説明

装着手段を具えたヒートシンク

【課題】 ヒートシンクを回路基板上に固定するための装着手段を、ヒートシンク本体に常時組み付けるようにした(サブアッシー化した)新規なヒートシンクを提供する。
【解決手段】 本発明のヒートシンク1は、スプリング部材4とヒートシンク本体2との間に、常にスプリング部材4の付勢が作用するキャッチ片6を可動状態に設け、このキャッチ片6の位置を適宜変更させることで、ヒートシンク本体2の一部、例えば組付用係止凸部25にキャッチ片6を係止させて、スプリング部材4をヒートシンク本体2に組み付けるサブアッシー状態を得るようにしたことを特徴とする。またヒートシンク本体2を回路基板Bに装着するにあたっては、キャッチ片6の位置を変更し、サブアッシー状態を解除するとともに、キャッチ片6をアンカー5(掛止段差54)に掛止させて、ヒートシンク本体2を回路基板Bに装着するようにしたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロプロセッサやインバータ等の電子部品(半導体回路素子)から発する熱を効率的に放出するために装着されるヒートシンクに関するものであり、特にこのものを回路基板上に装着するための手段を、ヒートシンク本体に常時組み付けるようにした(サブアッシー化した)新規なヒートシンクに係るものである。
【背景技術】
【0002】
回路基板に実装される半導体回路素子は、電子機器の作動に伴い熱を発するため、この熱を効率的に放出すべく、回路基板には半導体回路素子に圧着(密着)するようにヒートシンク(熱交換部品)が装着される。そして半導体回路素子の高性能化に伴い、回路基板はますます高密度化し、ヒートシンクについても、高性能なものを狭い取付面積で迅速に且つ正確に固定できる必要性が高まってきている。
従来、ヒートシンク1′を回路基板B上に装着(固定)するにあたっては、例えば図17に示すように、平面から視て略Z形状のワイヤスプリング41′を用いた装着手段3′(例えば特許文献1参照)や、図18(a)に示すように、プッシュピンPを用いた装着手段3′、あるいは図18(b)に示すように、ネジ止めによる装着手法3′(ネジにSという符号を付す)等が知られている。
【0003】
このうち、特許文献1や図17に示す、ワイヤスプリング41′を用いた装着手段3′は、ワイヤスプリング41′の両端部を引っ掛けるための略U字状の部品(アンカー5′)を予め回路基板Bに設置しておき、ワイヤスプリング41′でヒートシンク1′を押さえ込んだ後、スプリングの両端部分を撓めながらアンカー5′のU字状部分に引っ掛けて(嵌め入れて)、ヒートシンク1′を回路基板B側に押圧固定するものである。
なお、アンカー5′には、図17(a)の拡大図に示すように、ヒートシンク1′の装着面の反対側(基板裏面)から設置するものと、図17(b)に示すように、回路基板B上面(ヒートシンク1′の装着面側)から設置するものとがあり、アンカー5′を基板裏面から設置する図17(a)の場合には、ワイヤスプリング41′の引っ張り力でアンカー5′が回路基板Bから抜け出ないように鍔状の抜け防止部52′が形成されている。他方、アンカー5′を基板上面から設置する図17(b)の場合には、基板裏面に突出した部分をハンダ等で固定する必要がある。
【0004】
ここで上記ワイヤスプリング41′を用いた装着手段3′においては、以下のような問題点があった。
まず、通常アンカー5′は、ワイヤスプリング41′の両先端が引っ掛けられる構造上、ヒートシンク1′の外側(ヒートシンク1′が装着される範囲よりも外側)に、且つ対角線上に2箇所配置されるのが一般的であり、このため回路基板Bの有効面積が減少するという問題があった(回路基板Bには、ヒートシンク1′(半導体回路素子)の他にも様々な部材が装着される)。
また、このような装着手段3′では、通常、ヒートシンク1′は、ワイヤスプリング41′の押圧力のみで回路基板B上に固定されるため、回路基板Bに対し正確な位置で固定することが難しかった。すなわち、ワイヤスプリング41′を用いてヒートシンク1′を固定する際には、ワイヤスプリング41′の先端を片方ずつアンカー5′に引っ掛けて固定して行くが、一端を既にアンカー5′に引っ掛けたワイヤスプリング41′には、当然、相応の弾性力やねじれが発生し、これに抗しながらスプリングを撓めて他端側を、もう一つのアンカー5′に引っ掛けて固定するため、これに追随してヒートシンク1′も多少移動してしまうものであった(ズレの発生)。このようなズレは、ヒートシンク1′を規定の位置に押さえながら固定しようとしても、固定の際、ワイヤスプリング41′を少なからずこじってしまうため、必然的に生じてしまう現象であった。
なお、一般にヒートシンク1′と半導体回路素子との間には、熱交換効率を高めるべく熱伝導性シートが設けられるものであり、上記ズレが要因となって、この熱伝導性シートを損傷してしまうことが懸念され、また使用時に電子機器の作動に伴う振動等により、同様の問題が発生することが懸念されていた。
【0005】
また、この装着手段3′では、ワイヤスプリング41′がヒートシンク1′に組み付けられていないため(サブアッシー化されていないため)、ワイヤスプリング41′をヒートシンク1′と併せて装着工程(ヒートシンク1′を回路基板B上に装着する最終組立工程)に供給しても、供給途中でワイヤスプリング41′を紛失してしまうことがあった。また、ワイヤスプリング41′がヒートシンク1′と別々(バラバラ)になってしまうと、能率的な装着作業が行えないという問題があった。すなわち、ヒートシンク1′は多種多様のもの(仕様)が存在するため、各々の仕様に応じた押圧力(弾性力)が規定されており、そのためワイヤスプリング41′も種々のものが存在し、装着手段3′がヒートシンク1′とサブアッシー化されていないと、例えば種々のワイヤスプリング41′が混入することがあり、能率的に装着作業を行うことが極めて難しかった。
【0006】
次にプッシュピンPによる装着手段3′について説明する。まずプッシュピンPは、上記図18(a)に示すように、ピン状の軸部P1の一端に鍔部P2が形成されるとともに、他端側(差し込み端側)に差し込み後の抜け防止を図る膨出部P3と、この膨出部P3を弾性的に縮め得るスリワリP4とが形成される。また、本装着手段3′では、ヒートシンク1′と回路基板Bとに、プッシュピンP(軸部P1)を通すための挿入孔P5が形成されており、更にプッシュピンPとヒートシンク1′との間にはコイルバネP6が設けられる。
ここで、プッシュピンPの膨出部P3は、当然、挿入孔P5よりも大きく形成されるものであるが、プッシュピンPを差し込む際には、スリワリP4が形成されているために、膨出部P3が全体的に小さくなるように撓んで挿入孔P5を貫通するものである。また、回路基板Bまで貫通した後は、膨出部P3が基板裏面から突出し、当初の広がった状態に戻り、ヒートシンク1′(ベース部21′)と鍔部P2との間隔を、コイルバネP6の自然長よりも短い寸法で維持するため、コイルバネP6の弾性力でヒートシンク1′を回路基板B側に押し付けて固定するものである(装着状態)。
【0007】
そして、このようなプッシュピンPによる装着手段3′の問題点としては以下のような点が挙げられる。
まず、一旦、回路基板B上に装着したヒートシンク1′を取り外すには、プッシュピンPの膨出部P3を窄めなければならないため(膨出部P3をつまんで全体的に縮めなければならないため)、この取り外し作業が必然的に基板裏面からの操作となることが問題であった。すなわち、このような回路基板Bは、通常、筐体内に収められるため、ヒートシンク1′を取り外すには、まず回路基板Bそのものを筐体から取り外すことになり、これが大変な手間を要する作業であった。
また、一旦、装着したヒートシンク1′を取り外すには、上述したように膨出部P3をつまんで全体を縮めて挿入孔P5から押し出すことから、つまみ力が過大であったり、挿入孔P5との摩耗(摩滅)が顕著であったりした場合には、数回の取り外しで膨出部P3が損傷したり、スリワリP4による弾性力が損なわれたりして、再利用できなくなるという問題があった。
