を発振する。その発振は、超音波角度変化装置(30)によって前記超音波(24)が被測定断面を横切るように連続して発振する。
上記の連続発振した超音波(24)の反射波(25)を受信した受信結果に基づいて、自動切り替え装置(40)が前記超音波発振部(21)における複数列の圧電素子(23)を切り替え、超音波(24)が測定箇所の近傍で収束するように制御する。 制御されながら発振された超音波は、二重に反射しそうな角付近では収束する超音波(たとえば図3(B)に示す超音波24)であり、二重の反射波が発生することを未然に防止する。
制御装置(50)の演算部(64)にて反射波情報に基づいて被測定断面寸法が計算され、高精度に計測されることとなる。
【0014】
(第一の発明のバリエーション1)
第一の発明は、以下のようなバリエーションを提供することもできる。
すなわち、 前記制御装置(50)が、手入力によって前記データの補正が可能なデータ入力手段(54)を備えることとしてもよい。
【0015】
(作用)
測定者が測定した結果をチェックし、その測定者の判断でデータ入力手段(54)にて補正することができる。
【0016】
(第一の発明のバリエーション2)
第一の発明は、以下のようなバリエーションを提供することもできる。
すなわち、 前記制御装置(50)が、予め作成した被測定断面の図面を用いてその被測定断面の初期値を入力する初期値入力手段(55)を備えることとしてもよい。
【0017】
(作用)
被測定断面の図面がある場合、予めその図面の被測定断面の初期値を初期値入力手段(55)にて入力することによって、実際に測定したデータと前記初期値とを比較検討することができる。
なお、前回の実測値を蓄積してある場合にも、予め初期値入力手段(55)にて初期値を入力しておくことが可能である。
【0018】
(第二の発明)
本願における第二の発明は、 超音波を利用して高精度な被測定断面寸法を計測するためのコンピュータプログラムに係る。
そのプログラムは、同心円状に配列した複数列の圧電素子(23a,23b)からなる超音波発振部(21)を用いて前記複数列のいずれかの圧電素子(23aまたは23b)から超音波(24)を発振させる第一発振手順と、 その超音波(24)が被測定断面を横切って障害物によって反射した反射波(25)を受信する反射波受信手順と、 その反射波受信手順にて受信結果に基づいて発振すべき前記超音波発振部(21)における複数列の圧電素子(23)を切り替えるか否かを判断する切り替え判断手順と、 その切り替え判断手順にて切り替えるという判断をした場合に切り替えられた圧電素子による超音波を発振する第二発振手順と、 その第二発振手順によって発振された超音波による反射波(25)および前記の第一発振手順による反射波(25)を用いて被測定断面寸法を計測する断面寸法計測手順と、をコンピュータに実行させる。
【0019】
超音波発振部(21)から超音波(24)が被測定断面を横切るようにして連続発振する際に、超音波(24)の反射波(25)を受信した受信結果に基づいて前記超音波発振部(21)における複数列の圧電素子(23)を切り替えて、超音波(24)が測定箇所の近傍で収束するようにコントロールする。その結果、高精度に計測されることとなる。
なお、第二の発明に係るコンピュータプログラムは、ハードディスクドライブやDVD−Rなどの記録媒体に格納して提供することも可能であるし、通信回線を介してコンピュータにインストールすることも可能である。
【発明の効果】
【0020】
第一の発明によれば、超音波を利用して高精度な被測定断面寸法を計測可能な被測定断面寸法計測装置を提供することができた。
また、第二の発明によれば、超音波を利用して高精度な被測定断面寸法を計測可能なコンピュータプログラムを提供することができた。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施形態の被測定断面寸法計測装置にて開渠を測定するときの概略的な斜視図である。
【図2】図1において被測定断面を測定するときの開渠の断面図である。
【図3】図3(A)は、2列の圧電素子を備えた超音波発振部における小径の圧電素子から発振した超音波の状態を示す概略的な斜視図である。 図3(B)は、前記超音波発振部における大径の圧電素子から発振した超音波の状態を示す概略的な斜視図である。
【図4】三列の圧電素子を備えた超音波発振部における最外周側の圧電素子から発振した超音波の状態を示す概略的な斜視図である。
【図5】本発明の実施形態の被測定断面寸法計測装置の機能ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
本実施形態に係る被測定断面寸法計測装置10は、図1および図2に示すように、超音波送受信装置20と超音波角度変化装置30と自動切り替え装置40と制御装置50とを備えている。なお、本実施形態では開渠70の被測定断面を測定することを例とする。
【0023】
前記超音波送受信装置20は、超音波発振部21と超音波受信部22とを含んで構成される。
