説明

装着材

【課題】シート材が大型化してもシート材の平坦性を確保しつつ全面を研磨装置に装着することができる装着材を提供する。
【解決手段】研磨パッド10を構成する装着シート7は、一面側がウレタンシート2と貼り合わされる粘着シート4と、研磨装置に装着するための一面を有する粘着シート5とを有している。粘着シート4の他面側と、粘着シート5の他面側とが貼り合わされている。粘着シート4は2つの粘着テープ41、42が境界D1で隣接し、粘着シート5は3つの粘着テープ51、52、53が境界D1と異なる2箇所の境界D2で隣接するように配されている。粘着テープ41、42は粘着剤層41a、42aを有しており、粘着テープ51、52、53は粘着剤層51a、52a、53aを有している。装着時に、境界D1、D2での隙間形成が相互の粘着シート4、5で抑制される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は装着材に係り、特に、研磨加工に使用される樹脂製のシート材を研磨装置に装着するための装着材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来研磨加工には、被研磨物を研磨加工するための研磨パッドや被研磨物を研磨装置に保持させるための保持パッドが使用されている。研磨パッドや保持パッドとして樹脂製のシート材が広く用いられており、研磨加工時には、これらのシート材が研磨装置に装着される。研磨装置にシート材を装着するための装着材としては、両面テープ等の粘着性を有する部材が古くから用いられている(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。これらの技術では、粘着剤としてアクリル系粘着剤が用いられている。
【0003】
研磨加工の対象となる被研磨物としては、レンズ、平行平面板、反射ミラー等の光学材料、シリコンウェハ、ハードディスク用基板や液晶ディスプレイ用ガラス基板等の材料、といった多岐にわたる材料を挙げることができる。これらの材料の研磨加工においては、例えば、半導体デバイスでは半導体回路の微細化や多層配線化が進められており、配線の各層で高度な平坦性が求められている。また、液晶ディスプレイ用ガラス基板では、液晶ディスプレイの大型化に伴い、ガラス基板が大型化する傾向にある。被研磨物の大型化に対応するため、研磨パッドや保持パッドのシート材の大型化が進められている。一方、シリコンウェハでは、研磨加工の効率向上を目的として、複数の材料を同時に研磨加工する技術が進められている。この場合でも、研磨加工に使用するシート材を大型化することが必要となっている。
【0004】
大型のシート材としては、例えば、1辺の長さが2000mmを超える矩形状や直径2000mmを超える円形状のシート材が開発されている。ところが、このような大型化したシート材を研磨装置に装着するための装着材には、上述したような両面テープが用いられている。両面テープについても、大型のシート材に対応するように開発が進められているが、1辺の長さや直径が2000mmを超えるような大型の両面テープが開発されていない。このため、大型のシート材の全面を研磨装置に装着することが難しくなっている。これを解決するために、例えば、シート材を分割し、粘着テープと貼り合わせた研磨パッドの技術が開示されている(特許文献3参照)。この技術では、シート材が分割されているため、隙間が形成され被研磨物の平坦性を損なうことがある。また、研磨加工時に供給される研磨液が隙間に入り込み、粘着テープの粘着性を低下させて剥離を招くこともある。そこで、複数の両面テープを並べて貼り合わせることで大型化に対応しているのが現状である
【0005】
【特許文献1】実開1987−153057号公報
【特許文献2】特開58−109572号公報
【特許文献3】特開平11−320386号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、大型のシート材に複数の両面テープを並べて貼り合わせた場合、見かけ上は、大型化しているようになるが、隣り合う両面テープの継ぎ目では、シート材から研磨装置の定盤までの間に隙間が形成された状態となる。このため、運搬時には、シート材が継ぎ目部分で折れ曲がる可能性がある。また、研磨装置への装着時には、両面テープ等の継ぎ目部分でシート材が伸ばされることとなり、シート材の表面にしわや窪みが形成されて凹凸が生じることがある。このような凹凸が生じた状態で研磨加工を行うと、被研磨物の表面を平坦化することができないばかりか、研磨傷等のダメージを与える可能性がある。
