装置異常監視方法及びシステム
【課題】装置異常監視方法に係わり、精度の良い異常検知や原因診断などを実現できる技術を提供する。
【解決手段】本システムでは、複数の類似の装置1のうち、新設の装置(T)の監視に係わり、判定モデル作成モジュール2では、既設の複数(K)の類似装置(a,b等)毎に、個別の判定モデル(予測モデル)を作成し、これら予測モデルの係数及び切片を、各装置1の特徴項目値等から予測するメタ予測モデルを作成し、このメタ予測モデルから、装置(T)専用の予測モデル(それを含んで成る判定モデル)を生成する。この判定モデルを用いて、判定モジュール3Tは、装置(T)の状態を監視して異常検知を行う。
【解決手段】本システムでは、複数の類似の装置1のうち、新設の装置(T)の監視に係わり、判定モデル作成モジュール2では、既設の複数(K)の類似装置(a,b等)毎に、個別の判定モデル(予測モデル)を作成し、これら予測モデルの係数及び切片を、各装置1の特徴項目値等から予測するメタ予測モデルを作成し、このメタ予測モデルから、装置(T)専用の予測モデル(それを含んで成る判定モデル)を生成する。この判定モデルを用いて、判定モジュール3Tは、装置(T)の状態を監視して異常検知を行う。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1つ以上の装置の状態を監視して、異常(異常兆候)や正常の判定、及び異常(故障)原因の診断等を行う装置異常監視方法に関する。特に、複数の装置を対象とした監視や診断等の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
熱電併給(コージェネレーション)装置に代表される、燃料を少なくとも運動エネルギー、熱エネルギー、または電気エネルギーに変換するエネルギー変換装置(設備)等に対して、状態を計測するための複数のセンサ(計測器)を備え付け、これにより装置の各状態を時々刻々と計測して把握し、そのデータ(装置状態計測データ、センサデータなどと称する)に基づいて装置の状態の正常や異常を判定し、異常状態を捉えて保守を行う、状態基準保全(CBM:Condition Based Maintenance)の技術がある。これは、保守コストの削減に効果がある。
【0003】
特開2002−110493号公報(特許文献1)、及び特開2000−252180号公報(特許文献2)には、製造ラインの品質変動原因分析を対象に、複数の説明変数を一定少数に分割し、線形重回帰モデル作成(Yi=A・Xi)を全ての分割グループに適用して変数増減法により各分割グループ内で説明変数を絞り込み、絞り込まれた説明変数を合わせて再度重回帰モデル作成を適用することを多段階に繰り返す多段階多変量解析の方法に関して述べられている。
【0004】
米国特許第7209846号明細書(US 7,209,846 B2)(特許文献3)には、グラフィカルモデルによって、製造ラインの製品品質と工程データの間の因果解析を行う方法が述べられている。
【0005】
非特許文献1には、統計モデルが述べられている。具体的には、GLM(Generalized Linear Model)法、GAM(Generalized Additive Model)法、および非線形モデル法が述べられている。
【0006】
非特許文献2には、説明変数の複数の要素が同時に変動することによって引き起こされる多重共線性(Multiple Co-linear)現象による計算不可能問題や精度不足を回避するための射影法(Projection Method)に基づく、目的変数(Y)と説明変数(X)の縮退線形回帰モデル(Y=A・X)の複数の作成方法が説明されている。具体的には、PLS(Partial Least Squares)法、PCR(Principal Component Regression)法、Ridge法、およびLasso法が述べられている。また、非線形関係のモデル作成方法として、非線形回帰法が述べられている。具体的には、GLM(Generalized Linear Model)法、およびMARS(Multivariate Adaptive Regression Splines)法が述べられている。また、ベイズ法と組み合わせてモデル係数を求めるサンプリング手法として、MCMC(Markov Chain Monte Carlo)法が述べられている。
【0007】
非特許文献3には、PLS(Partial Least Squares)法によって共線性があるデータ項目を混在させて線形回帰予測モデルを構築する方法が述べられている。
【0008】
非特許文献4には、グラフィカルモデルによって因果解析を行う統計数理的な汎用アルゴリズムの方法が述べられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2002−110493号公報
【特許文献2】特開2000−252180号公報
【特許文献3】米国特許第7209846号明細書(US 7,209,846 B2)
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】ISBN: 978-0412830402 J. M. Chambers, and T.J. Hastie, “Statistical Models in S”, Chapman & Hall/CRC (1991), Chapter 6: Generalized Linear Models, Chapter 7: Generalized Additive Models, Chapter 10: Nonlinear Models
【非特許文献2】ISBN: 978-0387952840, T. Hastie, R. Tibshirani, and J. H. Friedman, “The Elements of Statistical Learning”, Springer (2003), Chapter 3: Linear Methods for Regression
【非特許文献3】ISBN: 0-471-48978-6, Richard G. Brereton, “Chemometrics, Data Analysis for the Laboratory and Chemical Plant”, WILEY (2003), Chapter 5: 5.5 Partial Least Squares
【非特許文献4】ISBN: 978-0387310732, Christopher M. Bishop, “Pattern Recognition and Machine Learning”, Springer (2006), Chapter 8: Graphical Models
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
前記状態基準保全(CBM)を有効に実施するためには、故障に至る前の異常の兆候を捉える必要がある。そのためには、複数のセンサのデータ項目を統計解析によって統合するモデルを作成し、装置の正常状態のモデルを基準にした乖離度を計算し、当該乖離度を状態判定基準にする方法が有効である。
【0012】
前記対象の装置を構成する各モジュールや個々のモジュールを構成する部品の多くは、装置がエネルギー変換等の目的を達成するために連動して動作する。よって、装置を構成する複数の部品等に対して設置された複数のセンサの出力(データ項目)の多くも、連動して変化する。この場合、各センサのデータ項目を軸にとったパラメータ空間を考えると、装置正常状態は、局在した部分空間を構成する。この装置正常状態のパラメータ部分空間を、統計解析によってモデル化すれば、異常状態を判定するための乖離度を計算することができる。
【0013】
また、正常時に連動して変化するセンサの出力(データ項目)の関係と、異常時に連動して変化するセンサの出力(データ項目)の関係を比較してモデル化すれば、異常時に異常(故障)の原因を診断することができる。
【0014】
上述した技術に係わり、以下に示すような課題(課題1,2)がある。
【0015】
(課題1:データ数欠乏)
第1に、異常判定の基準となる正常状態のモデルを作成するためのデータ収集に時間がかかるという課題がある。複数のセンサのデータ項目を統計解析によって統合するモデル(判定モデル)を作成するためには、統計的に十分な量のサンプリング点数、あるいは定常状態の装置状態変動を全て網羅するだけのサンプリング点数が必要になる。しかし、それだけのデータ点数を確保できるまでは、異常監視を実施できないという問題があった。
【0016】
特に、以下のような場合、即ち、(1)新規に装置を設置した場合、(2)従来の装置を改造した場合、(3)従来の装置に大規模なメンテナンス(保守)を行った場合、(4)設置済みの装置を取り巻く環境が変化した場合、(5)異常監視のソフトウェアを改造(更新)した場合、あるいは、(6)異常監視のパラメータ(データ項目)を変更した場合には、モデル(判定モデル)の新規作成もしくは更新が必要になる。よって、そのために必要なデータ(十分な異常事例データ)が蓄積されるまでの間は、異常監視を開始できない、もしくは異常監視を中断しなければならない、という問題があった。
【0017】
(課題2:異常事例からの学習)
第2に、異常の発生が稀または無い場合(異常事例データが少ないまたは無い場合)には、判定モデル等の学習等が進捗しないという課題があった。
【0018】
即ち、まず従来の前提として、(1)装置異常を経験した後にその異常事例に基づいて、判定モデルを学習調整することや、判定モデルを基準にした乖離度と照合して異常判定を行う判定しきい値を学習調整することが、監視精度を向上する上で有効である。(2)更に、異常状態に至った異常(故障)原因を診断するモデル(診断モデル)を作成してデータベース(DB)等に蓄積することが、原因診断をする上で有効である。
【0019】
しかしながら、上記前提の技術を適用した状況において、異常の発生が稀または無い場合には、判定モデル及び判定しきい値の学習や診断モデルの蓄積などが進捗しないという問題があった。
【0020】
上述したような課題(課題1,2)に対応して、本発明は、以下のような目的(目的1,2)がある。
【0021】
(目的1:データ数欠乏)
第1に、異常判定の基準となるモデル(判定モデル)の作成において、対象の装置から十分なデータ点数を確保できない場合でも、精度良く異常(異常兆候)を検知(判定)することができるモデル及びそれを用いた監視判定等の実現を目的とする。
【0022】
(目的2:異常事例からの学習)
第2に、異常事例に基づく判定モデル及び判定しきい値の学習や診断モデルの蓄積において、対象の装置の異常事例データが少ないまたは無い場合にも、精度良く異常判定等ができるモデル(判定モデル)の学習(その進捗)、及び、精度良くその原因の診断等ができるモデル(診断モデル)の蓄積(その進捗)などの実現を目的とする。
【0023】
なお、従来では、複数の装置を監視やデータ収集等の対象として、例えば既設の類似装置のデータをもとに、新設の装置のモデルを類推(生成)するといった技術は無い。
【0024】
まとめると、本発明の主な目的は、上記装置異常監視方法及びCBMの技術に係わり、(1)精度の良い異常検知(判定)が可能なモデル(判定モデル)及びそれを用いた監視、(2)更に、精度の良い異常(故障)原因の推定(診断)が可能なモデル(診断モデル)及びそれを用いた診断による保守の効率化、などを実現できる技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0025】
本願において開示される発明のうち、代表的なものの概要を簡単に説明すれば、次の通りである。前記目的を達成するために、本発明の代表的な実施の形態は、装置異常監視方法及びそのシステムに係わり、以下に示す構成を有することを特徴とする。
【0026】
本発明では、特に、類似の特徴や構成などを持つ複数の装置(類似装置)を処理対象とする。複数の装置からそれぞれ収集、取得する装置状態計測データ(センサデータ)に基づき作成したモデルを用いて、異常監視(判定)及び異常原因診断などを行う。なお、本明細書で、モデルは、機能や用途や計算式などの違いに応じて、適宜、予測モデル、判定モデル、診断モデルなどと称する。
【0027】
前述の課題1(データ数欠乏)に対して、本発明では、監視等の対象の装置から十分なデータ点数を確保できない場合でも、その装置に対する他の複数(2つ以上)の類似装置のデータを用いて、対象の装置の異常判定等のためのモデル(判定モデル)を生成することにより、解決する。
【0028】
前述の課題2(異常事例からの学習)に対して、本発明では、監視等の対象の装置に対する他の複数の類似装置の異常事例(そのデータ)に基づいて、判定モデル及びその判定用しきい値の学習や、異常原因診断のためのモデル(診断モデル)の蓄積を行う方法を用いる。本方法を用いる場合、従来技術では以下のような問題がある。即ち、上記方法を用いる場合、監視等の対象の装置に対して、異常事例のデータを取得等する対象となる装置としては、(1)完全に同一の特徴と構成を持つこと、(2)完全に同一の環境に設置されていること、(3)完全に同一の運転稼働状況にあること、といった条件を満たす必要がある。このような装置の異常事例を用いないと、異常判定及び診断等の精度を向上することができず、場合によってはその精度を低下させてしまう。本発明では上記のような問題も解決される。
【0029】
本形態の方法は、例えば、コンピュータの情報処理を用いて、類似の複数(K+1)の装置を処理対象として、前記装置毎の状態を複数(2つ以上)のセンサで計測して得られる当該装置各々の複数(2つ以上)の装置状態計測データ項目(変数)に基づいて、前記複数(K+1)のうち少なくとも1つの装置の状態の異常を監視及び判定する処理を行う。前記複数(K+1)の装置のうち、1つの第1の装置が、監視及び判定の対象(判定モデル作成対象)となり、それと類似する他の複数(K:2つ以上)の第2の装置が、前記第1の装置の監視及び判定のための第1の予測モデル(それを含んで成る判定モデル)を生成するための対象(データ元)となる。本形態は、前記複数(K)の第2の装置各々における正常時の前記複数のデータ項目に基づき作成される、前記監視及び判定のための個別の第2の装置専用の複数(K)の判定モデルに基づき、前記第1の装置専用の第1の予測モデル(判定モデル)を生成する処理を行う第1のステップと、所定時間単位で、前記第1の装置からの前記複数のデータ項目を入力し、前記第1の予測モデル(判定モデル)を用いて、前記第1の装置の状態の異常を監視及び判定し、異常を検知した場合には検知情報を出力する、監視実行処理を行う第2のステップと、を有する。
【0030】
前記第1のステップでは、前記複数(K)の装置各々の前記複数のデータ項目を、回帰分析における、目的変数(Y)と、それ以外の1つ以上の説明変数(X)とに統計的に分類するステップと、前記複数(K)の第2の装置各々の個別の予測モデルとしての複数(K)の回帰モデルを作成するステップと、前記複数(K)の第2の装置各々の個別の予測モデルとしての複数(K)の回帰モデルの係数及び切片を、当該装置各々の特徴項目値(または装置設置環境計測値など)から予測する、類似装置共通メタ予測モデルを作成するステップと、前記メタ予測モデルに、前記第1の装置の特徴項目値(または装置設置環境計測値など)を入力して、当該装置専用の前記第1の予測モデルとしての回帰モデルの係数及び切片を生成するステップと、を有する。
【0031】
前記第2のステップでは、前記第1の装置専用の前記第1の予測モデルに、当該装置の複数のデータ項目における説明変数(X)を入力して、目的変数(Y)の予測値を計算するステップと、前記目的変数(Y)の実測値と、当該予測値との間における乖離度を計算するステップと、前記乖離度としきい値とを比較することで前記第1の装置の異常を検知するステップと、を有する。
【0032】
また、本形態の方法は、前記複数(K+1)のうち少なくとも1つの第1の装置の異常検知(判定)に基づき異常原因を診断する処理を行う装置異常監視方法である。前記複数(K+1)の装置のうち、1つの第1の装置が、原因診断の対象(診断モデル作成対象)となり、それと類似する他の複数(K:2つ以上)の第2の装置が、前記第1の装置の診断のための第2の予測モデル(それを含んで成る診断モデル)を生成するためのデータを取得する対象となる。本形態は、前記複数(K)の装置の異常検知後の原因診断に基づき、前記複数(K)の第2の装置各々の個別の診断モデルを作成して蓄積し、それら複数の個別の診断モデルに基づいて、前記第1の装置の診断のための診断モデルの生成を行う第1のステップと、所定時間単位で、前記第1の装置の前記複数のデータ項目を入力し、当該装置の状態の異常を監視及び判定し、異常を検知した場合には原因診断処理を実行する第2のステップと、を有する。
【0033】
前記第1のステップでは、前記複数(K)の第2の装置各々の個別の診断モデルを作成し、当該各装置の特徴項目値(または装置設置環境計測値など)を付して蓄積するステップと、前記蓄積された複数(K)の個別の診断モデルを、当該装置の特徴項目値などに基づいて分類した類似装置共通のメタ診断モデルを作成するステップと、前記メタ診断モデルに、前記第1の装置の特徴項目値などを入力して、当該第1の装置専用の診断モデルを生成するステップと、を有する。
【0034】
前記第2のステップでは、前記異常を検知した場合に、前記第1の装置専用の診断モデルに対し、前記第1の装置からのデータ項目を入力して、当該診断モデルを構成する各々のモデル(パターン)とのマッチング(照合)を行うステップと、前記マッチングしたモデルに基づき原因の情報を出力するステップと、を有する。
【発明の効果】
【0035】
本願において開示される発明のうち、代表的なものによって得られる効果を簡単に説明すれば以下の通りである。本発明の代表的な実施の形態によれば、装置異常監視方法及びCBMの技術に係わり、(1)精度良い異常検知が可能なモデル及びそれを用いた監視、(2)更に、異常原因の部品等の推定による保守の効率化、などを実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の実施の形態1のシステム(装置異常監視システム)及び方法(装置異常監視方法)における、状態異常監視判定処理のための主要部の構成例を示す図である。
【図2】本発明の実施の形態2のシステム(装置異常監視システム)及び方法(装置異常監視方法)における、状態異常監視判定処理及び異常(故障)原因診断処理のための主要部の構成例を示す図である。
【図3】実施の形態1,2のシステムを実装するコンピュータシステムの構成例を示す図である。
【図4】実施の形態1における、例えば第2の装置(a)を対象とした、判定モデル作成モジュールの個別装置専用判定モデル作成サブモジュールに関する詳細構成を示す図である。
【図5】実施の形態1における、(a)は、装置のデータ項目分類(表)の例を示す図であり、(b)は、(a)の記憶の形式を示す図である。
【図6】実施の形態1における、(a)は、1番目の類似装置の予測モデルの例を示す図であり、(b)は、2番目の類似装置の予測モデルの例を示す図である。
【図7】実施の形態1における、第1の装置(T)を対象とした、状態監視異常判定モジュールに関する詳細構成を示す図である。
【図8】実施の形態1における、個別装置(a)専用判定モデル作成モジュールの処理フローを示す図である。
【図9】実施の形態1における、類似装置共通メタ判定モデル作成モジュールの処理フローを示す図である。
【図10】実施の形態1における、装置特徴構成データの例を示す図である。
【図11】実施の形態1における、個別装置(T)専用判定モデル生成モジュールの処理フローを示す図である。
【図12】実施の形態1における、第1の装置(T)を対象とした、状態監視異常判定モジュールの処理フローを示す図である。
【図13】実施の形態1における、目的変数(Y)として選択した状態データ項目値の推移の例を示す図であり、(a)は、2台の類似装置(a,b)のそれぞれの目的変数データ実測値、(b)は、第1の装置(T)の判定モデルの予測値(PdY)に関する推移を示す。
【図14】実施の形態1における、メタ判定モデルの生成例を示す図であり、(a)は、複数の個別装置専用判定モデルの係数(AC)からメタ判定モデル(ACについての線形回帰式)を作成する様子を示し、(b)は、メタ判定モデルから第1の装置(T)の専用の判定モデルの係数(AC)を生成する様子を示す。
【図15】実施の形態1における、第1の装置(T)の目的変数として選択した状態データ項目値の推移の例を示す図であり、(a)は、予測値(PdY)と実測値(Y)、(b)は、それらの乖離値(EY)に関する推移を示す。
【図16】実施の形態2における、個別装置専用診断モデル作成モジュールの処理フローを示す図である。
【図17】実施の形態2における、状態データ項目間のグラフネットワーク因果モデルを示す図であり、(a)は、正常状態のグラフィカルモデル、(b)は、異常状態のグラフィカルモデルを示す。
【図18】実施の形態2における、個別装置専用診断モデル(そのデータ)の要素記述例を示す図である。
【図19】実施の形態2における、類似装置共通メタ診断モデル作成モジュールの処理フローを示す図である。
【図20】実施の形態2における、メタ診断モデルの作成方法を示す図であり、(a)は、個別装置専用診断モデルの装置特徴項目による管理方法、(b)は、固有診断モデルと汎用診断モデルの分類方法を示す。
【図21】実施の形態2における、第1の装置(T)を対象とした、個別装置(T)専用診断モデル生成モジュールの処理フローを示す図である。
【図22】実施の形態2における、異常原因診断モジュールの処理フローを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための全図において、同一部には原則として同一符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。なお、本実施の形態の装置異常監視方法及びシステムは、装置状態の監視による異常判定及び異常原因診断のみならず、それらの結果に基づいて装置の保守等を指示する装置保守方法及びシステムを含んでいる。また、特に明示していない場合、各動作主体は、主にコンピュータの情報処理(プログラムやプロセッサ等)である。
【0038】
<概要>
まず、本形態の概要は以下である(符号は後述の図面と対応)。図1等のように、本システムでは、複数(K+1)の装置1のうち、新設の装置(T)の監視(異常判定)に係わり、判定モデル作成モジュール2では、既設の複数(K)の類似装置(a,b等)毎に、個別の判定モデルを作成する。即ち、個別装置毎に、複数の状態データ(DS)をもとに、回帰分析に基づく説明変数(X)からの目的変数(Y)の予測モデルを作成する。次に、これら個別の予測モデルの係数及び切片を、各装置1の特徴項目値等から予測するメタ予測モデルを作成する。そして、このメタ予測モデルから、対象の装置(T)専用の予測モデル(それを含んで成る判定モデル)を生成する。この判定モデルを用いて、判定モジュール3Tは、装置(T)の状態を監視して異常検知を行う(検知情報を出力する)。
【0039】
また、図2等のように、本システムでは、装置(T)の上記異常検知に基づき、更に、当該異常に関する診断を行う場合、診断モデル作成モジュール4では、複数の類似装置(a,b等)各々の異常事例(そのデータ)に対して、当該装置毎に個別の診断モデルを作成する。これら診断モデルを、各装置1の特徴項目値等から選択(分類)して、対象の装置(T)専用の診断モデルを生成する。この診断モデルを用いて、診断モジュール5Tは、上記異常検知に基づき、対象の装置(T)の異常(故障)の原因の診断を実行する(推定される原因の情報などを出力する)。
【0040】
(実施の形態1)
図1、図3〜図15等を用いて、本発明の実施の形態1の装置異常監視方法及びそのシステムについて説明する。実施の形態1では、異常判定機能を備える。監視判定の対象の装置(T)に対し、複数の類似装置(a,b等)の個別の判定モデル(Ma1,Mb1等)及びそれらに基づくメタ判定モデル(MM1)を作成し、それに基づき対象の装置(T)の専用の判定モデル(MT1)を生成し、これを用いて判定(状態監視異常判定)を実行する処理までを行う。類似装置群の横断的な判定モデルを作成し、対象の装置(T)のモデル・データを、他の類似装置(a,b等)のモデル・データに基づいて類推し、学習するものである。なお異常判定を行うためのモデル(予測モデル等を含んで成る)を判定モデルと称することにする。
【0041】
<システム(1)>
図1は、実施の形態1の装置異常監視方法を実現するシステム(装置異常監視システム)を示している。なお、各図面における各モジュール・サブモジュール(処理部)は、所定のハードウェア及びソフトウェアを用いて一般的なコンピュータの情報処理により実現される。そのコンピュータシステムとしての構成例は図3に示される(後述)。