前記超音波発振部21は、図3(A)および図3(B)に示すように、同心円状に配列した複数列の圧電素子23から構成されている。図では中心部に小径の圧電素子23aを配置し、その圧電素子23aの外周に同心円のドーナツ状の圧電素子23bを配置している。合計2列の圧電素子23a,23bで構成され、各圧電素子23a,23bから超音波パルス波24を発振する。
【0024】
また、超音波受信部22は、前記超音波発振部21から発振した超音波パルス波24が開渠70の被測定断面の壁面71に当たって反射した反射波25を受信する。
【0025】
ここで、前記超音波発振部21において上記のように複数列の圧電素子23を同心円状に配列して構成した理由について詳しく説明する。
発振した超音波パルス波24が測定すべき被測定断面の壁面71の付近で収束するようにコントロールすることによって、別の箇所の反射波25を間違って計測する事態を防止することができる。なお、超音波パルス波24が収束するとは、超音波ビームが細くなることである。
つまり、超音波パルス波24が測定すべき被測定断面の壁面71の付近で収束するなら、たとえ測定すべき箇所で反射してから別の箇所で反射した反射波25を受信しても、その別の箇所の反射波25と前記測定すべき箇所で反射した反射波25とは時間的な差がはっきりする。したがって、別の箇所の反射波25を間違って計測することはない。
一方、例えば図2に示すように被測定箇所が開渠70の角部の近くの場合、超音波パルス波24が被測定箇所の付近で広がっているなら、被測定箇所の近くの壁面71で反射した反射波25と、被測定箇所で反射した反射波25との時間的な差がはっきりしないことが生じる。そのために間違って計測することになりかねない。
【0026】
超音波パルス波24の収束をコントロールするパラメータは、圧電素子23の直径と超音波24の周波数である。それらのパラメータは数値計算が比較的容易である。
圧電素子23の直径は超音波送受信装置20を製作する時に決定している。一方、周波数については、圧電素子23の固有の数値であるため、±10%程度の異なる周波数を無理に発振することは可能であるが、超音波パルス波24の収束点をコントロールできるほどの周波数変化量はない。
したがって、高精度に被測定断面寸法を計測するには、被測定断面の壁面71までの距離に適した圧電素子23を準備する必要がある。つまり複数の圧電素子23を準備することになるので大型化しコスト高となる。また、超音波24の周波数を変化させるためには、専用の超音波発振装置が必要となるのでコスト高となる。
【0027】
そこで、前記超音波発振部21において複数列の圧電素子23を同心円状に配列したことによって、例えば、小径の圧電素子23aから発振する超音波パルス波24は、図3(A)に示すように広がって伝播していく。一方、大径の圧電素子23bから発振する超音波パルス波24は、図3(B)に示すようにいったん収束した後に徐々に広がって伝播していくことになる。なお、図では上記の二つの超音波パルス波24の違いを明確に説明するために大きく異なる状態で図示している。
【0028】
図4では、中心部に小径の圧電素子23aを配置し、その圧電素子23aの外周に同心円のドーナツ状の圧電素子23bを配置し、その圧電素子23bの外周に同心円のドーナツ状の圧電素子23cを配置している。合計3列の圧電素子23a,23b,23cで構成され、圧電素子23a,23b,23cから超音波パルス波24を発振する。したがって、図3の場合より超音波パルス波24の収束をコントロールする幅が広がることになる。
【0029】
前記圧電素子23aは電線にて切替スイッチ26aを介して電源27aに接続されている。前記圧電素子23bは電線にて切替スイッチ26bを介して電源27bに接続されている。なお、前記電源27aと前記電源27bは同一でも別々でもよい。
【0030】
前記超音波角度変化装置30は、前記超音波送受信装置20が被測定断面を横切るように超音波24を連続発振可能であるように発振角度を変化させる装置である。その一例として、箱型形状の装置本体31が例えば三脚33にて所望の場所へ設置可能な台座32の上に設けられる。その装置本体31には回転軸がモータや回転ギヤなどからなる回転駆動機構にて正転方向および逆転方向に回転するように設けられ、前記回転軸によって前記超音波送受信装置20の超音波パルス波24の発振角度を変化させる機構である。
【0031】
前記自動切り替え装置40は、前記超音波送受信装置20の超音波発振部21が発振した超音波24の反射波25を超音波受信部22にて受信した受信結果に基づいて、前記超音波発振部21における複数列の圧電素子23(図3では圧電素子23aと圧電素子23b)の超音波発振を切り替える装置である。 例えば、自動切り替え装置40によって切替スイッチ26aと切替スイッチ26bのいずれか一方をONにした時は、他方がOFFとなるように切り替える。
【0032】
制御装置50は、例えばパソコンなどの測定端末器を使用する。その測定端末器は、制御部60と記憶部51と表示部52と操作部53とを含んで構成される。
