説明

装飾シートサンドイッチ三層接着構成造形品の製造法

【課題】多層板製作時に投入した熱エネルギの残存分を利用してランプシェード等の成形処理時に消費されるエネルギ量の低減が図られるようにする。
【解決手段】加熱可能な平板状受け型9Aの上に所定の展開形状の輪郭を与えたプラスチックプレート4を載せ、その上面に接着剤層を挟んで装飾シート3を載せ、その装飾シートの上に接着剤層を挟んでプラスチックフィルム5を載せて三層積層体6とし、三層積層体6を加熱押圧して三層接着板7を成形する。そして、成形直後の軟化している三層接着板7の中心に予め設けておいた孔12を造形用受け型10Aの頂部中心に設けた突起10mに嵌め、接着剤の溶融熱を保有した状態の三層接着板7を造形用受け型10Aに位置決めして、その三層接着板に造形用押し型10Bを被せて加圧し、その三層接着板7を残存保有熱で変形させることによって造形品を製作する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は装飾シートサンドイッチ三層接着構成造形品の製造法に係り、詳しくは、和紙などの装飾シートをプラスチックプレートとプラスチックフィルムでサンドイッチした三層接着板を変形することにより、ランプシェードなどの造形品を製作する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
プラスチック基板に和紙などの装飾シートを載せ、そのシートの表面凹凸に馴染ませたプラスチックフィルムで被覆する三層接着板を用いて、ランプシェードなどを造形することが提案されている。プラスチック基板やフィルムは透明もしくは半透明性のものが採用され、フィルム側の面は中間層を形成する装飾シートの風合いや質感を保ったまま全体的に保形性のある造形品を提供することができる。通常はフィルム側が人目につく面とされるが、ランプシェードとした場合には装飾シートによって程よく減光・減輝され、花瓶や水盤とした場合には、和室の雰囲気に合わせたり洋間の空間にマッチさせるなど柔軟性の富んだデザインの選択が可能となる。
【0003】
ところで、プラスチックシートをシェード用基体となるように成形し、その基体に水性スラリー化させた繊維質を付着させてランプシェードにすることが、特開平10−321022号公報に記載されている。プラスチックシートの成形はランプシェードとしての形を維持させるためであるが、これに繊維質を付着させることにより和紙の風合いに似せることができるといっても、繊維質の吹きつけなどによる付着操作ではデザインが限定的なものとなる。趣向の異なる風合いを得ようとすれば、色・模様・漉き方の違った和紙を採用したいところであるが、平面状の和紙などをシェード成形基体に皺をつけることなく貼着するのは簡単なことでない。
【0004】
特開平9−22611号公報には、樹皮とアクリル板とを加熱圧着し、常温まで落とした板をシェードの形状にあうよう何枚か板取りし、その板取り片を接着剤で繋いでシェード展開体を作り、これを曲げるなどして三次元曲面に成形することが開示されている。この例は樹皮の趣を得んとするもので、アクリル板は保形基体としての機能が主たるものとなる。
【0005】
公報の発行時期は少し遡るが、特開平7−262813号公報には、繊維とレーヨンを混合した伸縮性のある透光層を透明アクリル樹脂板に密着させて透光性部材を作り、これを加熱して、三次元曲面に成形することが説明されている。繊維はレーヨンに混成された状態にあるから耐水性があり、繊維の混合による透かし模様で和紙の雰囲気を醸成させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平10−321022号公報
【特許文献2】特開平9−22611号公報
【特許文献3】特開平7−262813号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記した特許文献1の繊維質付着シェードや特許文献2の樹皮のアクリル板圧着シェードでは繊維質や樹皮が露出するから、埃の付着は避けられずまた水洗いするなどの洗浄も不可能に近い。特許文献2では、板取り作業をするときには冷ましておく必要があり、樹皮が加熱圧着された板材をシェードに成形するとき再加熱する必要がある。シェード成形前に供給したエネルギを消失させる結果、エネルギの二重消費は免れない。特許文献3では透明アクリル樹脂板に一旦密着させて透光性部材を作るが、密着品であるがゆえにシェード成形時に界面における伸縮度の違いがひきつれや皺を発生させる。シェードが深い場合は尚更である。したがって、三次元形状に成形するといっても曲がりが緩やかであったり浅い変形のものに限られる。
【0008】