【0042】
本システムで、処理対象となる複数(K+1:3つ以上)台の装置(類似装置)1を有する。例えば、図1中、1台目(#0)の装置(T)1T,2台目(#1)の装置(a)1a,3台目(#2)の装置(b)1b等を有する(#は識別番号)。図示しないが4台目以降の装置(#3(c),#4(d),……,#K)もある。
【0043】
装置(T)1Tは、本例では、新規に設置された、監視等の対象(即ち判定モデル生成対象)として選択される装置である。新設の装置(T)1Tは、異常事例のデータ(モデル作成のためのデータ)の数・量が少ない。それに対し、装置(a)1a,(b)1b等の複数(K:2つ以上)の装置1(#1(a),#2(b),……,#K)は、装置(T)1Tに対して類似の特徴や構成などを持つ装置(類似装置)である。即ち、全体の複数(K+1)の装置1は、類似装置群(グループ)である。装置(T)1T以外の複数(K)の類似装置1は、複数(K+1)の装置1間で共用可能なモデルを作成するための対象となる、既設の装置であり、モデル作成可能な数・量のデータの蓄積が進んでいる。少なくとも2つ以上の装置1が、対象の装置(T)1Tの判定モデルを作成するための対象(データ元)として選択される。本例では、簡単のため、その対象として、2台の装置(a,b)を用いる例を説明する。
【0044】
装置1(T,a,b等)は、それぞれ、例えばエネルギー変換装置(熱電併給装置、電気装置、動力装置、または熱源装置など)等の装置(設備、システム等)である。なお1つの装置1は、複数の装置やモジュール等から成るシステム等であっても構わない。複数の装置1は、必ずしも同一の設計図から複製(製造)された装置である必要は無く、それらの間で類似の特徴や構成などを持つ類似装置であればよい。また類似装置としては、同型装置が含まれていてもよい。同型装置同士でも、その設置環境(例えば装置の周囲の気温)などが異なれば、装置状態(計測されるデータ項目値)は異なってくる。
【0045】
装置1毎に、所定の部位や種類の状態を計測する複数(n:2つ以上)のセンサS(S:S1,……,Sn)が内蔵または外部近隣に具備される。複数のセンサSは、それぞれ、対応するセンサデータ(装置状態計測データ)DSを出力する。
【0046】
本システムは、装置1に対し、判定モデル作成モジュール2、状態監視異常判定モジュール(判定モジュール)3T等を有する。各モジュール(2,3T)は、データを記憶するための記憶モジュール(DB)として、装置情報DB6,モデルDB7などを利用する。
【0047】
装置情報DB6には、装置1に関する装置特徴構成データ(DD)などが格納される。装置特徴構成データ(DD)は、装置1毎の基本的な構成情報や、複数の類似装置1における特徴や構造などの差異を区別する特徴変数項目値や装置設置環境計測値などを含むデータである。
【0048】
モデルDB7には、装置1の判定モデルに関するデータ(71〜74)が格納される。具体的には、類似装置共通メタ判定モデル(MM1)のデータ71、個別装置(T)専用判定モデル(MT1)のデータ72、個別装置(a)専用判定モデル(Ma1)のデータ73、個別装置(b)専用判定モデル(Mb1)のデータ74等がある。
【0049】
判定モデル作成モジュール2は、データ元の複数(2つ)の各装置(a,b)からのセンサデータDSや、装置情報DB6のデータ(DD)や、モデルDB7のモデルのデータなどを用いて、対象の装置(T)に関する、状態監視による異常判定のための判定モデル(MT1)を作成及び更新等する処理を行う。
【0050】
判定モデル作成モジュール2は、サブモジュール(処理部)として、複数(2つ)の個別装置(a,b)専用判定モデル(Ma1,Mb1)作成部2Sa,2Sbと、類似装置共通メタ判定モデル(MM1)作成部2Cと、個別装置(T)専用判定モデル(MT1)生成部2Gとを備える。
【0051】
Ma1,Mb1作成部2Sa,2Sbは、それぞれ、対応する装置1(a,b)からの複数のセンサデータDSや装置情報をもとに、個別の装置(a),(b)専用の判定モデル(Ma1,Mb1)を作成する処理部である。MM1作成部2Cは、2Sa,2Sbで作成されたモデル(Ma1,Mb1)や装置特徴構成データ(DD)をもとに、類似装置1共通のメタ判定モデル(MM1)を作成する処理部である。MT1生成部2Gは、2Cで作成されたメタ判定モデル(MM1)や対象の装置(T)の装置特徴構成データ(DD)をもとに、対象の装置(T)専用の判定モデル(MT1)を生成する処理部である。
【0052】
判定モジュール3Tは、対象の装置(T)1TからのセンサデータDSと、判定モデル作成モジュール2(モデルDB7)による判定モデル(MT1)のデータを用いて、対象の装置(T)の状態監視(異常判定)の処理を行い、その結果、当該装置(T)の異常(異常兆候)を検知した場合に、検知情報として装置停止指示情報D1等を当該装置(T)1T等へ出力することにより、当該装置1の稼働を停止させることができる。
【0053】
本実施の形態としては、複数の各装置1に対して同じ機能(モジュール)が接続される、対称的な構成とする。図1では、最低限の要素として、監視対象の装置(T)に対しては判定モジュール3Tが接続され、データ元の類似装置(a,b)に対しては判定モデル作成モジュール2が接続されているが、各装置1毎に同様のモジュール(2相当及び3T相当)が接続される構成とする。これにより、各装置1のいずれも、監視対象やデータ元として選択が可能である。勿論、監視対象等を固定する場合は、図1のような最低限の要素のみの構成としてもよい。
【0054】
<システム(2)>
図2に、実施の形態2のシステム構成を図1と同様に示している。実施の形態2では、異常判定機能に加えて原因診断機能を備える。先に図2の実施の形態2のシステム構成を説明し、実施の形態2の詳細については実施の形態1の詳細の後で説明する。
【0055】
図2のシステムは、図1と同様の装置1(T,a,b等)及び各装置1毎に接続される判定モジュール3(3T,3a,3b等)等に対し、更に、診断モデル作成モジュール4、異常原因診断モジュール(診断モジュール)5T等を備える構成である。なお各判定モジュール3は、図1と同様に、判定モデル作成モジュール2(図示省略)により作成した判定モデル(MT1,Ma1,Mb1等)を用いて判定処理を行う。
【0056】
データ元の複数(例えば2つ)の類似装置(a)1a,(b)1b等及びそれに対応付けられる各判定モジュール3a,3b等に対し、診断モデル作成モジュール4が接続されている。監視及び診断等の対象となる1つの装置(T)1T及びそれに対応付けられる判定モジュール3Tに対し、診断モジュール5Tが接続されている。また、各モジュール(4,5T等)は、記憶モジュール(DB)として、装置情報DB6、モデルDB8等を利用する。
【0057】
診断モデル作成モジュール4は、処理対象(データ元)の複数の装置1(a,b等)からのセンサデータDS(及び判定モジュール(3a,3b)からの判定結果情報など)や、装置情報DB6からの装置特徴構成データDDなどを用いて、対象の装置(T)1Tに関する診断(異常原因診断)のためのモデル(診断モデル)を作成及び更新等する処理を行う。
【0058】
診断モデル作成モジュール4は、サブモジュール(処理部)として、個別装置(a,b)専用診断モデル(Ma2,Mb2)作成部4Sa,4Sbと、類似装置共通メタ診断モデル(MM2)作成部4Cと、個別装置(T)専用診断モデル(MT2)生成部4Gとを備える。
【0059】
Ma2,Mb2作成部4Sa,4Sbは、それぞれ、対応する装置1(a,b)からのデータ(DS)や判定モジュール3a,3bからのデータをもとに、個別の装置1(a,b)専用の診断モデル(Ma2,Mb2)を作成する処理部である。MM2作成部4Cは、4Sa,4Sbで作成された診断モデル(Ma2,Mb2)や装置特徴構成データ(DD)をもとに、複数(K+1)の類似装置1で共通のメタ診断モデル(MM2)を作成する処理部である。MT2生成部4Gは、4Cで作成されたメタ診断モデル(MM2)や対象の装置(T)の装置特徴構成データ(DD)をもとに、対象の個別の装置(T)1T専用の診断モデル(MT2)を生成する処理部である。
【0060】
診断モジュール5Tは、診断対象の装置(T)1TからのセンサデータDSや、判定モジュール3Tからのデータや、診断モデル作成モジュール4による診断モデル(MT2)のデータを用いて、診断対象の装置(T)の異常原因を診断する処理を行う。その結果、装置保全箇所指示情報(保守指示情報)D2などを、装置(T)またはその保守装置(図3、54)へ出力する。これにより、保守作業を効率化でき、装置(T)の保全時間(修理時間)を短縮させることができる。
【0061】
<コンピュータシステム>
図3は、図1や図2のシステムを実装するコンピュータシステムの構成例を示している。図1や図2の各モジュール等の要素は、本コンピュータシステムにおいて、主にコンピュータで動作するプログラムの形で実現されている。各モジュール(対応プログラム)とコンピュータとの対応付けは図3の通りである。各コンピュータは、図示しないプロセッサ、メモリ、通信インタフェース、入出力装置等を備える。コンピュータ間の接続は例えば専用線や通信ネットワークなどによる。
【0062】
本コンピュータシステムにおいて、装置1(例えばT,a,b)に対し、センサ情報管理コンピュータ51と、異常監視実行コンピュータ52と、モデル管理コンピュータ53と、保守装置(保守作業端末)54とを有する。装置1毎に保守装置54が対応付けられている。また、本例では、装置1毎に、センサ情報管理コンピュータ51、及び異常監視実行コンピュータ52が、1対1で接続されており、複数の異常監視実行コンピュータ52(及び保守装置54)に対して1つのモデル管理コンピュータ53が対応付けられる。各装置1は、それぞれ遠隔の場所に設置される場合もある。例えば1つのモデル管理コンピュータ53に対し、通信ネットワーク50を介して各装置(複数の異常監視実行コンピュータ52等)が接続される。
【0063】
センサ情報管理コンピュータ51は、装置1の複数(n)のセンサS(S1〜Sn)と接続されており、複数のセンサSを通じて装置1の状態計測データ(センサデータ)DSをサンプリング、収集する、装置状態計測インタフェース機能を備える。
【0064】
異常監視実行コンピュータ52は、センサ情報管理コンピュータ51、保守装置54、及びモデル管理コンピュータ53と接続されており、プロセッサがメモリ上のプログラムやデータを実行することにより、前述した、判定モジュール3(3T)及び診断モジュール5(5T)等を、対応するプログラム3P、5Pの処理により実現する。異常監視実行コンピュータ52は、複数の各装置1(T,a,b等)に対して個別に準備、接続される。あるいは、1つの異常監視実行コンピュータ52の内部のプログラムが各装置1に対して個別に実行される構成などでもよい。
【0065】
モデル管理コンピュータ53は、複数の装置1の異常判定や診断等に関するモデルを管理する。モデル管理コンピュータ53は、異常監視コンピュータ52と接続されており、前述した、判定モデル作成モジュール2(サブモジュール:2Sa,2Sb等、2C、2G)や、診断モデル作成モジュール4(サブモジュール:4Sa,4Sb等、4C、4G)等を、対応するプログラム2P(2SP、2CP、2GP)、4P(4SP、4CP、4GP)等の処理により実現する。
【0066】
他の構成例としては、診断モジュール5(対応プログラム5P)を、異常監視実行コンピュータ52とは別のコンピュータやモデル管理コンピュータ側に設ける構成なども可能である。
【0067】
保守装置54は、例えば保守作業者(U1)が使用する端末である。保守装置54は、異常監視コンピュータ52と接続され、保守作業指示、保守履歴記録などの機能を、対応するプログラムの処理により実現する。保守作業指示のプログラムは、例えば、異常監視コンピュータ52からの装置保全箇所指示情報D2を保守装置54のディスプレイ画面に表示する処理を行う。保守履歴記録のプログラムは、例えば、保守作業者(U1)による異常原因などの入力処理を含む保守履歴記録の処理を行う。なお保守装置54は、例えば装置1に対して独立した装置の他、装置1に内蔵や接続される装置(機能)の場合もある。
【0068】
システム管理者(U2)は、本システムのコンピュータに対し、本システムの管理や設定の操作、例えば、使用する方式や、目的変数(Y)などの設定などを行う。各しきい値などの必要な数値や情報は、本システムに対し予め設定されているか、またはシステム管理者(U2)などにより適宜設定されるようになっている。
【0069】
なお、記憶モジュール(6,7,8等)は、システム内のいずれの箇所にあっても構わない。例えば、判定モデル作成モジュール2の機能を備えるモデル管理コンピュータ53内に、モデルDB7や装置情報DB6を備える等である。
【0070】
<判定モデル作成モジュール>
次に、図4において、実施の形態1の判定モデル作成モジュール2の個別装置専用判定モデル(Ma1,Ma2)作成部2Sa,2Sb(例として2Saの場合)の詳細構成を示している。対応する処理フローは図8に示す。Ma1作成部2Saは、処理部として、データ項目分類部22、個別装置(a)専用予測モデル(Ma)構築部23、(個別装置(a)対応)集団予測乖離度計算モデル(MG:MaG)構築部24などを備え、装置情報DB6、モデルDB7等を利用する。
【0071】
Ma1作成部2Saは、処理対象の個別の装置(a)1aの複数のセンサSからの状態計測データDSを入力し、記憶モジュール等に履歴として格納する。
【0072】
データ項目分類部22では、状態計測データDSのデータ項目(パラメータ)を、目的変数(Y)と、共線性説明変数(XC)と、独立性説明変数(XD)とに、統計的に分類する。この分類は、例えば、目的変数(Y)に対する各説明変数(X)の相関を調べることによって行う。本例では、図4に示す4個のデータ項目:P4(Y)220,P1(XC1)221,P2(XC2)222,P3(XD)223を有し、これらは、図5(a)に示す相関が得られた場合の分類の例である。
【0073】
図5(a)で、状態計測データDSによる4個のデータ項目P1〜P4が、P1:目的変数(Y)220と、第1(#1)の共線性説明変数(XC1)221と、第2(#2)の共線性説明変数(XC2)222と、1つの独立性説明変数(XD)223とに分類された例を示す。P1(XC1)221は、P4(Y)220に対して0.8の相関を持つ。P2(XC2)222は、P4(Y)220に対して0.9の相関を持つ。P3(XD)223は、P4(Y)220に対して0.2の相関を持つ。
【0074】
これらのデータ項目分類は、図5(b)に示す形式(表)で、データ項目分類(データ)250として、記憶モジュール(モデルDB7または装置情報DB6)等に記憶される。
【0075】
データ項目分類250に基づき、Ma構築部23では、個別の装置(a)1aに関して、共線性説明変数(XC)毎に作成される複数(本例では2つ)の予測モデル(Ma:Ma#1(MaXC1),Ma#2(MaXC2))が構築される。予測モデル(Ma)として、本例では、2つの共線性説明変数XC(XC1,XC2)に対応して、第1の予測モデル(Ma#1(MaXC1))、第2の予測モデル(Ma#2(MaXC2))を有する。Ma#1(MaXC1)は、目的変数(Y)220と、第1の共線性説明変数(XC1)221と、独立性説明変数(XD)223とを用いて構築される。Ma#2(MaXC2)は、目的変数(Y)220と、第2の共線性説明変数(XC2)222と、独立性説明変数(XD)223とを用いて構築される。これらの個別装置(a)1a専用の予測モデル(Ma:Ma#1(MaXC1),Ma#2(MaXC2))のデータは、記憶モジュール(モデルDB7)等に格納される。
【0076】
なお、予測の対象となる目的変数(Y)220は、システム管理者(U2)等による指定(設定)、またはコンピュータによる自動計算などにより決定される。目的変数(Y)の設定の例は、装置1の出力として例えば電力([W])である。
【0077】
MaG構築部24では、上記構築された複数(2つ)の予測モデル(Ma:MaXC1,MaXC2)から成る集団予測モデル251(集団予測乖離度計算モデルMaGを含む)を構築する。そして、図6(a)に示す形式(表)で、モデルDB7内に、集団予測モデル251を含んで成る個別装置(a)専用判定モデル(Ma1)のデータ73として記憶する。MaGについては後述する。
【0078】
上記と同様にして、他の類似装置(b)1bについても、Mb1作成モジュール2Sbにより、複数(2つ)の予測モデル(Mb:Mb#1(MbXC1),Mb#2(MbXC2))から成る集団予測モデル252(集団予測乖離度計算モデルMbGを含む)が構築され、図6(b)に示す形式で、モデルDB7内に、集団予測モデル252を含んで成る個別装置(b)専用判定モデル(Mb1)のデータ74として記憶される。
【0079】
上記の各装置(a,b)の予測モデル(Ma,Mb)を含む判定モデル(Ma1,Mb1)のデータ(73,74)は、メタ判定モデル(MM1)作成部2Cにおいて、メタ判定モデル(MM1)を作成するために利用される。MM1作成部2Cの処理フローは図9に示す。MM1作成部2Cは、作成したメタ判定モデル(MM1)のデータを、モデルDB7内に、データ71として格納する。
【0080】
上記メタ判定モデル(MM1)のデータ71は、個別装置(T)専用判定モデル(MT1)生成部2Gにおいて、新規設置の監視対象の装置(T)1Tのための専用の判定モデル(MT1:予測モデル(MT)及び集団モデル(MTG)を含んで成る(後述))等を生成するために利用される。MT1生成部2Gの処理フローは図11に示す。MT1生成部2Gは、生成したT専用判定モデル(MT1)のデータを、モデルDB7にデータ72として格納する。
【0081】
<判定モジュール>
次に、図7において、新規設置の監視対象の装置(T)1Tを想定した状態監視異常判定モジュール3Tの詳細構成を示している。判定モジュール3Tは、処理部として、データ項目分類部32、及び異常兆候判定部33を有する。これらの処理部では、判定モデル作成モジュール2(即ちMT1作成モジュール)が装置(T)1Tのために生成し記憶モジュール(モデルDB7)に格納した、個別装置(T)専用判定モデル(MT1)のデータ72を入力して利用する。
【0082】
データ項目分類部32では、個別装置(T)専用判定モデル(MT1)のデータ72に基づき、装置(T)の複数のセンサSからの状態データ(DS)の項目を分類する。本例では、データ項目P1〜P4が、P1:第1の共線性説明変数(XC1)321と、P2:第2の共線性説明変数(XC2)322と、P3:独立性説明変数(XD)323と、P4:目的変数(Y)320とに分類された例を示す。
【0083】
異常兆候判定部33では、処理部として、第1(#1)のT専用予測モデル(MT#1:MTXC1)による第1(#1)の予測値(PdY1)計算部331、第2(#2)のT専用予測モデル(MT#2:MTXC2)による第2(#2)の予測値(PdY2)計算部332、第1(#1)の予測値乖離度(EY1)計算部333、第2(#2)の予測値乖離度(EY2)計算部334、集団予測乖離度(EG)計算部335、しきい値(H)との照合による異常判定部336を有する。
【0084】
PdY1計算部331では、XC1(321)とXD(323)から、第1(#1)の予測モデル(MT#1:MTXC1)により第1(#1)の予測値(PdY1)を計算する。PdY2計算部332では、XC2(322)とXD(323)から、第2の予測モデル(MT#2:MTXC2)により第2(#2)の予測値(PdY2)を計算する。
【0085】
EY1計算部333では、Y(320)と第1の予測値(PdY1)から、PdY1の乖離度(第1の予測乖離度:EY1)を計算する。EY2計算部334では、Y(320)と第2の予測値(PdY2)から、PdY2の乖離度(第2の予測乖離度:EY2)を計算する。
【0086】
EG計算部335では、第1と第2の予測乖離度(EY1,EY2)から、集団予測乖離度(EG)を計算する。異常判定部336では、集団予測乖離度(EG)を、しきい値(H)と比較照合して、異常判定を行う。そして、その異常判定の結果(異常の有無)と、第1及び第2の予測乖離度(EY1,EY2)とを含む情報を、検知情報(D0)として出力する。
【0087】
<個別装置専用判定モデル作成処理>
次に、図8において、判定モデル作成モジュール2の例えば個別装置(a)専用判定モデル(Ma1)作成部2Saによるa専用判定モデル(Ma1)の作成処理フローを示している(Sは処理ステップを示す)。各処理ステップの主体は、当該処理部(2Sa)対応のプログラム(2SP)である。
【0088】
S101では、処理対象の装置(a)1aの状態計測データDSの履歴データを収集する。
【0089】
S102では、データ項目分類部22により、装置(a)1aのデータ(DS)の複数の状態データ項目の各々の中から、目的変数(Y)と説明変数(X)を指定(分類)する。
【0090】
S103では、データ項目分類部22により、説明変数(X)を目的変数(Y)に対する共線性モードと独立性モードに分類する。即ち、前述の共線性説明変数(XC:XC1,XC2)と独立性説明変数(XD)に分類される。
【0091】
S104では、予測モデル(Ma)構築部23により、共線性説明変数(XC:XC1,XC2)と独立性説明変数(XD)とを組み合わせて、共線性説明変数(XC)の数(本例では2つ)の分だけ、共線性説明変数(XC)毎の目的変数(Y)に対する個別装置(a)専用予測モデル(Ma:Ma#1(MaXC1),……)を作成する。
【0092】
個別装置専用予測モデル(一般)を線形回帰式で表した例を、式(1)に示す。式(1)の記号の意味は次の通り。Ypred:目的変数(Y)の予測値、XC:共線性説明変数(XC)の実測値、XD:独立性説明変数(XD)の実測値、aC:共線性説明変数(XC)に対する係数(AC)、aD:独立性説明変数(XC)に対する係数(AD)、b:目的変数(Y)予測式の切片(B)、t:データ収集時刻(サンプリング番号)、p:共線性説明変数データ項目(XC)の識別記号、q:独立性説明変数データ項目(XD)の識別記号、m:装置1の識別記号。
【0093】
【数1】
【0094】
即ち、式(1)に基づき、例えば、前述の装置(a)1aに対するXC1とXDの組み合わせに対応する第1の予測モデル(Ma#1:MaXC1)は、式(2)によって表され、また、XC2とXDの組み合わせに対応する第2の予測モデル(Ma#2:MaXC2)は、式(3)によって表される。なお、装置(a)の識別記号m=aと係数A(aC)等は異なり、装置(b)の識別記号m=bと切片B(b)等は異なる。
【0095】
【数2】
【0096】
【数3】
【0097】
これらの線形回帰式の係数(AC,AD)及び切片(B)を、最小二乗法あるいはMCMC法などによって、履歴データ(Y,XC,XD)から求めれば、個別装置専用予測モデルを得ることができる。ただし、この予測モデルは、線形回帰式に限るわけではなく、非線形回帰式や回帰木などを用いても良い。
【0098】
S105では、集団予測乖離度計算モデル(MaG)構築部24により、上記複数の予測モデル(Ma:MaXC1,MaXC2)の各々の予測値(PdY)と実測値(Y)との乖離度(予測乖離度:EY)を組み合わせて統合した値である集団予測乖離度(EG)を計算するための集団予測乖離度計算モデル(MG:例えば装置(a)に対応するMaG)を構築する。予測乖離度(EY)(一般)は、式(4)によって表される。式(4)の記号の意味は次の通り。EY:目的変数(Y)の乖離値(予測乖離度)、Ymeas:目的変数(Y)の実測値、Ypred:目的変数(Y)の予測値。
【0099】
【数4】
【0100】
具体的には、例えば前述の装置(a)1aに対するXC1とXDの組み合わせに対応する予測乖離度(EY:EY1)は、式(5)から計算され、また、XC2とXDの組み合わせに対応する予測乖離度(EY:EY2)は、式(6)から計算される。
【0101】
【数5】
【0102】
【数6】
【0103】
集団予測乖離度(EG)を、各々の予測乖離度(EY)の規格値の総和とした場合の集団予測乖離度計算モデル(MG)(一般)は、式(7)によって表される。
【0104】
【数7】
【0105】
具体的には、式(5)と式(6)の計算結果の和として、式(8)によって表される。
【0106】
【数8】
【0107】
式(7)及び式(8)における係数は、予測乖離度(EY)を規格化するためのものであり、各装置1の正常状態の時間区間の予測乖離度(EY)から予め計算する。
【0108】
S106では、上記構築された集団予測乖離度計算モデル(例えばMaG)を、上記個別装置専用予測モデル(Ma)のデータと共に、個別装置(a)専用の判定モデル(Ma1)のデータ(73)として、記憶モジュール(モデルDB7)へ格納する。