また膨出部P3にスリワリP4を形成することや、充分な装着力(押圧力)を有するコイルバネP6を設けること等からプッシュピンP(軸部P1)の径としても比較的大きくなる傾向にあり(コイルバネP6の巻線径だけを大きくすることは不可)、このため回路基板Bの有効面積が低下してしまうという問題があった。
もちろんプッシュピンPには、先端に膨出部P3とスリワリP4とを併せて形成しなければならず、また充分な装着力を有しながらも通常の使用時には簡単には抜け出ないことが要求されるため、プッシュピンPの設計や加工に比較的手間を要することも、本装着手段3′が敬遠される一要因となっていた。
【0008】
次にネジ留めによる装着手段3′について説明する。ネジ止めによる装着手段3′も、コイルバネP6を併用する上記プッシュピンPによる装着手段3′と類似しており、異なる点は、一例として図18(b)に示すように、ネジSの先端部がスリワリ付きの膨出部ではなく、オネジ状に形成される点である。もちろん、ネジSの頭部(鍔部S2)には十字穴等、ねじ込み操作を行い易くするための適宜のガイド(形状)が形成される。このようなことから、ネジ留めによる装着手段3′では、基板裏面あるいは基板上面にナットやスタンドオフ等の締結部材が固定されるものであり、ヒートシンク1′を貫通させたネジSを、この締結部材と螺合(締結)する必要がある。
そして、この装着手段3′の問題点は、回路基板Bに上記締結部材を設けなければならないことであり、この締結部材によって、回路基板Bの有効面積が減少することにある。
また、ネジSの締め過ぎを防ぐには、段付きネジ等の使用が考慮されるが、このような部材は高価であり、本装着手段3′のトータル的なコストアップを招くものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2005−150192号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、このような背景を認識してなされたものであって、ワイヤスプリング等の装着手段をヒートシンク本体にサブアッシー化し、狭い取付面積に手軽な操作で迅速に且つ確実に装着できるようにした新規なヒートシンクの開発を試みたものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
すなわち請求項1記載の装着手段を具えたヒートシンクは、回路基板上の半導体回路素子に圧着されるベース部と、このベース部から突出する放熱フィンとを具えて成るヒートシンク本体を、スプリング部材を用いて回路基板上に装着するようにしたヒートシンクにおいて、前記スプリング部材とヒートシンク本体との間には、キャッチ片が可動状態に設けられ、またこのキャッチ片には常にスプリング部材の付勢が作用するものであり、前記ヒートシンク本体を回路基板上に装着する以前の段階で、スプリング部材をヒートシンク本体に組み付けたサブアッシー状態を得るにあたっては、前記キャッチ片の位置を適宜変更させることで、ヒートシンク本体の一部にキャッチ片を係止させて、サブアッシー状態を得るようにしたことを特徴として成るものである。
【0012】
また請求項2記載の装着手段を具えたヒートシンクは、前記請求項1記載の要件に加え、前記回路基板には、ヒートシンク本体を回路基板上に装着するためのアンカーが、ヒートシンク本体の装着側に突出状態に設けられるものであり、前記ヒートシンク本体を回路基板上に装着するにあたっては、前記キャッチ片の位置を変更させることにより、サブアッシー状態を解除するとともに、アンカーにキャッチ片を掛止させて、ヒートシンク本体を回路基板上に装着するようにしたことを特徴として成るものである。
【0013】
また請求項3記載の装着手段を具えたヒートシンクは、前記請求項2記載の要件に加え、前記ヒートシンク本体を回路基板上に装着するにあたっては、アンカーをヒートシンク本体の位置決めとしても兼用することを特徴として成るものである。
【0014】
また請求項4記載の装着手段を具えたヒートシンクは、前記請求項2または3記載の要件に加え、前記回路基板に設置されるアンカーは、ヒートシンクが装着される範囲の内側に設けられることを特徴として成るものである。
【0015】
また請求項5記載の装着手段を具えたヒートシンクは、前記請求項1、2、3または4記載の要件に加え、前記キャッチ片には、サブアッシー状態でキャッチ片の移動を阻むロック機構が設けられ、これによりサブアッシー状態のキャッチ片を装着方向に移動させないようにしたことを特徴として成るものである。
【0016】
また請求項6記載の装着手段を具えたヒートシンクは、前記請求項5記載の要件に加え、前記サブアッシー状態でロックされたキャッチ片は、そのままの姿勢で前記ヒートシンク本体を回路基板上に装着する際の位置決め姿勢となり、また装着工程での初期位置にもなることを特徴として成るものである。
【0017】
また請求項7記載の装着手段を具えたヒートシンクは、前記請求項2、3、4、5または6記載の要件に加え、前記キャッチ片には、ヒートシンク本体を回路基板上に装着した装着状態でキャッチ片の移動を阻むロック機構が設けられ、これにより装着状態のキャッチ片をサブアッシー方向に移動させないようにしたことを特徴として成るものである。
【0018】
また請求項8記載の装着手段を具えたヒートシンクは、前記請求項1、2、3、4、5、6または7記載の要件に加え、前記キャッチ片は、ヒートシンク本体に可動状態に組み付けられ、常にヒートシンク本体から分離しないように形成されることを特徴として成るものである。
【発明の効果】
【0019】
これら各請求項記載の発明の構成を手段として前記課題の解決が図られる。
すなわち、請求項1記載の発明によれば、ヒートシンク本体とは本来全く別の部材であるスプリング部材を、キャッチ片を介在させることでヒートシンク本体に組み付けることができる。このため、例えばヒートシンクを回路基板上に装着するまでの間に、スプリング部材がヒートシンク本体から分離してしまうことがなく、スプリング部材の紛失を防止でき、ひいては装着作業性の向上につながる。
なお、本明細書では、キャッチ片に関し、「スプリング部材とヒートシンク本体との間にキャッチ片を設ける」という記載や、「スプリング部材とヒートシンク本体との間にキャッチ片を介在させる」という記載をしているが、ここでの「間」や「介在」とは、スプリング部材、キャッチ片、ヒートシンク本体(組付用係止凸部)において、力の掛かり方や伝達における作用上の経過としての中間という意味であり、単にサブアッシー状態等における位置関係・設置場所を示すものではない。言い換えれば、例えばサブアッシー状態では、スプリング部材によってキャッチ片が常に上向き(放熱フィンの突出方向)に付勢され、この上向きに付勢されたキャッチ片がヒートシンク本体(組付用係止凸部)に係止して当該状態を得るものであり、この力の経路上において、スプリング部材とヒートシンク本体との間にキャッチ片が設けられることを意味している。
【0020】
また請求項2記載の発明によれば、キャッチ片を適用することでスプリング部材を間接的にアンカーに引っ掛けてヒートシンクを回路基板上に装着するため、回路基板の有効面積を縮小させてしまうことなく、且つ安価にサブアッシー状態・装着状態の切り替えが行える。すなわち、プッシュピンによる装着手段ではプッシュピンにコイルバネを外嵌めすることや軸部先端部にスリワリ(すり割り)と膨出部とを設けること等から、プッシュピンの軸部も比較的大きな径となり、回路基板の有効面積を縮小させてしまうことがある。しかし、本発明では小さな径のアンカーで済み、有効面積を減らしてしまうことがない。また、ネジによる装着手段では、段付きネジ等を用いると極めて高価になるが、本発明では間接的ではあるがスプリング部材をアンカーに掛止させる装着手段であるため、高価な部材類がなく、安価に製造できる。
【0021】
また請求項3記載の発明によれば、まず位置決めが存在するため、ヒートシンク本体を回路基板上に装着する際、ヒートシンク本体を基板の正確な位置に保持することができる。このため装着時や使用時にも、ヒートシンク本体が規定の位置からずれてしまうことがなく、半導体回路素子や熱伝導性シートを損傷してしまう心配がない。
また、スプリング部材を間接的に引っ掛けるアンカーを、位置決めとして兼用するため、基板面積を有効に活用することができ、これと同時に部材点数の削減化(構成部材の減少化)、ヒートシンク全体の軽量化及び低コスト化という効果を奏する。
