説明

被覆グレージング

被覆グレージングであり、グレージングは、最も内側の表面および最も外側の表面をもつガラスのペイン、およびペインの最も外側の表面上のコーティング層(例は、チタニアコーティングおよび下地(underlying)のフッ素をドープされた酸化スズコーティング)を含む。グレージングは0.7またはそれよりも低い放射率をもち、およびその最も外側の被覆表面は、親水性および光活性の双方であり(任意の必要な初期活性化期間の後)、30°またはそれよりも小さい水滴接触角を有し、それによって、グレージングは、凝結がその最も外側の表面上に形成される傾向を減少させ、または防ぐ能力および30°でまたはそれ未満の水滴接触角を維持するための便宜(facility)をもつ。また、凝結がグレージングの最も内側の表面上に形成される傾向を減少させ、または防ぐ方法を明らかにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、さもなければグレージングの最も外側の表面上に起こりうる凝結の形成を減らし、または防ぐための方法、およびこの目的のために適切な被覆グレージングに関する。
【0002】
環境意識およびその責任上の重視が増すにつれ、ガラス製造業者は、特に、グレージング製造業者は、ますます効率的なグレージングが、建築物、乗り物における設置のために、そして他の適用、例は、光起電力(太陽)電池における使用のために提供されるよう求められる。結果として、目下、ガラスが設置される環境に従って、異なる機能を実行するための異なったエネルギー効率のよいガラスが存在する。
【0003】
暖かい/暑い気候において、日照調整ガラス(例は、本体着色ガラス)を、構造(例は、建築物、乗り物、その他)の外側から内側までのガラスを通して伝えられる太陽熱の量を減らすために用いることができ、それによって、構造内での熱利得(温度増加)が減らされる。これはさらに、作動中、そしてこのようにしてエネルギーを消費することがある任意の空調システムへの負荷も減らしうる。
【0004】
同様に涼しい/寒冷気候において、低放射率グレージング(その内側表面のものの上での低放射率コーティング(更に詳細に以下に説明する)をもつ)は、構造(例は、建築物、乗り物、その他)の内側から外側までのグレージングを通し伝えられる熱量を減らすのに用いることができ、それによって、構造内からの熱損失(温度減少)が減らされる。さらに、これは、作動中、そしてこのようにしてエネルギーを消費することがある任意の加熱システムへの負荷も減らすことができる。
【0005】
特定の問題が、寒冷気候における構造で設置されるとき、低放射率コーティングを含む高度に絶縁性のグレージングで観察され、すなわち、典型的にはコーティングされていないそれらの最も外側の表面上の凝結(露、しずく)の形成があった。最も外側の表面(外面)は、構造の外部上で環境と接触しているものであり、そして通常、表面のものと称される。
【0006】
凝結はある問題であり、それは、グレージングが設置される構造の中を、またはそれから外を人が見ようとするとき、しばしば、グレージングを通して何も見ることができない範囲にまで、グレージングを通した視認性が減らされるからである。そのようなグレージングを通しての視界は、効果的に望ましくないように妨げられうる。この観察結果は、モノリシックな(完全に統制された)(即ち、ガラスの単一のペイン)、ラミネート加工(積層)されたグレージング(即ち、ガラスの2またはそれよりも多くのグレージングを、それらの間で拡がる中間層物質(材料)のプライによって一緒に接合されてもつ)およびマルチペイン(multiple pane)グレージング単位(即ち、2またはそれよりも多くのガラスのペインで、互いの間のシール(密封)された空間においてガスを含む(gaseous)層によって分けられるものをもつ)が含まれるすべての種類のグレージングについて保持される。
【0007】
加えて、より一層エネルギー効率よく(即ち、より一層高度に絶縁性の)、低い放射率になるようにガラス/グレージングが作成されるほど、より迅速に、そしてさらに頻繁に、凝結が形成されると観察された。特定のコーティングの放射率、εは、完全放射体(ラジエーター)であり、そして単一の放射率(emissivity of unity)(ε= 1)をもつように規定される黒体と比較して、エネルギーを吸収し、そして放射するために、そのコーティングの傾向に言及する。本明細書を通して言及するように、低放射率コーティングは、劣った吸収体およびより一層長い波長の熱エネルギーの放射体であり、およびε<1をもち、そしてこのようにして、それは熱の伝達に対する不完全な障壁(バリアー)(およそ70%の効率のもの)の役目を果す。凝結は、ある表面上で形成され(ガラスの最も外側の表面を含み)、その表面の温度が露点より下の温度にまで低下するとき、それは空気中の水蒸気が水滴を形成するために凝結する湿度に依存する温度である。
【0008】
凝結が、絶縁性グレージング単位(IGU)、マルチペイングレージング単位のある種の、1またはそれよりも多くの低放射率のコーティングを含むものの最も外側の表面上で形成されるという事実は驚くべきであり、それは、既知の出版物、例は、国際公開第WO 02/46490 A2を含むものに従って、グレージング上に形成される凝結の問題に対する解法がそのグレージングの1またはそれよりも多くの表面上で低放射率コーティングを提供することだからである。残念なことに、この解法は納得のいくものに満たないことが証明され、そして、涼しい/寒冷気候におけるグレージングの最も外側の表面上の外部の凝結の形成の問題が残る。
【0009】
実際、彼女の博士論文において、「External Water Condensation and Angular Solar Absorptance - Theoretical Analysis and Practical Experience of Modern Windows(外部の水結露および角度に関する太陽吸収率-現代のウィンドゥの理論的解析および実際的経験)」と題し[ISBN 978-91-554-6830-9]、2007年4月に出版され、Anna Werner(アンナ・ワーナー)は、スカンジナビア国、例は、スウェーデン国における建築物でのウィンドゥ、特に、高度な絶縁性、低い放射率のグレージングから作成されるそれらのウィンドゥ上の外部の結露の問題を議論する。そのようなウィンドゥのために、外部の凝結は暦年あたり最高で合計700時間の間(即ち、1月1日から12月31日まで)に形成することができ、それは受け入れ難いほど高い数である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】国際公開第02/46490号
