説明

被覆カフェイン粒子及びこれを含有する内服固形製剤

【課題】カフェインを各内服固形製剤に短時間に均一に配合できる、内服固形製剤配合用被覆カフェイン粒子、これを含有する内服固形製剤を提供する。
【解決手段】カフェイン粒子の表面が二酸化ケイ素で被覆された被覆カフェイン粒子。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カフェイン粒子の表面が二酸化ケイ素で被覆された被覆カフェイン粒子及びこれを含有する内服固形製剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
粒状剤、錠剤及びカプセル剤等の内服固形製剤は、通常、有効成分及びその他の粒子を混合機で混合し、その混合粉体を打錠機、カプセル充填機等を用いて打錠又は充填することにより得られる(特許文献1:特開2000−178183号公報参照)。この内服固形製剤の製剤工程においては、混合工程において混合機内での有効成分の含量均一性を確保することが重要である(特許文献2:特開2006−328000号公報参照)。つまり、混合工程において、有効成分が均一に混合されないと、粒状剤1包中、錠剤1錠中、カプセル剤1カプセル中の有効成分の含量にバラツキがでやすいという問題が生じる。特にカフェインのような微量成分は僅かな偏在が均一性に大きく影響を与えるという課題があった。このことから、カフェインを、各内服固形製剤に短時間に均一に配合する技術が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−178183号公報
【特許文献2】特開2006−328000号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は上記事情に鑑みなされたもので、カフェインを各内服固形製剤に短時間に均一に配合できる、内服固形製剤配合用被覆カフェイン粒子、これを含有する内服固形製剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討した結果、カフェイン粒子の表面が二酸化ケイ素で被覆された被覆カフェイン粒子を調製し、これを各内服固形製剤に配合することにより、製剤中のカフェイン含量均一性が向上し、しかも配合時の時間が短縮できることを知見し、本発明をなすに至ったものである。
【0006】
従って、本発明は下記被覆カフェイン粒子及び内服固形製剤を提供する。
[1].カフェイン粒子の表面が二酸化ケイ素で被覆された被覆カフェイン粒子。
[2].カフェイン粒子と、二酸化ケイ素粒子とを混合してなる[1]記載の被覆カフェイン粒子。
[3].二酸化ケイ素の配合量が、カフェイン100質量部に対して20〜120質量部である[1]又は[2]記載の被覆カフェイン粒子。
[4].[1]、[2]又は[3]記載の被覆カフェイン粒子を含有する内服固形製剤であって、粒状剤、錠剤及びカプセル剤から選ばれる内服固形製剤。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、カフェインを内服固形製剤に短時間に均一に配合できる被覆カフェイン粒子、これを含有する内服固形製剤を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明のカフェイン粒子は、カフェイン粒子の表面が二酸化ケイ素で被覆された被覆カフェイン粒子である。
【0009】
[カフェイン粒子]
カフェインは、呼吸中枢や血管運動中枢を刺激、興奮させる作用や心筋の収縮性増大作用、利尿作用、片頭痛等の鎮痛作用を有し、かぜ薬、鎮痛薬、眠気止め薬等の多くの製剤に配合されている。カフェインとしては、無水カフェイン等が挙げられる。
【0010】
カフェイン粒子は、市販のカフェインをそのまま本発明のカフェイン粒子として用いればよいが、所望により造粒してもよく、また市販のカフェインを粉砕し、篩等で所望の粒径としたものをカフェイン粒子として用いてもよい。カフェイン粒子の粒径構成は、カフェイン含量均一性の点から、粒径150〜355μmものが90質量%以上、かつ粒径150μm未満及び粒径355μmを超えるものが、それぞれ5質量%以下が好ましい。なお、本発明において、粒径は目開き355μm、150μmの篩いを用いて測定される。
【0011】
カフェイン粒子を造粒物とする場合は、造粒物としてはカフェインの他、結合剤、崩壊剤、賦型剤等を含有することができる。造粒物中のカフェインの含有量は、70質量%以上とすることが好ましく、より好ましくは80質量%以上、特に好ましくは90質量%以上である。
【0012】
[二酸化ケイ素]
二酸化ケイ素類としては、含水二酸化ケイ素、軽質無水ケイ酸、ホワイトカーボン、シリカ等が挙げられ、1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。中でも、含水二酸化ケイ素が好ましく、含水率は15質量%以下のものがより好ましい。
【0013】
二酸化ケイ素は特に制限されるものではないが、比表面積は100〜1000m2/gが好ましく、300〜700m2/gがより好ましい。また、平均粒子径は1〜50μmが好ましく、1〜30μmがより好ましく、1〜10μmがさらに好ましい。なお、二酸化ケイ素の平均粒子径はレーザー法を用いて測定し、そこから体積平均粒子径を算出する。
【0014】
被覆する二酸化ケイ素純分の量は、カフェイン粒子100質量部に対して10質量部以上とすることが好ましく、より好ましくは20質量部以上、さらに好ましくは40質量部以上である。カフェイン粒子に対する二酸化ケイ素量が低すぎると、被覆が十分でなくなり、本発明の効果が低下するおそれがある。上限は120質量部以下が好ましく、100質量部以下がより好ましい。二酸化ケイ素が多くなると、粒子中のカフェイン含有量が低下し、製剤の設定カフェイン量とするための被覆カフェイン粒子量が多くなり、製剤の服用全量が多くなったり、錠剤が大型化するおそれがある。
【0015】
[被覆カフェイン粒子]
本発明の被覆カフェイン粒子は、カフェイン粒子の表面が二酸化ケイ素で被覆されたものである。被覆状態については、SEM−EDSにてケイ素の元素分布より確認することができる。被覆カフェイン粒子の粒径構成は、カフェイン含量均一性の点から、粒径150〜425μmものが90質量%以上、かつ粒径150μm未満及び粒径425μmを超えるものが、それぞれ5質量%以下が好ましい。粒径は目開き425μm、150μmの篩いを用いて測定される。
