説明

被覆蛍光体、波長変換部材、LED発光装置

【課題】防湿膜を防湿性能が高く且つクラックの発生を抑制した膜として形成することができ、耐湿性に優れた被覆蛍光体を提供する。
【解決手段】蛍光体1の表面を、金属酸化物マトリックス相3に金属酸化物粒子4を分散させて形成した防湿膜2で被覆する。金属酸化物粒子4は、粒子径が2nm〜1μm、厚みが粒子径の1/5以下で且つ100nm以下の平板状粒子である。このため、金属酸化物粒子4は平板面が防湿膜2の膜面と平行になるように配向して防湿膜2中に分散され、金属酸化物粒子4による水分の遮断効果を高く得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面を防湿膜で被覆した被覆蛍光体及び、この被覆蛍光体を用いて作製した波長変換部材及びLED発光装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
発光ダイオード(LED)などの半導体発光素子から発する光の波長を蛍光体によって変換して発光させるようにした発光装置は、小型に形成することができ、また消費電力が白熱電球よりも少なく、さらに白色など使用目的に応じた任意の色での発光が可能である等の特長を有する。このため蛍光体を用いた発光装置は、液晶ディスプレイ、携帯電話若しくは携帯情報端末等のバックライト用光源、室内外広告等に利用される表示装置、各種携帯機器のインジケータ、照明スイッチまたはOA(オフィスオートメーション)機器用光源等に利用することができるものであり、高効率化あるいは高信頼化などの開発が行われている。
【0003】
これまで例えば、青色または青紫色の光あるいは紫外光を発光する半導体発光素子と、蛍光体とを組み合わせて、白色等で発光する発光装置の開発が行われており、この発光装置に適した蛍光体としては、さまざまな酸化物や硫化物の蛍光体が用いられている。しかし、例えばシリケートもしくは硫化物を含む蛍光体は、空気中の水分と水和反応して加水分解するおそれがあり、このような加水分解による蛍光体の劣化によって、発光装置の耐用年数が低下するという問題がある。
【0004】
そこで、蛍光体を表面処理して耐湿性を改善することが種々検討されている。例えば特許文献1では、蛍光体の粒子の表面にポリオルガノシロキサン被膜を形成することによって、この防湿性の被膜で湿気などの水分が蛍光体に作用することを防ぐようにしている。
【0005】
しかし、特許文献1のようなポリオルガノシロキサン被膜は緻密度が低いため、水分がポリオルガノシロキサンのマトリックス内を浸透するおそれがあって、湿気を完全に遮断することは難しく、蛍光体の劣化を防ぐ効果が低いという問題がある。
【0006】
一方、特許文献2では、蛍光体の表面を、金属酸化物粒子と金属酸化物マトリックスからなる疎水性被膜で被覆することによって、この疎水性被膜で湿気などの水分が蛍光体に作用することを防ぐようにしている。
【0007】
このものでは、金属酸化物マトリックスに金属酸化物粒子を含有させることによって、被膜は緻密なものになり、また金属酸化物粒子による水分の遮断効果も期待することができるので、防湿性能を向上することができる。
【0008】
しかし、金属酸化物粒子の含有によって被膜の脆性が増し、また金属酸化物粒子とマトリックスの界面に隙間が生じ易く、この結果、疎水性被膜を蛍光体の表面に造膜する際の硬化収縮で、被膜にクラックが入り易くなるものであり、このクラックを通して水分が浸入するおそれがあるという問題がある。
【0009】
また、金属酸化物粒子による水分の遮断効果を高く得るためには、被膜中の金属酸化物粒子の含有量を多くする必要がある。すなわち図3に、蛍光体1の表面に被覆した被膜2に金属酸化物粒子4を分散した状態を示す。水蒸気等の水分を矢印で示すように、被膜2を透過する水分を金属酸化物粒子4で遮断することができるが、被膜2中の金属酸化物粒子4の量が少ないと、水分の一部は金属酸化物粒子4の間隙を通過する。このため、被膜2中の金属酸化物粒子4の含有量を多くしないと、金属酸化物粒子4による水分の遮断効果を高く得ることができない。しかしこのように金属酸化物粒子4の含有量を多くすると、粒子間の相互作用によって被膜2のマトリックスにゲル化などが生じ易くなって、被膜2の形成が著しく困難になり、また被膜2の脆性がさらに大きくなる結果になって、被膜2にクラックがより発生し易くなり、却って防湿性が低下するものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平10−298544号公報
【特許文献2】特開平9−272866号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、防湿膜を防湿性能が高く且つクラックの発生を抑制した膜として形成することができ、耐湿性に優れた被覆蛍光体を提供することを目的とするものであり、また耐用年数の長い波長変換部材及びLED発光装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係る被覆蛍光体は、蛍光体の表面を、金属酸化物マトリックス相に金属酸化物粒子を分散させて形成した防湿膜で被覆した被覆蛍光体であって、防湿膜中の金属酸化物粒子は、粒子径が2nm〜1μm、厚みが粒子径の1/5以下で且つ100nm以下の平板状粒子であることを特徴とするものである。
