説明

被覆基体の上に電着被膜を形成する方法とそれによる製造物品

被覆物品はガラスのような非導電性基体(12)を包含する。基体の少なくとも一部分の上には少なくとも一つの導電性被膜(16)が、たとえば、化学蒸着または物理蒸着によって、形成されている。導電性被膜(16)は機能性被膜であることができ、そして0Åより大きく25,000Å未満たとえば1,000Å未満の範囲の厚さを有することができる。導電性被膜の少なくとも一部分の上には少なくとも一つのポリマー性被膜(18)が電着されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般的には、被覆基体(coated substrate)の上に少なくとも一つの電着被膜(electrodeposited coating)を形成する方法、たとえば、少なくとも一つの導電性被膜を有するガラス基体の上に電着被膜を形成する方法、およびそれによって製造された物品に関する。
【背景技術】
【0002】
「電着(electrodeposition)」即ち「エレクトロコーティング(electrocoating)」法は様々な製造分野で使用されている。代表的なエレクトロコーティング法では、エレクトロコーティング組成物を含有する浴の中に金属基体を浸ける。金属基体は電気回路の中で帯電電極として働き、電気回路はその電気帯電した金属基体とそれとは反対に帯電した対向電極(counter−electrode)とによって規定される。電極間には、金属基体の表面上にエレクトロコーティング組成物の実質的に連続した密着性の皮膜(エレクトロコート(electrocoat))を付着させるに十分な電流が適用される。
【0003】
電着は金属製自動車部品に耐食性下塗剤(corrosion−resistant primers)を適用するための主要な方法になってきている。加えて、印刷回路の分野では、「金属コア」の上に電着被膜を適用してから、その電着被膜の一部を予め定められたパターン状に融除して電気回路を成す区画の導電性金属コアを裸出させることができる。いくつかの既知の電着法の例が米国特許第4,333,807号および第4,259,163号の各明細書の中に開示されている。
【0004】
既知の電着法においては、適用されたエレクトロコートはその下にある基体を隠すために一般に不透明である。さらには、エレクトロコートが電着されるところの基体は一般には、自動車や電気器具の部品のような固体金属部品である。金属部品は電着過程において電極として作用するように比較的容易に帯電され得るので電着法によく適合する。
【0005】
自動車業界では比較的最近の開発において、下層金属部品に増大した防食性を付与するために金属粒子を含有する有機質の下塗組成物が開発された。たとえば、米国特許第4,346,143号明細書には、防食性を付与するために鉄金属基体の上に適用された亜鉛リッチ有機質下塗剤が記載されている。この有機質下塗剤は亜鉛粒子または亜鉛ダストと、カラー顔料と、樹脂状結合剤を含有している。この顔料と亜鉛粒子を含有した樹脂状下塗剤は導電性であるので、この下塗は後でエレクトロコーティング法を使用して上塗を施されることができる。米国特許第6,008,462号明細書には、溶接可能な樹脂状コーティング組成物が開示されており、それは樹脂と、架橋剤と、組成物中にランダム分散された導電性鉄粉末粒子を有する。これら既知の導電性の有機質コーティングにおいては、金属粒子は有機質コーティング全体の中にランダム分布されており、そしてコーティングは代表的には、下層の金属部を隠すのに十分な及び/又は下層の金属部品に防食性を付与するのに十分な厚さに適用される。
【0006】
エレクトロコーティング法を、非導電性基体(二三の名前を挙げると、ガラス、セラミック、タイル)を被覆するためのような、その他のコーティング環境に利用することは有益であろう。しかしながら、非金属基体をエレクトロコーティング法に利用することは幾つかの問題を生じる。たとえば、電着は被覆されるべき基体を電気的に帯電してエレクトロコーティング過程中に電極として作用させる能力を要求する。これはガラスのような非導電性基体では可能でない。導電性表面を付与するために上記のような導電性有機質コーティングがガラス基体に適用されてもよかろうが、かかる樹脂状下塗剤は逆に得られる被覆ガラス片の最終用途を制限することがあろう。例えば、日射制御被膜(solar control coating)や美的被膜(aesthetic coating)のような機能性被膜(functional coating)を有する窓ガラスは自動車や建築の分野に使用される。これら被覆された窓ガラスは代表的には、予め規定された光学的な及び日射制御の性質、たとえば、最低の可視光透過率、日射赤外線反射率、反射される色、など、を有することを要求される。顔料入り樹脂状下塗の存在は被覆ガラスの所期の光学的なおよび/または日射制御の性質に悪影響を与えることがある。加えて、ガラスシートを被覆するのに通常使用される高温では、かかる金属粒子含有樹脂状下塗剤はそれらがもはや電着に適する導電性表面を与えない処にまで分解または崩壊することがある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、たとえば限定されるものではないが導電性被膜を有するガラス基体のような基体をエレクトロコーティングする方法であって上記欠点の少なくとも幾つかを低減または解消した前記方法を提供することは有益であろう。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(発明の概要)
被覆物品を製造する方法は、基体を提供し、そして基体の少なくとも一部分の上に少なくとも一つの導電性被膜を形成することを含む。導電性被膜は無機質被膜であることができる。導電性被膜は0Åより大きく25,000Å未満、たとえば、20,000Å未満、たとえば、15,000Å未満、たとえば、10,000Å未満、の範囲の厚さを有することができる。導電性被膜の少なくとも一部分の上に少なくとも一つのポリマー性コーティング材料を電着できる。非限定的な一態様においては、導電性被膜は2層以上の金属層を有する日射制御被膜のような機能性被膜であることができる。
【0009】
被覆物品を製造するもう一つの方法は基体の少なくとも一部分の上に形成された少なくとも一つの導電性被膜を有する基体を提供する工程を含み、導電性被膜は無機質被膜たとえば多層の無機質被膜を有することができ、そして一つまたはそれ以上の金属層を有することができる。導電性被膜は0Åより大きく25,000Å未満、たとえば、20,000Å未満、たとえば、15,000Å未満、たとえば、10,000Å未満、の範囲の厚さ有することができる。導電性被膜の少なくとも一部分の上に少なくとも一つのポリマー性被膜を電着できる。
【0010】
被覆物品を製造する更なる方法はガラスやプラスチックのような非導電性第一基体を提供することを含む。第一基体の少なくとも一部分の上に少なくとも一つの導電性被膜を、化学蒸着またはマグネトロンスパッタ蒸着から選ばれた方法によって、形成できる。導電性被膜は無機質被膜であることができ、そして/または0Åより大きく25,000Å未満、たとえば、20,000Å未満、たとえば、15,000Å未満、たとえば、10,000Å未満、の範囲の厚さ有することができる。導電性被膜の少なくとも一部分の上に少なくとも一つのポリマー性被膜を電着できる。
【0011】
被覆物品は非導電性基体のような第一基体と、第一基体の少なくとも一部分の上に形成された少なくとも一つの導電性被膜を含む。導電性被膜は無機質被膜であることができる。導電性被膜は0Åより大きく25,000Å未満、たとえば、20,000Å未満、たとえば、15,000Å未満、たとえば、10,000Å未満、の範囲の厚さ有することができる。導電性被膜の少なくとも一部分の上には少なくとも一つのポリマー性被膜が電着されていることができる。
【0012】
もう一つの被覆物品はガラスのような非導電性第一基体を含み、第一基体の少なくとも一部分の上には化学蒸着またはマグネトロンスパッタ蒸着から選ばれた方法によって形成された少なくとも一つの導電性被膜をもつ。導電性被膜は無機質被膜であることができる。導電性被膜は0Åより大きく25,000Å未満、たとえば、20,000Å未満、たとえば、15,000Å未満、たとえば、10,000Å未満、の範囲の厚さ有することができる。導電性被膜の少なくとも一部分の上には少なくとも一つのポリマー性被膜が電着されていることができる。更なる被覆物品は、基体;基体の少なくとも一部分の上に形成された少なくとも一つの無機質導電性被膜;および導電性被膜の上に電着されたエレクトロコートを含む。
【0013】
追加の被覆物品は、基体;基体の上に形成された複数の導電性被覆領域(conductive coating regions);および導電性被覆領域の上に選択的に電着された一つまたはそれ以上のエレクトロコートを含む。
【0014】
基体の上に多層複合被膜を形成する方法は、第一基体の少なくとも一部分の上に導電性被膜を、化学蒸着またはマグネトロンスパッタ蒸着から選ばれた方法によって形成し、そして導電性被膜の少なくとも一部分の上に少なくとも一つのポリマー性被膜を電着によって形成することを含む。
【0015】
(好ましい態様の記載)
ここで使用されるとき、空間的または方向的な用語、たとえば、「内(inner)」、「外(outer)」、「上(above)」、「下(below)」などは図面に示されているように本発明に関係している。しかしながら、本発明は様々な代替の配向を想定でき、従って、かかる用語を限定的にとらえるべきでない、ということが理解されるはずである。さらに、明細書および特許請求の範囲の中に使用されている寸法、物理的特徴などを表わす全ての数字は全ての場合において用語「約(about)」によって変更されると理解されるべきである。従って、それとは対照的に指摘されていない限り、明細書および請求項の中に記載されている数値は本発明によって得られるはずと考えられる所期性質に依存して変動し得る。いずれにせよ、請求項の範囲に均等論を適用することを制限するつもりはなく、各数値的パラメーターは少なくとも、報告された有意な数字に照らしてそして通常の丸め方によって解釈されるべきである。さらには、ここに開示された全ての範囲はここに包括されるいずれものそして全ての下位範囲を包囲すると理解されるべきである。たとえば、「1〜10」の規定範囲は最小値1と最大値10の間(そしてそれら値を含めて)のいずれものそして全ての下位範囲、すなわち、1以上の最小値で始まり且つ10以下の最大値で終る全ての下位範囲、たとえば、1〜7.6、または3.4〜8.1、または5.5〜10のような、を包含すると解されるべきである。
【0016】
また、ここで使用されるとき、用語「上に付着された」、「上に適用された」、または「上に形成された」は、表面の上に付着、適用または形成されたが必ずしも表面と接触していなくてもよいことを意味している。たとえば、基体の「上に付着された」材料は付着材料と基体の間に同じまたは異なる組成の一つまたはそれ以上の他の材料の存在を排除しない。加えて、ここに引用された全ての刊行物はそれらの全体が本願明細書の中に組み入れられるものと理解されるべきである。
【0017】
用語「美的被膜」は基体の美的性質、たとえば、色、色彩、色相、または可視光反射率、を向上させるために設けられた被膜を称するが、必ずしも基体の日射制御性質を向上させなくてもよい。しかしながら、美的被膜は、美的以外の性質、たとえば、向上した日射制御性質、たとえば、紫外(UV)線吸収または反射および/または赤外(IR)吸収または反射、をも付与することができる。用語「可視域」または「可視光」は380nm〜780nmの範囲の波長を有する電磁放射(electromagnetic radiation)を称する。用語「赤外域」または「赤外線」は780nmより大きく10,000nm以下の範囲の波長を有する電磁放射を称する。用語「紫外域」または「紫外線」は300nmから380nm未満までの範囲の波長を有する電磁放射を称する。
