説明

装飾シート及び装飾シートの製造方法

【課題】和紙の風合いを保ち、汚れや皺が生じず、外観に優れ、製造コストが低いパネルプレート、その製造方法、パネルプレートを構成する装飾シート、及びその製造方法を提供すること。
【解決手段】和紙層7の片面に、ホットメルト樹脂から成る接着層11を形成し、また、反対側の面にアクリル樹脂を含むコート層9を形成し、装飾シート5を完成した。次に、接着層11を上下同時に溶融させ、芯材層3と接着層11とを当接させ、装飾シート5を、接着層11が芯材層3に面するように広げ接合し、その後冷却することにより、パネルプレート1を完成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、間仕切り材、断熱障子材、照明ルーバー等に用いられるパネルプレート、その製造方法、パネルプレートを構成する装飾シート、及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、間仕切り材、断熱障子材、照明ルーバー等として、樹脂等から成る芯材の表面に和紙を貼り付けたパネルプレートが用いられてきた(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このパネルプレートは、まず、芯材の表面に和紙を接着剤等により貼り付け、次に、和紙の表面に、汚れ防止のために、フッ素樹脂やアクリル樹脂等から成るコート剤を塗布することにより製造される。
【特許文献1】特開2002−21440号公報(段落番号0025〜0032、図2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記のパネルプレートでは、板状の製造が難しく、パネルプレートを製造するのに、先に和紙単体にコート加工を施し芯材に取り付けようとすると、コート剤が和紙に必要以上に染み込んでしまい、和紙の風合いが失われ、樹脂製のパネルプレートに見えてしまうという問題があった。
【0005】
また、コート剤が、特に薄和紙(10〜30g/m2)の場合は、和紙の裏側に達することがあり、このような和紙を、ロールを用いて送ろうとすると、コート剤がロールに付着し、パネルプレートの不良発生の原因となることがあった。
【0006】
更に、パネルプレートを、芯材に和紙を貼り付けてから、和紙にコート剤を塗布する方法で製造すると、和紙に汚れが付着しやすいという問題があった。つまり、この製造方法では、和紙を芯材に貼り付ける段階では、未だ和紙にコート処理がされておらず、汚れがつきやすい状態であるので、この貼り付けの段階で和紙が汚れてしまうことがあった。その結果として、パネルプレートの製造歩留まりが低下し、製造コストが上昇してしまうという問題があった。
【0007】
また、芯材の表面に凹凸がある場合等には、和紙を芯材の表面に貼る際に、和紙に皺が生じやすく、その結果として、パネルプレートの外観が悪化してしまうという問題があった。
【0008】
本発明は以上の点に鑑みなされたものであり、和紙の風合いを保ち、汚れや皺が生じず、外観に優れ、製造コストが低いパネルプレート、その製造方法、パネルプレートを構成する装飾シート、及びその製造方法を提供すること目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)請求項1の発明は、
和紙から成る和紙層と、前記和紙層の一方の側に形成され、ホットメルト樹脂から成る接着層と、前記和紙層に対し、前記一方の側とは反対側に形成され、アクリル樹脂を含むコート層と、を含むことを特徴とする装飾シートを要旨とする。
【0010】
本発明の装飾シートでは、コート層がアクリル樹脂を含み、このアクリル樹脂は、和紙層の裏側に、接着層が形成されているので、和紙層への染み込みが少ない。そのため、本発明の装飾シートでは、コート層が和紙層に深く染み込み、装飾シートの質感が樹脂シートのようになってしまうようなことがなく、和紙の風合いを維持することができる。
【0011】
また、本発明の装飾シートは、コート層を備えているので、コート層の在る面には、汚れが付きにくい。そのため、例えば、本発明の装飾シートを樹脂等から成る芯材層に接着し、パネルプレートを製造する際に、装飾シートのコート層の側が汚れてしまうことがない。
【0012】
更に、本発明の装飾シートは、片面にコート層を備えるとともに、反対側の面に接着層を備えている。そのため、例えば、コート層が硬く、割れやすい材料から成る場合でも、接着層を有することにより、装飾シートが破れたり、切れたりするようなことが起こりにくい。
【0013】
また、本発明の装飾シートは、コート層及び接着層を備えているので、適度な剛性を有し、例えば、和紙単独の装飾シートに比べて、皺が生じにくい。そのため、本発明の装飾シートは、例えば、皺を生じることなく、芯材層に貼り付けることができ、皺の無い、外観面において優れたパネルプレートを製造することができる。
【0014】
また、本発明の装飾シートは、接着層がホットメルト樹脂から成るので、例えば、接着層の側を加熱しながら芯材層に密着させ、容易かつ確実に芯材層に接着することができる。
【0015】
本発明の装飾シートを、例えば、図3の符号5の様に巻物にしておき、その巻物状の装飾シートを、加熱しながら、外側から延ばしつつ、芯材層の上に広げ接着し、パネルプレートを製造することができる。この方法により、装飾シートと芯材層との密着性が全体に亘って高く、また、装飾シートに皺等が生じず、外観において優れたパネルプレートを製造することが出来る。
【0016】
・前記接着層を構成するホットメルト樹脂としては、例えば、ポリエチレン樹脂、及びその他樹脂が挙げられる。
接着層の厚みは、例えば、10〜35μmである。10μm以下では、接着力が十分でないことがある。35μm以上では、製造コストが高くなったり、装飾シートの加工性が低下したりすることがある。
【0017】
・前記コート層は、例えば、アクリル樹脂を主成分とし、フィラー、添加剤(例えば、紫外線吸収剤、光拡散剤、増白剤等)を含む樹脂をいう。このアクリル系樹脂は、例えば、溶剤(例えば、MEKを主成分とする溶剤)に溶かした状態で使用され、その組成は、例えば、以下の通りである。
【0018】
アクリル樹脂:38〜40重量%
フィラー:0.1〜0.2重量%
添加剤:0.3〜0.5重量%
溶剤:60〜62重量%
・前記コート層の面密度は、例えば、3.0〜5.0g/m2である。3.0g/m2以下では、防汚性が十分でないことがある。5.0g/m2以上では、外観面で、和紙らしさが低下してしまうことがある。
【0019】
また、上記コート層には、フッ素樹脂を微量に充填することにより、更に防汚性、撥水性を向上させることができる。
(2)請求項2の発明は、
前記和紙層と前記接着層との間に、樹脂から成る補強層を有することを特徴とする前記請求項1に記載の装飾シートを要旨とする。
【0020】
本発明の装飾シートは、補強層を備えているので、強度及び断熱性において一層優れている。従って、例えば、本発明の装飾シートを、樹脂等から成る芯材層に接着すれば、強度及び断熱性において優れたパネルプレートを製造することができる。