【0013】
この発明によれば、防湿膜は金属酸化物マトリックス相に金属酸化物粒子を分散して形成されており、防湿膜を緻密に形成して防湿性能を向上することができるものである。また金属酸化物粒子は平板状粒子であるため、金属酸化物粒子は平板面が防湿膜の膜面と平行になるように配向して防湿膜中に分散されるものであり、金属酸化物粒子による水分の遮断効果を高く得ることができ、防湿性能を向上することができるものである。そして平板状の金属酸化物粒子は少ない含有量でも水分の遮断効果を得ることができるものであり、金属酸化物粒子の含有量を少なくして防湿層の柔軟性を高めることができ、防湿層にクラックが発生することを抑制することができるものである。
【0014】
また本発明において、上記金属酸化物粒子は、Si,Ti,Al,Zr,Ge,Yから一種以上選択される金属の酸化物からなるものであることを特徴とするものである。
【0015】
これらの金属酸化物粒子を用いることによって、防湿性能の高い防湿膜を形成することができるものである。
【0016】
また本発明において、上記金属酸化物マトリックス相は、化学式(1)と化学式(2)の少なくとも一方で示される金属アルコキシドまたはその加水分解物あるいはこれらの縮合物から形成される金属酸化物で形成されることを特徴とするものである。
【0017】
化学式(1) M(OR
化学式(2) M(ORn−x(R
(M,MはSi,Ti,Al,Zr,Ge,Yから選択される金属。R,Rはアルキル基又は水素、Rはアルキル基。mはMの価数と、nはMの価数と同じ整数。xは1以上の整数であり、n>x。)
この発明によれば、化学式(1)や化学式(2)で示される金属アルコキシドまたはその加水分解物あるいはこれらの縮合物から形成される金属酸化物のマトリックス相によって、防湿性能の高い防湿膜を形成することができるものである。
【0018】
また本発明において、防湿膜の厚みは10nm以上1000nm以下であることを特徴とするものである。
【0019】
この発明によれば、光の透過を防湿膜で阻害するようなことなく、防湿膜による水分の遮断性能を高く得ることができるものである。
【0020】
また本発明に係る波長変換部材は、上記の被覆蛍光体を、シリコーン樹脂もしくはガラスからなる透光性媒体に分散して形成したことを特徴とするものであり、耐湿性に優れた被覆蛍光体を用いて、耐用年数の長い波長変換部材を得ることができるものである。
【0021】
また本発明に係るLED発光装置は、上記の波長変換部材を用いて形成したことを特徴とするものであり、耐用年数の長いLED発光装置を得ることができるものである。
【発明の効果】
【0022】
本発明に係る被覆蛍光体によれば、防湿膜は金属酸化物マトリックス相に金属酸化物粒子を分散して形成されているので、防湿膜を緻密に形成して防湿性能を向上することができるものであり、また金属酸化物粒子は平板状粒子であるので、金属酸化物粒子の平板面が防湿膜の膜面と平行になるように配向して防湿膜中に分散されるものであり、金属酸化物粒子による水分の遮断効果を高く得ることができ、防湿性能を向上することができるものである。そして平板状の金属酸化物粒子は少ない含有量でも水分の遮断効果を得ることができるため、金属酸化物粒子の含有量を少なくして防湿層の柔軟性を高めることができるものであり、防湿層にクラックが発生することを抑制することができるものである。このように、防湿膜を防湿性能が高く且つクラックの発生を抑制した膜として形成することができ、耐湿性に優れた被覆蛍光体を得ることができるものである。
【0023】
また本発明に係る波長変換部材やLED発光装置は、このような耐湿性に優れた被覆蛍光体を用いて形成されるものであり、耐用年数を長くすることができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明に係る被覆蛍光体の実施の形態の一例を示すものであり、(a)は断面図、(b)は一部の拡大断面図である。
【図2】本発明のLED発光装置の実施の形態の一例を示す断面図である。
【図3】従来の被覆蛍光体の一部の拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施の形態を説明する。
【0026】
本発明において蛍光体としては、特に限定されることなく、LED照明などの発光装置の波長変換用に用いられる任意のものを使用することができるものであり、例えば、(Sr,Ca)S:Eu、Y(Al,Ga)12:Ce、(Y,Gd)Al12:Ce、CaGa:Eu、(Ca,Sr)Si:Eu、SrSiO:Eu、CaSiN:Eu、CaScSi12:Ce、CaGa:Eu、2SiO:Euなどを挙げることができる。
【0027】