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】Anna Werner, “External Water Condensation and Angular Solar Absorptance - Theoretical Analysis and Practical Experience of Modern Windows”, [ISBN 978-91-554-6830-9]2007年4月出版
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
この論文において、低放射率コーティングの表面の上の親水性チタニアコーティングの供給が、グレージング(窓ガラス)の外部表面上のそれ自体、外部の凝結(結露)の形成を減らすことがあることを原則として提案する。しかし、外部表面上にだけ親水性の特性をもつコーティング層の使用は、外部の凝結の問題を解決するのに十分ではない。
【0013】
このようにして、本発明の目的は、この大要の原則から発展させること、および凝結の形成がさらに減らされて、そして好ましくはさらに排除される最も外側の表面上で改善されたグレージングの詳細を提供することである。さらに、本発明の目的は、それを達成する方法の提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
したがって、本発明は、最も内側の表面および最も外側の表面をもつガラスのペイン、および光活性な(何らかの必要な初期活性化期間の後の)、親水性の、低放射率コーティング層で、30°またはそれよりも小さい水滴接触角および0.7またはそれよりも低い放射率(その最も外側の表面に関連して測定して)をもつものを、ペインの最も外側の表面上に含む、凝結減少性の(condensation-reducing)グレージングを提供し、グレージングは、それによって、凝結がその最も外側の表面上に形成される傾向を減少させ、または防ぐことが可能である。
【0015】
水滴角度は被覆表面の光活性に起因することがあり、それは、さもなければ30°を超えた表面の接触角を増やす表面上の有機質汚れを分解することが可能であり、そして外部の凝結のための潜在的な核形成エリア(区域)として働く。さらに、凝結により、グレージングを通して見る人のための視認性における減少は、最小にされ、または排除される。
【0016】
驚くべきことに、親水性の、そして光活性な特性(さらに詳細に以下で説明する)とともに、低放射率コーティング(0.7またはそれよりも少ない放射率をもつ)の組合せによって与えられる利益は、形成される凝結のレベル、それが形成される頻度およびそれが消散するのにかかる時間での顕著な低下を導く。これらの3つの特性の組合せによって達成される予想外の相乗効果は、さもなければグレージングを通した視認性上での外部の凝結の有害な影響が問題であった場所(配置)における構造(例は、建築物、乗り物、その他)においてインストール(設置)するのに適するグレージングをもたらした。
【0017】
そのような組合せのさらに驚くべき利益は、グレージングが設置される環境の温度が氷点下(即ち、0℃未満)であるときに起こる。コーティングは、外部の凝結の凍結によって生じる外部の霜の発生および視覚的な影響を減らすことがある。これは、特に、寒冷気候において有利である。
【0018】
このようにして、本発明に従うグレージングは、涼しい/寒冷気候における構造、特に寒冷の、澄んだ夜空の影響をしばしば受けるそれらを含むものにおいて設置されうる(さもなければ、形成するための外部の凝結用の理想的な状況を提供する)。
【0019】
しかし、外部の凝結の形成に対する影響は、寒冷気候に限られない。実際には、グレージングの外部の表面が露点であるか、またはそれより低い任意のエリアででも有益なことがある。驚くべきことに、これには、暑い気候でのグレージングが含まれ、そこでは、グレージングが設置される構造の内側の空調が、外部の凝結を起こすことがある露点にまで表面のものの温度における低下をもたらすことが多い。そのような配置における本発明に従うグレージングの供給は、外部の凝結の始まりを防ぎ、または減らすこと、および/または消散の補助によって問題を解決する。
【0020】
コーティング層がグレージングの最も外側の表面にわたって拡がることを定めることによって、コーティングがグレージングの表面のものの上にあることが意味される。慣習的なグレージングの番号付けの用語において、グレージングのペインの各々の表面は、構造の外側上での環境に接触する表面から、構造の内側での環境に接触する表面まで内部に連続して番号を付けられる。
【0021】
好ましくは、コーティング層は、2つまたはそれよりも多くの異なるコーティング層を含む透明な複合体層である。さらに好ましくは、複合体層は、低放射率層および最も外側の親水性の、光活性層を含む。
【0022】
グレージングの放射率は、別名「修正された」または「半球状の」放射率として知られ、BS EN12898:2001によって測定され、そして引合いに出される表面効果である。好ましくは、本発明に従う被覆グレージングは、0.6またはそれよりも低い、さらに好ましくは0.3未満、そしておそらく0.1未満さえの放射率をもつ。そのような値は0.84の清澄な、コーティングされていないフラット(板)ガラスのペインの放射率と比較される場合がある。
【0023】
多数の低放射率コーティングがこの技術において知られており、そのいずれも本発明に従って用いることができる。しかし、低放射率層は、特に150Å未満の厚さの金属層であることができる。より一層具体的に、金属層はおよそ100Åの厚さの銀の層であってよい。
【0024】