【0007】
本発明は上記事案に鑑み、シート材が大型化してもシート材の平坦性を確保しつつ全面を研磨装置に装着することができる装着材を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明は、研磨加工に使用される樹脂製のシート材を研磨装置に装着するための装着材において、前記シート材を貼り合わせるための一面を有しており、粘着性を有する複数の第1の粘着部材が隣接するように配された第1の粘着層と、前記研磨装置に装着するための一面を有しており、他面側が前記第1の粘着層の他面側に貼り合わされ、粘着性を有する複数の第2の粘着部材が前記第1の粘着部材の境界部分と異なる部分で隣接するように配された第2の粘着層と、を備えたことを特徴とする。
【0009】
本発明では、研磨加工に使用される樹脂製のシート材を研磨装置に装着するために、第1の粘着層の一面側がシート材に貼り合わされ、第1の粘着層の他面側に他面側を貼り合わせた第2の粘着層の一面側が研磨装置に貼り合わされる。本発明によれば、第1の粘着層を複数の第1の粘着部材で構成し、第2の粘着層を複数の第2の粘着部材で構成したことで、シート材が大型化しても全面で研磨装置に装着させることができ、第2の粘着部材の境界部分を第1の粘着部材の境界部分と異なる部分としたことで、第1および第2の粘着部材の境界部分で相互の粘着層により隙間形成が抑制されるため、研磨装置に装着されるシート材の平坦性を確保することができる。
【0010】
この場合において、第1および第2の粘着層の少なくとも一方が、第1ないし第2の各粘着部材が基材を有していてもよい。また、第1および第2の粘着層が、いずれか一方を構成する第1または第2の各粘着部材が基材の両面に粘着剤を塗着して形成されており、いずれか他方を構成する第1または第2の各粘着部材が基材の少なくとも片面に粘着剤を塗着して形成されていてもよい。このとき、基材を可撓性を有する樹脂フィルムとすることができる。また、第1および第2の粘着層で、第1および第2の各粘着部材の粘着剤を同質としてもよい。粘着剤としてアクリル系、ウレタン系、エポキシ系の粘着剤から選択される少なくとも1種を用いることができる。第1の粘着層の一面側および第2の粘着層の一面側で、第1および第2の粘着部材の表面がそれぞれ剥離可能な剥離紙で覆われていることが好ましい。また、第1の粘着層と第2の粘着層との間に更に樹脂基材を備えるようにし、第2の粘着層の他面側が樹脂基材を介して第1の粘着層の他面側に貼り合わされるようにしてもよい。このような装着材は、シート材が対向する2辺の長さが2000mm以上の矩形状または直径が2000mm以上の円形状でも対応可能である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、第1の粘着層を複数の第1の粘着部材で構成し、第2の粘着層を複数の第2の粘着部材で構成したことで、シート材が大型化しても全面で研磨装置に装着させることができ、第2の粘着部材の境界部分を第1の粘着部材の境界部分と異なる部分としたことで、第1および第2の粘着部材の境界部分で相互の粘着層により隙間形成が抑制されるため、研磨装置に装着されるシート材の平坦性を確保することができる、という効果を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、図面を参照して、本発明を適用した装着材を備えた大型の研磨パッドの実施の形態について説明する。
【0013】
(構成)
本実施形態の研磨パッド10は、図1に示すように、被研磨物を研磨加工するための研磨面Pを有する研磨層のウレタンシート2と、ウレタンシート2を研磨装置に装着するための装着材としての装着シート7と、を備えている。
【0014】
ウレタンシート2は、ポリウレタン樹脂を湿式成膜することで形成されている。ウレタンシート2は、研磨面P側に不図示の微多孔が形成されたスキン層を有している。スキン層より内側(ウレタンシート2の内部)には、スキン層の微多孔より大きい孔径でウレタンシート2の厚さ方向に沿って丸みを帯びた断面三角状の大気孔が略均等に形成されている。大気孔は、研磨面P側の大きさが、研磨面Pと反対の面側より小さく形成されている。大気孔同士の間のポリウレタン樹脂中には、スキン層の微多孔より大きく大気孔より小さい孔径の小気孔が形成されている。スキン層の微多孔、大気孔および小気孔は連通孔で網目状につながっている。すなわち、ウレタンシート2は、連続状の発泡構造を有している。
【0015】
