説明

装飾用パネル

【課題】 変化に富んだ見栄えの良い光装飾を可能にするとともに、見る者の視覚に作用して、癒し、くつろぎ、または安らぎを与える光装飾が可能な装飾用パネルを提供する。
【解決手段】 光入射側と反対の基材11の裏面に、基材11に入射された入射光13の反射、干渉及び回折させ得る境面形状に加工することにより、装飾用パネル10全体の反射光の輝度にランダムに変化する明暗を生じさせる多数の小反射部12を任意の配列で連続して形成する。また、小反射部12を構成する凹状境面12aの媒体境界面に、該媒体境界面を鏡面にするとともに基材11を透過しようとする光を基材11内に戻す方向に反射する反射層15を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用のプラスチック成形品や家具用のプラスチック成形品、または携帯電話用のプラスチック成形品などに使用される装飾用パネルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の装飾用パネル、例えば自動車用装飾パネルとして、乗用車の後部端のリアコンビネーションランプ間に装着されるガーニッシュが知られている(特許文献1参照)。
この種の装飾パネルは、アクリル等の透明な合成樹脂材からなるカバーと、このカバーを自動車の車体に取り付けるための取付基材とを備え、カバーの外表面は平滑な面に加工されているとともに取付基材と相対向する内表面には細かい凹凸模様(シボ)が形成されている。また、カバーの内表面と相対向する取付基材の表面には平面的に連続した凹球状の魚眼を形成し、さらに、この凹球状の魚眼にシルバーメタリック塗料を塗布してメタリック塗膜面を形成する。
【0003】
このような装飾パネルにおいては、カバーを透過した光はカバー内表面の細かい凹凸模様(シボ)により複雑に散乱され、この散乱光が取付基材のメタリック塗膜面に入射されると、凹球状の魚眼形状からくる凹面鏡の作用によって、その入射光の反射の乱れが集約された反射光となり、これにより、フレネルレンズの効果を出して、奥行きの深さを表現できる装飾パネルを提供できるようにしている。
【特許文献1】特開平4−78632号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、このような従来の装飾パネルは、細かい凹凸模様を有するカバーと、このカバーと対向する表面に形成した凹球状の魚眼にシルバーメタリック塗料を塗布してなるメタリック塗膜面を有する取付基材とから構成されるものであるため、乗用車のガーニッシュなどには好適であるものの、家具用のプラスチック成形品や携帯電話用のプラスチック成形品などの装飾パネルには不向きである。なぜならば、装飾パネルはカバーと取付基材とを空間を介して対向配置される構造であるため、装飾パネル自体が厚くなって薄型化できないほか、装飾パネルの構成部品点数が多くなり、コスト高になるという問題がある。
【0005】
また、従来の装飾パネルを構成する取付基材のメタリック塗膜面は凹球状の凹面鏡からなり、この凹面鏡でカバーの凹凸模様で散乱されて入射される光を集約された反射光、すなわち凹面鏡の大きさに応じた径のスポット光として反射するものであるため、このスポット状反射光の輝度はほとんど均一であるとともに、装飾パネルに対し視点を変えてもスポット光の輝度は変化しない。その結果、インストルメントパネルやドアートリムなどの自動車内装部品の装飾には変化が乏しく、かつ見栄えが低いという問題があった。
【0006】
本発明は上記のような従来の問題を解決するためになされたもので、変化に富んだ見栄えの良い光装飾を可能にするとともに、見る者の視覚に作用して、癒し、くつろぎ、または安らぎを与える光装飾を可能にした装飾用パネルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために本発明の装飾用パネルは、透明材からなる板状の基材を有し、前記基材の光入射側である表面と反対の面に、前記基材に入射された入射光を反射、干渉及び回折させ得る境面形状に加工することにより、これら境面の反射輝度にランダムな明暗を生じさせる多数の小反射部を任意の配列で前記一方の面に沿い連続して形成し、前記多数の小反射部の境面に該境面を鏡面にするとともに前記基材を透過する光を該基材内に戻す方向に反射する反射層を形成し、前記基材に対する入射光の方向、前記基材に対する視点及び前記入射光または前記視点に対する前記基材の位置の少なくとも1つを相対的に変化することにより、前記各小反射部で起こる光の反射、干渉及び回折により生じる反射光の輝度に不規則に変化する明暗を生じさせるとともに光波長のシフトによる色収差を生じさせるように構成したことを特徴とする。