あるいはまた、低放射率層は、金属酸化物層、特に、1μm未満の厚さの、透明な導電性酸化物であることができる。スズ、亜鉛、インジウム、タングステンおよびモリブデンのような金属の酸化物は、金属酸化物の単一の層において構成されうる。フッ素をドープされた酸化スズおよびスズをドープされた酸化インジウムのようなコーティングをもたらすことができるように、そのようなコーティングには、さらにドーパント、例えば、フッ素、塩素、アンチモン、スズ、アルミニウム、タンタル、ニオブ、インジウムまたはガリウムを含むことができる。好ましくは、金属酸化物層はおよそ100-4000Åの厚さ、より一層好ましくは500よりも大きく、そして最も好ましくは1000Åより大きく、典型的に所望の低放射率を達成するために1500-2500Åの領域におけるフッ素をドープされた酸化スズの層である。
【0025】
さらにその代わり、低放射率層は、金属層(または導電性金属化合物)および少なくとも1種の誘電体層が含まれるマルチレイヤー(多層)コーティングスタック(積み重ね)を含む。多層スタック構造は、コーティングの放射率をさらに高めるために繰返すことができる。他の類似した金属の間には、銀、金、銅、ニッケルおよびクロムを、多層スタックにおける金属層として用いることができ、酸化インジウム、酸化アンチモンまたは同種のものを導電性金属化合物として用いることができる。シリコン、アルミニウム、チタン、バナジウム、スズまたは亜鉛の酸化物のような誘電体の層の間に挟まれる銀の1または2つの層を含むコーティングは、典型的に多層スタックである。
【0026】
グレージングの最も外側の表面上の親水性の、光活性なコーティングは、有利には、30°前後未満、好ましくは25°未満、最も好ましくは15°未満の接触角をもつコーティングである。実際に、接触角は、親水性の、および光活性の特性の最適なパフォーマンス(性能)のために10°ほどの低さであることができる。この特性の1つの結果は、水が親水性コーティングの露出した表面に接触するときのものであり、それはコーティングにわたって拡がる傾向をもち、効果的にシートが形成される。コーティングが外れる(run off)ように促されるとき(例えば、重力の影響下にあり)、水はシート様のままで、そしてグレージングを通した視認性に最小の影響しか及ぼさない。
【0027】
有利には、親水性コーティングは光活性であり、コーティングが紫外線放射に曝されるとき、コーティング上に存在する任意の埃または他の有機汚染物質が構造的に分解し、その後水によって流されることを意味する。これは、設計されたコーティング層のために、その上での凝結の形成が減らされ、または排除されるように、特に重要な配慮であり、それは、埃または他の有機汚染物質の存在が、典型的に水滴の核形成につながり(水が接触する表面上の接触角の変化のため)、このようにして凝結の形成が促されるからである。コーティングの露出した表面がより一層清浄であれば、凝結が形成されることがあまりありそうでなく、そしてグレージングの低放射率および親水性の特性を伴う相乗効果がより一層良好である。
【0028】
コーティング表面の光活性は、モデルの汚染物質、例は、ステアリン酸の分解のような既知の方法を用いて測定することができ、回転成形によって表面に適用される。紫外線(UV)放射に曝すとき、光活性コーティングは、ステアリン酸を、ガスを含む水蒸気および二酸化炭素の形成をもたらす、多かれ少なかれの範囲にまで光分解し、このようにして、表面が汚染を減少させられ、そして好ましくは汚染がない。赤外線(IR)の透過スペクトルから、ステアリン酸フィルム(薄膜)のC-Hストレッチに対応するIRピークのエリアの減少の率は、測定され、cm-1-1の単位で表される。あるいはまた、光活性は化学物質のメチレンブルーの分解のような方法を用いて測定することができる。
【0029】
好ましくは、最も外側のコーティング層は、表面が凝結の形成の減少または排除に寄与するのに十分清浄であることを確実にするために、少なくとも1×10-3cm-1-1、さらに好ましくは少なくとも2.5×10-3cm-1-1の光活性を見せる。実際に、光活性は5×10-3cm-1-1ほど高くてよい。
【0030】
親水性の、光活性な被覆表面は、30°またはそれよりも少ない接触角および少なくとも1×10-3cm-1-1の光活性を達成するために、活性化の初期の期間を必要としうる。活性化は、英国において5日間1日につき少なくとも8時間、自然昼光(natural daylight)からUV放射線への被覆表面の曝露によって達成することができる。しかる後、グレージングが自然な昼光に毎日の基準で曝され、そして何らかの長期間の間も屋内で行われないならば、接触角および光活性は望ましいレベルにとどまるかもしれない。
【0031】
任意の適切な既知の技術(ゾル-ゲル、噴霧(スプレー)熱分解、マグネトロンスパッタリング真空蒸着(magnetron sputtered vacuum deposition)および化学蒸着プロセスを含む)によって堆積された任意の既知の親水性の、光活性なコーティングは、本発明において用いることができ、それで、30°またはそれよりも小さい接触角が達成される。しかし好ましくは、親水性の、光活性な層は100Åおよび2500Åの間の厚さの結晶質の(アナターゼ(鋭錐石))チタニアの層であり、そしてさらに好ましくは、親水性の、光活性な層は、コーティング層の最も外側の層である。有利には、チタニア層は、厚さで200Åおよび1800Åの間、さらに有利には250Åおよび1000Åの間で、最も効率的にその親水性の、および光活性な機能を実行するためのものでありうる。
【0032】
さらに、親水性の、光活性な層は、修飾された層、例は、ドープされた金属酸化物層であることができ、その結果、UV領域における活性化に加え、またはそれの代わりに、光活性に対して関与する光吸収バンドが電磁スペクトルの可視領域において活性化されるようなものである。そのような修飾された層は、修飾されていない層よりも高い光活性の程度を見せることができる。
【0033】
低放射率および親水性のコーティングは、追加的に下層、例は、シリコン酸化物、酸窒化シリコンおよび/または酸化アルミニウムが含まれるものを設けることができる。そのような層は、ガラスからのアルカリ金属イオンの移動をコントロール(制御)する障壁として、および/または低放射率および親水性の、光活性な層の厚さにおける変動からもたらされる虹色(玉虫色)の反射色を抑えるためのカラー抑制(サプレッシング)層としてはたらくことができる。