研磨パッド10を構成する装着シート7は、一面側がウレタンシート2と貼り合わされる第1の粘着層としての粘着シート4と、研磨装置に装着するための一面を有する第2の粘着層としての粘着シート5とを有している。装着シート7では、粘着シート4の他面側と、粘着シート5の他面側とが貼り合わされている。粘着シート4は、2つの粘着テープ41、42(第1の粘着部材)が境界D1で隣接するように配されている。一方、粘着シート5は、3つの粘着テープ51、52、53(第2の粘着部材)が2箇所の境界D2で隣接するように配されている。
【0016】
粘着シート4を構成する粘着テープ41は、ポリエチレンテレフタレート製(以下、PETと略記する)フィルムの基材41bを有している。基材41bの一面側、すなわち、ウレタンシート2側には、粘着剤が塗着されて粘着剤層41aが形成されている。粘着テープ42は、粘着テープ41と同じ構成で形成されている。すなわち、PETフィルムの基材42bの一面側に粘着剤層42aが形成されている。粘着剤層41a、42aには、いずれも、同質のアクリル系粘着剤が用いられている。また、粘着テープ41、42は、厚さおよび幅が同じに形成されている。粘着シート4では、ウレタンシート2と貼り合わされる一面側に粘着テープ41、42の粘着剤層41a、42aが配されており、他面側に基材41b、42bの他面側が位置するように配されている。
【0017】
粘着シート5を構成する粘着テープ51は、粘着剤がシート状に形成された粘着剤層51aを有している。粘着剤層51aの一面側、すなわち、研磨装置に装着するための面側は、研磨パッド10の保管時や搬送時に粘着剤層51aを保護するために、剥離紙(バイナーシート)51bで覆われている。粘着テープ52、53は、粘着テープ51と同じ構成で形成されている。すなわち、粘着テープ52は粘着剤層52aの一面側が剥離紙52bで覆われており、粘着テープ53は粘着剤層53aの一面側が剥離紙53bで覆われている。また、粘着テープ51、52、53は、厚さが同じに形成されている。粘着テープ51、53の幅が同じに形成されており、粘着テープ52の幅が粘着テープ51、52より若干大きく形成されている。粘着シート5では、研磨装置に装着するための一面側に位置する粘着剤層51a、52a、53aの一面側がそれぞれ剥離紙51b、52b、53bで覆われており、他面側に粘着剤層51a、52a、53aの他面側が露出するように配されている。
【0018】
装着シート7では、粘着シート4の他面側に位置するように配された基材41b、42bの他面側と、粘着シート5の他面側に露出するように配された粘着剤層51a、52a、53aの他面側とが貼り合わされている。このような装着シート7を備えた研磨パッド10では、装着シート7を構成する粘着シート4の一面側がウレタンシート2と貼り合わされており、研磨装置に貼り合わせるための一面を有する粘着シート5の他面側が粘着シート4の他面側に貼り合わされている。
【0019】
装着シート7では、粘着シート4の他面側に配された基材41b、42bの他面と、粘着シート5の他面側に配された粘着剤層51a、52a、53aの他面とが貼り合わされている。同じ幅を有する2つの粘着テープ41、42が隣接するように配された粘着シート4では、研磨パッド10の中央部に境界D1が形成される。これに対して、3つの粘着テープ51、52、53が隣接するように配された粘着シート5では、境界D1を挟むように両側に2箇所の境界D2が形成される。このため、粘着シート4と粘着シート5とでは、境界D1および境界D2の位置が異なっている。
【0020】
図2に示すように、粘着シート4の境界D1は、粘着テープ52の略中央に位置している。換言すれば、粘着シート4を構成する2つの粘着テープ41、42の継ぎ目部分を覆うように粘着テープ52が貼り合わされている。また、粘着シート5の2箇所の境界D2は、それぞれ粘着テープ41、42の中央部より境界D1側に位置している。換言すれば、粘着シート5を構成する3つの粘着テープ51、52、53の継ぎ目部分を覆うように
粘着テープ41、42が貼り合わされている。
【0021】
(製造)
研磨パッド10は、ウレタンシート2および装着シート7をそれぞれ作製し、貼り合わせることで製造される。以下、ウレタンシート2の作製、装着シート7の作製、貼り合わせの順に説明する。
【0022】
<ウレタンシートの作製>
ウレタンシート2は、樹脂溶液を調製する準備ステップ、樹脂溶液を成膜基材に連続的に塗布し、水系凝固液に浸漬することでポリウレタン樹脂をフィルム状に凝固再生させる凝固再生ステップ、凝固再生したポリウレタン樹脂を洗浄・乾燥させてウレタンシート2を得る洗浄・乾燥ステップを経て作製される。