ところで、冒頭に述べたプラスチック基板とプラスチックフィルムにより和紙などの装飾シートを挟み込んでランプシェードなどを成形する場合、各材を造形受け型に積層した状態で造形押し型を被せて加熱・加圧すると、型押し開始時を始め、各材の挙動が局所的に何箇所でも不揃いとなる。装飾シートによる所定品質の模様を呈することを目したデザインの再現性は低くなり、量産時の歩留りが低下して、コスト高な商品となることは否めない。
【0009】
本発明は上記の問題に鑑みなされたもので、その目的は、ランプシェード等の成形処理時には、その成形以前に投入した熱エネルギの残存分を利用して製作工程全般で消費されるエネルギ量の低減が図られること、多層板の製造と造形品の成形とを一連の処理で行うことにより能率の向上を実現すること、成形には例えば円錐を深くしたり円錐面に波を打たせるといったことが和紙等の粗密の拡大や乱れを伴うことなく可能になること、和紙などの持つ風合いを損なわずかつ水洗いができることなどの装飾シートサンドイッチ三層接着構成造形品の製造法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、和紙などの装飾シートをプラスチックプレートとプラスチックフィルムでサンドイッチした三層接着板を変形して造形品を製作する方法に適用される。その特徴とするところは、図1を参照して、加熱可能な平板状受け型9Aの上に所定の展開形状もしくはそれに近似する輪郭を与えたプラスチックプレート4を載せ、その上面に接着剤層を挟んで装飾シート3を載せ、その装飾シートの上に接着剤層を挟んでプラスチックフィルム5を載せて三層積層体6とし、そのプラスチックフィルム5の上に加熱可能で装飾シートの凹凸に馴染む弾力部9aを持った平板状押し型9Bを配し、三層積層体6を加熱押圧して三層接着板7を成形する。そして、成形直後の軟化している三層接着板7の中心に予め設けておいた孔12を造形用受け型10Aの頂部中心に設けた突起10mに嵌めて、接着剤の溶融熱を保有した状態の三層接着板7を造形用受け型10Aに位置決めし、その三層接着板に造形用押し型10Bを合わせて加圧し、その三層接着板7を残存保有熱で変形させることによって造形品を製作するようにしたことである。
【0011】
例えば図3に示すように、成形直後の軟化している三層接着板7の縁部7aを造形用受け型10Aの周囲に設けた配置規制部13に沿わせて、接着剤の溶融熱を保有した状態の三層接着板7を造形用受け型10Aに位置決めし、その三層接着板に造形用押し型10Bを合わせて加圧し、その三層接着板を残存保有熱で変形させることによって造形品を成形するようにしてもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、プラスチックプレート、装飾シート、プラスチックフィルムで形成した三層積層体を、装飾シートの凹凸に馴染む弾力部を持った平板状押し型により加熱押圧して三層接着板を成形するようにしているので、装飾シートとプラスチックフィルムの境界の空気が排除され、装飾シートの質感や風合いをそのまま残しておくことができる。成形直後のいまだ軟化状態にある三層接着板の中心に予め設けておいた孔を造形用受け型の頂部中心に設けた突起に嵌めて三層接着板を造形用受け型に位置決めし、残存保有熱を持つ三層接着板に造形用押し型を合わせて加圧成形するようにしたので、三層接着板の製造と造形品形成とを一連の工程で処理することが可能となる。残存保有熱が利用できる結果シェード成形時の変形を許容し、製作中に消費される投入エネルギの大幅な節減が図られる。もちろん、和紙などの持つ風合いを損なわずかつ水洗いも可能である。
【0013】
三層接着板の位置決めが、成形直後の軟化している三層接着板の縁部を造形用受け型の周囲に設けた配置規制部に合わせるようにして行われるなら、造形品を孔なし品とすることができる。成形後に必要に応じて孔をあけることもできるが、孔をあけない場合には花瓶や水盤といったように水を貯える器として使用することもできるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に係る装飾シートサンドイッチ三層接着構成造形品の製造法の工程を示し、(a)は三層接着板の成形工程図、(b)は三層接着板からのランプシェード造形工程図。
【図2】(a)は造形品を襞つき円錐台形ランプシェードとした一例の斜視図、(b)は円筒状造形品を製作する場合の三層接着板の斜視図、(c)は円筒形にした状態における継ぎ目隠し要領図。
【図3】配置規制部を受け型の型基台に設けた例で、(a)はリング状の枠体とした場合の斜視図、(b)は二分割型リングを採用した場合の斜視図。
【図4】円錐台筒状造形品の成形を示し、(a)は成形型の斜視図、(b)は巻きつけ直前の三層接着板の斜視図、(c)は三層接着板の展開図。
