説明

被計測物の保持装置

【課題】安全にかつ短時間で被計測物の傾斜角度を調整できる被計測物の保持装置を提供する。
【解決手段】細長な被計測物3内の内容物をX線検査により確認すべくその被計測物3を傾斜させて保持する被計測物3の保持装置6において、基台14上に、被計測物3を載置する傾斜調整トレイ15を傾動自在に設け、基台14上に傾斜調整トレイ15の傾斜角度を調整する傾斜角度調整装置16を設けたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、細長な被計測物内の内容物をX線検査により確認すべくその被計測物を傾斜させて保持する被計測物の保持装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地中に埋められた砲弾などの細長な被計測物を安全に掘り出し、被計測物をX線鑑定装置などを用いてX線撮影し、X線写真や画像から内部構造を判別する技術が研究・開発されている。
【0003】
通常、X線撮影は、被計測物を板状の計測トレイ上に水平に載せて行うが、被計測物内の内容物に液体が含まれる虞がある場合や、図6に示すように、X線撮影時に被計測物3の輪郭40と液面41とが近接して写り、水平な姿勢では液体42の有無が判然としない場合、図7に示すように、被計測物3を傾斜させて撮影を行う。液面41は水平となるため、容易に液体42を確認することができる。このように、被計測物3を傾斜させて撮影する必要が生じたときは、作業員が撮影現場まで赴き、被計測物3を載置する板状の計測トレイ(図示せず)の下に物を挟んで被測定物3を傾斜させ、或いは図8に示すように、水平面に対して5°又は10°傾斜された2種類の傾斜台43のいずれかを測定トレイ44上に載置し、傾斜台43上に被測定物3を載置し直して被測定物3を傾斜させていた。
【0004】
これによれば、確実に被測定物3を傾斜させることができ、液体42を容易に確認できる。
【0005】
【特許文献1】実開平6−69826号公報
【特許文献2】特開平11−299770号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、撮影現場はX線照射管理区域内であるため、被計測物3を傾斜させる作業を行うときには、誤ってX線照射が開始されないようにするための作業を所定の手順に従ってその都度行わなくてはならず、煩雑であった。
【0007】
また、被計測物3が危険物である可能性がある場合や、周囲を汚染する可能性がある場合、撮影現場に近づくたびに防護服を着装し、被計測物3から液体42の漏洩が無いことなどを確認しながら作業を行う必要があり、危険回避のための作業に時間を要するという課題があった。
【0008】
そこで、本発明の目的は、上記課題を解決し、安全にかつ短時間で被計測物の傾斜角度を調整できる被計測物の保持装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために本発明は、細長な被計測物内の内容物をX線検査により確認すべくその被計測物を傾斜させて保持する被計測物の保持装置において、基台上に、上記被計測物を載置する傾斜調整トレイを傾動自在に設け、上記基台上にその傾斜調整トレイの傾斜角度を調整する傾斜角度調整装置を設けたものである。
【0010】
上記傾斜調整トレイは、その一端が上記基台上に設けたトレイ固定材に当接し、他端が持ち上げ自在にされて傾動自在にされ、上記傾斜角度調整装置は、傾斜調整トレイの他端の下面と基台間に挿入されるくさびと、そのくさびをスライドさせるアクチュエータとからなるとよい。
【0011】
上記アクチュエータは、上記くさびに螺合されるボールネジと、このボールネジを回転駆動するモータとを備えて構成されるとよい。
【0012】
上記基台上には上記傾斜調整トレイの両側に位置して傾斜調整トレイの傾動をガイドするガイド板が立設されるとよい。
【0013】
上記傾斜調整トレイ上には、被計測物が傾動されたときその被計測物の移動を防止する被計測物固定材が設けられるとよい。
【0014】