【0018】
用語「皮膜(film)」は所期のまたは選ばれた組成を有する被膜の領域を称する。「層(layer)」は一つまたはそれ以上の「皮膜」を含む。「被膜(coating)」または「被膜スタック(coating stack)」は一つまたはそれ以上の「層」から構成される。ここで使用される分子量は、MnまたはMwであれ、標準としてポリスチレンを使用するゲルパーミエーション・クロマトグラフィーから測定可能なものである。また、ここで使用されるとき用語「ポリマー」はオリゴマー、ホモポリマー、コポリマーおよびターポリマーを称する。用語「エレクトロコート」は電着によって形成された被膜または被膜層を称する。
【0019】
本発明の特徴を組み込んである例示の被覆物品が図1に示されている。物品10は少なくとも一つの主表面14を有することができる基体12を包含する。基体12の少なくとも一部分の上には、たとえば、主表面14の少なくとも一部分の上には、少なくとも一つの導電性被膜16が形成されることができる。導電性被膜16の少なくとも一部分の上には、下記に説明する通り、ポリマー層たとえばポリマー性被膜が電着されることができる。かかる電着被膜は以後、エレクトロコート18と称する。代わりに、ポリマー層はポリビニルブチラール層またはアクリルシートもしくはポリマーシートたとえばマイラー(Mylar)(登録商標)シートであることができる。
【0020】
物品10はモノリシック物品(monolithic article)であることができる。「モノリシック」によって意味するところは単一構造の基体または一次プライ(primary ply)を有することである。「一次プライ」によって意味するところは一次支持体または一次構造部材である。または、ラミネート物品(laminated article)を形成するように、図1に破線によって示されているように、もう一つの(第二)基体20が付与されることができ、導電層16とエレクトロコート18は2つの基体12と20の間に位置する。代わりに、基体12と20の間に位置した導電性被膜16またはエレクトロコート18の片方と、外表面上の(すなわち、基体12と20の間にない)導電性被膜16またはエレクトロコート18のもう片方とによって物品がラミネートされることもできる。
【0021】
本発明の広い実施においては、基体12、20はいかなる所期寸法、たとえば、長さ、幅、形状または厚さ、のものであることもでき、そして可視光に対して不透明または半透明または透明であるようないずれの所期特性を有するいずれの所期材料のものであることもできる。「透明」によって意味するところは基体を通る可視光の透過率が0%より大きく100%以下であることである。「半透明」によって意味するところは、電磁エネルギー(たとえば、可視光)が基体を通過するのを許すがこのエネルギーを拡散して観察者とは反対側の基体面上の対象物がはっきり見えないことである。「不透明」によって意味するところは、0%の可視光透過率を有することである。
【0022】
適する基体の例は限定されるものではないが次のものが挙げられる:プラスチック基体(たとえば、アクリルポリマー、たとえば、ポリアクリレート;ポリアルキルメタクリレート、たとえば、ポリメチルメタクリレート、ポリエチルメタクリレート、ポリプロピルメタクリレートなど;ポリウレタン;ポリカーボネート;ポリアルキルテレフタレート、たとえば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなど;ポリシロキサン含有ポリマー;または、これらを製造するためのいずれかのモノマーのコポリマー、またはそれらのいずれかの混合物);金属基体、たとえば、限定されるものではないが、亜鉛めっき鋼、ステンレス鋼、およびアルミニウム;セラミック基体;タイル基体;ガラス基体;ガラス繊維基体;または上記のいずれかの混合物もしくは組合せ。
【0023】
たとえば、基体12、20の少なくとも一つは通常の非着色のソーダ石灰シリカガラスすなわち「透明ガラス(clear glass)」であることもできるし、又は着色した若しくはそうでなくても色付きのガラス、ホウケイ酸ガラス、鉛ガラス、焼もどし(tempered)、非焼もどし(untempered)、焼なまし(annealed)、または熱強化(heat−strengthened)ガラスであることができる。ガラスはいずれのタイプのもの、たとえば、通常のフロートガラス(float glass)または平板ガラス(flat glass)、であることができ、そしていずれの光学的性質たとえばいずれの値の可視光線透過率、紫外線透過率、赤外線透過率、および/または全太陽エネルギー透過率を有するいずれの組成のものであることもできる。代表的な自動車タイプのガラスは青、緑、青銅色、灰色のような色を有することができ、そしてこれらガラスの非排他的例は、PPGインダストリーズ社(ペンシルバニア州ピッツバーグ)から、ソレックス(Solex)(登録商標)ガラス、ソーラーグリーン(Solargreen)(登録商標)ガラス、ソレクストラ(Solextra)(登録商標)ガラス、およびビスタグレイ(VistaGray)TMガラスの名で商業的に入手可能なガラスを包含する。ガラスは、非焼もどし、熱処理または熱強化ガラスであることができる。ここで使用されるとき、用語「熱処理」はガラスを曲げる又は焼なましする又は焼もどしするのに十分な温度に加熱されたことを意味する。用語「熱強化」は焼なまし、焼もどし、または少なくとも部分焼もどしされたことを意味する。
【0024】
発明に限定を加えるものではないが、基体に適するガラスの例は米国特許第4,746,347号、第4,792,536号、第5,240,886号、第5,385,872号および第5,393,593号の各明細書の中に記載されている。当業者には、基体12と20が必ずしも同じ材料もしくは同じ寸法(たとえば、厚さ)のものである必要はない又は同じ物理的もしくは光学的性質を有する必要はないということが認識されるであろう。たとえば、基体12、20の一方がガラスでありそして他方がポリマー物質であることができる。
【0025】
基体12は非導電性の基体、すなわち、非導電体を含む基体たとえばガラスまたはプラスチック基体、であることができる。たとえば、「非導電性」基体または「非導電体」は10Ω・cmより大きい抵抗率を有することができる。幾つかのプラスチックは1018Ω・cmのオーダーの抵抗率を有することが知られている。基体自体が非導電性であることもできるし、基体はその上に形成された非導電性被膜を有することもできる。他方で、基体は「導電性」基体または「電導体」であることもできる。たとえば、導電性基体は10Ω・cm未満、たとえば、10Ω・cm未満、たとえば、10−2Ω・cm未満、の抵抗率を有することができる。本発明の一つの非限定的な実施においては、基体12はガラスであるか又はガラスを含み、ガラスは限定されるものではないがガラスシートたとえば平板ガラスや窓用ガラスのシートである。通常の自動車用の透明度のためには、ガラス基体は代表的には10mm以下の厚さ、たとえば、1mm〜10mmの範囲の厚さ、たとえば、10mm未満の厚さ、たとえば、1mm〜5mmの厚さ、たとえば、1.5mm〜2.5mm、たとえば、1.6mm〜2.3mm、であることができる。基体12は平らな基体であることができるし、又は造形されている、曲げられている、若しくは湾曲されていることができる。用語「平らな基体」によって意味するところは、主として単一の幾何学的平面に横たわる基体であり、たとえば、通常のフロートガラス法によって製造された平板ガラス片である。「造形されている」または「曲げられている」によって意味するところは、平らでない基体である。
【0026】
導電性被膜16は電気伝導性の機能性被膜であることができる。ここで使用されるとき、用語「機能性被膜」はそれが付着されるところの基体の一つまたはそれ以上の物理的または光学的性質たとえば光学的、熱的、化学的または機械的性質を改質する被膜を称しており、そして後続の加工中に基体から完全に除去されることを意図していない。機能性被膜は同一または異なる組成または官能価(functionality)の一つまたはそれ以上の機能性コーティング皮膜または層を有することができる。勿論、導電性被膜16は導電性表面を提供する以外の機能性被膜でなければならないわけではない。
【0027】
本発明の一つの非限定的な実施においては、導電性被膜16は機能性被膜であることができ、そして/または1ミリオンオーム/平方(Ω/□)未満、たとえば、1,000Ω/□未満、たとえば、500Ω/□未満、たとえば、100Ω/□未満、たとえば、30Ω/□未満、たとえば、15Ω/□未満、たとえば、1Ω/□〜15Ω/□の範囲、の面積抵抗(sheet resistance)を有することができる。別の例示態様においては、導電性被膜16は1Ω/□未満、たとえば、0.5Ω/□未満、たとえば、0.05Ω/□未満、たとえば、0.01Ω/□未満、たとえば、0.005Ω/□未満、たとえば、0Ω/□より大きく0.004Ω/□以下の範囲、たとえば、0.001±0.0005Ω/□、の面積抵抗を有することができる。当業者によって認識されるように、被膜の導電率は1/抵抗率に等しい。薄膜では、抵抗率は面積抵抗に厚さを乗じたものに等しい。
【0028】
被膜16は米国特許第5,653,903号および第5,028,759号の各明細書の中に開示されているような加熱可能な窓を作製するのに使用される電気伝導性被膜、またはアンテナとして使用される単一皮膜もしくは多皮膜であることができる。同様に、被膜16は日射制御被膜であることができる。ここで使用されるとき、用語「日射制御被膜」および/または「低放射率被膜(low emissivity coating)」は、被覆物品の日射性質、たとえば、限定されるものではないが遮蔽係数(shading coefficient)および/または被覆物品から反射される若しくは被覆物品を通過する太陽光線の量たとえば可視光、赤外(IR)または紫外(UV)線の量、に影響する一つまたはそれ以上の層または皮膜から構成された被膜を称する。日射制御被膜は太陽光スペクトルの選ばれた部分、たとえば、限定されるものではないがIR、UVおよび/または可視スペクトルを遮断、吸収または濾光することができる。本発明の実施に使用できる日射制御被膜の例は、たとえば、米国特許第4,898,789号、第5,821,001号、第4,716,086号、4,610,771号、4,902,580号、4,716,086号、4,806,220号、4,898,790号、4,834,857号、4,948,677号、第5,059,295号、および第5,028,759号、および米国特許出願シリアル番号09/058,440号および60/355,912号の各明細書の中に見出せる。代わりに、被膜16は被覆物品の放射率に影響することもある。
【0029】
本発明と共に使用するための適する被膜16たとえば機能性被膜の例は、フィラデルフィア州ピッツバーグのPPGインダストリーズ社からサンゲート(SUNGATE)(登録商標)およびソーラーバン(SOLARBAN)(登録商標)系統のコーティングのもとで商業的に入手可能である。かかる機能性被膜は、可視光に対して透明である、金属合金酸化物、または金属酸化物および/または窒化物、または金属合金の酸化物および/または窒化物のような、誘電体または反射防止物質を含む一つまたはそれ以上の反射防止性コーティング皮膜を包含することができる。機能性皮膜はまた、反射物質たとえば貴金属たとえば金、銅または銀、またはそれらの組合せまたは合金、を含む一つまたはそれ以上の赤外反射性皮膜を包含することができ、そして更には、金属反射層(単数または複数)の上および/または下に位置する一つまたはそれ以上の下塗皮膜またはバリヤ皮膜、たとえば、チタン、ニッケル、クロム、ニッケル−クロム合金、ニオブ、ジルコニウムまたはその他の既知の下塗、を含むことができる。