【0023】
準備ステップでは、ポリウレタン樹脂、ポリウレタン樹脂を溶解可能な水混和性の有機溶媒のN,N−ジメチルホルムアミド(以下、DMFと略記する。)および添加剤を混合してポリウレタン樹脂を溶解させる。ポリウレタン樹脂には、ポリエステル系、ポリエーテル系、ポリカーボネート系等の樹脂から選択して用い、例えば、ポリウレタン樹脂が30%となるようにDMFに溶解させる。添加剤としては、大気孔の大きさや量(個数)を制御するカーボンブラック等の顔料、発泡を促進させる親水性活性剤およびポリウレタン樹脂の凝固再生を安定化させる疎水性活性剤等を用いることができる。得られた溶液を濾過することで凝集塊等を除去した後、真空下で脱泡して樹脂溶液を調製する。
【0024】
凝固再生ステップでは、準備ステップで調製した樹脂溶液を成膜基材に連続的に塗布し、水系凝固液に浸漬することでポリウレタン樹脂をフィルム状に凝固再生させる。樹脂溶液は、塗布装置により常温下で帯状の成膜基材に略均一に塗布される。塗布装置には、本例では、ナイフコータが用いられる。このとき、ナイフコータと成膜基材との間隙(クリアランス)を調整することで、樹脂溶液の塗布厚さ(塗布量)が調整される。成膜基材には、可撓性フィルム、不織布、織布等を用いることができる。本例では、成膜基材としてPET製フィルムが用いられる。
【0025】
樹脂溶液が塗布された成膜基材は、ポリウレタン樹脂に対して貧溶媒である水を主成分とする凝固液に浸漬される。凝固液中では、まず、塗布された樹脂溶液の表面にスキン層を構成する微多孔が厚さ数μm程度にわたって形成される。その後、樹脂溶液中のDMFと凝固液との置換の進行によりポリウレタン樹脂が成膜基材の片面にフィルム状に凝固再生する。DMFが樹脂溶液から脱溶媒し、DMFと凝固液とが置換することにより、スキン層より内側のポリウレタン樹脂中には、大気孔および小気孔が形成され、大気孔および小気孔を網目状に連通する連通孔が形成される。このとき、成膜基材のPET製フィルムが水を浸透させないため、樹脂溶液の表面側(スキン層側)で脱溶媒が生じて成膜基材側が表面側より大きな大気孔が形成される。
【0026】
洗浄・乾燥ステップでは、凝固再生した帯状(長尺状)のポリウレタン樹脂を洗浄した後乾燥させる。すなわち、ポリウレタン樹脂は、成膜基材から剥離され、水等の洗浄液中で洗浄されてポリウレタン樹脂中に残留するDMFが除去される。洗浄後、ポリウレタン樹脂を乾燥機等で乾燥させてウレタンシート2が作製される。本例では、乾燥機として、内部に熱源を有するシリンダを備えたシリンダ乾燥機が用いられる。ポリウレタン樹脂がシリンダの周面に沿って通過することで乾燥する。乾燥後のウレタンシート2は、本例では、長さ1000mm、幅2000mmに裁断される。
【0027】
<装着シートの作製>
装着シート7は、粘着シート4を構成する粘着テープ41、42、および、粘着シート5を構成する粘着テープ51、52、53をそれぞれ準備し、粘着シート4と粘着シート5とを貼り合わせて作製する。
【0028】
粘着シート4では、粘着テープ41、42がいずれもテープ幅1000mm、厚さ0.125mmに設定されている。粘着シート5では、粘着テープ51、53がそれぞれテープ幅300mm、厚さ0.17mmに設定されており、粘着テープ52が幅400mm、厚さ0.17mmに設定されている。粘着テープ41、42には、一面側を基材41b、42bとそれぞれ貼り合わせた粘着剤層41a、42aの他面側がそれぞれ被覆紙で覆われたものが用いられる。また、粘着テープ51、52、53には、一面側が剥離紙51b、52b、53bでそれぞれ覆われた粘着剤層51a、52a、53aの他面側がそれぞれ被覆紙で覆われたものが用いられる。
【0029】
2つの粘着テープ41、42を隙間が形成されないように、略平坦な台上に隣接させて並べる。このとき、基材41b、42bが上側となるように並べる。すなわち、粘着テープ41、42は、ほぼ同一の平面で境界D1を挟んで隣接配置される。並べた2つの粘着テープ41、42の上に、3つの粘着テープ51、52、53を隙間が形成されないように、隣接させて積層する。このとき、粘着テープ51、52、53の被覆紙を取り外し、露出した粘着剤層51a、52a、53aを、台上に並べた粘着テープ41、42の基材41b、42bに接触させる。ほぼ同一の平面状に隣接配置された粘着テープ41、42の上に積層されるため、粘着テープ51、52、53はほぼ同一の平面で2箇所の境界D2を挟んで隣接配置される。積層された状態で、略平坦な平板で押圧することで装着シート7を作製する。
【0030】
<貼り合わせ>