【0034】
どのコーティング層のオプションを選んでも、その(最も外側の)コーティング層は好ましくは、20nmまたはそれより小さい、さらに好ましくは15nmまたはそれより小さく、およびおそらく5nmまたはそれよりも小さいほどの平均表面粗さ、Raをもつ。粗さの値がより一層低いほど、コーティングはより耐久性がある可能性が高く、そしてその外部の凝結が形成されることがありそうにない。その(最も外側の)コーティング層がより一層スムーズ(滑らか)であれば、それにより形成される任意の凝結もより分散し易く、そして液滴様よりはむしろシート様になり、このようにしてグレージングを通した視認性が支援される。コーティング層の低放射率の特性と組み合わせて、それはその表面上での凝結の形成の始まりを著しく遅らせるように見え、グレージングを通して見る観察者にとって、コーティング層の比較的滑らかな親水性の、そして光活性の性質は、有利には、形成される任意の凝結も見えず、またはほとんど見えないことを意味する。
【0035】
さらに、その(最も外側の)コーティング層は、好ましくは5および20%の間の反射(コーティングに対する法線で測定されるとき)、さらに好ましくは8および18%の間で、および最も好ましくは15%未満の間で見せる。商業上および居住用住居において設置されうるグレージングのために、そのような反射値は特に有利であり、それは、逆光反射効果(adverse light reflection effects)の危険性が、世界中の特定の都市においてパイロットへの潜在的影響のために禁止され、最小にされるからである。さらに、居住用住居のために、反射があまりに強く、これがグレージングを通したより一層低い可視的な伝達をもたらすことが多く、構造中に不十分な光しか許容されず、それは、住居内での観察者のための外部の環境の視界にとって有害である。
【0036】
グレージングにおいて含まれるガラスのペインは、本体着色された(body-tinted)フロートガラスのペインであることができる。本体の色合いはさらに任意の外部の凝結の出現も遅らせるかもしれず、それは、そのようなガラスが典型的に入射する赤外線を吸収するからであり、このようにして、ガラスの表面温度は増加する。着色ガラスのペインは、次の範囲(重さによる)において、清澄なベースガラス組成をもつことができる。
【0037】
【表1】

【0038】
ガラスはまた、他の添加剤を含むことができ、例えば、精錬助剤(refining aids)を、通常最高2%の量で存在する。このベースガラス組成は、以下の色付け薬剤の1つまたはそれよりも多く、即ち、コバルト、ニッケル、クロム、バナジウム、マンガン、チタン、銅、セリウム、ネオジムおよびエルビウム、および/またはセレンの酸化物が含まれうる(これは非網羅的なリストである)。
【0039】
加えて、ガラスは平坦であることができ、またはそれはカーブしてよく、そしてそれは例えば、熱的または化学的な焼き戻しによって強化されうる。熱処理プロセス、例えば、焼き戻し、または曲げをガラスが受けるとき、これはコーティング層の堆積の前または後に行うことができる。しかし、これはそのような熱処理に耐えるために特定のコーティング層(群)の能力に依存する。
【0040】
通常、ガラスは1および10mmの間、さらに好ましくは8mm未満、および最も好ましくは2および5mmの間の厚さにおいて提供される。
【0041】
これまでは、本発明に従うグレージングはモノリス(一枚岩)であるとして説明したが、それはまた、マルチペイングレージングとして提供することができ、それは、互いから離れて間隔を開けられたガラスの少なくとも2つのペインを含み、そこでは、ガラスのペインの1つまたはそれよりも多くは、上述のようなモノリシックなグレージングであり、そしてコーティング層は、マルチペイングレージングの最も外側の表面(表面のもの)上に位置される。以前に導入した表面の説明の用語に従い、ガラスの2つのペインのために、表面は最も外側のものから最も内側の部分まで1から4までで番号付けられる。
【0042】
マルチペイングレージングは、30mmまたはそれよりも小さい合計厚さで最適に提供することができ、しかし、4mmから25mmまでの範囲での厚さが好ましい。ガラスの個々のペインがより一層細いほど、グレージングは全体として重さでより一層軽い。
【0043】
マルチペイングレージングは、ガラスの2つのペインが少なくとも1つのプライの中間層物質によって相互に分離されるラミネート加工されたグレージングの形態であることができ、それはペインを一緒に接合する。さらに、ガラスのペインまたは他の物質はラミネート(積層板)に接合されてよく、そして他の機能的なコーティング(例は、さらに低放射率コーティング)はラミネート(中間層プライ/プライ群の表面を含む)の他の表面の1またはそれよりも多くの上で存在することができる。ポリビニルブチラール(PVB)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリウレタン(PU)、エチルビニルアセテート(EVA)、その他のような任意の既知の中間層物質も用いることができ(それは清澄な、または本体着色であることができ)、そしてそれは、0.38mmおよび1.1mmの間の厚さで、典型的に0.76mmで提供されうる。
【0044】
あるいは、マルチペイングレージングはシールされた単位の形態であることができ、そこではガラスの少なくとも2つのペインがガスを含む層によって相互に分けられる。そのような単位の最も単純な形態は二重グレージング単位であり、そこにおいて、ガラスの2つのペインはスペーサーおよび不活性ガスで満たされたそれらの間の密封された空間を用いて分けられる。再び他の機能的なコーティングは、単位の他の表面の1またはそれよりも多くの上で存在することができる。
【0045】