【0008】
請求項2の発明は、請求項1記載の装飾用パネルにおいて、前記多数の小反射部は、基本形状に1/fゆらぎを付与することにより造形された、平面的に連続する三次元形状の凹状境面から構成されていることを特徴とする。
請求項3の発明は、請求項2記載の装飾用パネルにおいて、前記小反射部の基本形状は、前記表面と反対の面に該面に沿い連続してランダムに形成された二次元方向に任意のピッチで形成された三角型、台形型、半球型、半楕円球型、波型等の三次元形状を呈することを特徴とする。
【0009】
請求項4の発明は、請求項1記載の装飾用パネルにおいて、前記基材の光入射側である表面に、加飾用の模様パターンを有する半透明もしくは透明な加飾層が形成されていることを特徴とする。
請求項5の発明は、請求項1ないし4の何れか1項に記載の装飾用パネルにおいて、前記小反射部と前記反射層との境界面に多層もしくは単層光学薄膜を設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の装飾用パネルによれば、基材に対する入射光の方向、前記基材に対する視点及び基材の位置の少なくとも1つを相対的に変化することにより、各小反射部及び反射層で生成される反射輝度に、木漏れ日に似た不規則に変化する明暗パターンを生じせることができ、これにより、変化に富んだ見栄えの良い光装飾が可能になる。
【0011】
また、本発明の装飾用パネルによれば、小反射部を、基本形状に1/fゆらぎを付与することにより造形された、平面的に連続する三次元形状の凹状境面から構成したので、小反射部及び反射層で、木漏れ日に似た不規則に変化する反射輝度の明暗パターンが見る者の視覚に作用して、見る者に癒し、くつろぎ、または安らぎを与える光装飾効果を発揮できる。
【0012】
また、本発明の装飾用パネルによれば、基材の光入射側表面に、模様パターンを有する加飾層を形成したので、加飾層の模様パターンに小反射部及び反射層で生成された反射光によりランダムに変化する明暗を与えることができるとともに、模様パターンの見栄えを向上できる。
【0013】
また、本発明の装飾用パネルによれば、多層もしくは単層光学薄膜を小反射部と反射層との境界面に設けることにより、装飾用パネルに色のついた光装飾効果を持たせることができ、見る者に対し、より効果的な癒しやくつろぎ、または安らぎを与えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
(第1の実施の形態)
次に、本発明にかかる装飾用パネルの第1の実施の形態について図1〜図3を参照して説明する。なお、本発明の装飾用パネルは、以下に説明する実施の形態に限定されるものではない。
図1は第1の実施の形態における装飾用パネルの説明用外観図、図2は図1の2−2線に沿う拡大断面図、図3は図1の3−3線に沿う拡大断面図である。
【0015】
この第1の実施の形態に示す装飾用パネル10は、図1に示すように、アクリルやポリカーボネートなどの透明な合成樹脂材またはガラス等の透明材からなる一定厚さの板状の基材11を備え、この基材11の光入射側である表面11aは平滑な面に形成され、この表面11aと反対の基材11の裏面11bには、基材11に入射された入射光13の反射(全反射,完全又は不完全拡散反射、透過拡散)、干渉及び回折させ得る境面形状に加工することにより、装飾用パネル10全体の反射光の輝度にランダムに変化する明暗を生じさせる多数の小反射部12が任意の配列で裏面11bの全域に亘り連続して形成されている。
なお、装飾用パネル10への入射光13には、各種照明灯の光または太陽光等の自然光などが用いられる。
【0016】
次に、小反射部12で生成される反射光の輝度に不規則に変化する明暗を生じさせる場合の具体例について図1ないし図3を参照して説明する。