作製したウレタンシート2と装着シート7とを貼り合わせる。このとき、装着シート7の粘着テープ41、42を構成する粘着剤層41a、42aの被覆紙を取り外し、露出した粘着剤層41a、42aと、ウレタンシート2の研磨面Pと反対側の面とを貼り合わせる。その後、汚れや異物等の付着がないことを確認する等の検査を行い、長さ1000mm、幅2000mmの大型の研磨パッド10を完成させる。
【0031】
研磨パッド10を研磨装置に装着するときは、剥離紙51b、52b、53bを取り外し、露出した粘着剤層51a、52a、53aで研磨装置の定盤に貼着する。このとき、3枚の剥離紙51b、52b、53bを順次取り外して、粘着テープ51、52、53を1枚分ずつ順に貼着することで、位置ズレすることなく正確に定盤に貼着することができる。研磨加工時には、研磨粒子を含む研磨液(スラリ)を供給しながら、被研磨物が研磨される。
【0032】
(作用等)
次に、本実施形態の研磨パッド10の作用等について、装着シート7の作用を中心に説明する。
【0033】
本実施形態で用いた装着シート7では、粘着シート4が2つの粘着テープ41、42で構成され、粘着シート5が3つの粘着テープ51、52、53で構成されている。このため、ウレタンシート2が大型でも全面で研磨装置に装着することができるように、ウレタンシート2と貼り合わせることができる。また、粘着シート5を構成する3つの粘着テープ51、52、53を順に研磨装置に貼着することで、位置ズレを生じることなく正確に研磨装置に装着することができる。
【0034】
また、本実施形態で用いた装着シート7では、粘着テープ41、42の隣接部分に境界D1が形成され、粘着テープ51、52、53の隣接部分に2箇所の境界D2が形成されている。粘着シート4の境界D1と粘着シート5の境界D2とが異なる位置となるように、それぞれの粘着テープ41、42および粘着テープ51、52、53が配置されている。このため、境界D1での隙間形成が粘着シート5を構成する粘着テープ51、52、53(特に、粘着テープ52)で抑制され、境界D2での隙間形成が粘着シート4の粘着テープ41、42で抑制される。換言すれば、装着シート7は、粘着シート4、5の境界D1、境界D2が相互に補強されるように形成されており、境界D1、D2に生じる歪みを最小限に抑制することができる。これにより、ウレタンシート2の研磨面P側に窪み等が形成されることなく研磨パッド10を研磨装置に装着することができる。従って、研磨面Pの平坦性が確保されるので、被研磨物の平坦性向上を図ることが期待できる。
【0035】
更に、本実施形態で用いた装着シート7では、粘着シート4を構成する粘着テープ41、42がそれぞれ基材41b、42bを有しており、上述したように粘着シート4、5の境界D1、境界D2が相互に補強されるように形成されている。このため、柔軟性を有するウレタンシート2を大型にしても、搬送時や研磨装置への装着時に装着シート7の全体で支持されることから、取扱いを容易にすることができる。
【0036】
従来大型の研磨パッドでは、装着材として用いられる両面テープが大型化していないため、全面で研磨装置に装着することが難しい。複数の両面テープを並べて貼り合わせることで、研磨装置への装着を行うことができる。すなわち、上述したウレタンシート2と粘着シート4とを貼り合わせて形成した研磨パッドとなる。ところが、このような研磨パッドでは、ウレタンシート2が伸縮性を有するため、研磨装置に装着するときに、粘着シート4を構成する2つの粘着テープ41、42の境界D1の部分でウレタンシート2が伸ばされてしまう。このため、研磨面P側に窪みやしわが形成されることとなる。このような状態で研磨加工を行うと、被研磨物の平坦性を損なうこととなり、被研磨物に研磨傷を生じる可能性もある。本実施形態は、これらの問題を解決することができる研磨パッドである。
【0037】
なお、本実施形態では、装着シート7として粘着シート4、5を貼り合わせる例を示したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、粘着シート4、5以外に更に粘着シートを積層するようにしてもよい。この場合、各粘着シートの境界部分を相互に補強する効果を向上させることが期待されるが、研磨パッド10の全体に占める装着材の割合が大きくなるため、研磨加工に支障をきたす可能性もある。この点を考慮すれば、粘着シート4、5で構成された2層構造の装着シート7とすることが好ましい。また、本実施形態では、粘着シート4と粘着シート5とを貼り合わせる例を示したが、粘着シート4および粘着シート5の間に樹脂製の基材を介在させるようにしてもよい。樹脂製の基材としては、PET等のフィルムを用いることができる。このように構成することで、樹脂製基材が研磨パッド全体の支持機能を果たすため、搬送時や研磨装置への装着時に取扱いを容易にすることができる。