【0030】
一つの非限定的な実施においては、導電性被膜16は図2に示されているように一つまたはそれ以上の被膜単位26を有する機能性被膜であることができる。被膜単位(単数または複数)26は第一誘電層28、反射性金属層30、任意的な下塗層32、任意的な第二誘電層34、および任意的な保護被膜36を含むことができる。第一および/または第二誘電層28、34および反射性金属層30は上に記載した包括的な材料のいずれのものであることもでき、そしていずれの所期厚さのものであることもできる。被膜は一つの被膜単位26を包含することができる、又は図2に破線によって示されているように、基体12の上に複数の被膜単位を形成するために被膜単位26の上に形成された一つまたはそれ以上の別の被膜単位38(それは被膜単位26と同じようなものであることもできる)を包含することができる。
【0031】
従来のエレクトロコーティング法と違って、導電性たとえば機能性の被膜16は無機質被膜であることができる。「無機質被膜」によって意味するところは非ポリマー性被膜である。無機質被膜は一つまたはそれ以上の金属層30および一つまたはそれ以上の誘電層を包含することができる。一つの非限定的な態様においては、金属層30は、樹脂状被膜の中に分散された金属粒子ではなく連続層すなわち金属材料の固体皮膜であることができる。さらには、無機質導電性被膜16は通常の樹脂状被膜よりもはるかに薄いことができる。一つの非限定的な態様においては、導電性被膜は25,000Å未満、たとえば、20,000Å未満、たとえば、15,000Å未満、たとえば、10,000Å未満、たとえば、8,000Å未満、たとえば、5,000Å未満、たとえば、2,000Å未満、たとえば、10Åより大きく2,000Å以下の範囲内、の厚さ有することができる。
【0032】
被膜16は、いずれか通常の方法、たとえば、通常の物理蒸着(PVD)または化学蒸着(CVD)法によって、基体の上に付着されることができる。適する付着法は、限定されるものではないが、吹付け熱分解(spray pyrolysis)、ゾル−ゲル、電子ビーム蒸発、または真空スパッタリングたとえばマグネトロンスパッタ蒸着(MSVD)、を包含する。一態様においては、被膜16はMSVDによって付着されることができる。MSVDコーティング装置および方法の例は当業者にはよく理解されているであろうし、そしてたとえば、米国特許第4,379,040号、第4,861,669号、第4,898,789号、第4,898,790号、第4,900,633号、第4,920,006号、第4,938,857号、第5,328,768号、および第5,492,750号の各明細書の中に記載されている。以下の議論の中では、機能性被膜はMSVDによって付着されたと想定している。
【0033】
本発明の実施に適する例示の機能性の導電性被膜16は図3に示されている。例示の機能性の導電性被膜16は無機質被膜であることができ、そして基体12の少なくとも一部分の上に付着されたベース層すなわち第一誘電層56を包含することができる。第一誘電層56は、限定されるものではないが、金属酸化物、金属窒化物、金属酸化窒化物(metal oxynitrides)、金属合金の酸化物もしくは窒化物、ドープド(doped)酸化物もしくは窒化物、またはそれらの混合物、のような反射防止材料および/または誘電体の一つまたはそれ以上の皮膜を含むことができる。ここで使用されるとき、用語「金属」には、ケイ素や、他の金属と合金化されたケイ素も包含される。第一誘電層56は可視光に対して透明であることができる。第一誘電層56のための適する金属酸化物の例は、限定されるものではないが、チタン、ハフニウム、ジルコニウム、ニオブ、亜鉛、ビスマス、鉛、インジウム、錫、およびそれらの混合物、の酸化物を包含する。これらの金属酸化物は少量の他の物質、たとえば、酸化ビスマスやインジウム−錫酸化物などの中のマグネシウム、を有することができる。加えて、金属合金または金属混合物の酸化物または窒化物、たとえば、亜鉛と錫を含有する酸化物(たとえば、スズ酸亜鉛)、インジウム−スズ合金の酸化物、窒化ケイ素、窒化アルミニウムケイ素、酸化窒化物、または窒化アルミニウム、が使用できる。さらに、ドープド金属酸化物または窒化物、たとえば、アンチモンもしくはインジウムドープド酸化錫またはニッケルもしくはホウ素ドープド酸化珪素、が使用できる。第一誘電層56は実質的に単相皮膜たとえば金属合金酸化物皮膜たとえばスズ酸亜鉛であることができる、又は酸化亜鉛と酸化スズから構成された相の混合物であることができる、又は複数の金属酸化物皮膜から構成されることができる、たとえば、米国特許第5,821,001号、第4,898,789号および第4,898,790号の各明細書の中に開示されているもののような。
【0034】
図解されている例示の態様においては、第一誘電層56は、基体12の主表面の少なくとも一部分の上に付着された第一金属合金酸化物皮膜58と、第一金属合金酸化物皮膜58の上に付着された第二金属酸化物皮膜60を有する多皮膜構造を構成する。一つの非限定的な態様においては、第一誘電層56は、500Å以下の、たとえば、300Å以下の、たとえば、280Å以下の、全体厚さを有することができる。たとえば、金属合金酸化物含有皮膜58は、100Å〜500Å、たとえば、150Å〜400Å、たとえば、200Å〜250Å、の範囲内の厚さを有することができる。金属酸化物皮膜60は、50Å〜200Åたとえば75Å〜150Åの範囲内の、たとえば100Åの、厚さを有することができる。一つの非限定的な態様においては、金属混合物または金属合金の酸化物を含有する皮膜58は大部分が亜鉛/スズ合金酸化物であることができる。亜鉛/スズ合金酸化物は、亜鉛とスズを亜鉛10重量%〜90重量%とスズ90重量%〜10重量%の割合で含むことができる亜鉛とスズの陰極からマグネトロンスッパタ真空蒸着から得たものであることができる。皮膜の中に存在できる一つの非限定的な適する金属合金酸化物はスズ酸亜鉛である。「スズ酸亜鉛」によって意味するところは、ZnSn1−X2−X(式1)(式中、xは0〜1の範囲で変動する)の組成物である。たとえば、xの数値は0より大きいことができ、そして0より大きく数値1までの間のいずれの分数または小数であることもできる。たとえば、x=2/3である場合には、式IはZn2/3Sn1/34/3であり、それはより普通にはZnSnOと記載される。スズ酸亜鉛含有皮膜は式1の一つまたはそれ以上の形態を皮膜の中に支配的な量で有する。金属酸化物皮膜60は酸化亜鉛のような亜鉛含有皮膜であることができる。酸化亜鉛皮膜は関与陰極のスパッタリング特性を改善するために他の物質を包含することができる、たとえば、酸化亜鉛は0〜20重量%のスズ、たとえば、0〜15重量%のスズ、たとえば、0〜10重量%のスズ、を含有することができる。
【0035】
第一誘電層56の上には、第一の熱反射性および/または放射反射性の皮膜または層62が付着されることができる。第一反射層62は、限定されるものではないが、金、銅、銀、またはこれら材料の少なくとも一つを含有する混合物、合金もしくは組合せのような、反射性金属を包含することができる。第一反射層62は、25Å〜300Å、たとえば、50Å〜300Å、たとえば、50Å〜150Å、たとえば、70Å〜110Å、たとえば、75Å〜100Å、たとえば、80Å〜90Å、の範囲内の厚さを有することができる。一つの非限定的な態様においては、第一反射層62は銀を含む。
【0036】
第一反射層62の上には第一下塗皮膜64が付着されることができる。第一下塗皮膜64はチタンのような酸素捕捉材料であることができ、それはスパッタリング過程中に第一反射層の崩壊または酸化を防止するために付着過程中に犠牲に供されることができる。酸素捕捉材料は第一反射層62の材料より先に酸化するように選択できる。一つの非限定的な態様においては、第一下塗皮膜64は5Å〜50Å、たとえば、10Å〜40Å、たとえば、15Å〜45Å、たとえば、25Å〜45Åまたは15Å〜25Å、の範囲内の厚さを有することができる。
【0037】
第一下塗皮膜64の上には任意的な第二誘電層66が付着されることができる。第二誘電層66は一つまたはそれ以上の金属酸化物および/または金属合金酸化物を含有する皮膜、たとえば、第一誘電層56に関連して上に記載したもの、を含むことができる。図解された態様においては、第二誘電層66は第一下塗皮膜64の上に付着された第一金属酸化物層68たとえば酸化亜鉛を包含する。第一酸化亜鉛層68の上には第二金属合金酸化物層70たとえばスズ酸亜鉛層が付着されることができる。スズ酸亜鉛層70の上には第三金属酸化物層72たとえばもう一つの酸化亜鉛層が付着されて多皮膜層66を形成することができる。第二誘電層66の各金属酸化物層68、72は約50Å〜200Åたとえば75Å〜150Åの範囲内の、たとえば100Åの、厚さを有することができる。金属合金酸化物層70は、100Å〜500Å、たとえば、200Å〜500Å、たとえば、300Å〜500Åの範囲内の、たとえば400Åの、厚さを有することができる。
【0038】
第二誘電層66の上には任意的な第二反射層74が付着されることができる。第二反射層74は第一反射層に関連して上に記載した反射材料のいずれか一つまたはそれ以上を包含することができる。第二反射層74は25Å〜150Å、たとえば、50Å〜100Å、たとえば、80Å〜90Å、の範囲内の厚さを有することができる。図解された態様においては、第二反射層74は銀を包含する。別の態様においては、この第二反射層74は第一および第三赤外反射層の各々よりも厚いことができる。
【0039】
第二反射層74の上には任意的な第二下塗皮膜76が付着されることができる。第二下塗皮膜76は第一下塗皮膜64に関連して上に記載した材料のいずれであることもできる。第二下塗皮膜76は約5Å〜50Å、たとえば、10Å〜25Å、たとえば、12Å〜20Å、の範囲内の厚さを有することができる。図解された態様においては、第二下塗皮膜76はチタンを包含する。
【0040】
第二下塗皮膜76の上には任意的な第三誘電層78が付着されることができる。第三誘電層78もまた、第一および第二誘電層に関連して上に論じたような一つまたはそれ以上の金属酸化物および/または金属合金酸化物を含有する層を包含することができる。図解された例示の態様においては、第三誘電層78は第二誘電層66に似た多皮膜層である。たとえば、第三誘電層78は第一金属酸化物層80たとえば酸化亜鉛層、この酸化亜鉛層80の上に付着された第二金属合金酸化物含有層82たとえばスズ酸亜鉛層、およびこのスズ酸亜鉛含有層82の上に付着された第三金属酸化物層84たとえばもう一つの酸化亜鉛層を包含することができる。金属酸化物層80、84は50Å〜200Åたとえば75Å〜150Åの範囲内の、たとえば100Åの、厚さを有することができる。金属合金酸化物層82は、100Å〜500Å、たとえば、200Å〜500Å、たとえば、300Å〜500Åの範囲内の、たとえば400Åの、厚さを有することができる。
【0041】
導電性の機能性被膜16はさらに、第三誘電層78の上に付着された任意的な第三反射層86を包含することができる。第三反射層86は第一および第二反射層62、74に関連して上に論じた材料のいずれであることもできる。第三反射層86は50Å〜100Å、たとえば、70Å〜90Å、たとえば、75Å〜85Å、の範囲内の厚さを有することができる。図解された例示の態様においては、第三反射層86は銀を包含する。一つの非限定的な態様においては、第一、第二および/または第三反射層が銀を有する又は含有する場合には、被膜16の銀の総量は29〜44マイクログラム/平方センチメートル(μg/cm)の量の範囲、たとえば、36.5μg/cm、であることができる。