小反射部12は、図1に示しているように、三角屋根型の基本形状を呈し、この基本形状に1/fゆらぎを付与することにより、図2及び図3に示すように、三角屋根型の三次元形状に造形された、平面的に連続する三次元形状の凹状境面12aから構成される。この凹状境面12aは、その反射による輝度に木漏れ日に似た不規則に変化する明暗を生じせるものであり、その形状は次式に示す1/fゆらぎ関数f(x)より決定される。
【0017】
【数1】


すなわち、1/fゆらぎ関数f(x)で決定される凹状境面12aは、周波数の違う複数のサイン曲線(2x:周波数)に適当な係数2−i(2−i:振幅)をかけて加算した形状となる。これをグラフに表すと図4に示す曲線411のようになる。また、符号412は周波数の異なる複数のサイン曲線を示す。
【0018】
上記小反射部12は、図1乃至図3に示すように、予め決めた一定の間隔L(0<L<10mm)で、行、列方向に連続して配列され、そして、互いに隣接する各行の小反射部12Cは列方向に1L分ずらして配列されている。
また、凹状境面12aの深さhは、0≦h≦20mmの範囲に設定される。また、凹状境面12aの反射角θ1は、その材質がポリカーボネートの場合、約40度であり、凹状境面12aの傾斜角θ2は、0≦θ2≦90°の範囲に設定される。
【0019】
また、上記小反射部12を構成する凹状境面12aの媒体境面には、図2及び図3に示すように、上記媒体境面を鏡面にするとともに基材11を透過しようとする光を基材11内に戻す方向に反射する反射層15が形成されている。この反射層15はアルミその他の鏡面形成用の金属を蒸着することにより構成される。
【0020】
このような第1の実施の形態に示す装飾用パネル10において、図1〜図3に示すように、基材11の表面11aが入射光13により照射されると、この入射光13は屈折光となって基材11内を進行し小反射部12に達する。そして、小反射部12に達した屈折光は1/fゆらぎ関数f(x)より決定された小反射部12の形状に応じて反射、干渉及び回折され、これにより、基材11の表面11a側へ反射される反射光の輝度に不規則に変化する明暗パターンを生じさせるとともに光波長のシフトによる色収差を生じさせる。さらに、上記屈折光のうち、基材11を透過し反射層15で反射された光は再び基材11内に戻され、不規則に変化する明暗パターンの生成に寄与する。また、この場合、小反射部12及び反射層15の反射で戻ってくる光の一部と基材11の表面11aで反射された入射光13の一部とが干渉することにより、ある色の光が強くなり、他の色の光が弱められることで、白色光以外の色のついた光パターンを生成できる。
【0021】
したがって、この第1の実施の形態によれば、基材11に対する入射光13の方向、基材11の表面11aに対する見る者の視点14及びこの視点14または入射光13に対する基材11の位置の少なくとも1つを相対的に変化させれば、1/fゆらぎを付与した各小反射部12と反射層15で、木漏れ日に似た不規則に変化する反射輝度の明暗パターンを生じさせることができる。これにより、インストルメントパネルやドアートリムなどの自動車内装部品に本実施例の装飾用パネル10を装着し、この装飾用パネル10をその光入射側から見れば、自動車内装部品を変化に富んだ光装飾が可能になり、かつ見栄えの良い光装飾も可能になる。
【0022】
また、1/fゆらぎを付与することにより三次元形状に造形された凹状境面12a及び反射層15で生成される反射光の輝度の明暗パターンが不規則に変化することで、その輝度の明暗パターンが恰も木漏れ日のようになって見る者の視覚に作用し、これにより、見る者に対し癒し、くつろぎ、または安らぎを与える光装飾効果を発揮できる。
【0023】
(第2の実施の形態)
次に、本発明にかかる装飾用パネルの第2の実施の形態について図5〜図7を参照して説明する。
図5は第2の実施の形態における装飾用パネルの説明用外観図、図6は図5の6−6線に沿う拡大断面図、図7は図5の7−7線に沿う拡大断面図である。
【0024】