【0021】
・前記補強層を構成する樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(ポリエステル)、ポリプロピレン、ポリカーボネイト等が挙げられる。
この補強層の厚みは、例えば、20〜150μmである。20μm以下では、装飾シートの強度及び加工性が不十分である場合があり、150μm以上では、装飾シートの製造コストが高くなったり、装飾シートに巻き癖が生じて加工性が低下してしまうことがある。
【0022】
また、この補強層と和紙層とは、例えば、接着剤により接着する。
尚、本発明の装飾シートは、前記実施例1の装飾シートと同様に、例えば、高速度自動機械を用いて、巻物仕上げとすることができる。
(3)請求項3の発明は、
和紙から成る和紙層の一方の側に、ホットメルト樹脂から成る接着層を形成する接着層形成工程と、前記和紙層に対し、前記一方の側とは反対側に、アクリル樹脂を含むコート層を形成するコート層形成工程と、を含むことを特徴とする装飾シートの製造方法を要旨とする。
【0023】
本発明の装飾シートの製造方法では、例えば、最初に、和紙層の片側に接着層を形成し、その後に、和紙層の反対側にアクリル樹脂を含むコート層を形成するので、和紙層にコート層を形成する時点では、既に、接着層が形成されている。
【0024】
そのため、本発明では、和紙層の片側に塗布されたコート層は、接着層により、和紙層の反対側にしみ出すことがない。つまり、本発明で製造された装飾シートは、コート層とは反対側の面に、アクリル樹脂等が付着することがない。
【0025】
このことにより、例えば、装飾シートの製造過程において、装飾シートをロールを用いて送る場合に、装飾シートのコート層とは反対側の面がロールに接したとしても、ロールにアクリル樹脂等が付着してしまうことがない。
【0026】
その結果として、本発明で製造される装飾シートは、ロールにアクリル樹脂等が付着することに起因するトラブルを防止することができる。
また、本発明で製造される装飾シートは、接着層を備えることにより、コート剤が和紙層に染みることがなく、装飾シートが破れたり、切れたりすることがない。
【0027】
更に、本発明により製造された装飾シートは、前記請求項1に記載の装飾シートと同様の効果を奏する。
・前記接着層形成工程では、例えば、ホットメルト樹脂のペレットを加熱溶融し、和紙層の裏面に塗布する方法で接着層を形成する。
【0028】
・前記コート層形成工程では、例えば、アクリル樹脂を含むコート剤を塗布することによりコート層を形成する。コート剤の塗布においては、例えば、コート剤の面密度が3.0〜5.0g/m2となるようにする。3.0g/m2以下では、表面コートの効果(例えば汚れの付着防止)が十分でないことがある。5.0g/m2以上では、和紙らしさが多少、失われることがある。
(4)請求項4の発明は、
前記接着層形成工程より前に、前記和紙層の前記一方の側に、樹脂から成る補強層を形成する補強層形成工程を有することを特徴とする前記請求項3に記載の装飾シートの製造方法を要旨とする。
【0029】
本発明の製造方法により製造された装飾シートは、補強層を備えているので、強度及び断熱性において一層優れている。従って、例えば、この装飾シートを、樹脂等から成る芯材層に接着すれば、強度及び断熱性において優れたパネルプレートを製造することができる。
(5)請求項5の発明は、
芯材層と、前記芯材層の片側又は両側に、前記接着層が前記芯材層に面するように設けられた前記請求項1又は2に記載の装飾シートと、を含むことを特徴とするパネルプレートを要旨とする。
【0030】
本発明のパネルプレートは、前記請求項1又は2に記載の装飾シートを備えることにより、和紙の風合いを有し、美観において優れている。
また、本発明のパネルプレートは、その片面又は両面に装飾シートを備えており、その装飾シートの表面にはコート層が設けられているので、汚れが付きにくい。
【0031】
・前記芯材層の厚みは、例えば、0.5〜20mmとすることができる。0.5mm以下の場合は、パネルプレートの断熱性が十分でないことがある。また、20mm以上では、パネルプレートの製造コストが高くなってしまったり、パネルプレートの施工が難しくなってしまうことがある。
【0032】
・前記パネルプレートの縦、横の寸法は、例えば、それぞれ、180〜250cm、90〜125cmとすることができる。
(6)請求項6の発明は、
前記芯材層が、樹脂から成る板状部材であることを特徴とする前記請求項5に記載のパネルプレートを要旨とする。
【0033】
本発明のパネルプレートは、芯材層が樹脂から成ることにより、軽量で強度が高く、耐久性において優れている。
・前記樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、スチロール樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリカーボネイト樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂(ポリエステル樹脂)、ABS樹脂、ポリエチレン樹脂等の熱可塑性樹脂が挙げられる。
(7)請求項7の発明は、
前記板状部材が、内部に空孔を有することを特徴とする前記請求項6に記載のパネルプレートを要旨とする。
【0034】
本発明のパネルプレートは、芯材層が、内部に空孔を有する板状部材であることにより、一層軽量であるという特長を有する。
また、本発明のパネルプレートは、例えば、芯材層の空孔の中に、熱を伝えにくい空気を有することにより、一層断熱性を高めることができる。
【0035】
本発明の芯材層を構成する樹脂としては、例えば、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリカーボネート樹脂等が挙げられる。
・前記空孔を有する芯材層としては、例えば、独立気泡を有する樹脂ボードや、図2に示す様に、空孔が並列する筒状に設けられているものがある。
【0036】
この空孔を有する芯材層の厚みは、例えば、2〜20mmである。2mm以下では、パネルプレートの断熱性が十分でないことがあり、20mm以上では、パネルプレートの製造コストが高くなったり、パネルプレートの施工が難しくなったりすることがある。
(8)請求項8の発明は、
前記請求項5〜7のいずれかに記載のパネルプレートの製造方法であって、前記装飾シートの前記接着層を加熱し、前記芯材層に当接させ、前記芯材層と前記装飾シートとを接着することを特徴とするパネルプレートの製造方法を要旨とする。
【0037】
本発明のパネルプレートの製造方法では、装飾シートに備えられた接着層を用いるので、装飾シートと芯材層との接着に、別途、接着剤等を用いる必要がない。そのため、本発明の製造方法は、容易にパネルプレートを製造することができる。
【0038】
また、製造されるパネルプレートでは、装飾シートと芯材層との密着性が高い。