【0042】
第三反射層86の上には任意的な第三下塗皮膜88が付着されることができる。一つの非限定的な態様においては、第三下塗皮膜は上に記載した下塗材料のいずれであることもできる。第三下塗皮膜88は、5Å〜50Å、たとえば、10Å〜25Å、たとえば、12Å〜20Å、の範囲内の厚さを有することができる。図解された態様においては、第三下塗皮膜88はチタンである。
【0043】
第三下塗皮膜88の上には任意的な第四誘電層90が付着されることができる。第四誘電層90は第一、第二および第三誘電層に関連して上に論じたような一つまたはそれ以上の金属酸化物および/または金属合金酸化物を含有する層を包含することができる。一態様においては、第四誘電層90は第三下塗皮膜88の上に付着された第一金属酸化物層92たとえば酸化亜鉛層と、この酸化亜鉛層92の上に付着された第二金属合金酸化物層94たとえばスズ酸亜鉛層を有する多皮膜層である。金属酸化物層92は25Å〜200Åたとえば50Å〜150Åの範囲内の、たとえば100Åの、厚さを有することができる。金属合金酸化物層94は、25Å〜500Å、たとえば、50Å〜250Å、たとえば、100Å〜150Åの範囲内の厚さを有することができる。
【0044】
導電性被膜16はまた、機械的および化学的攻撃に抗する防護を提供するのを助けるために保護被膜36を、たとえば、任意的な第四誘電層90(存在するならば)の上に付着されて、包含することができる。保護被膜36はいずれの所期厚さのものであることもできる。一つの非限定的な態様においては、保護被膜36は、100Å〜50,000Å、たとえば、500Å〜50,000Å、たとえば、500Å〜10,000Å、たとえば、100Å〜3,000Å、たとえば、10Å〜2,000Å、たとえば、2,000Å〜3,000Å、の範囲内の厚さを有することができる。他の非限定的な態様においては、保護被膜36は、100Å〜10μ、たとえば、101Å〜1,000Å、または1,000Å〜1μ、または1μ〜10μ、または200Å〜1,000Å、または5,000Å〜8,000Å、の範囲内の厚さを有することができる。さらに、保護被膜36は一様でない厚さのものであることができる。「一様でない厚さ」によって意味するところは、保護被膜36の厚さが所定の単位区域にわたって変動可能である、たとえば、保護被膜36が高い箇所または区域と低い箇所または区域を有することができる、ということである。
【0045】
保護被膜36はいずれの所期材料または材料の混合物であることもできる。一つの非限定的な態様においては、保護被膜36は、限定されるものではないが、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、またはそれらの混合物のような、一つまたはそれ以上の金属酸化物および/または窒化物の材料を包含することができる。たとえば、保護被膜36は0重量%〜100重量%の範囲のアルミナおよび/または0重量%〜100重量%の範囲のシリカを含む単一被膜層であることができる、たとえば、5重量%〜95重量%のアルミナと95重量%〜5重量%のシリカ、たとえば、10重量%〜90重量%のアルミナと90重量%〜10重量%のシリカ、たとえば、15重量%〜90重量%のアルミナと85重量%〜10重量%のシリカ、たとえば、50重量%〜75重量%のアルミナと50重量%〜25重量%のシリカ、たとえば、50重量%〜70重量%のアルミナと50重量%〜30重量%のシリカ、たとえば、35重量%〜95重量%のアルミナと65重量%〜5重量%のシリカ、たとえば、70重量%〜90重量%のアルミナと10重量%〜30重量%のシリカ、たとえば、75重量%〜85重量%のアルミナと15重量%〜25重量%のシリカ、たとえば、88重量%のアルミナと12重量%のシリカ、たとえば、65重量%〜75重量%のアルミナと25重量%〜35重量%のシリカ、たとえば、70重量%のアルミナと30重量%のシリカ、たとえば、60重量%から75重量%未満までのアルミナと25重量%より大きく40重量%以下のシリカ。その他の材料、たとえば、アルミニウム、クロム、ハフニウム、イットリウム、ニッケル、ホウ素、リン、チタン、ジルコニウムおよび/またはそれらの酸化物も、たとえば、被膜の屈折率を調整するために、存在することができる。一つの非限定的な態様においては、保護被膜36の屈折率は1〜3、たとえば、1〜2、たとえば、1.4〜2、たとえば、1.4〜1.8、の範囲内にあることができる。保護被膜36は、酸化物材料の代わりに又はそれに加えて、窒化物および/または酸化窒化物材料、たとえば、限定されるものではないが、アルミニウムおよび/またはケイ素の窒化物または酸化窒化物、を含むことができる。
【0046】
代わりに、保護被膜36は多層被膜であることができ、金属酸化物材料の別々に形成された層によって形成され、たとえば、限定されるものではないが、一つの金属酸化物含有層(たとえば、シリカおよび/またはアルミナを含有する第一層)が別の金属酸化物含有層(たとえば、シリカおよび/またはアルミナを含有する第二層)の上に形成されることによって形成された2層であることができる。多層保護被膜36の個々の層はいずれの所期厚さも可能である。
【0047】
一つの非限定的な態様においては、保護被膜36は第一層と、該第一層の上に形成された第二層を含むことができる。一つの非限定的な態様においては、第一層はアルミナ、またはアルミナとシリカを含む混合物もしくは合金、を含むことができる。たとえば、第一層は、5重量%を越すアルミナ、たとえば、10重量%を越すアルミナ、たとえば、15重量%を越すアルミナ、たとえば、30重量%を越すアルミナ、たとえば、40重量%を越すアルミナ、たとえば、50重量%〜70重量%のアルミナを有する、たとえば、アルミナ70重量%〜100重量%とシリカ30重量%〜0重量%の範囲内の、たとえば、アルミナ70重量%〜95重量%とシリカ30重量%〜5重量%の範囲内の、シリカ/アルミナ混合物を含むことができる。一つの非限定的な態様においては、第一層は、0Åより大きく1μ以下の範囲内の厚さ、たとえば、50Å〜100Å、たとえば、100Å〜250Å、たとえば、101Å〜250Å、たとえば、100Å〜150Å、たとえば、100Åより大きく125Å以下、の範囲内の厚さを有することができる。第二層はシリカ、またはシリカとアルミナを含む混合物もしくは合金、を含むことができる。たとえば、第二層は、40重量%を越すシリカ、たとえば、50重量%を越すシリカ、たとえば、60重量%を越すシリカ、たとえば、70重量%を越すシリカ、たとえば、80重量%を越すシリカ、たとえば、シリカ80重量%〜90重量%とアルミナ10重量%〜20重量%の範囲内の、たとえば、シリカ85重量%とアルミナ15重量%、を有するシリカ/アルミナ混合物を含むことができる。一つの非限定的な態様においては、第二層は、0Åより大きく2μ以下、たとえば、50Å〜5,000Å、たとえば、50Å〜2,000Å、たとえば、100Å〜1,000Å、たとえば、300Å〜500Å、たとえば、350Å〜400Å、の範囲内の厚さを有することができる。
【0048】
導電性被膜16の上に付着されたポリマー層はアクリルシートまたはポリマーシートたとえばマイラー(登録商標)シートであることができる。代わりに、ポリマー層は、いずれか通常のやり方で例えば限定されるものではないが下記の方法で導電性被膜16の上に電着されたエレクトロコート18であることができる。エレクトロコート18はいずれのポリマー物質または樹脂状材料も包含することができる。たとえば、「ポリマー物質」は一つのポリマー性成分を含むことができる、又は異なるポリマー性成分の混合物を含むことができる、たとえば、限定されるものではないが、一つまたはそれ以上のプラスチック材料、たとえば、限定されるものではないが、一つまたはそれ以上の熱硬化性または熱可塑性材料、を含むことができる。有効な熱硬化性成分はポリエステル、エポキシド、フェノール樹脂、およびポリウレタンたとえば反応射出成形用ウレタン(reaction injected molding urethane)(RIM)熱硬化性材料、およびそれらの混合物を包含する。有効な熱可塑性材料は熱可塑性ポリオレフィンたとえばポリエチレンおよびポリプロピレン、ポリアミドたとえばナイロン、熱可塑性ポリウレタン、熱可塑性ポリエステル、アクリルポリマー、ビニルポリマー、ポリカーボネート、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン(ABS)コポリマー、EPDMゴム、それらの共重合体および混合物を包含する。
【0049】
適するアクリルポリマーは、アクリル酸、メタクリル酸およびそれらのアルキルエステル、たとえば、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、エチルアクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート、ブチルアクリレートおよび2−エチルヘキシルアクリレート、の一つまたはそれ以上のコポリマーを包含する。その他の適するアクリルおよびその製法は米国特許第5,196,485号明細書の中に開示されている。
【0050】
有効なポリエステルおよびアルキドは既知のやり方で、エチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ブチレングリコール、1,6−ヘキシレングリコール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパンおよびペンタエリトリトールのような多価アルコールを、アジピン酸、マレイン酸、フマル酸、フタル酸、トリメリット酸または乾性油脂肪酸のようなポリカルボン酸と縮合させることによって製造できる。適するポリエステル材料の例は米国特許第5,739,213号および第5,811,198号の各明細書の中に開示されている。
【0051】
有効なポリウレタンは、ポリエステルポリオールやアクリルポリオールのようなポリマー性ポリオールと、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートのような芳香族ジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネートのような脂肪族ジイソシアネート、およびイソホロンジイソシアネートや4,4’−メチレン−ビス(シクロヘキシルイソシアネート)のような脂環式ジイソシアネートを含めてのポリイソシアネートとの反応生成物を包含する。ここで使用されるとき用語「ポリウレタン」はポリウレタンばかりでなくポリユリアおよびポリ(ウレタン−ユリア)を包含することを意図している。
【0052】
適するエポキシ官能性材料は米国特許第5,820,987号明細書の中に開示されている。
【0053】
有効なビニル樹脂はポリビニルアセチル、ポリビニルホルマール、およびポリビニルブチラールを包含する。
【0054】
エレクトロコート18はいずれの所期厚さにも付着されることができる。一つの非限定的な態様においては、エレクトロコート18は、0.1ミル〜2ミル、たとえば、0.2ミル〜1.5ミル、たとえば、10ミクロン〜25ミクロン、の範囲の、たとえば20ミクロンの、厚さを有することができる。エレクトロコート18はいずれの所期屈折率も有することができる。一つの非限定的な態様においては、エレクトロコート18は1.4〜1.7たとえば1.5〜1.6の範囲の屈折率を有することができる。