【0022】
また請求項4記載の発明によれば、ヒートシンクが装着される範囲の内側にアンカーが設けられるため、回路基板面をより一層有効に活用することができる。また、トータル的には、ヒートシンクの装着が、狭い面積で迅速且つ確実に行える。
【0023】
また請求項5記載の発明によれば、サブアッシー状態を維持するロック機構が設けられるため、このロック状態でヒートシンクを装着工程まで供給することができる。すなわち、供給の際の運搬中に、サブアッシー状態のヒートシンクに、ある程度の振動等が加わっても、ロック機構によって、サブアッシー状態が維持される。このためスプリング部材がヒートシンクから外れてしまうことがなく、装着工程の作業性をより向上させることができる。
【0024】
また請求項6記載の発明によれば、サブアッシー状態(ロック)が、そのまま位置決め姿勢になり、なお且つ装着工程での初期位置にもなるため、サブアッシー状態からスムーズに装着工程に移行でき、より一層、装着作業の作業性が向上する。
【0025】
また請求項7記載の発明によれば、装着状態を維持するロック機構が設けられるため、電子機器の作動中、このロック状態でヒートシンクを継続して維持することができる。すなわち、電子機器の作動中には、作動に伴う振動等が想定されるが、ある程度の振動等が加わっても、ロック機構によって、装着状態を強固に維持することができる。
【0026】
また請求項8記載の発明によれば、スプリング部材をヒートシンク本体に組み付けるキャッチ片を、ヒートシンク本体に可動状態に組み付け、分離しないようにするため、スプリング部材のヒートシンク本体からの分離を解消することができる。また、キャッチ片がヒートシンク本体に組み付いているため、サブアッシー化を図る場合や装着工程時の作業が行い易く、トータルでの作業性向上が達成される。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の装着手段を具えたヒートシンク(実施例1)を示す分解斜視図である。
【図2】同上実施例1のヒートシンクであって、サブアッシー状態を部分的に示す斜視図(a)と、装着状態を部分的に示す斜視図(b)である。
【図3】サブアッシー化したヒートシンク(実施例1)を回路基板に装着するにあたり、このヒートシンクを位置決めする様子を示す説明図(a)と、位置決め後の様子を示す説明図(b)である。
【図4】サブアッシー化後、回路基板上で位置決めまで行ったヒートシンク(実施例1)について、回路基板上での位置決め状態(装着開始状態)から装着完了状態までを段階的に示す説明図である。
【図5】本発明の装着手段を具えたヒートシンク(実施例2)を、サブアッシー化しただけの状態(回路基板へは未装着の状態)で示す説明図である。
【図6】同上実施例2のヒートシンクの装着状態を示す説明図である。
【図7】サブアッシー化後、回路基板上で位置決めまで行ったヒートシンク(実施例2)について、回路基板上での位置決め状態(装着開始状態)を示す説明図(a)、並びに装着完了状態を示す説明図(b)である。
【図8】本発明の装着手段を具えたヒートシンク(実施例3)を部分的に示す分解斜視図(a)、並びにサブアッシー状態(回路基板へは未装着の状態)を示す斜視図(b)と説明図(c)である。
【図9】サブアッシー化したヒートシンク(実施例3)を回路基板上に載置し、位置決めまで行った状態を示す説明図(a)、並びに装着完了状態を示す説明図(b)である。
【図10】サブアッシー化後、回路基板上で位置決めまで行ったヒートシンク(実施例3)について、回路基板上での位置決め状態(装着開始状態)から装着完了状態までを段階的に示す説明図である。
【図11】ヒートシンク本体に形成される位置決めを溝状に形成した他の実施例を示す斜視図である。
【図12】板状のアンカーを適用した他の実施例を示す斜視図である。
【図13】スプリング部材としてコイルスプリングを用いた他の実施例を示す断面図(a)、並びに斜視図(b)である。
【図14】装着状態をロックするにあたり突起ではなくテーパによる高低差を利用した他の実施例を示す説明図である。
【図15】アンカーをヒートシンクよりも外側に設けた他の実施例を示す説明図である。
【図16】ヒートシンク本体を回路基板上に装着する際、スプリング部材による装着力(押圧力)を調整するためにヒートシンクに高さ調整用の支柱を設けるようにした他の実施例を示す説明図である。
【図17】ワイヤスプリングを用いた従来の装着手段を示す斜視図(a)と、この装着手段で適用され得るアンカーであって、回路基板の上面から取り付けるタイプのものを示す説明図(b)である。
【図18】プッシュピンを用いた従来の装着手段を示す説明図(a)と、ネジ留めによる従来の装着手段に用いられるネジを拡大して示す斜視図(b)である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明を実施するための形態は、以下の実施例に述べるものをその一つとするとともに、更にその技術思想内において改良し得る種々の手法を含むものである。
【0029】
本発明の装着手段を具えたヒートシンク1は、回路基板Bに対して取り外しできるように装着されるものであり、まずヒートシンク1が装着される回路基板Bから説明する。
回路基板Bは、例えばGPUユニット、チップセットユニット、CPUユニット等の半導体回路素子Cが実装(搭載)されるものであり、この半導体回路素子Cが、電子機器の動作に伴い発熱するため、ヒートシンク1を半導体回路素子Cに圧着状態に装着することにより、半導体回路素子Cからの能率的な放熱を図っている。
そして、本発明は、ヒートシンク1を回路基板B上に装着するためのスプリング部材4を、予めヒートシンクに組み付けておき(サブアッシー化しておき)、ヒートシンク1を装着工程(最終の組立工程)に供給する際、スプリング部材4がヒートシンク1から分離・脱落しないようにしたものである。
【0030】
なお、本明細書では、ヒートシンク1を回路基板B上に取り付ける(固定する)ことを「装着」と称し、取り付けた状態を「装着状態」と称するものである。他方、スプリング部材4をヒートシンク1に取り付ける(伴わせる)ことを「組み付け」もしくは「サブアッシー(化)」と称し、組み付けた状態を「サブアッシー状態」と称し、区別するものである。
また、スプリング部材4をヒートシンク1に組み付ける(サブアッシー化を図る)にあっては、後述するキャッチ片6を介在させる(設ける)ものであり、このキャッチ片6の形態やサブアッシー化の態様によって、ヒートシンク1を実施例1〜3に分けて説明する。また、このため各実施例のヒートシンク1を区別して示す場合には、実施例1〜3の各ヒートシンク1にそれぞれ「1A」、「1B」、「1C」の符号を付すものである。
【実施例1】
【0031】
本発明の装着手段を具えたヒートシンク1(1A)は、一例として図1に示すように、主に放熱作用を担うヒートシンク本体2と、ヒートシンク本体2を回路基板B上に装着するための装着手段3とを具えて成るものである。
ヒートシンク本体2は、アルミニウム等の熱伝導性・放熱性に優れた素材によって形成され、板状のベース部21から放熱フィン22が多数突出形成された構造を基本とする。
またベース部21において、放熱フィン22が形成されていない方の面は、半導体回路素子Cと圧着(密着)される接触面となり、ここには熱伝導を促進させる熱伝導性シートが設けられるのが一般的である。
また、ヒートシンク1は、このものを回路基板B上に装着する際の位置決め23を具えるものであり、本実施例では回路基板B(裏面)から突出状態で固定されたアンカー5を、ベース部21に貫通させることでヒートシンク1の位置決めを図っている。従って、本実施例の位置決め23としては、アンカー5と、ベース部21に開孔された貫通用の孔との組み合わせとなる。
【0032】
次に装着手段3について説明する。装着手段3は、上述したように、ヒートシンク本体2を回路基板B上に装着するための手段であり、スプリング部材4と、アンカー5と、キャッチ片6とを具えて成る。もちろん、ここでは上述したように装着の際には、まず位置決め23によってヒートシンク本体2を規定の位置からずれないように保持した上で装着するため、このような位置決め23や装着に関わる他の部材(後述するポスト24等)も装着手段3に含まれるものである。以下、スプリング部材4、アンカー5、キャッチ片6について説明する。