前記制御部60は、中央処理装置(CPU)を含む半導体集積回路により測定端末器を管理および制御する。記憶部51は、ROM、RAM、EEPROM、不揮発性RAM、フラッシュメモリ、HDD(Hard Disk Drive)等で構成され、制御部60で処理されるプログラムや取得データなどを記憶する。表示部52は、液晶ディスプレイ、EL(Electro Luminescence)、PDP(Plasma Display Panel)等で構成され、記憶部51に記憶されたアプリケーションのGUI(Graphical User Interface)を表示する。操作部53は、キーボード、十字キー、ジョイスティック等の複数のキー(スイッチ)およびマウスから構成され、ユーザの操作入力をするものである。
【0033】
さらに、上記の操作部53は、データ入力手段54、初期値入力手段55を備えている。
データ入力手段54は、手入力によって、超音波送受信装置20の超音波パルス波24によって測定された被測定断面の座標データを補正することを可能とする。測定者が測定した結果をチェックし、その測定者の判断で補正や修正を必要とする時に、修正や補正をすることができる。
初期値入力手段55は、予め作成した被測定断面の図面を用いてその被測定断面の初期値を入力する。開渠の図面がある場合、予めその図面の被測定断面の初期値を入力することによって、実際に測定したデータと前記初期値とを比較検討し、よりいっそう高精度に開渠70の被測定断面を計測することに貢献する。
【0034】
さらに、上記の制御部60は、パルサー61、レシーバ62、A/D変換部63、演算部64、比較判断部65、指令部66を含んで構成されている。
前記パルサー61は、ケーブル11を介して超音波発振部21に超音波入力信号(電圧)を入力する。そのとき、自動切り替え装置40によって超音波発振部21における複数列の圧電素子23への入力が切り替えられる。前記超音波入力信号には超音波発振部21が送信する超音波パルス波24の周波数情報および間隔情報を含んでいる。
前記レシーバ62は、超音波受信部22によってアナログ信号に変換された反射波25の信号を増幅する。
前記A/D変換部63は、レシーバ62によって増幅されたアナログ信号としての反射波25をデジタル信号に変換する。
【0035】
前記演算部64は、超音波送受信装置20からレシーバ62、A/D変換部63を経て得た反射波情報から被測定断面の壁面71までの距離値を算出する。また、その算出した距離値から被測定断面の壁面71の座標を計算する。さらに、前記超音波送受信装置20によって超音波パルス波24が開渠70の被測定断面を横切るように連続発振されるので、各超音波パルス波24の反射波情報から開渠70の被測定断面の全体の座標を計算する。
また、前記演算部64は、データ入力手段54を使用して手入力によって与えられたデータに基づいて、前記超音波送受信装置20の超音波パルス波24によって測定された被測定断面の座標データを補正するべく計算する。
また、前記演算部64は、初期値入力手段55を使用して、予め作成した開渠70の被測定断面の図面を用いて入力された被測定断面の初期値と、前記超音波送受信装置20の超音波パルス波24によって測定された被測定断面の座標データとの差を計算する。
【0036】
前記比較判断部65は、前記演算部64にて算出した距離値において同じ数値が二つ以上あるか否かを比較判断し、二つ以上存在する時は超音波パルス波24の収束を変化させる必要があると判断する。
前記指令部66は、前記比較判断部65にて超音波パルス波24の収束を変化させる必要があると判断したとき、前記自動切り替え装置40に対して超音波発振部21における複数列の圧電素子23の超音波発振を切り替える指令を与える。
また、前記指令部66は、ケーブル12を介して前記超音波角度変化装置30に対して前記超音波送受信装置20が被測定断面を横切るように超音波24を連続発振可能であるように発振角度を変化させる指令を与える。
【0037】
次に、上記の被測定断面寸法計測装置10における作用、すなわち本発明に係る被測定断面寸法計測方法について説明する。
例えば開渠70の断面を測定する場合について説明する。まず、図1に示すように、超音波送受信装置20が超音波角度変化装置30によって開渠70の被測定断面を横切るようにして超音波24を連続発振可能であるように設置される。
超音波発振部21において同心円状に配列した複数列の圧電素子23のいずれかの圧電素子23から超音波パルス波24が発振する。 その時、超音波パルス波24が開渠70の被測定断面を横切るようにして連続発振する。
【0038】
この例では図3に示した超音波発振部21を用いて説明する。すなわち、超音波発振部21は中心部に配置した小径の圧電素子23aと、その圧電素子23aの外周に同心円のドーナツ状に配置した圧電素子23bとの合計2列の圧電素子23で構成される。
例えば自動切り替え装置40によって切替スイッチ26aがONで、切替スイッチ26bがOFFであるとき、圧電素子23aから超音波パルス波24が連続発振する。各超音波パルス波24は被測定断面の壁面71に当たって反射し、その反射波25を超音波受信部22で受信する。
【0039】
制御装置50では、超音波受信部22からレシーバ62、A/D変換部63を経て得た反射波情報から被測定断面の壁面71までの距離が演算部64にて算出される。その算出した距離から被測定断面の壁面71の座標が計算される。