【0055】
本発明の例示態様の包括的な構造的特徴を記載してきたが、次に、本発明に従って被覆物品を製造する例示方法を記載する。
【0056】
基体12が提供される。本発明の一つの実施においては、基体12は非導電性基体たとえばガラス基体であることができるし、又はその上に形成された一つまたはそれ以上の非導電性被膜をもった導電性基体であることができる。基体12の少なくとも一部分の上には、少なくとも一つの電気伝導性被膜16たとえば限定されるものではないが上記のような電気伝導性の機能性被膜が、いずれか通常のやり方で、たとえば、限定されるものではないが幾つか挙げるならばPVD(たとえば、MSVD)、CVD、吹付け、吹付け熱分解またはゾルゲル手法で、付着される。導電性被膜16は、基体12の全体の上に又は一部分の上に、たとえば、基体12の表面の上に、層として形成されることができるし、又は基体12の上にパターン状に形成されることができる。
【0057】
導電性被膜16が適用されたら、被覆基体12はその後の電着過程において電極として作用するように電気的に帯電される。しかしながら、従来の電着法と違って、本発明においては、基体12はそれ自体が非導電性であっても又は非導電性被膜で被覆されていても、有効に帯電されることができる。従って、本発明においては、基体12は基体12自体ではなく導電性被膜16が電気的に帯電される。たとえば、限定されるわけではないが導電性金属細片や導電性ローラー接点のような導電性要素を導電性被膜16と接触して配置することができ、そして導電性要素が電源に接続される。金属細片に電流を印加すると、導電性被膜16の中の一つまたはそれ以上の反射性金属層は電着過程における電極として作用するように電気的に帯電されるようになることができる。
【0058】
基体12は電着可能な組成物の水性分散物と接触した状態に置くことができ、導電性被膜16は電極たとえば陽極または陰極として作用する。帯電した導電性被膜と第二電極の間に電流が流れると、電気的に帯電した導電性被膜16の上には、電着可能な組成物の密着性皮膜が実質的に連続して付着してエレクトロコート18を形成する。一つの非限定的な態様においては、電着は、1ボルト〜700ボルトたとえば50〜500ボルトの範囲の接触電圧と、1.0アンペア〜15アンペア/平方フィート(10.8〜161.5アンペア/平方メートル)の電流密度において、行うことができる。
【0059】
当業者に認識されるように、導電性被膜16の上に適用されるエレクトロコーティング組成物の量は幾つかの因子、たとえば、エレクトロコーティング組成物の均一電着性(throwpower)、エレクトロコーティング組成物の温度、電極に印加される電圧、およびエレクトロコーティング組成物の中での基体の滞留時間(dwell time)、に依存する。ここで使用されるとき、用語「滞留時間」は被覆基体がタンクの中に置かれている時間の長さを称する。
【0060】
本発明の実施に有効な例示の電着浴組成物は水性媒体の中に分散されている樹脂相を含む。樹脂相はアニオン性の電着可能なコーティング組成物またはカチオン性の電着可能なコーティング組成物を含むことができる皮膜形成性有機成分を包含する。電着可能なコーティング組成物は活性水素基を含有するイオン性樹脂と、該イオン性樹脂の活性水素と反応性の官能基を有する硬化剤を包含することができる。ここで使用されるとき、用語「反応性」は適切な反応条件下で別の官能基と共有結合を形成する官能基を称する。
【0061】
アニオン性の電着可能なコーティング組成物の非限定的な例は、ゲル化されてない水分散性の電着可能なアニオン性皮膜形成性樹脂を含むものが挙げられる。アニオン性の電着可能なコーティング組成物の中に使用するのに適する皮膜形成性樹脂の非限定的な例は、塩基可溶化された(base−solubilized)、カルボン酸含有ポリマー、たとえば、乾性油脂肪酸エステルとジカルボン酸または酸無水物との反応生成物または付加物;および、脂肪酸エステルと不飽和酸または酸無水物といずれか追加の不飽和の改質用物質(それはポリオールとは更に反応する)との反応生成物である。不飽和カルボン酸のヒドロキシアルキルエステルと不飽和カルボン酸とその他のエチレン性不飽和単量体少なくとも一つとの少なくとも部分中和共重合体も適する。また、別の適する電着可能なアニオン性樹脂はアルキド−アミノプラストビヒクル、すなわち、アルキド樹脂とアミン−アルデヒド樹脂を含有するビヒクル、を含む。更に別のアニオン性の電着可能な樹脂組成物は樹脂状ポリオールの混合エステルを含む。これらの組成物は米国特許第3,749,657号明細書の第9欄第1〜75行および第10欄第1〜13行に詳細に記載されている。当業者に周知である、燐酸塩にされた(phosphatized)ポリエポキシドや、燐酸塩にされたアクリルポリマーのような、その他の酸官能性ポリマーも使用できる。
【0062】
「ゲル化されてない(ungelled)」によって意味するところは、実質的に架橋を含有しておらずそして適切な溶剤の中に溶解されたときに固有粘度(intrinsic viscosity)を有することである。ポリマーの固有粘度はその分子量の指標である。他方、ゲル化ポリマーは本質的に無限に高い分子量のものであるので、測定するには高すぎる固有粘度を有するであろう。
【0063】
カチオン性樹脂に関しては、広く多様なカチオン性ポリマーが知られており、そしてポリマーが「水分散性」である限りは即ち水の中に可溶化または分散または乳化されるのに適合している限りは本発明の組成物の中に使用できる。水分散性の樹脂は本性がカチオン性である、すなわち、ポリマーは正電荷を授けるカチオン性官能基を含有している。カチオン性樹脂は活性水素基も含有していてもよい。
【0064】
適するカチオン性樹脂の非限定的な例は、オニウム塩の基を含有する樹脂、たとえば、三元スルホニウム塩(ternary sulfonium salt)の基を含有する樹脂および第四ホスホニウム塩の基を含有する樹脂、たとえば、それぞれ米国特許第3,793,278号および第3,984,922号の各明細書の中に記載されているもの、を包含する。その他の適するオニウム塩の基を含有する樹脂は第四アンモニウム塩の基を含有する樹脂、たとえば、有機ポリエポキシドを第三アミン塩と反応させることによって形成されたもの、を包含する。かかる樹脂は米国特許第3,962,165号、第3,975,346号、および第4,001,101号の各明細書の中に記載されている。アミン塩の基を含有する樹脂、たとえば、ポリエポキシドと第一または第二アミンの酸可溶化反応生成物、たとえば、米国特許第3,663,389号、第3,984,299号、第3,947,338号および第3,947,339号の各明細書の中に記載されたもの、も適する。
【0065】
通常、上記の塩の基を含有する樹脂はブロックトイソシアネート硬化剤と組み合わせて使用される。イソシアネートは上記米国特許第3,984,299号明細書の中に記載されているように完全ブロックされることができる、又は米国特許第3,947,338号明細書の中に記載されているように部分ブロックされそして樹脂骨格と反応させられることもできる。
【0066】
また、米国特許第4,134,866号明細書およびDE−OS第2,707,405号公報の中に記載されているような一成分型組成物(one−component compositions)もカチオン性樹脂として使用できる。エポキシ−アミン反応生成物のほかに、樹脂は米国特許第3,455,806号および第3,928,157号の各明細書の中に記載されているもののようなカチオン性アクリル樹脂から選ぶこともできる。また、欧州出願第12463号明細書の中に記載されているようなエステル交換を経て硬化するカチオン性樹脂も使用できる。さらに、米国特許第4,134,932号明細書の中に記載されているようにマンニッヒ塩基(Mannich bases)から製造されたカチオン性組成物も使用できる。第一および/または第二アミン基を含有する正帯電樹脂も本発明の電着可能なコーティング組成物に有効である。かかる樹脂は米国特許第3,663,389号、第3,947,339号および第4,115,900号の各明細書の中に記載されている。米国特許第3,947,339号明細書には、ジエチレントリアミンまたはトリエチレンテトラミンのようなポリアミンのポリケトイミン誘導体が記載されており、反応混合物から過剰ポリアミンが真空ストリッピングされている。かかる生成物は米国特許第3,663,389号および第4,116,900号の各明細書の中に記載されている。
【0067】
本発明の一つの非限定的な態様においては、本発明の方法に有効な電着可能なコーティング組成物の中に含有するのに適するカチオン性樹脂はオニウム塩の基を含有するアクリル樹脂である。
【0068】
直ぐ上に記載したカチオン性樹脂は電着可能なコーティング組成物の中に代表的には、組成物の全重量に基づいて1〜60重量%、たとえば、5〜25重量%、の量で存在する。
【0069】
先に論じたように、本発明の方法に有効である電着可能なコーティング組成物は一般に、イオン性樹脂の活性水素基と反応性である官能基を含有する硬化剤を更に含む。
【0070】
アニオン電着用に好ましい硬化剤であるアミノプラスト樹脂はアミンまたはアミドとアルデヒドの縮合生成物である。適するアミンまたはアミドの非限定的な例はメラミン、ベンゾグアナミン、ユリアおよび類似化合物である。一般に、使用されるアルデヒドはホルムアルデヒドであるが、アセトアルデヒドやフルフラールのようなその他のアルデヒドからも生成物を製造できる。縮合生成物は使用した具体的アルデヒドに依存してメチロール基または類似アルキロール基を含有する。これらメチロール基はアルコールとの反応によってエーテル化されることができる。使用される様々なアルコールは1〜4個の炭素原子を含有する1価アルコール、たとえば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、およびn−ブタノール、を包含し、メタノールが好ましい。アミノプラスト樹脂はアメリカン・シアナミド社からシメル(CYMEL)(登録商標)の商品名で及びモンサント・ケミカル社からレジメン(RESIMENE)(登録商標)の商品名で商業的に入手可能である。
【0071】
アミノプラスト硬化剤は代表的には、電着浴中の樹脂固形分の全重量に基づいたパーセンテージで5〜60重量%たとえば20〜40重量%の範囲の量で、活性水素を含有するアニオン性の電着可能な樹脂と組み合わせて利用される。
【0072】
カチオン性の電着可能なコーティング組成物のために適する硬化剤はブロックト有機ポリイソシアネートである。ポリイソシアネートは米国特許第3,984,299号明細書第1欄第1〜68行、第2欄および第3欄第1〜15行に記載されているように完全ブロックされることができるか、又は米国特許第3,947,338号明細書第2欄第65〜68行、第3欄および第4欄第1〜30行に記載されているように部分ブロックされそしてポリマー骨格と反応させられることができる。「ブロックト(blocked)」によって意味するところは、得られたブロックトイソシアネート基が周囲温度では活性水素に対して安定であるが高温(通常、90℃〜200℃)では皮膜形成性ポリマーの中の活性水素と反応性であるようイソシアネート基が化合物と反応されてしまっていることである。
【0073】