本発明において、装飾シートは、例えば、図3の符号5の様に巻物にしておき、その巻物状の装飾シートを、加熱しながら、外側から延ばしつつ、芯材層の上に広げ、接着することができる。このことにより、パネルプレートの全体に亘って、装飾シートと芯材層との密着性が高く、また、装飾シートに皺等が生じず、パネルプレートを綺麗に仕上げることができる。
【0039】
本発明は、例えば、芯材層の成形時に同時に実施することができ、また、芯材層の成形時より後に、2次加工として実施することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0040】
以下に本発明の装飾シート、その製造方法、パネルプレート、及びその製造方法の実施の形態の例(実施例)を説明する。
(実施例1)
a)まず、装飾シート及びその装飾シートを用いたパネルプレートの構成を図1を用いて説明する。尚、図1は、パネルプレートの断面図である。
【0041】
パネルプレート1は、図1に示す様に、芯材層3と、その芯材層3の両側に設けられた装飾シート5とから構成されており、その縦、横の寸法は、縦180cm、横90cmである。
【0042】
上記芯材層3は、アクリル樹脂から成る板状部材であり、その厚みは2mmである。
また、上記装飾シート5は、中心となる和紙層7と、その和紙層7の外側(芯材層3と反対側)に設けられたコート層9と、和紙層7の内側(芯材層3に面する側)に設けられた接着層11とから構成される。
【0043】
この和紙層7は、単位面積当たりの重量が15〜30g/m2である薄和紙から成る層である。
コート層9は、以下の組成から成るコート剤を塗布して形成されたものである。
【0044】
アクリル樹脂 :38〜40重量%
フィラー :0.1〜0.2重量%
添加剤 :0.3〜0.5重量%(添加剤は、例えば、紫外線吸収剤0.3重量%と光拡散剤0.1重量%とから成る)
溶剤(MEK) :60〜62重量%
このコート層9の密度は、固形分での塗布量が3.0〜5.0g/m2である。
【0045】
接着層11は、ポリエチレン樹脂80重量%と、EVA樹脂20重量%とから成る層であり、装飾シート5と芯材層3とを接着する役割を果たしている。
b)次に、装飾シート5及びパネルプレート1の製造方法を図2を用いて説明する。
【0046】
i)まず、装飾シート5の製造方法を説明する。
1)和紙層7の片面に、ポリエチレン樹脂とEVA樹脂とを含む塗材を、層の厚みが15μmとなるように塗布し、接着層11を形成した。具体的な塗布方法としては、樹脂のペレットを加熱溶融して、和紙の表面に塗布する方法を用いた。
【0047】
2)和紙層7の反対側の面(接着層11を形成していない面)に、アクリル樹脂を含むコート剤を、コート剤の面密度が3.4g/m2となるように塗布してコート層9を形成し、装飾シート5を完成した。コート剤を塗布する具体的な塗布方法としては、グラビア印刷方式を用いた。
【0048】
3)尚、装飾シート5は、後述する芯材層3との接着が容易となるように、紙管12を中心に、接着層11が外側となるように巻き、巻物状(ロール)とした。
【0049】
ii)次に、上記のようにして製造した装飾シート5を用いてパネルプレート1を製造する方法を図3を用いて説明する。
1)アクリル樹脂を上記a)で述べた寸法に成形し、芯材層3とした。
【0050】
2)芯材層3の片側に、前記i)で製造した装飾シート5の巻物を、接着層11が芯材層3に面するように広げた。そして、装飾シート5を、接着層11を加熱することにより、接着層11を溶融させ、芯材層3と接着層11とを接合し、その後冷却することにより完成した。
【0051】
また、芯材層3の反対側にも、同様に、装飾シート5を接合し、パネルプレート1を完成した。
c)次に、装飾シート5及びパネルプレート1の奏する効果を説明する。
【0052】
1)本実施例1の装飾シート5は、コート層9がアクリル樹脂を含む。このアクリル樹脂は、和紙層7への染み込みが少ないので、装飾シート5の質感が樹脂シートのようになってしまうことがなく、和紙の風合いを維持することができる。
【0053】
2)本実施例1の装飾シート5は、コート層9を備えているので、汚れが付きにくい。そのため、装飾シート5を芯材層3に接着する工程で、装飾シート5が汚れてしまうことがない。その結果、パネルプレート1の製造歩留まりが向上し、その製造コストを低減することができる。
【0054】
3)本実施例1の装飾シート5は、最初に、接着層11を形成し、その後に、コート剤を塗布してコート層9を形成することにより製造する。そのため、本実施例1では、和紙層7の片側に塗布されたコート剤は、接着層11により、和紙層7の反対側にしみ出すことがない。
【0055】
そのことにより、装飾シート5の製造過程において、装飾シート5をロールを用いて送る場合に、装飾シート5のコート層9とは反対側の面がロールに接したとしても、ロールにアクリル樹脂等が付着してしまうことがない。その結果として、本実施例1の装飾シート5は、ロールにアクリル樹脂等が付着することに起因するトラブルを防止することができる。
【0056】
5)本実施例1の装飾シート5は、コート層9に紫外線吸収剤を含んでいるので、装飾シート5が紫外線に長時間曝された場合でも、和紙層7及び接着層11が変色することがない。
【0057】
また、コート層9に光拡散剤を含んでいるので、装飾シート5やパネルプレート1を、建造物等の光を取り入れる部位(例えば窓)に用いた場合に、直射光線を和らげ、室内を明るくする効果を奏する。
(実施例2)
a)本実施例2の装飾シート5及びパネルプレート1の構成は、基本的には、前記実施例1とほぼ同様である。
【0058】
但し、本実施例2では、パネルプレート1の芯材層3が、内部に空孔を有するものである。つまり、芯材層3は、図4に示す様に、芯材層3の上側(図4における上側)及び下側の表面をそれぞれ覆う一対の表層部13と、それら表層部13の間を連結する支柱部15とから構成されており、芯材層3の内部には、表層部13と支柱部15とにより囲まれる空孔17が形成されている。ここで、支柱部15は、図4の紙面の垂直方向に、芯材層3の端から端まで延びており、それに伴い、空孔17は、図4の紙面に垂直方向に、芯材層3を端から端まで貫通している。
【0059】
また、表層部13は、支柱部15の付近ではやや凹んでおり、支柱部15の間では、やや膨らんでいる。従って、表層部13は、支柱部15の間隔と同様の周期で、凹凸を有する。
【0060】
本発明の装飾シート5及びパネルプレート1は、基本的には、前記実施例1と同様に製造する。
但し、本実施例2では、芯材層3を、押し出し成形の方法で製造する。
【0061】
b)本実施例2の装飾シート5及びパネルプレート1の奏する効果を説明する。
1)本実施例2の装飾シート5及びパネルプレート1は前記実施例1と同様の効果を奏する。
【0062】
2)本実施例2のパネルプレート1は、芯材層3が空孔17を有しているので軽量であるという特長を有する。また、本実施例2のパネルプレート1は、芯材層3に空孔17を有しており、その空孔17に、熱を伝えにくい空気が入り込むので、断熱性が高いという特長を有する。
【0063】