【0016】
[被覆カフェイン粒子の製造方法]
被覆カフェイン粒子は、例えば、カフェイン粒子と二酸化ケイ素粒子とを混合することにより得ることができる。混合時間は、カフェイン粒子の表面が二酸化ケイ素で被覆されれば特に限定されないが、常温(15〜25℃)では5〜60分程度である。本発明においては二酸化ケイ素を用いることにより、造粒よりも簡単な方法で、被覆カフェイン粒子を得ることができると共に、カフェイン粒子の表面を十分に被覆することができる。なお、混合量等は上記カフェイン及び二酸化ケイ素の含有量と同じである。
【0017】
[内服固形製剤]
本発明の被覆カフェイン粒子を配合し、これを含有する内服固形製剤にすることができる。例えば、被覆カフェイン粒子を含有する粒状剤、錠剤及びカプセル剤等が挙げられる。被覆カフェイン粒子の配合量は、製剤へのカフェインの設定配合量により決定されるが、製剤全体に対して1〜40質量%が好ましく、1〜15質量%がより好ましく、7.5〜15質量%がさらに好ましい。
【0018】
内服固形製剤には、カフェイン含量均一性の点から、アスコルビン酸カルシウムを配合することが好ましい。アスコルビン酸カルシウムの配合量は、製剤全体に対して5〜40質量%が好ましく、20〜35質量%がより好ましい。
【0019】
内服固形製剤には、被覆カフェイン粒子の他に製剤に配合する成分を、本発明の効果を損なわない範囲で、1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができ、適量配合することができる。その他の成分としては下記のものが挙げられる。
【0020】
カフェイン以外の薬物としては、特に限定されず、固形製剤の目的に応じ、任意に配合できる。より具体的には、例えば、解熱鎮痛薬、鎮咳薬、去痰薬、気管支拡張薬、抗ヒスタミン薬、制酸剤、交感神経興奮薬、副交感神経遮断薬、消炎酵素、抗炎症剤、ビタミン類、生薬等があり、具体的には、アスピリン、アセトアミノフェン、エテンザミド、イブプロフェン、d−マレイン酸クロルフェニラミン、dl−d−マレイン酸クロルフェニラミン、マレイン酸カルビノキサミン、臭化水素酸デキストロメトルファン、ピベンズ酸ピペチジン、リン酸ジヒドロコデイン、塩酸ノスカピン、ノスカピン、dl−塩酸メチルエフェドリン、l−塩酸メチルエフェドリン、グアイフェネシン、グアヤコールスルホン酸カリウム、合成ヒドロタルサイト、炭酸マグネシウム、水酸化アルミニウムゲル、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、アミノ酢酸、塩酸プソイドエフェドリン、塩酸メトキシフェナミン、塩化リゾチーム、塩酸ジフェンヒドラミン、塩酸フェニレフリン、グリチルリチン酸二カリウム、カンゾウ、ショウキョウ、シンイ、サイシン、ベラドンナ総アルカロイド、トラネキサム酸等が挙げられる。
【0021】
賦形剤としては、セルロース及びその誘導体、スターチ及びその誘導体、糖類、糖アルコール類等が挙げられ、より具体的には、結晶セルロース、乳糖、白糖、マンニトール、エリスリトール、トウモロコシデンプン、バレイショデンプン、ヒドロキシプロピルスターチ等が挙げられる。
【0022】
結合剤としては、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ゼラチン、デキストリン、デンプン、アルファー化デンプン等が挙げられる。
【0023】
崩壊剤としては、カルメロース、カルメロースカルシウム、クロスカルメロースナトリウム、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、低置換度カルボキシメチルスターチナトリウム、クロスポビドン等が挙げられる。
【0024】
滑沢剤としては、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ショ糖脂肪酸エステル、無水ケイ酸、軽質無水ケイ酸、フマル酸ステアリルナトリウム等が挙げられる。
【0025】
中でも、イブプロフェン及びマンニトール等の賦形剤を、ヒドロキシプロピルセルロース等の結合剤水溶液で造粒し、造粒物として配合するとよい。
【0026】
[内服固形製剤の製造方法]
例えば、被覆カフェイン粒子及び任意成分を混合し、この混合物を分けることにより内服固形製剤を得ることができる。上記の混合時間は特に限定されないが、例えば1〜30分とすることができる。さらに、本発明の被覆カフェイン粒子は、固形製剤に短時間に均一に配合できるため、混合時間を10分以下に短縮することもでき、1〜10分が好ましく、3〜8分がより好ましい。上記混合物を個包装することにより、粒状剤を得ることができる。また、上記混合物を、ロータリー式打錠機、単発打錠機等で圧縮成型し、適宜糖衣や顔料含有コーティングをし、錠剤(150〜500mg/錠が一般的である)とすることもできる。さらに、上記混合物を、ゼラチン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等を含有するカプセルに充填し、カプセル剤にすることができる。
【実施例】
【0027】
以下、実施例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。なお、下記の例において特に明記のない場合は、組成の「%」は質量%、部は質量部を示す。
【0028】
[実施例1〜8]
表1に示した量の無水カフェイン(粒径150〜355μmの量:95質量%、体積平均粒径230μm)と含水二酸化ケイ素(体積平均粒子径5.0μm、含水率5%)をV型混合機(徳寿工作所社製)にて10分混合し、被覆カフェイン粒子を得た。被覆状態についてはSEM−EDS(S−2380N型日立走査電子顕微鏡、日立製)にて、ケイ素の元素分布より確認したところ、いずれもカフェインは二酸化ケイ素に十分に被覆されていた。また、実施例1〜8の被覆カフェイン粒子は、いずれも粒径150〜425μmものが95質量%以上、かつ粒径150μm未満及び粒径425μmを超えるものが合計5質量%以下であった。
【0029】
【表1】