本発明に係る被覆蛍光体Aは、蛍光体1の粒子の表面に防湿膜2を被覆したものであり、この防湿膜2は金属酸化物マトリックス相3に金属酸化物粒子4を分散した被膜として形成してある。
【0028】
そして防湿膜2の金属酸化物マトリックス相3は、次の化学式(1)で表される金属アルコキシドまたはその加水分解物あるいはこれらの縮合物を、加水分解・縮合させて形成される金属酸化物や、次の化学式(2)で表される金属アルコキシドまたはその加水分解物あるいはこれらの縮合物を、加水分解・縮合させて形成される金属酸化物で形成されるものである。
【0029】
化学式(1) M(OR
化学式(2) M(ORn−x(R
ここで、化学式(1)(2)においてM,Mはそれぞれ、Si,Ti,Al,Zr,Ge,Yから選択される金属である。またR,Rはアルキル基又は水素であり、総て同じものであってもよく、異なるものが混在していてもよい。またRはアルキル基であり、総て同じであってもよく、異なるものが混在していてもよい。さらにmはMの価数と同じ整数,nはMの価数と同じ整数である。さらにxは1以上の整数であり、n>xである。
【0030】
上記の化学式(1)の化合物は、Rが全てメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基のようなアルキル基である金属アルコキシドであっても良いし、Rの一部がアルキル基で、残りが水素であっても良い。またRの全てが水素である場合には、金属アルコキシドの加水分解物を用いることができる。化学式(1)のRのアルキル基は、特に限定されるものではないが、Cの数が1〜4の範囲のものであることが好ましい。
【0031】
化学式(1)の金属アルコキシドの具体例としては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラ−n−プロポキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラ−n−ブトキシシラン、テトラキス(2−メトキシエトキシ)シランのような置換または非置換のアルコキシシラン類;アルミニウムトリエトキシド、アルミニウムトリ−n−プロポキシド、アルミニウムトリイソプロポキシド、アルミニウムトリ−n−ブトキシド、アルミニウムトリイソブトキシド、アルミニウムトリ−sec −ブトキシド、アルミニウムトリ−tert−ブトキシド、アルミニウムトリス(ヘキシルオキシド)、アルミニウムトリス(2−エチルヘキシルオキシド)、アルミニウムトリス(2−メトキシエトキシド)、アルミニウムトリス(2−エトキシエトキシド)、アルミニウムトリス(2−ブトキシエトキシド)のような置換または非置換のアルミニウムアルコキシド類;チタンテトラエトキシド、チタンテトラ−n−プロポキシド、チタンテトライソプロポキシド、チタンテトラ−n−ブトキシド、チタンテトラ−sec−ブトキシド、チタンテトラキス(2−エチルヘキシルオキシド)のようなチタンアルコキシド類;ジルコニウムテトラエトキシド、ジルコニウムテトラ−n−プロポキシド、ジルコニウムテトライソプロポキシド、ジルコニウムテトラ−n−ブトキシド、ジルコニウムテトラ−sec−ブトキシド、ジルコニウムテトラキス(2−エチルヘキシルオキシド)のようなジルコニウムアルコキシド類;ゲルマニウムテトラエトキシド、ゲルマニウムテトラ−n−プロポキシド、ゲルマニウムテトライソプロポキシド、ゲルマニウムテトラ−n−ブトキシド、ゲルマニウムテトラ−sec −ブトキシド、ゲルマニウムテトラキス(2−エチルヘキシルオキシド)のようなゲルマニウムアルコキシド類;イットリウムヘキサエトキシド、イットリウムヘキサエトキシド−n−プロポキシド、イットリウムヘキサエトキシドイソプロポキシド、イットリウムヘキサエトキシド−n−ブトキシド、イットリウムヘキサエトキシド−sec −ブトキシド、イットリウムヘキサエトキシドキス(2−エチルヘキシルオキシド)のようなイットリウムアルコキシド類;を挙げることができ、またこれらの金属アルコキシド類のオリゴマーである部分加水分解縮合物や、それら相互またはモノマーである金属アルコキシドとの混合物も用いることができる。
【0032】
上記の化学式(2)の化合物は、Rが全てメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基のようなアルキル基である金属アルコキシドであっても良いし、Rの一部がアルキル基で、残りが水素であっても良い。またRの全てが水素である、金属アルコキシドの加水分解物であってもよい。また金属Mに少なくとも一つのアルキル基Rが結合しているものであり、このアルキル基Rは直鎖状でも分岐状でもよく、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチルおよびオクチルを例示することができ、また置換アルキル基として、2−メトキシエチル、2−エトキシエチルおよび2−ブトキシエチルのようなアルコキシ置換アルキル基を例示することができる。化学式(2)のRのアルキル基は、Cの数が1〜4の範囲のものであることが好ましく、Rのアルキル基は、Cの数が1〜8の範囲のものであることが好ましい。