この第2の実施の形態に示す装飾用パネル20は、図5に示すように、アクリルやポリカーボネートなどの透明な合成樹脂材またはガラス等の透明材からなる一定厚さの板状の基材21を備え、この基材21の光入射側である表面21aは平滑な面に形成され、この表面21aと反対の基材21の裏面21bには、基材21に入射された入射光23の反射(全反射,完全又は不完全拡散反射、透過拡散)、干渉及び回折させ得る境面形状に加工することにより、装飾用パネル20全体の反射光の輝度にランダムに変化する明暗を生じさせる多数の小反射部22が任意の配列で裏面21bの全域に亘り連続して形成されている。
なお、装飾用パネル20への入射光23には、各種照明灯の光または太陽光等の自然光などが用いられる。
【0025】
次に、小反射部22で生成される反射光の輝度に不規則に変化する明暗を生じさせる場合の具体例について図5ないし図7を参照して説明する。
小反射部22は、図5に示してあるように、台形屋根型の基本形状を呈し、この基本形状に1/fゆらぎを付与することにより、図6及び図7に示すように、台形屋根型の三次元形状に造形された、平面的に連続する三次元形状の凹状境面22aから構成される。この凹状境面22aは、その光反射による輝度に木漏れ日に似た不規則に変化する明暗を生じせるものであり、その形状は、上記数2に示す1/fゆらぎ関数f(x)より決定される。
すなわち、1/fゆらぎ関数f(x)で決定される凹状境面22aは、周波数の違う複数のサイン曲線(2x:周波数)に適当な係数2−i(2−i:振幅)をかけて加算した形状となる。
【0026】
上記小反射部22は、図5乃至図7に示すように、予め決めた一定の間隔L(0<L<10mm)で、行、列方向に連続して配列され、そして、互いに隣接する各行の小反射部22Cは列方向に1L分ずらして配列されている。
また、凹状境面22aの深さhは、0≦h≦20mmの範囲に設定される。また、凹状境面22aの反射角θ1は、その材質がポリカーボネートの場合、約40度であり、凹状境面22aの傾斜角θ2は、0≦θ2≦90°の範囲に設定される。
【0027】
また、上記小反射部22を構成する凹状境面22aの媒体境面には、図6及び図7に示すように、上記媒体境面を鏡面にするとともに基材21を透過しようとする光を基材21内に戻す方向に反射する反射層25が形成されている。この反射層25はアルミその他の鏡面形成用の金属を蒸着することにより構成される。
【0028】
このような第2の実施の形態に示す装飾用パネル20において、図5〜図7に示すように、基材21の表面21aが入射光23により照射されると、この入射光23は屈折光となって基材21内を進行し小反射部22に達する。そして、小反射部22に達した屈折光は1/fゆらぎ関数f(x)より決定された小反射部22の形状に応じて反射、干渉及び回折され、これにより、基材21の表面21a側へ反射される反射光の輝度に不規則に変化する明暗パターンを生じさせるとともに光波長のシフトによる色収差を生じさせる。さらに、上記屈折光のうち、基材21を透過し反射層25で反射された光は再び基材21内に戻され、不規則に変化する明暗パターンの生成に寄与する。また、この場合、小反射部22及び反射層25の反射で戻ってくる光の一部と基材21の表面21aで反射された入射光23の一部とが干渉することにより、ある色の光が強くなり、他の色の光が弱められることで、白色光以外の色のついた光パターンを生成できる。
【0029】
したがって、この第2の実施の形態によれば、基材21に対する入射光23の方向、基材21の表面21aに対する見る者の視点24及びこの視点24または入射光23に対する基材21の位置の少なくとも1つを相対的に変化させれば、1/fゆらぎを付与した各小反射部22と反射層25で、木漏れ日に似た不規則に変化する反射輝度の明暗パターンを生成することができる。これにより、インストルメントパネルやドアートリムなどの自動車内装部品に本実施例の装飾用パネル20を装着し、この装飾用パネル20をその光入射側から見れば、自動車内装部品を変化に富んだ光装飾が可能になり、かつ見栄えの良い光装飾も可能になる。
また、1/fゆらぎを付与することにより三次元形状に造形された凹状境面22a及び反射層25で生成される反射光の輝度の明暗パターンが不規則に変化することで、その輝度の明暗パターンが恰も木漏れ日のようになって見る者の視覚に作用し、これにより、見る者に対し癒し、くつろぎ、または安らぎを与える光装飾効果を発揮できる。
【0030】
(第3の実施の形態)
次に、本発明にかかる装飾用パネルの第3の実施の形態について図8〜図10を参照して説明する。