【0030】
[比較例1,2]
表2に示した量の無水カフェイン(粒径150〜355μmの量:95質量%、体積平均粒径230μm)と、結晶セルロース(体積平均粒径:90μm)又はヒドロキシプロピルセルロース(体積平均粒径120μm)をV型混合機(徳寿工作所社製)にて10分混合し被覆粉体を得た。
【0031】
【表2】

【0032】
[実施例9〜18]
イブプロフェン600g及びマンニトール600gを流動層装置MP−01(パウレック製)にとり、ヒドロキシプロピルセルロース10%水溶液600gをバインダーとして常法により造粒物A(体積平均粒径220μm)を得た。表3,4に示した量の造粒物A及びアスコルビン酸カルシウム(体積平均粒径270μm)をV型混合機5型(徳寿工作所社製)に投入し、25分間混合した。次に、表1の実施例1〜8の被覆カフェイン粒子を投入し、V型混合機5型で5分間混合することで混合粉体を得た。このV型混合機内の6箇所よりサンプリング(投入後5分:各々1000mg)を行った。その後、この混合粉体をさらに25分間混合し、同様に6箇所よりサンプリング(投入後30分:各々1000mg)を行った。得られたサンプリング粉体のカフェインの含量を、HPLCを用いて測定し、6点の測定値の相対標準偏差(以下、CVと略す)にてカフェイン含量均一性を評価した。一般にCVが3%以下であれば均一といえる。結果を表3,4に併記する。
【0033】
【表3】