【0033】
化学式(2)のアルキル置換金属アルコキシドの具体例としては、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、メチルジメトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、n−ブチルトリメトキシシラン、n−ペンチルトリメトキシシラン、n−ヘキシルトリメトキシシラン、シクロヘキシルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、メチルビニルジメトキシシランのようなメトキシシラン類;メチルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、メチルジエトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、メチルビニルジエトキシシランのようなエトキシシラン類;メチルトリ−n−プロポキシシラン、メチルトリイソプロポキシシランのようなプロポキシシラン類;メチルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン、ビニルトリス(2−メトキシエトキシ)シランのような置換アルコキシシラン類を挙げることができ、これらの単独または相互の部分加水分解、縮合物を用いることもできる。また金属種がアルミニウム、チタン、ジルコニウム、ゲルマニウム、イットリウムの金属アルコキシド類も同様に用いることができる。
【0034】
上記の化学式(1)の化合物と、化学式(2)の化合物のうち、いずれか一方を用いて防湿膜2の金属酸化物マトリックス相3を形成することができるが、化学式(1)の化合物と化学式(2)の化合物を併用して、防湿膜2の金属酸化物マトリックス相3を形成することもできる。
【0035】
また本発明において金属酸化物粒子4としては、Si,Ti,Al,Zr,Ge,Yから選ばれる金属の酸化物からなるものを用いることができるものであり、具体的には二酸化ケイ素(シリカ)、酸化アルミニウム(アルミナ)、二酸化チタン、酸化ジルコニウム(ジルコニウム)、酸化ゲルマニウム、酸化イットリウムの1種または2種以上からなる単純酸化物や複合酸化物を挙げることができ、これらのうち1種を単独で用いる他、2種以上を併用することもできる。
【0036】
そして本発明では金属酸化物粒子4として、粒子径が2nm〜1μm、厚みが粒子径の1/5以下で且つ100nm以下である、平板状(薄片状)の形態の粒子を用いるものである。
【0037】
次に、化学式(1)や化学式(2)の化合物あるいはその縮合物から形成される金属酸化物のマトリックス相3に金属酸化物粒子4を分散させて形成される防湿膜2で蛍光体1の表面を被覆して被覆蛍光体Aを製造する方法について説明する。この被覆方法には、種々の方法があり、特に限定されるものではないが、ゾルゲルコーティング法、噴霧乾燥法、流動層コーティング法について説明する。
【0038】
ゾルゲルコーティング法は、まず蛍光体1の粒子を液状の媒体中に分散させ、撹拌しながら、化学式(1)又は化学式(2)の化合物あるいはその縮合物、あるいはその溶液と、金属酸化物粒子4を添加し、蛍光体1の粒子表面において、化学式(1)又は化学式(2)の化合物あるいはその縮合物の加水分解と縮合を進行させるようにしたものであり、金属酸化物のマトリックス相3に金属酸化物粒子4が分散した被膜として防湿膜2を形成することができる。
【0039】
上記の液状の媒体としては、水の他、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノールのようなアルコール系溶媒;トルエン、キシレン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、石油エーテル、石油ベンジン、ガソリン、ナフサのような炭化水素系溶媒;ジエチルエーテル、テトラヒドロフランのようなエーテル系溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチルのようなエステル系溶媒;およびアセトン、メチルエチルケトンのようなケトン系溶媒を例示することができるものであり、これらは単独で用いても、相互の混合物として用いてもよい。
【0040】
また有機溶媒中で上記のように蛍光体1を金属アルコキシドで処理する場合、この金属アルコキシドを加水分解させるために、化学量論量または過剰量の水を系内に存在させることができる。水は、最初に蛍光体1を分散させる系に用いてもよく、加水分解速度が比較的小さい金属アルコキシドとともに添加しても、金属アルコキシドとは別個に系に添加してもいずれでもよい。あるいは、金属アルコキシドを蛍光体1の粒子表面に付着させ、溶媒を留去、またはろ過によって、金属アルコキシドが付着した蛍光体1を回収した後に、気相または液相の水とこの蛍光体1を接触させて、蛍光体1の表面の金属アルコキシドを加水分解、縮合させ、金属酸化物マトリックスの被膜を形成させることもできる。