【0109】
上記予測モデル(Ma)及び集団予測乖離度計算モデル(MaG)は、履歴データが記憶モジュールに蓄積されることにより、個別の判定モデルの作成の対象となっている他の類似装置1(例えば(b)1b)に対しても同様に作成される。例えば個別装置(b)専用判定モデル(Mb1)のデータ74が同様に記憶モジュール(モデルDB7)へ格納される。
【0110】
<メタ判定モデル作成処理>
次に、図9において、判定モデル作成モジュール2の類似装置共通メタ判定モデル(MM1)作成部2Cによる類似装置共通メタ判定モデル(MM1)の作成処理フローを示している。各処理ステップの主体は、当該処理部(2C)対応のプログラム(2CP)である。
【0111】
S201では、前述の複数(2つ)の個別装置(a,b)専用判定モデル(Ma1,Mb1)を、記憶モジュール(モデルDB7)から収集する。例えば、第1の個別装置(a)1aの専用の判定モデルMa1(データ73)、及び第2の個別装置(b)1bの専用の判定モデルMb1(データ74)を取得する。a専用の判定モデルMa1は、共線性説明変数データ項目P1(XC1),P2(XC2)に対する予測モデル(Ma:MaXC1,MaXC2)を含む。また、その類似装置(b)1bの専用の判定モデルMb1は、共線性説明変数データ項目P1(XC1),P2(XC2)に対する予測モデル(Mb:MbXC1,MbXC2)を含む。
【0112】
S202では、類似装置1(T,a,b等)間の特徴や構造などの差異を表すデータ(装置特徴構成データDD)(特徴項目変数値など)を、装置情報DB6から、装置1毎に収集する。
【0113】
図10に、装置特徴構成データDD(特徴項目変数値など)の例を示す。特に監視対象の装置(T)1T以外の類似装置(a,b等)のデータ例である。対象の装置1が熱電併給装置の場合、例えば駆動機関の種別が、ガソリンエンジンか、ディーゼルエンジンか、ガスエンジンかが、類似の容積型内燃機関を用いた場合の差異特徴になる。図10に示すように、装置1(a,b等)毎に、1か0を取る3項目のデータで表現する。
【0114】
また、類似の容積型内燃機関を用いた場合の差異特徴としては、他に例えば、熱機関の理論サイクルがオットーサイクル(等容サイクル)かミラーサイクルかの違いがあり、同様に装置1毎に1か0を取る2項目のデータで表現する。また例えば、使用燃料が、ガソリン、軽油、水素、天然ガス、バイオガスの違いがあり、同様に5項目のデータで表現する。また例えば、エンジンの気筒数があり、装置1毎に気筒数を取るデータで表現する。
【0115】
また、類似の発電機を用いた場合の差異特徴として、例えば、発電機の定格出力、定格回転数、定格周波数、定格電圧、及び定格電流があり、装置1毎に定格値を取るデータで表現する。また例えば、発電機の種別が、同期発電機か、誘導発電機かがあり、装置1毎に1か0を取る2項目のデータで表現する。
【0116】
また、類似の容積型内燃機関を用いた場合の差異特徴として、装置1の設置場所の平均気温、平均湿度、及び平均気圧があり、装置1毎に平均気温、平均湿度、及び平均気圧を取るデータで表現する。平均気温、平均湿度、及び平均気圧は、モデル作成に用いるデータ収集期間の平均値、あるいは年間平均値などを用いる。
【0117】
なお、装置の特徴項目変数値は、複数の類似装置1を区別する変数(各装置1の特徴や構成や環境の違いを表す情報)であり、装置状態計測データ項目の概念とは異なるが、一部の変数が両者で重複する場合もある。また、装置1の特徴項目変数値には、装置1の設置環境の状態計測値(気温など)などの情報が含まれていてもよいし、外に関連付けされてもよい。
【0118】
S203では、上記収集した個別装置専用判定モデル(Ma1,Mb1)に含まれる予測モデル(Ma,Mb)のパラメータ(係数、切片)を、複数(K+1)の類似装置1について、類似装置1間の特徴構成データ(DD)(特徴項目変数値など)で説明(予測)する、類似装置共通メタ予測モデル(MM)を作成する。
【0119】
式(1)の予測モデルのパラメータである第一項の共線性説明変数(XC)の係数(AC)に対するメタ予測モデルを、線形回帰式で表した例を式(9)に示す。式(9)の記号の意味は次の通り。φ:装置1の特徴項目変数値、αC:係数aC予測式のメタ係数、βC:係数aC予測式のメタ切片、π:装置1の特徴項目変数の識別記号、p:共線性説明変数データ項目(XC)の識別記号。
【0120】
【数9】
【0121】
また、第二項の独立性説明変数(XD)の係数(AD)に対するメタ予測モデルを、線形回帰式で表した例を式(10)に示す。式(10)の記号の意味は次の通り。αD:係数aD予測式のメタ係数、βD:係数aD予測式のメタ切片、q:独立性説明変数データ項目(XD)の識別記号。
【0122】
【数10】
【0123】
また、第三項の切片(B)に対するメタ予測モデルを、線形回帰式で表した例を式(11)に示す。式(11)の記号の意味は次の通り。α0:切片b予測式のメタ係数、β0:切片b予測式のメタ切片。
【0124】
【数11】
【0125】
具体的には、式(9)の係数(AC)についてのメタ予測モデルは、第1の共線性説明変数データ項目(XC1(P1))について、前述の装置(a)1a,(b)1b等に対して、式(12)の関係を持つ。
【0126】
【数12】
【0127】
また、式(10)の係数(AD)についてのメタ予測モデルは、共線性説明変数データ項目(XC1(P1))について、前述の装置(a)1a,(b)1b等に対して、式(13)の関係を持つ。
【0128】
【数13】
【0129】
また、式(11)の切片(B)についてのメタ予測モデルは、共線性説明変数データ項目(XC1(P1))について、前述の装置(a)1a,(b)1b等に対して、式(14)の関係を持つ。
【0130】
【数14】
【0131】
これらの関係式は、最小二乗法あるいはMCMC法などの手段を用いて解くことができ、上記メタ予測モデル(MM)を作成できる。ただし、上記メタ予測モデルは、線形回帰式に限るわけではなく、非線形回帰式や回帰木などを用いても良い。第2の共線性説明変数データ項目(XC2(P2))についても同様に解くことができる。
【0132】
S204では、上記作成した類似装置共通メタ予測モデル(MM:AC,AD,Bに関する各メタ予測モデル)を、類似装置共通メタ判定モデル(MM1)のデータ71として、前述の個別の判定モデル(Ma1,Mb1)に含まれる集団予測乖離度計算モデル(MG:MaG,MbG)と共に、記憶モジュール(モデルDB7)へ格納する。
【0133】
<個別装置(T)専用判定モデル生成処理>
次に、図11において、判定モデル作成モジュール2の個別装置(T)専用判定モデル(MT1)生成部2Gによる、類似装置共通メタ判定モデル(MM1)からの個別装置(T)専用判定モデル(MT1)の生成処理フローを示している。各処理ステップの主体は、当該処理部(2G)対応のプログラム(2GP)である。
【0134】
S301では、前述のメタ判定モデル(MM1)を記憶モジュール(モデルDB7)から読み出す。このメタ判定モデル(MM1)は、前述のメタ予測モデル(MM:AC,AD,Bに関する各メタ予測モデル)と集団予測乖離度計算モデル(MG)を含む。
【0135】
S302では、判定モデル(MT1)の生成対象の装置(T)1Tについての、類似装置1(a,b等)に対する装置特徴構成データ(DD)を、装置情報DB6から収集する。
【0136】
この装置特徴構成データ(DD)(それに含まれている装置特徴項目変数値)は、対象の装置(T)1Tが熱電併給装置の場合、例えば、前述同様に、駆動機関の種別、熱機関の理論サイクル、使用燃料、エンジンの気筒数、発電機の定格出力、定格回転数、定格周波数、定格電圧、定格電流、装置の設置場所の平均気温、平均湿度、及び平均気圧などがある。
【0137】
S303では、メタ判定モデル(MM1)に含まれているメタ予測モデル(MM)(式(9)のAC、式(10)のAD、式(11)のB)に、対象の装置(T)1Tについての類似装置1に対する差異を表す値(特徴項目変数値)を代入して、説明変数データ項目(X)(p,q)毎に生成するT専用予測モデル(MT)の係数値(AC,AD)、及び切片(B)の値を確定する。これにより、対象の装置(T)1Tに対して、式(1)の個別装置専用予測モデル(MT:MT#1(MTXC1),MT#2(MTXC2))が、式(15)及び式(16)に示すように生成される。
【0138】
【数15】
【0139】
【数16】
【0140】
S304では、生成した個別装置(T)専用予測モデル(MT)、及び集団予測乖離度計算モデル(MG)を、個別装置(T)専用判定モデル(MT1)のデータ72として、記憶モジュール(モデルDB7)へ格納する。
【0141】
<状態監視異常判定処理>
次に、図12において、判定モジュール3Tによる対象の装置(T)1Tの状態監視異常判定の処理フローを示している。各処理ステップの主体は、当該モジュール(3T)対応のプログラム(3P)である。
【0142】
S110では、監視対象の装置(T)1Tについての個別装置(T)専用判定モデル(MT1)のデータ72を、記憶モジュール(モデルDB7)から読み出す。T専用判定モデル(MT1)は、T専用予測モデル(MT:MTXC1,MTXC2)と集団予測乖離度計算モデル(MG)を含む。
【0143】
S111では、装置(T)1Tの状態計測データDSの履歴データを収集する。
【0144】
S112では、データ項目分類部32により、装置(T)1Tのデータ(DS)の複数の状態データ項目の各々の中から、判定モデル(MT1)の指定に従って、目的変数(Y)と説明変数(X)を選択する。
【0145】
S113では、データ項目分類部32により、複数の説明変数(X)の中から、判定モデル(MT1)の指定に従って、目的変数(Y)に対する共線性説明変数(XC:XC1,XC2)と独立性説明変数(XD)を選択する。
【0146】
S114では、異常兆候判定部33により、共線性説明変数(XC)の項目数の分の複数(2つ)の予測モデル(MT)を用いて、目的変数(Y)に対する複数(2つ)の予測値(PdY:PdY1,PdY2)を、式(15)及び式(16)に基づき計算する。
【0147】
S115では、目的変数(Y)の実測値に対する各予測値(PdY:PdY1,PdY2)の乖離度(EY:EY1,EY2)を、式(17)及び式(18)に基づき計算する。
【0148】
【数17】
【0149】
【数18】
【0150】
S116では、集団予測乖離度(EG)計算部335により、各乖離度(EY:EY1,EY2)を組み合わせて、集団予測乖離度(EG)を、式(19)に基づき計算する。
【0151】
【数19】
【0152】
S117では、集団予測乖離度(EG)としきい値(H)とを比較照合する。S118では、比較の結果に基づき、異常判定を行う。異常有り(Yes)の場合、S119では、検知情報(D0)を出力する。検知情報(D0)は、例えば、装置停止指示情報(D1)や保守指示情報(D2)などである。
【0153】
<個別装置(T)専用判定モデルの生成例>
次に、個別装置(T)専用判定モデル(MT1)の生成の例などについて説明する。上述した装置状態計測データDSにおける目的変数(Y)の実測値(Y)、類似装置共通メタ予測モデル(ACに関するメタ予測モデル)、生成した個別装置(T)専用予測モデル(MT)の予測値(PdY)などについて、以下に例を挙げながら説明する。
【0154】
図13(a)は、状態計測データDSの目的変数データ項目(装置出力など)の実測値(Y)の推移を、2台の既設の個別類似装置(a)1a及び(b)1bについて示したものである。縦軸は、目的変数データ項目の実測値(Y)である。また、横軸は、装置(m)の稼働時刻(t)である。43mに装置(a)の実測値(Y)(Ymeas)の線を、また、44mにそれよりも出力が大きな装置(b)の実測値(Y)(Ymeas)の線を示す。この例では、個別の装置(a)及び(b)は、同じサイクルで稼働しているため、同じ変化点を有しているが、これに限る訳ではない。
【0155】
図13(b)は、状態計測データDSの目的変数データ項目(Y)の共線性説明変数データ項目(XC)(p)による予測値(PdY)の推移を、新規設置の装置(T)1Tについて示したものである。縦軸は、目的変数データ項目(Y)の予測値である。また、横軸は、装置(m=T)の稼働時刻(t)である。45pには、既設の2台(a,b)よりも出力が大きな新設の装置(T)1Tの予測値(PdY)(Ypred)の線を示す。この例では、新設の装置(T)は、類似の装置(a)及び(b)と同じサイクルで稼働しているが、これに限る訳ではない。
【0156】
図14(a)は、実測データから構築した個別装置専用予測モデルの係数の実測値を、複数の個別の装置1(a,b,c,d,……)について示したものである。縦軸は、実測データから構築した式(1)の個別装置専用予測モデルの第一項の共線性説明変数(XC1)に対する係数(AC)の値(aC(p,m))である。横軸は、類似装置1毎の特徴項目値である。プロット53a,53b,53c,53dは、それぞれ、装置(a),(b),(c),(d)の特徴項目値に対する係数値である。この例では、装置1の特徴項目値が1個の場合を示しているが、複数個存在しても構わない。141の直線は、図14(b)の線形回帰式による類似装置共通メタ予測モデルを示す(式(9)に基づく)。
【0157】
図14(b)は、類似装置共通メタ予測モデル(MM)から予測した個別装置(T)専用予測モデル(MT)の係数の装置特徴項目値についての予測値を示したものである。縦軸は、メタ予測モデル(MT)(141)から予測した式(1)の予測モデルの第一項の共線性説明変数(XC1)に対する係数(AC)の値である。横軸は、装置1毎の特徴項目値である。
【0158】
図15(a)は、新規設置の装置(T)の状態計測データDSの目的変数データ項目(Y)の共線性説明変数(XC)(p)による予測値(PdY)に重ねて、その実測値(PdY)の推移を示したものである。縦軸は、目的変数データ項目(Y)の予測値である。また、横軸は、装置(m=T)の稼働時刻(t)である。45p(点線)に装置(T)の予測値(PdY)を、また、45m(実線)に実測値(Y)を示す。この例では、目的変数データ項目(Y)より、変化点が時間先行している共線線説明変数データ項目(XC)から予測しているため、予測値(PdY)が実測値(Y)よりも時間先行している。
【0159】
図15(b)は、予測値(PdY)と実測値(Y)の乖離値(乖離度:EY)の推移を示したものである。縦軸は、目的変数データ項目(Y)の乖離値(EY)(45eの線)である。また、横軸は、装置(m=T)の稼働時刻(t)である。予測値(PdY)が実測値(Y)より時間先行しているため、立ち上がりで正の乖離値46epが発生し、立ち下がりで負の乖離値46emが発生している。図15(b)を装置(T)の正常状態の乖離値の推移とすると、式(7)及び式(8)における規格化係数を、乖離値46ep,46emから、例えばその平均値として得ることができる。
【0160】
前記図14(a)のプロット(53a〜53d)に対して、例えば最小二乗法で線形回帰式を求めれば、メタ係数(傾き)141a、及びメタ切片(切片)141bが決まり、式(9)の共線性説明変数(XC)に対する係数(AC)を予測するメタ予測モデル(141)が得られる。式(10)の独立性説明変数(XD)に対する係数(AD)及び式(11)の切片についても、図示しないが、同様に、それらを予測するメタ予測モデルを得ることができる。
【0161】
上記作成した類似装置共通メタ予測モデル(141)に対し、図14(b)に示すように、装置(T)の特徴項目値55T(φ(π,T))を代入すると、メタ予測値56T(装置(T)の係数(aC(p,T))の予測値)が決まる。メタ予測値56Tは、式(1)のT専用予測モデルの第一項の共線性説明変数(XC1)に対する係数(AC)に代入する。第二項の独立性説明変数(XD)に対する係数(AD)及び切片(B)についても、図示しないが、同様に、それらを予測するメタ予測モデルから予測値を得て代入することで得られる。以上により、式(1)の個別装置(T)専用予測モデル(MT)が生成される。
【0162】
上記生成した個別装置(T)専用予測モデル(MT)から、図13(b)に示すように、目的変数データ項目(Y)の予測値(PdY)を、式(15)に従い計算できる。図15(a),図15(b)に示すように、この予測値(PdY)と実測値(Y)から、式(17)に従い乖離度を計算することができる。別の共線性説明変数(XC2)に対しても、同様に、式(16)及び式(18)から乖離度を計算することができる。これらの乖離度から、集団乖離度を、式(19)に従い計算することができる。
【0163】
図15(a)に示す予測値(PdY)の実測値(Y)に対する時間先行の間隔が広がったり、予測値(PdY)の実測値(Y)の不一致が発生したりした場合、正常状態の乖離値よりも大きな異常状態の乖離値(異常乖離度)が発生する。この異常乖離度を含む集団乖離度を、しきい値と照合して、装置(T)の異常の有無を判定することができる。
【0164】
実施の形態1の異常判定機能については以上である。
【0165】
(実施の形態2)
次に、図2、図16〜図22等を用いて、本発明の実施の形態2の装置異常監視方法及びそのシステムについて説明する。実施の形態2では、実施の形態1の状態監視異常判定を実行する処理に加え、異常判定(検知)された装置に関する異常原因診断等の処理を行う。異常判定(検知)までの部分は実施の形態1と同様である。
【0166】
<異常原因診断処理>
実施の形態2のシステム構成(図2)に基づき、前記異常判定処理(図12)によって異常が検知された装置(T)1Tに関する、診断モジュール5T等を用いた異常原因診断処理について、図16以下を用いて説明する。
【0167】
<個別装置専用診断モデル作成処理>
まず、図16において、図2の診断モデル作成モジュール4における個別装置(a,b)専用診断モデル(Ma2,Mb2)作成部4Sa,4Sbによる診断モデル(Ma2,Mb2)作成処理フローを示している(例として4SaによるMa2の作成の場合)。各処理ステップの主体は、当該処理部(4Sa等)対応のプログラム(4SP)である。
【0168】
S401では、処理対象の装置(a)1aの状態(DS)の履歴データを、異常検知時点から遡って収集する。
【0169】
S402では、装置(a)1aの正常稼働区間の履歴データから、状態データ項目間の正常グラフィカルモデル(正常グラフネットワークモデル)を作成する。
【0170】
正常グラフィカルモデルは、例えば、状態データ項目間の相関強度から因果関係の有無を決定し、変化点発生についての状態データ項目間の時間先行性情報から因果の方向を決定することにより作成できる。多数の変数が相互に関係を持つ場合は、相関強度の代わりに、他の変数の影響(信号成分)を除外した偏相関強度を用いると良い。なお、他の変数の影響(信号成分)を除外する処理過程で、微小ノイズ信号同士の偏相関強度を計算することによって、誤った因果関係を導くことを防止するため、他の変数の影響(信号成分)除外処理前後で信号強度の変化率を計算し、偏相関強度と信号強度変化率の積を因果関係の指標とすると良い。
【0171】
図17(a)に、正常グラフィカルモデルの例を示す。この例では、先に説明変数(X)に選んだ第1の共線性説明変数データ項目P1(XC1)と目的変数データ項目P4(Y)との間の相関強度が0.8と高いことから、当該P1−P4間に因果のリンク131aが張られ、さらに変化点発生についての状態データ項目間の時間先行性情報に基づき、当該因果の方向(リンク131aの矢印の向き)が決まる。例えば具体的には、前述の図15に示すように、P1(XC1)によるP4(Y)の予測値(PdY)と実測値(Y)との差分乖離値(EY)から、時間先行性情報を得ることができ、その情報から、因果の方向がP1(XC1)からP4(Y)への向きと決まる。同様に、第2の共線性データ項目P2(XC2)とP4(Y)との間の相関強度が0.9と高いことから、因果のリンク132aが張られ、さらに時間先行性情報に基づき、因果の方向がP2(XC2)からP4(Y)への向きと決まる。同様に、P1(XC1)とP2(XC2)の間の相関強度が0.9と高いことから、因果のリンク133aが張られ、さらに時間先行性情報に基づき、因果の方向がP1(XC1)からP2(XC2)へと決まる。
【0172】
S403では、装置(a)1aの異常稼働区間の履歴データから、状態データ項目間の異常グラフィカルモデル(異常グラフネットワークモデル)を作成する。異常グラフィカルモデルは、例えば、上記正常グラフィカルモデルの作成の場合と同様に実現できる。
【0173】
図17(b)に、異常グラフィカルモデルの例を示す。この例では、先に説明変数(X)に選んだ第1の共線性説明変数データ項目P1(XC1)と目的変数データ項目P4(Y)との間の相関強度が、図17(a)の正常の場合と比べて、0.45へと低くなり、因果のリンク131bが消滅する(点線)。第2の共線性データ項目P2(XC2)とP4(Y)との間の相関強度は0.9と高いままであることから、因果のリンク132bは残り、さらに異常変化点発生についての状態データ項目間の時間先行性情報に基づき、因果の方向がP2(XC2)からP4(Y)への向きと決まる。同様に、P1(XC1)とP2(XC2)の間の相関強度が0.5へと低くなり、因果のリンク133bが消滅する。
【0174】
S404では、上記の正常グラフィカルモデル(図17(a))と異常グラフィカルモデル(図17(b))との差分を抽出する。この差分を取ると、第1の共線性説明変数データ項目P1(XC1)と目的変数データ項目P4(Y)との間のリンクと、P1(XC1)と第2の共線性説明変数データ項目P2(XC2)との間のリンクが抽出され、これにより、図18に示すような差分診断モデル136が得られる。
【0175】
図18において、135は、個別装置(T)専用診断モデル(MT2)に関するデータ情報の例であり、装置特徴項目134と、差分診断モデル136とを含んでいる。装置特徴項目134の情報は、装置特徴構成データDDに基づいた、当該装置(T)を類似装置1間で区別することができる特徴項目変数値であり、前述例のように、当該装置(T)の種別・型式の情報や、当該装置(T)の設置環境の情報などを有する。差分診断モデル136の情報は、図17のモデルに基づき、136aは正常差分モデルの情報、136bは異常差分モデルの情報を示す。また136cは、当該類似装置1及びその差分診断モデルに関し、過去の事例(異常事例)を転載した原因の情報を示す。この原因の情報(136c)は、例えば、「P1(XC1)の異常」、「P1の関係部品:{part11,part12,……}」等があり、これらが推定異常原因、及び保全対象箇所(推定異常箇所)となる。なお対象箇所の単位は部品に限らずモジュールや装置等の場合もある。
【0176】
診断モジュール5Tによる診断(異常原因診断)は、上記情報を用いて、正常差分モデル136aから異常差分モデル136bへのリンク消滅変化、あるいはリンク方向変化、あるいは相関強度変化の有無を、パターンマッチング等によって調べることにより行う。変化パターンがマッチングした場合は、過去事例を転載した原因(136c)から、推定される異常原因と、保全対象の関係部品等の情報が得られる。
【0177】
S405では、上記の差分診断用グラフィカルモデルの情報(図18の差分診断モデル136)を、装置特徴項目値等の情報(装置特徴項目137)と共に(付与して)、個別装置(T)専用診断モデル(MT2)の情報(135)として、記憶モジュール(モデルDB8)に格納する。
【0178】
<メタ診断モデル作成処理>
次に、図19において、図2の診断モデル作成モジュール4における類似装置共通メタ診断モデル(MM2)作成部4Cによるメタ診断モデル(MM2)の作成処理フローを示している。各処理ステップの主体は、当該処理部(4C)対応のプログラム(4CP)である。
【0179】
S411では、図16の処理で作成された個別装置(a,b)専用診断モデル(Ma2,Mb2)の情報を、複数の装置1の複数の異常事例に対して、記憶モジュール(モデルDB8)から収集する。このタイミングは、定期的でも良いし、異常検知毎でも良い。
【0180】
S412では、装置特徴項目値毎に個別装置専用診断モデル(Ma2,Mb2)を関係付けて、その装置特徴項目値に対して固有の診断モデルとして分類する。具体的には、図20(a)に示す。
【0181】