【0033】
スプリング部材4は、主としてヒートシンク1を回路基板B側に押し付けて装着を図るものであり、ここでは一例として図1に示すように、平面から視てほぼZ形状を成すワイヤスプリング41が適用される。すなわち、このワイヤスプリング41は、いわゆるトーションバータイプのバネであり、真ん中部分の中央トーション部42の両側にアーム部43を具えて成り、両方のアーム部43が捻じられた際の反発力を利用して、ヒートシンク1を回路基板Bに押し付け、装着するものである。言い換えればワイヤスプリング41は、キャッチ片6を常に上向き(放熱フィン22の突出方向)に付勢するように作用するものである。
ここで、本実施例では、中央トーション部42がほぼ真っ直ぐな直棒状に形成され、ここで全体的にヒートシンク1(ベース部21)を押さえる(中央トーション部42がベース部21に全体的に接触する)ように形成されるが、中央トーション部42は必ずしもこれに限定されるものではなく、例えば略V字状に形成され、中央トーション部42の真ん中のほぼ一点でベース部21を押さえることも可能である(いわゆる点接触状態)。
また両アーム部43の先端側は、中央トーション部42とほぼ平行になるように折り返されており(ここを折り返し部44とする)、アーム部43と折り返し部44とを利用して、キャッチ片6が可動状態に保持される(接続される)。
なお、スプリング部材4は、上述したように本来、ヒートシンク1を回路基板B上に装着するための部材であるが、本発明ではスプリング部材4を利用してサブアッシー化も図るものである。
【0034】
次に、アンカー5について説明する。アンカー5は、上述したように回路基板Bにおいて、ヒートシンク1の装着面側に突出状態に設置されるものであり、ワイヤスプリング41に保持されたキャッチ片6を、アンカー5に掛止させることで、ヒートシンク1の装着を図るものである。そのため、アンカー5は、一例として図1に示すように、ピン状(軸状)の本体部51を主要部とし、このものの一端(末端部)に鍔状の抜け防止部52を具え、ここで回路基板Bに設置(圧入)したアンカー5の抜け止めを図るものである。また、アンカー5の先端寄りの位置には、本体部51よりも幾分細い小径部53が形成され、この小径部53と先端部とによってキャッチ片6を引っ掛ける掛止段差54が形成される。また、アンカー5は、回路基板Bへの差し込みや、キャッチ片6の受け入れが行い易いように、先端側が幾分窄り状(錐状)に形成されることが好ましく、特にこの部位を受入先端部55とする。
また図中符号56は、本体部51の末端付近に形成されたローレット部であり、これは回路基板Bに圧入したアンカー5の固定力を高めるための加工であるが、ローレットに代えてセレーションとすることも可能である(この場合、アンカー5が圧入される回路基板Bにもセレーションに対応した孔加工を施すことになる)。もちろんアンカー5を回路基板Bに強固に設置することができれば、このようなローレット加工等は特に行わず、接着剤やハンダ付け等で接合するだけでも構わない。因みに、図中符号Hは、アンカー5を固定(圧入)するために回路基板Bに開孔された取付孔である。
【0035】
また、本実施例では、上述したように、本来はヒートシンク1を装着するためのアンカー5を、ヒートシンク1の位置決め23として兼用するものである。そのためヒートシンク本体2(ベース部21)には、アンカー5の本体部51が貫通する位置決め用の孔(ここでは円状)が開口される。つまり、ヒートシンク1を回路基板Bに装着する際には、まず回路基板B上に突出したアンカー5によりヒートシンク本体2を位置決めした上で(規定の位置に保持した状態で)行うため、ヒートシンク1の装着時に、ワイヤスプリング41のアーム部43をこじってしまっても、ヒートシンク1の位置がずれないものである。
そして、ヒートシンク本体2に位置決め23(孔)を形成することから、この部位の放熱フィン22は、位置決め23と干渉しないように、例えばフィン幅がやや短く形成され、本実施例では、該部材によりキャッチ片6の上下方向の移動(可動)を規制するものである(これをポスト24とする)。
このポスト24には、サブアッシー状態(回路基板Bには未装着の状態)のキャッチ片6と係止する組付用係止凸部25が形成されており、このものはポスト24の上端部分を一部外側に突出させて成るものであり、組付用係止凸部25の下端部(段差)で、上方(放熱フィン22の突出方向)に付勢されるキャッチ片6を押さえ、サブアッシー状態を得るものである。すなわち、ワイヤスプリング41にキャッチ片6を保持させつつ、なお且つキャッチ片6をポスト24の組付用係止凸部25に係止させることで、ヒートシンク本体2とは全く別に形成されたワイヤスプリング41をヒートシンク本体2に組み付けるようにしたものである。
【0036】
次にキャッチ片6について説明する。キャッチ片6は、ワイヤスプリング41に可動状態に保持(接続)されるものであり、これはサブアッシー状態で組付用係止凸部25に係止していたキャッチ片6の位置・姿勢を変更させることで、この係止を解除し、更にはキャッチ片6をアンカー5の掛止段差54に掛止させて、ヒートシンク1を装着状態とするためである。もちろんキャッチ片6がサブアッシー状態、つまり組付用係止凸部25に係止した状態では、アンカー5との掛止は解除されるものである。
【0037】
ここで本明細書における「係止」、「掛止」の用語の使い分けについて説明する。本明細書でいう「係止」とは、キャッチ片6が組付用係止凸部25(ヒートシンク本体2)に引っ掛かった状態(サブアッシー状態)を指すものであり、「掛止」は、キャッチ片6がアンカー5に引っ掛かった状態(装着状態)を指すものである。これは、いずれもキャッチ片6の上向きの付勢が規制(阻止)される状態であり、キャッチ片6を引っ掛けて結合を図るという点では、明確な区別(厳格な区別)はなく、本明細書では、理解し易いようにサブアッシー状態か装着状態かによって、端的に言えばキャッチ片6が係合する対象で区別したものである。ただ、一般的には、ヒートシンク1が回路基板Bに固定される装着状態では、安易に(不本意に)この状態が解除されることは、ほぼ完全に回避しなければならないため、互いにかける機構(形状)を積極的に持ち合って、強い引っ掛かりを発揮する装着状態を「掛止」としたものである。
【0038】
またキャッチ片6は、一例として図1に示すように、板状の本体部61にアンカ−受入用の開口部62が形成されて成るものであり、本体部61には、ワイヤスプリング41に可動状態に保持(接続)される被保持部63が形成される。具体的には、本体部61の一部が、フラット状の本体部61とほぼ平行になるように湾曲形成され(ここが被被保持部63)、本体部61と被保持部63とでワイヤスプリング41(主にアーム部43)を挟持状態に受け入れて、キャッチ片6を可動状態に保持するものである。より詳細には、本体部61によってワイヤスプリング41のアーム部43や折り返し部44を上方から支持しながら、被保持部63によってアーム部43を下方からも支持して、キャッチ片6のスライド移動を可能とするものである。
【0039】
開口部62は、ポスト24の組付用係止凸部25やアンカー5の通過を許容する貫通用開口62aと、組付用係止凸部25の通過を阻む係止用開口62bと、アンカー5の本体部51の通過を阻む掛止用開口62cとを具えて成り、貫通用開口62aの両側に係止用開口62bと掛止用開口62cとが貫通用開口62aに連続して形成される。
開口部62について更に詳細に説明すると、貫通用開口62aは、一例として組付用係止凸部25やアンカー5の本体部51よりも大きな矩形状に開口され、これらの通過を許容するように形成される。また、係止用開口62bは、組付用係止凸部25が形成されていないポスト24部分のみを通過させ得る長方形状に形成されており、該開口端縁が組付用係止凸部25に係止し(図2(a)参照)、組付用係止凸部25の通過を阻むように形成される(サブアッシー状態)。また、掛止用開口62cは、アンカー5の小径部53よりは大きいが、本体部51よりも小さい長円状、つまり小径部53のみを嵌め込み得る大きさに形成されており、このため該開口端縁が掛止段差54に掛止し(図2(b)参照)、本体部51の通過を阻むものである(装着状態)。