モノリシックなグレージングおよびマルチペイングレージング(特にシールされた単位の形態において)は、建築物の外面上、そして内部的の双方での使用のために、例は、ウィンドゥガラス、ドアガラス、ルーフウィンドゥガラス、その他、特に外部の凝結がさもなければ問題である配置において、建築学上のウィンドゥとして用いることができる。モノリシックなグレージングおよびマルチペイングレージング(特にラミネートの形態において)は、自動車ウィンドゥとして、例は、ウィンドゥスクリーン(フロントガラス)、リアウィンドゥ、サイドウィンドゥ、ルーフウィンドゥ、その他、再び特に外部の凝結がさもなければ問題である配置において用いられうる。実際に、本明細書を通じて記述されるグレージングのいずれも、外部の凝結の有害な影響がさもなければガラスを通した放射線の伝達に関する問題である任意の状況および配置において用いることができ、例は、光起電性(太陽)電池のためのガラスカバーを伴う。
【0046】
グレージングそれ自体に加え、本発明はさらに、凝結がグレージングの最も外側の表面上に形成される傾向を減らし、または防ぐ方法を提供し、それは、グレージングにおいて構成されるガラスのペインの最も外側の表面に、光活性な(任意の必要な初期の活性化期間の後)、親水性の、低放射率のコーティング層で、30°またはそれより小さい水滴接触角および0.7またはそれよりも小さい放射率(その最も外側の表面に関して測定して)をもつものを設けることを含み、そこでは、凝結のためグレージングを通した視認性の減少が最小にされ、または排除される。
【0047】
驚くべきことに、親水性の、および光活性の特性と並んで、低放射率コーティング(0.7またはそれよりも小さい放射率をもつ)の組合せによって与えられる利益は、形成される凝結のレベル、それが形成される頻度および形成されるのに必要な時間における相乗作用の、および著しい減少に導く。
【0048】
コーティングの光活性は、ガラスの表面上で自然に形成される有機質の汚れを分解し、好ましくは完全に分解することを確実にする。これは、最も外側の表面の接触角を30°に、またはそれよりも低く維持する。このようにして、グレージングの外面が露点に達するとき、表面上で凝縮する任意の水が凝縮し、そしてシートを形成するためにすぐに散開することができる。表面が親水性なだけであるならば、表面上の有機質の汚れは、時間とともに、凝結が有機汚染のエリアにおける水生成液滴のためにすぐにシートを形成しないことを意味する可変接触角をもたらすであろう。そのようなものとして、最も外側の表面は低い接触角をもつだけでなく、有機性の汚れ/油のような疎水性薬剤から自然に汚されるところのメカニズムをもつことが本質であり、それは、表面の液滴形成の見込みを増やし、30°またはそれよりも小さい接触角を有する表面を維持するために破壊される。
【0049】
ともかく少しでも形成されるならば、凝結は、典型的にコーティングされていない最も外側の表面をもつ同じ配置での対応する先行技術のグレージング上で形成される凝結の時間の数と比較して、暦年あたり50%より少ない(未満の)時間の間、好ましくは75%より少ない時間につきグレージングの最も外側の表面上で形成することができる。スカンジナビアにおいて観察される外部の凝結の「1暦年につき最高700時間」の形成を参照し、50%の減少は、1暦年につき350時間のそのような先行技術グレージングと実質同じ配置に設置された本発明に従うグレージングの最も外側の表面での凝結の形成に対応する。
【0050】
グレージングが設置される配置(および気候)に依存して、コーティング層の放射率は、この少なくとも50%の減少を達成するのを助けるためにその厚さを変えることによって適切に合わせる(tuned)ことができる。その凝結が形成されうることがより一層ありそうであるほど、必要とされるかもしれないコーティングはより一層厚い。
【0051】
好ましくは、本発明に従うグレージングを通した光景は、ウィンドゥでの外部の凝結の形成によって隠されない。不明りょう化は、2段階テストにおいて評価することができ、それは後に更に詳細に記述するが、そこでは、1および5の間のスコアがグレージングに与えられ、1は乏しいスコア(激しい(heavy)凝結)であり、そして5は優れたスコア(凝結がない)である。そのようなテストでは、本発明に従うグレージングは好ましくは、少なくとも4.5、およびより一層好ましくは5をスコア化する(scores)。
【0052】
好ましくは、コーティング層は、2またはそれよりも多くの異なるコーティング層を含む透明な複合層である。さらに好ましくは、複合層は、低放射率層および親水性の、光活性層を、前に記述するように各々含む。
【0053】
低放射率層は好ましくは、フッ素をドープされた酸化スズの層であり、500Åより大きく、最も好ましくは1000Åの厚さより厚く、およびより一層好ましくは1500-2500Åの領域にある。典型的に、そのような低放射率層は、次のスズ含有前駆体物質、酸素含有前駆体物質およびフッ素含有前駆体物質の1またはそれよりも多くから堆積されうる。スズ前駆体物質には、気化したジメチルスズ(ジ)クロライド、気化したスズテトラクロライド、気化したテトラブチルスズ、気化したテトラメチルスズおよび気化したモノブチルスズトリクロライドが含まれる。各々は、典型的に、キャリヤ(担体)ガス、例は、ヘリウムおよび/または窒素中で提供される。酸素前駆体には、気化した水、酸素それ自体およびアルコール類、エステル類、エーテル類および有機酸のような気化した酸素含有有機溶媒を、すべてキャリヤガス、例は、ヘリウムおよび/または窒素におけるものが含まれる。フッ素含有前駆体物質には、フッ化水素(無水形態において、または気化した溶液として)、トリフルオロエタン酸およびヘキサフルオロプロピレンオキシドが含まれる。
【0054】
親水性の、光活性層は好ましくは、100Åおよび2500Åの間の厚さの、好ましくは200Åおよび1800Åの間の、さらに好ましくは250Åおよび1000Åの間の結晶質の(アナターゼ)チタニアの層である。典型的に、チタニアのそのような層は次のチタン前駆体物質および酸素含有物質の1またはそれよりも多くから堆積することができる。チタン前駆体物質には、気化したチタンテトライソプロポキシド、気化したチタンテトラクロライドおよび気化したチタンテトラエトキシドが含まれる。各々は、典型的に、キャリヤガス、例は、ヘリウムおよび/または窒素中で提供される。前の段落に挙げるように、酸素前駆体物質は同じであってよく、それ/それらは、気化したチタン含有前駆体(群)に加えることができる。