図20(a)で、装置特徴項目まとめ表138において、装置特徴項目の値(例えば、項目名:Nx,Ny、項目値:Vx1,Vx2,Vy1,Vy2)をキーにして、個別装置専用診断モデル(例えば135−1(A),135−2(B),135−3(B))を関係付ける。例えば、装置特徴項目まとめ表138(特徴項目値)に対して、1番目の診断モデル135−1(固有の診断モデル(A)136−1)は、特徴項目137−1のNxのVx1及びNyのVy1により、2番目の診断モデル135−2(固有の診断モデル(B)136−2)は、特徴項目137−2のNxのVx2及びNyのVy1により、3番目の診断モデル135−3(固有の診断モデル(B)136−3)は、特徴項目137−3のNxのVx1及びNyのVy2により、それぞれ関係付けられる。なお、上記表でキーとする特徴項目値は、1個の数値に限らず、複数の数値の集合としても良く、また上下限の数値を指定した範囲としても良い。
【0182】
S413では、装置特徴項目に依らない個別装置専用診断モデルを、汎用の診断モデルとして分類する。具体的には、例えば図20(a)の2番目、3番目の診断モデル135−2,135−3は、同じ診断モデル(B)(136−2,136−3)を持ちながら、各々別々の項目値で関係付けられている。このような場合は、当該モデルについては、特徴項目値とは関連が無いと考え、図20(b)の2番目の診断モデル(135−2b)に示すように、特徴項目137−2bにより全ての特徴項目値と関係付けられる汎用の診断モデル(B)136−2bとして分類する。
【0183】
S414では、上記装置特徴項目値毎の固有診断モデルと汎用診断モデルを、装置特徴項目まとめ表138に関係付けて、類似装置共通メタ診断モデル(MM2)のデータ81として記憶モジュール(モデルDB8)に記憶する。
【0184】
<個別装置専用診断モデル生成処理>
次に、図21において、図2の診断モデル作成モジュール4の個別装置(T)専用診断モデル(MT2)生成部4Gによる診断モデル(MT2)の生成処理フローを示している。各処理ステップの主体は、当該処理部(4G)対応のプログラム(4GP)である。
【0185】
S421では、図19の処理で作成された類似装置共通メタ診断モデル(MM2)を、記憶モジュール(モデルDB8)から読み出す。
【0186】
S422では、診断対象の装置(T)1Tの特徴項目値を含むデータ(DD)を、装置情報DB6から取得する。
【0187】
S423では、対象の装置(T)の特徴項目値に合致する固有診断モデルを選択する。図20(b)の例で説明すると、特徴項目値が、装置(T)の項目名Nxの値Vx1、及び、項目名Nyの値Vy2である場合、それに関係付けられる1番目の固有診断モデル(135−1(136−1(A)))が選択される。一方、特徴項目値に依らない、即ち全ての装置1に対して合致する、前述の汎用診断モデル(135−2b)が選択される。
【0188】
S424では、上記装置(T)に合致する選択した固有診断モデル(135−1)と、全ての装置1に対して合致する汎用診断モデル(135−2b)とを含むデータ情報を、個別装置(T)専用診断モデル(MT2)のデータ82として、記憶モジュール(モデルDB8)に記憶する。
【0189】
<異常原因診断処理処理>
次に、図22において、装置(T)1Tに対する診断モジュール5Tによる異常原因診断処理フローを示している。各処理ステップの主体は、当該モジュール(5T)対応のプログラム(5P)である。本診断処理は、例えば判定モジュール3Tの異常検知を起点に開始される。
【0190】
S430では、装置(T)1Tに対する判定モジュール3Tの異常検知(検知情報(D0))を待機する。
【0191】
S431では、装置(T)の状態(DS)の履歴データを、異常検知時点から遡って収集する。
【0192】
S432では、装置(T)の正常稼働区間の履歴データから、状態データ項目間の正常グラフィカルモデルを作成する。
【0193】
S433では、装置(T)の異常稼働区間の履歴データから、状態データ項目間の異常グラフィカルモデルを作成する。
【0194】
S434では、正常グラフィカルモデルと異常グラフィカルモデルの差分を抽出する。
【0195】
S435では、装置(T)についての診断モデル(MT2)のデータ82を、記憶モジュール(モデルDB8)から読み出す。この診断モデル(MT2)のデータ82は、前述の固有診断モデルと汎用診断モデルを含む。
【0196】
S436では、診断モデル(MT2)の照合を行う。具体的には、図18のT専用診断モデル(135)の正常差分モデル136aから異常差分モデル136bへのリンク消滅変化、あるいはリンク方向変化、あるいは相関強度変化の有無を、パターンマッチング等によって調べることにより行う。
【0197】
S437では、上記変化パターンがマッチングした場合、診断モデル(135)の原因の情報(136c)から、推定異常原因、及び、保全対象箇所、関係部品などを含む診断結果の情報(保守指示情報D2など)が、検知情報(D0)として得られる。
【0198】
以上の診断に基づき、診断モジュール5Tは、保守指示情報(D2)などの検知情報(D0)を、対象の装置(T)1Tに対応付けられる保守装置54などへ送信する。保守装置54は、受信した情報(D0)に基づき、保守作業指示プログラムなどによって、推定異常原因、及び保全対象箇所(関係部品など)に係わる情報を例えば画面に表示する。また必要があれば、他のシステム(図示せず)に当該情報を送信し、保守交換のための部品手配などの処理を行う。保守装置54は、保守履歴記録プログラムによって、保守作業者(U1)により保守を実施した結果を履歴として記録する。上記により、保守作業者は、保守装置54を使用して効率的に装置(T)1Tの保守作業を実施できる。
【0199】
<装置>
装置1としては、前記熱電併給装置に代表されるエネルギー変換装置に限定されるものではない。例えば、本発明は、燃料を燃焼させる代わりに、風力あるいは波力を運動エネルギーまたは電気エネルギーの少なくとも1つに変換する装置に適用できる。この場合、目的変数(Y)には、エネルギー変換装置の運動出力、電力出力、あるいはエネルギー変換効率の少なくとも1つを選べば良い。説明変数(X)には、風速、機械部品の運動速度、機械部品の振動、機械部品の加速度、機械部品の歪み、機械部品の音響、機械部品の摩耗量、潤滑油の成分、潤滑油の圧力、潤滑油の温度、電気部品の電圧、電気部品の電流、電気部品の周波数、環境の温度、環境の湿度、環境の気圧、電力系統の電圧、電力系統の電流、装置の稼働時間、あるいは部品の稼働時間の少なくとも1つを含む。
【0200】
また、本発明は、地熱を運動エネルギー、熱エネルギー、または電気エネルギーの少なくとも1つに変換する装置に適用できる。この場合、目的変数(Y)には、少なくともエネルギー変換装置における、運動出力、熱出力、電力出力、あるいはエネルギー変換効率の少なくとも1つを選べば良い。説明変数(X)には、上記目的変数(Y)と重複しない、水蒸気供給量、水蒸気温度、水蒸気圧力、機械部品の運動速度、機械部品の振動、機械部品の加速度、機械部品の歪み、機械部品の音響、機械部品の摩耗量、潤滑油の成分、潤滑油の圧力、潤滑油の温度、電気部品の電力、電気部品の無効電力、電気部品の電圧、電気部品の電流、電気部品の周波数、環境の温度、環境の湿度、環境の気圧、電力系統の電圧、電力系統の電流、装置の稼働時間、あるいは部品の稼働時間の少なくとも1つを含む。
【0201】
また、本発明は、電気エネルギーを機械エネルギーに変換する電動機装置に適用できる。電動機装置の例として、エレベータやエスカレータを代表とする昇降機、あるいはポンプや圧縮機を代表とするプラント機器、あるいは旋盤やボール盤やフライス盤や研削盤を代表とする工作機械がある。この場合、目的変数(Y)には、機械部品の仕事量、機械部品の運動速度、機械部品の振動、機械部品の加速度、機械部品の歪み、機械部品の音響、機械部品の摩耗量、あるいはエネルギー変換効率の少なくとも1つを選べば良い。説明変数(X)には、少なくとも上記目的変数(Y)と重複しない、機械部品の運動速度、機械部品の振動、機械部品の加速度、機械部品の歪み、機械部品の音響、機械部品の摩耗量、潤滑油の成分、潤滑油の圧力、潤滑油の温度、電気部品の電力、電気部品の無効電力、電気部品の電圧、電気部品の電流、電気部品の周波数、環境の温度、環境の湿度、環境の気圧、装置の稼働時間、あるいは部品の稼働時間の少なくとも1つを含む。
【0202】
また、本発明は、電気エネルギーを機械エネルギーあるいはプラズマエネルギーに変換する半導体加工装置に適用できる。半導体加工装置の例として、半導体CMP(化学的機械的研磨)装置や半導体エッチング装置や半導体成膜装置がある。この場合、目的変数(Y)には、少なくとも半導体の加工量あるいは成膜量、半導体ウェハ面内の加工均一性あるいは成膜均一性、あるいはエネルギー変換効率を選べば良い。説明変数(X)には、機械部品の摩耗量、電気部品の電力、電気部品の無効電力、電気部品の電圧、電気部品の電流、電気部品の周波数、電気部品のインピーダンス、半導体ウェハの温度、処理室内環境の温度、処理室内環境の圧力、処理室内環境の発光、装置の稼働時間、あるいは部品の稼働時間の少なくとも1つを含む。
【0203】
<実施の形態の効果等>
以上説明したように、本実施の形態によれば、複数(K+1)台の装置1を対象として、(1)実施の形態1では、精度良い異常検知(判定)が可能なモデル(判定モデル)、及びそれを用いた監視などを実現でき、(2)更に、実施の形態2では、精度良い原因診断が可能なモデル(診断モデル)、及びそれを用いた診断、部品等の推定による保守の効率化などを実現できる。特に、監視や診断のために必要なデータの蓄積が進んでいない例えば新設の装置(T)に対しても、それに対する既設の類似装置(a,b等)の蓄積済みのデータに基づいたモデルを用いて、精度良い異常検知や原因診断が可能なモデルが提供される。
【0204】
上記(1)に関しては、特に、装置の異常兆候をセンサデータから検知するためのモデルを、データ蓄積の進んだ類似装置群から作成した共通のメタ判定モデルから対象装置向けに生成することにより、データ蓄積の進んでいない例えば新設の装置に対しても常に精度の高い判定モデルを作成することができる。
【0205】
また、装置の異常兆候をセンサデータから検知するためのモデルを、共線性説明変数データ項目毎の個別のモデルの集団とすることによって、常に安定に作成できる。
【0206】
また、上記個別のモデルの集団とすることによって、線形モデルと非線形モデルの混在も可能である。より一般的には、複数の種類のモデルを混在できる。
【0207】
上記(2)に関しては、特に、装置の異常兆候の検知を基点に、診断モデルに基づく因果解析を行うことにより、迅速に異常検知データ項目を順位付けて異常原因現象の候補となる関連部品を特定でき、保守作業を効率化できる。
【0208】
また、この診断モデルを各装置の特徴項目値と関連付けて管理することにより、装置専用の診断モデルを束ねて類似装置共通のメタ診断モデルを作成することができ、このメタ診断モデルに対して対象装置の特徴項目値をキーに検索することにより、装置専用診断モデルを抽出することができる。
【0209】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0210】
本発明は、装置異常監視システム、装置保守システムなどに利用可能である。
【符号の説明】
【0211】
1,1T,1a,1b…装置、2…判定モデル作成モジュール、2Sa,2Sb…個別装置専用判定モデル作成部、2C…類似装置共通メタ判定モデル作成部、2G…個別装置専用判定モデル生成部、2P,2SP,2CP,2GP,3P,4P,4SP,4CP,4GP,5P,6P…プログラム、3,3T,3a,3b…状態監視異常判定モジュール、4…診断モデル作成モジュール、5T…異常原因診断モジュール、6…装置情報DB、7,8…モデルDB、22,32…状態データ項目分類部、23…個別装置専用予測モデル構築部、24…集団予測乖離度計算モデル構築部、33…異常兆候判定部、50…通信ネットワーク、51…センサ情報管理コンピュータ、52…異常監視実行コンピュータ、53…モデル管理コンピュータ、54…保守装置、71〜74,81〜84…データ、135,135−1〜3,135−2b…診断モデル(データ)、136…差分診断モデル、136a…正常差分モデル、136b…異常差分モデル、136c…原因の情報、136−1〜3…固有診断モデル、136−2b…汎用診断モデル、137,137−1〜3,137−2b…装置特徴項目、138…装置特徴項目まとめ表、141…直線(類似装置共通メタ予測モデル)、220,320…目的変数データ項目(P4(Y))、221,321…第1の共線性説明変数データ項目(P1(XC1))、222,322…第2の共線性説明変数データ項目(P2(XC2))、223,323…独立性説明変数データ項目(P3(XD))、231,232…個別装置専用予測モデル作成部、250…データ項目分類、251,252…集団予測モデル(予測モデル群)、331,332…予測値計算部、333,334…予測値乖離度計算部、335…集団予測乖離度計算部、336…異常判定部、S…センサ、DS…装置状態計測データ(センサデータ)、DD…装置特徴構成データ、D0…検知情報、D1…装置停止指示情報、D2…保守指示情報、MT…個別装置(T)専用予測モデル、MT1…個別装置(T)専用判定モデル、MT2…個別装置(T)専用診断モデル、Ma…個別装置(a)専用予測モデル、Ma1…個別装置(a)専用判定モデル、Ma2…個別装置(a)専用診断モデル、Mb…個別装置(b)専用予測モデル、Mb1…個別装置(b)専用判定モデル、Mb2…個別装置(b)専用診断モデル、MM…類似装置共通メタ予測モデル、MM1…類似装置共通メタ判定モデル、MM2…類似装置共通メタ診断モデル。
【技術分野】
【0001】
本発明は、1つ以上の装置の状態を監視して、異常(異常兆候)や正常の判定、及び異常(故障)原因の診断等を行う装置異常監視方法に関する。特に、複数の装置を対象とした監視や診断等の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
熱電併給(コージェネレーション)装置に代表される、燃料を少なくとも運動エネルギー、熱エネルギー、または電気エネルギーに変換するエネルギー変換装置(設備)等に対して、状態を計測するための複数のセンサ(計測器)を備え付け、これにより装置の各状態を時々刻々と計測して把握し、そのデータ(装置状態計測データ、センサデータなどと称する)に基づいて装置の状態の正常や異常を判定し、異常状態を捉えて保守を行う、状態基準保全(CBM:Condition Based Maintenance)の技術がある。これは、保守コストの削減に効果がある。
【0003】
特開2002−110493号公報(特許文献1)、及び特開2000−252180号公報(特許文献2)には、製造ラインの品質変動原因分析を対象に、複数の説明変数を一定少数に分割し、線形重回帰モデル作成(Yi=A・Xi)を全ての分割グループに適用して変数増減法により各分割グループ内で説明変数を絞り込み、絞り込まれた説明変数を合わせて再度重回帰モデル作成を適用することを多段階に繰り返す多段階多変量解析の方法に関して述べられている。
【0004】
米国特許第7209846号明細書(US 7,209,846 B2)(特許文献3)には、グラフィカルモデルによって、製造ラインの製品品質と工程データの間の因果解析を行う方法が述べられている。
【0005】
非特許文献1には、統計モデルが述べられている。具体的には、GLM(Generalized Linear Model)法、GAM(Generalized Additive Model)法、および非線形モデル法が述べられている。
【0006】
非特許文献2には、説明変数の複数の要素が同時に変動することによって引き起こされる多重共線性(Multiple Co-linear)現象による計算不可能問題や精度不足を回避するための射影法(Projection Method)に基づく、目的変数(Y)と説明変数(X)の縮退線形回帰モデル(Y=A・X)の複数の作成方法が説明されている。具体的には、PLS(Partial Least Squares)法、PCR(Principal Component Regression)法、Ridge法、およびLasso法が述べられている。また、非線形関係のモデル作成方法として、非線形回帰法が述べられている。具体的には、GLM(Generalized Linear Model)法、およびMARS(Multivariate Adaptive Regression Splines)法が述べられている。また、ベイズ法と組み合わせてモデル係数を求めるサンプリング手法として、MCMC(Markov Chain Monte Carlo)法が述べられている。
【0007】
非特許文献3には、PLS(Partial Least Squares)法によって共線性があるデータ項目を混在させて線形回帰予測モデルを構築する方法が述べられている。
【0008】
非特許文献4には、グラフィカルモデルによって因果解析を行う統計数理的な汎用アルゴリズムの方法が述べられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2002−110493号公報
【特許文献2】特開2000−252180号公報
【特許文献3】米国特許第7209846号明細書(US 7,209,846 B2)
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】ISBN: 978-0412830402 J. M. Chambers, and T.J. Hastie, “Statistical Models in S”, Chapman & Hall/CRC (1991), Chapter 6: Generalized Linear Models, Chapter 7: Generalized Additive Models, Chapter 10: Nonlinear Models
【非特許文献2】ISBN: 978-0387952840, T. Hastie, R. Tibshirani, and J. H. Friedman, “The Elements of Statistical Learning”, Springer (2003), Chapter 3: Linear Methods for Regression
【非特許文献3】ISBN: 0-471-48978-6, Richard G. Brereton, “Chemometrics, Data Analysis for the Laboratory and Chemical Plant”, WILEY (2003), Chapter 5: 5.5 Partial Least Squares
【非特許文献4】ISBN: 978-0387310732, Christopher M. Bishop, “Pattern Recognition and Machine Learning”, Springer (2006), Chapter 8: Graphical Models
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
前記状態基準保全(CBM)を有効に実施するためには、故障に至る前の異常の兆候を捉える必要がある。そのためには、複数のセンサのデータ項目を統計解析によって統合するモデルを作成し、装置の正常状態のモデルを基準にした乖離度を計算し、当該乖離度を状態判定基準にする方法が有効である。
【0012】
前記対象の装置を構成する各モジュールや個々のモジュールを構成する部品の多くは、装置がエネルギー変換等の目的を達成するために連動して動作する。よって、装置を構成する複数の部品等に対して設置された複数のセンサの出力(データ項目)の多くも、連動して変化する。この場合、各センサのデータ項目を軸にとったパラメータ空間を考えると、装置正常状態は、局在した部分空間を構成する。この装置正常状態のパラメータ部分空間を、統計解析によってモデル化すれば、異常状態を判定するための乖離度を計算することができる。
【0013】
また、正常時に連動して変化するセンサの出力(データ項目)の関係と、異常時に連動して変化するセンサの出力(データ項目)の関係を比較してモデル化すれば、異常時に異常(故障)の原因を診断することができる。
【0014】
上述した技術に係わり、以下に示すような課題(課題1,2)がある。
【0015】
(課題1:データ数欠乏)
第1に、異常判定の基準となる正常状態のモデルを作成するためのデータ収集に時間がかかるという課題がある。複数のセンサのデータ項目を統計解析によって統合するモデル(判定モデル)を作成するためには、統計的に十分な量のサンプリング点数、あるいは定常状態の装置状態変動を全て網羅するだけのサンプリング点数が必要になる。しかし、それだけのデータ点数を確保できるまでは、異常監視を実施できないという問題があった。
【0016】
特に、以下のような場合、即ち、(1)新規に装置を設置した場合、(2)従来の装置を改造した場合、(3)従来の装置に大規模なメンテナンス(保守)を行った場合、(4)設置済みの装置を取り巻く環境が変化した場合、(5)異常監視のソフトウェアを改造(更新)した場合、あるいは、(6)異常監視のパラメータ(データ項目)を変更した場合には、モデル(判定モデル)の新規作成もしくは更新が必要になる。よって、そのために必要なデータ(十分な異常事例データ)が蓄積されるまでの間は、異常監視を開始できない、もしくは異常監視を中断しなければならない、という問題があった。
【0017】
(課題2:異常事例からの学習)
第2に、異常の発生が稀または無い場合(異常事例データが少ないまたは無い場合)には、判定モデル等の学習等が進捗しないという課題があった。
【0018】
即ち、まず従来の前提として、(1)装置異常を経験した後にその異常事例に基づいて、判定モデルを学習調整することや、判定モデルを基準にした乖離度と照合して異常判定を行う判定しきい値を学習調整することが、監視精度を向上する上で有効である。(2)更に、異常状態に至った異常(故障)原因を診断するモデル(診断モデル)を作成してデータベース(DB)等に蓄積することが、原因診断をする上で有効である。
【0019】
しかしながら、上記前提の技術を適用した状況において、異常の発生が稀または無い場合には、判定モデル及び判定しきい値の学習や診断モデルの蓄積などが進捗しないという問題があった。
【0020】
上述したような課題(課題1,2)に対応して、本発明は、以下のような目的(目的1,2)がある。
【0021】
(目的1:データ数欠乏)
第1に、異常判定の基準となるモデル(判定モデル)の作成において、対象の装置から十分なデータ点数を確保できない場合でも、精度良く異常(異常兆候)を検知(判定)することができるモデル及びそれを用いた監視判定等の実現を目的とする。
【0022】
(目的2:異常事例からの学習)
第2に、異常事例に基づく判定モデル及び判定しきい値の学習や診断モデルの蓄積において、対象の装置の異常事例データが少ないまたは無い場合にも、精度良く異常判定等ができるモデル(判定モデル)の学習(その進捗)、及び、精度良くその原因の診断等ができるモデル(診断モデル)の蓄積(その進捗)などの実現を目的とする。
【0023】
なお、従来では、複数の装置を監視やデータ収集等の対象として、例えば既設の類似装置のデータをもとに、新設の装置のモデルを類推(生成)するといった技術は無い。
【0024】
まとめると、本発明の主な目的は、上記装置異常監視方法及びCBMの技術に係わり、(1)精度の良い異常検知(判定)が可能なモデル(判定モデル)及びそれを用いた監視、(2)更に、精度の良い異常(故障)原因の推定(診断)が可能なモデル(診断モデル)及びそれを用いた診断による保守の効率化、などを実現できる技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0025】
本願において開示される発明のうち、代表的なものの概要を簡単に説明すれば、次の通りである。前記目的を達成するために、本発明の代表的な実施の形態は、装置異常監視方法及びそのシステムに係わり、以下に示す構成を有することを特徴とする。
【0026】
本発明では、特に、類似の特徴や構成などを持つ複数の装置(類似装置)を処理対象とする。複数の装置からそれぞれ収集、取得する装置状態計測データ(センサデータ)に基づき作成したモデルを用いて、異常監視(判定)及び異常原因診断などを行う。なお、本明細書で、モデルは、機能や用途や計算式などの違いに応じて、適宜、予測モデル、判定モデル、診断モデルなどと称する。
【0027】
前述の課題1(データ数欠乏)に対して、本発明では、監視等の対象の装置から十分なデータ点数を確保できない場合でも、その装置に対する他の複数(2つ以上)の類似装置のデータを用いて、対象の装置の異常判定等のためのモデル(判定モデル)を生成することにより、解決する。
【0028】