以上のようにして、超音波パルス波24が開渠70の被測定断面を横切るように連続発振されるので、各超音波パルス波24の反射波情報から被測定断面全体の座標が計算される。
【0040】
比較判断部65では、各超音波パルス波24の反射波情報から開渠70の被測定断面の壁面71までの距離が算出される毎に、同じ数値の距離データが二つ以上あるか否かを比較判断する。同じ数値が二つ以上存在する時は、発振した超音波パルス波24が測定すべき被測定断面の壁面71の付近で収束していないと判断する。すなわち、超音波パルス波24の収束を調整する必要があると判断する。
【0041】
上記の比較判断部65の情報に基づいて、指令部66から自動切り替え装置40に対して超音波発振部21における複数列の圧電素子23の超音波発振を切り替える指令を与える。この例では、自動切り替え装置40によって切替スイッチ26aをOFFとし、切替スイッチ26bをONする。つまり、圧電素子23bから超音波パルス波24が発振するように切り替えられる。 再び演算部64にてその超音波パルス波24における距離値が計算され、比較判断部65にて同じ数値の距離データが二つ以上ないことを確認する。つまり、超音波パルス波24が測定箇所の近傍で収束していることを確認する。以上のようにして、開渠70の被測定断面寸法を高精度に計測することができる。
【0042】
以上のことから、本実施形態の被測定断面寸法計測装置および被測定断面寸法計測方法では、超音波24が測定箇所の近傍で収束するようにコントロールすることによって、簡易的で、よりいっそう高精度に開渠70の被測定断面寸法を計測することができた。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明は、超音波流量計の製造業、河川などの水量を測量するための測量サービス業、河川の浚渫工事や開渠の修繕の必要性を判断するためのデータ測定やデータ収集を行う情報サービス業などにおいて、利用可能性を有する。
【符号の説明】
【0044】
10 被測定断面寸法計測装置 11 ケーブル
12 ケーブル
20 超音波送受信装置 21 超音波発振部
22 超音波受信部 23,23a,23b,23c 圧電素子
24 超音波パルス波 25 反射波
26a,26b,26c 切替スイッチ
27a,27b,27c 電源
30 超音波角度変化装置 31 装置本体
32 台座 33 三脚
40 自動切り替え装置
50 制御装置 51 記憶部
52 表示部 53 操作部
54 データ入力手段 55 初期値入力手段
60 制御部 61 パルサー
62 レシーバ 63 A/D変換部
64 演算部 65 比較判断部
66 指令部
70 開渠(被測定断面) 71 壁面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
同心円状に配列した複数列の圧電素子からなる超音波発振部を備えた超音波送受信装置と、
その超音波送受信装置が被測定断面を横切るように超音波を連続発振可能であるように発振角度を変化させる超音波角度変化装置と、
前記超音波送受信装置が発振した超音波の反射波を受信して、その受信結果に基づいて前記超音波発振部における複数列の圧電素子の超音波発振を切り替える自動切り替え装置と、
前記超音波送受信装置が受信したデータから被測定断面寸法を算出する演算部を備えた制御装置と、
を備えたことを特徴とする被測定断面寸法計測装置。
【請求項2】
前記の制御装置は、手入力によって前記データの補正が可能なデータ入力手段を備えた請求項1に記載被測定断面寸法計測装置。
【請求項3】
前記の制御装置は、予め作成した被測定断面の図面を用いてその被測定断面の初期値を入力する初期値入力手段を備えた請求項1または請求項2のいずれかに記載被測定断面寸法計測装置。
【請求項4】
超音波を利用して高精度な被測定断面寸法を計測するためのコンピュータプログラムであって、
そのプログラムは、 同心円状に配列した複数列の圧電素子からなる超音波発振部を用いて前記複数列のいずれかの圧電素子から超音波を発振させる第一発振手順と、
その超音波が被測定断面を横切って障害物によって反射した反射波を受信する反射波受信手順と、
その反射波受信手順にて受信結果に基づいて発振すべき前記超音波発振部における複数列の圧電素子を切り替えるか否かを判断する切り替え判断手順と、
その切り替え判断手順にて切り替えるという判断をした場合に切り替えられた圧電素子による超音波を発振する第二発振手順と、
その第二発振手順によって発振された超音波による反射波および前記の第一発振手順による反射波を用いて被測定断面寸法を計測する断面寸法計測手順と、をコンピュータに実行させることとしたコンピュータプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−198141(P2012−198141A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−63158(P2011−63158)
【出願日】平成23年3月22日(2011.3.22)
【出願人】(000003687)東京電力株式会社 (2,580)
【Fターム(参考)】