【0034】
【表4】

【0035】
[比較例3,4]
表5に示す量の造粒物A及びアスコルビン酸カルシウムをV型混合機5型(徳寿工作所社製)に投入し、25分間混合した。次に、表2の比較例1,2の被覆粉体を投入し、V型混合機5型で5分間混合し、混合粉体を得た。このV型混合機内の6箇所よりサンプリングを行った。その後、この混合粉体をさらに25分間混合しサンプリングを行った。得られたサンプリング粉体のカフェインの含量を同様に評価した。結果を表5に併記する。
【0036】
【表5】

【0037】
[比較例5,6]
表6に示した量の造粒物A、アスコルビン酸カルシウム、無水カフェイン、二酸化ケイ素をV型混合機5型(徳寿工作所社製)に投入し、30分間混合し混合粉体を得た。このV型混合機内の6箇所よりサンプリングを行った。その後、この混合粉体をさらに25分間混合しサンプリングを行った。得られたサンプリング粉体のカフェインの含量を同様に評価した。結果を表6に併記する。
【0038】
【表6】

【0039】
[実施例19]
造粒物A945g、アスコルビン酸カルシウム500g及びアセトアミノフェン300gをV型混合機5型(徳寿工作所社製)に投入し、25分間混合した。次に、実施例4の被覆カフェイン粒子を投入し、V型混合機5型で5分間混合することで混合粉体を得た。
【0040】
[実施例20]
造粒物A945g、アスコルビン酸カルシウム500g及びアリルイソプロピルアセチル尿素300gをV型混合機5型(徳寿工作所社製)に投入し、25分間混合した。次に、実施例4の被覆カフェイン粒子を投入し、V型混合機5型で5分間混合することで混合粉体を得た。
【0041】
[実施例21]
造粒物A945g、アスコルビン酸カルシウム500g及びエテンザミド300gをV型混合機5型(徳寿工作所社製)に投入し、25分間混合した。次に、実施例4の被覆カフェイン粒子を投入し、V型混合機5型で5分間混合することで混合粉体を得た。
【0042】
[実施例22〜25]
実施例16及び19〜21で得た混合粉体を、ロータリー式打錠機LIBRA(菊水製作所社製)を用いて打錠し錠剤(300〜350mg/錠)を得た。
【0043】
実施例19〜25について、カフェインの含量均一性を実施例9〜18と同様に評価したところ、いずれも相対標準偏差3%以下であった。なお、錠剤の測定方法は、実施例の粉体を打錠機で連続打錠中、連続サンプリングした錠剤20錠を乳鉢ですりつぶし均一化した後、そこから1錠相当分を精密に量り取ったものを、HPLCを用いて測定した。サンプリング粉同様、これを連続打錠の経時6点(30分毎)について行い、その測定値の相対標準偏差(以下、CVと略す)にてカフェイン含量均一性を評価した。
【0044】
下記に実施例及び比較例で使用した原料を示す。
【表7】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
カフェイン粒子の表面が二酸化ケイ素で被覆された被覆カフェイン粒子。
【請求項2】
カフェイン粒子と、二酸化ケイ素粒子とを混合してなる請求項1記載の被覆カフェイン粒子。
【請求項3】
二酸化ケイ素の配合量が、カフェイン100質量部に対して20〜100質量部である請求項1又は2記載の被覆カフェイン粒子。
【請求項4】
請求項1、2又は3記載の被覆カフェイン粒子を含有する内服固形製剤であって、粒状剤、錠剤及びカプセル剤から選ばれる内服固形製剤。

【公開番号】特開2010−265211(P2010−265211A)
【公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−117569(P2009−117569)
【出願日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【出願人】(000006769)ライオン株式会社 (1,816)
【Fターム(参考)】