【0040】
また、キャッチ片6には貫通用開口62aの両側(開口端縁の両側)に突起が形成され、貫通用開口62aと係止用開口62bとの境界部分に形成される突起は、組付用係止凸部25に係止したキャッチ片6が放熱フィン22の幅方向(横移動)にスライドすることを阻止するものであり(図2(a)参照)、言わば、サブアッシー状態を維持するためのロック機構である(これをサブアッシー状態ロック64とする)。一方、貫通用開口62aと掛止用開口62cとの境界部分に形成される突起は、アンカー5の掛止段差54に掛止したキャッチ片6のスライド(横移動)を阻止する作用を担うものであり(図2(b)参照)、言わば、装着状態を維持するためのロック突起である(これを装着状態ロック65とする)。
【0041】
本発明の装着手段を具えたヒートシンク1(実施例1)は、以上のような基本構造を有するものであり、以下、このヒートシンク1の作動態様について説明する。なお説明にあたっては、ヒートシンク本体2にワイヤスプリング41を組み付けただけのサブアッシー状態(回路基板Bには未装着)と、これを装着する過程、つまり回路基板B上で位置決めしたヒートシンク1を実際に装着するまでの状況とに分けて説明する。
(1)サブアッシー状態
サブアッシー化を図るには、キャッチ片6をワイヤスプリング41のアーム部43に保持させながら(接続しながら)、ワイヤスプリング41の弾性に抗するようにキャッチ片6を押さえつつ、図1の拡大平面図に示すように、貫通用開口62aと係止用開口62bとを利用してポスト24に嵌め入れる。この際、平面から視て貫通用開口62a内に組付用係止凸部25が収まるように、キャッチ片6を嵌め込むものである。
【0042】
また、この嵌め込みによって、貫通用開口62a(厳密にはサブアッシー状態ロック64)が、組付用係止凸部25よりも低い位置に至れば、キャッチ片6をスライド(横方向に移動)させることができるため、サブアッシー状態ロック64(突起)が組付用係止凸部25の下をくぐり抜けるようにキャッチ片6を移動(スライド)させ、キャッチ片6の下方への押さえ付けを解除する。この押さえ付け解除によって、キャッチ片6は、ワイヤスプリング41により上向きに付勢されるが、図2(a)に示すように、係止用開口62bの端縁が組付用係止凸部25に係止し、キャッチ片6の上向きへの付勢が阻まれる。またサブアッシー状態では、キャッチ片6がこのような状態で固定されるため、結果的にキャッチ片6が、ワイヤスプリング41の両端部を押さえ付けるように作用し、ワイヤスプリング41がヒートシンク本体2に組み付けられるものである。
なお、ポスト24に嵌め込んだキャッチ片6を、サブアッシー化するためにスライド(横移動)させるこのような移動(図2(a)では左下方向への移動となる)を、ここでは「サブアッシー方向への移動(スライド)」と定義する。
【0043】
また、このサブアッシー状態では、サブアッシー状態ロック64(突起)によって、係止状態を解除する方向へのキャッチ片6のスライド、つまり貫通用開口62aを組付用係止凸部25に合致させるようなスライドが阻止されるため、サブアッシー状態は維持される。すなわち、ワイヤスプリング41は、キャッチ片6によってヒートシンク本体2とサブアッシー化されて、装着工程(最終の組立工程)に供給されるが、供給途中に搬送等に伴う振動が加わって、例えばキャッチ片6が係止状態を解除する方向にスライドしようとしても、サブアッシー状態ロック64(突起)が組付用係止凸部25に当接するため、このようなスライドが阻止されるものである。また、このためサブアッシー化されたキャッチ片6やワイヤスプリング41が、供給中にヒートシンク1から脱落してしまうことがないものである。
【0044】
(2)位置決め
更に、本実施例では、一例として図3(a)に示すように、このサブアッシー状態(ロック状態)で、キャッチ片6の貫通用開口62aが、ヒートシンク本体2の位置決め23(孔)と合致するように形成されている。これは、サブアッシー化したヒートシンク1を回路基板B上で定位置に位置決めすれば、そのまま貫通用開口62aにアンカー5が臨み、即、装着工程に移行できるように考慮したためである。
すなわちサブアッシー状態(ロック状態)のヒートシンク1を、回路基板Bに装着するには、まず図3(a)に示すように、ヒートシンク本体2の位置決め23(孔)を、回路基板Bに固定されたアンカー5に嵌め込むことにより、ヒートシンク本体2の位置決めを行う。本実施例では、この位置決め(差し込み)操作によって、図3(b)に示すように、位置決め23(孔)を貫通したアンカー5(受入先端部55)が、開口部62の貫通用開口62aに臨むように位置するものである。もちろん、この位置決め完了状態は、上述したようにキャッチ片6を下方に押し込めば、アンカー5が相対的に上昇し、そのまま貫通用開口62aを通過する状態である。つまり、本実施例では、上記サブアッシー状態(ロック状態)が、装着工程での初期位置にもなるものである。
【0045】
このように本実施例では、サブアッシー状態でロックされたキャッチ片6が、この姿勢のままで位置決め姿勢となり、且つまた装着工程での初期位置にもなることが極めて画期的である。言い換えれば、サブアッシー状態ロック64を設けずに、ただキャッチ片6を用いてワイヤスプリング41をヒートシンク本体2にサブアッシー化することは可能であり相応の効果が挙げられるが、サブアッシー状態でキャッチ片6がフリーに移動してしまうと、供給中にキャッチ片6の位置が不揃いとなり(バラバラになり)、ヒートシンク1を回路基板Bに装着する際には、まずキャッチ片6の初期位置を一つずつ設定しなければならないことが考えられる。しかし、本実施例では、このようなキャッチ片6の初期位置設定がサブアッシー化と同時に行え(つまり不要となり)、より一層能率的にヒートシンク1の装着作業が行えるものである。
以下、ヒートシンク1を回路基板Bに装着する態様について説明する。
【0046】
(3)装着態様(位置決め以降)
ヒートシンク1を回路基板B上で位置決めした後は、図4(a)に示すようにキャッチ片6を徐々に押し下げて行く(押し込んで行く)ものであり、このような操作によって、キャッチ片6が組付用係止凸部25の下端から離反すると、これによる係止(当接)が解除される。
また、このような押し込みを更に続けて、図4(b)に示すように、キャッチ片6のサブアッシー状態ロック64(突起)が組付用係止凸部25の下端よりも低い位置に至ると、サブアッシー状態のロックも完全に解除され、キャッチ片6を自由にスライドさせ得る状態となる。もちろん、このようなキャッチ片6の下方への押し込みに伴い、アンカー5の掛止段差54が相対的に上昇し、キャッチ片6の貫通用開口62aよりも高い位置に至るものである。
【0047】
その後、キャッチ片6の押し込み力・押し込み作用を維持しつつ、図4(c)に示すようにキャッチ片6をスライドさせ(図4では右側への移動)、キャッチ片6の掛止用開口62cをアンカー5の小径部53に嵌め込むようにする。この状態は、キャッチ片6の掛止用開口62cが、アンカー5の掛止段差54の下方に位置した状態でもある。ここで、キャッチ片6をこのような方向(装着状態を形成する方向)に移動させることを、「装着方向への移動(スライド)」と定義する。
【0048】
その後、掛止用開口62cに小径部53を嵌め入れた状態で、キャッチ片6に加えていた下方への押し込み(押し下げ)を解除すると、図4(d)や図2(b)に示すように、キャッチ片6がワイヤスプリング41の付勢により上昇し、掛止用開口62cの開口端縁がアンカー5の掛止段差54に下方から掛止する(密着する)。なお、図4(d)でキャッチ片6の上昇方向の矢印を破線で描いたのは、この作動は、上述したように人為的な操作を要することなく、ワイヤスプリング41の付勢によって行われるためである。