【0055】
好ましくは、気相においてスズ含有前駆体物質のパーセンテージは0.1-10%、より一層好ましくは0.5-2%である。好ましくは、気相における酸素含有種のパーセンテージは、30-80%、より一層好ましくは40-60%である。好ましくは、気相におけるフッ素含有種のパーセンテージは0.05-10%、より一層好ましくは0.1-2%である。スズ含有種対酸素含有種対フッ素含有種の比は有益には、3.6:61.3:1の前後であることができる。
【0056】
好ましくは、気相におけるチタン含有前駆体物質のパーセンテージは0.1-10%である。より一層好ましくは、気相におけるチタン含有前駆体物質のパーセンテージは0.5-2%である。好ましくは、気相における酸素含有種のパーセンテージは0.1-10%である。より一層好ましくは、気相における酸素含有種のパーセンテージは0.5-2%である。チタン含有種対酸素含有種の比は典型的に、1:0.5から1:5までの範囲にあることができる。しかし、有益には、チタン含有種対酸素含有種の比は、1:1から1:2.5までであってよい。
【0057】
低放射率および親水性コーティングは追加的に、例は、シリコン酸化物、酸窒化シリコンおよび/または酸化アルミニウムを含む下層を設けることができる。これは、低放射率層の厚さにおける変動からもたらされる虹色(玉虫色)の反射色を抑えるために、ガラスからのアルカリ金属イオンの移動を制御するための障壁として、および/または色抑制層としてはたらくことができる。
【0058】
どのコーティングのオプションが選ばれても、それは2つの主要なタイプのうちの1つとして提供することができ、「ハード(硬質)」または「熱分解」のオンラインコーティングまたは「より一層柔らかい」オフラインコーティングである。ハードコーティングは「オンライン」プロセスにおいて堆積することができ、そこでは既知の様式で、例えば、化学蒸着(CVD)プロセスの使用によって、コーティングはその形成の間、板ガラスの表面上に熱分解的に堆積される。「オフライン」のコーティングは、ガラスの完全な製造の後の一片のガラスの表面上に堆積されるものである。オフラインのコーティングには、例えば、真空条件下の磁気的スパッタリング法の使用によって堆積されるスパッター(sputtered)コーティングが含まれる。
【0059】
好ましくは、コーティング層は、オンラインCVDコーティング法を用いてガラスのペインの最も外側の表面上に堆積される。CVD技術の多くのバリエーション(変形)があり、それは本発明の方法を実行するのに用いることができるが、しかし、既知のコーティング堆積プロセスの次の特定の例が特に役に立ち、そして従って本明細書中に参照することによってここに組み込む。
- 国際特許出願公開(国際公開)WO 2004/085701A1は、チタニアコーティングの堆積を説明する。
- 国際特許出願公開WO 98/06675A1は、ドープされた酸化スズコーティングの堆積を説明する。
- 米国特許第5,798,142号明細書はシリカ(二酸化ケイ素)コーティング(上記したような下層)の堆積を説明する。
【0060】
本発明をより一層良好に理解するために、非制限的な例を手段として、次により一層具体的に説明する。
【実施例】
【0061】
本発明に従うモノリシックなグレージングは、概して次の2つの例のいずれかにも説明するような様式で、ガス流への適切な修飾とともに形成することができる。
例1
【0062】
フッ素ドープされたスズ二酸化物層はオンラインCVDコーター(塗工機)を用いて堆積される。こうするために、ガラス基材(基板)の温度は、600-650℃に設定される。スズ含有前駆体は、ジメチルジクロロスズ(DMT)の形態において、177℃にまで加熱され、そしてキャリヤガスの流れは、ヘリウムの形態において、DMTに通される。ガスを含む(ガス状)酸素は、その後DMT/ヘリウムガス流に加えられる。同時に、フッ素含有前駆体は、フッ化水素(HF)の水溶液の形態において204℃にまで加熱される。追加的な水は、ガスを含むHFおよび水の混合物をつくるために加えられる。2つのガス流は混合され、395リットル/分の速度で、熱いガラス表面に配送される。DMT対酸素対HFの比は、3.6:61.3:1である。結果として生じるフッ素をドープされた酸化スズ層の厚さはおよそ3200Åであり、そしてそれは14オーム/平方の公称上のシート抵抗をもつ。
【0063】
チタニアは再度オンラインCVDコーターを用いでフッ素をドープされたスズ二酸化物層上に堆積される。こうするために、ガラスの温度は、600℃に設定される。チタン含有前駆体は、チタンテトライソプロポキシド(TTIP)の形態において、173℃にまで加熱され、そしてキャリヤガスの流れは、乾燥窒素の形態において、0.7%の気相濃度を与えるために0.4リットル/分の速度でTTIPに通される。酸素含有前駆体は、エチルエタン酸の形態において、50℃にまで加熱され、そしてキャリヤガスの流れは、乾燥窒素の形態において、1.3%の気相濃度を与えるために0.25リットル/分の速度でエチルエタノエート(エタン酸塩)に通される。TTIP対エチルエタノエートの比は1:1.9である。結果として生じるチタニア層の厚さはおよそ80Åである。全体のコーティングスタックは830オーム/平方のシート抵抗をもつ。30分のUV曝露後のコーティングの表面における1マイクロリットル(μL)の水のドロップ(滴)の接触角は6°である(340nmの較正された波長での0.76Wm-2nm-1を提供するUVランプを用いて測定される)。被覆表面の光活性はおよそ3×10-3cm-1-1であり、そして以前に説明したステアリン酸テストを用いて測定される。
例2
【0064】