上記被計測物は断面円形に形成され、上記傾斜調整トレイ上には、上記被計測物の両側を保持する保持部材が設けられるとよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、安全にかつ短時間で被計測物の傾斜角度を調整できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明の好適実施の形態を添付図面を用いて説明する。
【0017】
図3及び図4に示すように、X線鑑定装置1は、密閉可能なコンテナ2内に設置されており、被計測物3の内容物をX線撮影するX線撮影部4と、X線撮影部4に被計測物3を送るコンベア5と、コンベア5上に載置され被計測物3を保持する保持装置6と、X線撮影部4の入口側のコンベア5に隣接して設けられX線撮影する被計測物3を順次交換すべくコンベア5に被計測物3を供給する供給装置7とを備えて構成される。
【0018】
図3、図4及び図5に示すように、X線撮影部4は、コンベア5の一端側の外周をX線の漏れを十分抑えるように覆うフード8と、フード8内のコンベア5の一側に隣接して設けられコンベア5上の被計測物3に水平方向にX線を照射する水平方向X線発生管9と、コンベア5の他側に水平方向X線発生管9と対向して設けられX線を検出する水平方向X線センサー10と、フード8内のコンベア5の下方に設けられコンベア5上の被計測物3に垂直方向にX線を照射する垂直方向X線発生管11と、コンベア5の上方に垂直方向X線発生管11と対向して設けられX線を検出する垂直方向X線センサー12とを備えて構成される。水平方向X線センサー10と垂直方向X線センサー12は、それぞれコンベア5の流れ方向と直交する直線上のX線を検出するように構成されており、移動する被計測物3を透過したX線を順次検出することでX線写真を撮影できるようになっている。
【0019】
コンベア5は、正逆転可能に形成されたベルトコンベア5からなり、フード8の外側に位置される他端側に被計測物3の受け渡し部13が形成される。
【0020】
図1及び図2に示すように、保持装置6は、断面円形に形成される略円柱状の被計測物3を任意の角度に傾斜させて保持するためのものであり、コンベア5上に載置される基台14と、基台14上に傾動自在に載置され被計測物3を載置する傾斜調整トレイ15と、基台14上に設けられ傾斜調整トレイ15の傾斜角度を調整するための傾斜角度調整装置16とを備えて構成される。
【0021】
基台14は板状に形成される。基台14の一端には、傾斜調整トレイ15の一端を留めるためのトレイ固定材17が設けられる。トレイ固定材17は、基台14の幅方向に長い棒状に形成されており、傾斜調整トレイ15の一端に当接して傾斜調整トレイ15の他端を持ち上げ自在にして傾動自在にするようになっている。また、基台14上には傾斜調整トレイ15の両側に位置して傾斜調整トレイ15の傾動をガイドするガイド板18が立設される。
【0022】
傾斜調整トレイ15は、基台14より小さく形成された矩形状の板からなる。傾斜調整トレイ15上の一端側には、被計測物3が傾動されたときその被計測物3の軸方向の移動を防止するための被計測物固定材19が設けられる。被計測物固定材19は、発泡樹脂等の密度の小さい緩衝材からなり、コンベア5が反転駆動されるとき等に被計測物3にかかる力を吸収すると共に、X線撮影の邪魔とならないようになっている。また、傾斜調整トレイ15上には、被計測物3の両側を保持するための保持部材20が設けられる。保持部材20は、発泡樹脂等の密度の小さい緩衝材を板状に形成すると共にその上面にV字状の溝(図示せず)を形成してなり、被計測物3を幅方向に転落しないように支持すると共に、X線撮影の邪魔とならないようになっている。
【0023】