【0038】
また、本実施形態では、粘着シート4を構成する粘着部材として2つの粘着テープ41、42を用い、粘着シート5を構成する粘着部材として3つの粘着テープ51、52、53を用いる例を示したが、本発明はこれらに制限されるものではない。例えば、粘着シート4を3つ以上の粘着テープで構成してもよく、粘着シート5を2つ、または、4つ以上の粘着テープで構成するようにしてもよい。また、本実施形態では、粘着シート4を構成する粘着テープの数が、粘着シート5を構成する粘着テープの数より小さくされているが、用いる粘着テープ数の大小に制限されるものではない。すなわち、粘着シート4を構成する粘着テープの数を、粘着シート5を構成する粘着テープの数より大きくしてもよい。このようにしても、装着シート7の作製において不都合を生じるものではなく、上述した効果を得ることができる。
【0039】
更に、本実施形態では、粘着テープ41、42をそれぞれ粘着剤層41a、42aと、基材41b、42bとで形成し、粘着テープ51、52、53をそれぞれ粘着剤層51a、52a、53aと、剥離紙51b、52b、53bとで形成する例、すなわち、粘着シート4と粘着シート5とで粘着テープの構成が異なる例を示したが、本発明はこれらに制限されるものではない。例えば、粘着シート4と粘着シート5とで粘着テープの構成を同じにしてもよい。このような例として、粘着剤層と剥離紙とで形成される粘着テープを、粘着シート4では2つ、粘着シート5では3つ用いるようにしてもよい。この場合、粘着シート4と粘着シート5とが粘着テープの粘着剤層同士で貼り合わされることとなる。このようにしても、上述した研磨面P側の平坦性を確保することができる。いずれの粘着テープも基材を有していないため、研磨パッドの大型化に伴い、取扱いの難しさが生じることを考慮すれば、粘着剤層同士の間に樹脂製基材を介在させるようにしてもよい。
【0040】
また、粘着シート4を基材の両面に粘着剤層が形成された3層構造の粘着テープ(いわゆる両面テープ)で構成し、粘着シート5を基材の片面に粘着剤層が形成され当該粘着剤層の表面が剥離紙で覆われた3層構造の粘着テープで構成することも可能である。このようにすれば、装着シート7では、2層分の基材を含むこととなるため、研磨パッド10が更に大型化しても取扱いを容易にすることができる。また、粘着シート4および粘着シート5を、基材の両面に粘着剤層が形成された3層構造の粘着テープで構成してもよいことはもちろんである。
【0041】
更にまた本実施形態では、基材41b、42bとしてPETフィルムを例示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、ポリプロピレンやOPP(具体的名称)をもちいてもよい。また、粘着剤層41a、42a、51a、52a、53aの粘着剤として、アクリル系粘着剤を例示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、ウレタン系やエポキシ系の粘着剤を用いてもよい。接着強度やウレタンシート2の物性に及ぼす影響を考慮すれば、アクリル系、ウレタン系、エポキシ系の粘着剤から選択される少なくとも1種とすることが好ましい。
【0042】
また更に、本実施形態では、装着シート7を備えた研磨パッド10の例を示したが、本発明はこれに制限されるものではない。例えば、粘着シート4の一面側(ウレタンシート2と貼り合わされる面側)および粘着シート5の一面側(研磨装置に貼り合わされる面側)で、粘着シート4、5を構成する粘着剤層の表面をそれぞれ覆う剥離可能な剥離紙を有するようにしてよい。このようにすれば、装着シート7の単独で保管、運搬等を行うことができ、製造管理の観点からも好ましくなる。また、研磨加工に用いられる樹脂製シート材としては、被研磨物を研磨加工するための研磨面Pを有する研磨パッド以外に、被研磨物を保持するための保持パッドを挙げることができる。保持パッドでも、被研磨物に対する保持性を向上させるため、発泡構造の樹脂製シート材が広く用いられている。このような保持パッドを研磨装置に装着する際においても、本実施形態の装着シート7を用いることで、上述したような効果を十分発揮することができる。
【0043】