フッ素をドープされた酸化スズ層は、例1に説明されているように同じ様式において堆積される。チタニアは、再びオンラインCVDコーターを用いてこの層の上に堆積される。ガラスの温度は600℃に設定される。チタン含有前駆体は、TTIPの形態において、160℃にまで加熱され、そしてキャリヤガスの流れは、乾燥窒素の形態において、0.9%の気相濃度を与えるために0.95リットル/分の速度でTTIPに通される。酸素含有前駆体は、エチルエタノエートの形態において、42℃にまで加熱され、そしてキャリヤガスの流れは、乾燥窒素の形態において、1.7%の気相濃度を与えるために0.55リットル/分の速度でエチルエタノエートに通される。TTIP対エチルエタノエートの比は1:1.85である。結果として生じるチタニア層の厚さはおよそ470Åである。全体のコーティングスタックは250オーム/平方のシート抵抗をもつ。30分のUV曝露後のコーティングの表面における水の1μLのドロップの接触角は28°である(例1により測定する)。被覆表面の光活性は、以前に説明するステアリン酸テストを用いて再び測定され、およそ1×10-3cm-1-1である。
【0065】
15個のグレージング試料を、7、15、70、250または1000オーム/平方のシート抵抗をもち、上記したものに類似した様式において調製した。各々は、フッ素をドープした酸化スズ層の表面上に堆積された最も外側のコーティング層としてチタニア層が構成された。シート抵抗が7から1000オーム/平方まで増加すると、フッ素をドープされた酸化スズ(SnO2:F)層の厚さ対チタニア(TiO2)層の厚さの比は減少した。
【0066】
各々のグレージングは以前に簡潔に述べた2段階テストにおいてその後評価した。このテストにおいて、グレージングはテストフレームにおいて垂直に設置され、対向面AおよびBをもつ。グレージングの最も外側のコーティング層はフレームの面Aに対応する。物体は、グレージングの面Aに対して法線に、およびそれから1メートル離れて置く。人は、まるで構造の内部から外側まで見えるように、グレージングの面Bに対して法線に、およびそれから3メートル離れて立つ。
【0067】
テストのステップ1は、グレージングを通して見るとき、物体がゆがめられるかどうか決めることを人に要求する。ステップ2は、凝結の任意の液滴が最も外側のコーティング層の表面上で観察可能かどうか決めることを人に要求する。各々のステップのために、1から5までのスコアが与えられ、1は乏しいスコア(激しい凝結)であり、そして5は優れたスコア(凝結がない)である。これらのスコアの平均はグレージングのための全体的なスコアとして与えられる。
【0068】
15個の試料の各々のために、2段階テストは、初期の9日の期間にわたって同じ人によって実行され-結果は下記のテーブルIにおいて記録される。それらの記録の時間とともに、周囲温度、露点温度および相対湿度を含む、それらの9日間の気象状況を、下記のテーブルIIIにおいて記録する。
【0069】
15個のサンプル(試料)の全ては、このテストにおいて少なくとも4つの平均を、それらのうちの10とともにスコア化され(例1-7、10、13および15)、4.5より大きくスコア化される。実際に、多くのものは、多数の個々の日の測定において5をスコア化する。これは、15個のグレージングのすべて、特に、平均4.5より大きくスコア化されるものは、ごくわずかな外部の凝結を見せる(結果は非常に良好から優れたまでである)ことを意味する。
【0070】
比較のために、最も外側の低放射率コーティングまたは親水性コーティングだけ(双方ともでない)をもつグレージング、または最も外側のコーティングがまったくないものは、本発明に従って15個の試料で同時に2段階テストを用いてさらに評価された。これらの結果は、下記のテーブルIIにおいて記録される。比較例21(親水性層だけを持つ)は別として、比較例のすべては、平均4未満上にスコア化された。実際に、多くのものは、多数の個々の日の測定においてわずか1または2(乏しいか、またはそれほど良好ではない)をスコア化した。比較例22は、清澄な、コーティングされていないフロートガラスのペインである。
【0071】
2段階テストを次に、より一層長い時間の期間にわたって同じ15個の試料とともに繰り返した:月に17日#1、月に13日#2および月に18日#3(合計48日)。結果を、下記のテーブルVで記録する。各試料の最も外側のチタニア層の厚さおよび粗さ、および30分の紫外線照射後の水の1μLのしずくを用いて測定された接触角度は、下記のテーブルIVで記録される。
【0072】
7または15のいずれかのシート抵抗をもつ試料のすべては、このテストにおいて一貫して少なくとも4.5の毎月の平均をスコア化する(少なくとも90%の「パーセンテージ効果」のスコア)。残りの試料、例10、13および15は4.5より大きい(90%の有効性より大きい)をスコア化し、しかし、例8、9、11、12および14は4.5未満(90%未満の有効性)をスコア化する。
【0073】
比較のために、最も外側の低放射率コーティングまたは親水性コーティングだけ(双方ともではない)をもつグレージング、または最も外側のコーティングがまったくないものをまた、より一層長い2段階テストを用いて二度目に評価した。これらの結果を下記のテーブルVIおよびVIIにおいて記録する。これらの比較例のすべては、4.5未満(90%未満の有効性)の平均毎月スコアをもち、そしてそれで本発明の範囲外である。したがって、例8、9、11、12および14はまた、比較例、本発明の範囲外として考えられる。
【0074】
得られる結果のすべての分析から、得られるグレージングが凝結を減らすことにおいて90%を超えて有効であるように、特定のシート抵抗をもつグレージングに最適なチタニアの厚さ割り当てることが可能であった。
【0075】
【表2】

【0076】
【表3】

【0077】
【表4】

【0078】
【表5】

【0079】
【表6】

【0080】
【表7】

【0081】
【表8】

【0082】
【表9】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
最も内側の表面および最も外側の表面をもつガラスのペイン、および光活性な、親水性の、低放射率コーティング層で、30°またはそれよりも小さい水滴接触角および0.7またはそれよりも低い放射率を有するものを、ペインの最も外側の表面上に含む凝結減少性のグレージングであって、それによって、凝結がその最も外側の表面上に形成される傾向を減少させ、または防ぐことが可能な、グレージング。
【請求項2】
コーティング層は、2つまたはそれよりも多くの異なるコーティング層を含む透明な複合体層である、請求項1に記載のグレージング。