【図5】円筒状造形品の成形を示し、(a)は成形型の斜視図、(b)は三層接着板の斜視図、(c)は巻きつけ直前の三層接着板の斜視図。
【図6】円錐状造形品の成形を示し、(a)は成形型の斜視図、(b)は受け型の分解斜視図。
【図7】受け型を雌型とした成形型の斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本発明に係る装飾シートサンドイッチ三層接着構成造形品の製造法を、その実施の形態を表した図面に基づいて詳細に説明する。図1は円錐台形の円錐面1に襞2を施した笠のかたちのランプシェードを製造する工程を示している。これは、和紙3Aをプラスチックプレート4とプラスチックフィルム5とでサンドイッチした三層積層体6から三層接着板7を成形させ、これを変形して、図2の(a)に示したような例えばペンダントタイプのランプシェード8に造形しようとする例である。
【0016】
これによれば、後述するが、各層の界面でのずれが許容されるので、密着するプラスチック層の伸縮に影響されることなく和紙固有の不等方な漉き目の拡縮が可能となり、三層接着板7からでも深い形や波打ちなどの変化の激しい形の三次元品の成形が可能となる。ちなみに、プラスチックプレートは例えば0.8ミリメートル厚、プラスチックフィルムは0.02ミリメートル厚であり、前者は保形材として、後者は和紙などの装飾シートの保護用被覆として機能する。
【0017】
準備されるものは、材料として、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂等の透明もしくは半透明の熱可塑性プラスチックプレート4と、和紙・洋紙・コットンなどの織布・レース、それらの図柄つきや色つきといった装飾シート3と、ポリエステルなどのプラスチックフィルム5と、これらを接着する例えばポリオレフィン系接着剤とである。装置としては、ヒータが内蔵されて加熱可能となっている平板状受け型9Aと平板状押し型9Bからなる接着板成形型9、および後述する造形用成形型10である。
【0018】
接着剤は加熱されると溶融し、一層目のプラスチックプレート4と二層目の装飾シート3を接着し、さらに二層目と三層目では、装飾シート3とプラスチックフィルム5とを接着する。接着板成形型9はプラスチックプレート4と装飾シート3とプラスチックフィルム5を挟んで、例えば100℃の熱を加えつつ加圧する。なお、プラスチックフィルム5側の面を押圧する平板状押し型9Bには、装飾シート3の凹凸に馴染む弾力部9aが備えられる。これは、加圧中に装飾シート3の繊維もしくは漉き目に溜まる空気を追い出しやすくするためで、例えば硬質のスポンジとしておけばよい。
【0019】
上記の接着板成形型9は三層積層体6を三層接着板7に成形するものであるが、ヒータを持たない造形用の成形型10も準備される。これは造形用受け型10Aとこれに被せる造形用押し型10Bとからなる。造形用受け型10Aは、成形直後の軟化していまだ十分な接着剤の溶融熱を保有した状態の三層接着板7を位置決めしてホールドする。造形用押し型10Bは三層接着板7が造形用受け型10Aに密着するまで加圧する。受け型と押し型に挟まれた三層接着板7は残存保有熱で変形できる状態にあること、上記した接着剤の溶融熱を保有することから、三つの層が相互に幾らかのずれを生じさせながら、装飾シート3はプラスチックプレート4とプラスチックフィルム5に挟まれた状態で変形する。
【0020】
量産するにあたっては、平板用受け型9Aと平板用押し型9B、および造形用受け型10Aと造形用押し型10Bを金属製とすればよいが、シェードの形状や寸法が多岐にわたる場合には、安価に製作することができる板金加工品の成形型としてもよい。少なくとも平板用受け型9Aと平板用押し型9Bは加熱状態におかれるから熱伝動率の高い金属品とならざるを得ないが、造形用受け型10Aと造形用押し型10Bは、木型に手積みした樹脂製の成形型もしくは木製の成形型とすることもできる。接着板成形型9を板金加工品とする場合には、例えば金属繊維の綿状体などを保熱材として充填し、ヒータを内包させておけばよい。
【0021】
三層接着板7の製作とランプシェードとしての造形品8の成形の一連の工程を、以下に述べる。プラスチックプレート4を所定の展開形状もしくはそれに近似する輪郭を与えた形に板取りする。言うまでもなく、成形された時点で所望するランプシェードのかたちをなすに相応しくまた成形後のトリミング作業を可及的に軽減できる展開平面の輪郭、例えば円形としておく。その円形の中心に例えば13ミリメートルの孔を予めあけておく。同様に、装飾シート3とプラスチックフィルム5も成形後の形状と寸法を念頭においた輪郭の平面形とされる。なお、試し打ちしておけば、その輪郭は予めかなり高い精度で把握しておくことができる。