適するポリイソシアネートは、芳香族ポリイソシアネート、および脂環式ポリイソシアネートを含めて脂肪族ポリイソシアネートを包含し、そしてそれぞれの例はジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート(MDI)、2,4−または2,6−トルエンジイソシアネート(TDI)、それらの混合物、p−フェニレンジイソシアネート、テトラメチレンおよびヘキサメチレンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、フェニルメタン−4,4’−ジイソシアネートとポリメチレンポリフェニルイソシアネートの混合物を包含する。高級ポリイソシアネートたとえばトリイソシアネートが使用できる。例はトリフェニルメタン−4,4’,4”−トリイソシアネートを包含するであろう。ネオペンチルグリコールやトリメチロールプロパンのようなポリオールとの及びポリカプロラクトンジオールやトリオール(1より大きいNCO/OH当量比)のようなポリマー性ポリオールとのイソシアネートプレポリマーも使用できる。
【0074】
ポリイソシアネート硬化剤は代表的には、組成物に存在する全樹脂固形分の重量に基づいて1重量%〜65重量%たとえば5重量%〜45重量%の量で、カチオン性樹脂と組み合せて利用される。
【0075】
水性組成物は水性分散物の形態であることができる。用語「分散物」は、樹脂が分散相の中にありそして水が連続相の中にある2相の透明または半透明または不透明な樹脂状システムを称する。樹脂相の平均樹脂粒子は一般に、1.0ミクロン未満、通常、0.5ミクロン未満、たとえば、0.15ミクロン未満、である。
【0076】
水性媒体中の樹脂相の濃度は水性分散物の全重量に基づいて少なくとも1重量%、たとえば、2〜60重量%、であることができる。本発明の組成物は樹脂濃厚物の形態にある場合には水性分散物の重量に基づいて20〜60重量%の樹脂固形分を有する。
【0077】
本発明の方法に有効な電着組成物は代表的には2成分型として供給される:1)透明樹脂供給材料、それは一般に、活性水素を含有するイオン性の電着可能な樹脂すなわち主要な皮膜形成性ポリマーと、硬化剤と、いずれか付加的な水分散性の非着色成分を含有している;および2)顔料ペースト、それは一般に、一つまたはそれ以上の顔料と、主要な皮膜形成性ポリマーと同一または異なることができる水分散性の粉砕樹脂(grind resin)と、場合によっては湿潤剤や分散助剤のような添加剤を含有している。電着成分(1)と(2)の両方が水性媒体の中に分散され、水性媒体は水と、通常、凝集溶剤(coalescing solvents)を含む。
【0078】
本発明の電着組成物は樹脂固形分を、通常、電着組成物の全重量に基づいて5〜25重量%の範囲で、有する。
【0079】
上に述べた通り、水性媒体は水のほかに凝集溶剤を含有することができる。有効な凝集溶剤は炭化水素、アルコール、エステル、エーテルおよびケトンを包含する。適する凝集溶剤はアルコール、ポリオール、およびケトンを包含する。具体的な凝集溶剤はイソプロパノール、ブタノール、2−エチルヘキサノール、イソホロン、2−メトキシペンタノン、エチレンおよびプロピレングリコール、およびエチレングリコールのモノエチル、モノブチルおよびモノヘキシルエーテルを包含する。使用される場合、凝集溶剤の量は一般に、水性媒体の全重量に基づいて0.01〜25重量%、たとえば、0.05〜5重量%、である。
【0080】
上に論じた通り、分散物の中には、顔料組成物と、望むならば様々な添加剤、たとえば界面活性剤、湿潤剤または触媒、も含有されることができる。顔料組成物は、顔料たとえば酸化鉄、クロム酸ストロンチウム、カーボンブラック、炭塵、二酸化チタン、タルク、硫酸バリウム、ばかりでなく、カドミウムイエロー、カドミウムレッド、クロムイエローなどのようなカラー顔料を含むコンベンショナルタイプのものであってもよい。
【0081】
分散物の顔料含有量は通常、顔料−対−樹脂の比率として表わされる。本発明の実施においては、顔料が使用される場合には、顔料−対−樹脂の比率は通常、0.02〜1.1の範囲内にある。上に挙げたその他の添加剤は通常、樹脂固形分の重量に基づいて0.01〜3重量%の量で分散物の中にある。
【0082】
エレクトロコート18は電着によって適用された後に、いずれか通常の仕方で、たとえば、90℃〜430℃の範囲の高温で60〜1800秒の範囲の時間でベーキングすることによって、硬化できる。乾燥機はコーティングのライン上での使用について周知である様々な硬化炉のいずれかであることもでき、電気およびガスどちらでも賦勢される。代わりに、周知である赤外硬化法を使用して、皮膜は代表的には、45〜600秒の範囲の時間でまたは250°F〜500°F(120℃〜257℃)の範囲のピーク金属温度を得るのに十分な時間で、硬化できる。一態様においては、電着被膜は、周囲温度での蒸発によるか又は高温での強制乾燥によるかどちらかによって皮膜から溶剤および/または水を実質的に全て駆逐することによって乾燥されることができる。硬化性コーティング組成物については、エレクトロコートは、架橋性成分の架橋密度すなわち架橋度を、完全架橋の5%〜100%、たとえば、完全架橋の35%〜85%たとえば50%〜85%の範囲にするように、硬化される又は少なくとも部分硬化されることができる。当業者は次のことを理解するであろう:架橋の存在および程度すなわち架橋密度は様々な方法たとえば窒素下で行われるポリマーラボラトリーズ(Polymer Laboratories)MKIIIDMTA分析器を使用しての動的機械的熱分析(dynamic mechanical thermal analysis)(DMTA)によって測定することができる。この方法は被膜またはポリマーの独立皮膜(free films)のガラス転移温度と架橋密度を決定する。硬化された材料のこれらの物理的性質は架橋網目構造(crosslinked network)の構造に関係している。
【0083】
一般に、本発明の方法に有効である電着可能なコーティング組成物は、導電性の機能性被膜の上に0.1〜1.8ミル(2.54〜45.72マイクロメートル)たとえば0.15〜1.6ミル(30.48〜40.64マイクロメートル)の範囲の乾燥膜厚を有する実質的に連続した被膜が形成されるような条件下で適用される。
【0084】
上に記載されそして図2と図4に示されているように、非導電性基体12の一部分の上に導電性被膜16を、後で付着されるエレクトロコート18が導電性被膜16の上に付着されて基体の上にパターン(たとえば、限定されるものではないが、文字、数字、形)を形成するように、形成することができる。たとえば、導電性被膜16を付着する前に基体12の一部を覆うためにマスクを使用することができる。代わりに、導電性被膜16を基体12の全体または一部分の上に適用してからエレクトロコーティングに先立って導電性被膜16の一部をたとえばレーザー削除(laser deletion)によって除去することができる。
【0085】
本発明の包括的な概念を記載したが、本発明は上記の例示態様に限定されないということが認識されるであろう。たとえば、図5は本発明の特徴を組み込んである別の物品100を示す。物品100は基体12たとえばガラス基体を包含し、基体12の少なくとも一部分の上にはいずれか通常のやり方で例えばPVDまたはCVDによって付着された第一の導電性の機能性被膜102を有する。第一の導電性被膜102の上に第一エレクトロコート104が付着される。第一エレクトロコート104の少なくとも一部分の上には、もう一つの例えば第二の導電性被膜106が付着されることができ、そして第二の導電性被膜106の少なくとも一部分の上にはもう一つのエレクトロコートたとえば第二エレクトロコート108が付着されることができる。被覆基体に任意的な第二基体を、たとえば、第二エレクトロコート108によって、結合させることができる。第一と第二の導電性被膜102と106は同一または異なる組成のものであることができる。第一と第二のエレクトロコート104と108は同一または異なる組成のものであることができる。たとえば、第一と第二のエレクトロコート104と108は、同じまたは異なる屈折率、または同じまたは異なる透過率または色を有することができる。さらに、第一と第二の導電性被膜102と106は同じ方法によって形成される必要はない。たとえば、限定として解されるものではないが、第一の導電性被膜102はPVD(たとえばMSVD)またはCVDのような一方法によって付着されることができ、そして第二の導電性被膜106は異なる方法たとえば限定されるものではないがゾル−ゲル、吹付け、または浸漬によって形成されることができる。
【0086】
本発明の特徴を組み込んである別の非限定的な物品120が図6に示されている。物品120は基体12たとえばガラス基体を包含し、基体12の少なくとも一部分の上に付着された第一の導電性被膜122を有する。第一導電性被膜122はパターン状に即ち基体表面の別々の部分の上に形成されることができる。その第一導電性被膜122の上に第一エレクトロコート124が付着される。第二導電性被膜126は第一エレクトロコート124の上に付着されることができ、かつ、第一導電性被膜122または第一エレクトロコート124によって覆われていない区域の中を充填することができる。第二エレクトロコート128は第二導電性被膜126の上に付着されることができる。第一と第二のエレクトロコート124と128(および/または第一と第二の導電性被膜122と126)は同一または異なる組成であることができる。たとえば、第一と第二のエレクトロコート124と128は、同じまたは異なる屈折率、または同じまたは異なる透過率または色を有することができる。
【0087】
更に別の非限定的な物品132が図7に示されている。物品132は少なくとも一つの基体12たとえばガラス基体を包含している。物品132は同一または異なるエレクトロコートを有する領域134、136および138のような複数のエレクトロコーテッド領域を有することができる。たとえば、導電性被膜(上に記載されているもののような)は基体の離隔領域または区域の上に付着されることができる。それら導電性被膜の領域は、別々の被覆領域(coating regions)の間の間隙または切れ目によって相互に電気的に隔離されることができる。それら導電性被覆は同一または異なる光学的または機械的性能を付与するように同じものまたは異なるものであることができる。代わりに、通常のマスキング法を使用して基体12の上に一つまたはそれ以上の導電性被覆を適用することができるし、又は基体12の少なくとも一部分の上に導電性被膜を適用してから導電性被膜の一部をたとえばレーザー削除によって除去して別々の被覆区域の間の間隙または切れ目を形成することによって被覆区域を相互に電気的に隔離することができる。
【0088】
電気的に隔離された導電性被覆区域が形成されたら、隔離された被覆区域を選択的にエレクトロコーティングして隔離被覆区域の上にエレクトロコートを適用してエレクトロコーテッド領域134、136および138を形成することができる。たとえば、導電性に被覆された基体を第一のエレクトロコート浴の中に置き、そして電気的に隔離された被覆領域の一つを、たとえば、その被覆区域を電気接触ローラーと接触させることによって、電気的に帯電させることができる。被覆領域は電気的に隔離されているので、電着可能なコーティング組成物は帯電した導電性被覆区域だけに付着して例えばエレクトロコーテッド領域134を形成する。同じようなやり方で、次いで、基体を別のエレクトロコート浴の中に置き、そして別の導電性被覆区域を選択的に帯電させて別のエレクトロコーテッド領域136および138を形成することができる。エレクトロコーテッド領域を形成するのに使用されたそれらエレクトロコート組成物は同一または異なる光学的および/または機械的性質たとえば色、電磁エネルギー透過率または反射率などを有することができる。
【0089】
本発明は広く様々な分野で実施できる。たとえば、物品10(図1参照)は通常の電子レンジのような電気器具の扉として利用できる。扉フレームの中に物品10(任意的な第二基体なし)を、エレクトロコート18が電子レンジの内側に面するように、置くことができる。代わりに、物品10は電子レンジの扉(扉フレームなし)を、物品10にヒンジや扉ハンドルや扉ロックのような金具類を直接取り付けて、形成することができる。