更に、樹脂製シート材として、湿式成膜されたポリウレタン樹脂製のウレタンシート2を例示したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、イソシアネート化合物とポリオール化合物やポリアミン化合物とを反応させることで乾式成形したウレタンシートを用いることも可能である。また、ポリウレタン樹脂に代えて、ポリエチレンやポリプロピレン等の樹脂を用いるようにしてもよい。
【0044】
また、本実施形態では、研磨パッド10として、長さ1000mm、幅2000mmの矩形状とする例を示したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、対向する2辺の長さが2000mm以上の矩形状、直径2000mm以上の円形状の研磨パッドに対応することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明はシート材が大型化してもシート材の平坦性を確保しつつ全面を研磨装置に装着することができる装着材を提供するため、研磨パッドや保持パッドのシート材の製造、販売に寄与するので、産業上の利用可能性を有する。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明を適用した装着シートを備えた実施形態の研磨パッドを模式的に示す断面図である。
【図2】実施形態の研磨パッドを構成する装着シートの境界部分を模式的に示す底面図である。
【符号の説明】
【0047】
P 研磨面
D1 境界(境界部分)
D2 境界(境界部分)
2 ウレタンシート(シート材)
4 粘着シート(第1の粘着層)
5 粘着シート(第2の粘着層)
7 装着シート(装着材)
10 研磨パッド
41、42 粘着テープ(第1の粘着部材)
41a、42a 粘着剤層
51、52、53 粘着テープ(第2の粘着部材)
51a、52a、53a 粘着剤層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
研磨加工に使用される樹脂製のシート材を研磨装置に装着するための装着材において、
前記シート材を貼り合わせるための一面を有しており、粘着性を有する複数の第1の粘着部材が隣接するように配された第1の粘着層と、
前記研磨装置に装着するための一面を有しており、他面側が前記第1の粘着層の他面側に貼り合わされ、粘着性を有する複数の第2の粘着部材が前記第1の粘着部材の境界部分と異なる部分で隣接するように配された第2の粘着層と、
を備えたことを特徴とする装着材。
【請求項2】
前記第1および第2の粘着層の少なくとも一方は、前記第1ないし第2の各粘着部材が基材を有することを特徴とする請求項1に記載の装着材。
【請求項3】
前記第1および第2の粘着層は、いずれか一方を構成する前記第1または第2の各粘着部材が前記基材の両面に粘着剤を塗着して形成されており、いずれか他方を構成する前記第1または第2の各粘着部材が前記基材の少なくとも片面に粘着剤を塗着して形成されていることを特徴とする請求項2に記載の装着材。
【請求項4】
前記基材は、可撓性を有する樹脂フィルムであることを特徴とする請求項3に記載の装着材。
【請求項5】
前記第1および第2の粘着層は、前記第1および第2の各粘着部材の粘着剤が同質であることを特徴とする請求項3に記載の装着材。
【請求項6】
前記粘着剤は、アクリル系、ウレタン系、エポキシ系の粘着剤から選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項5に記載の装着材。
【請求項7】
前記第1の粘着層の一面側および前記第2の粘着層の一面側は、前記第1および第2の粘着部材の表面がそれぞれ剥離可能な剥離紙で覆われていることを特徴とする請求項3に記載の装着材。
【請求項8】
前記第1の粘着層と前記第2の粘着層との間に更に樹脂基材を備え、前記第2の粘着層の前記他面側が前記樹脂基材を介して前記第1の粘着層の前記他面側に貼り合わされたことを特徴とする請求項1に記載の装着材。
【請求項9】
前記シート材は、対向する2辺の長さが2000mm以上の矩形状または直径が2000mm以上の円形状であることを特徴とする請求項8に記載の装着材。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−82720(P2010−82720A)
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−252239(P2008−252239)
【出願日】平成20年9月30日(2008.9.30)
【出願人】(000005359)富士紡ホールディングス株式会社 (180)
【Fターム(参考)】