【0022】
図1の(a)に示すように、加熱可能な平板用受け型9Aの上に所定のプラスチックプレート4を載せ、その上面に接着剤層を挟んで装飾シート3を載せる。その装飾シート3の上に接着剤層を挟んでプラスチックフィルム5を載せて三層積層体6とし、その上に平板用押し型9Bを配し、三層積層体6を例えば100℃前後で加熱押圧する。溶融した接着剤によって三層接着板7が成形される。プラスチックフィルム5を装飾シート3の凹凸に馴染ませる硬質スポンジの弾力面板を形成する弾力部9aが隙間に介在する空気の大部分を押し出す。この三層接着板7は一応密着状態となった三層積層体6であるが、成形直後の軟化した状態のまま造形用受け型10Aに載せられる。ちなみに、プラスチックプレートやプラスチックフィルムはその一方の面に接着剤が予め塗着されているものを使用してもよいし、三層積層体を形成する時点で散布するようにして塗布するなど、装飾シートの性状を加味して選択すればよい。
【0023】
三層接着板7の中心に予め設けておいた孔をランプシェード成形用受け型10Aの頂部中心に設けた突起10mに嵌め、接着剤の溶融熱を保有した状態の三層接着板7を造形用受け型10Aに位置決めする。その三層接着板7に造形用押し型10Bを被せて加圧し、その三層接着板7を残存保有熱で変形させてランプシェードを製作する。軟化状態にある三層接着板7からの造形のための変形は容易であり、しかも、境界で接着剤は流動もしくは半流動化しているから界面での相互ずれが許容され、装飾シート3が破断したり粗密が著しく乱れるということはない。突起10mは固定ガイドとして成形中の三層接着板7の動きを拘束するだけでなく、図2の(a)に示すごとく、電気コード11を通す孔12として利用することができる。なお、ランプシェードの周縁には必要に応じてモール8aが取りつけられる。この間の変形は三層接着板7の製作時に供給された熱エネルギの保有残熱に頼るだけで済むが、これは言うまでもなく三層接着板7を意図的な冷却工程に置かないことを意味する。
【0024】
以上の説明から分かるように、三層接着板の成形とその直後のいまだ軟化状態にある三層接着板によるシェード造形を連続工程とし、三次元を含めた所望形状に成形することができる。軟化状態にあってかつ接着剤の溶融熱を保有する豊富な残熱を利用して造形品を成形するから、その成形処理時の加熱エネルギの消費時期が集中的となり、工程全体では大いに投入エネルギの節約が図られる。プラスチックプレート、装飾シート、プラスチックフィルムで形成した三層積層体を、装飾シートの凹凸に馴染む弾力部を持った平板状押し型により加熱押圧して三層接着板を成形するようにしているから、空気溜まりをなくして、和紙の風合いや質感をそのままシェード表面に残すことができる。しかも、水洗い可能ともなる。なお、造形品としてのランプシェードは、上記の例のほかに半球状やベルマウス状、円錐台形状といったものも成形可能なことは言うまでもない。
【0025】
図3は三層接着板7に孔を設けず、造形用受け型10Aへの配置に際しては、その縁部7aを受け型の周囲に設けた配置規制部13に沿わせることにより、接着剤の溶融熱を保有した状態の三層接着板7を位置決めするようにした例である。図3の(a)では配置規制部としてリング状の枠体13aが採用されている。造形用押し型10Bを被せ終わる直前にリング状の枠体13aを切断するなどして除去すれば、造形用押し型10Bを完全に合わせることができる。この場合、三層接着板7の縁部7aがリング状の枠体13aの内面に触れるなどしてずれが防止される。なお、(b)では配置規制部が二つ割れのリング13b,13bとされている。造形用押し型10Bを被せ終わる直前にクリップ14を外して、リングを左右に退避させることにより受け型10Aから除くことができる。図1のような孔12は設けられないから、必要ならば造形後にあければよい。孔をあけなければ容器としても機能し、花瓶や水盤として使用することも可能となる。
【0026】
図4は配置規制部13として造形用受け型10Aに周溝13cを形成しておき、この凹みでもって図3のリング状の枠体と同様の作用を発揮させようとするものである。この例では造形品が円錐台形であるが、頂部が閉止されていない筒体の成形品としている。造形用押し型10Bは左右の二つからなり、(b)に示す三層接着板7を造形用受け型10Aに位置決めして左右から挟みつける。ちなみに、この場合の三層接着板7の展開図は(c)のような扇形となる。図5は円筒状の造形品を得る例で、その配置規制部13は受け型10Aの周辺を形成する型基台10aの平坦面が充てられる。三層接着板7は(b)に示すように帯状とされ、その一方の縁部7aを受け型に沿わせるだけでよい。左右から造形用押し型10Bがせり込めば、円筒状の造形品となる。