3)本実施例2の装飾シート5は、和紙層7の両側に、コート層9と接着層11を備えているので、適度な剛性を有し、和紙のみから成るシートに比べて、皺になりにくい。そのため、芯材層3の表面に凹凸があるにもかかわらず、芯材層3の表面に装飾シート5を貼り付ける際に、装飾シート5に皺が発生せず、パネルプレート1の外観が良好である。
(実施例3)
本実施例3の装飾シート5及びパネルプレート1の構成は、基本的には、前記実施例1とほぼ同様である。
【0064】
但し、本実施例3では、図5に示す様に、芯材層3の片方にのみ、装飾シート5を貼り付けている。
本実施例3のパネルプレート1は、装飾シート5を両面に貼り付ける必要がないので、製造コストが低く、また、光線透過率が高いという特長を有する。
(実施例4)
本実施例4の装飾シート5及びパネルプレート1の構成は、基本的には、前記実施例1とほぼ同様である。
【0065】
但し、本実施例4の装飾シート5は、図6に示す様に、和紙層7と接着層11との間に、ポリエチレンテレフタレートから成る厚さ150μmの補強層19を備えている。この補強層19は、接着剤によるラミネートの方法で、和紙層7に貼り付け、その後、接着層11を補強層19の上に形成する。
【0066】
本実施例4のパネルプレート1は、装飾シート5が補強層19を備えていることにより、強度及び断熱性が一層高い。
(比較例1)
本比較例1では、図7に示す様に、まず、1)薄和紙21の裏面(後に芯材層3と接着する面)に、ポリプロピレン樹脂から成る接着層を形成しておき、その薄和紙21を、芯材層3の両面に、押出成形時同時貼合せの方法で接着する。ここで、薄和紙21の表面はコート処理が施されていない。
【0067】
次に、2)薄和紙21の表面に、クリヤタイプの合成樹脂防水塗料(アサヒペン製)をシンナーで希釈したコート剤を、片面9.5g/m2の密度で塗布してコート層23を形成し、パネルプレート25を完成した。ここで、芯材層3は、前記実施例2と同様のものであり、表面に凹凸を有する。また、薄和紙21は、前記実施例1にて、装飾シート5の和紙層7に用いたものと同一である。
【0068】
本比較例1のパネルプレート25では、コート剤が、薄和紙21に多少染み込んでしまい、そのことにより、パネルプレート25の表面の質感が、多少染みた感じになった。
また、薄和紙21を芯材層3に貼り付ける際に、薄和紙21の表面はコート層が形成されていないので、汚れが付着し易かった。
【0069】
更に、薄和紙21を芯材層3に貼り付ける際に、芯材層3の表面に凹凸があるために、薄和紙21に皺が発生し易く、外観において劣っていた。
(比較例2)
本比較例2では、図8に示す様に、まず、1)薄和紙21の片面に、クリヤタイプの合成樹脂防水塗料(アサヒペン製)をシンナーで希釈したコート剤を7.7g/m2の密度で塗布してコート層23を形成し、装飾シート27とした。次に、2)芯材層3の表面にメルトフィルムを使用し、接着層として転写してから、加熱加圧する方法で、装飾シート27と芯材層3とを接着し、パネルプレート29を完成した。ここで、芯材層3は、前記実施例1と同一のものである。
【0070】
本比較例2のパネルプレート29では、前記比較例1の場合よりも一層、コート剤が薄和紙21に深く染み込んでしまい、パネルプレート29の表面の質感が、樹脂のプレートのようになってしまい、和紙の風合いが失われてしまった。
【0071】
また、本比較例2では、装飾シート27が、薄和紙21とコート層23とから成るため、柔軟性がなく、容易に切れたり破れたりしてしまう。そのため、本比較例2のパネルプレート29は、その製造段階において、装飾シート27が切れたり破れたりしてしまい、製造歩留まりが低下してしまう。
【0072】
尚、本発明は前記実施例になんら限定されるものではなく、本発明を逸脱しない範囲において種々の態様で実施しうることはいうまでもない。
例えば、前記実施例1で、芯材層3に装飾シート5を接着する工程において、芯材層3の両面に、別々のロールに巻かれた装飾シート5をそれぞれ押し当て、同時に加熱圧着することにより、芯材層3の両側の装飾シート5を、同時に接着することができる。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】実施例のパネルプレートの構成を示す説明図である。
【図2】実施例の装飾シートの製造方法を示す説明図である。
【図3】実施例のパネルプレートの製造方法を示す説明図である。。
【図4】実施例のパネルプレートの構成を示す説明図である。
【図5】実施例のパネルプレートの構成を示す説明図である。
【図6】実施例のパネルプレートの構成を示す説明図である。
【図7】比較例のパネルプレートの製造方法を示す説明図である。
【図8】比較例のパネルプレートの製造方法を示す説明図である。
【符号の説明】
【0074】
1・・・パネルプレート
3・・・芯材層
5・・・装飾シート
7・・・和紙層
9・・・コート層
11・・・接着層
13・・・表層部
15・・・支柱部
17・・・空孔
19・・・補強層
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、間仕切り材、断熱障子材、照明ルーバー等に用いられるパネルプレート、その製造方法、パネルプレートを構成する装飾シート、及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、間仕切り材、断熱障子材、照明ルーバー等として、樹脂等から成る芯材の表面に和紙を貼り付けたパネルプレートが用いられてきた(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このパネルプレートは、まず、芯材の表面に和紙を接着剤等により貼り付け、次に、和紙の表面に、汚れ防止のために、フッ素樹脂やアクリル樹脂等から成るコート剤を塗布することにより製造される。
【特許文献1】特開2002−21440号公報(段落番号0025〜0032、図2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記のパネルプレートでは、板状の製造が難しく、パネルプレートを製造するのに、先に和紙単体にコート加工を施し芯材に取り付けようとすると、コート剤が和紙に必要以上に染み込んでしまい、和紙の風合いが失われ、樹脂製のパネルプレートに見えてしまうという問題があった。
【0005】
また、コート剤が、特に薄和紙(10〜30g/m2)の場合は、和紙の裏側に達する
ことがあり、このような和紙を、ロールを用いて送ろうとすると、コート剤がロールに付着し、パネルプレートの不良発生の原因となることがあった。
【0006】
更に、パネルプレートを、芯材に和紙を貼り付けてから、和紙にコート剤を塗布する方法で製造すると、和紙に汚れが付着しやすいという問題があった。つまり、この製造方法では、和紙を芯材に貼り付ける段階では、未だ和紙にコート処理がされておらず、汚れがつきやすい状態であるので、この貼り付けの段階で和紙が汚れてしまうことがあった。その結果として、パネルプレートの製造歩留まりが低下し、製造コストが上昇してしまうという問題があった。