図8は第3の実施の形態における装飾用パネルの説明用外観図、図9は図8の9−9線に沿う拡大断面図、図10は図8の10−10線に沿う拡大断面図である。
【0031】
この第3の実施の形態に示す装飾用パネル30は、図8に示すように、アクリルやポリカーボネートなどの透明な合成樹脂材またはガラス等の透明材からなる一定厚さの板状の基材31を備え、この基材31の光入射側である表面31aは平滑な面に形成され、この表面31aと反対の基材31の裏面31bには、基材31に入射された入射光33の反射(全反射,完全又は不完全拡散反射、透過拡散)、干渉及び回折させ得る境面形状に加工することにより、装飾用パネル30全体の反射光の輝度にランダムに変化する明暗を生じさせる多数の小反射部32が任意の配列で裏面31bの全域に亘り連続して形成されている。
なお、装飾用パネル30への入射光33には、各種照明灯の光または太陽光等の自然光などが用いられる。
【0032】
次に、小反射部32で生成される反射光の輝度に不規則に変化する明暗パターンを生じさせる場合の具体例について図8ないし図10を参照して説明する。
小反射部32は、図8に示してあるように、台形屋根型の基本形状を呈し、この基本形状に1/fゆらぎを付与することにより、図9及び図10に示すように、半球屋根型の三次元形状に造形された、平面的に連続する三次元形状の凹状境面32aから構成される。この凹状境面32aは、その反射による輝度に木漏れ日に似た不規則に変化する明暗パターンを生じせるものであり、その形状は、上記数2に示す1/fゆらぎ関数f(x)より決定される。
すなわち、1/fゆらぎ関数f(x)で決定される凹状境面32aは、周波数の違う複数のサイン曲線(2x:周波数)に適当な係数2−i(2−i:振幅)をかけて加算した形状となる。
【0033】
上記小反射部32は、図8乃至図10に示すように、予め決めた一定の間隔L(0<L<10mm)で、行、列方向に連続して配列され、そして、互いに隣接する各行の小反射部32Cは列方向に1L分ずらして配列されている。
また、凹状境面32aの深さhは、0≦h≦20mmの範囲に設定される。また、凹状境面32aの反射角θ1は、その材質がポリカーボネートの場合、約40度であり、凹状境面32aの傾斜角θ2は、0≦θ2≦90°の範囲に設定される。
【0034】
また、上記小反射部32を構成する凹状境面32aの媒体境面には、図9及び図10に示すように、上記媒体境面を鏡面にするとともに基材31を透過しようとする光を基材31内に戻す方向に反射する反射層35が形成されている。この反射層35はアルミその他の鏡面形成用の金属を蒸着することにより構成される。
【0035】
このような第3の実施の形態に示す装飾用パネル30において、図8〜図10に示すように、基材31の表面31aが入射光33により照射されると、この入射光33は屈折光となって基材31内を進行し小反射部32に達する。そして、小反射部32に達した屈折光は1/fゆらぎ関数f(x)より決定された小反射部32の形状に応じて反射、干渉及び回折され、これにより、基材31の表面31a側へ反射される反射光の輝度に不規則に変化する明暗パターンを生じさせるとともに光波長のシフトによる色収差を生じさせる。さらに、上記屈折光のうち、基材31を透過し反射層35で反射された光は再び基材31内に戻され、不規則に変化する明暗パターンの生成に寄与する。また、この場合、小反射部32及び反射層35の反射で戻ってくる光の一部と基材31の表面31aで反射された入射光33の一部とが干渉することにより、ある色の光が強くなり、他の色の光が弱められることで、白色光以外の色のついた光パターンを生成できる。
【0036】
したがって、この第3の実施の形態によれば、基材31に対する入射光33の方向、基材31の表面31aに対する見る者の視点34及びこの視点34または入射光33に対する基材31の位置の少なくとも1つを相対的に変化させれば、1/fゆらぎを付与した各小反射部32と反射層35で、木漏れ日に似た不規則に変化する反射輝度の明暗パターンを生成することができる。これにより、インストルメントパネルやドアートリムなどの自動車内装部品に本実施例の装飾用パネル30を装着し、この装飾用パネル30をその光入射側から見れば、自動車内装部品を変化に富んだ光装飾が可能になり、かつ見栄えの良い光装飾も可能になる。