前述の課題2(異常事例からの学習)に対して、本発明では、監視等の対象の装置に対する他の複数の類似装置の異常事例(そのデータ)に基づいて、判定モデル及びその判定用しきい値の学習や、異常原因診断のためのモデル(診断モデル)の蓄積を行う方法を用いる。本方法を用いる場合、従来技術では以下のような問題がある。即ち、上記方法を用いる場合、監視等の対象の装置に対して、異常事例のデータを取得等する対象となる装置としては、(1)完全に同一の特徴と構成を持つこと、(2)完全に同一の環境に設置されていること、(3)完全に同一の運転稼働状況にあること、といった条件を満たす必要がある。このような装置の異常事例を用いないと、異常判定及び診断等の精度を向上することができず、場合によってはその精度を低下させてしまう。本発明では上記のような問題も解決される。
【0029】
本形態の方法は、例えば、コンピュータの情報処理を用いて、類似の複数(K+1)の装置を処理対象として、前記装置毎の状態を複数(2つ以上)のセンサで計測して得られる当該装置各々の複数(2つ以上)の装置状態計測データ項目(変数)に基づいて、前記複数(K+1)のうち少なくとも1つの装置の状態の異常を監視及び判定する処理を行う。前記複数(K+1)の装置のうち、1つの第1の装置が、監視及び判定の対象(判定モデル作成対象)となり、それと類似する他の複数(K:2つ以上)の第2の装置が、前記第1の装置の監視及び判定のための第1の予測モデル(それを含んで成る判定モデル)を生成するための対象(データ元)となる。本形態は、前記複数(K)の第2の装置各々における正常時の前記複数のデータ項目に基づき作成される、前記監視及び判定のための個別の第2の装置専用の複数(K)の判定モデルに基づき、前記第1の装置専用の第1の予測モデル(判定モデル)を生成する処理を行う第1のステップと、所定時間単位で、前記第1の装置からの前記複数のデータ項目を入力し、前記第1の予測モデル(判定モデル)を用いて、前記第1の装置の状態の異常を監視及び判定し、異常を検知した場合には検知情報を出力する、監視実行処理を行う第2のステップと、を有する。
【0030】
前記第1のステップでは、前記複数(K)の装置各々の前記複数のデータ項目を、回帰分析における、目的変数(Y)と、それ以外の1つ以上の説明変数(X)とに統計的に分類するステップと、前記複数(K)の第2の装置各々の個別の予測モデルとしての複数(K)の回帰モデルを作成するステップと、前記複数(K)の第2の装置各々の個別の予測モデルとしての複数(K)の回帰モデルの係数及び切片を、当該装置各々の特徴項目値(または装置設置環境計測値など)から予測する、類似装置共通メタ予測モデルを作成するステップと、前記メタ予測モデルに、前記第1の装置の特徴項目値(または装置設置環境計測値など)を入力して、当該装置専用の前記第1の予測モデルとしての回帰モデルの係数及び切片を生成するステップと、を有する。
【0031】
前記第2のステップでは、前記第1の装置専用の前記第1の予測モデルに、当該装置の複数のデータ項目における説明変数(X)を入力して、目的変数(Y)の予測値を計算するステップと、前記目的変数(Y)の実測値と、当該予測値との間における乖離度を計算するステップと、前記乖離度としきい値とを比較することで前記第1の装置の異常を検知するステップと、を有する。
【0032】
また、本形態の方法は、前記複数(K+1)のうち少なくとも1つの第1の装置の異常検知(判定)に基づき異常原因を診断する処理を行う装置異常監視方法である。前記複数(K+1)の装置のうち、1つの第1の装置が、原因診断の対象(診断モデル作成対象)となり、それと類似する他の複数(K:2つ以上)の第2の装置が、前記第1の装置の診断のための第2の予測モデル(それを含んで成る診断モデル)を生成するためのデータを取得する対象となる。本形態は、前記複数(K)の装置の異常検知後の原因診断に基づき、前記複数(K)の第2の装置各々の個別の診断モデルを作成して蓄積し、それら複数の個別の診断モデルに基づいて、前記第1の装置の診断のための診断モデルの生成を行う第1のステップと、所定時間単位で、前記第1の装置の前記複数のデータ項目を入力し、当該装置の状態の異常を監視及び判定し、異常を検知した場合には原因診断処理を実行する第2のステップと、を有する。
【0033】
前記第1のステップでは、前記複数(K)の第2の装置各々の個別の診断モデルを作成し、当該各装置の特徴項目値(または装置設置環境計測値など)を付して蓄積するステップと、前記蓄積された複数(K)の個別の診断モデルを、当該装置の特徴項目値などに基づいて分類した類似装置共通のメタ診断モデルを作成するステップと、前記メタ診断モデルに、前記第1の装置の特徴項目値などを入力して、当該第1の装置専用の診断モデルを生成するステップと、を有する。
【0034】
前記第2のステップでは、前記異常を検知した場合に、前記第1の装置専用の診断モデルに対し、前記第1の装置からのデータ項目を入力して、当該診断モデルを構成する各々のモデル(パターン)とのマッチング(照合)を行うステップと、前記マッチングしたモデルに基づき原因の情報を出力するステップと、を有する。
【発明の効果】
【0035】
本願において開示される発明のうち、代表的なものによって得られる効果を簡単に説明すれば以下の通りである。本発明の代表的な実施の形態によれば、装置異常監視方法及びCBMの技術に係わり、(1)精度良い異常検知が可能なモデル及びそれを用いた監視、(2)更に、異常原因の部品等の推定による保守の効率化、などを実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の実施の形態1のシステム(装置異常監視システム)及び方法(装置異常監視方法)における、状態異常監視判定処理のための主要部の構成例を示す図である。
【図2】本発明の実施の形態2のシステム(装置異常監視システム)及び方法(装置異常監視方法)における、状態異常監視判定処理及び異常(故障)原因診断処理のための主要部の構成例を示す図である。
【図3】実施の形態1,2のシステムを実装するコンピュータシステムの構成例を示す図である。
【図4】実施の形態1における、例えば第2の装置(a)を対象とした、判定モデル作成モジュールの個別装置専用判定モデル作成サブモジュールに関する詳細構成を示す図である。
【図5】実施の形態1における、(a)は、装置のデータ項目分類(表)の例を示す図であり、(b)は、(a)の記憶の形式を示す図である。
【図6】実施の形態1における、(a)は、1番目の類似装置の予測モデルの例を示す図であり、(b)は、2番目の類似装置の予測モデルの例を示す図である。
【図7】実施の形態1における、第1の装置(T)を対象とした、状態監視異常判定モジュールに関する詳細構成を示す図である。
【図8】実施の形態1における、個別装置(a)専用判定モデル作成モジュールの処理フローを示す図である。
【図9】実施の形態1における、類似装置共通メタ判定モデル作成モジュールの処理フローを示す図である。
【図10】実施の形態1における、装置特徴構成データの例を示す図である。
【図11】実施の形態1における、個別装置(T)専用判定モデル生成モジュールの処理フローを示す図である。
【図12】実施の形態1における、第1の装置(T)を対象とした、状態監視異常判定モジュールの処理フローを示す図である。
【図13】実施の形態1における、目的変数(Y)として選択した状態データ項目値の推移の例を示す図であり、(a)は、2台の類似装置(a,b)のそれぞれの目的変数データ実測値、(b)は、第1の装置(T)の判定モデルの予測値(PdY)に関する推移を示す。
【図14】実施の形態1における、メタ判定モデルの生成例を示す図であり、(a)は、複数の個別装置専用判定モデルの係数(AC)からメタ判定モデル(ACについての線形回帰式)を作成する様子を示し、(b)は、メタ判定モデルから第1の装置(T)の専用の判定モデルの係数(AC)を生成する様子を示す。
【図15】実施の形態1における、第1の装置(T)の目的変数として選択した状態データ項目値の推移の例を示す図であり、(a)は、予測値(PdY)と実測値(Y)、(b)は、それらの乖離値(EY)に関する推移を示す。
【図16】実施の形態2における、個別装置専用診断モデル作成モジュールの処理フローを示す図である。
【図17】実施の形態2における、状態データ項目間のグラフネットワーク因果モデルを示す図であり、(a)は、正常状態のグラフィカルモデル、(b)は、異常状態のグラフィカルモデルを示す。
【図18】実施の形態2における、個別装置専用診断モデル(そのデータ)の要素記述例を示す図である。
【図19】実施の形態2における、類似装置共通メタ診断モデル作成モジュールの処理フローを示す図である。
【図20】実施の形態2における、メタ診断モデルの作成方法を示す図であり、(a)は、個別装置専用診断モデルの装置特徴項目による管理方法、(b)は、固有診断モデルと汎用診断モデルの分類方法を示す。
【図21】実施の形態2における、第1の装置(T)を対象とした、個別装置(T)専用診断モデル生成モジュールの処理フローを示す図である。
【図22】実施の形態2における、異常原因診断モジュールの処理フローを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための全図において、同一部には原則として同一符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。なお、本実施の形態の装置異常監視方法及びシステムは、装置状態の監視による異常判定及び異常原因診断のみならず、それらの結果に基づいて装置の保守等を指示する装置保守方法及びシステムを含んでいる。また、特に明示していない場合、各動作主体は、主にコンピュータの情報処理(プログラムやプロセッサ等)である。
【0038】
<概要>
まず、本形態の概要は以下である(符号は後述の図面と対応)。図1等のように、本システムでは、複数(K+1)の装置1のうち、新設の装置(T)の監視(異常判定)に係わり、判定モデル作成モジュール2では、既設の複数(K)の類似装置(a,b等)毎に、個別の判定モデルを作成する。即ち、個別装置毎に、複数の状態データ(DS)をもとに、回帰分析に基づく説明変数(X)からの目的変数(Y)の予測モデルを作成する。次に、これら個別の予測モデルの係数及び切片を、各装置1の特徴項目値等から予測するメタ予測モデルを作成する。そして、このメタ予測モデルから、対象の装置(T)専用の予測モデル(それを含んで成る判定モデル)を生成する。この判定モデルを用いて、判定モジュール3Tは、装置(T)の状態を監視して異常検知を行う(検知情報を出力する)。
【0039】
また、図2等のように、本システムでは、装置(T)の上記異常検知に基づき、更に、当該異常に関する診断を行う場合、診断モデル作成モジュール4では、複数の類似装置(a,b等)各々の異常事例(そのデータ)に対して、当該装置毎に個別の診断モデルを作成する。これら診断モデルを、各装置1の特徴項目値等から選択(分類)して、対象の装置(T)専用の診断モデルを生成する。この診断モデルを用いて、診断モジュール5Tは、上記異常検知に基づき、対象の装置(T)の異常(故障)の原因の診断を実行する(推定される原因の情報などを出力する)。
【0040】
(実施の形態1)
図1、図3〜図15等を用いて、本発明の実施の形態1の装置異常監視方法及びそのシステムについて説明する。実施の形態1では、異常判定機能を備える。監視判定の対象の装置(T)に対し、複数の類似装置(a,b等)の個別の判定モデル(Ma1,Mb1等)及びそれらに基づくメタ判定モデル(MM1)を作成し、それに基づき対象の装置(T)の専用の判定モデル(MT1)を生成し、これを用いて判定(状態監視異常判定)を実行する処理までを行う。類似装置群の横断的な判定モデルを作成し、対象の装置(T)のモデル・データを、他の類似装置(a,b等)のモデル・データに基づいて類推し、学習するものである。なお異常判定を行うためのモデル(予測モデル等を含んで成る)を判定モデルと称することにする。
【0041】
<システム(1)>
図1は、実施の形態1の装置異常監視方法を実現するシステム(装置異常監視システム)を示している。なお、各図面における各モジュール・サブモジュール(処理部)は、所定のハードウェア及びソフトウェアを用いて一般的なコンピュータの情報処理により実現される。そのコンピュータシステムとしての構成例は図3に示される(後述)。
【0042】
本システムで、処理対象となる複数(K+1:3つ以上)台の装置(類似装置)1を有する。例えば、図1中、1台目(#0)の装置(T)1T,2台目(#1)の装置(a)1a,3台目(#2)の装置(b)1b等を有する(#は識別番号)。図示しないが4台目以降の装置(#3(c),#4(d),……,#K)もある。
【0043】
装置(T)1Tは、本例では、新規に設置された、監視等の対象(即ち判定モデル生成対象)として選択される装置である。新設の装置(T)1Tは、異常事例のデータ(モデル作成のためのデータ)の数・量が少ない。それに対し、装置(a)1a,(b)1b等の複数(K:2つ以上)の装置1(#1(a),#2(b),……,#K)は、装置(T)1Tに対して類似の特徴や構成などを持つ装置(類似装置)である。即ち、全体の複数(K+1)の装置1は、類似装置群(グループ)である。装置(T)1T以外の複数(K)の類似装置1は、複数(K+1)の装置1間で共用可能なモデルを作成するための対象となる、既設の装置であり、モデル作成可能な数・量のデータの蓄積が進んでいる。少なくとも2つ以上の装置1が、対象の装置(T)1Tの判定モデルを作成するための対象(データ元)として選択される。本例では、簡単のため、その対象として、2台の装置(a,b)を用いる例を説明する。
【0044】
装置1(T,a,b等)は、それぞれ、例えばエネルギー変換装置(熱電併給装置、電気装置、動力装置、または熱源装置など)等の装置(設備、システム等)である。なお1つの装置1は、複数の装置やモジュール等から成るシステム等であっても構わない。複数の装置1は、必ずしも同一の設計図から複製(製造)された装置である必要は無く、それらの間で類似の特徴や構成などを持つ類似装置であればよい。また類似装置としては、同型装置が含まれていてもよい。同型装置同士でも、その設置環境(例えば装置の周囲の気温)などが異なれば、装置状態(計測されるデータ項目値)は異なってくる。
【0045】
装置1毎に、所定の部位や種類の状態を計測する複数(n:2つ以上)のセンサS(S:S1,……,Sn)が内蔵または外部近隣に具備される。複数のセンサSは、それぞれ、対応するセンサデータ(装置状態計測データ)DSを出力する。
【0046】
本システムは、装置1に対し、判定モデル作成モジュール2、状態監視異常判定モジュール(判定モジュール)3T等を有する。各モジュール(2,3T)は、データを記憶するための記憶モジュール(DB)として、装置情報DB6,モデルDB7などを利用する。
【0047】
装置情報DB6には、装置1に関する装置特徴構成データ(DD)などが格納される。装置特徴構成データ(DD)は、装置1毎の基本的な構成情報や、複数の類似装置1における特徴や構造などの差異を区別する特徴変数項目値や装置設置環境計測値などを含むデータである。
【0048】
モデルDB7には、装置1の判定モデルに関するデータ(71〜74)が格納される。具体的には、類似装置共通メタ判定モデル(MM1)のデータ71、個別装置(T)専用判定モデル(MT1)のデータ72、個別装置(a)専用判定モデル(Ma1)のデータ73、個別装置(b)専用判定モデル(Mb1)のデータ74等がある。
【0049】
判定モデル作成モジュール2は、データ元の複数(2つ)の各装置(a,b)からのセンサデータDSや、装置情報DB6のデータ(DD)や、モデルDB7のモデルのデータなどを用いて、対象の装置(T)に関する、状態監視による異常判定のための判定モデル(MT1)を作成及び更新等する処理を行う。
【0050】
判定モデル作成モジュール2は、サブモジュール(処理部)として、複数(2つ)の個別装置(a,b)専用判定モデル(Ma1,Mb1)作成部2Sa,2Sbと、類似装置共通メタ判定モデル(MM1)作成部2Cと、個別装置(T)専用判定モデル(MT1)生成部2Gとを備える。
【0051】
Ma1,Mb1作成部2Sa,2Sbは、それぞれ、対応する装置1(a,b)からの複数のセンサデータDSや装置情報をもとに、個別の装置(a),(b)専用の判定モデル(Ma1,Mb1)を作成する処理部である。MM1作成部2Cは、2Sa,2Sbで作成されたモデル(Ma1,Mb1)や装置特徴構成データ(DD)をもとに、類似装置1共通のメタ判定モデル(MM1)を作成する処理部である。MT1生成部2Gは、2Cで作成されたメタ判定モデル(MM1)や対象の装置(T)の装置特徴構成データ(DD)をもとに、対象の装置(T)専用の判定モデル(MT1)を生成する処理部である。
【0052】
判定モジュール3Tは、対象の装置(T)1TからのセンサデータDSと、判定モデル作成モジュール2(モデルDB7)による判定モデル(MT1)のデータを用いて、対象の装置(T)の状態監視(異常判定)の処理を行い、その結果、当該装置(T)の異常(異常兆候)を検知した場合に、検知情報として装置停止指示情報D1等を当該装置(T)1T等へ出力することにより、当該装置1の稼働を停止させることができる。
【0053】
本実施の形態としては、複数の各装置1に対して同じ機能(モジュール)が接続される、対称的な構成とする。図1では、最低限の要素として、監視対象の装置(T)に対しては判定モジュール3Tが接続され、データ元の類似装置(a,b)に対しては判定モデル作成モジュール2が接続されているが、各装置1毎に同様のモジュール(2相当及び3T相当)が接続される構成とする。これにより、各装置1のいずれも、監視対象やデータ元として選択が可能である。勿論、監視対象等を固定する場合は、図1のような最低限の要素のみの構成としてもよい。
【0054】
<システム(2)>
図2に、実施の形態2のシステム構成を図1と同様に示している。実施の形態2では、異常判定機能に加えて原因診断機能を備える。先に図2の実施の形態2のシステム構成を説明し、実施の形態2の詳細については実施の形態1の詳細の後で説明する。
【0055】
図2のシステムは、図1と同様の装置1(T,a,b等)及び各装置1毎に接続される判定モジュール3(3T,3a,3b等)等に対し、更に、診断モデル作成モジュール4、異常原因診断モジュール(診断モジュール)5T等を備える構成である。なお各判定モジュール3は、図1と同様に、判定モデル作成モジュール2(図示省略)により作成した判定モデル(MT1,Ma1,Mb1等)を用いて判定処理を行う。
【0056】
データ元の複数(例えば2つ)の類似装置(a)1a,(b)1b等及びそれに対応付けられる各判定モジュール3a,3b等に対し、診断モデル作成モジュール4が接続されている。監視及び診断等の対象となる1つの装置(T)1T及びそれに対応付けられる判定モジュール3Tに対し、診断モジュール5Tが接続されている。また、各モジュール(4,5T等)は、記憶モジュール(DB)として、装置情報DB6、モデルDB8等を利用する。
【0057】
診断モデル作成モジュール4は、処理対象(データ元)の複数の装置1(a,b等)からのセンサデータDS(及び判定モジュール(3a,3b)からの判定結果情報など)や、装置情報DB6からの装置特徴構成データDDなどを用いて、対象の装置(T)1Tに関する診断(異常原因診断)のためのモデル(診断モデル)を作成及び更新等する処理を行う。
【0058】
診断モデル作成モジュール4は、サブモジュール(処理部)として、個別装置(a,b)専用診断モデル(Ma2,Mb2)作成部4Sa,4Sbと、類似装置共通メタ診断モデル(MM2)作成部4Cと、個別装置(T)専用診断モデル(MT2)生成部4Gとを備える。
【0059】
Ma2,Mb2作成部4Sa,4Sbは、それぞれ、対応する装置1(a,b)からのデータ(DS)や判定モジュール3a,3bからのデータをもとに、個別の装置1(a,b)専用の診断モデル(Ma2,Mb2)を作成する処理部である。MM2作成部4Cは、4Sa,4Sbで作成された診断モデル(Ma2,Mb2)や装置特徴構成データ(DD)をもとに、複数(K+1)の類似装置1で共通のメタ診断モデル(MM2)を作成する処理部である。MT2生成部4Gは、4Cで作成されたメタ診断モデル(MM2)や対象の装置(T)の装置特徴構成データ(DD)をもとに、対象の個別の装置(T)1T専用の診断モデル(MT2)を生成する処理部である。
【0060】
診断モジュール5Tは、診断対象の装置(T)1TからのセンサデータDSや、判定モジュール3Tからのデータや、診断モデル作成モジュール4による診断モデル(MT2)のデータを用いて、診断対象の装置(T)の異常原因を診断する処理を行う。その結果、装置保全箇所指示情報(保守指示情報)D2などを、装置(T)またはその保守装置(図3、54)へ出力する。これにより、保守作業を効率化でき、装置(T)の保全時間(修理時間)を短縮させることができる。
【0061】
<コンピュータシステム>
図3は、図1や図2のシステムを実装するコンピュータシステムの構成例を示している。図1や図2の各モジュール等の要素は、本コンピュータシステムにおいて、主にコンピュータで動作するプログラムの形で実現されている。各モジュール(対応プログラム)とコンピュータとの対応付けは図3の通りである。各コンピュータは、図示しないプロセッサ、メモリ、通信インタフェース、入出力装置等を備える。コンピュータ間の接続は例えば専用線や通信ネットワークなどによる。
【0062】
本コンピュータシステムにおいて、装置1(例えばT,a,b)に対し、センサ情報管理コンピュータ51と、異常監視実行コンピュータ52と、モデル管理コンピュータ53と、保守装置(保守作業端末)54とを有する。装置1毎に保守装置54が対応付けられている。また、本例では、装置1毎に、センサ情報管理コンピュータ51、及び異常監視実行コンピュータ52が、1対1で接続されており、複数の異常監視実行コンピュータ52(及び保守装置54)に対して1つのモデル管理コンピュータ53が対応付けられる。各装置1は、それぞれ遠隔の場所に設置される場合もある。例えば1つのモデル管理コンピュータ53に対し、通信ネットワーク50を介して各装置(複数の異常監視実行コンピュータ52等)が接続される。
【0063】
センサ情報管理コンピュータ51は、装置1の複数(n)のセンサS(S1〜Sn)と接続されており、複数のセンサSを通じて装置1の状態計測データ(センサデータ)DSをサンプリング、収集する、装置状態計測インタフェース機能を備える。
【0064】
異常監視実行コンピュータ52は、センサ情報管理コンピュータ51、保守装置54、及びモデル管理コンピュータ53と接続されており、プロセッサがメモリ上のプログラムやデータを実行することにより、前述した、判定モジュール3(3T)及び診断モジュール5(5T)等を、対応するプログラム3P、5Pの処理により実現する。異常監視実行コンピュータ52は、複数の各装置1(T,a,b等)に対して個別に準備、接続される。あるいは、1つの異常監視実行コンピュータ52の内部のプログラムが各装置1に対して個別に実行される構成などでもよい。
【0065】
モデル管理コンピュータ53は、複数の装置1の異常判定や診断等に関するモデルを管理する。モデル管理コンピュータ53は、異常監視コンピュータ52と接続されており、前述した、判定モデル作成モジュール2(サブモジュール:2Sa,2Sb等、2C、2G)や、診断モデル作成モジュール4(サブモジュール:4Sa,4Sb等、4C、4G)等を、対応するプログラム2P(2SP、2CP、2GP)、4P(4SP、4CP、4GP)等の処理により実現する。
【0066】
他の構成例としては、診断モジュール5(対応プログラム5P)を、異常監視実行コンピュータ52とは別のコンピュータやモデル管理コンピュータ側に設ける構成なども可能である。
【0067】
保守装置54は、例えば保守作業者(U1)が使用する端末である。保守装置54は、異常監視コンピュータ52と接続され、保守作業指示、保守履歴記録などの機能を、対応するプログラムの処理により実現する。保守作業指示のプログラムは、例えば、異常監視コンピュータ52からの装置保全箇所指示情報D2を保守装置54のディスプレイ画面に表示する処理を行う。保守履歴記録のプログラムは、例えば、保守作業者(U1)による異常原因などの入力処理を含む保守履歴記録の処理を行う。なお保守装置54は、例えば装置1に対して独立した装置の他、装置1に内蔵や接続される装置(機能)の場合もある。
【0068】
システム管理者(U2)は、本システムのコンピュータに対し、本システムの管理や設定の操作、例えば、使用する方式や、目的変数(Y)などの設定などを行う。各しきい値などの必要な数値や情報は、本システムに対し予め設定されているか、またはシステム管理者(U2)などにより適宜設定されるようになっている。
【0069】