【0041】
噴霧乾燥法は、液状媒体中に蛍光体1を分散した液に、化学式(1)や化学式(2)の化合物あるいはその縮合物と、金属酸化物粒子を加えた分散液を調製し、この分散液を噴霧させるようにしたものであり、化学式(1)や化学式(2)の化合物あるいはその縮合物と金属酸化物粒子4で蛍光体1を包んだ液滴を乾燥することによって、蛍光体1の粒子表面に金属酸化物マトリックス相3に金属酸化物粒子4が分散した被膜を付着させ、防湿膜2を形成することができる。液状媒体としては上記に例示した有機溶媒を使用することできる。
【0042】
流動層コーティング法は、化学式(1)や化学式(2)の化合物あるいはその縮合物と金属酸化物粒子4の混合物を噴霧状にするか、あるいは化学式(1)や化学式(2)の化合物あるいはその縮合物の沸点が比較的に低い場合には気化させて、蛍光体1の粒子表面に接触させると共に金属酸化物粒子4を付着させるようにしたものである。蛍光体1に化学式(1)や化学式(2)の化合物あるいはその縮合物を接触させる際に、蛍光体1を流動化させると同時に、化学式(1)や化学式(2)の化合物あるいはその縮合物等を、窒素、アルゴンのような不活性ガスとともに供給するようにしてあり、それと同時に、または接触後に、蛍光体1の表面に存在する化学式(1)や化学式(2)の化合物あるいはその縮合物を化学量論量または過剰量の水と接触させるようにしてある。水は、化学式(1)や化学式(2)の化合物あるいはその縮合物と同様に、噴霧状または気相で接触させるものである。
【0043】
上記のいずれの方法においても、化学式(1)や化学式(2)の化合物あるいはその縮合物の加水分解反応や縮合反応を促進して、より低温、より短時間で金属酸化物被膜を形成させるために、触媒を添加するようにしてもよい。触媒としては、塩酸、硝酸、硫酸、酢酸のような酸;水酸化ナトリウム、アンモニア、水酸化テトラメチルアンモニウムのような塩基;ヘキサン酸、オクタン酸、2−エチルヘキサン酸、ナフテン酸などのカルボン酸の亜鉛塩のようなカルボン酸金属塩;アルミニウムトリエトキシド、アルミニウムトリ−n−プロポキシド、アルミニウムトリイソプロポキシド、アルミニウムトリ−n−ブトキシド、アルミニウムイソブトキシドのようなアルミニウムアルコキシドおよびそれらの部分加水分解縮合物;ジイソプロポキシ(アセチルアセトナト)アルミニウム、ジ−n−ブトキシ(アセチルアセトナト)アルミニウム、トリス(アセチルアセトナト)アルミニウム、ジイソプロポキシ(エチルアセトアセタト)アルミニウム、ジ−n−ブトキシ(エチルアセトアセタト)アルミニウム、n−ブトキシビス(エチルアセトアセタト)アルミニウムのようなアルミニウムキレート化合物;酢酸テトラメチルアンモニウムのような第四級アンモニウム塩;ならびにトリエタノールアミンのようなアミノ化合物を例示することができる。またそれ自体が金属アルコキシドである3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−(N−2−アミノエチル)プロピルトリメトキシシランのようなアミノ基含有アルコキシシランを触媒と併用してもよい。上記の触媒はどのような方法で系に添加されるようにしてもよい。
【0044】
また、噴霧乾燥法や流動層コーティング法で、上記の化学式(1)や化学式(2)の化合物あるいはその縮合物による蛍光体1の表面処理を、常温または60℃までの比較的低い加熱温度で行なった後、またゾルゲルコーティング法で表面処理した蛍光体1をろ過によって回収した後、金属酸化物マトリックス相を形成する縮合反応を完結させるために、さらに60〜300℃の温度で加熱するのが好ましい。加熱時間は特に限定されないが、0.5〜3時間程度でよい。
【0045】
そして本発明は、上記のように金属酸化物マトリックス相3に金属酸化物粒子4を分散した防湿膜2で蛍光体1の表面を被覆するにあたって、金属酸化物粒子4として平板状粒子を用いるようにしているので、金属酸化物粒子4を含有する金属酸化物マトリックス相3を蛍光体1の表面に被覆形成する際に、表面張力の作用等によって、平板状の金属酸化物粒子4は図1(a)のように、その平板面が金属酸化物マトリックス相3からなる防湿膜2の膜面と平行になるように配向し、金属酸化物粒子4は平板面が平行に重なり合った状態で防湿膜2中に分散されるものである。
【0046】