【0037】
また、1/fゆらぎを付与することにより三次元形状に造形された凹状境面32a及び反射層35で生成される反射光の輝度の明暗パターンが不規則に変化することで、その輝度の明暗パターンが恰も木漏れ日のようになって見る者の視覚に作用し、これにより、見る者に対し癒し、くつろぎ、または安らぎを与える光装飾効果を発揮できる。
【0038】
(第4の実施の形態)
次に、本発明にかかる装飾用パネルの第4の実施の形態について図11〜図13を参照して説明する。
図11は第4の実施の形態における装飾用パネルの説明用外観図、図12は図11の12−12線に沿う拡大断面図、図13は図11の13−13線に沿う拡大断面図である。
【0039】
この第4の実施の形態に示す装飾用パネル40は、図11に示すように、アクリルやポリカーボネートなどの透明な合成樹脂材またはガラス等の透明材からなる一定厚さの板状の基材41を備え、この基材41の光入射側である表面41aは平滑な面に形成され、この表面41aと反対の基材41の裏面41bには、基材41に入射された入射光43の反射(全反射,完全又は不完全拡散反射、透過拡散)、干渉及び回折させ得る境面形状に加工することにより、装飾用パネル40全体の反射光の輝度にランダムに変化する明暗を生じさせる多数の小反射部32が任意の配列で裏面41bの全域に亘り連続して形成されている。
なお、装飾用パネル40への入射光43には、各種照明灯の光または太陽光等の自然光などが用いられる。
【0040】
次に、小反射部42で生成される反射光の輝度に不規則に変化する明暗パターンを生じさせる場合の具体例について図11乃至図13を参照して説明する。
小反射部42は、図11に示すように、半楕円球屋根型の基本形状を呈し、この基本形状に1/fゆらぎを付与することにより、図12及び図13に示すように、半楕円球屋根型の三次元形状に造形された、平面的に連続する三次元形状の凹状境面42aから構成される。この凹状境面42aは、その反射による輝度に木漏れ日に似た不規則に変化する明暗パターンを生じせるものであり、その形状は、上記数2に示す1/fゆらぎ関数f(x)より決定される。
すなわち、1/fゆらぎ関数f(x)で決定される凹状境面42aは、周波数の違う複数のサイン曲線(2x:周波数)に適当な係数2−i(2−i:振幅)をかけて加算した形状となる。
【0041】
上記小反射部42は、図11乃至図13に示すように、予め決めた一定の間隔L(0<L<10mm)で、行、列方向に連続して配列され、そして、互いに隣接する各行の小反射部42Cは列方向に1L分ずらして配列されている。
また、凹状境面42aの深さhは、0≦h≦20mmの範囲に設定される。また、凹状境面42aの反射角θ1は、その材質がポリカーボネートの場合、約40度であり、凹状境面42aの傾斜角θ2は、0≦θ2≦90°の範囲に設定される。
【0042】
また、上記小反射部42を構成する凹状境面42aの媒体境界面には、図12及び図13に示すように、上記媒体境界面を鏡面にするとともに基材41を透過しようとする光を基材41内に戻す方向に反射する反射層45が形成されている。この反射層45はアルミその他の鏡面形成用の金属を蒸着することにより構成される。
【0043】
このような第4の実施の形態に示す装飾用パネル40において、図11〜図13に示すように、基材41の表面41aが入射光43により照射されると、この入射光43は屈折光となって基材41内を進行し小反射部42に達する。そして、小反射部42に達した屈折光は1/fゆらぎ関数f(x)より決定された小反射部42の形状に応じて反射、干渉及び回折され、これにより、基材41の表面41a側へ反射される反射光の輝度に不規則に変化する明暗パターンを生じさせるとともに光波長のシフトによる色収差を生じさせる。さらに、上記屈折光のうち、基材41を透過し反射層45で反射された光は再び基材41内に戻され、不規則に変化する明暗パターンの生成に寄与する。また、この場合、小反射部42及び反射層45の反射で戻ってくる光の一部と基材41の表面41aで反射された入射光43の一部とが干渉することにより、ある色の光が強くなり、他の色の光が弱められることで、白色光以外の色のついた光パターンを生成できる。
【0044】