傾斜角度調整装置16は、基台14にリニアスライド(直動ガイド)21を介してスライド自在に設けられ傾斜調整トレイ15の他端の下面22と基台14との間に挿入されるくさび23と、くさび23をスライドさせるアクチュエータ24とを備えて構成される。くさび23は、先端をトレイ固定材17に向けて配置されており、トレイ固定材17に近接することで傾斜調整トレイ15の他端をくさび23の傾斜面25に沿って上昇させ、トレイ固定材17から離間することで傾斜調整トレイ15の他端を下降させるようになっている。アクチュエータ24は、くさび23のスライド方向に延びて配置されくさび23に螺合される左右一対のボールネジ26と、基台14に設けられボールネジ26を回転駆動する左右一対のモータ27とを備えて構成される。ボールネジ26は基台14上に設けられた軸受28に回転自在に支持される。また、モータ27は基台14上に設けられたコントローラ29にて回動駆動されるように形成されており、コントローラ29はカーテンケーブル30を介してコンテナ2外の制御盤(図示せず)に接続される。コントローラ29は、制御盤からの信号でモータ27を正逆転又は停止させる。また、基台14にはくさび23の位置を検出するセンサ(図示せず)が設けられており、くさび23の位置から傾斜調整トレイ15の傾斜角度を算出できるようになっている。あるいはボールネジ26の回転角度(回転数)から傾斜角度を算出できる。
【0024】
次に本実施の形態の作用を述べる。
【0025】
被計測物3の内容物を確認する場合、まず、供給装置7に複数の傾斜調整トレイ15をセットし、これら傾斜調整トレイ15上に被計測物3をセットすると共に、コンベア5上の基台14上に傾斜調整トレイ15をセットし、この傾斜調整トレイ15上に被計測物3をセットする。このとき、くさび23は予め傾斜調整トレイ15に当接しないように移動させておく。この後、コンテナ2を密閉し、コンテナ2外に設置された制御盤からX線鑑定装置1を作動させる。
【0026】
まず、コンベア5が作動されて被計測物3がX線撮影部4のフード8内に入る。被計測物3が所定位置に至ると、水平方向X線発生管9と垂直方向X線発生管11から照射されたX線がそれぞれ被計測物3を透過し、水平方向X線センサー10が水平方向のX線を検出し、垂直方向X線センサー12が垂直方向のX線を検出する。この後、被計測物3がコンベア5によって移動されることで、被計測物3全体が走査され、X線写真が撮影される。
【0027】
被計測物3の内容物に液体があるか否かを判別できない場合等、被計測物3を傾斜させ再度X線写真を撮影する必要がある場合、制御盤からの操作でコンベア5を逆転させて被計測物3を撮影前の位置、すなわち受け渡し部13に戻し、モータ27を正転させる。これにより、くさび23がトレイ固定材17に近接され、傾斜調整トレイ15と基台14との間にくさび23が挿入されて傾斜調整トレイ15が傾動される。また、センサはくさび23の位置を検出してコントローラ29に位置情報を送る。コントローラ29は、くさび23の位置から傾斜調整トレイ15の傾斜角度を算出し、この傾斜角度が予め制御盤からの操作で入力された傾斜角度に達したらモータ27を止めて傾斜調整トレイ15の傾動を止める。この後、再度上述と同様にコンベア5を正転させて被計測物3を送りつつ、X線撮影を行う。
【0028】
このようにして最初の被計測物3のX線撮影が終わったら、供給装置7を作動させ、撮影後の被計測物3を受け渡し部13から払い出すと共に次の被計測物3を受け渡し部13に受け渡し、上述と同様の手順でX線撮影を行う。
【0029】
このように、基台14上に、被計測物3を載置する傾斜調整トレイ15を傾動自在に設け、基台14上に傾斜調整トレイ15の傾斜角度を調整する傾斜角度調整装置16を設けたため、傾斜調整トレイ15の傾斜角度を水平から所望の角度まで遠隔操作で変更することができ、X線照射環境を人が入れる状態に変更する必要がなく、作業の安全性が増すと共に、作業時間を短縮できる。
【0030】
傾斜調整トレイ15は、一端が基台14上に設けたトレイ固定材17に当接し、他端が持ち上げ自在にされて傾動自在にされ、傾斜角度調整装置16は、傾斜調整トレイ15の他端の下面と基台14間に挿入されるくさび23と、くさび23をスライドさせるアクチュエータ24とからなるものとしたため、簡易な構造で確実に傾斜調整トレイ15の傾斜角度を調整できる。
【0031】
アクチュエータ24は、くさび23に螺合されるボールネジ26と、ボールネジ26を回転駆動するモータ27とを備えて構成されるものとしたため、簡易な構造で確実にくさび23を駆動できる。
【0032】
基台14上には傾斜調整トレイ15の両側に位置して傾斜調整トレイ15の傾動をガイドするガイド板18が立設されるものとしたため、傾斜調整トレイ15を安定して傾動させることができる。