上記のようにして得られる本発明の被覆蛍光体Aにおいて、防湿膜2は金属酸化物マトリックス相3に金属酸化物粒子4を分散して形成されているので、防湿膜2の膜質を緻密にして、水分の浸透を遮蔽する性能を向上することができるものである。また上記のように金属酸化物粒子4は平板面が平行に重なり合った状態で防湿膜2中に分散されているため、図1(b)に示すように、水蒸気等の水分が透過する経路(矢印で示す)が金属酸化物粒子4によって遮断されるものであり、この金属酸化物粒子4による水分の遮断効果も加わって、防湿性能を高く形成することができるものである。そして既述の図3の場合ように金属酸化物粒子4が球形等の粒子であると、金属酸化物粒子4の含有量を多くしないと水分の遮断効果を十分に得ることができないが、本発明のように金属酸化物粒子4が平板状である場合、図1(b)のように金属酸化物粒子4同士が防湿膜2の膜厚方向で重なり合うことによって、少量の金属酸化物粒子4でも被覆率が高くなり、水分を遮断する効果を十分に得ることができるものである。従って、金属酸化物マトリックス相3への金属酸化物粒子4の分散量を少なくすることができるものであり、防湿膜2の柔軟性が金属酸化物粒子4で損なわれることを低減して、防湿膜2にクラックが発生することを抑制することができるものである。この結果、防湿膜2を防湿性能が高く且つクラックの発生を抑制した膜として形成することができるものであり、耐湿性に優れた被覆蛍光体Aを得ることができるものである。
【0047】
ここで、防湿膜2の金属酸化物マトリックス相3中の金属酸化物粒子4の含有量は、特に限定されるものではないが、3質量%以上、80質量%以下の範囲が好ましく、特に10質量%以上、50質量%以下の範囲がより好ましい。金属酸化物粒子4の含有量が上記の範囲未満であると、防湿膜2の膜質を緻密にする効果が不十分になり、水分の浸透を抑制する効果が不十分になるおそれがある。また金属酸化物粒子4の含有量が上記の範囲を超えて多いと、防湿膜2の膜質の柔軟性が損なわれて脆性が高くなり、被膜形成時にクラックが発生し易くなる。
【0048】
また平板状の金属酸化物粒子4の大きさは、既述のように、粒子径が2nm〜1μm、厚みが粒子径の1/5以下で且つ100nm以下に設定されるものである。粒子径が2nm未満のものは工業的に入手し難く実用的でない。逆に粒子径が1μmを越えると、蛍光体1の表面に好適な被膜を形成することが困難となり、また発光時に蛍光体1の表面で散乱が発生して発光特性が低下するおそれがある。また、粒子径の1/5よりも大きな厚みであると、防湿膜2の成膜時に、金属酸化物粒子4をその平板面が防湿膜2の膜面と平行になるように配向させることが難しくなり、金属酸化物粒子4同士の防湿膜2の膜厚方向での重なり合いが不十分になって、金属酸化物粒子4による水分の遮断効果が不十分になるおそれがある。さらに100nmを超える厚みであると、同様に金属酸化物粒子4をその平板面が防湿膜2の膜面と平行になるように配向させることが難しくなり、また発光時に蛍光体1の表面で散乱が発生して発光特性が低下するおそれがある。金属酸化物粒子4の厚みの下限は特に設定されるものではないが、実用的には1nm程度が厚みの下限である。ここで本発明において、平板状の金属酸化物粒子4の粒子径は、平板面の長軸径と短軸径の平均値をいうものであり、この粒子径や、金属酸化物粒子4の厚みは、電子顕微鏡で測定した実測値である。
【0049】
また、蛍光体1の表面を被覆する防湿膜2の厚みは、10nm〜1000nmの範囲が好ましい。防湿膜2の膜厚が10nm未満であると、水分を遮断する効果を十分に得ることができないことがあり、耐湿性の向上が不十分になるおそれがある。逆に防湿膜2の膜厚が1000nmを超えると、防湿膜2の光透過性が低くなって、蛍光体1による波長変換の発光効率が低下するおそれがある。
【0050】
次に、上記のようにして得た本発明の被覆蛍光体を用いて作製される波長変換部材及びLED発光装置について説明する。
【0051】
図2はLED発光装置Bの一例を示すものであり、導体パターン23を設けた実装基板20の表面に、応力緩和用のサブマウント部材30を介してLEDチップ10が実装してあり、LEDチップ10はワイヤ14で導体パターン23に接続してある。このLEDチップ10を囲むように透光性材料からなるドーム状の光学部材60が実装基板20の表面に取り付けてあり、LEDチップ10から放射された光の配光がこの光学部材60で制御されるようにしてある。この光学部材60の内面側にはLEDチップ10とボンディングワイヤ14を封止する透光性の封止材50が充填してある。さらにこの光学部材60を空間80を介して覆うようにドーム状の波長変換部材70が実装基板20に取り付けてある。この波長変換部材70は、本発明の被覆蛍光体Aを、蛍光体1の粒子よりも屈折率が小さな透光性媒体、例えばシリコーン樹脂やガラスなどに分散させることによって形成されるものである。
【0052】
ここで上記のように形成されるLED発光装置Bにあって、例えば、LEDチップ10として、青色光を放射するGaN系の青色LEDチップを用い、波長変換部材70に分散させる被覆蛍光体として、LEDチップ10から放射された光で励起されて緑色光を放射する緑色蛍光体粒子と、LEDチップ10から放射された光で励起されて赤色光を放射する赤色蛍光体粒子とを用いることができる。そして、LEDチップ10を発光させて青色光を放射させると、この光が波長変換部材70を透過する際に、青色光の一部が緑色蛍光体粒子で緑色に変換されると共に、青色光の他の一部が赤色蛍光体粒子で赤色に変換され、青色と緑色と赤色の光が混合されて白色光としてLED発光装置Bから出射されるものである。従ってLED発光装置Bを白色光を発光する照明装置として用いることができるものである。