なお、記憶モジュール(6,7,8等)は、システム内のいずれの箇所にあっても構わない。例えば、判定モデル作成モジュール2の機能を備えるモデル管理コンピュータ53内に、モデルDB7や装置情報DB6を備える等である。
【0070】
<判定モデル作成モジュール>
次に、図4において、実施の形態1の判定モデル作成モジュール2の個別装置専用判定モデル(Ma1,Ma2)作成部2Sa,2Sb(例として2Saの場合)の詳細構成を示している。対応する処理フローは図8に示す。Ma1作成部2Saは、処理部として、データ項目分類部22、個別装置(a)専用予測モデル(Ma)構築部23、(個別装置(a)対応)集団予測乖離度計算モデル(MG:MaG)構築部24などを備え、装置情報DB6、モデルDB7等を利用する。
【0071】
Ma1作成部2Saは、処理対象の個別の装置(a)1aの複数のセンサSからの状態計測データDSを入力し、記憶モジュール等に履歴として格納する。
【0072】
データ項目分類部22では、状態計測データDSのデータ項目(パラメータ)を、目的変数(Y)と、共線性説明変数(XC)と、独立性説明変数(XD)とに、統計的に分類する。この分類は、例えば、目的変数(Y)に対する各説明変数(X)の相関を調べることによって行う。本例では、図4に示す4個のデータ項目:P4(Y)220,P1(XC1)221,P2(XC2)222,P3(XD)223を有し、これらは、図5(a)に示す相関が得られた場合の分類の例である。
【0073】
図5(a)で、状態計測データDSによる4個のデータ項目P1〜P4が、P1:目的変数(Y)220と、第1(#1)の共線性説明変数(XC1)221と、第2(#2)の共線性説明変数(XC2)222と、1つの独立性説明変数(XD)223とに分類された例を示す。P1(XC1)221は、P4(Y)220に対して0.8の相関を持つ。P2(XC2)222は、P4(Y)220に対して0.9の相関を持つ。P3(XD)223は、P4(Y)220に対して0.2の相関を持つ。
【0074】
これらのデータ項目分類は、図5(b)に示す形式(表)で、データ項目分類(データ)250として、記憶モジュール(モデルDB7または装置情報DB6)等に記憶される。
【0075】
データ項目分類250に基づき、Ma構築部23では、個別の装置(a)1aに関して、共線性説明変数(XC)毎に作成される複数(本例では2つ)の予測モデル(Ma:Ma#1(MaXC1),Ma#2(MaXC2))が構築される。予測モデル(Ma)として、本例では、2つの共線性説明変数XC(XC1,XC2)に対応して、第1の予測モデル(Ma#1(MaXC1))、第2の予測モデル(Ma#2(MaXC2))を有する。Ma#1(MaXC1)は、目的変数(Y)220と、第1の共線性説明変数(XC1)221と、独立性説明変数(XD)223とを用いて構築される。Ma#2(MaXC2)は、目的変数(Y)220と、第2の共線性説明変数(XC2)222と、独立性説明変数(XD)223とを用いて構築される。これらの個別装置(a)1a専用の予測モデル(Ma:Ma#1(MaXC1),Ma#2(MaXC2))のデータは、記憶モジュール(モデルDB7)等に格納される。
【0076】
なお、予測の対象となる目的変数(Y)220は、システム管理者(U2)等による指定(設定)、またはコンピュータによる自動計算などにより決定される。目的変数(Y)の設定の例は、装置1の出力として例えば電力([W])である。
【0077】
MaG構築部24では、上記構築された複数(2つ)の予測モデル(Ma:MaXC1,MaXC2)から成る集団予測モデル251(集団予測乖離度計算モデルMaGを含む)を構築する。そして、図6(a)に示す形式(表)で、モデルDB7内に、集団予測モデル251を含んで成る個別装置(a)専用判定モデル(Ma1)のデータ73として記憶する。MaGについては後述する。
【0078】
上記と同様にして、他の類似装置(b)1bについても、Mb1作成モジュール2Sbにより、複数(2つ)の予測モデル(Mb:Mb#1(MbXC1),Mb#2(MbXC2))から成る集団予測モデル252(集団予測乖離度計算モデルMbGを含む)が構築され、図6(b)に示す形式で、モデルDB7内に、集団予測モデル252を含んで成る個別装置(b)専用判定モデル(Mb1)のデータ74として記憶される。
【0079】
上記の各装置(a,b)の予測モデル(Ma,Mb)を含む判定モデル(Ma1,Mb1)のデータ(73,74)は、メタ判定モデル(MM1)作成部2Cにおいて、メタ判定モデル(MM1)を作成するために利用される。MM1作成部2Cの処理フローは図9に示す。MM1作成部2Cは、作成したメタ判定モデル(MM1)のデータを、モデルDB7内に、データ71として格納する。
【0080】
上記メタ判定モデル(MM1)のデータ71は、個別装置(T)専用判定モデル(MT1)生成部2Gにおいて、新規設置の監視対象の装置(T)1Tのための専用の判定モデル(MT1:予測モデル(MT)及び集団モデル(MTG)を含んで成る(後述))等を生成するために利用される。MT1生成部2Gの処理フローは図11に示す。MT1生成部2Gは、生成したT専用判定モデル(MT1)のデータを、モデルDB7にデータ72として格納する。
【0081】
<判定モジュール>
次に、図7において、新規設置の監視対象の装置(T)1Tを想定した状態監視異常判定モジュール3Tの詳細構成を示している。判定モジュール3Tは、処理部として、データ項目分類部32、及び異常兆候判定部33を有する。これらの処理部では、判定モデル作成モジュール2(即ちMT1作成モジュール)が装置(T)1Tのために生成し記憶モジュール(モデルDB7)に格納した、個別装置(T)専用判定モデル(MT1)のデータ72を入力して利用する。
【0082】
データ項目分類部32では、個別装置(T)専用判定モデル(MT1)のデータ72に基づき、装置(T)の複数のセンサSからの状態データ(DS)の項目を分類する。本例では、データ項目P1〜P4が、P1:第1の共線性説明変数(XC1)321と、P2:第2の共線性説明変数(XC2)322と、P3:独立性説明変数(XD)323と、P4:目的変数(Y)320とに分類された例を示す。
【0083】
異常兆候判定部33では、処理部として、第1(#1)のT専用予測モデル(MT#1:MTXC1)による第1(#1)の予測値(PdY1)計算部331、第2(#2)のT専用予測モデル(MT#2:MTXC2)による第2(#2)の予測値(PdY2)計算部332、第1(#1)の予測値乖離度(EY1)計算部333、第2(#2)の予測値乖離度(EY2)計算部334、集団予測乖離度(EG)計算部335、しきい値(H)との照合による異常判定部336を有する。
【0084】
PdY1計算部331では、XC1(321)とXD(323)から、第1(#1)の予測モデル(MT#1:MTXC1)により第1(#1)の予測値(PdY1)を計算する。PdY2計算部332では、XC2(322)とXD(323)から、第2の予測モデル(MT#2:MTXC2)により第2(#2)の予測値(PdY2)を計算する。
【0085】
EY1計算部333では、Y(320)と第1の予測値(PdY1)から、PdY1の乖離度(第1の予測乖離度:EY1)を計算する。EY2計算部334では、Y(320)と第2の予測値(PdY2)から、PdY2の乖離度(第2の予測乖離度:EY2)を計算する。
【0086】
EG計算部335では、第1と第2の予測乖離度(EY1,EY2)から、集団予測乖離度(EG)を計算する。異常判定部336では、集団予測乖離度(EG)を、しきい値(H)と比較照合して、異常判定を行う。そして、その異常判定の結果(異常の有無)と、第1及び第2の予測乖離度(EY1,EY2)とを含む情報を、検知情報(D0)として出力する。
【0087】
<個別装置専用判定モデル作成処理>
次に、図8において、判定モデル作成モジュール2の例えば個別装置(a)専用判定モデル(Ma1)作成部2Saによるa専用判定モデル(Ma1)の作成処理フローを示している(Sは処理ステップを示す)。各処理ステップの主体は、当該処理部(2Sa)対応のプログラム(2SP)である。
【0088】
S101では、処理対象の装置(a)1aの状態計測データDSの履歴データを収集する。
【0089】
S102では、データ項目分類部22により、装置(a)1aのデータ(DS)の複数の状態データ項目の各々の中から、目的変数(Y)と説明変数(X)を指定(分類)する。
【0090】
S103では、データ項目分類部22により、説明変数(X)を目的変数(Y)に対する共線性モードと独立性モードに分類する。即ち、前述の共線性説明変数(XC:XC1,XC2)と独立性説明変数(XD)に分類される。
【0091】
S104では、予測モデル(Ma)構築部23により、共線性説明変数(XC:XC1,XC2)と独立性説明変数(XD)とを組み合わせて、共線性説明変数(XC)の数(本例では2つ)の分だけ、共線性説明変数(XC)毎の目的変数(Y)に対する個別装置(a)専用予測モデル(Ma:Ma#1(MaXC1),……)を作成する。
【0092】
個別装置専用予測モデル(一般)を線形回帰式で表した例を、式(1)に示す。式(1)の記号の意味は次の通り。Ypred:目的変数(Y)の予測値、XC:共線性説明変数(XC)の実測値、XD:独立性説明変数(XD)の実測値、aC:共線性説明変数(XC)に対する係数(AC)、aD:独立性説明変数(XC)に対する係数(AD)、b:目的変数(Y)予測式の切片(B)、t:データ収集時刻(サンプリング番号)、p:共線性説明変数データ項目(XC)の識別記号、q:独立性説明変数データ項目(XD)の識別記号、m:装置1の識別記号。
【0093】
【数1】
【0094】
即ち、式(1)に基づき、例えば、前述の装置(a)1aに対するXC1とXDの組み合わせに対応する第1の予測モデル(Ma#1:MaXC1)は、式(2)によって表され、また、XC2とXDの組み合わせに対応する第2の予測モデル(Ma#2:MaXC2)は、式(3)によって表される。なお、装置(a)の識別記号m=aと係数A(aC)等は異なり、装置(b)の識別記号m=bと切片B(b)等は異なる。
【0095】
【数2】
【0096】
【数3】
【0097】
これらの線形回帰式の係数(AC,AD)及び切片(B)を、最小二乗法あるいはMCMC法などによって、履歴データ(Y,XC,XD)から求めれば、個別装置専用予測モデルを得ることができる。ただし、この予測モデルは、線形回帰式に限るわけではなく、非線形回帰式や回帰木などを用いても良い。
【0098】
S105では、集団予測乖離度計算モデル(MaG)構築部24により、上記複数の予測モデル(Ma:MaXC1,MaXC2)の各々の予測値(PdY)と実測値(Y)との乖離度(予測乖離度:EY)を組み合わせて統合した値である集団予測乖離度(EG)を計算するための集団予測乖離度計算モデル(MG:例えば装置(a)に対応するMaG)を構築する。予測乖離度(EY)(一般)は、式(4)によって表される。式(4)の記号の意味は次の通り。EY:目的変数(Y)の乖離値(予測乖離度)、Ymeas:目的変数(Y)の実測値、Ypred:目的変数(Y)の予測値。
【0099】
【数4】
【0100】
具体的には、例えば前述の装置(a)1aに対するXC1とXDの組み合わせに対応する予測乖離度(EY:EY1)は、式(5)から計算され、また、XC2とXDの組み合わせに対応する予測乖離度(EY:EY2)は、式(6)から計算される。
【0101】
【数5】
【0102】
【数6】
【0103】
集団予測乖離度(EG)を、各々の予測乖離度(EY)の規格値の総和とした場合の集団予測乖離度計算モデル(MG)(一般)は、式(7)によって表される。
【0104】
【数7】
【0105】
具体的には、式(5)と式(6)の計算結果の和として、式(8)によって表される。
【0106】
【数8】
【0107】
式(7)及び式(8)における係数は、予測乖離度(EY)を規格化するためのものであり、各装置1の正常状態の時間区間の予測乖離度(EY)から予め計算する。
【0108】
S106では、上記構築された集団予測乖離度計算モデル(例えばMaG)を、上記個別装置専用予測モデル(Ma)のデータと共に、個別装置(a)専用の判定モデル(Ma1)のデータ(73)として、記憶モジュール(モデルDB7)へ格納する。
【0109】
上記予測モデル(Ma)及び集団予測乖離度計算モデル(MaG)は、履歴データが記憶モジュールに蓄積されることにより、個別の判定モデルの作成の対象となっている他の類似装置1(例えば(b)1b)に対しても同様に作成される。例えば個別装置(b)専用判定モデル(Mb1)のデータ74が同様に記憶モジュール(モデルDB7)へ格納される。
【0110】
<メタ判定モデル作成処理>
次に、図9において、判定モデル作成モジュール2の類似装置共通メタ判定モデル(MM1)作成部2Cによる類似装置共通メタ判定モデル(MM1)の作成処理フローを示している。各処理ステップの主体は、当該処理部(2C)対応のプログラム(2CP)である。
【0111】
S201では、前述の複数(2つ)の個別装置(a,b)専用判定モデル(Ma1,Mb1)を、記憶モジュール(モデルDB7)から収集する。例えば、第1の個別装置(a)1aの専用の判定モデルMa1(データ73)、及び第2の個別装置(b)1bの専用の判定モデルMb1(データ74)を取得する。a専用の判定モデルMa1は、共線性説明変数データ項目P1(XC1),P2(XC2)に対する予測モデル(Ma:MaXC1,MaXC2)を含む。また、その類似装置(b)1bの専用の判定モデルMb1は、共線性説明変数データ項目P1(XC1),P2(XC2)に対する予測モデル(Mb:MbXC1,MbXC2)を含む。
【0112】
S202では、類似装置1(T,a,b等)間の特徴や構造などの差異を表すデータ(装置特徴構成データDD)(特徴項目変数値など)を、装置情報DB6から、装置1毎に収集する。
【0113】
図10に、装置特徴構成データDD(特徴項目変数値など)の例を示す。特に監視対象の装置(T)1T以外の類似装置(a,b等)のデータ例である。対象の装置1が熱電併給装置の場合、例えば駆動機関の種別が、ガソリンエンジンか、ディーゼルエンジンか、ガスエンジンかが、類似の容積型内燃機関を用いた場合の差異特徴になる。図10に示すように、装置1(a,b等)毎に、1か0を取る3項目のデータで表現する。
【0114】
また、類似の容積型内燃機関を用いた場合の差異特徴としては、他に例えば、熱機関の理論サイクルがオットーサイクル(等容サイクル)かミラーサイクルかの違いがあり、同様に装置1毎に1か0を取る2項目のデータで表現する。また例えば、使用燃料が、ガソリン、軽油、水素、天然ガス、バイオガスの違いがあり、同様に5項目のデータで表現する。また例えば、エンジンの気筒数があり、装置1毎に気筒数を取るデータで表現する。
【0115】
また、類似の発電機を用いた場合の差異特徴として、例えば、発電機の定格出力、定格回転数、定格周波数、定格電圧、及び定格電流があり、装置1毎に定格値を取るデータで表現する。また例えば、発電機の種別が、同期発電機か、誘導発電機かがあり、装置1毎に1か0を取る2項目のデータで表現する。
【0116】
また、類似の容積型内燃機関を用いた場合の差異特徴として、装置1の設置場所の平均気温、平均湿度、及び平均気圧があり、装置1毎に平均気温、平均湿度、及び平均気圧を取るデータで表現する。平均気温、平均湿度、及び平均気圧は、モデル作成に用いるデータ収集期間の平均値、あるいは年間平均値などを用いる。
【0117】
なお、装置の特徴項目変数値は、複数の類似装置1を区別する変数(各装置1の特徴や構成や環境の違いを表す情報)であり、装置状態計測データ項目の概念とは異なるが、一部の変数が両者で重複する場合もある。また、装置1の特徴項目変数値には、装置1の設置環境の状態計測値(気温など)などの情報が含まれていてもよいし、外に関連付けされてもよい。
【0118】
S203では、上記収集した個別装置専用判定モデル(Ma1,Mb1)に含まれる予測モデル(Ma,Mb)のパラメータ(係数、切片)を、複数(K+1)の類似装置1について、類似装置1間の特徴構成データ(DD)(特徴項目変数値など)で説明(予測)する、類似装置共通メタ予測モデル(MM)を作成する。
【0119】
式(1)の予測モデルのパラメータである第一項の共線性説明変数(XC)の係数(AC)に対するメタ予測モデルを、線形回帰式で表した例を式(9)に示す。式(9)の記号の意味は次の通り。φ:装置1の特徴項目変数値、αC:係数aC予測式のメタ係数、βC:係数aC予測式のメタ切片、π:装置1の特徴項目変数の識別記号、p:共線性説明変数データ項目(XC)の識別記号。
【0120】
【数9】
【0121】
また、第二項の独立性説明変数(XD)の係数(AD)に対するメタ予測モデルを、線形回帰式で表した例を式(10)に示す。式(10)の記号の意味は次の通り。αD:係数aD予測式のメタ係数、βD:係数aD予測式のメタ切片、q:独立性説明変数データ項目(XD)の識別記号。
【0122】
【数10】
【0123】
また、第三項の切片(B)に対するメタ予測モデルを、線形回帰式で表した例を式(11)に示す。式(11)の記号の意味は次の通り。α0:切片b予測式のメタ係数、β0:切片b予測式のメタ切片。
【0124】
【数11】
【0125】
具体的には、式(9)の係数(AC)についてのメタ予測モデルは、第1の共線性説明変数データ項目(XC1(P1))について、前述の装置(a)1a,(b)1b等に対して、式(12)の関係を持つ。
【0126】
【数12】
【0127】
また、式(10)の係数(AD)についてのメタ予測モデルは、共線性説明変数データ項目(XC1(P1))について、前述の装置(a)1a,(b)1b等に対して、式(13)の関係を持つ。
【0128】
【数13】
【0129】
また、式(11)の切片(B)についてのメタ予測モデルは、共線性説明変数データ項目(XC1(P1))について、前述の装置(a)1a,(b)1b等に対して、式(14)の関係を持つ。
【0130】
【数14】
【0131】
これらの関係式は、最小二乗法あるいはMCMC法などの手段を用いて解くことができ、上記メタ予測モデル(MM)を作成できる。ただし、上記メタ予測モデルは、線形回帰式に限るわけではなく、非線形回帰式や回帰木などを用いても良い。第2の共線性説明変数データ項目(XC2(P2))についても同様に解くことができる。
【0132】
S204では、上記作成した類似装置共通メタ予測モデル(MM:AC,AD,Bに関する各メタ予測モデル)を、類似装置共通メタ判定モデル(MM1)のデータ71として、前述の個別の判定モデル(Ma1,Mb1)に含まれる集団予測乖離度計算モデル(MG:MaG,MbG)と共に、記憶モジュール(モデルDB7)へ格納する。
【0133】
<個別装置(T)専用判定モデル生成処理>
次に、図11において、判定モデル作成モジュール2の個別装置(T)専用判定モデル(MT1)生成部2Gによる、類似装置共通メタ判定モデル(MM1)からの個別装置(T)専用判定モデル(MT1)の生成処理フローを示している。各処理ステップの主体は、当該処理部(2G)対応のプログラム(2GP)である。
【0134】
S301では、前述のメタ判定モデル(MM1)を記憶モジュール(モデルDB7)から読み出す。このメタ判定モデル(MM1)は、前述のメタ予測モデル(MM:AC,AD,Bに関する各メタ予測モデル)と集団予測乖離度計算モデル(MG)を含む。
【0135】
S302では、判定モデル(MT1)の生成対象の装置(T)1Tについての、類似装置1(a,b等)に対する装置特徴構成データ(DD)を、装置情報DB6から収集する。
【0136】
この装置特徴構成データ(DD)(それに含まれている装置特徴項目変数値)は、対象の装置(T)1Tが熱電併給装置の場合、例えば、前述同様に、駆動機関の種別、熱機関の理論サイクル、使用燃料、エンジンの気筒数、発電機の定格出力、定格回転数、定格周波数、定格電圧、定格電流、装置の設置場所の平均気温、平均湿度、及び平均気圧などがある。
【0137】
S303では、メタ判定モデル(MM1)に含まれているメタ予測モデル(MM)(式(9)のAC、式(10)のAD、式(11)のB)に、対象の装置(T)1Tについての類似装置1に対する差異を表す値(特徴項目変数値)を代入して、説明変数データ項目(X)(p,q)毎に生成するT専用予測モデル(MT)の係数値(AC,AD)、及び切片(B)の値を確定する。これにより、対象の装置(T)1Tに対して、式(1)の個別装置専用予測モデル(MT:MT#1(MTXC1),MT#2(MTXC2))が、式(15)及び式(16)に示すように生成される。
【0138】
【数15】
【0139】
【数16】
【0140】
S304では、生成した個別装置(T)専用予測モデル(MT)、及び集団予測乖離度計算モデル(MG)を、個別装置(T)専用判定モデル(MT1)のデータ72として、記憶モジュール(モデルDB7)へ格納する。
【0141】
<状態監視異常判定処理>
次に、図12において、判定モジュール3Tによる対象の装置(T)1Tの状態監視異常判定の処理フローを示している。各処理ステップの主体は、当該モジュール(3T)対応のプログラム(3P)である。
【0142】
S110では、監視対象の装置(T)1Tについての個別装置(T)専用判定モデル(MT1)のデータ72を、記憶モジュール(モデルDB7)から読み出す。T専用判定モデル(MT1)は、T専用予測モデル(MT:MTXC1,MTXC2)と集団予測乖離度計算モデル(MG)を含む。
【0143】
S111では、装置(T)1Tの状態計測データDSの履歴データを収集する。
【0144】
S112では、データ項目分類部32により、装置(T)1Tのデータ(DS)の複数の状態データ項目の各々の中から、判定モデル(MT1)の指定に従って、目的変数(Y)と説明変数(X)を選択する。
【0145】
S113では、データ項目分類部32により、複数の説明変数(X)の中から、判定モデル(MT1)の指定に従って、目的変数(Y)に対する共線性説明変数(XC:XC1,XC2)と独立性説明変数(XD)を選択する。
【0146】
S114では、異常兆候判定部33により、共線性説明変数(XC)の項目数の分の複数(2つ)の予測モデル(MT)を用いて、目的変数(Y)に対する複数(2つ)の予測値(PdY:PdY1,PdY2)を、式(15)及び式(16)に基づき計算する。
【0147】
S115では、目的変数(Y)の実測値に対する各予測値(PdY:PdY1,PdY2)の乖離度(EY:EY1,EY2)を、式(17)及び式(18)に基づき計算する。
【0148】
【数17】
【0149】
【数18】
【0150】
S116では、集団予測乖離度(EG)計算部335により、各乖離度(EY:EY1,EY2)を組み合わせて、集団予測乖離度(EG)を、式(19)に基づき計算する。
【0151】
【数19】
【0152】
S117では、集団予測乖離度(EG)としきい値(H)とを比較照合する。S118では、比較の結果に基づき、異常判定を行う。異常有り(Yes)の場合、S119では、検知情報(D0)を出力する。検知情報(D0)は、例えば、装置停止指示情報(D1)や保守指示情報(D2)などである。
【0153】
<個別装置(T)専用判定モデルの生成例>
次に、個別装置(T)専用判定モデル(MT1)の生成の例などについて説明する。上述した装置状態計測データDSにおける目的変数(Y)の実測値(Y)、類似装置共通メタ予測モデル(ACに関するメタ予測モデル)、生成した個別装置(T)専用予測モデル(MT)の予測値(PdY)などについて、以下に例を挙げながら説明する。
【0154】
図13(a)は、状態計測データDSの目的変数データ項目(装置出力など)の実測値(Y)の推移を、2台の既設の個別類似装置(a)1a及び(b)1bについて示したものである。縦軸は、目的変数データ項目の実測値(Y)である。また、横軸は、装置(m)の稼働時刻(t)である。43mに装置(a)の実測値(Y)(Ymeas)の線を、また、44mにそれよりも出力が大きな装置(b)の実測値(Y)(Ymeas)の線を示す。この例では、個別の装置(a)及び(b)は、同じサイクルで稼働しているため、同じ変化点を有しているが、これに限る訳ではない。
【0155】
図13(b)は、状態計測データDSの目的変数データ項目(Y)の共線性説明変数データ項目(XC)(p)による予測値(PdY)の推移を、新規設置の装置(T)1Tについて示したものである。縦軸は、目的変数データ項目(Y)の予測値である。また、横軸は、装置(m=T)の稼働時刻(t)である。45pには、既設の2台(a,b)よりも出力が大きな新設の装置(T)1Tの予測値(PdY)(Ypred)の線を示す。この例では、新設の装置(T)は、類似の装置(a)及び(b)と同じサイクルで稼働しているが、これに限る訳ではない。
【0156】