また、この装着状態では、図2(b)や図4(d)に示すように、装着状態ロック65(突起)が、アンカー5の掛止段差54(受入先端部55)の近傍に位置した状態となり、キャッチ片6のサブアッシー方向への移動を阻止するものである。すなわち、電子機器の作動に伴う振動等がヒートシンク1に加わって、例えばキャッチ片6がサブアッシー方向にスライドしようとしても、装着状態ロック65(突起)がアンカー5の掛止段差54(受入先端部55)に当接するため、このようなスライドが阻止されるものである。また、このため回路基板Bへの装着が完了したヒートシンク1は、回路基板Bから脱落することがなく、キャッチ片6やワイヤスプリング41もヒートシンク1から分離することがないものである。
なお、一旦、装着したヒートシンク1を、回路基板Bから取り外す際には、図4に示した操作を逆の順序で行い、ヒートシンク1を図4(a)に示したサブアッシー状態で取り外すものである。
【実施例2】
【0049】
次に、実施例2のヒートシンク1(1B)について説明する。実施例2のヒートシンク1Bは、図5〜図7に示すものであり、基本的に実施例1の思想を踏襲する。すなわち、実施例2においても、キャッチ片6を介在させてワイヤスプリング41をヒートシンク本体2にサブアッシー化する思想や、サブアッシー状態(ロック状態)でヒートシンク1の位置決めを行い、またこの状態を装着工程での初期位置とする思想等が実施例1と共通する。このため構成部材の全体的な説明は省略し、以下、主に実施例1との相違点について説明する。
【0050】
実施例2では、実施例1に対し、まずキャッチ片6の可動(移動)を上下方向に規制するポスト24が異なる。具体的には、実施例2のポスト24は、例えば図5に示すように、略四角柱状に形成されて成り、このポスト24に、ワイヤスプリング41に保持(接続)させたキャッチ片6(貫通用開口62a)を上方から嵌め込んだ後、ポスト上端部を適宜の高さ位置で(必ずしも放熱フィン22と同じ高さである必要はない)、つぶす・延ばす・拡げる等して、キャッチ片6がポスト24から外れないようにしている(このためポスト上端部に抜け防止として形成された膨出部を抜け止め部26とする)。すなわち、キャッチ片6はワイヤスプリング41によって常に上向き(放熱フィン22の突出方向)に付勢されるが、抜け止め部26によってこれが阻まれるものである。もちろん、これは図7(a)に示すサブアッシー状態でのことであり、図7(b)に示す装着状態では、キャッチ片6は抜け止め部26よりも低い位置でアンカー5(掛止段差54)に引っ掛かり、ここでキャッチ片6の上方への付勢が食い止められるものである。
因みに、実施例2では、一旦、キャッチ片6がポスト24に嵌め込まれ、ポスト24の上端に抜け止め部26が形成されると、ワイヤスプリング41とキャッチ片6は、常にヒートシンク本体2から分離しないものである。
【0051】
また実施例2では、キャッチ片6に、放熱フィン22と放熱フィン22との間に入り込む部位が形成され、これはキャッチ片6のスライド方向(可動姿勢)を安定化させる部位であり、このため当該部位をスライド安定部66とする。これによりキャッチ片6は、サブアッシー方向や装着方向にスライド(移動)する際、そのブレが抑制されるものである。
また実施例2では、ワイヤスプリング41に保持(接続)されるキャッチ片6の被保持部63において、実施例1よりも被保持長が長く形成され、且つワイヤスプリング41(アーム部43)を上方から巻き込むように形成される。これによりキャッチ片6のサブアッシー方向や装着方向へのスライドは、放熱フィン22に規制されたスライドというよりは、むしろワイヤスプリング41のアーム部43に沿ったスライドとなる。
また、実施例2では、キャッチ片6(本体部61)の端縁に、補強等を目的とした折り返し61aが形成されている。
【0052】
次に、実施例2のヒートシンク1Bの作動態様について説明する。図5は、ヒートシンク1Bをサブアッシー状態で示した図であり、回路基板Bにはまだヒートシンク1Bを装着していない状態(つまりサブアッシー化しただけの状態)であるが、この状態は、上述したように装着工程での初期位置にもなる状態である。なお、図5でアンカー5を想像線(二点鎖線)で描いたのは、回路基板Bに未装着状態であること(あり得ること)を意図したためである。
そして、この図5に示すサブアッシー状態では、平面から視て、ポスト24が係止用開口62bに位置しており、またキャッチ片6の貫通用開口62aが、ヒートシンク本体2の位置決め23(孔)つまりアンカー5と合致し、アンカー5の貫通が許容される状態となっている(図7(a)参照)。
また本実施例2でも、装着工程に移行するまでは、サブアッシー状態が維持ロックされるものであり、具体的には図7(a)に示すように、ポスト24の上端に形成された抜け止め部26が、キャッチ片6のサブアッシー状態ロック64(突起)と係止(当接)するように形成され、キャッチ片6の装着方向への移動(スライド)が阻止される。
【0053】
次に、サブアッシー化したヒートシンク1Bを回路基板Bに装着する態様について説明するが、この装着態様も基本的には実施例1と同様である。
サブアッシー状態のヒートシンク1Bを回路基板Bに装着するには、まず図7(a)に示すように、ヒートシンク本体2の位置決め23(孔)をアンカー5に嵌め込んで、ヒートシンク1Bの位置決めを行うものである。位置決め終了後は、位置決め23(孔)を貫通したアンカー5の受入先端部55が、開口部62の貫通用開口62aに臨むように位置するものである。もちろん、この状態は、実施例1と同様に、キャッチ片6を下方に押し込んだ場合(押し下げた場合)に、アンカー5が貫通用開口62aをそのまま貫通する位置となっている。
【0054】
その後、図7(a)の二点鎖線に示すようにキャッチ片6を押し下げて行く。この際、キャッチ片6のサブアッシー状態ロック64(突起)が抜け止め部26から徐々に離反し、抜け止め部26よりも低い位置になった状態で、サブアッシー状態のロックが解除される。また、装着状態ロック65(突起)がアンカー5の掛止段差54よりも低くなった状態で、キャッチ片6を装着方向へとスライド(移動)させ得る状態となる。言い換えれば、このようなキャッチ片6の下方への押し込みに伴い、アンカー5の掛止段差54は相対的に上昇することになり、キャッチ片6の貫通用開口62aよりも高い位置に至るものである。
【0055】
その後、図7(b)に示すように、キャッチ片6の押し下げを維持しながら、キャッチ片6を装着方向へとスライド(移動)させ、キャッチ片6の掛止用開口62cをアンカー5の小径部53に嵌め込むように操作する。この操作により、キャッチ片6の掛止用開口62cは、アンカー5の掛止段差54の下方に位置し、この状態でキャッチ片6に加えていた押し込み(押し下げ)を解除すると、キャッチ片6がワイヤスプリング41の付勢により上昇し、図7(b)の実線で示すように、掛止用開口62cの開口端縁がアンカー5の掛止段差54に下方から掛止する(密着する)。
また、この装着状態では、図6に示すように、装着状態ロック65(突起)が、アンカー5の掛止段差54(受入先端部55)の近傍に位置し、キャッチ片6のサブアッシー方向への移動を阻止するものである。すなわち、電子機器の作動に伴う振動等が加わって、例えばキャッチ片6がサブアッシー方向にスライドしようとしても、装着状態ロック65(突起)がアンカー5の掛止段差54(受入先端部55)に当接するため、このようなスライドが阻止されるものである。もちろん、本実施例では、この装着状態では抜け止め部26が、サブアッシー状態ロック64(突起)と装着状態ロック65(突起)との間に位置するため、サブアッシー方向への移動は、サブアッシー状態ロック64(突起)が抜け止め部26に当接することでも阻止される。
【実施例3】
【0056】
次に、実施例3のヒートシンク1(1C)について説明する。実施例3のヒートシンク1Cは、図8〜図10に示すものであり、基本的に実施例1の思想を踏襲する。すなわち、実施例3においても、キャッチ片6を介在させてワイヤスプリング41をヒートシンク本体2にサブアッシー化する思想や、サブアッシー状態(ロック状態)でヒートシンク1の位置決めを行い、またこの状態を装着工程での初期位置とする思想等が実施例1と共通する。このため構成部材の全体的な説明は省略し、以下、主に実施例1との相違点について説明する。
【0057】