【実施例】
【0053】
次に、本発明を実施例によって具体的に説明する。
【0054】
(実施例1)
イソプロパノール700質量部にイオン交換水6質量部を加えて均一に混合した液に、蛍光体(母体(Sr,Ca,Ba)SiO:Eu、平均粒子径15μm)100質量部と、粒子径80nmで厚みが10nmの薄片状シリカ粒子1.0質量部を分散させ、蛍光体分散液を調製した。また、メチルトリメトキシシラン30質量部と0.1規定−塩酸水溶液2.5mlをイソプロパノール700質量部に溶解したアルコキシシラン溶液を調製した。そして蛍光体分散液を攪拌しながらアルコキシシラン溶液を加えることによって、スラリー分散液を得た。
【0055】
そして、このスラリー分散液を、窒素雰囲気(酸素濃度3%以下)、150℃、アトマイザー回転数15000rpm、液供給速度40g/minの条件でスプレードライヤーに供給して噴霧乾燥することによって、イソプロパノールを揮散させると共に、メチルトリメトキシシランの加水分解と重縮合によって生成したポリメチルシロキサン中に薄片状シリカ粒子が分散した被膜を蛍光体の表面に被覆し、これを更に300℃で1時間加熱して乾燥することによって、防湿膜を形成した被覆蛍光体を得た。
【0056】
(実施例2)
実施例1において、薄片状シリカ粒子1.0質量部の代わりに、粒子径250nmで厚みが20nmの平板状アルミナ粒子0.4質量部を用いるようにした。その他は実施例1と同様にして、メチルトリメトキシシランの加水分解と重縮合によって生成したポリメチルシロキサン中に平板状アルミナ粒子が分散した被膜を蛍光体の表面に被覆することによって、防湿膜を形成した被覆蛍光体を得た。
【0057】
(実施例3)
イソプロパノール700質量部にイオン交換水6質量部を加えて均一に混合した液に、蛍光体(母体(Sr,Ca,Ba)SiO:Eu、平均粒子径15μm)100質量部と、粒子径250nmで厚みが20nmの平板状アルミナ粒子0.4質量部を分散させ、蛍光体分散液を調製した。また、テトラメトキシシラン30質量部と0.1規定−塩酸水溶液2.5mlをイソプロパノール700質量部に溶解したアルコキシシラン溶液を調製した。そして蛍光体分散液を攪拌しながらアルコキシシラン溶液を加えることによって、スラリー分散液を得た。
【0058】
そして、このスラリー分散液を、窒素雰囲気(酸素濃度3%以下)、150℃、アトマイザー回転数15000rpm、液供給速度40g/minの条件でスプレードライヤーに供給して噴霧乾燥することによって、イソプロパノールを揮散させると共に、テトラメトキシシランの加水分解と重縮合によって生成したポリシロキサン中に平板状アルミナ粒子が分散した被膜を蛍光体の表面に被覆し、これを更に300℃で1時間加熱して乾燥することによって、防湿膜を形成した被覆蛍光体を得た。
【0059】
(実施例4)
イソプロパノール700質量部にイオン交換水6質量部を加えて均一に混合した液に、蛍光体(母体(Sr,Ca,Ba)SiO:Eu、平均粒子径15μm)100質量部と、粒子径250nmで厚みが20nmの平板状アルミナ粒子0.4質量部を分散させ、蛍光体分散液を調製した。また、メチルトリメトキシシラン32質量部及びジルコニウムテトラ−n−ブトキシド3部質量と、0.1規定−塩酸水溶液2.5mlをイソプロパノール700部に溶解したアルコキシシラン溶液を得た。そして蛍光体分散液を攪拌しながらアルコキシシラン溶液を加えることによって、スラリー分散液を得た。
【0060】
そして、このスラリー分散液を、窒素雰囲気(酸素濃度3%以下)、150℃、アトマイザー回転数15000rpm、液供給速度40g/minの条件でスプレードライヤーに供給して噴霧乾燥することによって、イソプロパノールを揮散させると共に、メチルトリメトキシシランとジルコニウムテトラ−n−ブトキシドの加水分解と重縮合によって生成したポリシロキサン中に平板状アルミナ粒子が分散した被膜を蛍光体の表面に被覆し、これを更に300℃で1時間加熱して乾燥することによって、防湿膜を形成した被覆蛍光体を得た。
【0061】
(比較例1)
イソプロパノール700質量部にイオン交換水6質量部を加えて均一に混合した液に、蛍光体(母体(Sr,Ca,Ba)SiO:Eu、平均粒子径15μm)100質量部と、粒子径80nmの球状シリカ粒子1.0質量部を分散させ、蛍光体分散液を調製した。また、メチルトリメトキシシラン30質量部と0.1規定−塩酸水溶液2.5mlをイソプロパノール700質量部に溶解したアルコキシシラン溶液を調製した。そして蛍光体分散液を攪拌しながらアルコキシシラン溶液を加えることによって、スラリー分散液を得た。
【0062】
そして、このスラリー分散液を、窒素雰囲気(酸素濃度3%以下)、150℃、アトマイザー回転数15000rpm、液供給速度40g/minの条件でスプレードライヤーに供給して噴霧乾燥することによって、イソプロパノールを揮散させると共に、メチルトリメトキシシランの加水分解と重縮合によって生成したポリメチルシロキサン中に球状シリカ粒子が分散した被膜を蛍光体の表面に被覆し、これを更に300℃で1時間加熱して乾燥することによって、防湿膜を形成した被覆蛍光体を得た。