したがって、この第4の実施の形態によれば、基材41に対する入射光43の方向、基材41の表面41aに対する見る者の視点44及びこの視点44または入射光43に対する基材41の位置の少なくとも1つを相対的に変化させれば、1/fゆらぎを付与した各小反射部42と反射層45で、木漏れ日に似た不規則に変化する反射輝度の明暗パターンを生成することができる。これにより、インストルメントパネルやドアートリムなどの自動車内装部品に本実施例の装飾用パネル40を装着し、この装飾用パネル40をその光入射側から見れば、自動車内装部品を変化に富んだ光装飾が可能になり、かつ見栄えの良い光装飾も可能になる。
また、1/fゆらぎを付与することにより三次元形状に造形された凹状境面42a及び反射層45で生成される反射光の輝度の明暗パターンが不規則に変化することで、その輝度の明暗パターンが恰も木漏れ日のようになって見る者の視覚に作用し、これにより、見る者に対し癒し、くつろぎ、または安らぎを与える光装飾効果を発揮できる。
【0045】
(第5の実施の形態)
次に、本発明にかかる装飾用パネルの第5の実施の形態について図14及び図15を参照して説明する。
図14は本発明の第5の実施の形態における装飾用パネルの要部の拡大断面図、図15は同じく第5の実施の形態における装飾用パネルの要部の拡大断面図である。
【0046】
この第5の実施の形態は、上記第1の実施の形態における装飾用パネル10の小反射部12の変形例を示すもので、この小反射部12は、図2及び図3に示す場合と同様に、三角屋根型の基本形状に1/fゆらぎを付与することにより、三角屋根型の三次元形状に造形された、平面的に連続する三次元形状の凹状境面12aを有し、この凹状境面12aの媒体境界面には反射層15が形成され、さらに、基材11の光入射側である表面11aには、木目や花柄または幾何学模様などの加飾用の模様パターンを有する半透明もしくは透明な加飾層18が形成されている。
【0047】
このような第5の実施の形態における装飾用パネルによれば、基材11の光入射側表面11aに、模様パターンを有する加飾層18を形成したので、加飾層18の模様パターンに小反射部12及び反射層15で生成された反射光によりランダムに変化する明暗を与えることができるとともに、模様パターンの見栄えを向上できる。
【0048】
(第6の実施の形態)
次に、本発明にかかる装飾用パネルの第6の実施の形態について図16を参照して説明する。
図16は本発明の第6の実施の形態における装飾用パネルの要部の拡大断面図である。
この第6の実施の形態に示す装飾用パネル10は、図16に示すように、装飾用パネル10を構成する小反射部12の凹状境面12aに形成した反射層15と凹状境面12aとの境界面に、多層もしくは単層光学薄膜を設けたものである。
【0049】
このような第6の実施の形態に示す装飾用パネル10によれば、上記第1〜第4の実施の形態と同様な作用効果が得られるほか、反射層15と凹状境面12aとの境界面に多層もしくは単層光学薄膜17を反射層15と凹状境面12aとの境界面に設けることにより、装飾用パネル10に色のついた光装飾効果を持たせることができ、見る者に対し、より効果的な癒しやくつろぎ、または安らぎを与えることができる。
【0050】
なお、本発明にかかる装飾用パネルの小反射部の基本形状は、上記実施の形態に示した三角屋根型、台形屋根型、半球屋根型、半楕円球屋根型のものに限らず、小反射部での反射光の輝度に不規則に変化する明暗を生じさせることができる形状のものであれば、どのような形状のものでも良い。
また、本発明にかかる装飾用パネルの小反射部を構成する三次元の凹状境面は、数1に示す1/fゆらぎ関数で決定される形状のものに限らず、乱数表を利用して凹状境面の形状を決定するようにすることもできる。
また、本発明にかかる装飾用パネルの小反射部は、上記実施の形態に示した基材の裏面に形成する方式のものに限らず、基板の光入射側の表面に形成することも可能である。また、基板の光入射側の表面は平滑な面である必要がなく、波状等に湾曲する曲面形状を有するであっても良い。
【0051】