実施例3は、実施例1に対し、ポスト24の態様、キャッチ片6の形状、サブアッシー状態及び装着状態の引っ掛かり状況等が相違する。具体的には、実施例3のポスト24は、例えば図8に示すように(この状態はサブアッシー状態)、ほぼ四角柱状に形成されるが、ポスト24の根元部分に、キャッチ片6の開口部62の端縁が嵌め込まれる係止溝27が形成される。また、ヒートシンク本体2のベース部21にはポスト24の根元近くに(係止溝27が形成される側に)、キャッチ片6の移動を阻む移動阻止突起28が形成される。
また、キャッチ片6は、ワイヤスプリング41に保持(接続)される被保持部63が、本体部61よりも幾分高い位置に形成され(つまり本体部61と被保持部63とが段違い状に形成され)、被保持部63の下側からワイヤスプリング41のアーム部43が引っ掛けられる。
【0058】
このようなことから、キャッチ片6は、係止溝27に嵌まる開口部62端縁を支点として被保持部63が常に上方に付勢される一方、先端部67が常に下方のベース部21に食い込むように付勢される。すなわち、キャッチ片6は、ワイヤスプリング41の弾性により、常に梃子の姿勢をとるように付勢されるものであり、被支持部63が梃子の力点に相当し、先端部67が梃子の作用点に相当するものである。このため、キャッチ片6の先端部67は、図8に示すように、本体部61から下側に向けて爪状に折り返すことがベース部21への食い込み力を高め、移動阻止突起28に強く係止・掛止させる点で効果的である。
【0059】
また、キャッチ片6の開口部62は、ポスト24の通過を許容する貫通用開口62aが係止用開口62bの作用(機能)を兼ねており、一見すると、貫通用開口62aと掛止用開口62cのみしかないように見える。
更に、サブアッシー状態のキャッチ片6は、図8に示すように、先端部67が、移動阻止突起28における係止溝27側の根元付近に位置し、先端部67が移動阻止突起28に当接することによって装着方向への移動が阻止され、サブアッシー状態が維持ロックされる。このため、移動阻止突起28は、サブアッシー状態ロック64として機能するものである。
【0060】
次に、実施例3のヒートシンク1Cの作動態様について説明するが、ここでは装着状態から説明する。
図9は、ヒートシンク1Cのサブアッシー状態と装着状態とを対比して示しており、図9(a)がサブアッシー状態(実際には、回路基板B上にセットし、位置決めまで行った状態)で、図9(b)が装着状態である。ここで図9(b)の装着状態は、図9(a)の状態からキャッチ片6を移動させて得るものであり、この装着状態では、開口部62の掛止用開口62cがアンカー5の小径部53に嵌まり、キャッチ片6が掛止段差54に掛止するものである。また、装着状態では、キャッチ片6の貫通用開口62aが、ポスト24の係止溝27から離れ、係止溝27による係止が解除されるが、今度はアンカー5の掛止段差54がキャッチ片6と掛止するため、掛止段差54が支点となり、サブアッシー状態と同様に梃子の姿勢つまり爪状の先端部67をベース部21に押し付けた姿勢をとるものである。また、このとき爪状の先端部67は、移動阻止突起28において係止溝27とは反対側の根元付近に位置し、先端部67が移動阻止突起28に当接することによって、サブアッシー方向への移動が阻止され、装着状態が維持ロックされる。このため、移動阻止突起28は、装着状態ロック65としても機能するものである
【0061】
次に、サブアッシー化したヒートシンク1Cを回路基板Bに装着する態様について説明するが、この装着態様も基本的には実施例1と同様である。
サブアッシー状態のヒートシンク1Cを回路基板Bに装着するには、まず図9(a)や図10(a)に示すように、ヒートシンク本体2の位置決め23(孔)をアンカー5に嵌め込んで、ヒートシンク1Cの位置決めを行うものである。なお、ここでもサブアッシー化しただけのヒートシンク1Cは、そのままでアンカー5が貫通用開口62aを通過し得る状態であるため、位置決めを行っただけで、装着工程での初期位置となるものである。ただ本実施例では図9(a)や図10(a)に示すように、位置決め23(孔)を貫通したアンカー5(受入先端部55)は、既に開口部62の貫通用開口62aよりも上方に位置するものである。もちろん、この位置決め後の状態で受入先端部55は、必ずしもキャッチ片6の上方に突出しなくても良く、貫通用開口62aの下方で通過可能な状態で待機していても良いものである。
【0062】
このようにしてヒートシンク1Cの位置決めを行った後は、図10(b)に示すようにキャッチ片6(被保持部63)を押し下げることにより、爪状の先端部67を上昇させて行く。そして、このような操作により先端部67が移動阻止突起28よりも上方に位置すれば、キャッチ片6は移動阻止突起28との係止が解除され、キャッチ片6を装着方向に移動させ得る状態となる。
【0063】
その後、キャッチ片6の被保持部63の下方への押し込みを維持しつつ(つまり先端部67が移動阻止突起28よりも高位置にある状態を維持しつつ)、図10(c)に示すように、キャッチ片6を装着方向へとスライド(移動)させ、先端部67が移動阻止突起28を越えるようにする。なお、このようなキャッチ片6の移動により、ポスト24の係止溝27に嵌まっていた貫通用開口62a(係止用開口62b)の端縁は、係止溝27から離反するものである。また、これと同時に、キャッチ片6の掛止用開口62c内にアンカー5の小径部53が嵌まるものである。
【0064】
そして、このような状態で、キャッチ片6(被保持部63)に加えていた押し下げを解除すると、図10(d)に示すように、キャッチ片6はワイヤスプリング41の付勢によって、被保持部63が上昇する一方、先端部67がベース部21に押し付けられる。また掛止用開口62cの端縁がアンカー5の掛止段差54に掛止するものである。そして、この状態で、上述したように、ベース部21上に形成された移動阻止突起28によって、キャッチ片6のサブアッシー方向への移動が阻止されるものである。
なお、実施例3のヒートシンク1Cは、以上述べた操作で状態を変更するため、キャッチ片6の被保持部63を押し下げる位置は、キャッチ片6を係止溝27から抜き取り易く、また係止溝27に嵌め込み易い高さ位置であることが好ましい。そのため被保持部63を押し下げる高さを予め設定(規制)しておき、このような係止溝27への着脱操作を能率的に行うことが望ましく、図中符号29は、このためにベース部21上に形成された下位規制突起である。
【0065】
〔他の実施例〕
本発明は以上述べた実施例を一つの基本的な技術思想とするものであるが、更に次のような改変が考えられる。すなわち先の図1〜10に示した実施例では、ヒートシンク1の位置決め23は、回路基板Bに固定したアンカー5を通過させる孔であったが、位置決め23としては、例えば図11に示すような溝状であっても構わない。
【0066】
また先に述べた実施例では、アンカー5は、いずれも軸状(略円柱状)のものであったが、アンカー5は必ずしもこのような形態に限定されるものではなく、例えば図12に示すような板状のものでも構わない。
【0067】
また先に述べた実施例では、スプリング部材4としては、いずれもトーショーンバータイプのワイヤスプリング41を適用したが、スプリング部材4は必ずしもこのような形態に限定されるものではなく、例えば図13(a)に示すようなコイルスプリング45を適用することも可能である。この場合、例えばポスト24にコイルスプリング45を外嵌めし、その弾性力でキャッチ片6を常に上向きに付勢する手法が考えられる。また、この場合、図13(b)に示すように、キャッチ片6を押し下げながらスライド自在に形成するものである。また、ここでは一つのキャッチ片6に対し一つのアンカー5で、キャッチ片6の上向きの付勢を押さえるようにしているが、キャッチ片6の姿勢をより安定的に維持したい場合には、二つのアンカー5でキャッチ片6の上向きの付勢を押さえることも可能である。
【0068】