【0063】
(比較例2)
比較例1において、球状シリカ粒子1.0質量部の代わりに、粒子径1.5μmで厚みが180nmの平板状アルミナ粒子1.0質量部を用いるようにした。その他は比較例1と同様にして、メチルトリメトキシシランの加水分解と重縮合によって生成したポリメチルシロキサン中に平板状アルミナ粒子が分散した被膜を蛍光体の表面に被覆することによって、防湿膜を形成した被覆蛍光体を得た。
【0064】
実施例1〜4及び比較例1〜2について、防湿膜の金属酸化物マトリックス相の形成に用いた金属アルコキシドの種類と、金属酸化物マトリックス相に分散させた金属酸化物粒子の種類を、表1にまとめて示す。
【0065】
また上記の実施例1〜4及び比較例1〜2で得た被覆蛍光体をFIB加工により切断し、その断面を透過型電子顕微鏡(TEM)で観察することによって、防湿膜の厚みを測定した。
【0066】
そして実施例1〜4及び比較例1〜2で得た被覆蛍光体について、発光輝度を評価した。発光輝度の評価は、被覆処理する前の蛍光体と、被覆処理した後の被覆蛍光体のそれぞれの発光輝度を、蛍光分光光度計(日本分光株式会社製「FP−6000Series」)を用いて計測し、被覆処理後の蛍光体の発光輝度の維持率を次の式に従って求めることによって行なった。
【0067】
被覆処理後の維持率(%)
=(被覆処理後の発光輝度/被覆処理前の発光輝度)×100
また、実施例1〜4及び比較例1〜2の被覆蛍光体を用い、耐湿試験を行なった。耐湿試験は、被覆蛍光体粉末をガラス容器に投入し、85℃、相対湿度85%の環境下で500時間放置することによって行なった。
【0068】
このように耐湿試験を行なった実施例1〜4及び比較例1〜2の蛍光体の耐湿性を評価した。耐湿性の評価は、被覆蛍光体の耐湿試験の前と後の発光輝度をそれぞれ測定し、耐湿試験の前と後の変化量から耐湿試験後の発光輝度の維持率を次の式に従って求め、これを耐湿性の指標とした。
【0069】
耐湿試験後の維持率(%)
=(耐湿試験後の発光輝度/耐湿試験前の発光輝度)×100
【0070】
【表1】

【0071】
表1にみられるように、実施例1〜4のものはいずれも、耐湿試験後においても発光輝度を高く維持しており、耐湿性が向上していることが確認される。
【0072】
一方、球状の金属酸化物粒子を用いた比較例1では、耐湿試験後の発光輝度が低下し、耐湿性が劣るものであった。また平板状の金属酸化物粒子を用いるにあたって、粒子径が大きく、厚みも大きい比較例2のものにあっても、耐湿試験後の発光輝度が低下し、耐湿性が劣るものであった。
【符号の説明】
【0073】
1 蛍光体
2 防湿膜
3 金属酸化物マトリックス相
4 金属酸化物粒子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
蛍光体の表面を、金属酸化物マトリックス相に金属酸化物粒子を分散させて形成した防湿膜で被覆した被覆蛍光体であって、防湿膜中の金属酸化物粒子は、粒子径が2nm〜1μm、厚みが粒子径の1/5以下で且つ100nm以下の平板状粒子であることを特徴とする被覆蛍光体。
【請求項2】
上記金属酸化物粒子は、Si,Ti,Al,Zr,Ge,Yから一種以上選択される金属の酸化物からなるものであることを特徴とする請求項1に記載の被覆蛍光体。
【請求項3】
上記金属酸化物マトリックス相は、化学式(1)と化学式(2)の少なくとも一方で示される金属アルコキシドまたはその加水分解物あるいはこれらの縮合物から形成される金属酸化物で形成されることを特徴とする請求項1又は2に記載の被覆蛍光体。
化学式(1) M(OR
化学式(2) M(ORn−x(R
(M,MはSi,Ti,Al,Zr,Ge,Yから選択される金属。R,Rはアルキル基又は水素、Rはアルキル基。mはMの価数と、nはMの価数と同じ整数。xは1以上の整数であり、n>x。)
【請求項4】
防湿膜の厚みは10nm以上1000nm以下であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の被覆蛍光体。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに記載の被覆蛍光体を、シリコーン樹脂もしくはガラスからなる透光性媒体に分散して形成したことを特徴とする波長変換部材。
【請求項6】
請求項5に記載の波長変換部材を備えて形成したことを特徴とするLED発光装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−68792(P2011−68792A)
【公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−221606(P2009−221606)
【出願日】平成21年9月25日(2009.9.25)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】