また、上記第5の実施の形態では、第1の実施の形態に示す装飾用パネル10の小反射部12の凹状境面12aに反射層15を形成する場合について説明したが、本発明はこれに限らず、上記第2ないし第4の実施の形態に示す小反射部の凹状境面に反射層を形成することができる。この場合も上記第5の実施の形態と同様な作用効果が得られる。また、上記第6の実施の形態に示す多層もしくは単層光学薄膜を上記第2乃至第4の実施の形態に示す小反射部の反射層にも同様に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明の第1の実施の形態における装飾用パネルの説明用外観図である。
【図2】図1の2−2線に沿う拡大断面図である。
【図3】図1の3−3線に沿う拡大断面図である。
【図4】本発明の1/fゆらぎ関数で決定される凹状境面の形状特性を表した場合の一例を示すグラフである。
【図5】本発明の第2の実施の形態における装飾用パネルの説明用外観図である。
【図6】図5の6−6線に沿う拡大断面図である。
【図7】図5の7−7線に沿う拡大断面図である。
【図8】本発明の第3の実施の形態における装飾用パネルの説明用外観図である。
【図9】図8の9−9線に沿う拡大断面図である。
【図10】図8の10−10線に沿う拡大断面図である。
【図11】本発明の第4の実施の形態における装飾用パネルの説明用外観図である。
【図12】図11の12−12線に沿う拡大断面図である。
【図13】図11の13−13線に沿う拡大断面図である。
【図14】本発明の第5の実施の形態における装飾用パネルの要部の拡大断面図である。
【図15】本発明の第5の実施の形態における装飾用パネルの要部の拡大断面図である。
【図16】本発明の第6の実施の形態における装飾用パネルの要部の拡大断面図である。
【符号の説明】
【0053】
10,20,30,40 装飾用パネル
11,21,31,41 基材
12,22,32,42 小反射部
12a、22a,32a,42a 凹状境面
15,25,35,45 反射層
17 多層もしくは単層光学薄膜
18 加飾層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明材からなる板状の基材を有し、
前記基材の光入射側である表面と反対の面に、前記基材に入射された入射光を反射、干渉及び回折させ得る境面形状に加工することにより、これら境面の反射輝度にランダムな明暗を生じさせる多数の小反射部を任意の配列で前記一方の面に沿い連続して形成し、
前記多数の小反射部の境面に該境面を鏡面にするとともに前記基材を透過する光を該基材内に戻す方向に反射する反射層を形成し、
前記基材に対する入射光の方向、前記基材に対する視点及び前記入射光または前記視点に対する前記基材の位置の少なくとも1つを相対的に変化することにより、前記各小反射部で起こる光の反射、干渉及び回折により生じる反射光の輝度に不規則に変化する明暗を生じさせるとともに光波長のシフトによる色収差を生じさせるように構成したことを特徴とする装飾用パネル。
【請求項2】
前記多数の小反射部は、基本形状に1/fゆらぎを付与することにより造形された、平面的に連続する三次元形状の凹状境面から構成されていることを特徴とする請求項1記載の装飾用パネル。
【請求項3】
前記小反射部の基本形状は、前記表面と反対の面に該面に沿い連続してランダムに形成された二次元方向に任意のピッチで形成された三角型、台形型、半球型、半楕円球型、波型等の三次元形状を呈することを特徴とする請求項2記載の装飾用パネル。
【請求項4】
前記基材の光入射側である表面に、加飾用の模様パターンを有する半透明もしくは透明な加飾層が形成されていることを特徴とする請求項1記載の装飾用パネル。
【請求項5】
前記小反射部と前記反射層との境界面に多層もしくは単層光学薄膜を設けたことを特徴とする請求項1ないし4の何れか1項に記載の装飾用パネル。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2008−201104(P2008−201104A)
【公開日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−42836(P2007−42836)
【出願日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【出願人】(391006083)三光合成株式会社 (67)
【Fターム(参考)】