図14(a)は、実測データから構築した個別装置専用予測モデルの係数の実測値を、複数の個別の装置1(a,b,c,d,……)について示したものである。縦軸は、実測データから構築した式(1)の個別装置専用予測モデルの第一項の共線性説明変数(XC1)に対する係数(AC)の値(aC(p,m))である。横軸は、類似装置1毎の特徴項目値である。プロット53a,53b,53c,53dは、それぞれ、装置(a),(b),(c),(d)の特徴項目値に対する係数値である。この例では、装置1の特徴項目値が1個の場合を示しているが、複数個存在しても構わない。141の直線は、図14(b)の線形回帰式による類似装置共通メタ予測モデルを示す(式(9)に基づく)。
【0157】
図14(b)は、類似装置共通メタ予測モデル(MM)から予測した個別装置(T)専用予測モデル(MT)の係数の装置特徴項目値についての予測値を示したものである。縦軸は、メタ予測モデル(MT)(141)から予測した式(1)の予測モデルの第一項の共線性説明変数(XC1)に対する係数(AC)の値である。横軸は、装置1毎の特徴項目値である。
【0158】
図15(a)は、新規設置の装置(T)の状態計測データDSの目的変数データ項目(Y)の共線性説明変数(XC)(p)による予測値(PdY)に重ねて、その実測値(PdY)の推移を示したものである。縦軸は、目的変数データ項目(Y)の予測値である。また、横軸は、装置(m=T)の稼働時刻(t)である。45p(点線)に装置(T)の予測値(PdY)を、また、45m(実線)に実測値(Y)を示す。この例では、目的変数データ項目(Y)より、変化点が時間先行している共線線説明変数データ項目(XC)から予測しているため、予測値(PdY)が実測値(Y)よりも時間先行している。
【0159】
図15(b)は、予測値(PdY)と実測値(Y)の乖離値(乖離度:EY)の推移を示したものである。縦軸は、目的変数データ項目(Y)の乖離値(EY)(45eの線)である。また、横軸は、装置(m=T)の稼働時刻(t)である。予測値(PdY)が実測値(Y)より時間先行しているため、立ち上がりで正の乖離値46epが発生し、立ち下がりで負の乖離値46emが発生している。図15(b)を装置(T)の正常状態の乖離値の推移とすると、式(7)及び式(8)における規格化係数を、乖離値46ep,46emから、例えばその平均値として得ることができる。
【0160】
前記図14(a)のプロット(53a〜53d)に対して、例えば最小二乗法で線形回帰式を求めれば、メタ係数(傾き)141a、及びメタ切片(切片)141bが決まり、式(9)の共線性説明変数(XC)に対する係数(AC)を予測するメタ予測モデル(141)が得られる。式(10)の独立性説明変数(XD)に対する係数(AD)及び式(11)の切片についても、図示しないが、同様に、それらを予測するメタ予測モデルを得ることができる。
【0161】
上記作成した類似装置共通メタ予測モデル(141)に対し、図14(b)に示すように、装置(T)の特徴項目値55T(φ(π,T))を代入すると、メタ予測値56T(装置(T)の係数(aC(p,T))の予測値)が決まる。メタ予測値56Tは、式(1)のT専用予測モデルの第一項の共線性説明変数(XC1)に対する係数(AC)に代入する。第二項の独立性説明変数(XD)に対する係数(AD)及び切片(B)についても、図示しないが、同様に、それらを予測するメタ予測モデルから予測値を得て代入することで得られる。以上により、式(1)の個別装置(T)専用予測モデル(MT)が生成される。
【0162】
上記生成した個別装置(T)専用予測モデル(MT)から、図13(b)に示すように、目的変数データ項目(Y)の予測値(PdY)を、式(15)に従い計算できる。図15(a),図15(b)に示すように、この予測値(PdY)と実測値(Y)から、式(17)に従い乖離度を計算することができる。別の共線性説明変数(XC2)に対しても、同様に、式(16)及び式(18)から乖離度を計算することができる。これらの乖離度から、集団乖離度を、式(19)に従い計算することができる。
【0163】
図15(a)に示す予測値(PdY)の実測値(Y)に対する時間先行の間隔が広がったり、予測値(PdY)の実測値(Y)の不一致が発生したりした場合、正常状態の乖離値よりも大きな異常状態の乖離値(異常乖離度)が発生する。この異常乖離度を含む集団乖離度を、しきい値と照合して、装置(T)の異常の有無を判定することができる。
【0164】
実施の形態1の異常判定機能については以上である。
【0165】
(実施の形態2)
次に、図2、図16〜図22等を用いて、本発明の実施の形態2の装置異常監視方法及びそのシステムについて説明する。実施の形態2では、実施の形態1の状態監視異常判定を実行する処理に加え、異常判定(検知)された装置に関する異常原因診断等の処理を行う。異常判定(検知)までの部分は実施の形態1と同様である。
【0166】
<異常原因診断処理>
実施の形態2のシステム構成(図2)に基づき、前記異常判定処理(図12)によって異常が検知された装置(T)1Tに関する、診断モジュール5T等を用いた異常原因診断処理について、図16以下を用いて説明する。
【0167】
<個別装置専用診断モデル作成処理>
まず、図16において、図2の診断モデル作成モジュール4における個別装置(a,b)専用診断モデル(Ma2,Mb2)作成部4Sa,4Sbによる診断モデル(Ma2,Mb2)作成処理フローを示している(例として4SaによるMa2の作成の場合)。各処理ステップの主体は、当該処理部(4Sa等)対応のプログラム(4SP)である。
【0168】
S401では、処理対象の装置(a)1aの状態(DS)の履歴データを、異常検知時点から遡って収集する。
【0169】
S402では、装置(a)1aの正常稼働区間の履歴データから、状態データ項目間の正常グラフィカルモデル(正常グラフネットワークモデル)を作成する。
【0170】
正常グラフィカルモデルは、例えば、状態データ項目間の相関強度から因果関係の有無を決定し、変化点発生についての状態データ項目間の時間先行性情報から因果の方向を決定することにより作成できる。多数の変数が相互に関係を持つ場合は、相関強度の代わりに、他の変数の影響(信号成分)を除外した偏相関強度を用いると良い。なお、他の変数の影響(信号成分)を除外する処理過程で、微小ノイズ信号同士の偏相関強度を計算することによって、誤った因果関係を導くことを防止するため、他の変数の影響(信号成分)除外処理前後で信号強度の変化率を計算し、偏相関強度と信号強度変化率の積を因果関係の指標とすると良い。
【0171】
図17(a)に、正常グラフィカルモデルの例を示す。この例では、先に説明変数(X)に選んだ第1の共線性説明変数データ項目P1(XC1)と目的変数データ項目P4(Y)との間の相関強度が0.8と高いことから、当該P1−P4間に因果のリンク131aが張られ、さらに変化点発生についての状態データ項目間の時間先行性情報に基づき、当該因果の方向(リンク131aの矢印の向き)が決まる。例えば具体的には、前述の図15に示すように、P1(XC1)によるP4(Y)の予測値(PdY)と実測値(Y)との差分乖離値(EY)から、時間先行性情報を得ることができ、その情報から、因果の方向がP1(XC1)からP4(Y)への向きと決まる。同様に、第2の共線性データ項目P2(XC2)とP4(Y)との間の相関強度が0.9と高いことから、因果のリンク132aが張られ、さらに時間先行性情報に基づき、因果の方向がP2(XC2)からP4(Y)への向きと決まる。同様に、P1(XC1)とP2(XC2)の間の相関強度が0.9と高いことから、因果のリンク133aが張られ、さらに時間先行性情報に基づき、因果の方向がP1(XC1)からP2(XC2)へと決まる。
【0172】
S403では、装置(a)1aの異常稼働区間の履歴データから、状態データ項目間の異常グラフィカルモデル(異常グラフネットワークモデル)を作成する。異常グラフィカルモデルは、例えば、上記正常グラフィカルモデルの作成の場合と同様に実現できる。
【0173】
図17(b)に、異常グラフィカルモデルの例を示す。この例では、先に説明変数(X)に選んだ第1の共線性説明変数データ項目P1(XC1)と目的変数データ項目P4(Y)との間の相関強度が、図17(a)の正常の場合と比べて、0.45へと低くなり、因果のリンク131bが消滅する(点線)。第2の共線性データ項目P2(XC2)とP4(Y)との間の相関強度は0.9と高いままであることから、因果のリンク132bは残り、さらに異常変化点発生についての状態データ項目間の時間先行性情報に基づき、因果の方向がP2(XC2)からP4(Y)への向きと決まる。同様に、P1(XC1)とP2(XC2)の間の相関強度が0.5へと低くなり、因果のリンク133bが消滅する。
【0174】
S404では、上記の正常グラフィカルモデル(図17(a))と異常グラフィカルモデル(図17(b))との差分を抽出する。この差分を取ると、第1の共線性説明変数データ項目P1(XC1)と目的変数データ項目P4(Y)との間のリンクと、P1(XC1)と第2の共線性説明変数データ項目P2(XC2)との間のリンクが抽出され、これにより、図18に示すような差分診断モデル136が得られる。
【0175】
図18において、135は、個別装置(T)専用診断モデル(MT2)に関するデータ情報の例であり、装置特徴項目134と、差分診断モデル136とを含んでいる。装置特徴項目134の情報は、装置特徴構成データDDに基づいた、当該装置(T)を類似装置1間で区別することができる特徴項目変数値であり、前述例のように、当該装置(T)の種別・型式の情報や、当該装置(T)の設置環境の情報などを有する。差分診断モデル136の情報は、図17のモデルに基づき、136aは正常差分モデルの情報、136bは異常差分モデルの情報を示す。また136cは、当該類似装置1及びその差分診断モデルに関し、過去の事例(異常事例)を転載した原因の情報を示す。この原因の情報(136c)は、例えば、「P1(XC1)の異常」、「P1の関係部品:{part11,part12,……}」等があり、これらが推定異常原因、及び保全対象箇所(推定異常箇所)となる。なお対象箇所の単位は部品に限らずモジュールや装置等の場合もある。
【0176】
診断モジュール5Tによる診断(異常原因診断)は、上記情報を用いて、正常差分モデル136aから異常差分モデル136bへのリンク消滅変化、あるいはリンク方向変化、あるいは相関強度変化の有無を、パターンマッチング等によって調べることにより行う。変化パターンがマッチングした場合は、過去事例を転載した原因(136c)から、推定される異常原因と、保全対象の関係部品等の情報が得られる。
【0177】
S405では、上記の差分診断用グラフィカルモデルの情報(図18の差分診断モデル136)を、装置特徴項目値等の情報(装置特徴項目137)と共に(付与して)、個別装置(T)専用診断モデル(MT2)の情報(135)として、記憶モジュール(モデルDB8)に格納する。
【0178】
<メタ診断モデル作成処理>
次に、図19において、図2の診断モデル作成モジュール4における類似装置共通メタ診断モデル(MM2)作成部4Cによるメタ診断モデル(MM2)の作成処理フローを示している。各処理ステップの主体は、当該処理部(4C)対応のプログラム(4CP)である。
【0179】
S411では、図16の処理で作成された個別装置(a,b)専用診断モデル(Ma2,Mb2)の情報を、複数の装置1の複数の異常事例に対して、記憶モジュール(モデルDB8)から収集する。このタイミングは、定期的でも良いし、異常検知毎でも良い。
【0180】
S412では、装置特徴項目値毎に個別装置専用診断モデル(Ma2,Mb2)を関係付けて、その装置特徴項目値に対して固有の診断モデルとして分類する。具体的には、図20(a)に示す。
【0181】
図20(a)で、装置特徴項目まとめ表138において、装置特徴項目の値(例えば、項目名:Nx,Ny、項目値:Vx1,Vx2,Vy1,Vy2)をキーにして、個別装置専用診断モデル(例えば135−1(A),135−2(B),135−3(B))を関係付ける。例えば、装置特徴項目まとめ表138(特徴項目値)に対して、1番目の診断モデル135−1(固有の診断モデル(A)136−1)は、特徴項目137−1のNxのVx1及びNyのVy1により、2番目の診断モデル135−2(固有の診断モデル(B)136−2)は、特徴項目137−2のNxのVx2及びNyのVy1により、3番目の診断モデル135−3(固有の診断モデル(B)136−3)は、特徴項目137−3のNxのVx1及びNyのVy2により、それぞれ関係付けられる。なお、上記表でキーとする特徴項目値は、1個の数値に限らず、複数の数値の集合としても良く、また上下限の数値を指定した範囲としても良い。
【0182】
S413では、装置特徴項目に依らない個別装置専用診断モデルを、汎用の診断モデルとして分類する。具体的には、例えば図20(a)の2番目、3番目の診断モデル135−2,135−3は、同じ診断モデル(B)(136−2,136−3)を持ちながら、各々別々の項目値で関係付けられている。このような場合は、当該モデルについては、特徴項目値とは関連が無いと考え、図20(b)の2番目の診断モデル(135−2b)に示すように、特徴項目137−2bにより全ての特徴項目値と関係付けられる汎用の診断モデル(B)136−2bとして分類する。
【0183】
S414では、上記装置特徴項目値毎の固有診断モデルと汎用診断モデルを、装置特徴項目まとめ表138に関係付けて、類似装置共通メタ診断モデル(MM2)のデータ81として記憶モジュール(モデルDB8)に記憶する。
【0184】
<個別装置専用診断モデル生成処理>
次に、図21において、図2の診断モデル作成モジュール4の個別装置(T)専用診断モデル(MT2)生成部4Gによる診断モデル(MT2)の生成処理フローを示している。各処理ステップの主体は、当該処理部(4G)対応のプログラム(4GP)である。
【0185】
S421では、図19の処理で作成された類似装置共通メタ診断モデル(MM2)を、記憶モジュール(モデルDB8)から読み出す。
【0186】
S422では、診断対象の装置(T)1Tの特徴項目値を含むデータ(DD)を、装置情報DB6から取得する。
【0187】
S423では、対象の装置(T)の特徴項目値に合致する固有診断モデルを選択する。図20(b)の例で説明すると、特徴項目値が、装置(T)の項目名Nxの値Vx1、及び、項目名Nyの値Vy2である場合、それに関係付けられる1番目の固有診断モデル(135−1(136−1(A)))が選択される。一方、特徴項目値に依らない、即ち全ての装置1に対して合致する、前述の汎用診断モデル(135−2b)が選択される。
【0188】
S424では、上記装置(T)に合致する選択した固有診断モデル(135−1)と、全ての装置1に対して合致する汎用診断モデル(135−2b)とを含むデータ情報を、個別装置(T)専用診断モデル(MT2)のデータ82として、記憶モジュール(モデルDB8)に記憶する。
【0189】
<異常原因診断処理処理>
次に、図22において、装置(T)1Tに対する診断モジュール5Tによる異常原因診断処理フローを示している。各処理ステップの主体は、当該モジュール(5T)対応のプログラム(5P)である。本診断処理は、例えば判定モジュール3Tの異常検知を起点に開始される。
【0190】
S430では、装置(T)1Tに対する判定モジュール3Tの異常検知(検知情報(D0))を待機する。
【0191】
S431では、装置(T)の状態(DS)の履歴データを、異常検知時点から遡って収集する。
【0192】
S432では、装置(T)の正常稼働区間の履歴データから、状態データ項目間の正常グラフィカルモデルを作成する。
【0193】
S433では、装置(T)の異常稼働区間の履歴データから、状態データ項目間の異常グラフィカルモデルを作成する。
【0194】
S434では、正常グラフィカルモデルと異常グラフィカルモデルの差分を抽出する。
【0195】
S435では、装置(T)についての診断モデル(MT2)のデータ82を、記憶モジュール(モデルDB8)から読み出す。この診断モデル(MT2)のデータ82は、前述の固有診断モデルと汎用診断モデルを含む。
【0196】
S436では、診断モデル(MT2)の照合を行う。具体的には、図18のT専用診断モデル(135)の正常差分モデル136aから異常差分モデル136bへのリンク消滅変化、あるいはリンク方向変化、あるいは相関強度変化の有無を、パターンマッチング等によって調べることにより行う。
【0197】
S437では、上記変化パターンがマッチングした場合、診断モデル(135)の原因の情報(136c)から、推定異常原因、及び、保全対象箇所、関係部品などを含む診断結果の情報(保守指示情報D2など)が、検知情報(D0)として得られる。
【0198】
以上の診断に基づき、診断モジュール5Tは、保守指示情報(D2)などの検知情報(D0)を、対象の装置(T)1Tに対応付けられる保守装置54などへ送信する。保守装置54は、受信した情報(D0)に基づき、保守作業指示プログラムなどによって、推定異常原因、及び保全対象箇所(関係部品など)に係わる情報を例えば画面に表示する。また必要があれば、他のシステム(図示せず)に当該情報を送信し、保守交換のための部品手配などの処理を行う。保守装置54は、保守履歴記録プログラムによって、保守作業者(U1)により保守を実施した結果を履歴として記録する。上記により、保守作業者は、保守装置54を使用して効率的に装置(T)1Tの保守作業を実施できる。
【0199】
<装置>
装置1としては、前記熱電併給装置に代表されるエネルギー変換装置に限定されるものではない。例えば、本発明は、燃料を燃焼させる代わりに、風力あるいは波力を運動エネルギーまたは電気エネルギーの少なくとも1つに変換する装置に適用できる。この場合、目的変数(Y)には、エネルギー変換装置の運動出力、電力出力、あるいはエネルギー変換効率の少なくとも1つを選べば良い。説明変数(X)には、風速、機械部品の運動速度、機械部品の振動、機械部品の加速度、機械部品の歪み、機械部品の音響、機械部品の摩耗量、潤滑油の成分、潤滑油の圧力、潤滑油の温度、電気部品の電圧、電気部品の電流、電気部品の周波数、環境の温度、環境の湿度、環境の気圧、電力系統の電圧、電力系統の電流、装置の稼働時間、あるいは部品の稼働時間の少なくとも1つを含む。
【0200】
また、本発明は、地熱を運動エネルギー、熱エネルギー、または電気エネルギーの少なくとも1つに変換する装置に適用できる。この場合、目的変数(Y)には、少なくともエネルギー変換装置における、運動出力、熱出力、電力出力、あるいはエネルギー変換効率の少なくとも1つを選べば良い。説明変数(X)には、上記目的変数(Y)と重複しない、水蒸気供給量、水蒸気温度、水蒸気圧力、機械部品の運動速度、機械部品の振動、機械部品の加速度、機械部品の歪み、機械部品の音響、機械部品の摩耗量、潤滑油の成分、潤滑油の圧力、潤滑油の温度、電気部品の電力、電気部品の無効電力、電気部品の電圧、電気部品の電流、電気部品の周波数、環境の温度、環境の湿度、環境の気圧、電力系統の電圧、電力系統の電流、装置の稼働時間、あるいは部品の稼働時間の少なくとも1つを含む。
【0201】
また、本発明は、電気エネルギーを機械エネルギーに変換する電動機装置に適用できる。電動機装置の例として、エレベータやエスカレータを代表とする昇降機、あるいはポンプや圧縮機を代表とするプラント機器、あるいは旋盤やボール盤やフライス盤や研削盤を代表とする工作機械がある。この場合、目的変数(Y)には、機械部品の仕事量、機械部品の運動速度、機械部品の振動、機械部品の加速度、機械部品の歪み、機械部品の音響、機械部品の摩耗量、あるいはエネルギー変換効率の少なくとも1つを選べば良い。説明変数(X)には、少なくとも上記目的変数(Y)と重複しない、機械部品の運動速度、機械部品の振動、機械部品の加速度、機械部品の歪み、機械部品の音響、機械部品の摩耗量、潤滑油の成分、潤滑油の圧力、潤滑油の温度、電気部品の電力、電気部品の無効電力、電気部品の電圧、電気部品の電流、電気部品の周波数、環境の温度、環境の湿度、環境の気圧、装置の稼働時間、あるいは部品の稼働時間の少なくとも1つを含む。
【0202】
また、本発明は、電気エネルギーを機械エネルギーあるいはプラズマエネルギーに変換する半導体加工装置に適用できる。半導体加工装置の例として、半導体CMP(化学的機械的研磨)装置や半導体エッチング装置や半導体成膜装置がある。この場合、目的変数(Y)には、少なくとも半導体の加工量あるいは成膜量、半導体ウェハ面内の加工均一性あるいは成膜均一性、あるいはエネルギー変換効率を選べば良い。説明変数(X)には、機械部品の摩耗量、電気部品の電力、電気部品の無効電力、電気部品の電圧、電気部品の電流、電気部品の周波数、電気部品のインピーダンス、半導体ウェハの温度、処理室内環境の温度、処理室内環境の圧力、処理室内環境の発光、装置の稼働時間、あるいは部品の稼働時間の少なくとも1つを含む。
【0203】
<実施の形態の効果等>
以上説明したように、本実施の形態によれば、複数(K+1)台の装置1を対象として、(1)実施の形態1では、精度良い異常検知(判定)が可能なモデル(判定モデル)、及びそれを用いた監視などを実現でき、(2)更に、実施の形態2では、精度良い原因診断が可能なモデル(診断モデル)、及びそれを用いた診断、部品等の推定による保守の効率化などを実現できる。特に、監視や診断のために必要なデータの蓄積が進んでいない例えば新設の装置(T)に対しても、それに対する既設の類似装置(a,b等)の蓄積済みのデータに基づいたモデルを用いて、精度良い異常検知や原因診断が可能なモデルが提供される。
【0204】
上記(1)に関しては、特に、装置の異常兆候をセンサデータから検知するためのモデルを、データ蓄積の進んだ類似装置群から作成した共通のメタ判定モデルから対象装置向けに生成することにより、データ蓄積の進んでいない例えば新設の装置に対しても常に精度の高い判定モデルを作成することができる。
【0205】
また、装置の異常兆候をセンサデータから検知するためのモデルを、共線性説明変数データ項目毎の個別のモデルの集団とすることによって、常に安定に作成できる。
【0206】
また、上記個別のモデルの集団とすることによって、線形モデルと非線形モデルの混在も可能である。より一般的には、複数の種類のモデルを混在できる。
【0207】
上記(2)に関しては、特に、装置の異常兆候の検知を基点に、診断モデルに基づく因果解析を行うことにより、迅速に異常検知データ項目を順位付けて異常原因現象の候補となる関連部品を特定でき、保守作業を効率化できる。
【0208】
また、この診断モデルを各装置の特徴項目値と関連付けて管理することにより、装置専用の診断モデルを束ねて類似装置共通のメタ診断モデルを作成することができ、このメタ診断モデルに対して対象装置の特徴項目値をキーに検索することにより、装置専用診断モデルを抽出することができる。
【0209】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0210】
本発明は、装置異常監視システム、装置保守システムなどに利用可能である。
【符号の説明】
【0211】
1,1T,1a,1b…装置、2…判定モデル作成モジュール、2Sa,2Sb…個別装置専用判定モデル作成部、2C…類似装置共通メタ判定モデル作成部、2G…個別装置専用判定モデル生成部、2P,2SP,2CP,2GP,3P,4P,4SP,4CP,4GP,5P,6P…プログラム、3,3T,3a,3b…状態監視異常判定モジュール、4…診断モデル作成モジュール、5T…異常原因診断モジュール、6…装置情報DB、7,8…モデルDB、22,32…状態データ項目分類部、23…個別装置専用予測モデル構築部、24…集団予測乖離度計算モデル構築部、33…異常兆候判定部、50…通信ネットワーク、51…センサ情報管理コンピュータ、52…異常監視実行コンピュータ、53…モデル管理コンピュータ、54…保守装置、71〜74,81〜84…データ、135,135−1〜3,135−2b…診断モデル(データ)、136…差分診断モデル、136a…正常差分モデル、136b…異常差分モデル、136c…原因の情報、136−1〜3…固有診断モデル、136−2b…汎用診断モデル、137,137−1〜3,137−2b…装置特徴項目、138…装置特徴項目まとめ表、141…直線(類似装置共通メタ予測モデル)、220,320…目的変数データ項目(P4(Y))、221,321…第1の共線性説明変数データ項目(P1(XC1))、222,322…第2の共線性説明変数データ項目(P2(XC2))、223,323…独立性説明変数データ項目(P3(XD))、231,232…個別装置専用予測モデル作成部、250…データ項目分類、251,252…集団予測モデル(予測モデル群)、331,332…予測値計算部、333,334…予測値乖離度計算部、335…集団予測乖離度計算部、336…異常判定部、S…センサ、DS…装置状態計測データ(センサデータ)、DD…装置特徴構成データ、D0…検知情報、D1…装置停止指示情報、D2…保守指示情報、MT…個別装置(T)専用予測モデル、MT1…個別装置(T)専用判定モデル、MT2…個別装置(T)専用診断モデル、Ma…個別装置(a)専用予測モデル、Ma1…個別装置(a)専用判定モデル、Ma2…個別装置(a)専用診断モデル、Mb…個別装置(b)専用予測モデル、Mb1…個別装置(b)専用判定モデル、Mb2…個別装置(b)専用診断モデル、MM…類似装置共通メタ予測モデル、MM1…類似装置共通メタ判定モデル、MM2…類似装置共通メタ診断モデル。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンピュータの情報処理を用いて、類似の複数(K+1)の装置を処理対象として、前記装置の状態をセンサで計測して得られる当該装置各々の複数のデータ項目に基づいて、前記複数(K+1)のうち少なくとも1つの装置の状態の異常を監視及び判定する処理を行う装置異常監視方法であって、