【0007】
また、芯材の表面に凹凸がある場合等には、和紙を芯材の表面に貼る際に、和紙に皺が生じやすく、その結果として、パネルプレートの外観が悪化してしまうという問題があった。
【0008】
本発明は以上の点に鑑みなされたものであり、和紙の風合いを保ち、汚れや皺が生じず、外観に優れ、製造コストが低いパネルプレート、その製造方法、パネルプレートを構成する装飾シート、及びその製造方法を提供すること目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)請求項1の発明は、
和紙から成り、単位面積当たりの重量が15〜30g/m2の範囲にある和紙層の一方の側に、ホットメルト樹脂から成る接着層を厚みが10〜35μmの範囲となるように形成する接着層形成工程と、前記接着層形成工程の後に、前記和紙層における前記一方の側をロールに当接させ、前記和紙層を前記ロールを用いて送りつつ、前記和紙層に対し、前記一方の側とは反対側に、アクリル樹脂を含むコート層を面密度が3.0〜5.0g/m2の範囲になるように形成するコート層形成工程と、を含むことを特徴とする装飾シートの製造方法を要旨とする。
【0010】
本発明で製造される装飾シートでは、コート層がアクリル樹脂を含み、このアクリル樹脂は、和紙層の裏側に、接着層が形成されているので、和紙層への染み込みが少ない。そのため、本発明で製造される装飾シートでは、コート層が和紙層に深く染み込み、装飾シートの質感が樹脂シートのようになってしまうようなことがなく、和紙の風合いを維持することができる。
【0011】
また、本発明で製造される装飾シートは、コート層を備えているので、コート層の在る面には、汚れが付きにくい。そのため、例えば、本発明で製造される装飾シートを樹脂等から成る芯材層に接着し、パネルプレートを製造する際に、装飾シートのコート層の側が汚れてしまうことがない。
【0012】
更に、本発明で製造される装飾シートは、片面にコート層を備えるとともに、反対側の面に接着層を備えている。そのため、例えば、コート層が硬く、割れやすい材料から成る場合でも、接着層を有することにより、装飾シートが破れたり、切れたりするようなことが起こりにくい。
【0013】
また、本発明で製造される装飾シートは、コート層及び接着層を備えているので、適度な剛性を有し、例えば、和紙単独の装飾シートに比べて、皺が生じにくい。そのため、本発明で製造される装飾シートは、例えば、皺を生じることなく、芯材層に貼り付けることができ、皺の無い、外観面において優れたパネルプレートを製造することができる。
【0014】
また、本発明で製造される装飾シートは、接着層がホットメルト樹脂から成るので、例えば、接着層の側を加熱しながら芯材層に密着させ、容易かつ確実に芯材層に接着することができる。
本発明の装飾シートの製造方法では、例えば、最初に、和紙層の片側に接着層を形成し、その後に、和紙層の反対側にアクリル樹脂を含むコート層を形成するので、和紙層にコート層を形成する時点では、既に、接着層が形成されている。
そのため、本発明では、和紙層の片側に塗布されたコート層は、接着層により、和紙層の反対側にしみ出すことがない。つまり、本発明で製造された装飾シートは、コート層とは反対側の面に、アクリル樹脂等が付着することがない。
このことにより、例えば、装飾シートの製造過程において、装飾シートをロールを用いて送る場合に、装飾シートのコート層とは反対側の面がロールに接したとしても、ロールにアクリル樹脂等が付着してしまうことがない。
その結果として、本発明で製造される装飾シートは、ロールにアクリル樹脂等が付着することに起因するトラブルを防止することができる。
【0015】
本発明で製造される装飾シートを、例えば、図3の符号5の様に巻物にしておき、その巻物状の装飾シートを、加熱しながら、外側から延ばしつつ、芯材層の上に広げ接着し、パネルプレートを製造することができる。この方法により、装飾シートと芯材層との密着性が全体に亘って高く、また、装飾シートに皺等が生じず、外観において優れたパネルプレートを製造することが出来る。
【0016】
・前記接着層を構成するホットメルト樹脂としては、例えば、ポリエチレン樹脂、及びその他樹脂が挙げられる。
接着層の厚みは、例えば、10〜35μmである。10μm以下では、接着力が十分でないことがある。35μm以上では、製造コストが高くなったり、装飾シートの加工性が低下したりすることがある。
【0017】
・前記コート層は、例えば、アクリル樹脂を主成分とし、フィラー、添加剤(例えば、紫外線吸収剤、光拡散剤、増白剤等)を含む樹脂をいう。このアクリル系樹脂は、例えば、溶剤(例えば、MEKを主成分とする溶剤)に溶かした状態で使用され、その組成は、例えば、以下の通りである。
【0018】
アクリル樹脂:38〜40重量%
フィラー:0.1〜0.2重量%
添加剤:0.3〜0.5重量%
溶剤:60〜62重量%
・前記コート層の面密度は、例えば、3.0〜5.0g/m2である。3.0g/m2以下では、防汚性が十分でないことがある。5.0g/m2以上では、外観面で、和紙らしさが低下してしまうことがある。
【0019】
また、上記コート層には、フッ素樹脂を微量に充填することにより、更に防汚性、撥水性を向上させることができる。
・前記接着層形成工程では、例えば、ホットメルト樹脂のペレットを加熱溶融し、和紙層の裏面に塗布する方法で接着層を形成する。
・前記コート層形成工程では、例えば、アクリル樹脂を含むコート剤を塗布することによりコート層を形成する。コート剤の塗布においては、例えば、コート剤の面密度が3.0〜5.0g/m2となるようにする。3.0g/m2以下では、表面コートの効果(例えば汚れの付着防止)が十分でないことがある。5.0g/m2以上では、和紙らしさが多少、失われることがある。
(2)請求項2の発明は、
前記接着層形成工程より前に、前記和紙層の前記一方の側に、樹脂から成る補強層を形成する補強層形成工程を有することを特徴とする前記請求項1に記載の装飾シートの製造方法を要旨とする。
【0020】
本発明で製造される装飾シートは、補強層を備えているので、強度及び断熱性において一層優れている。従って、例えば、本発明で製造される装飾シートを、樹脂等から成る芯材層に接着すれば、強度及び断熱性において優れたパネルプレートを製造することができる。
【0021】
・前記補強層を構成する樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(ポリエステル)、ポリプロピレン、ポリカーボネイト等が挙げられる。
この補強層の厚みは、例えば、20〜150μmである。20μm以下では、装飾シートの強度及び加工性が不十分である場合があり、150μm以上では、装飾シートの製造コストが高くなったり、装飾シートに巻き癖が生じて加工性が低下してしまうことがある。
【0022】
また、この補強層と和紙層とは、例えば、接着剤により接着する。
尚、本発明で製造される装飾シートは、前記実施例1の装飾シートと同様に、例えば、高速度自動機械を用いて、巻物仕上げとすることができる。