【請求項3】
複合体層には、低放射率層および最も外側の親水性の、光活性層が含まれる、請求項2に記載のグレージング。
【請求項4】
低放射率層は150Å未満の厚さの金属層である、請求項3に記載のグレージング。
【請求項5】
金属層はおよそ100Åの厚さの銀の層である、請求項4に記載のグレージング。
【請求項6】
低放射率層は1μm未満の厚さの金属酸化物である、請求項3に記載のグレージング。
【請求項7】
金属酸化物層は、500Åより厚い厚さのフッ素をドープされた酸化スズの層である、請求項6に記載のグレージング。
【請求項8】
親水性の、光活性層は、100Åおよび2500Åの間の厚さの結晶質の(結晶性)(アナターゼ)チタニアの層である、請求項3に記載のグレージング。
【請求項9】
親水性の、光活性層は、コーティング層の最も外側の層である、請求項3〜8のいずれか1項に記載のグレージング。
【請求項10】
(最も外側の)コーティング層は20nm未満の平均表面粗さ、Raをもつ、先行する請求項のいずれか1項に記載のグレージング。
【請求項11】
(最も外側の)コーティング層は、コーティングの法線で測定するとき、5および20%の間の反射を見せる、先行する請求項のいずれか1項に記載のグレージング。
【請求項12】
ガラスのペインは本体色付きのフロートガラスのペインである、先行する請求項のいずれか1項に記載のグレージング。
【請求項13】
互いに離れて間隔を空けられた少なくとも2つのガラスのペインを含むマルチペイングレージングであって、1またはそれよりも多くのガラスのペインは、請求項1〜12のいずれか1項に記載のグレージングであり、およびコーティング層はマルチペイングレージングの最も外側の表面上に位置される、グレージング。
【請求項14】
ラミネート加工されたグレージングの形態において、少なくとも2つのガラスのペインは、中間層物質の少なくとも1つのプライによって相互に分けられ、それがペインを一緒に接合する、請求項13に記載のマルチペイングレージング。
【請求項15】
シールされたグレージング単位の形態において、少なくとも2つのガラスのペインはガスを含む層によって相互に分けられる、請求項13に記載のマルチペイングレージング。
【請求項16】
建築上のウィンドゥおよび/または自動車のウィンドゥとしての先行する請求項に記載のグレージングの使用。
【請求項17】
凝結がグレージングの最も外側の表面上で形成される傾向を減らし、または防ぐ方法であって、光活性な、親水性の、低放射率のコーティグ層で、30°またはそれよりも小さい水滴接触角および0.7またはそれよりも低い放射率を有するものを、グレージングを構成するガラスのペインの最も外側の表面に設けることを含み、
凝結によるグレージングを通した視認性における減少が最小化または排除される、方法。
【請求項18】
少しでも形成されるならば、凝結は、グレージングの最も外側の表面上に、コーティングされていない最も外側の表面をもつ同じ配置における対応する先行技術のグレージング上で典型的に形成される凝結の時間の数に比較して暦年あたり50%未満の時間しか形成されない、請求項17に従う方法。
【請求項19】
少しでも形成されるならば、凝結は、グレージングの最も外側の表面上に、暦年あたり350を超えない時間しか形成されない、請求項18に従う方法。
【請求項20】
グレージングは本明細書に記載するような2段階の視覚的観察(visual observation)テストにおいて少なくとも4.5をスコア化する、請求項17〜19のいずれか1項に従う方法。
【請求項21】
コーティング層は2またはそれよりも多くの異なるコーティング層を含む複合体層である、請求項17〜20のいずれか1項に従う方法。
【請求項22】
複合体コーティングには、低放射率層および最も外側の親水性、光活性層が含まれる、請求項21に従う方法。
【請求項23】
低反射率層は、500Åより厚い厚さのフッ素をドープされた酸化スズの層である、請求項22に従う方法。
【請求項24】
フッ素をドープされた酸化スズの層は、次の
(a)1またはそれよりも多くの気化したジメチルスズクロライド、気化したスズテトラクロライド、気化したテトラブチルスズ、気化したテトラメチルスズおよび気化したモノブチルスズトリクロライドが含まれるスズ前駆体物質、
(b)1またはそれよりも多くの気化した水、酸素それ自体および気化したアルコール、エステル、エーテルおよび有機酸のような酸素含有有機溶媒が含まれる酸素含有物質、
(c)1またはそれよりも多くのフッ化水素(無水形態においてまたは気化した溶液として)、トリフルオロエタン酸およびヘキサフルオロプロピレンオキシドが含まれるフッ素含有物質
を包含する前駆体物質から堆積される、請求項23に従う方法。
【請求項25】
親水性の、光活性層は、100Åおよび2500Åの間の厚さの結晶質の(アナターゼ)チタニアの層である、請求項22〜24のいずれか1項に従う方法。
【請求項26】
チタニアの層は、次の
(a)1またはそれよりも多くの気化したチタンテトライソプロポキシド、気化したチタンテトラクロライドおよび気化したチタンテトラエトキシドが含まれるチタン前駆体物質、
(b)1またはそれよりも多くの気化した水、酸素それ自体および気化したアルコール、エステル、エーテルおよび有機酸のような酸素含有有機溶媒が含まれる酸素含有物質
を包含する前駆体物質から堆積される、請求項25に従う方法。
【請求項27】
コーティング層は、ガラスのペインの最も外側の表面上に、オンライン化学蒸着コーティング技術を用いて堆積される、請求項17〜26のいずれか1項に従う方法。

【公表番号】特表2011−514874(P2011−514874A)
【公表日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−548182(P2010−548182)
【出願日】平成21年2月3日(2009.2.3)
【国際出願番号】PCT/GB2009/050099
【国際公開番号】WO2009/106864
【国際公開日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【出願人】(591229107)ピルキントン グループ リミテッド (82)
【Fターム(参考)】