【0027】
図6は配置規制部13を造形用受け型10Aの型基台10aの表面としつつも、円錐形の頂部側の縁部を当接させるものである。造形用押し型10Bは左右開きであり、そのままでは造形品を受け型10Aから離型させることができない。そこで、(b)のようにねじ15による締結組み立て品として、型基台10aを受け型10Aから離して造形品を抜き取る。いずれの例からも分かるように、三層接着板の位置決めを、成形直後の軟化している三層接着板の縁部を造形用受け型の周囲に設けた配置規制部に合わせるようにするから、頂部閉止面を有しない筒状体を造形することもできるようになっている。
【0028】
ところで、例えば図5の(b)に示した帯状の三層接着板7とする場合、図2の(b)のごとく、和紙3Aとプラスチックフィルム5とは同一位置とするが、プラスチックプレート4は、その端縁の位置をずらせておく。そして、(c)のごとく円筒形にする時点でプラスチックプレートの継ぎ目4aと和紙3Aの継ぎ目3aをずらすようにしておくと、つなぎ目が相互に目立たないようになる。両端縁対向箇所は造形中に接合することができるが、離型後に透明接着剤等を使用して接合してもよい。
【0029】
図7は、図3の造形用成形型を天地逆にしたものである。三層接着板7を雌型である受け型10Aの合わせ面に形成した円盤状凹み16に載せるときに凹みの周囲壁16aに合わせれば、押し型10Bの下降時の三層接着板7の位置ずれを抑えておくことができる。造形品には孔を爾後的に形成したり設けなかったりすれば、その造形品の用途は上で述べたごとく容器としても使用できるものとなる。
【符号の説明】
【0030】
3…装飾シート、3A…和紙、4…プラスチックプレート、5…プラスチックフィルム、6…三層積層体、7…三層接着板、7a…縁部、8…ランプシェード(造形品)、9A…平板状受け型、9B…平板状押し型、9a…弾力部、10A…造形用受け型、10B…造形用押し型、13…配置規制部、13a…リング状の枠体、13b…二つ割れのリング、13c…周溝、16…円盤状凹み、16a…周囲壁、

【特許請求の範囲】
【請求項1】
装飾シートをプラスチックプレートとプラスチックフィルムでサンドイッチした三層接着板を変形して造形品を製作する方法において、
加熱可能な平板状受け型の上に所定の展開形状もしくはそれに近似する輪郭を与えたプラスチックプレートを載せ、その上面に接着剤層を挟んで装飾シートを載せ、その装飾シートの上に接着剤層を挟んでプラスチックフィルムを載せて三層積層体とし、そのプラスチックフィルムの上に加熱可能で装飾シートの凹凸に馴染む弾力部を持った平板状押し型を配し、三層積層体を加熱押圧して三層接着板を成形し、
成形直後の軟化している三層接着板の中心に予め設けておいた孔を造形用受け型の頂部中心に設けた突起に嵌めて、接着剤の溶融熱を保有した状態の三層接着板を造形用受け型に位置決めし、その三層接着板に造形用押し型を合わせて加圧し、その三層接着板を残存保有熱で変形させることによって造形品を製作するようにしたことを特徴とする装飾シートサンドイッチ三層接着構成造形品の製造法。
【請求項2】
装飾シートをプラスチックプレートとプラスチックフィルムでサンドイッチした三層接着板を変形して造形品を製作する方法において、
加熱可能な平板状受け型の上に所定の展開形状もしくはそれに近似する輪郭を与えたプラスチックプレートを載せ、その上面に接着剤層を挟んで装飾シートを載せ、その装飾シートの上に接着剤層を挟んでプラスチックフィルムを載せて三層積層体とし、そのプラスチックフィルムの上に加熱可能で装飾シートの凹凸に馴染む弾力部を持った平板状押し型を配し、三層積層体を加熱押圧して三層接着板を成形し、
成形直後の軟化している三層接着板の縁部を造形用受け型の周囲に設けた配置規制部に沿わせて、接着剤の溶融熱を保有した状態の三層接着板を造形用受け型に位置決めし、その三層接着板に造形用押し型を合わせて加圧し、その三層接着板を残存保有熱で変形させることによって造形品を成形するようにしたことを特徴とする装飾シートサンドイッチ三層接着構成造形品の製造法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−31409(P2011−31409A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−177265(P2009−177265)
【出願日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【出願人】(596136648)株式会社林工芸 (1)
【Fターム(参考)】