(3)請求項3の発明は、
和紙から成り、単位面積当たりの重量が15〜30g/m2の範囲にある和紙層の一方の側に、ホットメルト樹脂から成る接着層を厚みが10〜35μmの範囲となるように形成する接着層形成工程と、前記接着層形成工程の後に、前記和紙層における前記一方の側をロールに当接させ、前記和紙層を前記ロールを用いて送りつつ、前記和紙層に対し、前記一方の側とは反対側に、アクリル樹脂を含むコート層を面密度が3.0〜5.0g/m2の範囲になるように形成して装飾シート形成する装飾シート形成工程と、前記装飾シートの前記接着層を前記芯材層に押圧した状態にて、前記装飾シートをまず加熱し次に冷却することで、前記芯材層と前記装飾シートとを接着する接着工程と、を含むことを特徴とするパネルプレートの製造方法を要旨とする。
本発明で製造されるパネルプレートは、上記の装飾シートを備えることにより、和紙の風合いを有し、美観において優れている。
また、本発明で製造されるパネルプレートは、その片面又は両面に装飾シートを備えており、その装飾シートの表面にはコート層が設けられているので、汚れが付きにくい。
本発明のパネルプレートの製造方法では、装飾シートに備えられた接着層を用いるので、装飾シートと芯材層との接着に、別途、接着剤等を用いる必要がない。そのため、本発明の製造方法は、容易にパネルプレートを製造することができる。
また、製造されるパネルプレートでは、装飾シートと芯材層との密着性が高い。
本発明において、装飾シートは、例えば、図3の符号5の様に巻物にしておき、その巻物状の装飾シートを、加熱しながら、外側から延ばしつつ、芯材層の上に広げ、接着することができる。このことにより、パネルプレートの全体に亘って、装飾シートと芯材層との密着性が高く、また、装飾シートに皺等が生じず、パネルプレートを綺麗に仕上げることができる。
本発明は、例えば、芯材層の成形時に同時に実施することができ、また、芯材層の成形時より後に、2次加工として実施することができる。
・前記芯材層の厚みは、例えば、0.5〜20mmとすることができる。0.5mm以下の場合は、パネルプレートの断熱性が十分でないことがある。また、20mm以上では、パネルプレートの製造コストが高くなってしまったり、パネルプレートの施工が難しくなってしまうことがある。
・前記パネルプレートの縦、横の寸法は、例えば、それぞれ、180〜250cm、90〜125cmとすることができる。
【0023】
【0024】
【0025】
【0026】
【0027】
【0028】
(4)請求項4の発明は、
前記接着層形成工程より前に、前記和紙層の前記一方の側に、樹脂から成る補強層を形成する補強層形成工程を有することを特徴とする前記請求項3に記載のパネルプレートの製造方法を要旨とする。
【0029】
本発明における装飾シートは、補強層を備えているので、強度及び断熱性において一層優れている。従って、例えば、この装飾シートを、樹脂等から成る芯材層に接着すれば、強度及び断熱性において優れたパネルプレートを製造することができる。
(5)請求項5の発明は、
前記芯材層が、樹脂から成る板状部材であることを特徴とする前記請求項に記載のパネルプレートの製造方法を要旨とする。
【0030】
【0031】
【0032】
【0033】
本発明で製造されるパネルプレートは、芯材層が樹脂から成ることにより、軽量で強度が高く、耐久性において優れている。
・前記樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、スチロール樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリカーボネイト樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂(ポリエステル樹脂)、ABS樹脂、ポリエチレン樹脂等の熱可塑性樹脂が挙げられる。
)請求項の発明は、
前記板状部材が、内部に空孔を有することを特徴とする前記請求項に記載のパネルプレートの製造方法を要旨とする。
【0034】
本発明で製造されるパネルプレートは、芯材層が、内部に空孔を有する板状部材であることにより、一層軽量であるという特長を有する。
また、本発明で製造されるパネルプレートは、例えば、芯材層の空孔の中に、熱を伝えにくい空気を有することにより、一層断熱性を高めることができる。
【0035】
本発明の芯材層を構成する樹脂としては、例えば、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリカーボネート樹脂等が挙げられる。
・前記空孔を有する芯材層としては、例えば、独立気泡を有する樹脂ボードや、図2に示す様に、空孔が並列する筒状に設けられているものがある。
【0036】
この空孔を有する芯材層の厚みは、例えば、2〜20mmである。2mm以下では、パネルプレートの断熱性が十分でないことがあり、20mm以上では、パネルプレートの製造コストが高くなったり、パネルプレートの施工が難しくなったりすることがある。
【0037】
【0038】
【0039】
【発明を実施するための最良の形態】
【0040】
以下に本発明の装飾シート、その製造方法、パネルプレート、及びその製造方法の実施の形態の例(実施例)を説明する。
(実施例1)
a)まず、装飾シート及びその装飾シートを用いたパネルプレートの構成を図1を用いて説明する。尚、図1は、パネルプレートの断面図である。
【0041】
パネルプレート1は、図1に示す様に、芯材層3と、その芯材層3の両側に設けられた装飾シート5とから構成されており、その縦、横の寸法は、縦180cm、横90cmである。
【0042】
上記芯材層3は、アクリル樹脂から成る板状部材であり、その厚みは2mmである。
また、上記装飾シート5は、中心となる和紙層7と、その和紙層7の外側(芯材層3と反対側)に設けられたコート層9と、和紙層7の内側(芯材層3に面する側)に設けられた接着層11とから構成される。
【0043】
この和紙層7は、単位面積当たりの重量が15〜30g/m2である薄和紙から成る層
である。
コート層9は、以下の組成から成るコート剤を塗布して形成されたものである。
【0044】
アクリル樹脂 :38〜40重量%
フィラー :0.1〜0.2重量%
添加剤 :0.3〜0.5重量%(添加剤は、例えば、紫外線吸収剤0.3重量%と光拡散剤0.1重量%とから成る)
溶剤(MEK) :60〜62重量%
このコート層9の密度は、固形分での塗布量が3.0〜5.0g/m2である。
【0045】
接着層11は、ポリエチレン樹脂80重量%と、EVA樹脂20重量%とから成る層であり、装飾シート5と芯材層3とを接着する役割を果たしている。
b)次に、装飾シート5及びパネルプレート1の製造方法を図2を用いて説明する。
【0046】
i)まず、装飾シート5の製造方法を説明する。
1)和紙層7の片面に、ポリエチレン樹脂とEVA樹脂とを含む塗材を、層の厚みが15μmとなるように塗布し、接着層11を形成した。具体的な塗布方法としては、樹脂のペレットを加熱溶融して、和紙の表面に塗布する方法を用いた。