また先に述べた実施例では、装着状態(サブアッシー状態)を維持ロックするものとしては、いずれも突起を用いたが、このような装着状態ロック65としては、例えば図14に示すように、テーパによる高低差を利用した構造も採り得るものである。すなわち図14では、掛止用開口62cを低位置に設置しておくとともに、係止用開口62bを高位置に設置し、これらをつなぐ貫通用開口62aを側面視テーパ状に形成したものである。これにより、例えばキャッチ片6の掛止用開口62cがアンカー5の掛止段差54と掛止した装着状態において、かりにキャッチ片6がサブアッシー方向に移動しようとしても、そのためにはアンカー5(掛止段差54)がテーパ状の(言わば坂道状の)貫通用開口62aを登る動作となるため困難であり、これが装着状態ロック65となる。もちろん、これに比べれば、サブアッシー状態では、例えばポスト上端の抜け止め部26が、高位置の係止用開口62bに位置した状態となるため、幾らかは装着方向に移動し易いことが考えられるが、係止用開口62bがフラット状であるため、これを比較的長めに形成すること等により装着方向に移動し難い状況を形成することは可能である(これがサブアッシー状態ロック64となる)。
【0069】
また先に述べた実施例は、いずれもアンカー5をヒートシンク1の内側(ヒートシンク1が装着される範囲の内側)に設けるものであったが、アンカー5は、例えば図15に示すように、ヒートシンク1の外側(ヒートシンク1が装着されるエリアの外側)に設けることも可能である。また、このようなことから本図15では、アンカー5に位置決め作用を担わせるのではなく、位置決め23を別に設けている。すなわち、ここでは回路基板Bに、予め位置決め用のピン23aを別に設け(ヒートシンク1の内側)、またヒートシンク1の裏側に、このピン23aに対応した位置決め用の穴23bを未貫通状態に形成しておくものである。なお、位置決め23をヒートシンク1の内側に形成したのは、回路基板B面を少しでも有効に利用するためである。因みに、この実施例では、上述したどの実施例とも位置決め23が異なるため、位置決め23の更なる改変例を示すものとも言える。また、アンカー5に位置決め作用を担わせていない改変例を示すものでもある。
もちろん、位置決め23もヒートシンク1の外側に設けることは可能であり、その場合には、ヒートシンク1にベース部21よりも外側に張り出す張出部を形成しておき、ここで回路基板Bとの位置決めを図るのが一般的と考えられる。
【0070】
ところで、ヒートシンク本体2(ベース部21)と半導体回路素子Cとの間に熱伝導性シートが設けられる場合、熱伝導性シートの効率は、そのシートに加わる圧力の大きさによって異なり、一般的に圧力が高いほど、高い性能を発揮するものである。一方、半導体回路素子Cの中には最大許容荷重が定められているものもあり、ヒートシンク1の取り付け荷重を適正な範囲に収めることが要求されている。
ここで取付荷重及びその圧力は、回路基板Bの厚さ、半導体回路素子Cの厚さ、半導体回路素子Cとヒートシンク1との接触面積、ヒートシンク1のベース部21の厚さ等によって種々変化してしまうため、ワイヤスプリング41を用いた装着手段3では、同一のスプリングを用いることができないものであった。
そのため、このようなことをヒートシンク1側で解決するようにしたのが図16に示す実施例である。すなわち図16に示す実施例は、ヒートシンク1において、ワイヤスプリング41で押圧される箇所(ここではベース部21のほぼ中央部)に、取付荷重(圧力)調整用のポール(これを調整用支柱30とする)を形成しており、これを二次加工(切削/切断)することで、調整用支柱30の高さを変更し、回路基板Bの厚さ、半導体回路素子Cの厚さ、ヒートシンク1のベース部21の厚さ等の違いを調整して、熱伝導性シートに加わる圧力を目標荷重に設定するものである。
これにより、同一のワイヤスプリング41を多くのヒートシーンク1に汎用的に使用することができ、従来、多種に及んでいたワイヤスプリング41を統合することができるものである(例えば数種程度に抑えることができるものである)。
【符号の説明】
【0071】
1 ヒートシンク(装着手段を具えたヒートシンク)
1A ヒートシンク(実施例1)
1B ヒートシンク(実施例2)
1C ヒートシンク(実施例3)
2 ヒートシンク本体
3 装着手段
4 スプリング部材
5 アンカー
6 キャッチ片

2 ヒートシンク本体
21 ベース部
22 放熱フィン
23 位置決め
23a 位置決め用のピン
23b 位置決め用の穴
24 ポスト
25 組付用係止凸部
26 抜け止め部
27 係止溝
28 移動阻止突起
29 下位規制突起
30 調整用支柱

4 スプリング部材
41 ワイヤスプリング
42 中央トーション部
43 アーム部
44 折り返し部
45 コイルスプリング

5 アンカー
51 本体部
52 抜け防止部
53 小径部
54 掛止段差
55 受入先端部
56 ローレット部

6 キャッチ片
61 本体部
61a 折り返し
62 開口部
62a 貫通用開口
62b 係止用開口
62c 掛止用開口
63 被保持部
64 サブアッシー状態ロック
65 装着状態ロック
66 スライド安定部
67 先端部

B 回路基板
C 半導体回路素子
H 取付孔
P プッシュピン
P1 軸部
P2 鍔部
P3 膨出部
P4 スリワリ
P5 挿入孔
P6 コイルバネ
S ネジ
S2 鍔部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回路基板上の半導体回路素子に圧着されるベース部と、このベース部から突出する放熱フィンとを具えて成るヒートシンク本体を、スプリング部材を用いて回路基板上に装着するようにしたヒートシンクにおいて、
前記スプリング部材とヒートシンク本体との間には、キャッチ片が可動状態に設けられ、またこのキャッチ片には常にスプリング部材の付勢が作用するものであり、
前記ヒートシンク本体を回路基板上に装着する以前の段階で、スプリング部材をヒートシンク本体に組み付けたサブアッシー状態を得るにあたっては、前記キャッチ片の位置を適宜変更させることで、ヒートシンク本体の一部にキャッチ片を係止させて、サブアッシー状態を得るようにしたことを特徴とする装着手段を具えたヒートシンク。
【請求項2】
前記回路基板には、ヒートシンク本体を回路基板上に装着するためのアンカーが、ヒートシンク本体の装着側に突出状態に設けられるものであり、
前記ヒートシンク本体を回路基板上に装着するにあたっては、前記キャッチ片の位置を変更させることにより、サブアッシー状態を解除するとともに、アンカーにキャッチ片を掛止させて、ヒートシンク本体を回路基板上に装着するようにしたことを特徴とする請求項1記載の装着手段を具えたヒートシンク。
【請求項3】
前記ヒートシンク本体を回路基板上に装着するにあたっては、アンカーをヒートシンク本体の位置決めとしても兼用することを特徴とする請求項2記載の装着手段を具えたヒートシンク。
【請求項4】
前記回路基板に設置されるアンカーは、ヒートシンクが装着される範囲の内側に設けられることを特徴とする請求項2または3記載の装着手段を具えたヒートシンク。
【請求項5】
前記キャッチ片には、サブアッシー状態でキャッチ片の移動を阻むロック機構が設けられ、これによりサブアッシー状態のキャッチ片を装着方向に移動させないようにしたことを特徴とする請求項1、2、3または4記載の装着手段を具えたヒートシンク。
【請求項6】
前記サブアッシー状態でロックされたキャッチ片は、そのままの姿勢で前記ヒートシンク本体を回路基板上に装着する際の位置決め姿勢となり、また装着工程での初期位置にもなることを特徴とする請求項5記載の装着手段を具えたヒートシンク。
【請求項7】
前記キャッチ片には、ヒートシンク本体を回路基板上に装着した装着状態でキャッチ片の移動を阻むロック機構が設けられ、これにより装着状態のキャッチ片をサブアッシー方向に移動させないようにしたことを特徴とする請求項2、3、4、5または6記載の装着手段を具えたヒートシンク。
【請求項8】
前記キャッチ片は、ヒートシンク本体に可動状態に組み付けられ、常にヒートシンク本体から分離しないように形成されることを特徴とする請求項1、2、3、4、5、6または7記載の装着手段を具えたヒートシンク。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2011−171580(P2011−171580A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−34997(P2010−34997)
【出願日】平成22年2月19日(2010.2.19)
【出願人】(510048037)
【出願人】(508269949)
【Fターム(参考)】