【0090】
別の非限定的な態様においては、ガラスやプラスチックのような非導電性シートを上記のような導電性被膜で被覆できる。被膜の区域は互いに電気的に隔離できる(たとえば、コーティング中にマスキングすることによって又は適用された被膜の一部を削除することによって)。次いで、電気的に隔離された区域の一つまたはそれ以上を、選ばれた導電性被覆区域の上にエレクトロコートを形成するように、いずれか通常のやり方でエレクトロコーティングすることができる。それから、エレクトロコーティングされなかった区域の導電性被膜をたとえば機械的もしくはレーザー削除によって又は溶剤によって除去できる。場合によっては、それから、エレクトロコートをたとえば適切な溶剤によって除去して下層の導電性被覆区域を基体上に残すこともできる。
【0091】
更に別の非限定的な態様においては、電気的に隔離された導電性被覆区域が上記のように基体の上に形成できる。隔離された導電性被覆区域の一つまたはそれ以上の上に、第一組成を有する第一エレクトロコートを適用することができ、そして一つまたはそれ以上の他の被覆区域に、第二組成を有する第二エレクトロコートを適用できる。第一または第二どちらかのエレクトロコートを除去(たとえば溶解)して下層の導電性被膜を裸出させる一方で他方のエレクトロコートを残しておくように、特定の溶剤に対して、第一エレクトロコートが第二エレクトロコートとは異なる溶解度を有することができる。
【0092】
本発明の例証は次の実施例であり、それらはそれらの細部に本発明を限定するものとして解されるべきでない。
【実施例1】
【0093】
この実施例は2種類の導電性被膜の上への商業的に入手可能なエレクトロコートの適用を例証する。
【0094】
以下の実施例の全てにおいて、被膜1はペンシルバニア州ピッツバーグのPPGインダストリーズ社から商業的に入手可能なサンゲート(SUNGATE)(登録商標)被膜であった。この被膜は30nm〜60nmの誘電層の間に挟まれた2層の金属銀(各10nm)を包含している。この商業的に入手可能な被膜の構造は一般的には、ガラス/誘電体(30nm)/銀(10nm)/誘電体(60nm)/銀(10nm)/誘電体(30nm)/チタニア(3nm)として記載できる。
【0095】
被膜2は誘電層によって分離された3層の金属銀を有する日射制御被膜であった。被膜2の構造は2003年2月11日に米国特許出願番号10/364,089号で出願され2003年9月25日に米国公開番号US2003−0180547A1として公開された明細書の中に記載されている。被膜2の上に、アルミナとシリカの2層(全体厚さ60nm〜80nm)を含む保護オーバーコートが適用された。この保護オーバーコートは2003年4月24日出願の米国特許出願番号10/422,096号明細書の中に記載されている。
【0096】
被膜1および2は通常のMSVD法を使用して3mm厚のフロートガラスの上に付着された。被覆基体は下記の通りのエレクトロコートを適用する前に、1100°Fに加熱され、それから室温に放冷された。
【0097】
この実施例には、4種の商業的に入手可能なエレクトロコーティング組成物が使用された。それらコーティング組成物は次の通りであった:
E1はPPGインダストリーズ社から商業的に入手可能なクリア・デュラプライム(Clear Duraprime)(登録商標)エレクトロコート(耐久性のカチオン性エレクトロコーティング組成物);
E2はPPGインダストリーズ社から商業的に入手可能なEC2800(登録商標)コーティング(カチオン性アクリルウレタン);
E3はPPGインダストリーズ社から商業的に入手可能な未着色W780(登録商標)コーティング(エポキシ−ウレタンコーティング);および
E4はPPGインダストリーズ社から商業的に入手可能なP930(登録商標)クリアコート(未着色カチオン性アクリルウレタン)。
【0098】
MSVD適用被膜をもつサンプルは通常の実験室規模のエレクトロコーティング装置を使用してエレクトロコーティングされた。サンプルは表1に掲載された条件でエレクトロコーティングされた。表1には、エレクトロコーティングされた基体の外観も載せてある。
【0099】
【表1】

【0100】
次いで、サンプル1〜8は様々な化学的および機械的耐久性試験を受けた。試験は次の通りであった:
塩化ナトリウム−脱イオン水の中の2.5重量%のNaCl;室温(65〜75°F/18〜24℃)で24時間の液浸(immersion)によって曝露。
酢酸−脱イオン水の中の1規定濃度(pH約2.4);室温(65〜75°F/18〜24℃)で24時間の液浸によって曝露。
水酸化アンモニウム−脱イオン水の中の1規定濃度のNHOH(pH約12.2);室温(65〜75°F/18〜24℃)で24時間の浸漬(submersion)によって曝露。
ダート(Dart)210洗剤−脱イオン水の中の1重量%(pH約2.9);室温(65〜75°F/18〜24℃)で24時間の液浸によって曝露;ダート210はマジソン・ケミカル社から商業的に入手可能な洗剤である。
煮沸脱イオン水−2時間の液浸によって曝露。
クリーブランド・コンデンセイション・チャンバー(Cleveland Condensation Chamber)(CCC)−140°F(60℃)で91時間の連続コンデンセイション。それから、通常の「テープ引張試験(tape pull test)」を行い、そこでは、スコッチ(Scotch)(登録商標)銘柄のテープ一片を被覆表面と接触させ次いで引き離して被膜密着性を試験した。
【0101】
テーバー摩耗(Taber Abrasion)−各摩耗輪に500gの負荷をかけたCS−10F摩耗輪(abrasive wheels)をセットしたテレダイン・テーバー摩耗試験装置(Teledyne Taber Abraser instrument)を使用して、サンプルを10回転摩耗させる。摩耗跡(abrasion track)について顕微鏡写真を撮影しそしてフォトショッププログラムによって処理して引掻き傷密度(scratch density)(面積当りの全ての引掻き傷の全長)を測定した。
熱安定性−ブルー・エム・スタビル・サーム・グラビティ・オーブン(Blue M Stabil−Therm Gravity oven)の中で275°F(135℃)で66時間曝露。曝露の前と後に、BYKガードナー(Gardner)TCSプラス(Plus)分光光度計を使用して、色を測定した。色変化は□Ecmcによって表わされる(光源D6500、観測者10度)。
Q−フォッグ(fog)(模擬ラーディ試験(Simulated Lardy Test))−持続時間=60サイクル/1440時間、溶液酸性度=pH4.0(硫酸)、電解質溶液=1%±0.025%NaCl、操作温度=40℃、脱イオン水を使用した。
曝露サイクル:
工程1: 塩霧(salt fog)、於40℃ 20分間
工程2: 100%RH、於40℃ 3時間40分
工程3: 乾燥(dry−off)、於40℃ 4時間
工程4: 100%RH、於40℃ 4時間
工程5: 乾燥、於40℃ 4時間
工程6: 100%RH、於40℃ 4時間
工程7: 乾燥、於40℃ 4時間
工程8: 最終工程−工程1へ戻る
【0102】
これら試験の結果は下記の表2に示されている。
「可(pass)」によって意味するところは、サンプルが商業的応用に十分な品質のものであると思われたということである。
【0103】
【表2】

【0104】
それから、もう一組の被覆システムをQ−フォッグ(模擬ラーディ)試験に曝した。ラミネート物品とモノリシック(非ラミネート)物品をエレクトロコート有り及び無しで試験しそして結果を下記の表3に示す。ラミネートのためには、上記の被覆サンプル1〜8のレプリカが通常のポリビニルブチラール接着剤を使用してもう1枚の3mm厚のフロートガラスにラミネートされた。エレクトロコート有り及び無しのラミネート物品については、侵入性(penetration)が物品のへり(edge)から内部に向って測定された。
【0105】
【表3】

【実施例2】
【0106】
上記結果に基づいて、更なる試験のために2種類のコーティング組合せが選ばれた。これらは被膜1の上のE4エレクトロコートと、被膜2の上のE2エレクトロコートであった。これらのコーティング組合せを有する2つのサンプル(下記の9と10)は表4に示された条件下で製造された。
【0107】
【表4】

【0108】
それから、これらサンプルは上に記載されている同じ化学的および機械的試験を受けそして結果が下記の表5に示されている。
【0109】
【表5】

【実施例3】
【0110】
次に、本発明の特徴を組み込んである被覆物品はより大きなサイズのガラス基体を使用して試験された。下記の実施例においては、基体は2種類のサイズのものであった:
サイズ1は、3.15mm×12.5インチ(31.7cm)×28インチ(71cm)
サイズ2は、3.15mm×12.5インチ(31.7cm)×25インチ(64cm)
【0111】
試験用に選ばれたコーティング組合せはE2市販エレクトロコートを有する被膜2であった。サンプル11〜13は下記の表6に示されているように製造された。
【0112】
【表6】

【0113】
上記実験の結果はより大きな表面積の導電性被膜の上で利用されたエレクトロコーティング法が上に報告されている小さなサンプルからの結果に概して等しいことを示している。これは市販の代表的なガラスサイズで本発明を利用することの生産可能性(production feasibility)を証明している。大きなサイズの被覆ガラスはコーティング品質が上記の小さな規模のサンプルに等しいらしかった。
【実施例4】
【0114】
次に、曲りガラス基体の上の導電性被膜の上への電着を試験した。3.5mmの透明ガラス基体を上記の被膜2で被覆し、それから、曲げ加工用の鉄の上で1300°F(703℃)で7.5分間曲げて複合体すなわち4.75インチ(12cm)の最大曲率半径をもつ「U状」曲りを形成した。それから、一つの基体は曲りの凹面側を表7に示した条件下でE2エレクトロコートによって被覆され、そしてもう一つのかかる基体は曲りの凸面側を表7に示した条件下でE2をもってエレクトロコーティングされた。
【0115】
【表7】

【0116】
それから、被覆基体を目視検査した。どちらの基体も、その上に形成された一様なエレクトロコートを有しているようであった。被覆湾曲基体は被膜平滑性に関する限りは上記の平板パネルと同じ目視特性を有していた。これはたまり(puddle)や流れ出し(run off)がでやすい通常の吹付け塗布された被膜とは異なっている。これらの吹付け塗布された被膜は基体の端では薄くそして低い箇所では厚くなりやすい。
【実施例5】
【0117】
下記実施例は導電性被膜の区域を電気的に隔離し次いでそれら区域を選択的にエレクトロコーティングすることの実行可能性を例証する。
【0118】
この実施例に使用した基体は2.07mm〜3.15mmの範囲の厚さを有する透明フロートガラス基体であった。下記の表8に掲載されている通りの導電性被膜が通常のMSVD法を使用して適用され、次いでアリゾナ州スコッツダル(Scottsdale)のユニバーサル・レーザー・システムズ社(Universal Laser Systems, Inc.)から商業的に入手可能なモデルM300レーザーを使用して導電性被膜の一部を削除することによって導電性被膜の区画(複数)が電気的に隔離された。レーザーは、125ミクロンのビーム幅をもつ、25ワットの二酸化炭素レーザーであった。この実施例における「E4レッド」および「E4ブラック」エレクトロコートは、被膜に最終的に赤色または黒色を付与するようにエレクトロコーティング組成物にそれぞれ赤色または黒色顔料が添加されたこと以外は上記のE4エレクトロコートと同じである。