【0047】
2)和紙層7の反対側の面(接着層11を形成していない面)に、アクリル樹脂を含むコート剤を、コート剤の面密度が3.4g/m2となるように塗布してコート層9を形成し
、装飾シート5を完成した。コート剤を塗布する具体的な塗布方法としては、グラビア印刷方式を用いた。
【0048】
3)尚、装飾シート5は、後述する芯材層3との接着が容易となるように、紙管12を中心に、接着層11が外側となるように巻き、巻物状(ロール)とした。
【0049】
ii)次に、上記のようにして製造した装飾シート5を用いてパネルプレート1を製造す
る方法を図3を用いて説明する。
1)アクリル樹脂を上記a)で述べた寸法に成形し、芯材層3とした。
【0050】
2)芯材層3の片側に、前記i)で製造した装飾シート5の巻物を、接着層11が芯材層3に面するように広げた。そして、装飾シート5を、接着層11を加熱することにより、接着層11を溶融させ、芯材層3と接着層11とを接合し、その後冷却することにより完成した。
【0051】
また、芯材層3の反対側にも、同様に、装飾シート5を接合し、パネルプレート1を完成した。
c)次に、装飾シート5及びパネルプレート1の奏する効果を説明する。
【0052】
1)本実施例1の装飾シート5は、コート層9がアクリル樹脂を含む。このアクリル樹脂は、和紙層7への染み込みが少ないので、装飾シート5の質感が樹脂シートのようになってしまうことがなく、和紙の風合いを維持することができる。
【0053】
2)本実施例1の装飾シート5は、コート層9を備えているので、汚れが付きにくい。そのため、装飾シート5を芯材層3に接着する工程で、装飾シート5が汚れてしまうことがない。その結果、パネルプレート1の製造歩留まりが向上し、その製造コストを低減することができる。
【0054】
3)本実施例1の装飾シート5は、最初に、接着層11を形成し、その後に、コート剤を塗布してコート層9を形成することにより製造する。そのため、本実施例1では、和紙層7の片側に塗布されたコート剤は、接着層11により、和紙層7の反対側にしみ出すことがない。
【0055】
そのことにより、装飾シート5の製造過程において、装飾シート5をロールを用いて送る場合に、装飾シート5のコート層9とは反対側の面がロールに接したとしても、ロールにアクリル樹脂等が付着してしまうことがない。その結果として、本実施例1の装飾シート5は、ロールにアクリル樹脂等が付着することに起因するトラブルを防止することができる。
【0056】
5)本実施例1の装飾シート5は、コート層9に紫外線吸収剤を含んでいるので、装飾シート5が紫外線に長時間曝された場合でも、和紙層7及び接着層11が変色することがない。
【0057】
また、コート層9に光拡散剤を含んでいるので、装飾シート5やパネルプレート1を、建造物等の光を取り入れる部位(例えば窓)に用いた場合に、直射光線を和らげ、室内を明るくする効果を奏する。
(実施例2)
a)本実施例2の装飾シート5及びパネルプレート1の構成は、基本的には、前記実施例1とほぼ同様である。
【0058】
但し、本実施例2では、パネルプレート1の芯材層3が、内部に空孔を有するものである。つまり、芯材層3は、図4に示す様に、芯材層3の上側(図4における上側)及び下側の表面をそれぞれ覆う一対の表層部13と、それら表層部13の間を連結する支柱部15とから構成されており、芯材層3の内部には、表層部13と支柱部15とにより囲まれる空孔17が形成されている。ここで、支柱部15は、図4の紙面の垂直方向に、芯材層3の端から端まで延びており、それに伴い、空孔17は、図4の紙面に垂直方向に、芯材層3を端から端まで貫通している。
【0059】
また、表層部13は、支柱部15の付近ではやや凹んでおり、支柱部15の間では、やや膨らんでいる。従って、表層部13は、支柱部15の間隔と同様の周期で、凹凸を有する。
【0060】
本発明の装飾シート5及びパネルプレート1は、基本的には、前記実施例1と同様に製造する。
但し、本実施例2では、芯材層3を、押し出し成形の方法で製造する。
【0061】
b)本実施例2の装飾シート5及びパネルプレート1の奏する効果を説明する。
1)本実施例2の装飾シート5及びパネルプレート1は前記実施例1と同様の効果を奏する。
【0062】
2)本実施例2のパネルプレート1は、芯材層3が空孔17を有しているので軽量であるという特長を有する。また、本実施例2のパネルプレート1は、芯材層3に空孔17を有しており、その空孔17に、熱を伝えにくい空気が入り込むので、断熱性が高いという特長を有する。
【0063】
3)本実施例2の装飾シート5は、和紙層7の両側に、コート層9と接着層11を備えているので、適度な剛性を有し、和紙のみから成るシートに比べて、皺になりにくい。そのため、芯材層3の表面に凹凸があるにもかかわらず、芯材層3の表面に装飾シート5を貼り付ける際に、装飾シート5に皺が発生せず、パネルプレート1の外観が良好である。
(実施例3)
本実施例3の装飾シート5及びパネルプレート1の構成は、基本的には、前記実施例1とほぼ同様である。
【0064】
但し、本実施例3では、図5に示す様に、芯材層3の片方にのみ、装飾シート5を貼り付けている。
本実施例3のパネルプレート1は、装飾シート5を両面に貼り付ける必要がないので、製造コストが低く、また、光線透過率が高いという特長を有する。
(実施例4)
本実施例4の装飾シート5及びパネルプレート1の構成は、基本的には、前記実施例1とほぼ同様である。
【0065】
但し、本実施例4の装飾シート5は、図6に示す様に、和紙層7と接着層11との間に、ポリエチレンテレフタレートから成る厚さ150μmの補強層19を備えている。この補強層19は、接着剤によるラミネートの方法で、和紙層7に貼り付け、その後、接着層11を補強層19の上に形成する。
【0066】
本実施例4のパネルプレート1は、装飾シート5が補強層19を備えていることにより、強度及び断熱性が一層高い。
(比較例1)
本比較例1では、図7に示す様に、まず、1)薄和紙21の裏面(後に芯材層3と接着する面)に、ポリプロピレン樹脂から成る接着層を形成しておき、その薄和紙21を、芯材層3の両面に、押出成形時同時貼合せの方法で接着する。ここで、薄和紙21の表面はコート処理が施されていない。
【0067】
次に、2)薄和紙21の表面に、クリヤタイプの合成樹脂防水塗料(アサヒペン製)をシンナーで希釈したコート剤を、片面9.5g/m2の密度で塗布してコート層23を形成
し、パネルプレート25を完成した。ここで、芯材層3は、前記実施例2と同様のものであり、表面に凹凸を有する。また、薄和紙21は、前記実施例1にて、装飾シート5の和紙層7に用いたものと同一である。
【0068】
本比較例1のパネルプレート25では、コート剤が、薄和紙21に多少染み込んでしまい、そのことにより、パネルプレート25の表面の質感が、多少染みた感じになった。
また、薄和紙21を芯材層3に貼り付ける際に、薄和紙21の表面はコート層が形成されていないので、汚れが付着し易かった。
【0069】