前記複数(K+1)の装置のうち、1つの第1の装置が、監視及び判定の対象となり、他の複数(K)の第2の装置が、前記第1の装置の監視及び判定のための第1のモデルを生成するためのデータを取得する対象となり、
前記複数(K)の第2の装置各々における正常時の複数のデータ項目に基づき作成される、前記監視及び判定のための個別装置専用の複数(K)の予測モデルに基づき、前記第1の装置専用の第1のモデルを生成する処理を行う第1のステップと、
所定時間単位で、前記第1の装置からの複数のデータ項目を入力し、前記第1のモデルを用いて、前記第1の装置の状態の異常を監視及び判定し、異常を検知した場合には検知情報を出力する、監視実行処理を行う第2のステップと、を有し、
前記第1のステップでは、
前記複数(K)の第2の装置各々の複数のデータ項目を、回帰分析における、目的変数と、それ以外の説明変数とに分類するステップと、
前記複数(K)の第2の装置各々の個別の予測モデルとしての複数(K)の回帰モデルを作成するステップと、
前記複数(K)の回帰モデルの係数及び切片を、当該第2の装置各々の特徴項目値または設置環境計測値から予測する、類似装置共通のメタ予測モデルを作成するステップと、
前記メタ予測モデルに、前記第1の装置の特徴項目値または設置環境計測値を入力して、前記第1のモデルとしての回帰モデルの係数及び切片を生成することで前記第1のモデルを生成するステップと、を有し、
前記第2のステップでは、
前記第1のモデルに、当該第1の装置の複数のデータ項目における説明変数を入力して、目的変数の予測値を計算するステップと、
前記目的変数の実測値と、当該予測値との間における乖離度を計算するステップと、
前記乖離度としきい値とを比較することで前記第1の装置の異常を検知するステップと、を有すること、を特徴とする装置異常監視方法。
【請求項2】
請求項1記載の装置異常監視方法において、
前記第1のステップでは、
前記説明変数を、相互相関強度の大きい共線性説明変数と、それ以外の独立性説明変数とに分類するステップを有し、
前記複数(K)の回帰モデルを作成するステップでは、前記共線性説明変数毎に、当該1つの共線性説明変数とその他の独立性説明変数から前記目的変数を予測する回帰モデルの集団を作成し、
前記メタ予測モデルを作成するステップでは、前記回帰モデルの集団に対して、前記共線性説明変数毎の回帰モデルの係数及び切片を予測するメタ予測モデルを作成し、
前記第1のモデルを生成するステップでは、当該装置の前記説明変数毎の複数の個別の予測モデルの回帰モデルの係数及び切片を生成し、
前記第2のステップでは、
前記共線性説明変数毎に得られる1つ以上の乖離度を組み合わせて成る集団乖離度を計算するステップを有し、
前記目的変数の予測値を計算するステップでは、前記第1のモデルに、前記共線性説明変数とその他の独立性説明変数を入力して、前記目的変数の予測値の集団を計算し、
前記乖離度を計算するステップでは、予測値の集団に対して乖離度の集団を計算し、
前記装置の異常を検知するステップでは、前記乖離度の集団に含まれる1つ以上の乖離度を組み合わせて成る集団乖離度としきい値とを比較することで前記第1の装置の異常を検知すること、を特徴とする装置異常監視方法。
【請求項3】
コンピュータの情報処理を用いて、類似の複数(K+1)の装置を処理対象として、前記装置の状態をセンサで計測して得られる当該装置各々の複数のデータ項目に基づいて、前記複数のうち少なくとも1つの装置の異常原因を診断する処理を行う装置異常監視方法であって、
前記複数(K+1)の装置のうち、1つの第1の装置が、原因診断の対象となり、他の複数(K)の第2の装置が、前記第1の装置の原因診断のための第2のモデルを生成するためのデータを取得する対象となり、
前記複数(K)の装置の異常原因診断に基づき、前記複数(K)の装置の個別の診断モデルを作成して蓄積し、当該複数(K)の個別の診断モデルに基づいて、前記第1の装置の原因診断のための第2のモデルの生成を行う第1のステップと、
所定時間単位で、前記第1の装置の複数のデータ項目を入力し、当該第1の装置の状態の異常を監視及び判定し、異常を検知した場合には前記第2のモデルを用いて原因診断処理を実行する第2のステップと、を有し、
前記第1のステップでは、
前記複数(K)の第2の装置の個別の診断モデルを作成し、当該各第2の装置の特徴項目値または設置環境計測値を付して蓄積するステップと、
前記蓄積された複数(K)の個別の診断モデルを、当該各第2の装置の特徴項目値または設置環境計測値に基づいて分類した類似装置共通のメタ診断モデルを作成するステップと、
前記メタ診断モデルに、前記第1の装置の特徴項目値または設置環境計測値を入力して、当該第1の装置専用の第2のモデルを生成するステップと、を有し、
前記第2のステップでは、
前記異常を検知した場合に、前記第2のモデルに対し、前記第1の装置からのデータ項目を入力して、当該第2のモデルを構成する各々のモデルとのマッチングを行うステップと、
前記マッチングしたモデルに基づき原因の情報を出力するステップと、を有すること、を特徴とする装置異常監視方法。
【請求項4】
請求項3記載の装置異常監視方法において、
前記第2のモデルは、前記複数のデータ項目間の関係を有向グラフで表現したグラフィカルモデルとし、
前記第1のステップでは、前記グラフィカルモデルのリンクの有無あるいは強度を、相関強度、偏相関強度、または偏相関強度と信号強度の積で決定する処理と、リンクの向きを、前記データ項目間の時間先行性情報から決定する処理と、を行うこと、を特徴とする装置異常監視方法。
【請求項5】
コンピュータの情報処理を用いて、類似の複数(K+1)の装置を処理対象として、前記装置の状態をセンサで計測して得られる当該装置各々の複数のデータ項目に基づいて、前記複数(K+1)のうち少なくとも1つの装置の状態の異常を監視及び判定する処理を行う装置異常監視システムであって、
前記複数(K+1)の装置のうち、1つの第1の装置が、監視及び判定の対象となり、他の複数(K)の第2の装置が、前記第1の装置の監視及び判定のための第1のモデルを生成するためのデータを取得する対象となり、
前記複数(K)の第2の装置各々における正常時の複数のデータ項目に基づき作成される、前記監視及び判定のための個別装置専用の複数(K)の予測モデルに基づき、前記第1の装置専用の第1のモデルを生成する処理を行う第1の手段と、
所定時間単位で、前記第1の装置からの複数のデータ項目を入力し、前記第1のモデルを用いて、前記第1の装置の状態の異常を監視及び判定し、異常を検知した場合には検知情報を出力する、監視実行処理を行う第2の手段と、を有し、
前記第1の手段では、
前記複数(K)の第2の装置各々の複数のデータ項目を、回帰分析における、目的変数と、それ以外の説明変数とに分類する処理と、
前記複数(K)の第2の装置各々の個別の予測モデルとしての複数(K)の回帰モデルを作成する処理と、
前記複数(K)の回帰モデルの係数及び切片を、当該第2の装置各々の特徴項目値または設置環境計測値から予測する、類似装置共通のメタ予測モデルを作成する処理と、
前記メタ予測モデルに、前記第1の装置の特徴項目値または設置環境計測値を入力して、前記第1のモデルとしての回帰モデルの係数及び切片を生成することで前記第1のモデルを生成する処理と、を行い、
前記第2の手段では、
前記第1のモデルに、当該第1の装置の複数のデータ項目における説明変数を入力して、目的変数の予測値を計算する処理と、
前記目的変数の実測値と、当該予測値との間における乖離度を計算する処理と、
前記乖離度としきい値とを比較することで前記第1の装置の異常を検知する処理と、を行うこと、を特徴とする装置異常監視システム。
【請求項6】
請求項5記載の装置異常監視システムにおいて、
前記第1の手段では、
前記説明変数を、相互相関強度の大きい共線性説明変数と、それ以外の独立性説明変数とに分類する処理を行い、
前記複数(K)の回帰モデルを作成する処理では、前記共線性説明変数毎に、当該1つの共線性説明変数とその他の独立性説明変数から前記目的変数を予測する回帰モデルの集団を作成し、
前記メタ予測モデルを作成する処理では、前記回帰モデルの集団に対して、前記共線性説明変数毎の回帰モデルの係数及び切片を予測するメタ予測モデルを作成し、
前記第1のモデルを生成する処理では、当該装置の前記説明変数毎の複数の個別の予測モデルの回帰モデルの係数及び切片を生成し、
前記第2の手段では、
前記共線性説明変数毎に得られる1つ以上の乖離度を組み合わせて成る集団乖離度を計算する処理を有し、
前記目的変数の予測値を計算する処理では、前記第1のモデルに、前記共線性説明変数とその他の独立性説明変数を入力して、前記目的変数の予測値の集団を計算し、
前記乖離度を計算する処理では、予測値の集団に対して乖離度の集団を計算し、
前記装置の異常を検知する処理では、前記乖離度の集団に含まれる1つ以上の乖離度を組み合わせて成る集団乖離度としきい値とを比較することで前記第1の装置の異常を検知すること、を特徴とする装置異常監視システム。
【請求項7】
コンピュータの情報処理を用いて、類似の複数(K+1)の装置を処理対象として、前記装置の状態をセンサで計測して得られる当該装置各々の複数のデータ項目に基づいて、前記複数のうち少なくとも1つの装置の異常原因を診断する処理を行う装置異常監視システムであって、
前記複数(K+1)の装置のうち、1つの第1の装置が、原因診断の対象となり、他の複数(K)の第2の装置が、前記第1の装置の原因診断のための第2のモデルを生成するためのデータを取得する対象となり、
前記複数(K)の装置の異常原因診断に基づき、前記複数(K)の装置の個別の診断モデルを作成して蓄積し、当該複数(K)の個別の診断モデルに基づいて、前記第1の装置の原因診断のための第2のモデルの生成を行う第1の手段と、
所定時間単位で、前記第1の装置の複数のデータ項目を入力し、当該第1の装置の状態の異常を監視及び判定し、異常を検知した場合には前記第2のモデルを用いて原因診断処理を実行する第2の手段と、を有し、
前記第1の手段では、
前記複数(K)の第2の装置の個別の診断モデルを作成し、当該各第2の装置の特徴項目値または設置環境計測値を付して蓄積する処理と、
前記蓄積された複数(K)の個別の診断モデルを、当該各第2の装置の特徴項目値または設置環境計測値に基づいて分類した類似装置共通のメタ診断モデルを作成する処理と、
前記メタ診断モデルに、前記第1の装置の特徴項目値または設置環境計測値を入力して、当該第1の装置専用の第2のモデルを生成する処理と、を行い、
前記第2の手段では、
前記異常を検知した場合に、前記第2のモデルに対し、前記第1の装置からのデータ項目を入力して、当該第2のモデルを構成する各々のモデルとのマッチングを行う処理と、
前記マッチングしたモデルに基づき原因の情報を出力する処理と、を行うこと、を特徴とする装置異常監視システム。
【請求項8】
請求項7記載の装置異常監視システムにおいて、
前記第2のモデルは、前記複数のデータ項目間の関係を有向グラフで表現したグラフィカルモデルとし、
前記第1の手段では、前記グラフィカルモデルのリンクの有無あるいは強度を、相関強度、偏相関強度、または偏相関強度と信号強度の積で決定する処理と、リンクの向きを、前記データ項目間の時間先行性情報から決定する処理と、を行うこと、を特徴とする装置異常監視システム。
【請求項1】
コンピュータの情報処理を用いて、類似の複数(K+1)の装置を処理対象として、前記装置の状態をセンサで計測して得られる当該装置各々の複数のデータ項目に基づいて、前記複数(K+1)のうち少なくとも1つの装置の状態の異常を監視及び判定する処理を行う装置異常監視方法であって、
前記複数(K+1)の装置のうち、1つの第1の装置が、監視及び判定の対象となり、他の複数(K)の第2の装置が、前記第1の装置の監視及び判定のための第1のモデルを生成するためのデータを取得する対象となり、
前記複数(K)の第2の装置各々における正常時の複数のデータ項目に基づき作成される、前記監視及び判定のための個別装置専用の複数(K)の予測モデルに基づき、前記第1の装置専用の第1のモデルを生成する処理を行う第1のステップと、
所定時間単位で、前記第1の装置からの複数のデータ項目を入力し、前記第1のモデルを用いて、前記第1の装置の状態の異常を監視及び判定し、異常を検知した場合には検知情報を出力する、監視実行処理を行う第2のステップと、を有し、
前記第1のステップでは、
前記複数(K)の第2の装置各々の複数のデータ項目を、回帰分析における、目的変数と、それ以外の説明変数とに分類するステップと、
前記複数(K)の第2の装置各々の個別の予測モデルとしての複数(K)の回帰モデルを作成するステップと、
前記複数(K)の回帰モデルの係数及び切片を、当該第2の装置各々の特徴項目値または設置環境計測値から予測する、類似装置共通のメタ予測モデルを作成するステップと、
前記メタ予測モデルに、前記第1の装置の特徴項目値または設置環境計測値を入力して、前記第1のモデルとしての回帰モデルの係数及び切片を生成することで前記第1のモデルを生成するステップと、を有し、
前記第2のステップでは、
前記第1のモデルに、当該第1の装置の複数のデータ項目における説明変数を入力して、目的変数の予測値を計算するステップと、
前記目的変数の実測値と、当該予測値との間における乖離度を計算するステップと、
前記乖離度としきい値とを比較することで前記第1の装置の異常を検知するステップと、を有すること、を特徴とする装置異常監視方法。
【請求項2】
請求項1記載の装置異常監視方法において、
前記第1のステップでは、
前記説明変数を、相互相関強度の大きい共線性説明変数と、それ以外の独立性説明変数とに分類するステップを有し、
前記複数(K)の回帰モデルを作成するステップでは、前記共線性説明変数毎に、当該1つの共線性説明変数とその他の独立性説明変数から前記目的変数を予測する回帰モデルの集団を作成し、
前記メタ予測モデルを作成するステップでは、前記回帰モデルの集団に対して、前記共線性説明変数毎の回帰モデルの係数及び切片を予測するメタ予測モデルを作成し、
前記第1のモデルを生成するステップでは、当該装置の前記説明変数毎の複数の個別の予測モデルの回帰モデルの係数及び切片を生成し、
前記第2のステップでは、
前記共線性説明変数毎に得られる1つ以上の乖離度を組み合わせて成る集団乖離度を計算するステップを有し、
前記目的変数の予測値を計算するステップでは、前記第1のモデルに、前記共線性説明変数とその他の独立性説明変数を入力して、前記目的変数の予測値の集団を計算し、
前記乖離度を計算するステップでは、予測値の集団に対して乖離度の集団を計算し、
前記装置の異常を検知するステップでは、前記乖離度の集団に含まれる1つ以上の乖離度を組み合わせて成る集団乖離度としきい値とを比較することで前記第1の装置の異常を検知すること、を特徴とする装置異常監視方法。
【請求項3】
コンピュータの情報処理を用いて、類似の複数(K+1)の装置を処理対象として、前記装置の状態をセンサで計測して得られる当該装置各々の複数のデータ項目に基づいて、前記複数のうち少なくとも1つの装置の異常原因を診断する処理を行う装置異常監視方法であって、
前記複数(K+1)の装置のうち、1つの第1の装置が、原因診断の対象となり、他の複数(K)の第2の装置が、前記第1の装置の原因診断のための第2のモデルを生成するためのデータを取得する対象となり、
前記複数(K)の装置の異常原因診断に基づき、前記複数(K)の装置の個別の診断モデルを作成して蓄積し、当該複数(K)の個別の診断モデルに基づいて、前記第1の装置の原因診断のための第2のモデルの生成を行う第1のステップと、
所定時間単位で、前記第1の装置の複数のデータ項目を入力し、当該第1の装置の状態の異常を監視及び判定し、異常を検知した場合には前記第2のモデルを用いて原因診断処理を実行する第2のステップと、を有し、
前記第1のステップでは、
前記複数(K)の第2の装置の個別の診断モデルを作成し、当該各第2の装置の特徴項目値または設置環境計測値を付して蓄積するステップと、
前記蓄積された複数(K)の個別の診断モデルを、当該各第2の装置の特徴項目値または設置環境計測値に基づいて分類した類似装置共通のメタ診断モデルを作成するステップと、
前記メタ診断モデルに、前記第1の装置の特徴項目値または設置環境計測値を入力して、当該第1の装置専用の第2のモデルを生成するステップと、を有し、
前記第2のステップでは、
前記異常を検知した場合に、前記第2のモデルに対し、前記第1の装置からのデータ項目を入力して、当該第2のモデルを構成する各々のモデルとのマッチングを行うステップと、
前記マッチングしたモデルに基づき原因の情報を出力するステップと、を有すること、を特徴とする装置異常監視方法。
【請求項4】
請求項3記載の装置異常監視方法において、
前記第2のモデルは、前記複数のデータ項目間の関係を有向グラフで表現したグラフィカルモデルとし、
前記第1のステップでは、前記グラフィカルモデルのリンクの有無あるいは強度を、相関強度、偏相関強度、または偏相関強度と信号強度の積で決定する処理と、リンクの向きを、前記データ項目間の時間先行性情報から決定する処理と、を行うこと、を特徴とする装置異常監視方法。
【請求項5】
コンピュータの情報処理を用いて、類似の複数(K+1)の装置を処理対象として、前記装置の状態をセンサで計測して得られる当該装置各々の複数のデータ項目に基づいて、前記複数(K+1)のうち少なくとも1つの装置の状態の異常を監視及び判定する処理を行う装置異常監視システムであって、
前記複数(K+1)の装置のうち、1つの第1の装置が、監視及び判定の対象となり、他の複数(K)の第2の装置が、前記第1の装置の監視及び判定のための第1のモデルを生成するためのデータを取得する対象となり、
前記複数(K)の第2の装置各々における正常時の複数のデータ項目に基づき作成される、前記監視及び判定のための個別装置専用の複数(K)の予測モデルに基づき、前記第1の装置専用の第1のモデルを生成する処理を行う第1の手段と、
所定時間単位で、前記第1の装置からの複数のデータ項目を入力し、前記第1のモデルを用いて、前記第1の装置の状態の異常を監視及び判定し、異常を検知した場合には検知情報を出力する、監視実行処理を行う第2の手段と、を有し、
前記第1の手段では、
前記複数(K)の第2の装置各々の複数のデータ項目を、回帰分析における、目的変数と、それ以外の説明変数とに分類する処理と、
前記複数(K)の第2の装置各々の個別の予測モデルとしての複数(K)の回帰モデルを作成する処理と、
前記複数(K)の回帰モデルの係数及び切片を、当該第2の装置各々の特徴項目値または設置環境計測値から予測する、類似装置共通のメタ予測モデルを作成する処理と、
前記メタ予測モデルに、前記第1の装置の特徴項目値または設置環境計測値を入力して、前記第1のモデルとしての回帰モデルの係数及び切片を生成することで前記第1のモデルを生成する処理と、を行い、
前記第2の手段では、
前記第1のモデルに、当該第1の装置の複数のデータ項目における説明変数を入力して、目的変数の予測値を計算する処理と、
前記目的変数の実測値と、当該予測値との間における乖離度を計算する処理と、
前記乖離度としきい値とを比較することで前記第1の装置の異常を検知する処理と、を行うこと、を特徴とする装置異常監視システム。
【請求項6】
請求項5記載の装置異常監視システムにおいて、
前記第1の手段では、
前記説明変数を、相互相関強度の大きい共線性説明変数と、それ以外の独立性説明変数とに分類する処理を行い、
前記複数(K)の回帰モデルを作成する処理では、前記共線性説明変数毎に、当該1つの共線性説明変数とその他の独立性説明変数から前記目的変数を予測する回帰モデルの集団を作成し、
前記メタ予測モデルを作成する処理では、前記回帰モデルの集団に対して、前記共線性説明変数毎の回帰モデルの係数及び切片を予測するメタ予測モデルを作成し、
前記第1のモデルを生成する処理では、当該装置の前記説明変数毎の複数の個別の予測モデルの回帰モデルの係数及び切片を生成し、
前記第2の手段では、
前記共線性説明変数毎に得られる1つ以上の乖離度を組み合わせて成る集団乖離度を計算する処理を有し、
前記目的変数の予測値を計算する処理では、前記第1のモデルに、前記共線性説明変数とその他の独立性説明変数を入力して、前記目的変数の予測値の集団を計算し、
前記乖離度を計算する処理では、予測値の集団に対して乖離度の集団を計算し、
前記装置の異常を検知する処理では、前記乖離度の集団に含まれる1つ以上の乖離度を組み合わせて成る集団乖離度としきい値とを比較することで前記第1の装置の異常を検知すること、を特徴とする装置異常監視システム。
【請求項7】
コンピュータの情報処理を用いて、類似の複数(K+1)の装置を処理対象として、前記装置の状態をセンサで計測して得られる当該装置各々の複数のデータ項目に基づいて、前記複数のうち少なくとも1つの装置の異常原因を診断する処理を行う装置異常監視システムであって、
前記複数(K+1)の装置のうち、1つの第1の装置が、原因診断の対象となり、他の複数(K)の第2の装置が、前記第1の装置の原因診断のための第2のモデルを生成するためのデータを取得する対象となり、
前記複数(K)の装置の異常原因診断に基づき、前記複数(K)の装置の個別の診断モデルを作成して蓄積し、当該複数(K)の個別の診断モデルに基づいて、前記第1の装置の原因診断のための第2のモデルの生成を行う第1の手段と、
所定時間単位で、前記第1の装置の複数のデータ項目を入力し、当該第1の装置の状態の異常を監視及び判定し、異常を検知した場合には前記第2のモデルを用いて原因診断処理を実行する第2の手段と、を有し、
前記第1の手段では、
前記複数(K)の第2の装置の個別の診断モデルを作成し、当該各第2の装置の特徴項目値または設置環境計測値を付して蓄積する処理と、
前記蓄積された複数(K)の個別の診断モデルを、当該各第2の装置の特徴項目値または設置環境計測値に基づいて分類した類似装置共通のメタ診断モデルを作成する処理と、
前記メタ診断モデルに、前記第1の装置の特徴項目値または設置環境計測値を入力して、当該第1の装置専用の第2のモデルを生成する処理と、を行い、
前記第2の手段では、
前記異常を検知した場合に、前記第2のモデルに対し、前記第1の装置からのデータ項目を入力して、当該第2のモデルを構成する各々のモデルとのマッチングを行う処理と、
前記マッチングしたモデルに基づき原因の情報を出力する処理と、を行うこと、を特徴とする装置異常監視システム。
【請求項8】
請求項7記載の装置異常監視システムにおいて、
前記第2のモデルは、前記複数のデータ項目間の関係を有向グラフで表現したグラフィカルモデルとし、
前記第1の手段では、前記グラフィカルモデルのリンクの有無あるいは強度を、相関強度、偏相関強度、または偏相関強度と信号強度の積で決定する処理と、リンクの向きを、前記データ項目間の時間先行性情報から決定する処理と、を行うこと、を特徴とする装置異常監視システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
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【図20】
【図21】
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【公開番号】特開2010−287011(P2010−287011A)
【公開日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−139873(P2009−139873)
【出願日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】
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