【0119】
【表8】

【0120】
レーザーで削除された区域(すなわち、基体の、その上の導電性被膜が削除されたそれら区域)をエレクトロコートが被覆しなかったことが観察された。削除区域の幅は0.12mm〜1cmの間で調節されており、そしてこれらの削除幅の区域のどこにもその上にエレクトロコートの堆積がなかった。導電性被膜の電気的に隔離された区域(すなわち、導電性被膜の、エレクトロコーティング過程中に電気接触状態になかったそれら区域)にはエレクトロコートが付着されなかった。
【0121】
上記実施例においては導電性被膜を削除するのにレーザーを使用したが、限定されるものではないが、機械的削り取り、研摩布、研摩輪、化学的除去、導電性コーティングより前に適用された可溶性物質、など、のような、いずれの通常の削除手段も、導電性被膜の区域を削除するのに使用できるということ、又は導電性被膜の付着に先立って基体をマスキングすることによって導電性被膜が離隔区域に付着できるということは、当業者に理解されるであろう。
【0122】
以上の記載の中に開示された概念から逸脱することなく変更が本発明に対してなされてもよいということは当業者には容易に認識されるであろう。従って、ここに詳細に記載した具体的態様は単なる例証であって、特許請求の範囲の及ぶ全域とそのいずれかのおよび全ての均等物を与えられるはずの本発明の範囲を制限するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0123】
【図1】本発明の特徴を組み込んである電着被膜を有する例示物品の側断面図(縮尺製図されてない)を示す。
【図2】本発明で使用するのに適する例示被膜の側断面図(縮尺製図されてない)を示す。
【図3】本発明で使用するのに適する具体的な導電性の機能性被膜の側断面図(縮尺製図されてない)を示す。
【図4】基体の一部分の上に被膜を有するので後で適用されたエレクトロコートがパターンを形成している本発明の例示物品の平面図(縮尺製図されてない)を示す。
【図5】本発明の特徴を組み込んである別の例示の被覆物品の側断面図(縮尺製図されてない)を示す。
【図6】本発明の特徴を組み込んである更に別の例示の被覆物品の側断面図(縮尺製図されてない)を示す。
【図7】本発明の例示の被覆物品の平面図(縮尺製図されてない)を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基体を提供し;
基体の少なくとも一部分の上に少なくとも一つの導電性被膜を形成し、導電性被膜は0Åより大きく25,000Å未満の範囲の厚さを有し;そして
導電性被膜の少なくとも一部分の上に少なくとも一つのポリマー性被膜を電着させる
諸工程を含む、被覆物品を製造する方法。
【請求項2】
基体が非導電性材料からつくられている、請求項1の方法。
【請求項3】
基体がガラスおよびプラスチックから選ばれる、請求項1の方法。
【請求項4】
基体が焼もどし又は焼なましガラスである、請求項1の方法。
【請求項5】
基体が曲り基体である、請求項1の方法。
【請求項6】
基体が曲り基体であり、そして方法が
曲り基体の少なくとも一部分の上に導電性被膜を形成し;そして
導電性被膜の少なくとも一部分の上にポリマー性被膜を形成する
ことを包含する、請求項1の方法。
【請求項7】
導電性被膜の形成後に基体を所期形状に曲げ;そして
曲り基体の上の導電性被膜の上にポリマー性被膜を形成する
ことを包含する、請求項1の方法。
【請求項8】
導電性被膜が0Ω/□より大きく1,000Ω/□以下の範囲の面積抵抗を有する、請求項1の方法。
【請求項9】
導電性被膜が0Ω/□より大きく30Ω/□以下の範囲の面積抵抗を有する、請求項1の方法。
【請求項10】
導電性被膜が0Ω/□より大きく15Ω/□以下の範囲の面積抵抗を有する、請求項1の方法。
【請求項11】
導電性被膜が無機質被膜である、請求項1の方法。
【請求項12】
導電性被膜が少なくとも一つの金属層を包含する、請求項1の方法。
【請求項13】
金属層が銀を包含する、請求項12の方法。
【請求項14】
導電性被膜が、少なくとも一つの金属層と少なくとも一つの誘電層を有する多層被膜スタックを包含する、請求項1の方法。
【請求項15】
化学蒸着または物理蒸着から選ばれた方法によって導電性被膜を付着させることを包含する、請求項1の方法。
【請求項16】
ポリマー性被膜が0.2ミル〜1.5ミルの範囲の厚さを有する、請求項1の方法。
【請求項17】
ポリマー性被膜を使用する物品にもう一つの基体をラミネートすることを包含する、請求項1の方法。
【請求項18】
基体が非導電性であり、そして方法が、ポリマー性被膜を電着させるのに導電性被膜を電気的に帯電させることを包含する、請求項1の方法。
【請求項19】
さらに、
導電性被膜の少なくとも一部分を削除して複数の導電性被覆領域を形成し;そして
被覆領域の一つまたはそれ以上を選択的に電気的に帯電して帯電被覆領域を選択的にエレクトロコーティングする
ことを包含する、請求項1の方法。
【請求項20】
削除工程が、マスキング、レーザー削除、機械的削除、化学的削除、または溶剤削除の少なくとも一つを包含する、請求項19の方法。
【請求項21】
マグネトロンスパッタ蒸着によって導電性被膜を付着させることを包含する、請求項15の方法。
【請求項22】
基体の少なくとも一部分の上に形成された少なくとも一つの導電性被膜を有する基体を提供し、導電性被膜は0Åより大きく25,000Å未満の範囲の厚さを有し;そして
導電性被膜の少なくとも一部分の上に少なくとも一つのポリマー性被膜を電着させる
諸工程を含む、被覆物品を製造する方法。
【請求項23】
非導電性の第一基体を提供し、第一基体はガラスを含み;
化学蒸着または物理蒸着から選ばれた方法によって、第一基体の少なくとも一部分の上に少なくとも一つの導電性被膜を形成し、導電性被膜は0Åより大きく25,000Å未満の範囲の厚さを有し;そして
導電性被膜の少なくとも一部分の上に少なくとも一つのポリマー性被膜を電着させる
諸工程を含む、被覆物品を製造する方法。
【請求項24】
マグネトロンスパッタ蒸着によって導電性被膜を付着させることを包含する、請求項23の方法。
【請求項25】
非導電性基体を提供し;
基体の少なくとも一部分の上に少なくとも一つの無機質の導電性被膜を適用し;そして
導電性被膜の少なくとも一部分の上に少なくとも一つのエレクトロコートを電着させる
諸工程を含む、被覆物品を製造する方法。
【請求項26】
複数の導電性被覆領域を有する基体を提供し;そして
一つまたはそれ以上の電着可能なコーティング材料を導電性被覆領域の上に選択的に付着させる
諸工程を含む、被覆物品を製造する方法。
【請求項27】
基体の少なくとも一部分の上に導電性被膜を、化学蒸着または物理蒸着から選ばれた方法によって形成し;そして
導電性被膜の少なくとも一部分の上に少なくとも一つのポリマー性被膜を電着によって形成する
ことを含む、基体の上に多層複合被膜を形成する方法。
【請求項28】
マグネトロンスパッタ蒸着によって導電性被膜を付着させることを包含する、請求項27の方法。
【請求項29】
第一基体;
第一基体の少なくとも一部分の上に形成された少なくとも一つの導電性被膜、導電性被膜は0Åより大きく25,000Å未満の範囲の厚さを有する;および
導電性被膜の少なくとも一部分の上に電着された少なくとも一つのポリマー性被膜
を含む被覆物品。
【請求項30】
基体が非導電性である、請求項29の物品。
【請求項31】
基体がガラスまたはプラスチックから選ばれる、請求項29の物品。
【請求項32】
基体が焼もどし又は焼なましガラスである、請求項29の物品。
【請求項33】
基体が曲り基体である、請求項29の物品。
【請求項34】
導電性被膜が0Ω/□より大きく1,000Ω/□以下の範囲の面積抵抗を有する、請求項29の物品。
【請求項35】
導電性被膜が0Ω/□より大きく30Ω/□以下の範囲の面積抵抗を有する、請求項29の物品。
【請求項36】
導電性被膜が0Ω/□より大きく15Ω/□以下の範囲の面積抵抗を有する、請求項29の物品。
【請求項37】
導電性被膜が無機質被膜である、請求項29の物品。
【請求項38】
導電性被膜が少なくとも一つの金属層を包含する、請求項29の物品。
【請求項39】
導電性被膜が、少なくとも一つの金属層と少なくとも一つの誘電層を有する多層被膜スタックを包含する、請求項29の物品。
【請求項40】
導電性被膜が日射制御被膜である、請求項29の物品。
【請求項41】
ポリマー性被膜が0.2ミル〜1.5ミルの範囲の厚さを有する、請求項29の物品。
【請求項42】
ポリマー性被膜を使用する物品にラミネートされたもう一つの基体を包含する、請求項29の物品。
【請求項43】
非導電性の第一基体、該第一基体はガラスを含む;
化学蒸着または物理蒸着から選ばれた方法によって第一基体の少なくとも一部分の上に形成された少なくとも一つの導電性被膜、該導電性被膜は0Åより大きく25,000Å未満の範囲の厚さを有する;および
導電性被膜の少なくとも一部分の上に電着された少なくとも一つのポリマー性被膜
を含む被覆物品。
【請求項44】
導電性被膜がマグネトロンスパッタ蒸着によって付着される、請求項43の物品。
【請求項45】
導電性被膜が、
少なくとも一つの金属酸化物、金属合金酸化物、金属窒化物、金属酸化窒化物またはそれらの混合物もしくは組合せを含む第一誘電層;
第一誘電層の上に付着された金属層、該金属層は金、銅、銀、またはそれらの混合物もしくは合金、またはそれらの少なくとも一つを含有する組合せからなる群から選ばれた少なくとも一つの金属を含む;および
金属層の上に付着された第二誘電層、該第二誘電層は第一誘電層のそれと同一または異なる少なくとも一つの金属酸化物、金属合金酸化物、金属窒化物、金属酸化窒化物またはそれらの混合物もしくは組合せを含む;
を含む、請求項43の物品。
【請求項46】
基体;
基体の少なくとも一部分の上に形成された少なくとも一つの無機質の導電性被膜;および
導電性被膜の上に電着されたエレクトロコート
を含む被覆物品。
【請求項47】
導電性被膜が
少なくとも一つの金属酸化物、窒化物、酸化窒化物またはそれらの混合物を含む第一誘電層;
第一誘電層の上に付着された金属層、該金属層は金、銅、銀、またはそれらの混合物もしくは合金、またはそれらの少なくとも一つを含有する組合せからなる群から選ばれた少なくとも一つの金属を含む;および
金属層の上に付着された第二誘電層、該第二誘電層は第一誘電層のそれと同一または異なる少なくとも一つの金属酸化物、窒化物、酸化窒化物またはそれらの混合物を含む;
を含む、請求項46の物品。
【請求項48】
基体;
基体の上に形成された複数の導電性被覆領域;および
導電性被覆領域の上に選択的に電着された一つまたはそれ以上のエレクトロコート
を含む被覆物品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2007−529350(P2007−529350A)
【公表日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−505090(P2007−505090)
【出願日】平成17年3月22日(2005.3.22)
【国際出願番号】PCT/US2005/009467
【国際公開番号】WO2005/092813
【国際公開日】平成17年10月6日(2005.10.6)
【出願人】(399074983)ピーピージー・インダストリーズ・オハイオ・インコーポレイテッド (60)
【氏名又は名称原語表記】PPG Industries Ohio,Inc.
【Fターム(参考)】