更に、薄和紙21を芯材層3に貼り付ける際に、芯材層3の表面に凹凸があるために、薄和紙21に皺が発生し易く、外観において劣っていた。
(比較例2)
本比較例2では、図8に示す様に、まず、1)薄和紙21の片面に、クリヤタイプの合成樹脂防水塗料(アサヒペン製)をシンナーで希釈したコート剤を7.7g/m2の密度で
塗布してコート層23を形成し、装飾シート27とした。次に、2)芯材層3の表面にメルトフィルムを使用し、接着層として転写してから、加熱加圧する方法で、装飾シート27と芯材層3とを接着し、パネルプレート29を完成した。ここで、芯材層3は、前記実施例1と同一のものである。
【0070】
本比較例2のパネルプレート29では、前記比較例1の場合よりも一層、コート剤が薄和紙21に深く染み込んでしまい、パネルプレート29の表面の質感が、樹脂のプレートのようになってしまい、和紙の風合いが失われてしまった。
【0071】
また、本比較例2では、装飾シート27が、薄和紙21とコート層23とから成るため、柔軟性がなく、容易に切れたり破れたりしてしまう。そのため、本比較例2のパネルプレート29は、その製造段階において、装飾シート27が切れたり破れたりしてしまい、製造歩留まりが低下してしまう。
【0072】
尚、本発明は前記実施例になんら限定されるものではなく、本発明を逸脱しない範囲において種々の態様で実施しうることはいうまでもない。
例えば、前記実施例1で、芯材層3に装飾シート5を接着する工程において、芯材層3の両面に、別々のロールに巻かれた装飾シート5をそれぞれ押し当て、同時に加熱圧着することにより、芯材層3の両側の装飾シート5を、同時に接着することができる。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】実施例のパネルプレートの構成を示す説明図である。
【図2】実施例の装飾シートの製造方法を示す説明図である。
【図3】実施例のパネルプレートの製造方法を示す説明図である。
【図4】実施例のパネルプレートの構成を示す説明図である。
【図5】実施例のパネルプレートの構成を示す説明図である。
【図6】実施例のパネルプレートの構成を示す説明図である。
【図7】比較例のパネルプレートの製造方法を示す説明図である。
【図8】比較例のパネルプレートの製造方法を示す説明図である。
【符号の説明】
【0074】
1・・・パネルプレート
3・・・芯材層
5・・・装飾シート
7・・・和紙層
9・・・コート層
11・・・接着層
13・・・表層部
15・・・支柱部
17・・・空孔
19・・・補強層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
和紙から成る和紙層と、
前記和紙層の一方の側に形成され、ホットメルト樹脂から成る接着層と、
前記和紙層に対し、前記一方の側とは反対側に形成され、アクリル樹脂を含むコート層と、
を含むことを特徴とする装飾シート。
【請求項2】
前記和紙層と前記接着層との間に、樹脂から成る補強層を有することを特徴とする前記請求項1に記載の装飾シート。
【請求項3】
和紙から成る和紙層の一方の側に、ホットメルト樹脂から成る接着層を形成する接着層形成工程と、
前記和紙層に対し、前記一方の側とは反対側に、アクリル樹脂を含むコート層を形成するコート層形成工程と、
を含むことを特徴とする装飾シートの製造方法。
【請求項4】
前記接着層形成工程より前に、
前記和紙層の前記一方の側に、樹脂から成る補強層を形成する補強層形成工程を有することを特徴とする前記請求項3に記載の装飾シートの製造方法。
【請求項5】
芯材層と、
前記芯材層の片側又は両側に、前記接着層が前記芯材層に面するように設けられた前記請求項1又は2に記載の装飾シートと、を含むことを特徴とするパネルプレート。
【請求項6】
前記芯材層が、樹脂から成る板状部材であることを特徴とする前記請求項5に記載のパネルプレート。
【請求項7】
前記板状部材が、内部に空孔を有することを特徴とする前記請求項6に記載のパネルプレート。
【請求項8】
前記請求項5〜7のいずれかに記載のパネルプレートの製造方法であって、
前記装飾シートの前記接着層を加熱し、前記芯材層に当接させ、前記芯材層と前記装飾シートとを接着することを特徴とするパネルプレートの製造方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
和紙から成り、単位面積当たりの重量が15〜30g/m2の範囲にある和紙層の一方の側に、ホットメルト樹脂から成る接着層を厚みが10〜35μmの範囲となるように形成する接着層形成工程と、
前記接着層形成工程の後に、前記和紙層における前記一方の側をロールに当接させ、前記和紙層を前記ロールを用いて送りつつ、前記和紙層に対し、前記一方の側とは反対側に、アクリル樹脂を含むコート層を面密度が3.0〜5.0g/m2の範囲になるように形成するコート層形成工程と、
を含むことを特徴とする装飾シートの製造方法
【請求項2】
前記接着層形成工程より前に、
前記和紙層の前記一方の側に、樹脂から成る補強層を形成する補強層形成工程を有することを特徴とする前記請求項1に記載の装飾シートの製造方法
【請求項3】
和紙から成り、単位面積当たりの重量が15〜30g/m2の範囲にある和紙層の一方の側に、ホットメルト樹脂から成る接着層を厚みが10〜35μmの範囲となるように形成する接着層形成工程と、
前記接着層形成工程の後に、前記和紙層における前記一方の側をロールに当接させ、前記和紙層を前記ロールを用いて送りつつ、前記和紙層に対し、前記一方の側とは反対側に、アクリル樹脂を含むコート層を面密度が3.0〜5.0g/m2の範囲になるように形成して装飾シート形成する装飾シート形成工程と、
前記装飾シートの前記接着層を前記芯材層に押圧した状態にて、前記装飾シートをまず加熱し次に冷却することで、前記芯材層と前記装飾シートとを接着する接着工程と、
を含むことを特徴とするパネルプレートの製造方法。
【請求項4】
前記接着層形成工程より前に、
前記和紙層の前記一方の側に、樹脂から成る補強層を形成する補強層形成工程を有することを特徴とする前記請求項3に記載のパネルプレートの製造方法。
【請求項5】
前記芯材層が、樹脂から成る板状部材であることを特徴とする前記請求項に記載のパネルプレートの製造方法
【請求項6】
前記板状部材が、内部に空孔を有することを特徴とする前記請求項に記載のパネルプレートの製造方法

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−150975(P2006−150975A)
【公開日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−363263(P2005−363263)
【出願日】平成17年12月16日(2005.12.16)
【分割の表示】特願2002−268577(P2002−268577)の分割
【原出願日】平成14年9月13日(2002.9.13)
【出願人】(399031399)株式会社サンコーテック (1)
【Fターム(参考)】