【0033】
傾斜調整トレイ15上には、被計測物3が傾動されたとき被計測物3の移動を防止する被計測物固定材19が設けられるものとしたため、被計測物3の傾斜角度を安定して維持でき、撮影ミス等を防ぐことができ、作業時間が長くなるのを防ぐことができる。
【0034】
被計測物3は断面円形に形成され、傾斜調整トレイ15上には、被計測物3の両側を保持する保持部材20が設けられるものとしたため、被計測物3が傾斜調整トレイ15上で転がるのを防ぐことができ、撮影ミス等を防ぐことができ、作業時間が長くなるのを防ぐことができる。
【0035】
なお、X線鑑定装置1は供給装置7を備えるものとしたが、必要に応じて具備しないものとしてもよい。
【0036】
また、コンベア5は、ベルトコンベアに限るものではなく、保持装置6を載置でき、かつ、X線撮影の邪魔とならないものであればローラコンベア等の他のタイプのコンベアであってもよい。
【0037】
また、アクチュエータ24は、一対のボールネジ26と、一対のモータ27とを備えるものとしたが、これに限るものではない。ボールネジ26とモータ27は、それぞれ単数であってもよく、3つ以上の複数であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の好適実施の形態を示す被計測物の保持装置の側面図である。
【図2】図1の平面図である。
【図3】X線鑑定装置の平面図である。
【図4】図3の側面図である。
【図5】図4のA−A線断面図である。
【図6】液体を収容する被計測物を水平な姿勢で撮影したX線写真の概略説明図である。
【図7】液体を収容する被計測物を所定角度傾斜させて撮影したX線写真の概略説明図である。
【図8】被計測物を傾斜させる傾斜台の概略説明図である。
【符号の説明】
【0039】
3 被計測物
6 保持装置
14 基台
15 傾斜調整トレイ
16 傾斜角度調整装置
17 トレイ固定材
18 ガイド板
19 被計測物固定材
20 保持部材
23 くさび
24 アクチュエータ
26 ボールネジ
27 モータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
細長な被計測物内の内容物をX線検査により確認すべくその被計測物を傾斜させて保持する被計測物の保持装置において、基台上に、上記被計測物を載置する傾斜調整トレイを傾動自在に設け、上記基台上にその傾斜調整トレイの傾斜角度を調整する傾斜角度調整装置を設けたことを特徴とする被計測物の保持装置。
【請求項2】
上記傾斜調整トレイは、その一端が上記基台上に設けたトレイ固定材に当接し、他端が持ち上げ自在にされて傾動自在にされ、上記傾斜角度調整装置は、傾斜調整トレイの他端の下面と基台間に挿入されるくさびと、そのくさびをスライドさせるアクチュエータとからなる請求項1記載の被計測物の保持装置。
【請求項3】
上記アクチュエータは、上記くさびに螺合されるボールネジと、このボールネジを回転駆動するモータとを備えて構成される請求項2記載の被計測物の保持装置。
【請求項4】
上記基台上には上記傾斜調整トレイの両側に位置して傾斜調整トレイの傾動をガイドするガイド板が立設される請求項1〜3のいずれかに記載の被計測物の保持装置。
【請求項5】
上記傾斜調整トレイ上には、被計測物が傾動されたときその被計測物の移動を防止する被計測物固定材が設けられる請求項1〜4のいずれかに記載の被計測物の保持装置。
【請求項6】
上記被計測物は断面円形に形成され、上記傾斜調整トレイ上には、上記被計測物の両側を保持する保持部材が設けられる請求項1〜5のいずれかに記載の被計測物の保持装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−236858(P2009−236858A)
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−86436(P2008−86436)
【出願日】平成20年3月28日(2008.3.28)
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)
【Fターム(参考)】